北海道の「宿泊税」、2 万円未満 100 円が有力に 免税点は導入せず

人口が減っても持続可能な観光産業を実現するため、北海道が導入を目指している「観光振興税」の方向性が 25 日、固まった。 宿泊料金に応じて 100 - 500 円を宿泊者から徴収する段階的定額制で、最低区分は 2 万円未満から 100 円を徴収する案が有力だ。 使い道はマーケティングや交通網の充実、災害対応の強化など 7 分野で、名称は先行自治体にあわせて「宿泊税」とする。

道は東京、大阪に次いで宿泊客延べ数が多い「観光王国」でコロナ前は、1 泊 100 円(税収見込み年 36 億円)の一律定額制を検討していた。 しかしコロナ禍が明けた昨夏、「観光振興を目的とした新税に関する懇談会」で議論を再開したところ、「税収が他の都府県に比べ少ないのでは」との意見が続出した。 そこで新たに 100 - 500 円の段階定額制のたたき台(税収見込み年 60 億円)を昨年 9 月に示すと、宿泊税導入を検討している札幌市など 7 市から「(道と市の宿泊税を)合算すれば高額になり、宿泊者の負担感が増す」とする反対意見が飛び出した。

道は全市町村を対象にしたアンケートや意見交換会を実施。 そこで出た意見もふまえ、負担感を減らす方向で、税率区分を見直す方針を固めた。 1 泊あたり宿泊料金が 1 万円未満は 100 円、1 万円以上 5 万円未満は 200 円、5 万円以上は 500 円としていたが、最低区分を 2 万円未満(100 円)に、次の区分を 2 万円以上 5 万円未満(200 円)に引き上げる。 宿泊料金帯で最も多い 1 万円前後で区分けすれば、料金の変動による宿泊者への影響が大きく、宿泊業者の事務負担も煩雑になる点を考慮した。 区分を見直せば、税収見込みは年 45 億円に減るため、懇談会の石井吉春座長(北大客員教授)は「税収が十分確保できるかどうか留意する必要がある」と指摘した。

このほか、一定料金以下は非課税となる「免税点」を東京都(1 泊 1 万円未満)や大阪府(同 7 千円未満)は設けているが、道は導入しない。 修学旅行については公益性の観点から京都市や長崎市と同様に課税免除とする。 懇談会は 2 月にも宿泊税の最終案をとりまとめる方針だが、不安は残る。 税の使い道について、道は「市町村との役割分担も整理する」と話すが、観光人材の確保や育成、オーバーツーリズム対策、データを活用したマーケティングなど重なる部分は多い。

また、道内宿泊客の 5 - 6 割は道民でビジネスの利用も多い。 市町村アンケートでも「道内の工事従業員が長期宿泊するケースもあり、5 千円未満は免税すべきだ」、「1 万円未満はビジネス目的のやむを得ない宿泊が多く、免税すべきだ」などの意見も出ている。 (日浦統、asahi = 1-25-24)

宿泊税を導入した主な自治体の制度内容 *倶知安町のみ定率制
自治体名税率(1人1泊宿泊料金あたり)直近税収見込額
東京都1万〜1.5万円未満(100円)、1.5万円以上(200円)16.7億円
大阪府7千〜1.5万円未満(100円)、1.5万〜2万円未満(200円)、2万円以上(300円)12億円
京都市2万円未満(200円)、2万〜5万円未満(500円)、5万円以上(1千円)35.5億円
金沢市2万円未満(200円)、2万円以上(500円)7.1億円
長崎市1万円未満(100円)、1万〜2万円未満(200円)、2万円以上(500円)3.7億円
福岡県一律200円 →福岡市・北九州市が課税する場合50円、市町村が課税する場合100円13.9億円
福岡市2万円未満(150円)、2万円以上(450円)18.6億円
北九州市一律150円3.9億円
倶知安町1人・1部屋・1棟あたり宿泊料金の 2%2億円

年 39 億円集めた奈半利町のふるさと納税、今はピーク時の 0.3% に

高知県奈半利町は、ふるさと納税の返礼品を巡る汚職事件が起きただけでなく、返礼品調達費の割合を偽装して国に申告したとして、制度の対象自治体から 2 年間除外された。 2022 年 10 月に制度復帰したが、1 年経った時点の寄付額はピーク時の 0.3% ほどにとどまっている。

「奈半利ゆず豚 バラスライス」、「訳あり不揃い釜揚げシラス」、「海惚れいちご」 - -。

町のふるさと納税サイトには今、地場産品が並ぶ。 かつて人気を集めた県外産のホタテやカニなどは見あたらない。

1 億円の見込みが …

ふるさと納税は自治体間の高額な返礼品競争が問題となり、国は 19 年 6 月から「返礼品の調達費は寄付額の 3 割以下の地場産品」などの基準を定めた。 それまで奈半利町は、目玉となるような返礼品や高い返礼率で最盛期の 17 年度は約 39 億円(全国の自治体で 9 位)の寄付を集めていたが、新基準の影響で大幅に寄付額を減らした。 また、汚職事件を受けての実態調査で、19 年 6 月以降の返礼品に基準違反も判明し、総務省によって制度から除外された。

現在の返礼品について、町の担当者は「今は地場産品でやらなければならない。 あらゆる法令を守ることを徹底している。 淡々とやっていくだけだ。」と話す。 寄付は思い通りには集まっていない。 22 年 10 月の制度復帰時、町は年間の寄付見込み額を 1 億円としていた。 除外される直前の 20 年 4 月から約 1 カ月半分の実績約 1,870 万円を元にはじき出した。 ところが、寄付額の実績は 22 年 10 月 - 23 年 9 月の 1 年間で 1,280 万円にとどまった。 見込み額の約 8 分の 1 だ。 制度には「募集の費用は寄付額の 5 割以下」の基準があるため、寄付額が多ければ広告宣伝費に回すこともできるが、寄付額の少ない奈半利町の場合は「待つことだけ」しかできないという。

地元が潤えば

それでも、返礼品は再開時の 17 業者 120 品目から 20 業者約 200 品目まで増やした。 寄付を受け付けるウェブサイトも 3 から 5 に拡大した。 人口約 3 千人の奈半利町。 1 次産業が主産業で少子高齢化も深刻だ。 「前のように大きな金額ではないが、町内の生産者や事業者に少しでも利益がいき、地元が潤うことになればいいと思ってやっている」と担当者。 23 年度は 12 月末までの 9 カ月間で約 1,120 万円。 前年度を上回るペースという。 (鈴木芳美、asahi = 1-25-24)


殺風景な工業港に大型クルーズ船 自治体が誘致、地元 PR に期待も

愛知県半田市の衣浦(きぬうら)港に大型クルーズ船「にっぽん丸」(2 万 2,472 トン)が 22 日、寄港した。 地元の働きかけで初めて実現した。 クルーズ船は新型コロナで打撃を受けたが、昨年 5 月から感染症法で季節性インフルエンザと同じ 5 類の扱いとなったこともあり、 運航が再び本格化。各自治体の誘致の動きも加速しそうだ。 運航する商船三井クルーズ(東京)によると、にっぽん丸は、3 泊 4 日の横浜港発着のツアーの途中で寄港した。 乗客は約 340 人。 酒蔵や新美南吉記念館などを訪れる四つのツアーに参加したほか、市が運行する無料シャトルバスに乗って市内観光を楽しんだ。

午前 9 時前の接岸に合わせ、知多半島 5 市 5 町の観光パンフレットを並べた観光案内所が開設。 市職員らが、乗客たちに甘酒やせんべいを振る舞い、見どころをアピールした。 周辺に木材チップが積み上げられた工業港だが、この日は、乗客や見物の市民でにぎわった。 3 度目のクルーズ旅行という東京都の 60 代女性は「名古屋は何度か来たことがあるけど半田は初めて。 見どころはいくつもあるようですが、港から遠いようなのでもっと時間があればいいですね。」と話した。

地酒など知多半島の特産品を販売するテントも並び、記念式典も開かれた。 にっぽん丸は 7 時間滞在し、夕方に出港した。 半田市観光課によると、クルーズ船の寄港は、地元への経済効果が高いため、誘致を目指して県と知多半島の自治体が連絡会議をつくり、船会社に寄港を働きかけていた。 21 年に常滑港(常滑市)への寄港を実現させた後も、アプローチを続け、今回の寄港にもつながった。 (asahi = 1-22-24)


「流氷きたー」 オホーツク冬本番 網走の観光船「おーろら」にぎわう

北海道のオホーツク地方に「冬本番」を告げる流氷が網走市沖に広がり、網走港から出港する流氷観光砕氷船「おーろら」がにぎわっている。 網走地方気象台は 19 日、陸上から肉眼で流氷が見える「流氷初日」を発表。 平年より 3 日、昨年より 14 日早かった。 流氷は 20 日には港のそばまで接近。 この日はちょうど「おーろら」の運航開始日で、2015 年以来 9 年ぶりに初日から流氷の中を航行できた。

最初の日曜日となった 21 日には、乗り場になっている道の駅「流氷街道網走」の駐車場に大型観光バスが並んだ。 流氷は少し遠ざかったとはいえ航行圏内にあり、午前 11 時の便には 240 人が乗船。 約 1 時間のクルージングを楽しんだ。 家族 4 人で乗船した川崎市の会社員岡田仁見さん (37) は「もう少し流氷があったり、動物が見られたりしたら良かったですが、とても楽しかったです」と笑顔を見せていた。

運航する道東観光開発(網走市)の担当者は「運航初日からお客様に楽しんでもらえています。 うれしい限り。」と話している。 気象庁が発表している海氷予想図によると、流氷は網走市以北のオホーツク海の海岸付近に散在している模様だ。 28 日ごろには一気に各地の沿岸に近づきそうだ。 (神村正史、asahi = 1-21-24)


光るコチョウラン 千葉大の研究グループが 7 年かけて発色に成功

千葉大学の研究グループが、高級花のコチョウランを遺伝子組み換えにより蛍光発色させることに成功した。 目に見えないブラックライト(紫外線)を当てると花全体が黄緑色に輝き、暗闇でも花を観賞できる。

開発したのは、三位正洋・千葉大名誉教授(植物細胞工学)の研究グループ。 この研究グループ内の企業が、黄緑色に蛍光する海洋プランクトンから取り出した蛍光遺伝子を改良し、遺伝子を運ぶ「ベクター」に組み込んだ。 三位さんはそのベクターを白色のコチョウランに遺伝子導入した。 開発には 7 年かかり、開花した 3 個体のうち花自体が光るのは 1 個体だけという。

三位さんはこれまでも植物の遺伝子組み換えに取り組み、世界初となる青いコチョウランを生み出した。 「観賞用として実用化するには自ら蛍光するようにしないと難しいと思うが、遺伝子組み換え技術の有効性と可能性に目を向けてもらえるきっかけになれば」と話す。 開発した「光るコチョウラン」は 2 月 7 - 14 日に東京ドームシティプリズムホール(東京都文京区)である「世界らん展 2024」で一般公開する。 (重政紀元、asahi = 1-18-24)


浮かび上がる雪化粧の合掌造り
 世界遺産・白川郷でライトアップ

世界遺産の白川郷合掌造り集落(岐阜県白川村)で 14 日、恒例のライトアップが始まった。 点在する合掌造りの家屋 32 棟が照らされ、雪化粧した姿が幻想的に浮かび上がった。 この冬は気温の高い日が多く、茅葺き屋根を覆う雪の量はまだ少ないが、「雪景色が間に合ってひと安心です」と白川郷観光協会の担当者。 初日は約 4 千人の観光客が見学した。

今後のライトアップは 21、28 日、2 月 4、12、18 日の午後 5 時半 - 7 時半。 集落や展望台に立ち入るための駐車場は事前予約のチケット制ですでに完売した。 一部のバスツアーが残席を募集中という。 問い合わせは同観光協会 (05769・6・1013)。 (荻野好弘、asahi = 1-14-24)


「今年行くべき 52 カ所」に山口市
NY タイムズ選出で山口県が X で絶賛 PR 昨年は盛岡市

米紙ニューヨーク・タイムズは 10 日までに、世界各地を対象にした「2024 年に行くべき 52 カ所」を発表し、日本の山口市を 3 番目に選出した。 同市が「西の京都」と呼ばれながらも京都のように観光客で混雑しておらず、街がコンパクトであることや、600 年の歴史がある「山口祇園祭」、国宝の「瑠璃光寺五重塔」なども紹介。 徒歩 15 分の近場に湯田温泉があることなど、さまざまな魅力を紹介した。

これを受けて、山口県の公式 X (旧ツイッター)は歓迎のコメントを投稿。 「アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズが『2024 年行くべき 52 カ所』を発表し、山口県の山口市が選ばれました! "西の京" 山口に皆さん、ぜひお越しください。」と記し、ニューヨーク・タイムズ紙の記事の URL とともに「#山口県」「#山口市」「#西の京」「#yamaguch」など、ハッシュタグをつけて投稿した。 ちなみに今回、同紙が 1 番目に選んだのは、4 月に北米各地で見られる皆既日食、2 番目は五輪開催を控えたフランス・パリとなっている。

同紙は昨年、盛岡市を英ロンドンに次ぐ 2 番目に選び、インバウンドの復活に伴い海外観光客の大きな注目を集めた経緯がある。 山口市にも今後、海外からの関心が高まる可能性がある。 (日刊スポーツ = 1-10-24)


新ブランド「北酒」 熟成の決め手はウイスキーに欠かせないあるもの

北海道内の酒蔵が横断的に参加して新しい共通ブランド「北酒(きたさけ)」をつくる動きが広がっている。 これまでに田中酒造(小樽市)、国稀酒造(増毛町)、高砂酒造(旭川市)が参加。 それぞれの個性や持ち味を生かした新たな味わいの日本酒を完成させた。 売れ行きは順調で、米国への輸出も近く始まる予定だ。 北酒は、酒蔵がおのおのの手法や持ち味を生かしながら日本酒を仕込むが、道産ミズナラの木でつくったたるで熟成させるのが共通する特徴だ。

ウイスキーの熟成工程には欠かせないたるだが、日本酒で使うのは珍しいという。 ウイスキーでは、ミズナラたるで熟成が繰り返されると、独特の味わいと香味が生まれ、世界的に高い評価を得ている。 どんぐりの木として知られるミズナラを北海道で自生した原木に限ってたるとして使うことで、道産の付加価値向上をねらった。 ただ、たるに加工できるミズナラの原木はわずか。 100 本に 1、2 本しかないという。 最低でも 4 メートル以上の高さがあり、ねじれや傷がないものしかたるに加工できないためだ。 ミズナラたるへの「こだわり」が、北酒の価格を高くしている理由の一つだ。

このミズナラたるで日本酒を熟成させると、香ばしさが口に広がる少しスモーキーな味に仕上がる。 加えて、それぞれの酒蔵の個性が味を微妙に変える。 「北酒プロジェクト」は 2020 年 3 月に始動。 コロナ禍が始まった直後だったが、新たな収益の柱にしようと、サビーナ自然化粧品を通販展開するソワンド・ボーテ(札幌市)が、「ピンチをチャンスに変えよう」と道内各地の酒蔵に呼びかけた。 今までに参加した酒蔵以外の酒蔵も参加を検討している。

1 本 (720ml) 税抜き 3 万円。 札幌市中心部の自社ビルにオープンした「サビーナプレミアムショップ」とオンラインで販売。 22 年の中国への輸出に続き、23 年末には米カリフォルニアの高級すし店で試験的に販売したところすぐに売り切れた。 米国への輸出も近く始める。 ソワンド・ボーテの西村順一会長は「国内外を問わず多くの人に、長い歴史のある道内の地酒のよさをあらためて知ってもらい、道産酒の価値向上につなげたい」と話す。 (佐藤亜季、asahi = 1-3-24)


* 以下、11-30-23 までの 10 件の記事は不注意により喪失しました。 但し、復元可能なものがあれば、追加します。


熊本城「第 3 の天守」の宇土櫓 解体前の屋根やしゃちほこを公開

熊本城の「第 3 の天守」と言われ、熊本地震で大きな被害を受けた宇土櫓(うとやぐら)の復旧工事現場が 29 日、報道公開された。 周囲に高さ約 46 メートルの工事用の素屋根の設置が進み、内部の足場から五階櫓の屋根や瓦、しゃちほこなどを近くに見ることができた。 櫓は近く解体作業が始まる。

慶長年間 (1596 - 1615 年) に建築された宇土櫓は国の重要文化財に指定されている。 2016 年の熊本地震で激しく損傷し、解体して修復されることになった。 作業のための素屋根の設置が 6 月から進められ、今はほぼ全体を覆っている。 調査、部材の修復を経て再建が完了するのは 2032 年度の見込み。 熊本城総合事務所の岩佐康弘課長は「(解体工事は)歴史をひもとく意味もある。 気持ちを込めてやっていきたい。」と語った。 (asahi = 11-29-23)


新近江米「きらみずき」、猛暑でも高品質 環境にも価格にもこだわる

「きらみずき」ハ夏ノ暑サニモマケヌ - -。 記録的な猛暑が続いた影響で、全国的にコメの品質低下が深刻化するなか、10 年ぶりに開発された近江米新品種の「きらみずき」は、「暑さに強い」特性を実証した。 滋賀県は「地球温暖化など気候変動に備え、『きらみずき』を増やしていきたい」としている。 「きらみずき」は、滋賀県農業技術振興センターが 13 年かけて開発した。 近江米の新品種は 13 年の「みずかがみ」以来。 暑くても品質が低下しにくい「高温登熟性」に優れた品種だ。

もともと高温登熟性が高い品種を交配して生まれた。 田んぼにビニールハウスをつくり、高温状態にして育てたなかから生育に適した個体を選び出す作業を繰り返すなどして、より暑さに強い品種として開発された。 コメは穂が伸びても、実が作られる夏場に高温に見舞われると、でんぷんが十分に蓄積されず、すき間ができて白く濁る「白未熟粒」が発生する。 品質検査では見た目も評価されるため、白未熟粒が増えると等級が低下してしまう。

農林水産省が発表した 9 月 30 日現在の検査結果によると、滋賀県内のコメの 1 等米比率は、暑さに弱いとされる「コシヒカリ」が 46.0%、同じく「キヌヒカリ」は 42.2%%。 これに対し、「きらみずき」は 85.9%。 やはり高温登熟性が高い「みずかがみ」も 86.9% と好成績だった。 県は「きらみずき」へのシフトを進めていく方針。 デビュー初年度の栽培面積は約 55 ヘクタールだが、24 年度は 500 ヘクタール、26 年度には 1 千ヘクタールを目指すという。

生産量日本一の米どころの新潟県では、高温と渇水で品質低下が著しく、「コシヒカリ」の 1 等米比率は 3.6% と過去最低レベルに落ち込んだ。 「コシヒカリ至上主義」からの脱却へ、高温に強い新品種の開発を進めているという。 「きらみずき」は 9 月中旬から 10 月上旬にかけて収穫され、11 月 23 日から平和堂など滋賀県内のスーパーで販売が始まる。 価格は 5 キロ入り 2,500 円を目指すという。 ほかの品種に比べ 1.5 倍程度とやや高めの設定だが、それには理由がある。

「きらみずき」は、農薬や化学肥料をいっさい使わない「オーガニック栽培」か、化学肥料や殺虫・殺菌剤を使わない「環境こだわり栽培」のいずれかに栽培法を限定している。 三日月大造知事は「手間ひまかけた費用は価格に反映させる。 持続可能な農業のシンボルとして、消費者の応援をもらいながら広めていきたい。」と話している。 (武部真明、asahi = 11-23-23)


知名度アップの「じゃこ天」 愛媛知事「ウィンウィンでハッピーに」

秋田県の佐竹敬久知事が愛媛県の特産品「じゃこ天」を「貧乏くさい」と酷評して波紋が広がった問題で、愛媛県の中村時広知事は 20 日の記者会見で、「ウィンウィンになればお互いハッピー。 両県にとって良い結果が生まれる連携をしていきたい」と語った。 一連の報道で高まった知名度を利用し、東京で秋田県と連携事業をするという。

中村知事は佐竹知事のじゃこ天批判について、「刺激的な発言だったが、悪気があったわけでなく、笑わせようとしたのだろう」と指摘。 「報道され、じゃこ天の知名度は格段に上がった。 禍福は糾(あざな)える縄のごとし。 人間万事塞翁(さいおう)が馬。 何がどう変わるか分からない。 お互い未来志向で明るくいこうと(今回の件には)対応してきた」と振り返った。 中村知事は松山市長時代に、秋田市長だった佐竹知事とともに全国市長会の役員を担ったという。

連携事業では、東京にあるアンテナショップ「香川・愛媛せとうち旬彩館」と「あきた美彩館」で、24 日から 12 月 3 日にかけて 3 県の特産品を使ったメニューをお昼と夕方に提供する。 ランチでは、せとうち旬彩館で、香川の讃岐うどんに、愛媛のじゃこ天と秋田の特産品「きりたんぽ」をトッピングした鍋焼きうどんを提供。 あきた美彩館では、秋田の稲庭うどんに、じゃこ天と香川のしょうゆ豆をセットで味わえるようにする。 夕食の時間帯には、両アンテナショップでそれぞれ、3 県の地酒を飲み比べられるセットを提供する。 今後も様々なイベントを仕掛けていくつもりだという。 (神谷毅、asahi = 11-21-23)


5 年で 1.6 倍、コロナ禍でもホテル増の金沢 「もっと伸びる」とも

客室数は 5 年間で約 1.6 倍 - -。 金沢市が 6 月から始めた日本銀行金沢支店の跡地のあり方を検討する会で示した資料の一つだ。 支店は今月 6 日に金沢駅西口そばに移転。 跡地は、金沢駅から香林坊まで、市が「都心軸」と位置付けたエリアにある。 資料は、その都心軸の宿泊施設(ホテル・旅館業)の客室数が、2018 年の 6,371 から 23 年には 1 万 0,156 に急増したことを示していた。 市は「立地場所の現況を説明しただけ」というが、業界関係者は額面通りには受け取らない。

過大投資の見方も

日本政策投資銀行(政投銀)北陸支店が、15 年の北陸新幹線の金沢開業から約 2 年半後の 17 年にまとめた市内のホテル投資に関するリポートは、客室の供給量の多さが、稼働率の低下になる可能性を指摘し、「過大投資という見方さえできるかもしれない」とした。

投資が活発な背景には、想定以上に市内に観光客が来ていることがあった。 金融機関のオフィスビルが売却・賃借され、ホテル建設に適正な土地が市場に放出されたことなどもあげた。 そして、厚生労働省の 16 年度の「衛生行政報告」の客室数のデータを引用し、全国 11 位の名古屋市(人口 229 万人 = 15 年、9,359 室)に次ぐ、12 位の金沢市(同 46 万人 = 15 年、8,750 室)は、トップ 10 が視野に入っているとした。

コロナ禍でも客室急増

実際、客室数はコロナ禍でも増え続けた。 閉館や開業凍結に追い込まれるホテルもあったが、昨年 12 月に金沢城公園近くに開業したのが、「ザ・ホテル山楽 (さんらく)・金沢(215 室)」だ。 国内外に 37 ホテルを展開する総合不動産会社「ケン・コーポレーション(東京)」グループのホテル事業で、金沢では、05 年の「金沢白鳥路 ホテル山楽(85 室)」に次いで 2 軒目だ。

ビジネス向け客室が比較的多い市内の状況に着目し、ツインの観光向けに商機を見いだした。 「ザ・ホテル山楽」は全室 32 平方メートル以上で、スイートルームを含む一部客室は空港のようなラウンジも利用できる。 平均客室単価は約 2 万 8 千円と市内トップクラスだ。 出足は厳しかったが、今年 5 月以降のコロナ対策の緩和でインバウンド(訪日外国人客)の増加とともに客足が伸び、8 月以降の稼働率は 80% 前後になった。

二つのホテルの総支配人の北谷公人氏は、政府が掲げるインバウンドの目標が 30 年に 6 千万人で、コロナ禍前の 19 年が 3,200 万人だったことなどから、北陸への入り込み客は「もっと伸びる。 新たなホテルの出店機会を虎視眈々と狙っているところは多いと思う。」と話す。 過大投資との見方もあるなか、投資意欲は根強く続いている。

政投銀は、北陸新幹線の経済波及効果について、金沢開業で石川県内は 678 億円、来春の敦賀延伸で福井県内は 309 億円と推計する。 時期などが違い単純比較はできない。 ただ、公表された来春からの運行計画は、東京発敦賀行きの本数が 1 日 14 往復に対し、金沢は 24 往復(10 往復は金沢で折り返し)もあり、裏付ける形となった。

福井駅前に大手外資系

世界最大のホテルチェーン「マリオットグループ」で、福井駅前の再開発エリアで来春開業を目指す「コートヤード・バイ・マリオット福井」(252 室)の千代間淳・総支配人も「金沢よりは効果は少し小さくなるのでは」と見る。 一方、福井の観光資源への評価は高い。 県立恐竜博物館(勝山市)、東尋坊(坂井市)、一乗谷朝倉氏遺跡(福井市)だけでなく、永平寺(永平寺町)での座禅、うるしの里会館(鯖江市)での漆塗り体験など「こだわりの場所がある(千代間総支配人)」といい、特に外国人観光客から好まれるとみている。 1 億人を超えるマリオットグループの会員にも発信していく考えだ。

稼働率の好調続く

敦賀延伸の効果は既に出ているとの指摘もある。 福井駅から徒歩 8 分、県内最大級の354室がある「ホテルフジタ福井」では、稼働率が 80% と好調が続く。 今夏、客室単価を 1,500 円引き上げても稼働率が落ちなかったという。 15 年の金沢開業の際も 1 年前から稼働率が 10% ほど伸びたといい、旅行業者、メディアなどの往来が活発になっていることが背景にあるとみている。

反保(たんぼ)嘉彦総支配人は、旅行業者から来春に向けた問い合わせが多く、「マグマのようなうねりを感じる」と話す。 人手不足の課題に対応するためにも、もう一段の客室単価の引き上げを検討している。 金沢開業前、地元経済界では、宿泊客の日帰り化が進む懸念もあったが、実際は想定を上回る活況だった。 敦賀延伸について、北陸経済研究所の藤沢和弘担当部長は「人の流れが変わる可能性があり、福井にもチャンスがある」と話す。 (長屋護、asahi = 11-19-23)


「冬の使者」ハクチョウ、今年も飛来 十勝地方でエサ探し

冬を告げる渡り鳥、ハクチョウが北海道の十勝地方に飛来している。 今月中旬、幕別町内の畑では 50 羽以上が地面に首を伸ばしてエサを探す様子が見られた。 日暮れとともに「コォーコォー」と鳴きながら、ねぐらの水辺に飛び去った。 日本野鳥の会十勝支部の室瀬秋宏支部長 (64) によると、飛来が始まったのは例年通りの 10 月中旬。 収穫後のデントコーン畑や芽を出した小麦畑などでエサを探しながらとどまる。 雪の積もる 1 月ごろにはほとんどが南下するという。 (友永翔大、asahi = 11-18-23)


マイワシが北海道の東沖で豊漁、水揚げ高は 32 年ぶりに 100 億円突破
 飼料・肥料の国際市場高騰も追い風

北海道東沖でマイワシの豊漁が続いている。 北海道まき網漁業協会(釧路市)がまとめた今季(6 - 10 月)の漁獲量は 24 万 9,771 トンで、5 年連続の 20 万トン超えとなり、水揚げ高は 149 億 9,554 万円と、32 年ぶりに 100 億円を突破した。 道内外で食用消費の拡大へ向けた取り組みが進む一方、「海の温暖化」などによる魚体の小型化も指摘され、漁師は楽観視していない。(菊池宏一郎)

飼料・肥料特需

釧路港には今季も九州や東北などを母港とする巻き網漁船が集まり、マイワシの水揚げに沸いた。 漁業情報サービスセンター(東京)の谷津明彦グループリーダーは「かつてとれなかった時期の漁獲規制が奏功するなどして資源量は増えている」と話す。 とりわけ今年は南米沖でカタクチイワシの漁獲が制限されたため、飼料、肥料向けの国際相場が高騰。 釧路での浜値(1 キロ当たり)は昨年より 20 円高い 58 円に跳ね上がった。 釧路税関支署によると、9 月に釧路港からチリなどに輸出されたイワシ魚油などの額は昨年同月の 3 倍に上った。

食用消費拡大へ

水揚げの 95% 以上が飼料・肥料に回るマイワシは、道民には食習慣として定着していない。 総務省の家計調査による世帯あたりの年間イワシ購入量(2022 年)は、全国平均の 377 グラムに対して道内は 109 グラムにとどまっている。 こうした中で道釧路総合振興局は 9 月、ハンバーグやつみれ汁など、家庭で調理できる 24 品のレシピ集を作成した。 「さばき方が分からない」、「調理が面倒」といった声を受けて、三枚おろしの手順も写真付きで説明している。 冷たい親潮が流れ込む道東沖のマイワシは脂乗りの良さが特徴といわれ、同振興局水産課は「日戻りの漁場でとれる新鮮さを売りにしていきたい」と意気込む。

海洋熱波影響

ただ、漁師は不安ものぞかせる。 福島県の船団の乗組員は「群れが散らばり、魚体も小さかった」と今季を振り返った。 50 グラムほどの細いサイズが目立ち、100 グラム超はあまり見かけなかったという。 小型化の背景として指摘されるのが水温の上昇だ。 今年の道東沖の海面水温は平年より 5 度以上高く、こうした極端な現象は「海洋熱波」と呼ばれる。

水産研究・教育機構(横浜市)によると、暖流の黒潮から続く「黒潮続流」が三陸沖まで北上する異例の状態が続いているほか、近年は寒流の親潮の勢力も弱まっている。 福若雅章・浮魚資源部長は「高水温でプランクトンが少なく、餌不足となって成長の悪さにつながっている」と指摘する。 マイワシの資源量は数十年単位で増減を繰り返すことが知られ、1990 年代 - 2000 年代には道東沖で全くとれない時期もあった。 北海道まき網漁業協会の担当者は「海洋環境が変わってきている。 いつまで豊漁が続くか、先行きは見通せない。」と話した。 (yomiuiri = 11-16-23)


こけら落としは福山さん 長崎スタジアムシティ来秋開業 選手も待望

ジャパネットグループが長崎市に建設中の長崎スタジアムシティの開業日が 2024 年 10 月 14 日に決まった。 サッカー J2 の V・ファーレン長崎と男子プロバスケ B1 の長崎ヴェルカが本拠とする施設はホテルやオフィスビルも備え、人口減に悩む長崎の活性化に期待がかかる。 13 日夜の発表会には市出身のアーティスト、福山雅治さんが登場し、こけら落としライブを担うことも発表された。

高田旭人・ジャパネットホールディングス社長の発表によると、施設にはミシュランガイドで星の獲得を目指すレストランやオリジナルのクラフトビールを醸造して提供するパブなどの飲食店をはじめ、屋内型スポーツ施設などが出店。「温泉も掘り、泉質がいいお湯が出た」(高田社長)といい、スタジアムを一望できるジェットバスやサウナなど温浴施設もできる。

発表会には両クラブの選手たちも登場した。 V・長崎の本拠となるピーススタジアムでは来季終盤に数試合の開催が見込まれている。米田隼也主将は「新スタジアムでJ2優勝を決め、いずれはJ1で優勝できるチームになりたい」と語った。 長崎ヴェルカの本拠となるハピネスアリーナは、アリーナやクラブハウスの屋上に球技場もでき、ロッカーやミーティングルームなども選手が試合に集中できる造りになっている。馬場雄大選手は「今季どれだけ頑張れるかによって来年の盛り上がりが決まってくる。僕個人としてはB1優勝できると思っているのでファンの力を借りて頑張りたい」と話した。

このプロジェクトに協力してきた福山さんは、自身が18歳で音楽の道を目指して長崎を出たことに触れ、「(エンターテインメントの仕事も含め)様々な人生の選択肢がこの街にもっともっとあったらと思いながら、長崎を後にした。そういった可能性が広がるプロジェクト(の実現)が、少しずつ近づいていると実感している」などと話した。 高田社長は「地域創生が行政によるものという決めつけに違和感があった。この事例が成功し、日本全国に民間投資による地域創生が広がることが我々の目標」と語った。福山さんは、「僕や(社長の)旭人さんの熱い思いが空回りしないで済むよう、みなさんもしっかりついてきて」と市民の支援を呼びかけた。 (寿柳聡、asahi = 11-14-23)


「天空の山城」彩る雲海、いつ見られる? 人工知能で発生確率を予測

雲に浮かぶ天守で知られる岡山県高梁市の備中松山城。 その「天空の山城」を演出する雲海の発生確率を AI (人工知能)で予測する取り組みが 10 月から始まった。 岡山理科大学の研究室が、過去の撮影画像と気象データから発生見込みを割り出すプログラムを作成。 今後もデータを追加して学習させ、精度を高めていくという。

気温 x 湿度 x 風速、AI が学び …

備中松山城は高梁川沿いの臥牛山(標高 487 メートル)の頂上付近に立つ。 一帯には 9 月下旬 - 4月上旬の早朝、雲海が発生し城を幻想的に彩る。 特に 10 - 12 月が旬とされ、直線距離で約 1.1 キロ離れた山の中の展望台は早朝から多くの人たちでにぎわう。 雲海は、@ 高度 1 千 - 2 千メートルの風が弱い、A 前日の日中から夜にかけての寒暖差が大きい、B 直前の夜に晴れている、といった条件がそろうと発生しやすいとされる。 とはいえ相手は自然現象。 早朝から出向いてもお目にかかれず帰らねばならない恐れがある。

市には「今週末見られるか」といった問い合わせが少なくないというが「どんな気象条件だと発生しやすいかを説明する程度(観光課)」というのが現状だ。 そこで、気象学が専門の岡山理科大生物地球学部の大橋唯太(ゆきたか)教授の研究室は昨年 10 月 - 今年 5 月、展望台にカメラを設置して城周辺の様子を自動撮影しデータを収集。 同じ時期の気温や湿度、風速のデータをかけ合わせて AI に学習させ、翌朝の発生確率を予測するプログラムを開発した。

発生予測は 高梁市や岡山理大のホームページ からアクセスできる。 展望台から翌日、@ 天空の城が見られる確率、A 天空の城にならない雲海の確率、B 雲海が発生しない確率を案内する。 毎日午後 4 時 20 分、8 時 20 分、10 時 20 分の計3回更新している。 精度を高めるために 9 月 25 日から城周辺の撮影を再開した。 午前 4 時から午後 11 時の間、5 分おきの様子を撮りためる。 カメラに入ったデータは大橋教授らが随時回収するために出向く。

大橋教授はこれまでに、広島県の三次盆地でも AI を使って雲海の発生を予測。 8 割ほどの確率で的中させ、満を持しての天空の城での挑戦となった。 「まだ精度が高いとはいえない」というが「見る側にとっては情報がないまま訪れるのは不安。 データを増やして AI に学ばせて、山城観賞のため情報の一助になれば」と話している。 (小沢邦男、asahi = 11-12-23)


冬の味覚ズワイガニ、1 匹 1 千万円も 漁が解禁、日本海側で初セリ

日本海の冬の味覚ズワイガニ漁が 6 日、解禁になった。 兵庫県但馬水産事務所によると、津居山、柴山、香住、浜坂の各漁港から計 37 隻が出漁。 県北部の新温泉町の浜坂漁港であった初セリでは、1 匹 1 千万円で競り落とされた「初物」も出た。 浜坂漁業協同組合では 13 隻が出漁。 同日午前中に次々と漁船が戻り、正午から初セリが始まった。 1 千万円で競り落とされたカニは 1.2 キロ。 「料理屋 植むら(神戸市)」の植村良輔さんの依頼で競り落とされた。

浜坂漁協によると、過去最高値という。 植村さんは「普段お世話になっている方と食べたい。 全国でも最高値では。」と話した。 同漁協の川越一男組合長は「昨年に比べ、初日の漁獲量は若干増えている。 浜坂ブランドを全国に発信していきたい。」と話す。 (菱山出、asahi = 11-6-23)


大使館からパン会社に突然の電話 つないだのは「イギリストースト」

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激減の漁獲量、回復なるか サクラエビの秋漁解禁、資源管理は継続

静岡県の駿河湾だけで水揚げされるサクラエビの秋漁が 1 日夜に解禁され、2 日早朝に初競りがあった。 年間 1 千トンを超えていた漁獲量が 2018 年に突然減り、漁業者らは自主的に休漁したり漁を制限したりして貴重な資源を守ってきた。 今年は危機を脱し、回復の兆しが見えるか。 秋漁は来月 25 日まで続く。 1 日夜は安倍川沖、焼津沖、大井川沖で網を入れ、由比漁港(静岡市清水区)と大井川港(焼津市)に水揚げされた。

初日の漁獲量は昨年の 3 分の 1 ほどの計 1,148 キロにとどまり、大きさも体長 3 センチ足らずとやや小ぶりだった。 由比漁港では 2 日早朝、赤みがかったサクラエビが初競りにかけられた。 最高値で 1 杯(15 キロ)あたり 9 万 110 円がつき、平均では昨年秋漁の初日より 3 割ほど高い 8 万 6,790 円だった。

「海水温がまだ 1、2 度高い。 寒くなれば …。」

由比港漁協の宮原淳一組合長 (81) は「海水温は 18 度くらいがいいが、夏の猛暑の影響でまだ 1、2 度高く、エビが密集していない。 寒くなればエビが集まるので、期待してほしい。」と話した。 サクラエビは富士川や大井川からの栄養豊富な水が流れ込む駿河湾ならではの海の幸で、国内では静岡県だけで水揚げされている。 生やかき揚げで食べても、天日干しにしたものをごはんやおかずに混ぜてもおいしい。

昼は水深 200 - 350 メートルに生息し、夜になると水深 20 - 60 メートルほどに浮上してくる。 その群れをねらって漁船が 2 隻 1 組になって網を引き揚げていく。 サクラエビ漁をする由比漁港と大井川港には現在、計 118 隻が所属している。 3 - 6 月ごろの春漁と 10 - 12 月ごろの秋漁があり、漁獲量は 2000 年代には年間 2 千トン前後あった。 しかし、年々減って 10 年代には 1 千トン前後になり、18 年の春漁では 312 トンまで落ち込んだ。

原因は資源の減少や富士川からの水の濁り、黒潮大蛇行による稚エビの流出などの指摘がある。 ただ、静岡県水産・海洋技術研究所の鈴木朋和上席研究員は「複合的とみられ、決定的な原因ははっきり言えない」という。

漁を自主規制して回復傾向に

危機感を抱いた漁業者らは 18 年の秋漁を休んだ。 19 年以降も主な産卵場所での漁の制限や、卵を産む前の「頭黒」と呼ばれるエビを規定以上はとらないなどの制限をしてきた。 その後も 19 年には年間 175 トン、20 年には年間 128 トンまで落ち込んだ。 だが、自主規制もあって昨年は年間 384 トンになり、今年の春漁は 309 トンまで 回復した。 産卵状況も回復傾向にあるという。

漁獲量の急減は「駿河湾の宝石」とも呼ばれる特産品の価格にも影響している。 不漁前の 17 年の価格と比べると、19 年は約 3 倍に跳ね上がり、昨年は約 1.5 倍になったという。 由比港漁協の大石達也専務理事 (53) は「秋漁は始まったばかり。 寒くなる今後に期待している。 厳格な資源管理をしており、安定してとれる状態に戻していきたい。」と話す。 今後は安定して毎年 500 トンほどとれるまで回復させたいという。 (大海英史、asahi = 11-3-23)