40 - 64 歳の介護保険料、月 6,276 円 24 年度推計 過去最高に

40 - 64 歳の人が納める介護保険料について、厚生労働省は 17 日、2024 年度は 1 人あたりの平均が月 6,276 円になる見込みだと発表した。 前年度の見込み額と比べると月 60 円増え、過去最高を更新する。 介護保険制度が始まった 00 年度は 2,075 円で、3 倍以上に増えることになる。

保険料を引き上げる主な要因となるのが、高齢化によって膨らむ介護費用だ。 40 - 64 歳の保険料のうち半分は事業主や公費で負担する。 金額は毎年改定され、月額平均でみると 5 年前(19 年度)より 744 円、10 年前(15 年度)より 1,195 円増える。 一方、65 歳以上の介護保険料は 3 年ごとに見直される。 21 - 23 年度の基準額は全国平均で月 6,014 円。 24 年度以降の金額は今後、決まる。 (関根慎一、asahi = 1-17-24)

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東京都が介護職に月 1 万 - 2 万円支援へ 25 年度に約 3 万 1 千人不足

不足の深刻化が見込まれる介護職向けに、東京都は 1 人あたり月 1 万 - 2 万円程度の支援を新たに始める方針を決めた。 政府が新年度から介護報酬を引き上げる方針だが、これとは別に独自で支援する。 新年度予算案に計上する。 小池百合子知事が 4 日、都職員への年頭あいさつで表明した。 都によると、都内の介護職は 2019 年度時点で約 18 万 3 千人。 高齢化による需要増で、都は 25 年度に約 3 万 1 千人の介護職不足を見込む。

物価高を受けて賃上げする他業種との賃金格差も目立ち、不足に拍車がかかっているという。 小池知事は「住宅費など生活コストが高い東京では支援をより手厚くする必要がある」と述べた。 都は、具体的な支援方法を検討している。 政府は、介護保険サービスの公定価格となる介護報酬を新年度に改定する方針で、それまでの緊急措置として 2 月から介護職の賃金を月約 6 千円引き上げるとしている。 (太田原奈都乃、asahi = 1-4-23)

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介護報酬 1.59% 引き上げ 来年度改定で政府方針 人材流出深刻化

介護保険サービスの公定価格となる介護報酬について、政府は 16 日、来年度からの報酬を 1.59% 引き上げる方針を固めた。 今年度補正予算で来年 2 月から介護職の賃金を月約 6 千円(0.7% 相当)引き上げると決めたが、物価高や人手不足への対応でさらに上積みする。 1・59% の引き上げは、前回改定(2021 年度)の 0.7% 増を大幅に上回る水準。 来年度に同時改定される診療報酬では、医療従事者らの人件費に回る「本体」を 0.88% 引き上げる方針。 厚生労働省によると、同時改定で介護の改定率が上回るのは初めて。

介護分野では担い手不足が深刻化。 厚労省の雇用動向調査では、22 年に介護職を離れる人が、働き始める人を上回る「離職超過」に初めて陥った。 介護職は 40 年度に 19 年度比で 69 万人増やす必要がある中、「賃上げが進む他産業への人材流出も深刻(同省幹部)」な状態で、報酬引き上げが必要と判断した。 介護報酬改定は 3 年に 1 度。 現行の仕組みでは報酬を引き上げると、連動して保険料や利用者負担も増えることになる。 65 歳以上の介護保険料(基準額の全国平均)は、制度が始まった 00 年度は月 2,911 円だったが、今は月 6,014 円へと倍増。 介護職の処遇改善と保険料負担をどう均衡させるか、難しい課題に直面している。

今年の春闘では民間企業で 3.58% の賃上げ率だった一方、介護事業所は 1.42%。 全産業平均との賃金格差は月 7 万円近くだったのがさらに広がる懸念が出ていた。 業界は「人材難に拍車がかかっている(全国老人福祉施設協議会)」などとして大幅引き上げを求めていた。 また厚労省の介護事業所の実態調査では、22 年度決算の利益率の全体平均は過去最低の 2.4% だった。 特別養護老人ホームの利益率はマイナス 1.0%、介護老人保健施設は同 1.1% と、01 年の調査開始以降初めてマイナスに。 事業所も厳しい経営状況に置かれている。 一方、障害福祉サービスの報酬は 1.12% 引き上げる方針だ。 (関根慎一、asahi = 12-16-23)

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介護報酬引き上げへ 政府方針 物価高騰・人手不足で経営悪化

介護保険サービスの公定価格となる介護報酬について、政府は来年度の改定で引き上げる方針を固めた。 物価高騰などで事業所の経営は過去最低水準まで悪化。 人手不足も深刻となる中で職員の賃上げも急務で、増額改定が必要と判断した。 厚生労働省が 10 日に公表した介護事業所の実態調査では、2022 年度決算の利益率が全体平均で過去最低の 2.4% に悪化していたことが明らかになった。 特に施設系サービスで厳しい結果となり、特別養護老人ホームの利益率はマイナス 1.0%、介護老人保健施設は同 1.1% と、01 年の調査開始以降で初めてマイナスに陥った。

厚労省は、光熱水費や人件費の伸びが経営に影響を及ぼしていると分析。 「他産業の利益率は約 6% にあがっている中で、介護分野はかなり厳しい状況にある」とみる。 人手不足も介護現場に深刻な影を落とす。 長年、介護職員の賃金水準の低さが課題とされてきたが、今年の春闘では全産業平均で 3.6% の賃上げだった一方、価格転嫁できない介護事業所は 1.4%。 小売業などへ人材流出も起きている。

月 6 千円相当の引き上げ 「少なすぎる」と反発も

政府は 10 日に閣議決定した補正予算案に緊急対策として介護職や看護補助者らの賃金を月額 6 千円相当引き上げる措置を盛り込んだ。 ただこの金額に関係団体などが「少なすぎる」と反発。 岸田文雄首相は臨時国会で「介護報酬改定に向けても必要な処遇改善の水準の検討」をすると述べた。 今後、年末の予算編成に向けて具体的な増額幅を決める。 22 年時点で全産業平均と介護職員との賃金差は月額約 7 万円あるとされ、この差をどこまで埋められるかが最大の焦点となる。 だが、報酬の増額は保険料や利用料の負担増に跳ね返る。 どこまで引き上げられるか難しい調整を迫られることになる。 (asahi = 11-11-23)


タクシーやバスの運転手、外国語試験 OK 警察庁が 20 言語の問題例

タクシーやバスなど客を運ぶ車の運転に必要な「2 種免許」について、警察庁は外国語での試験を可能にすることを決めた。 これまでは日本語でしか受験できずに外国人は合格が難しく、運転手不足に悩む業界団体から多言語化の要望が出ていた。 警察庁は近く、各都道府県警に 20 言語に翻訳した問題例を配布する。 警察庁によると、運転免許試験は各都道府県警が問題を作成している。 車の運転に必要な「1 種免許」の学科試験は現在、20 言語に対応する。 2009 年に警察庁が英語の例題を作って各警察に配布し、言語が徐々に追加されて昨年にウクライナ語も加わった。

一方で、2 種免許の試験問題は日本語でしか受けることができない。 試験では、1 種免許でも出題される速度などの交通ルールに加え、客の安全確保といった旅客自動車の運転に関する問題も出される。

2 種免許、外国籍の人は 1% 未満

運転技能などに問題のない外国人でも、日本語での問題文の読解に苦労し、不合格となる人もいる。 普通 2 種と大型 2 種の免許を持つ人は昨年末時点で全国に 88 万 536 人いるが、うち外国籍の人は 5,189 人で、1% にも満たない。 警察庁は2種免許でも、1種免許と同じ20言語に翻訳した問題例を作成し、今年度内に各都道府県警へ配布する。20言語には英語、中国語のほか、アジアを中心に各地の言葉が含まれる。各警察は、管内の外国人の居住状況に合わせて外国語の問題を作る。

また警察庁は、2 種免許取得に必要な教習期間を短縮するため、1 日あたりの技能教習の上限時間を増やす方向で検討している。 今後、上限時間の増加にともなう疲労度の変化などを調査し、来年度からの導入を目指すという。 国土交通省は、外国人労働者の受け入れを認める在留資格「特定技能」の対象に、「自動車運送業」を加える方向で検討している。 一方で、タクシーなどの外国人運転手について、日本の地理の把握や、客とのコミュニケーションの面で課題を指摘する声はある。 (板倉大地、asahi = 12-24-23)

2 種免許の試験で対応が可能になる言語

英語 / 中国語 / ポルトガル語 / ベトナム語 / タガログ語 / タイ語 / インドネシア語 / ネパール語 / クメール語 / ミャンマー語 / モンゴル語 / スペイン語 / ペルシャ語 / 韓国語 / ロシア語 / アラビア語 / ウルドゥー語 / シンハラ語 / ヒンディー語 / ウクライナ語


「2024 年問題」対策に本腰 消費者にポイント付与する実証事業も

トラック運転手などの労働規制が来年度から強化されることで、人手不足が懸念される「2024 年問題」への対策を急ぐ。 国土交通省の物流・自動車局は今年度補正予算を含め 482 億円を計上。 物流拠点の集約化や、デジタル技術で運行システムを効率化させる費用を中心に、前年度当初の 20 倍以上に増額した。 運転手の長時間労働の是正に向けては、荷入れの待ち時間を減らすための入庫予約システムや、積み下ろしの負担を軽くする機器の導入費用などに 30 億円を盛り込んだ。

さらに、荷物の再配達を減らすため、コンビニでの受け取りや置き配を指定したり、配送日時に余裕を持たせたりした消費者にポイントを付与する実証事業に計 44 億円を投じる。 事業者が負担するポイントも、1 回につき最大 5 円分まで補助する案がある。 また、上水道事業が来年度から国交省に移管されることを機に、上下水道を一体で管理・整備するための費用として 30 億円を計上した。 老朽化対策や耐震化が急がれる中、自治体が上下水道を一つの計画で工事する場合に補助する。 (高橋豪、asahi = 12-22-23)


日本 10 億円、英国 214 億円 「海外よりも手薄」の犯罪被害給付

犯罪被害者や遺族に支払われる国の給付金について見直し議論が進んでいる。 海外よりも手薄だとの指摘もあり、国は来年 6 月までに結論を出す方針だ。 海外では、犯罪被害者支援が手厚い国もある。 被害者支援に詳しい琉球大法科大学院の斎藤実教授によると、スウェーデンは 1994 年、補償金の裁定や支給を担う「犯罪被害者庁」を創設。 裁判所の任命で弁護士が被害者に就く被害者弁護人制度も設けた。 犯罪被害者学を専攻に設ける大学もあり、人材育成に力を入れているという。

ノルウェーでは 90 年、加害者側から補償金を回収する「回収庁」を立ち上げた。 2003 年には、殺人や強盗など凶悪犯罪の被害者を支援する「暴力犯罪補償庁」を新設。 04 年には、被害者らから補償金額の不服申し立てを受け付ける「市民庁」もつくった。 給付金や補償金の規模にも差がある。 警察庁によると、日本の 21 年度の総額は約 10 億円だった。 米国は約 379 億円(20 年度)、英国は約 214 億円(同)、ノルウェーは約 55 億円(21 年)。 税金から支出したり、基金で賄ったりと違いはあるが、国民 1 人当たりに換算すると、日本の 8 円に対し、米 114 円、英 319 円、ノルウェー 1,022 円と開きがあった。

斎藤教授は「国民 1 人当たりの負担額では、差が 100 倍を超える国もある。 犯罪被害を自分事としてとらえ、被害者を助けようとする『共助連帯』の意識が強いからではないか」と分析する。 こうした日本を含む各国の犯罪被害者支援の根底には、1985 年の国連被害者人権宣言がある。 犯罪被害者らが可能な限りそれまでの生活を取り戻せるよう、国から支援を受ける権利などがあると定めている。 「新全国犯罪被害者の会」副代表幹事の白井孝一弁護士はこの宣言を引き、「犯罪被害者の権利を保障するのは、国や社会の責任だ。 被害者の生活回復という目的を見失わずに制度を充実させてほしい。」と訴える。 (田添聖史、asahi = 12-16-23)


増える社会保険料 「自営業者にない不公平な負担」に身構える企業

厚生年金など企業の社会保険料の負担が増えている。 保険料の滞納が続いて資産が差し押さえられた企業は今年度上半期で過去最高となり、関連する倒産も急増している。 コロナ禍の影響を引きずる中、負担に苦しむ企業が目立つ。 保険料を集めるのは日本年金機構。 年金記録問題などで廃止された旧社会保険庁を引き継いで2010 年に発足した。

保険料率でみると、厚生年金は労使折半で給料の 18,3% を負担し、09 年の約 15.7% から 3 ポイント近く上がった。 厚生年金を負担する企業はさらに、児童手当の財源として「子ども・子育て拠出金 (0.36%)」を全額負担しており、この割合も同 0.23 ポイント上がった。 中小企業の加入が多い公的医療保険の協会けんぽは 10% 前後、介護保険も 1.82% といずれも労使折半で負担している。

「課せられた職務を粛々と進めるが …」

同機構が集める保険料は厚生年金でみても、09 年度の約 22 兆 7 千億円から 22 年度には約 34 兆 6 千億円と 1.5 倍以上に。 料率引き上げに加えて、中小零細企業の加入を進めたことで、企業数が 09 年度の約 175 万社から 22 年度の約 268 万社に増えたことが大きい。 経営体力が弱い企業の加入が増える中、コロナ禍の影響も引きずっていることで保険料負担に苦しむ企業が増えている。

同機構はコロナ禍で保険料などの徴収を一時猶予したが、22 年度から再び強化した。 その結果、今年度上半期(4 - 9 月)は、差し押さえをした事業所数は約 2 万 6 千社で、上半期として過去最高だった。 帝国データバンクによると、社会保険料や税金の負担を理由にした倒産は今年 1 - 11 月で 111 件と前年同期比 1.7 倍に増えた。

さらに加わる「支援金制度」

今後、少子化対策の財源として医療保険料に上乗せする「支援金制度(仮称)」の実施が予定されている。 負担はさらに増えていく見通しだ。 日本年金機構の運営評議会委員でもある日本総研の西沢和彦理事は「機構の職員は課せられた職務を粛々と進めるが、負荷の増加が懸念される」と警告する。 新たな支援金制度を設けることは「子ども・子育て拠出金だけでも自営業者などにはなく、不公平な負担だ。 さらに似たような目的で支援金を集めることは説明がしづらい」と指摘、事業主の理解が得られない心配があると指摘している。 (松浦新、asahi = 12-14-23)

子 3 人以上で大学無償化 政府、児童扶養手当を拡充

政府は 11 日、「次元の異なる少子化対策」の具体的政策と財源を盛り込んだ「こども未来戦略」案を公表した。 3 人以上の子どもを育てる多子世帯の経済的な負担を軽減するため、子ども全員を対象に 2025 年度から大学授業料など高等教育費を無償化すると新たに明記。 低所得のひとり親世帯向けの児童扶養手当を拡充する。 3 兆円台半ばとしてきた追加財源は、年 3 兆 6 千億円程度となる。

こども未来戦略会議(議長・岸田文雄首相)で提示した。 首相は「少子化は最大の危機だ。 政府を挙げて取り組む。」と述べた。 6 月にまとめた戦略方針が肉付けされ、財源を含む全体像が明らかになった。 月内に閣議決定する。 焦点は、公的医療保険料に上乗せ徴収する「支援金」の個人の負担額に移る。 平均で月 500 円と見込むものの、一人一人の具体的な金額は示していない。  多子世帯は経済的な負担が特に大きいため、大学の授業料と入学金は「25 年度から無償にする」とした。 所得制限は設けず、授業料を国公立大は年 54 万円、私立大は年 70 万円を上限に補助。 短大や専門学校も含める。 (kyodo = 12-11-23)


生活保護申請、9 カ月連続増加 前年同月比 2012 年度以降で最長

全国の生活保護の利用申請が 9 月は 2 万 1,644 件となり、前年同月比で 276 件 (1.3%) 増えた。 厚生労働省が 6 日発表した。 前年同月の水準を上回るのは 9 カ月連続。 2012 年度に調査結果を毎月公表し始めて以降、前年同月比で 9 カ月連続の増加は最長となる。 これまでの最長期間は 21 年 5 - 12 月の 8 カ月連続だった。 同省保護課は「コロナ禍以降、増加傾向が続いている」と分析するが、最近の物価高の影響については「わからない」としている。 生活保護を受けている世帯は全国で 165 万 1,187 世帯で、前年同月より 7,158 世帯 (0.4%) 増えた。 (関根慎一、asahi = 12-6-23)

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生活保護申請、8 月は 2 万 1,341 件 8 カ月連続で前年同月上回る

8 月の生活保護の利用申請は全国で 2 万 1,341 件となり、前年同月比で 779 件 (3.8%) 増えた。 前年同月の水準を上回るのは 8 カ月連続。 厚生労働省が 1 日発表した。 生活保護を受けている世帯は全国で 165 万 1,619 世帯で、前年同月より 7,507 世帯 (0.5%) 増えた。 (関根慎一、asahi = 11-1-23)

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生活保護申請、6 カ月連続で増加 コロナ支援縮小が一因

生活保護の申請件数が今年に入り、前年同月比で 6 カ月続けて増加している。 厚生労働省の集計によると、対前年同月の伸び率も 2 - 5 月は 10 - 20% 台と高水準だった。 政府関係者らは、新型コロナウイルス禍に伴う特例的な生活支援の縮小が一因と分析している。 新型コロナの初確認から 3 年以上が経過し、経済活動の正常化が進む一方、生活困窮者らを支えてきた特例的な生活支援は縮小している。 支援の柱である最大 200 万円の生活資金の特例貸付制度については、ことし 1 月から返済が始まった。

1 月の生活保護申請件数は 2 万 95 件で、前年同月比 3.9% 増だった。 2 月は 20.5% の大幅増となり、3 月は 23.7% へ拡大した。 4、5 月は 10% 台。 6 月は 3.8% と鈍化した。 厚労省によると、コロナ禍から続く生活苦により借りた生活資金を返済できないケースや、借り主と連絡がつかないこともあるという。 申請増に関し、困窮者支援に関わる政府関係者は「コロナ禍で綱渡りの生活を送っていた人々への支援がなくなり、増加につながっている可能性がある」と指摘する。 (kyodo = 10-1-23)

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生活保護申請、6 月は 3.8% 増 前年同月比 6 カ月連続増

6 月の生活保護の利用申請は全国で 2 万 1,681 件となり、前年同月比で 800 件 (3.8%) 増えた。 前年同月の水準を上回るのは 6 カ月連続。 厚生労働省が 6 日発表した。 前年同月比の増加率は 5 月まで 10% を超えていたが低下した。 前年同月比で 6 カ月連続増となったことについて、同省保護課は「コロナ禍を境に増加傾向にあり、トレンドは変わっていない(担当者)」とみる。 生活保護を受けている世帯は全国で 164 万 9,300 世帯で、前年同月より 8,256 世帯 (0.5%) 増えた。 (関根慎一、asahi = 9-6-23)


来年度の年金額はプラス改定の公算 物価ほどには増えず、実質目減り

来年度の公的年金額は、物価上昇を反映し、2 年連続でプラス改定となりそうだ。 一方、将来世代の年金のため、今の年金を抑制する措置も 2 年連続で発動する見通し。 物価ほどには年金が増えず、実質的には目減りすることになる。 公的年金の支給額は、物価や賃金の変化に応じて毎年度改定される。 その主要な指標が全国消費者物価指数(生鮮食品を含む総合指数)。 今年(暦年)の物価上昇率をもとに 2024 年度の年金改定率が決まる。

総務省が 24 日公表した今年 10 月の総合指数は、前年同月より 3.3% 上がった。上昇率は年初から 3% を上回り続け、年金額は 2 年連続でプラス改定が確実な情勢だ。 ただし、公的年金には、保険料を払う現役世代の減少や高齢化に合わせて、支給額を抑制する「マクロ経済スライド」という仕組みがあり、この措置も 2 年連続で実施される見込み。

予想以上の物価上昇で …

ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫上席研究員による今月中旬の試算では、物価や賃金を反映した本来の改定率は 3% で、ここから 0.4% 分が抑制され、年金の実際の改定率はプラス 2.6% になる見通し。 中嶋上席研究員は「予想以上の物価上昇で、年金の改定率は試算より上ぶれする可能性がある」とみる。 来年度の年金の改定率は、23 年平均の総合指数が公表される来年 1 月 19 日にあわせて決まる。

物価や賃金が安定的に上昇するかどうかは、年金の将来に大きく影響する。 04 年の法改正で導入された「マクロ経済スライド」は、長引くデフレ下では十分に機能してこなかった。 その結果、今の年金額が「高止まり」する分、将来の年金水準が下がるという問題を抱え、改革の論点となっている。 (浜田陽太郎、asahi = 11-24-23)


リスキリングで休暇中の生活支援、賃金の 8 - 5 割給付へ 厚労省方針

在職者が仕事を休んで教育訓練を受けた場合に、生活支援のために支給される新たな給付について、失業手当と同水準となる賃金の 8 - 5 割を給付する方向になった。 厚生労働省が 13 日の審議会で案を示し、労使が大筋で合意した。 働き手の生活費を手厚く補助することで、主体的なリスキリングを促すねらいだ。 給付の創設は政府が 6 月に閣議決定した「骨太の方針」に盛り込まれていた。 教育訓練で休暇をとった働き手の生活を支える。

教育訓練に専念したいときに、会社に有給で休暇がとれる制度がなければ、働き手は離職せざるを得ない場合があるとして、給付は失業給付と同じ内容が必要と考えたという。 給付額は、賃金の 80 - 50% (60 - 65 歳未満は 80 - 45%)。 日額の下限は 2,746円で、上限は年齢によって異なるが、最大 1 万 56,980 円(45 - 60 歳未満)とする。

給付日数は、自己都合で退職した人と同じ水準とする予定で、雇用保険の加入期間に応じて、90 日、120 日、150 日とする。 給付には、雇用保険への一定期間の加入などを条件とすることを検討している。 このほか、教育訓練や生活費を確保するための融資制度も新設する。 雇用保険に入っていない労働者や、フリーランスから雇用されることをめざす人などを対象として想定している。

教育訓練の効果をより高めるため、訓練後に賃金が上がるといった条件を満たせば、融資を受けた債務の一部を免除するといったインセンティブを設ける案もある。 これらの財源については、雇用保険料が充てられる予定だ。 この日の審議会では、労使双方の委員からは、雇用の安定や失業の予防などを図る雇用保険制度の趣旨にそぐわないとして、「一般財源なども積極的に投入すべきだ」など、雇用保険料を財源とすることへの否定的な意見が相次いだ。 (三浦惇平、asahi = 11-13-23)


医科歯科大と東工大の統合、来年 10 月 1 日の見込み 本部は大岡山に

東京医科歯科大と東京工業大が来年 10 月 1 日に統合する見通しとなった。  政府が 10 月 31 日、両大学の統合を盛り込んだ国立大学法人法改正案を閣議決定した。 新しい大学名は「東京科学大」。 東京医科歯科大によると、本部は当面の間、東工大の大岡山キャンパス(東京・目黒)に置く。 両大学は昨年 10 月、2024 年度中の統合を発表していた。国立大学同士の統合は、07 年の大阪大と大阪外国語大以来となる。 改正案には、国際卓越研究大学で求められている合議制の機関の設置を、特定の国立大学法人に求めることも盛り込まれた。 (山本知佳、asahi = 10-31-23)

前 報 (10-14-22)


児童手当の支給、年 3 回から 6 回に倍増 岸田首相が表明

児童手当の拡充をめぐり、岸田文雄首相は 26 日、支給回数を年 3 回から年 6 回に倍増する制度改正をすると表明した。 これにより所得制限の撤廃などで拡充する児童手当の初回支給は来年 12 月となり、2025 年 2 月の当初予定より 2 カ月前倒しされる。 岸田首相は 26 日の政府与党政策懇談会で「児童手当の支払い月を隔月の年 6 回とする法改正を行い、拡充後の初回支給を来年 12 月に前倒ししたい」と述べた。

現在は「4 月ごと」に支給されるが、2 カ月分ずつ、こまめに受け取れることになる。 拡充は来年 10 月分からの予定で、同 11 月分とあわせた 2 カ月分が来年 12 月に支給される。 政府は 6 月に閣議決定した「こども未来戦略方針」で、所得制限の完全な撤廃、支給期間の高校生年代までの延長、第 3 子以降の加算の増額を盛り込んだ、児童手当の拡充を決定。 当初は 2025 年 2 月に初回支給する方針だった。 来年の通常国会に関連法案を提出し、成立をめざす。 (高橋健次郎、asahi = 10-26-23)


国保保険料、年間上限額を 2 万円引き上げへ 来年度から 厚労省方針

自営業やフリーランスの人らが入る国民健康保険について、厚生労働省は保険料の年間上限額を 2024 年度から 2 万円引き上げる方針を固めた。 上限額は年 104 万円が 106 万円になる。 同省は近く開かれる社会保障審議会の部会で方針を示す予定。 高齢化などで医療費が増える中、高所得層の負担を引き上げて中所得層の負担を緩和する狙いがある。 上限額の引き上げは 3 年連続。 21 年度は据え置きだったが、22 年度は 3 万円、23 年度は 2 万円引き上げられた。 (吉備彩日、asahi = 10-25-23)


企業の「転勤」に異変 一時金倍増や勤務地希望制、月 15 万円支給も

企業の転勤制度に変化が起きている。 転勤に伴う手当を増やすほか、転勤そのものをなくす動きも目立つ。 共働き世帯の増加を背景に転勤に抵抗感をもつ社員が増えており、各社はこうした取り組みで離職を防ぎ、人材の定着につなげたい考えだ。 三菱 UFJ 信託銀行は 10 月から、国内で引っ越しを伴う転勤をする従業員に 50 万円を支給する制度を新たに設けた。 従来 10 万円程度支給してきた引っ越し準備のための手当とは別に、異動後の賞与に上乗せする。 今年 4 - 9 月に転勤した社員も条件を満たせば支給対象となる。

全国転勤型の従業員は約 4,500 人おり、そのうち個人や法人の営業担当ら年 200 人程度が引っ越しを伴う異動をしている。 同社は「全国に支店があり、金融機関は不正防止の観点からも、一定のジョブローテーション(定期的な人事異動)が必要(広報)」という。だが、「共働き世帯が増えて家族帯同を当然とする時代ではなくなり、転勤となれば経済的に負担の重い単身赴任を余儀なくされる社員が増えている(人事部)」といった背景もあり、一時金の支給によって負担を軽くしたい狙いがある。

三菱 UFJ 銀行は 2025 年度から、転勤した行員を対象に月 3 万円の手当を新たに設ける。 これまで単身赴任手当はあったが、独身者や家族帯同での転居も新たな手当の対象になる。 対象は年約 1 千人で転勤から最長 5 年間支給される。 みずほフィナンシャルグループも来年 4 月から、転勤時に支給する一時金を 2 - 3 倍に増やす。 家族を伴って転勤する場合、一時金は本人分を 15 万円から 30 万円に増やすほか、家族分も増額する。 独身者も 8 万円から 15 万円になる。 月数万円の転勤手当も増額する。

「会社都合」の転勤による、転居や単身赴任を減らそうとする企業もある。 AIG 損害保険は、2 年半の移行期間を経て 2021 年に新たな転勤制度を導入した。 従業員は転勤可能か、希望エリアのみで働くかを選ぶことができる。 「転勤可能」でも、自身で選んだ希望エリア以外へ転勤した場合は、月 15 万円の手当を支給する。 牧野祥一人事企画担当マネージャーは新しい制度に対して「これまで部門ごとの裁量で決めてきた人事異動ができなくなり、社内で不安の声はあった」と明かす。 「だが、従業員の働く環境に対する考え方が刻々と変わっていく中で、会社も意識改革をしないと従業員が離れていってしまう」と、改革を進めた理由を説明する。

転勤が「退職考えるきっかけ」に

コロナ禍によるテレワークの広がりは、企業の働き方の見直しを後押しした。 NTT グループは 21 年、テレワークを基本とし、転勤や単身赴任を減らしていく方針を発表。 22 年には、国内なら居住地を問わずテレワークできる制度を始めた。 富士通も 20 年から、テレワークの推進で単身赴任を解消したり、介護や配偶者の転勤などを理由に転居した場合も働き続けたりできる環境を整えた。 グループ全体でのべ 3,100 人がこうした遠隔地勤務を利用しているという。

労働政策研究・研修機構が 16 6年に実施したアンケートによると、「正社員(総合職)のほとんどが転勤の可能性がある」と回答した企業は 3 割で、規模が大きい企業ほどその割合は高かった。 また、転勤の目的については、6 割超が「社員の人材育成」を挙げた。 しかし、従業員にとって転勤の負担は小さくない。 人材サービスのエン・ジャパンが 22 年に実施したアンケートでは、64% が「転勤は退職を考えるきっかけになる」と回答。 特に 20 - 30 代では 7 割以上が「きっかけになる」と答えた。 回答には「(結婚など)今後のライフイベントに影響が出る」などの意見があった。

法政大の武石恵美子教授(人的資源管理論)は「共働き世帯が増え、従業員の転勤への拒否感がこれまで以上に強くなってきている。 新たな土地での事業立ち上げといった仕事が多かった高度経済成長期とは異なり、転勤による人材育成効果もかつてほど見込めない」と指摘する。 「会社主導の転勤制度によって、求職者や従業員が離れていくリスクもある。 働く人の納得度を高めるため、企業は様々な工夫が求められる。」 (高橋諒子、asahi = 10-22-23)


ノーベル経済学賞の米教授、日本の父親の育児休業「最も寛容だが …」

今年のノーベル経済学賞を受賞した、労働市場での男女格差を研究する米ハーバード大学のクラウディア・ゴールディン教授が 9 日、同大で記者会見を開いた。 日本の労働政策について触れ、父親の育児休業制度を「世界で最も寛容だ」と評価した。 ただ、制度が利用されていないとして、社会の変化に企業側が追いついていない、との見方を示した。 ゴールディン氏は、労働市場における男女格差の原因についての包括的な研究が評価され、9 日にノーベル経済学賞を受賞した。

会見では韓国の低い出生率に関する質問に答えるなかで日本に触れた。 ゴールディン氏は、日本の父親の育児休業のしくみについて「最も優れた政策の一つ」としながらも、取得が進んでいないとの見方を示した。 その理由について「職場での影響があるからだ」とし、「非常に速く変化が起きているとすれば、職場がそれに追いついていないのも事実だ」と語った。 国連児童基金 (UNICEF) の 21 年の報告書では、日本の父親の育児休業制度は先進国を中心とした 41 カ国のうち 1 位だった。 休業中の有給を、完全賃金の週数に再計算した期間が最も長いことが評価された。 男性のための育休制度としては収入保障が手厚いとされる。 ただ、21 年度の取得率は 13.97% と国際的に低い。

ゴールディン氏はまた、日本の男女の賃金格差が大きい点に関しても質問を受けた。 「日本は本当に驚くべきことを成し遂げた」と語り、日本の女性の労働参加率がこの 10 - 15 年で改善した点を評価した。 そのうえで、日本の女性の労働時間はオランダと同様に短いと指摘し、「男性のように終身雇用されるような仕事に就いていない」と語った。 「女性を労働市場に参加させるだけでは十分ではない」とも述べた。 内閣府の資料によると、日本の女性就業者数は 3,002 万人で、12 年に比べ約 340 万人増えた。 一方で、男女賃金の格差(2021 年)は男性の労働者を 100 とした場合、女性は 77.5 で、経済協力開発機構 (OECD) の加盟国平均 (88.4) を大きく下回り、格差が大きい。 (ベルリン = 寺西和男、asahi = 10-10-23)


虐待防止条例改正案は「むちゃくちゃ」 PTA 協議会が反対署名活動

小学生以下の子どもを自宅や車内などに放置することを禁じる埼玉県虐待防止条例改正案について、さいたま市 PTA 協議会(市 P 協)が 6 日、県議会本会議で可決しないよう求める署名活動を始めた。 7 日には反対の意見書をホームページで公表。 「ほとんどの保護者が条例違反に当てはまってしまう」と危機感をあらわにしている。

条例改正案は、自民党県議団が 4 日に提出した。 罰則はないが、成人の「養護者」が 3 年生以下の子どもを「住居やその他の場所に残したまま外出することその他の放置」を禁じ、4 - 6 年生については努力義務とする内容。 県民には通報を義務づける。 6 日の委員会審議などでは、同県議団の議員が「子どもだけで公園で遊ばせたり登下校させたりする」、「100メートル先の近所の家に回覧板を届けるために一時外出する」といったことも禁じられるとの見解を示した。 他会派から批判が相次いだが、賛成多数で可決された。 13 日の本会議で採決が行われる予定で、可決されれば改正案が成立する。

保護者が追い詰められる

市 P 協は、さいたま市内の公立小中学校 158 校の PTA で構成。 意見書では、学童保育の整備などが不十分ななかで、共働きやひとり親の家庭が放課後や夏休み期間に子どもたちだけにしないようにするのは不可能だとし、「置き去りを回避するための環境作りが先行するべき」、「(改正案は)理想を語るだけで、保護者は心身ともに追い詰められてしまう」と指摘した。 また、「仕事への復帰や社会参画への意欲がそがれる。 保護者への監視を義務づけるような改正案は地域社会の分断を促す。」 「PTA と地域の方々は、安全に登下校でき、安心して地域で過ごせるように取り組んでいる。 ネグレクトや虐待を同列に扱うような改正案には賛同できない。」などと主張している。

市 P 協の郡島典幸会長は「子どものいる家庭の実情を分かっているとは思えないむちゃくちゃな条例案だ。 付き添いがなければ下校もできなくなってしまうのか。 現実的ではなく、理解に苦しむ。 このまま可決されることがないよう署名してほしい。」と話している。 署名はオンライン 署名サイト で受け付け中。 12 日に議会事務局と自民党県議団に提出したいと考えているという。 (小林未来、asahi = 10-7-23)


世界大学ランキング、8 年連続 1 位は? 日本勢最高は東大の 29 位

英国の教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」は 27 日、2024 年版の世界大学ランキングを発表した。 1 位は 8 年連続で英オックスフォード大で、2 位は米スタンフォード大(前年 3 位)、3 位は米マサチューセッツ工科大(同 5 位)だった。 日本の大学で最高だったのは 29 位の東大で、前年の 39 位から順位を上げた。

108 カ国・地域の 1,904 大学を調査対象とし、研究の環境や質、学生への教育など 5 分野の評価をもとに順位付けした。 東大が 20 位台となったのは 15 年以来。 日本勢は京大が 55 位と続き、東北大(130 位)、大阪大(175 位)、東京工業大(191 位)も上位 200 校に入った。 アジア最高は中国の清華大(12 位)で、北京大(14 位)が続いた。 トップ 15 校に中国勢が 2 校入るのは初という。 シンガポール国立大(19 位)も上位 20 校に入った。 トップ 10 は英国と米国の大学が占めた。 前年 2 位の米ハーバード大は 4 位、同 3 位の英ケンブリッジ大は 5 位に順位を下げた。 (伊藤弘毅、asahi = 9-28-23)


介護費用、最多の 11.1 兆円 サービス利用者も最多 2022 年度

介護保険制度で 2022 年度にかかった介護費用(介護給付費と自己負担)の総額は 11 兆 1,912 億円となり、過去最多を更新した。 前年度より約 1,621 億円 (1.5%) 増えた。 厚生労働省が 26 日に発表した。 介護保険制度は 00 年に始まったが、介護費用の総額は増加傾向にあり、18 年度に 10 兆円、21 年度に 11 兆円を突破。 22 年度は、01 年度(4 兆 3,783 億円)の約 2.6 倍となった。

サービスの利用者も前年度に比べて 14 万 2,700 人多い 652 万 4,400 人となり、過去最多だった。 うち介護度の軽い要支援 1、2 の人が受ける介護予防サービスの利用者は約 118 万 4,700 人(前年度比同 4 万 400 人増)、必要な介護の度合いが高い人(要介護 1 - 5)が受ける介護サービスの利用者は約 559 万 1,600 人(同 12 万 3 千人増)だった。 受給者 1 人あたりの費用は 17 万 5,500 円(23 年 4 月分)で、前年比 2,700 円増えた。 (関根慎一、asahi = 9-26-23)


待機児童数ワースト 2 位の埼玉県 想定上回る申請、保育士不足も影響

4 月 1 日現在で保育所などに入れなかった未就学児の待機児童が、埼玉県内では 347 人にのぼり、都道府県別では沖縄に次いで 2 番目に多かったことがわかった。 2019 年以降減り続けていたが 5 年ぶりに増加に転じており、県は、主に転入者が多い自治体などで想定以上の申し込みがあったためとみている。 こども家庭庁や県のまとめによると、県内の待機児童は 0 - 2 歳児が計 325 人で全体の 93.6% を占めている。 年齢別で最多は 1 歳児(270 人)だった。 県内 63 市町村のうち、待機児童がゼロだったのは 40 市町村で、前年より 4 市町多かった。 また、14 市町では前年より減った。 朝霞市(9 人)や三郷市(同)ではそれぞれ 10 人以上減少。 坂戸市とふじみ野市、三芳町などの計 6 市町はゼロになった。

県内で計 347 人、最多は所沢市

一方、待機児童がいたのは 23 市町。 転入者が多い県南部の自治体で目立っている。 このうち 11 市では前年より人数が増えた。 最も多かったのは所沢市(53 人)で、全国の市区町村別でも 4 番目の多さ。 前年からは 20 人増えた。 次いで八潮市の 39 人(前年比 25 人増)、北本市の 33 人(同 10 人増)などが多かった。 県少子政策課によると、コロナ禍での預け控えや受け皿となる施設を自治体が増やしたことなどから、県内の待機児童数は 19 年以降減り続けていたが、今年は想定以上の申し込みがあったとみている。(山田暢史、小林未来)

背景に申請増や保育士不足

待機児童数が県内最多だった所沢市。 担当者は、「ニーズの予測が難しかった」と話す。 市は 4 月に、0 - 2 歳児向けの保育施設を 1 カ所新設。 市全体の定員は昨年 4月時点より 37 人増えたが、それ以上に申請が来た。 子育て世代の転入が増えていることや、新型コロナが落ち着き会社に出勤する保護者が増えたことなどが要因とみられるという。 今後、待機児童が多い 1 歳児クラスの定員を増やすよう施設側と調整する。 八潮市は県内で 2 番目に多かったうえに、前年からの増加数では県内で 1 番目、全国の市区町村別でも 4 番目の多さだった。 市は今年度から 2 施設を新設し、計 38 人定員を増やした。 ただ、今年の申請数は前年より 50 人多かった。

また、保育士を十分集められなかったため、10 人の児童を受け入れられなかった。 県外の自治体に比べて保育士の収入が低いことが背景にあるとして、市は独自財源をあてる処遇改善策を 9 月議会に提案した。 可決されれば来年 1 月から、常勤の保育士 1 人あたり月額 3 万 - 5 万円の収入増になるという。 一方、東松山市は 21・22 年度はゼロだったが、今年は 20 人だった。 「予想以上に申請が増えた」という。

市では 20 - 21 年に、3 つの保育施設を新設したり市立保育園で保育スペースを広げたりして、計 129 人分の定員を増やしてきた。 2 年連続で待機児童ゼロだったため、今年度は施設の新設は計画していない。 来年以降に向けては、保育士の配置を国の基準よりも手厚くしている施設などについて、基準の範囲内で受け入れ人数を増やすよう働きかけるという。

保育の質にも目を向けて

一方、県内の保育士約 4,700 人が加入する県保育士会の若盛清美会長は「ただ受け皿の数だけ増やせばいいわけではない」と指摘。自宅から遠くない距離で、保育方針が合う園を選べる環境をつくることが望ましいとする。 「保育の質まで含めた全体的な議論が必要。 子どもが安全にのびのび生活するにはどうしたらよいかという視点を大切にしてほしい。」と話す。 (小林未来、asahi = 9-17-23)