兵庫県、守秘義務違反容疑で県警に告発状 週刊文春への情報提供者も

兵庫県の内部告発文書問題で、告発者の元西播磨県民局長(故人)の公用パソコンの中身とされる画像が SNS で拡散されたことを受け、情報漏洩の経緯などを調べた県の第三者調査委員会は 13 日、調査結果の一部を公表した。 誰が漏洩したかは特定に至らなかった。 県は同日、容疑者不詳のまま地方公務員法違反(守秘義務違反)容疑で県警に告発状を提出した。

県は第三者委に対し、県が告発者を元県民局長だと特定した過程などを報じた「週刊文春電子版」の記事についても調査を依頼していた。 県はこの件についても、容疑者不詳のまま同法違反容疑で県警に告発状を出した。 県警は今後、受理するかどうかを判断する。 週刊文春電子版の記事を調査対象としたことに、県議会や有識者から「報道の自由への理解を欠く」などと批判が上がっていた。 県の担当者はこの日の会見で「県職員は職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。 報道の自由に圧力をかける趣旨ではないが、県として秘密の漏洩を放置しておけない」と説明した。

第三者委は、政治団体「NHK から国民を守る党」党首の立花孝志氏らが昨年 11 月 29 日以降、元県民局長の公用パソコンに保存されていた私的情報とされるデータを SNS に投稿し、拡散されたことをきっかけに、斎藤元彦知事が設置を表明。今年 1 月に設置された。 報告書によると、調査対象は、@ 昨年 8 - 9 月に週刊文春電子版が配信した記事 6 本と、A 元県民局長の私的情報を示したとされる同年 11 - 12 月の SNS 投稿や動画計4件。

第三者委はまず、調査対象とした投稿や記事が、県が保有している情報と同じものだと内容などから確認した。 その上で、今回の情報流出が「公益通報」に当たるかどうかを検討した。 公益通報者保護法が公益通報の通報者に対する不利益な取り扱いを禁じているためだ。 同法が定める公益通報は、刑法など一部の法律で定められた罰則規定がある犯罪行為などに関する通報が対象となる。 第三者委は、@ も A もこの要件を満たさないとして、公益通報に該当しないと結論づけた。

その上で、関連する職員らのパソコン操作やメールの履歴などを調査。 セキュリティーシステムに脆弱性があり、誰から情報が漏洩したかは複数の可能性があり、特定できなかったとした。 一方で、システムの問題点にまだ十分に対応できていないとして、改善策が実施された後に詳しい調査結果を公表するとした。

「刑事告発はナンセンス。 知る権利を脅かす恐れ。」

鈴木秀美・国士舘大学特任教授(メディア法)の話 : 公務員は、職務上知り得た秘密には守秘義務がある。 県は、公益通報に当たらない限り守秘義務違反は許さないという強い姿勢を示すために刑事告発という形を取ったのだろう。 だが、県の対応は週刊文春など報道機関側の情報源を探るような行為で、取材・報道の自由に抵触する。 県警の捜査で誰が情報をもらしたのかはわかる可能性は低く、その意味で、県の刑事告発はナンセンスだと言える。

県が守秘義務違反を絶対に許さないという強い姿勢を示したことで、本来は県民に広く知らせるべき情報を報道機関に提供するのをためらう人が出てくるだろう。 国民の知る権利が脅かされる恐れがある。

「文春への情報提供、正当な内部告発では」

公益通報者保護法に詳しい奥山俊宏・上智大教授の話 : 公益通報者保護法の対象である法律違反についての通報に該当しないため、調査した情報提供がいずれも公益通報に当たらないという第三者委の結論は、その通りだと思う。 ただし、元副知事らによる元西播磨県民局長への事情聴取の記録を週刊文春へ提供したことは、公益通報者保護法ではなく懲戒権濫用(職員が懲戒処分されても、社会通念上相当と認められない場合などは無効とされること)などの労働法制の一般法理に基づいて、通報者が法的に保護されるべき正当な内部告発にみえる。

一方、立花孝志氏らへの情報提供については、「秘密」として保護されるべき元県民局長の「私的情報」の漏洩を伴っており、正当な内部告発とは到底いえないと考える。 (添田樹紀、甲斐江里子、島脇健史、asahi = 5-13-25)


兵庫知事選、「沈黙の 50 日」
神戸新聞社・前編集局長の後悔と覚悟

斎藤元彦知事が再選された昨年の兵庫県知事選挙で、地元の神戸新聞社は「偏向報道」などと激しい非難を浴びた。 いったい何が起きていたのか。 当時、編集局長として選挙報道を率いた小山優取締役 (57) がインタビューに答えた。

発端は、昨年 3 月の内部告発に対して斎藤知事が「うそ八百」と批判し、告発者を処分したことでした。 7 月に告発者が死亡し、副知事が辞職したことで、県政の混乱に注目が集まりました。

内部告発問題の本質は公益通報の通報者(告発者)を捜し、懲戒処分にしたことの是非です。 告発にあった知事への贈答品は他の自治体でも見聞きするものですし、パワハラも一つ一つは新聞 1 面をにぎわす内容とは違うかなと思っていました。 通報者が死亡して報道が過熱し、贈答品問題が「おねだり」としてワイドショーなどで何度も取り上げられるようになると、違和感も覚えました。 神戸新聞では「おねだり」という見出しや表現を原則として使いませんでした。

告発者捜しの非を認めない斎藤知事への批判の高まりを受け、県議会は昨年 9 月に全会一致で不信任を決議し、知事選になだれ込みました。

当時は不信任の先に衆院解散がちらついている状況でした。 政党間のつばぜり合いが始まり、どの会派が先に不信任決議案を出すかということに気を取られすぎていたように思います。 担当デスクには、辞職させる方向へ筆を走らせないように言った覚えがあります。 告発の真偽をただす百条委員会や第三者委員会の調査結果が出ていないのに、辞めるべきだと言うのはどうかと。

出直し知事選が決まったとき、斎藤氏が再選されると予想しましたか。

100% あり得ないと思っていました。 情勢調査でも前兵庫県尼崎市長の稲村和美さんに大きく差を開けられていました。 ただ、告示段階では斎藤さん批判一色ではなくなり、何かうごめいていると感じていました。 そして、投票直前の斎藤さんの街頭演説を聴きに行ったとき、私はその場に立っていられないほどのショックを受けたのです。 聴衆の方々が口々に通報者に関する真偽不明のプライバシー情報を話していたのです。 「知ってますか? オールドメディアには絶対に書いてないけど、ネットを見ればすぐにわかります。」、「あそこにオールドメディアの人たちがいます。 ウソばっかり流しているんですよ。」 そんな声があちこちから聞こえてきました。 私は何てことをしてしまったんだろうと思いました。

どういう意味ですか。

私は選挙報道で有権者の投票行動をゆがめてはならないと教え込まれてきました。 そのため、告示後は告発問題をあまり深く報じませんでした。 斎藤さんの失職直後に衆院選が始まったこともあり、投開票日までの約 50 日間、大量に放出していた情報の蛇口を急に閉じてしまったのです。 おそらく他のマスメディアもそうです。 真偽不明の通報者のプライバシー情報が流布されても否定せず、沈黙を貫いてしまいました。

その空間を埋め尽くしたのが SNS や動画投稿サイトの情報です。 その結果、真偽不明の情報が「真実」となり、神戸新聞は「偏向報道」と言われることになりました。 街頭で取材していた記者が「どうせろくでもない報道をするんだろう」と怒鳴られたり、SNS で記者の個人名がさらされて「偏向報道」と批判されたりしました。 本社前の街頭演説では数百人が集まり、不買運動の呼びかけもありました。

真偽不明の情報に反論しなかった理由は何ですか。

候補者の有利不利につながると思ったのです。 公職選挙法 148 条を勝手に拡大解釈していました。  148 条に「選挙の公正を害してはならない」とありますが、前提として「虚偽の事項を記載し、または事実を歪曲して記載する等表現の自由を乱用して」とあります。 そもそも「報道及び評論を掲載する自由を妨げるものではない」と書いてあるのです。 「公正」を口実に候補者との摩擦を恐れ、有権者に対して十分な情報を提供していなかったのではないか、と思うようになりました。 通報者のプライバシー情報は告発内容と関係がないので、今でも報じるべきではないと思っています。 しかし、「書かない理由」を書くことはできました。 選挙マニュアルを見直し、これからは「書かない理由を書く」ことを決めました。

記者や本社への人的・物的な被害や脅迫はありましたか。

それはありませんでした。 でも、怖いのはそこなんです。 SNS に書き込む行為はそこまで罪悪感が芽生えない。 悪意ある書き込みもゲーム感覚で拡散していく。 罪の意識のない人たちが、知らない間に記者を攻撃していたのです。 なぜそういうことができてしまうのか。 皮肉なことに「表現の自由」があるからなんです。 本来、表現の自由は国や権力に対して行使すべきものです。 その矛先が記者や一般市民に向けられている。 表現の自由を盾に表現の自由を攻撃しているのです。 そうした誹謗中傷を規制するという議論が出ています。 でも、表現の自由に規制をかけてはいけないと思いますし、その判断を国に委ねることはあまりにも歴史の教訓が生かされていない。 表現の自由にいま、見えない銃口を突きつけられているような気がします。

こうした社会情勢にどう向き合いますか。

いまは踏ん張りどころです。 表現の自由が規制される前に、ジャーナリズムが踏ん張らないといけません。 真偽不明の情報があふれかえる中で、我々にできることは「ファクト」を示すこと。 虚偽情報、悪意ある情報と闘うことです。 知事選を経て、ジャーナリズムを強く意識するようになりました。 我々のジャーナリズムとは何か。 何のための報道なのか。 改めて考えています。 (聞き手・小池淳、asahi = 5-3-25)


知事の違法指摘、兵庫・第三者委報告 「納得しなければ」大臣は肯定

兵庫県の斎藤元彦知事らが内部告発された問題を調べた第三者委員会が、斎藤知事らの対応の大半を公益通報者保護法違反とする報告書をまとめたことについて、同法を所管する消費者庁の伊東良孝担当相は 17 日、衆院消費者問題特別委員会で「一定の納得をしなければならない」と述べ、報告書の内容を政府として肯定する姿勢を示した。

同日の特別委で立憲民主・川内博史議員の質問に答えた。 伊東消費者相は答弁の中で、「県議会や第三者委員会などでかなり長時間にわたり審議されてきているものとして、解釈及び結論には一定の納得をしなければならないという思いをしている」と述べた。 第三者委は、元県民局長がマスコミなどに告発文書を送付後、斎藤知事側が通報者捜しなどをしたことについて、3 月にまとめた報告書で同法違反と指摘。 これに対し、斎藤知事は「誹謗中傷性の高い文書で、公益通報にあたらないという意見もある。 対応は適切だった。」と主張している。 (井上道夫、asahi = 4-17-25)


告発者特定「違法の可能性」、「文書は一定の事実」 兵庫百条委が決定

兵庫県の斎藤元彦知事らが内部告発された問題で、県議会調査特別委員会(百条委員会)は 4 日、調査報告書を全会一致で決定した。 元西播磨県民局長(故人)に対する「告発者捜し」や懲戒処分を「公益通報者保護法違反の可能性が高い」と結論づけ、内部告発判明後の斎藤知事らの一連の対応を「客観性、公平性を欠き、行政機関の対応としては大きな問題があった」と厳しく批判した。 報告書は 5 日の県議会本会議に提出する。

報告書や提言の内容に法的拘束力があるわけではない。 ただ、県議会議員は、知事と同様に選挙で選ばれている。 この「二元代表制」のもと、地方自治法に基づいて設置され、県議会議員が委員を務める百条委が下した判断は軽くない。 斎藤知事は内部告発の発覚から約 2 週間後の昨年 3 月下旬の記者会見で、元県民局長の告発について、調査をしていないのに「うそ八百」と批判。 告発者捜しなどの対応に関しても「問題ない」と繰り返し主張してきたが、百条委はいずれも受け入れなかった。

百条委は昨年 6 月に設置され、元県民局長が告発した斎藤知事らの「七つの疑惑」や、県の対応が公益通報制度に照らして適切だったか否かを調査してきた。 疑惑について斎藤知事は「誹謗中傷性が高く、真実相当性が認められない」と主張してきたが、報告書は総括として「一定の事実が確認された」と認定した。

百条委員会の調査の「総括」

県職員へのパワハラについては、執務室や出張先での厳しい叱責など告発どおりの出来事があったと指摘。 国のパワハラ防止指針をふまえると、「パワハラ行為といっても過言ではない言動があった」とし、知事ら県幹部への研修など「踏み込んだ対策」を求めた。 また、企業などからの贈答品の受け取りも問題があったとし、ルールの明確化を要請。 プロ野球優勝パレードをめぐる信用金庫からの補助金のキックバック疑惑は「違法性は認められない」と判断したが、県の補助金の拠出決定と、信金からの協賛金の時期が近接しており「不自然」と指摘。 この問題が刑事告発されたため、「捜査当局の対応を待ちたい」とした。

告発文書については「外部への公益通報に当たる可能性が高い」としたうえで、告発者捜しの是非を検討。 斎藤知事は昨年 3 月、匿名の告発文書を入手した直後、片山安孝・前副知事に「徹底調査」を指示して元県民局長と特定。 県は内部調査のみで 5 月に「(文書は)核心的部分が事実ではない」として、他の 3 件の不適切な行為も合わせて停職 3 カ月の懲戒処分とした。 こうした対応は「通報者がつぶされる事例と受け止められかねない」と言及した。

奥谷委員長「斎藤知事は説明責任果たして」

さらに、知事側近だった前総務部長が元県民局長の私的情報を漏洩した行為は「元県民局長をおとしめることによって、告発文書の信頼性を毀損しようとした。 告発者つぶしと言われかねない」と指摘。 第三者による調査結果は速やかに公表し、県として刑事告発も含め、適切かつ早急な対応をするよう提言した。 そもそも、元県民局長の懲戒処分の理由となった不適切な行為は、違法の可能性がある調査で公用パソコンを回収されたことで見つかった。 これを踏まえ、元県民局長の懲戒処分については、保護法の指針に基づき「適切な救済・回復の措置をとる必要がある」と対応を求めた。

百条委の調査途中だった昨年 9 月、県議会は全会一致で斎藤知事の不信任を可決し、失職。 11 月の知事選で斎藤知事は再選したが、選挙期間中から百条委メンバーに対する真偽不明の情報や中傷が SNS で拡散された。 その一人だった竹内英明・前県議は議員辞職後の今年 1 月、自殺とみられる形で死去した。 奥谷謙一委員長は「斎藤知事は報告書の内容を重く受け止め、兵庫県の混乱と分断を一刻も早く解消すべく、県民に対する説明責任を果たしてほしい」と述べた。 (添田樹紀、滝坪潤一、asahi = 3-4-25)


「維新全体のイメージ悪く」 兵庫の情報漏洩、後手に回り結局除名

兵庫県の斎藤元彦知事らが内部告発された問題をめぐり、日本維新の会所属の兵庫県議らが政治団体「NHK から国民を守る党」党首の立花孝志氏に情報を漏洩した問題で、維新の県組織・兵庫維新の会は 26 日、除名などの処分を決定した。 しかし、今回の処分をめぐる過程では、維新の後手の対応が目立っていた。 発表された処分の妥当性や、今後の対応次第では、維新はさらに批判を招きかねない状況になっている。

兵庫維新、岸口県議を除名 増山県議は離党勧告 2 人とも辞職は否定

吉村洋文代表からの指示を受け、事実関係の調査を行った岩谷良平幹事長の 19 日の会見。 立花氏に県議会調査特別委員会(百条委員会)メンバーの竹内英明・前県議(故人)を中傷する内容を含む文書を提供した岸口実県議から聞き取りを行った「心証」として「極端な話、除名処分とかに該当するような大きな違法行為があったわけではない」と説明。 「あくまでも政治倫理上問題がある軽率な行為だった」との受け止めで、最終的な処分の判断は兵庫維新に委ねるとしていた。

ところがその夜、増山誠県議がインターネット番組に出演し、非公開で行われた百条委の証人尋問を録音して立花氏に渡したことを自ら明らかにした。 これを受け、SNS などでも維新への批判がさらに殺到。 維新では、各地域の組織が処分を決める規約にはなっているが、事案の重大性から地方組織への「丸投げ」との指摘も相次いだ。 維新幹部は「今回の問題は兵庫にとどまらず、日本維新の大きなダメージになる」と焦りを隠さなかった。

事態を重く見た吉村代表は 25 日、増山氏が除名相当で検討されていることを明らかにし、「厳しい対応が必要だ。 これを許せば維新はルールを守らなくてもいいのかということになる」と強調。 増山氏が除名処分となった場合は「維新の公認で当選している以上、議員辞職するべきだ」と厳しく対応する姿勢をみせた。 さらに、党改革実行本部長を務める東徹衆院議員をトップとする調査委員会を設置すると表明。 兵庫維新の組織としてのガバナンスに疑義を示し、党本部として兵庫維新の調査を行い、関与も強める方針を打ち出したのだ。

岩谷氏も処分の発表に先立つ 26 日の定例会見の冒頭、「大変ご迷惑をおかけし、信頼を揺るがしたことに対してお詫びを申し上げたい」と謝罪。  「党本部としても厳しく対処するべきだと考えている」と態度を硬化させた。 今回の処分は、「軽率な行為」とされていた岸口氏が最も重い「除名」、県組織の党紀委員会が除名相当で意見していたとされる増山氏が 2 番目に重い「離党勧告」となった。 昨年 12 月に代表に就任した吉村氏をトップとする新執行部にとって、初めての大型国政選挙となる参院選を今夏に控えるが、今回の問題が一定の影響を及ぼすことは必至だ。

国政では、高校授業料無償化などを実現するための政策協議について 25 日に自民党、公明党との3党合意にこぎつけたばかり。 その成果をアピールすることで党の存在感を高めていきたい考えだった。 兵庫選挙区(改選数 3)では過去 2 回の参院選で維新の公認候補がトップ当選を重ねてきたが、大阪府内選出の衆院議員は「兵庫のせいで維新全体のイメージが悪くなってしまっている。 兵庫も落とすかもしれない。」と漏らす。 (野平悠一、asahi = 2-26-25)


維新、立花氏への情報提供を事実と認定 増山県議の離党届は受理せず

兵庫県議会の調査特別委員会(百条委員会)をめぐり、日本維新の会所属の県議が、政治団体「NHK から国民を守る党」党首の立花孝志氏へ百条委の非公開情報や真偽不明の文書を提供していた問題で、日本維新の会の岩谷良平幹事長は 23 日夜、神戸市内で記者会見した。

岩谷氏は、非公開の百条委証人尋問の音声データを提供した増山誠県議に対し「ルールを軽視した極めて不適切な行動があった」とした。 一部の百条委メンバーを「(内部告発問題の)黒幕」などと記した文書を提供した岸口実県議については「百条委員会副委員長としての自覚に欠けた行動があった」とした。 「日本維新の会として、深くお詫び申し上げる」と述べ、第三者調査委員会を立ち上げる考えを明らかにした。

維新は同日、増山氏と岸口氏による情報提供が事実と認める調査報告書を発表した。 その報告書を受けた地域政党・兵庫維新の会は党紀委員会を立ち上げ、調査を継続する。 情報提供した一人の増山誠県議は、日本維新の会に離党届を出したことを明らかにしたが、党として、受理はしていないという。 記者会見に同席した兵庫維新の会の金子道仁代表は会見で「彼らの行動によって再び県政に混乱を、停滞を招いたことに改めてお詫び申し上げる」と話した。 (谷辺晃子、添田樹紀、asahi = 2-23-25)


維新・増山県議「立花氏がデマ言ったと認識せず」 情報提供巡り会見

兵庫県議会の調査特別委員会(百条委員会)をめぐり、地域政党・兵庫維新の会の所属県議が政治団体「NHK から国民を守る党」党首の立花孝志氏への情報提供に関与していた問題で、当事者の増山誠、岸口実、白井孝明の 3 県議が 23 日、神戸市内で記者会見を開いた。

増山氏は会見で、自身から立花氏に連絡を取って知事選告示日の昨年 10 月 31 日にカラオケボックスで会ったことを認めた。 報道陣から「立花氏が拡散したことで混乱が生じた。 (誹謗中傷を受けた)県議が亡くなっている。」との質問には、「立花氏がデマを言っていたとは認識していない。 立花氏の情報によって県議が亡くなったという因果関係も私として確信を持っていない」と説明した。 一方で、百条委の非公開情報を外部に漏らした責任として、党本部に離党届を提出したことを明らかにした。

増山氏が提供したのは、昨年 10 月 25 日に非公開で開かれた片山安孝・前副知事の証人尋問の音声データ。  片山氏は尋問で、告発文書を作成した元西播磨県民局長には不正な目的があったと主張し、その情報が含まれるとされる県民局長の私的情報の内容を話し出したことで、百条委委員長の奥谷謙一県議から制止されたやりとりが残る。

維新・増山県議「立花氏に音声データを渡した」 非公開の百条委尋問

増山氏は会見で、片山氏の発言が「重要な要素であり、県民が知らないまま、選挙に突入するのはよくないと考えた」と話した。 百条委は、知事選(昨年 10 月31日告示、11 月 17 日投開票)への影響を考慮し、10 月の証人尋問は非公開とし、選挙後に録画を公開する方針を事前に決めていた。 県議会事務局によると、会議規則で秘密会の議事の情報漏洩は禁じられている。

また、元県民局長から私的情報に関わる資料に配慮するようにとの申し入れがあり、県情報公開条例では通常他人に知られたくないと認められるものは非公開情報とする規定もあることから、片山氏が私的情報に言及した部分は録画公開後も非公表と決めていた。 岸口氏は、県知事選の期間中に民間人と一緒に立花氏と会い、一部の百条委の委員らを「黒幕」などと主張する文書を渡したことが明らかになっている。 岸口氏は23日の会見で、「結論から言うと、その場に同席している以上、私から提供したものということで結構」と述べた。

白井氏は 21 日、選挙期間中などに立花氏からの電話を受けたことを認めた。 立花氏は、SNS で岸口氏とは別に増山氏からも文書情報を受け取り、その内容を白井氏に確認したとしている。 白井氏は23日の会見で、「斎藤知事だけが悪者のような報道をされていることがフェアではないと思った」と理由を説明した。 (asahi = 2-23-25)


告発した元県民局長の処分撤回を提言 兵庫百条委の報告書案が判明

兵庫県の斎藤元彦知事らが内部告発された問題で、県議会調査特別委員会(百条委員会)の調査報告書案が 18 日、判明した。 県関係者への取材でわかった。 報告書案によると、通報者を特定した斎藤知事らの初動は、公益通報者保護法に違反しているとし、通報者に対する不利益処分の撤回を提言。 斎藤知事が「真実相当性がない」と主張してきた告発文書の内容についても、パワハラ疑惑は「おおむね事実」と評価した。

斎藤知事らの疑惑は認定できるのか 兵庫百条委、慎重に報告書協議へ

百条委では報告書のとりまとめに向け、10 日から非公開の協議会で議論を開始。 今回の報告書案は、10 日までに集約した各会派の意見を反映した「統合案」として 18 日の協議会で示された。 県議会第 2 会派の維新の会は斎藤知事を擁護する立場からの意見を出していたが、今回の報告書案ではいずれも「意見」として付記されるにとどまった。 百条委として一定の方向性を示した形だが、維新の反発など、報告書の内容が固まる 3 月上旬まで曲折が予想される。

内部告発は 2024 年 3 月、県の元西播磨県民局長(故人)によって匿名でなされた。 一部の報道機関や県議に、斎藤知事ら県幹部の「七つの疑惑」を記した文書を配布した。 同 6 月に設置された百条委は、これらの疑惑の真偽と、元県民局長への対応が公益通報者保護法違反に当たるかどうかについて調べてきた。

「文書配布は不正な目的」とは判断できず

報告書案は、まず文書が公益通報に当たるかを検討。 片山安孝・前副知事らが主張している「文書配布は不正な目的」とは判断できず、外部への公益通報に当たると考えるべきだとした。 そのうえで、通報者を特定したことは、公益通報者保護法が定める体制整備義務に違反するとした。 斎藤知事は 24 年 3 月 20 日に文書を入手。 翌日には片山氏らに「徹底的な調査」を指示した。 文書の作成者を元県民局長と特定したうえで、同 27 日に退職人事を取り消し、同 5 月に文書は「核心部分が事実ではない」などと結論づけ、停職 3 カ月の懲戒処分とした。 報告書案では、これらの不利益処分を撤回し、元県民局長の名誉を回復するよう提言した。

前総務部長が元県民局長の私的情報を漏洩した疑惑についても「(第三者による)調査結果は速やかに公表し、県として刑事告発も含め、適切かつ早急な対応を求める」とした。 その一方、「下記の意見もある」と明示したうえで、「公益通報に該当するか強い疑念が生じたケースで、通報者の探索を行ったことはやむを得なかった」といった維新の意見も記された。

パワハラ疑惑「職員を萎縮させる」

パワハラ疑惑に関しては、証人尋問で確認された斎藤知事による職員への叱責や付箋を投げる行為について、「極めて理不尽」、「威圧的なもので、職員を萎縮させる」などとした。 そのうえで、パワハラの定義である、@ 優位性を背景に行われる、A 務の適正な範囲を超える、身体的もしくは精神的な苦痛を与えるか労働者の就業環境を害する、の全てに該当する可能性があると指摘。 平均的な労働者の感じ方からするとパワハラ行為であると見なされる可能性がある」と結論づけた。 一方、「パワハラの認定は高度な法的知識が必要で、司法の判断によるべきとの意見もある」など、維新提出の意見も付記された。

パレードは「捜査機関に調査ゆだねる」2023 年秋のプロ野球優勝パレードの寄付金集めで、金融機関に補助金をキックバックさせたという疑惑については、信用金庫への協賛金依頼と県の補助金増額の時期が近いことなどに疑念はあるが、証人は否定していると記載。 背任容疑での告発状が受理されており、捜査機関に詳細な調査を委ねるとした。

贈答品の受け取りは、斎藤知事が個人として消費したと捉えられても仕方のない行為もあったと言わざるを得ず、こうした行為が「おねだり」との臆測を呼んだと指摘。 「疑念を抱かせないためにルール作りが必要」とした。 県幹部を伴っての知事選の投票依頼、県幹部による知事選の事前運動、副知事による公益財団法人理事長に対する強いストレスと知事の政治資金パーティー券の購入の圧力については、いずれも認定はできないと評価した。 (添田樹紀、島脇健史、asahi = 2-18-25)


兵庫知事選 SNS 運用問題、公選法違反容疑で PR 会社関係先など捜索

兵庫県の斎藤元彦知事が再選された昨年 11 月の知事選を巡り、斎藤知事と兵庫県西宮市の PR 会社が公職選挙法違反容疑で告発されていた問題で、神戸地検と県警は 7 日、PR 会社「メルチュ(兵庫県西宮市)」の関係先などの家宅捜索を始めた。 捜査関係者への取材でわかった。 地検と県警は資料を押収して、違法性がなかったかなどについて慎重に判断する。

告発状によると、斎藤知事側がメルチュの社長に支払った 71 万 5 千円が、SNSなどの「戦略的広報業務」などの選挙運動に対する報酬だった疑いがあるとしている。 公選法では、候補者が当選を得るなどの目的で選挙運動者に金銭を渡したり(買収)、それを受け取ったりする行為(被買収)を原則、禁じている。 昨年 12 月に元東京地検検事の郷原信郎弁護士と神戸学院大の上脇博之教授が告発していた。

知事選をめぐっては、メルチュの社長が選挙後に投稿サイト「note」に「(知事選の)広報全般を任せていただいた」などと投稿し、違法性の可能性が SNS などで相次ぎ指摘された。 斎藤知事はこれまでの会見などで、会社側に支払った 71 万 5 千円は、選挙運動への対価ではなく、公選法で認められたポスター制作など 5 項目への対価だったとして、違法性を否定している。 SNS による選挙運動をめぐっては、今年 1 月に神戸市議が自身のユーチューブのアカウントで動画を投稿し、斎藤知事側の広報担当者から告示前に「PR 会社にお願いする形になった」とのメッセージを LINE で受け取ったことも明らかにしている。

郷原弁護士「捜査当局はしっかり分析を」

兵庫県の斎藤元彦知事が再選された昨年 11 月の知事選をめぐり、斎藤知事と兵庫県西宮市の PR 会社社長を公職選挙法違反(買収、被買収)容疑で告発した元検事の郷原信郎弁護士は取材に対し、「知事選で PR 会社がどんな戦略で、実際に何をやったのかについての証拠を収集するために捜索に踏み切ったのではないか」と分析する。 取材は、神戸地検と県警が 7 日、PR 会社の関係先などの家宅捜索を始めたことを受けたもの。 郷原氏はさらに、「捜索で新たな事実が出てくるかもしれない」と指摘。 「捜査当局は押収資料をしっかり分析してほしい」と話した。

斎藤知事の代理人弁護士「答えられない」

一方、斎藤知事の代理人を務める奥見司弁護士は取材に「捜査に関することは答えられない」と話した。 朝日新聞は PR 会社社長が投稿サイト「note」に知事選の経緯を掲載した昨年 11 月中旬以降、社長らにたびたび取材を申し込んできた。 PR 会社は当初、取材に応じる意向を示していたが、SNS 上で公選法違反疑惑の指摘が相次いだ 11 月下旬、「取材は一律にお断りする」と回答。 疑惑について尋ねると、「弁護士とともに回答を打ち合わせしている」としたが、その後、連絡は途絶えた。 (asahi = 2-7-25)


兵庫百条委が調査報告書素案を提示 疑惑の事実認定や評価は今後協議

兵庫県の斎藤元彦知事らのパワハラ疑惑などを内部告発した文書の真偽を調べる県議会の調査特別委員会(百条委員会)が 27 日開かれ、調査報告書の構成を示す素案が提示された。 今後は、認められる事実や評価について委員会としての判断を盛り込むために協議したうえで報告書を完成させ、2 月定例会での提出をめざす。

素案では、告発文書で指摘された斎藤知事のパワハラやプロ野球優勝パレードの寄付金を巡る補助金還流などの「七つの疑惑」と、告発者を特定するなどした公益通報者保護に関する項目について、斎藤知事や県幹部、職員らの証言を分類してまとめた。 この素案をもとに各会派や百条委が協議する予定で、告発文書が指摘した疑惑の問題点や違法性をどこまで認定できるかが今後の焦点となる。 (谷辺晃子、asahi = 1-27-25)


兵庫百条委、知事らの疑惑などで事実認定協議へ 証言整理ほぼ終える

兵庫県の斎藤元彦知事らを内部告発した文書を調べる県議会調査特別委員会(百条委員会)が、県議会 2 月定例会への提出を目指している調査報告書について、斎藤知事ら関係者の証言の整理をほぼ終えた。 今後は 27 日に開かれる百条委で示される試案をもとに事実認定や評価について協議する。 23 日、百条委の奥谷謙一委員長が報道陣の取材に明らかにした。

百条委は昨年 6 月に設置され、告発文書にあった斎藤知事のパワハラ疑惑などを調査してきた。 奥谷氏は「証言の整理はおおむねできた」と話した。 そして「知事が『記憶がない』『言った覚えがない』ということを委員会としてどのように考えていくのか。 まず事実認定をして、どのような評価ができるのか協議を重ねる」とした。

さらに秘密会での証言など「公開に適さないものもある」として、百条委とは別に「非公開で議論できる協議会などを設置して、円滑に報告書をとりまとめるための方法を考えていきたい」と話した。 そのうえで、22 日に一部の報道機関が報告書で「斎藤知事のパワハラと認定する方向で調整している」と報じたことに対し、奥谷氏は「パワハラ認定するかどうかとかそういった協議をこれから始める」と否定した。 (添田樹紀、asahi = 1-23-25)

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