米自動車労組スト、「25% 賃上げ」で終結 先進国で広がる労働運動

全米自動車労働組合 (UAW) は 30 日、米国の自動車大手 3 社に待遇改善を求めて行ってきたストライキを終えた。 各社から 4 年半で 25% という大幅な賃上げを引き出し、「勝利宣言」を出した。 物価高(インフレ)やコロナ禍などを背景に、先進国ではストなどの労働運動が広がりを見せている。 UAW はこの日、最後まで交渉していたゼネラル・モーターズ (GM) と新たな労働協約で暫定合意したと発表した。 25% の賃上げのほか、物価上昇に応じて賃金を上げる制度の復活や、年金の拡充などが盛り込まれた。 既にフォード・モーターや、クライスラーなどをブランドとして保有するステランティスとは同じような内容で暫定合意していた。

UAW は 40%の賃上げなどを求めて、9 月 15 日に史上初の 3 社同時ストを開始。 段階的に規模を広げ、終盤には利益率の高い大型車の工場を対象に加えて、会社側に圧力をかけた。 参加者は一時、3 社の組合員約 15 万人のうち 4.5 万人以上に膨らんだ。

UAWは、過去22年間の賃上げの合計より、今回の上げ幅の方が大きいと成果を強調。 ショーン・フェイン会長は 30 日に公開した動画で「アナリストや識者は、労組(の要求)は過大だと騒いでいたが、我々は記録的な労働協約を勝ち取るため、容赦なく戦い、達成した」と誇った。 新たな労働協約は今後、3 社それぞれでの組合員投票を経て、正式に合意する見通しだ。

一方、3 社にとっては、今回の賃上げによる人件費の負担増は大きい。 フォードは新車 1 台あたりの生産コストが最大 900 ドル(約 13.5 万円)上がると公表した。 米ミシガン大のエリック・ゴードン教授は「労組のないメーカーに対する競争力を失いかねない」と述べ、電気自動車 (EV) 専業のテスラなどとの競争に不利に働く可能性があるとした。 米国では、人工知能 (AI) の活用が進むことで職を失う不安をきっかけに、ハリウッドの全米映画俳優組合もストを続ける。

他の先進国でも大規模なストは増えている。 背景には、世界的なインフレで生活が厳しくなっていることなどがある。 インフレ率が昨年 10 月に 11.1% に達した英国では、民間より賃上げが遅れがちな公共部門を中心に、待遇改善を求めるストが起きた。 コロナ禍で人員が削減されたり、働き手が職場の衛生対策や在宅勤務などについて権利意識を高めたりしたことも、ストの増加に影響したとみられている。

労働者がストなどで働かなかった日数の合計を示す「労働損失日数」をみると、米国では今年は 1 - 9 月で 1,105 万日と、すでに 23 年ぶりの多さになっている。 英国でも昨年は 251 万日と 33 年ぶりの高水準で、今年はそれを超えるペースだ。 日本でも「そごう・西武」の労組が 8 月、旗艦店の西武池袋本店(東京)で大手百貨店としては 61 年ぶりとなるストに踏み切った。 親会社が百貨店事業を売却しようとしたことに対し、雇用維持などに懸念があるとして反発した。 (ニューヨーク = 真海喬生、ワシントン = 榊原謙、asahi = 10-31-23)


自衛隊とフィリピン軍、訓練円滑化へ 来月首脳会談、中国念頭に協力

日本とフィリピン両政府は、自衛隊とフィリピン軍が共同訓練する際の入国手続きなどを簡略化する「円滑化協定」の締結に向けた協議を進める方針を固めた。 岸田文雄首相が 11 月上旬にフィリピンを訪問して同国のマルコス大統領と会談し一致する。 同協定が締結されれば、日本が「準同盟」と位置づける豪州、英国に続き 3 カ国目となる。 複数の政府関係者が明らかにした。

円滑化協定を結ぶことで、自衛隊とフィリピン軍が共同訓練する際、相手国入国のためのビザ取得や、武器弾薬を持ち込む手続きなどが簡略化される。 すでに両国は人道支援や災害支援訓練で、同様に手続きを簡略化する取り決めに署名。 両国間の連携は軍事分野にも広がることになる。

両国が接近する背景には、ともに米国の同盟国であると同時に、東シナ海や南シナ海で海洋進出を強める中国の存在がある。 とくに南シナ海では、フィリピンが実効支配するアユンギン礁(中国名・仁愛礁)の沖合で、フィリピン船と中国船が衝突するなど緊張が続く。 岸田、マルコス両氏は会談で、中国を念頭に、東シナ海と南シナ海の状況に深刻な懸念を表明し、威圧的行為に反対する姿勢を打ち出す見通しだ。

日本はこれまでもフィリピンに対し、巡視船の供与や、警戒管制レーダーの提供などで支援してきた。 さらに、今年度創設の「政府安全保障能力強化支援 (OSA)」を活用し、防衛装備品などの無償供与も検討する。 日本はフィリピンとの円滑化協定の締結で両国関係を「準同盟」に近づけたうえで、米国も加えた日米比の連携で中国の海洋進出を抑えたい考えだ。 (田嶋慶彦、松山紫乃、西村圭史、asahi = 10-28-23)

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フィリピンが中国を「最も強い言葉で非難」 実効支配する海域で中国船と相次ぐ衝突

【バンコク = 藤川大樹】 フィリピン政府は 22 日、南シナ海で同国が実効支配するアユンギン礁(英語名セカンド・トーマス礁)に物資を運んでいた補給船と巡視船が、中国海警局の艦船などに衝突されたと発表した。 フィリピン政府は「(中国側の)危険で無責任、そして違法な行為を最も強い言葉で非難する」との声明を出した。

中国側「フィリピンが警告を無視し接近」

現地からの情報によると、中国海警局の艦船は 22 日朝、アユンギン礁の北東に約 13.5 カイリ(約 25 キロメートル)離れた海上で、フィリピン軍がチャーターした補給船に衝突した。 さらに別の海上では、中国の海上民兵が乗ったとみられる船舶が、補給船を護衛していたフィリピン沿岸警備隊の巡視船に体当たりしてきたという。 負傷者はいなかった。 衝突後、別の補給船がアユンギン礁に物資を届けた。 フィリピン軍は1999 年、同礁近くに揚陸艦を座礁させ、軍部隊が駐留して実効支配を続けている。

中国側は「フィリピン側が警告を無視して接近してきた」と主張している。 アユンギン礁周辺では中国海警局の艦船による妨害行為が相次ぐ。 今月 4 日にはフィリピン巡視船に約 1 メートルまで接近していた。 (東京新聞 = 10-22-23)


アフガニスタン地震で死者 2 千人超 西部ヘラート近郊、けが人も多数

アフガニスタンで実権を握るイスラム主義勢力タリバンの暫定政権は 8 日、前日に西部ヘラート州で起きた地震で、「少なくとも 2,053 人が死亡した」と発表した。 被災地には泥や岩などでできた倒壊しやすい家屋が多く、犠牲者はさらに増える可能性が高い。 米地質調査所 (USGS) によると、地震は 7 日午前 11 時(日本時間午後 3 時半)ごろ発生。 震源は西部の主要都市ヘラートから北西に約 35 キロ離れた地域で、イラン国境にほど近い。 マグニチュード (M) は 6.3、震源の深さは約 10 キロ。 その後も複数の強い揺れがあったという。

タリバンで災害事案を担当する報道官は 8 日昼、負傷者が約 9,240 人に上り、約 1,320 の家屋が倒壊したと説明した。 がれきの下敷きになっている人もいるという。 現地からの映像では、崩壊した建物の周りで避難する人々の様子が映し出されている。 ヘラートに住む旅行業のファリド・マジブールさん (39) は電話取材に対し、「これまでに感じたことのないような強い揺れだった。 怖くてずっと外に避難していた。」と語った。 ヘラート中心部にある一部の露店が損壊し、閉鎖する店もあるという。

国連人道問題調整事務所 (OCHA) によると、国連機関も緊急支援にあたっている。 ただ、タリバンが 2021 年 8 月に実権を握って以降、欧米の支援団体の多くが撤退。 昨年末以降はタリバンが NGO や国連で働く現地の女性の出勤を禁じるなどしており、救助・支援活動に支障が出るおそれもある。 アフガニスタンでは昨年 6 月にも東部ホースト州で M5.9 の地震があり、周辺地域で 1 千人以上が犠牲になった。 (ニューデリー・石原孝、asahi = 10-8-23)


インドネシアで高速鉄道の開通式 一帯一路の目玉、4 年遅れで開業へ

中国が融資し、インドネシアで建設が進んでいた東南アジア初の高速鉄道の開通式が 2 日に開かれた。 高速鉄道プロジェクトは中国と日本が競合し、巨大経済圏構想「一帯一路」の目玉と位置づけてきた中国が受注を勝ち取っていた。 だが用地取得が難航し、費用が膨らんだことなどから、当初の計画よりも、4 年遅れでの開業となる。

2 日、首都ジャカルタのハリム駅で開かれた式典に出席したジョコ大統領は、高速鉄道の名称を「Whoosh (ウーシュ)」と明らかにした。 時速 350 キロで車両が走る効果音をイメージし、インドネシア語の「時間の短縮、最適な運転、優れたシステム」の頭文字から取ったという。 ジョコ氏は「インフラ建設の経験は、将来によりよい結果をもたらすための経験と準備を与えてくれた」と話した。 インドネシア政府によると、10 月中旬までは試乗期間として、市民は無料で乗車できるという。 (asahi = 10-2-23)


原油高の勢いは失速へ、OPEC プラス以外からの供給拡大で - シティ

→ バレル 100 ドルを超える可能性はあるものの、持続不可能と指摘
→ OPEC 以外からの供給が今年は日量 180 万バレル増えると予想

米シティグループは原油相場について、減産を続けるサウジアラビアとロシア両国以外からの供給増加によって上昇の勢いは弱まるとの見方を示した。 エド・モース氏ら同行アナリストはリポートで、テクニカル要因と地政学的リスクで短期的には 1 バレル当たり 100 ドル超に上昇する可能性があるものの、「90 ドル水準は持続不可能に見える」とした。

原油先物市場では 18 日、国際的な指標である北海ブレント原油がバレル 95 ドルに向かって上昇。 世界的に石油消費が堅調となる中、「OPEC プラス」を主導するサウジとロシアの減産が引き続き意識されている。 一方でシティは、OPEC 以外からの供給が今年は日量 180 万バレル、来年はさらに同 100 万バレル増えると予想。 カナダ、ブラジル、アルゼンチン、ガイアナ、ノルウェーなどでの増産が見込まれるとしている。 (alex Longley、Bloomberg = 9-18-23)

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NY 原油 90 ドル台に上昇、10 カ月ぶり高値 需給逼迫の見方広がる

14 日の米ニューヨーク商業取引所で、原油価格の指標となる「米国産 WTI 原油」の先物価格が昨年 11 月以来、約 10 カ月ぶりに 1 バレル = 90ドル台を超えた。 需給が逼迫するとの見方から値上がりした。 原油価格の上昇は、日本でもガソリン価格や石油製品などの値上がりをもたらし、物価高(インフレ)につながる。 終値は、前日より 1.64ドル(1.85%)高い 1 バレル = 90.16 ドル。 サウジアラビアによる原油の自主減産とロシアの輸出制限がそれぞれ年末まで続く一方、世界の石油需要が底堅いことから、需給が引き締まるとの見方が拡大。 値上がりにつながっている。 WTI 原油の価格は 8 月下旬には 70 ドル台後半だったが、急速に上昇している。 (asahi = 9-15-23)


リビアの洪水死者「2 万人も」 国家分裂、支援妨げも

【カイロ = 久門武史】 北アフリカのリビアを襲った大雨による大洪水で、最も被害が大きい東部デルナのガイシー市長は 13 日、死者が 2 万人に達する恐れがあると述べた。 中東の衛星テレビ、アルアラビーヤに明らかにした。 リビアは東西の政治勢力に分かれた状態で、救助や支援受け入れの足かせになる恐れがある。 デルナでは道路が寸断され通信や電気の供給も途絶し、救助活動は難航している。 感染症が広がる懸念も出ている。 ロイター通信は 13 日、5,300 人以上の遺体を回収したとする地元当局者の話を伝えた。

地中海に面したデルナの人口は約10万人。 国際移住機関 (IOM) は 3 万人以上が家を失い避難を余儀なくされたとの見方を示した。 リビア東部では暴風雨でデルナを流れる川の上流にあるダム2 つが決壊。大量の水が 11 日にデルナを襲い、人々や建物をのみ込んだ。 世界気象機関 (WMO) は、地中海のハリケーンを指す「メディケーン」という低気圧による大雨が原因だとしている。 ギリシャで発生して大雨を降らせ、勢力を強めてリビアに上陸した。

国際社会は緊急支援物資や救助チームを派遣している。 隣国エジプトやトルコ、カタール、アラブ首長国連邦 (UAE) など中東諸国に加え、フランスやイタリア、ドイツ、米国などが物資を空輸したり、支援を申し出たりした。 リビアは 2011 年にカダフィ政権が崩壊後、内戦状態に陥った。 国際社会が承認する政権が西部の首都トリポリにある一方、東部には軍事組織が主導する政権がある。 対立する 2 つの政府が併存する分裂状態で、インフラの整備や更新は滞っている。複雑な政治情勢が支援の受け入れの妨げになる恐れがある。

大規模な自然災害が頻発する中、世界各地で紛争や不安定な政治情勢が被害の拡大につながっている。 2 月のトルコ・シリア地震で深刻な被害を受けたシリアでは、地震への初期対応が大幅に遅れた。 同国政府は 10 年以上続く内戦を受け、隣国トルコとの行き来を大幅に制限していた。 往来が許されていた道路が損傷し、人道支援部隊がシリアに入国できたのは地震発生 から 3 日後だったという。 世界銀行によると、復興に向けて今後 3 年間で 79 億ドル(約 1 兆 1,600 億円)が必要だが、シリア政府が充てた緊急予算の規模は約 700 万ドルにとどまる。 内戦の長期化で農業など主要産業が打撃を受け、復興に回す財政余力が乏しいためだ。

21 年 8 月の地震で大きな被害を受けたハイチでも同年 7 月に大統領が暗殺されるなど、政治情勢が混乱していた。 病院などの整備が遅れ、人的被害の拡大につながった。 パキスタンでは 22 年 6 月 - 10 月、大規模な洪水被害を受けて 1,700 人以上が死亡した。 カーン元首相が汚職の容疑で収監されるなど、政治対立が鮮明化したことで防災対策が遅れたとの指摘がある。 (nikkei = 9-14-23)

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リビア洪水、死者 5,200 人に 「ストーム・ダニエル」でダム決壊か

北アフリカのリビア東部で大雨によって起きた大規模な洪水で、地元当局の報道官は 12 日、死者数が、地中海沿いの都市デルナで 5,200 人に達したと発表した。 このうち 1,300 人は家族が身元を確認した後、すでに埋葬されたという。 現地メディアのリビアオブザーバーが伝えた。 被害が最も大きいとみられるデルナでは、ギリシャやトルコにも被害をもたらした「ストーム・ダニエル」と呼ばれる暴風雨により、市街地の上流にある二つのダムが決壊した。 リビアオブザーバーによると、地元当局の報道官はデルナだけで 5,200 人が死亡し、同市の死者数は最終的に 1 万人を超えるとの見通しを示したという。 報道官は、デルナには洪水で海に流された遺体が多数あると指摘。 「トルコやアラブ首長国連邦 (UAE)、エジプトから派遣された救援チームが、遺体を収容する作業に当たっている。」と述べた。

爆発音の後、3 階まで浸水

ロイター通信によると、デルナの住民たちは洪水の発生前、何かが爆発したような音が聞こえたと証言。 ダムが決壊した際の音とみられ、その後に建物への浸水が始まった。 上昇した水位が建物の 3 階にまで及んだケースもあったという。 また、中東カタールの衛星放送局アルジャジーラによると、デルナの市幹部は、川のそばに密集していた建物が洪水によって流されたことを被害拡大の背景に挙げた。

被害の拡大を受け、米国のバイデン大統領は 12 日、声明を発表した。 「愛する人を失った全ての家族に深い哀悼の意を表する」とし、救援団体に緊急の資金援助を行う一方、追加支援について国連などと調整していることを明らかにした。 また、リビアで活動する国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR) の X (旧ツイッター)も 12 日、被災者の当面のニーズに対応するため、5 千人分の毛布や衛生用品、ソーラーランプなどの緊急支援物資を輸送していると投稿した。 (テヘラン・佐藤達弥、asahi = 9-13-23)


モロッコ地震、4 カ国に限って救助隊を受け入れ 死者は 2,122 人に

北アフリカのモロッコ中部を 8 日に襲った地震への対応をめぐり、同国内務省は 10 日夜、アラブ首長国連邦、カタール、スペイン、英国の 4 カ国に限って救助隊を受け入れると声明で明らかにした。 救命率が下がる「発生後 72 時間」は 11 日夜に迫っている。 (asahi = 9-11-23)

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モロッコ地震、死者 820 人に … 世界遺産のマラケシュ旧市街ではモスクや塔が倒壊

【カイロ = 西田道成】 米地質調査所 (USGS) によると、北アフリカのモロッコで 8 日深夜(日本時間 9 日朝)、中部マラケシュの南西約 70km のアトラス山脈の山岳地帯を震源とするマグニチュード (M) 6.8 の地震があった。 AP 通信は、モロッコ内務省のまとめとして、少なくとも 820 人が死亡、672 人が負傷したと伝えた。 死傷者はさらに増える可能性がある。

モロッコ内務省によると、震源とみられる中部アル・ホウズ州やタルーダント州、マラケシュ県などで多数の死者が出ている。 国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されているマラケシュ旧市街でも建物倒壊などの被害が出ている。 ロイター通信 は、マラケシュ旧市街の建物やモスク(イスラム教礼拝所)のミナレット(塔)が倒壊したと報じた。 住民は「人々はおびえ、余震に備えて外に出ている」と話したという。 AFP 通信によると、マラケシュの病院には多くの負傷者が運ばれ、住民に献血を呼びかけている。 モロッコでは 2004 年にも北部を震源とする地震があり、600 人以上が死亡した。 (yomiuri = 9-9-23)


ヤワン高速鉄道が開通、東南アジア初の高速鉄道 - 中国メディア

中国国家鉄路集団(国鉄集団)によると、中国とインドネシアが共同建設したジャカルタとバンドンを結ぶヤワン高速鉄道が 7 日、開通した。 これにより二都市間の所要時間が 3 時間半から最速で 40 分まで短縮されるようになった。 10 月初めにはチケットの販売を開始し、正式な商業運営を開始させる計画だ。 これはインドネシアが高速鉄道時代に突入したことを意味しており、中国とインドネシアの「一帯一路」共同建設は重大な象徴的成果を挙げたことにもなる。 中国青年報が伝えた。

国鉄集団・国際部の責任者によると、ヤワン高速鉄道はインドネシアだけでなく、東南アジアでも初の高速鉄道で、全線で中国の技術と中国の基準が採用されている。 同高速鉄道はインドネシアの首都・ジャカルタと人気観光地のバンドンを結び、全長は 142.3 キロ、最高運行速度は 350 キロとなっている。

同責任者によると、ヤワン高速鉄道が開通した後、9 月 7 日から 9 月 30 日まではジャカルタのハリム駅とバンドンのテガルルアル駅の間を走行する。 ダイヤに基づき、1 日当たり旅客列車 8 本が運行することになっている。 沿線の市民はインドネシア中国高速鉄路 (KCIC) で予約し、無料で試乗することができる。 その後、10 月初めからチケットの販売と正式な商業運営が始まる予定となっている。 市場のニーズに合わせて、運行本数が決められることになっているため、沿線の市民の移動ニーズが満たされると期待されている。

ヤワン高速鉄道の沿線の地質や環境は複雑であるため、その建設の難易度は非常に高かった。 中国とインドネシアの建設を請け負った機関は、中国の高速鉄道建設の成功例を十分に参考にし、生態環境保護という理念を堅持し、実地調査に基づく設計と施工計画を強化し、ハイ基準でトンネル 13 本と橋 56 基を建設した。 同高速鉄道の建設の過程では、インドネシアで生産されたセメントなどの原材料が大量に使用されたため、現地の経済発展が促進された。 また、現地作業員が多数建設に携わったため、累計で 5 万 1,000 人の雇用が創出されたほか、地元従業員延べ 4 万 5,000 人がトレーニングを受けた。 (中国・人民網/Record China = 9-11-23)

〈編者注〉 日本が中国に競り負けたくだんの「ヤワン高速鉄道」です。 わずか 142.3km の鉄路建設にどれだけ費やしたか知りませんが、一日 8 本の運行でそう簡単に採算がとれるとは思えません。 現実的な日本のプレゼンテーションは、一見華やかな中国のものと比べて見すぼらしかったのでしょう。


アジアでコメ急騰、インドは白米を禁輸に 業者が買いだめに走るわけ

異常気象や紛争といった問題を背景に、コメの国際価格が高騰している。 主要輸出国の一部が実施する輸出制限も上昇に追い打ちをかけ、コメを主食とするアジア諸国では市民の食卓にも暗い影を落としている。

世界最大の輸出国、インドは

8 月末、インドの首都ニューデリーの商店では、1 キロ 33 ルピー(約 58 円)で白米が売られていた。 店主のスマット・プラカシュさん (72) は「3 カ月前は 27 ルピーだった。 仕入れ価格が上昇しており、値上げせざるを得なかった。」と嘆いた。 インドのコメの輸出量は、2022 年度に 2,100 万トン。 世界の 4 割近くを占める最大の輸出国だ。 ところが、輸出の急増や国内価格の上昇を受け、インド政府は規制をかけ始めた。 昨年 9 月、ウクライナ情勢などの影響で家畜のえさにも使われる砕け米の輸出量が、19 年比で 43 倍以上に膨れあがったとして禁輸すると発表。 その後も一部の地域を襲った豪雨などで収穫量が減るなどし、今年 7 月 20 日に高級品種を除く白米の輸出を禁止した。

食料問題などの担当省は「地政学的な動向やエルニーニョ現象、他のコメ生産国での異常気象などによる価格高騰によるものだ」と説明する。 経済成長が期待されるインドだが、世界銀行によると、貧困の目安となる 1 日 2.15 ドルを下回って生活する人は約 1 割に上る。 来年 4 月ごろに総選挙を控える政府は、急激な物価上昇を避けたいとの思惑がある。 ただ、インドのPTI通信によると、国際通貨基金(IMF)でチーフエコノミストを務めるグランシャ氏は「世界全体の食料価格に悪影響を与える恐れがある」として、禁輸の撤回を求めたという。

近隣国でも価格高騰の悪循環

輸出制限の影響は、近隣国にも及んでいる。 タイ米輸出協会によると、輸出が世界 2 位のタイでは、アジアのコメ価格の指標とされる白米が 8 月 30 日時点で 1 トンあたり 646 ドル(約 9 万 5 千円)と、08 年以来、15 年ぶりの高値に。 インドの禁輸措置で市場に出回る供給量に懸念が生じ、業者による買いだめが起きたことも背景にあるとみられる。 タイ政府は現在までに輸出制限措置を打ち出していないが、降雨量の減少に備え、コメ農家には少ない水量でも栽培できる作物への切り替えなどを奨励しているという。

「品質下げる客がほとんど」ミャンマー

年間約 200 万トンを輸出するミャンマーでも、異常気象の影響でコメの生産量が大幅に減り、コメの価格が上昇している。 さらに、近年の紛争で農地が減り、コメを作れなくなっていることも一因となっている。 「攻撃が激化し、村は畑を失った。 もうコメを作れる状況じゃない。」 北西部ザガイン管区の農家ニニトゥエさん (40) はため息をつく。 国軍は 21 年 2 月にクーデターで権力を掌握したのを機に、民主派勢力が拠点を置く同地域での弾圧を続けてきた。 ニニトゥエさんも 4 月、国軍による攻撃で家族 10 人で暮らす家や 13 エーカーの農地を失った。 今は竹で作った粗末な家に住み、攻撃があれば森に逃げ込む生活。 「村全体で約 700 戸あった家屋の半数が攻撃に巻きこまれ、コメの生産量も半減した」と話す。

最大都市ヤンゴン市内の米屋では 6 月以降、高品質のコメは現地単位で 1 ピー(約 2 キロ)あたり 5 千チャット(約 350 円)から 7 千チャットに、低品質のコメは 3 千チャットから 4 千チャットに値上げしたという。 店主の女性 (48) は「ミャンマー人の食事でコメは必須のため、販売量は減っていない。 ただ、品質を下げて安いコメを買い求める客がほとんどだ。」と話す。 BBC ビルマ語放送は 8 月下旬、現地通貨チャットの下落も相まって、クーデター前から平均価格は 3 倍近くに跳ね上がり、「過去 10 年で最高水準にある」と伝えた。

ミャンマーコメ連盟 (MRF) は価格上昇を抑えようと、9 月から約 2 カ月間の輸出制限を始めた。 幹部は「輸出を減らせば、買いだめしている業者から大量に放出される」とし、コメの国内流通量の安定化が図れると見込む。 (ニューデリー = 石原孝、ヤンゴン = 笠原真、asahi =9-7-23)


中国の新地図にアジア一斉反発 領有権主張「十段線」に拡大

【シンガポール = 森浩】 中国が発表した新しい地図に対し、アジアで非難が一斉に広がっている。 地図には、中国が南シナ海周辺の領有権主張に用いる独自の境界線「九段線」を拡大した「十段線」が記され、領有権を争うフィリピンやベトナムなどのほか、台湾も反発。 一方的な領有権の主張は、9 月上旬にアジアで相次ぎ開かれる国際会議で火種となる可能性がある。 地図は中国自然資源省が 8 月 28 日に公表した「2023 年版標準地図」。 南シナ海のほぼ全域の領有を主張しており、九段線を台湾東部に拡大した十段線が記されている。 また、ヒマラヤ地域では、中国が「南チベット」として領有権を主張するインド北東部のアルナチャルプラデシュ州も中国領として記載された。

地図を巡ってフィリピンは 31 日の声明で「中国の主権を正当化しようとする試みで、何の根拠もない」と反発。 南シナ海での中国の主権主張を退けた 16 年の仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)裁定の順守を求めた。 ベトナムも 31 日に「ベトナムの海域に対する主権、管轄権を侵害している」との声明を発表し、台湾の外交部(外務省に相当)報道官は「(台湾は)絶対に中国の一部ではない」と批判した。 マレーシアもボルネオ島(カリマンタン島)沖の自国の排他的経済水域 (EEZ) と重なる水域を中国領にしていると非難し、インドは「国境問題の解決を複雑にするだけだ」と中国の姿勢に反発した。

9 月上旬にはインドネシアで東南アジア諸国連合 (ASEAN) 関連首脳会議が、インドで 20 カ国・地域 (G20) 首脳会議が開催される。 中国と ASEAN は南シナ海での紛争防止を目指す「行動規範」策定作業を進めているが、今回の領有権の主張は協議に影響を与えそうだ。 インドは G20 議長国であり、会議直前の地図公開は円滑な議事進行の妨げとの受け止めが広がっている。 印紙ヒンドゥスタン・タイムズ(電子版)は「インドを敵対国として扱い、圧力をかける狙いは明確だ」と批判した。 中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は 31 日の記者会見で、地図に関して「関係方面が客観的で理性的に対応することを望む」と述べ、領有権主張を正当化した。 (sankei = 9-1-23)


「100 年で最も強力」ハリケーン上陸 町が水没 道路が川に … 停電 40 万軒 米フロリダ州

「過去 100 年で最も強力なハリケーンだ。」 現地当局の担当者が最大限に警戒を強めるハリケーンがアメリカ南部フロリダ州に上陸。 建物の倒壊や高潮被害などでおよそ 40 万世帯が停電する事態となっています。

「100 年で最も強力」ハリケーン上陸

「いつもは人でにぎわう場所が高潮に覆われています。 この海岸線を乗り越える波を見て下さい。 タンパを守るための防潮堤を波が乗り越えてきています。(CNN 気象予報士・デレク・バンダム氏)」

ハリケーン「イダリア」が 30 日、アメリカ南部フロリダ州に上陸しました。 その勢力は "過去最強クラス"。 各地で大きな被害をもたらしています。 CNN が中継をしていた時です。

「このハリケーンの深刻さは…、よくある光景ではありません。 ちょっと何をしているの? これはラッシュアワーの交通としては、実に新しいものですね。(CNN 気象予報士・デレク・バンダム氏)」

男性 2 人が乗っていたのはアヒルのゴムボートです。 いつもであれば、地元の人や観光客でにぎわうタンパ・ベイ。 海との境はなくなりました。

「午前 5 時半、海が完全に土手を乗り越えてきた。 あの通りは完全に水没し、こっちにも水が入ってきている。 町中がのみ込まれそうだ。(撮影者)」

嵐のなかにいるのは地元テレビ局の記者でしょうか、まともには立っていられないようです。

「『イダリア』はフロリダのこの地域を襲った最強のハリケーンです。 ここに上陸するのは 100 年以上ぶりです。(緊急事態管理庁 クリスウェル長官)」

勢力は一時、5 段階で上から 2 番目のカテゴリー 4 にまで発達。 上陸時にはカテゴリー 3 に下がったものの、最大瞬間風速は秒速およそ 55 メートルに達しました。 CNN によると、この地域を直撃したハリケーンとしては過去 125 年間で最大規模です。 その巨大な姿は国際宇宙ステーションからもはっきりと確認できました。 一方、アメリカ海洋大気庁の気象衛星が捉えた画像。 雲が渦を巻くなか、複数の場所で雷が発生していることが見てとれます。

町が水没 道路が川に …

住民がカヤックを漕ぐ目の前に立つのは道路標識。 川のように見えますが、普段ここは道路です。 フロリダ州北西部の湾岸では 3 メートル近い高潮が確認され、川の水位はわずか 2 時間で 3 メートルほど上昇しました。

「目を疑うような洪水だ。 通りは完全に水没した。 まだ車を運転しようとしている人もいるが危険だ。 やめたほうがいい。(地元の住民)」

防犯カメラが捉えた映像です。 とめどなく押し寄せる水に徐々に家は崩れ落ち、ついにはのみ込まれました。 浸水被害は数千戸。 洪水の被害に遭った町では住宅火災も発生しました。 電力インフラも被害を受け、40 万軒以上で停電も起きました。

「屋根が私と子どもたち 3 人、そして孫の上に落ちてきました。 娘は妊娠 5 カ月です。 屋根が落ちてきた時ベッドの横に寝ていましたが、何とか助け出せました。(住民)」

海に近いこのエリアでは至る所で建物が破壊されていました。

「すごいね、まだ家が残っていた。 でも多くの家がなくなって、色んなものが散乱している。(住民)」

アメリカメディアによると、少なくとも男性 2 人が死亡しました。 それぞれ車を運転中に単独事故を起こしたといいます。 バイデン大統領は、ホワイトハウスで世界が気候危機に直面していると強調しました。

「気候変動がもたらす影響は誰も否定できないでしょう。 歴史的規模の洪水、よりひどい干ばつ、異常な暑さ、大規模な山火事による被害。 これまで見たことのないようなレベルです。(アメリカ・バイデン大統領)」

「イダリア」は 31 日、アメリカ南東部沿岸を通過する見込みです。 (テレ朝 = 8-31-23)


台湾総統選の与党候補「中国、選挙に介入しようとしている」

来年 1 月の台湾総統選に与党・民進党の公認で立候補する頼清徳(ライチントー)副総統が 25 日、駐台湾の外国メディアとの記者会見に応じた。 「中国は様々な手段で次期総統選に介入しようとしており、影響を受ければ台湾の民主主義は破壊される」と述べ、警鐘を鳴らした。 頼氏は当選した場合に中国の軍事圧力にどう応じるかを問われ、「両岸(中台)の緊張は台湾でなく中国に問題がある」と指摘。 台湾の有権者に向け、「民主主義の価値を守る候補を選んで欲しい」と訴えた。 さらに、中台が「一つの中国」に属するという中国の主張を拒む姿勢を改めて示し、「(台湾の)主権が守られる状況の下で、対中対話と交流を探りたい」とした。 断絶中の対話再開への具体案は示さなかった。

また、対日関係について、「総統になれば、相互の協力関係を深め、人的な交流拡大に努める」とした。 一方で、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出をめぐり、日本産の水産物が中国政府から全面禁輸されたことへの見方を問われ、「日本政府が関連データを公開し、日本国民にも世界にも(安全性を)信用してもらうことが最重要だ」とした。 シンクタンク「台湾民意基金会」の総統選候補に対する 8 月の支持率調査で、頼氏は 43.4% と、2 位の台湾民衆党、柯文哲(コーウェンチョー)前台北市長 (26.6%)、3 位の国民党、侯友宜(ホウユーイー)新北市長 (13.6%) をリードしている。 (台北 = 石田耕一郎、asahi = 8-25-23)


日米韓首脳が会談 「キャンプデービッド原則」発表

日米韓 3 カ国の首脳は、アメリカ大統領専用の別荘で会談しました。 先ほど、そろって共同会見を行い、新たに「キャンプデービッド原則」を打ち出しました。

「(キャンプデービッドの)歴史に新たな 1 ページを刻むことを大変光栄に思っています。 本日、ここに我々 3 人は、日米韓パートナーシップの新時代を開いていく決意を示します。(岸田総理大臣)」

3 カ国の首脳は「キャンプ・デービッド原則」として、仮に政権が代わろうとも安全保障分野での協力関係を長期的に継続する方針を打ち出しました。 また、3 カ国の枠組みをインド太平洋地域に広げ、これまで中心的なテーマだった北朝鮮問題に加えて、名指しは避けつつも中国などを念頭に安全保障上の脅威があれば迅速に協議するとしています。  経済安全保障も推進し、「サプライチェーンの早期警戒システム」を試験的に運用開始する考えを示しました。 (テレ朝 = 8-19-23)

◇ ◇ ◇

日米韓首脳、毎年会談で合意 中国の「危険な行動」非難

[キャンプデービッド(米メリーランド州)] 日米韓首脳は 18 日、米ワシントン近郊メリーランド州の山荘「キャンプデービッド」で会談を実施し、共同声明で中国の南シナ海における「危険で攻撃的な行動」をこれまでで最も強く非難した。 また、防衛、経済関係の深化でも合意した。 バイデン米大統領はこの日、岸田文雄首相と韓国の尹錫悦大統領と 3 カ国首脳会談を実施。 3 カ国は会談後に発表した共同声明で、危機の際に速やかに協議を行い、共通の利益に影響を及ぼす地域の課題、挑発、脅威への対応を調整すると確約した。

また「このほど見られている中国の南シナ海における違法な海洋領有権を主張する危険で攻撃的な行動について、インド太平洋海域における現状を一方的に変更しようとするいかなる試みにも強く反対する」と非難した。 日米韓はこのほか、3 カ国の軍事訓練を毎年実施することや、2023 年末までに北朝鮮のミサイル発射に関する情報をリアルタイムで共有できるようにすることも確約。 日米韓首脳会談を毎年開催することでも合意した。 ロシアによるウクライナ侵攻については、ウクライナへの支援を継続し、ロシアに対する強力かつ協調的な制裁を維持することで合意。 ロシア産エネルギーへの依存を一段と低下させることでも見解が一致した。

3 カ国の新時代

今回の 3 カ国首脳会議は、関係がぎくしゃくしたこともある日韓にとって重要な一歩となった。バイデン大統領は、木々の緑に囲まれたキャンプデービッドはこれまでも「新たな始まりと新たな可能性」を象徴する場所だったと指摘。 記者会見で「素晴らしい会談だった」と述べた。 保養地のリラックスした雰囲気にふさわしく、3 首脳はノーネクタイで会議に臨んだ。 バイデン氏は岸田首相と尹大統領との共同記者会見で、和解を追求する岸田氏と尹氏の政治的勇気を称えた上で、両首脳は「世界が変曲点にあることを理解している。われわれは新たな方法でリードし、協力し、共に立ち上がらなくてはならない」と述べた。

その上で「重要なことは、われわれ 3 カ国が、どの国に対する脅威であれ、その発生源が何であれ、迅速に協議すると確約したということだ。 この地域で危機が発生した場合、あるいはいずれかの国に影響が及んだ場合は、常に情報を共有し、対応を調整するためのホットラインを設ける」と述べ、「共に国際法のために立ち上がり、『強制』に対抗していく」と語った。 岸田首相は、東シナ海と南シナ海で力によって現状を変えようとする一方的な試みが続いていると指摘。 ただ、中国は名指ししなかった。 また、北朝鮮の核とミサイルの脅威が増大しているとも述べた。 (Reuters = 8-19-23)


マウイ島山火事、死者 110 人に 消火活動続く

マウイ島ラハイナの惨事

記事コピー (8-10-23〜8-17-23)


TSMC、ドイツで工場新設を発表 「先端技術は台湾に」が鮮明に

半導体の受託生産で世界最大手の「台湾積体電路製造 (TSMC)」は 8 日、ドイツに子会社を設け、欧州初の製造工場を建設すると発表した。 最大約 39 億ドル(約 5,547 億円)を投資する方針という。 同社の海外工場は米国、中国、日本に次ぐ 4 カ所目となる。 TSMC は世界の最先端半導体の 9 割超を製造するほか、各国の電機、自動車メーカーなどから製造を請け負う半導体の世界シェアでも 5 割超を占める。 ドイツ政府はコロナ禍で深刻化した半導体の供給停滞を受け、台湾側に増産を要請したほか、自国での生産体制の構築を急いでいた。

半導体は各国が欲しがる「戦略物資」

工場はドイツ東部ドレスデンに設け、2027 年末までの生産開始をめざす。 ドイツ自動車部品大手ボッシュなど欧州企業の 3 社も一部出資し、総投資額は 100 億ユーロ(約 1 兆 5,700 億円)を超えるという。 独経済紙ハンデルスブラットによると、このうち 50 億ユーロはドイツ政府が支援する。 半導体は家電や自動車のほか、ミサイルなどの軍需産業にも不可欠で、各国が経済安全保障の側面から確保を急ぐ戦略物資だ。

TSMC は近年、各国政府の要請を受け、現地工場建設を決めてきた。 一方で、7 月には本社のある台湾・新竹で、延べ 30 万平方メートルの研究開発センターを始動させており、世界をリードする製造技術については台湾内にとどめる考えを鮮明にしている。 ドイツ政府は半導体工場の国内誘致に向け、今後数年間で約 200 億ユーロ(約 3 兆 1,400 億円)の公的資金を投入する計画だ。 政府の支援策を受けて、ドイツでは半導体工場の建設が相次いでいる。

米半導体大手インテルが 6 月、東部マクデブルクに最先端の半導体工場を建設することでドイツ政府と同意したと発表。 独半導体大手のインフィニオン・テクノロジーズも 5 月、ドレスデンで半導体工場を着工した。 いずれの工場も、欧州連合 (EU) の行政機関である欧州委員会の承認を経て、公的支援を受ける見通しだ。 (台北 = 石田耕一郎、ベルリン = 寺西和男、asahi = 8-8-23)