延々と連なる雨雲の帯 東北は雨が続き大雨災害の拡大に警戒

今日 10 日も東北北部では局地的に雨が強まっています。 すでに浸水など被害が出ている青森県津軽の雨は小康状態になっているものの、再び強まるおそれがあり、引き続き警戒が必要です。 気象衛星ひまわり 8 号による雲画像を見ると、前線に伴う雲の帯は東北北部から日本海、朝鮮半島を通って中国大陸まで延々と連なっています。 前線に向かって太平洋高気圧の縁を周るように湿った空気が継続的に供給されているため、雲が発達している状況です。

特に上空の気圧の谷に対応した部分で雲の発達は顕著になっていて、こうした雲が通過するタイミングで東北では雨が強まるとみられます。 雨が小康状態になっているため、岩木川など青森県内の河川の水位は昨日に比べて低下しています。 それでも氾濫危険水位を超えている所があるなど、増水した状態はすぐには解消しません。 再び雨が強まると水位が上昇に転じますので、全く油断はできない状況です。

この後は再び雨が強まり、夜にかけては断続的に青森県付近を活発な雨雲が通過するとみられます。 1 時間に 50mm を超えるような非常に激しい雨が降り、河川の増水や氾濫のおそれがあります。 また、降り始めからの雨量は多い所で 300mm 以上とすでに記録的な大雨になり、土砂災害の危険性も高まっていますので、厳重な警戒が必要です。

東北北部の大雨は少なくとも 12 日(金)にかけて断続的に続く可能性が高い状況です。 13 - 14 日は一旦、小康状態になりますが、来週月曜日、15日からは再度、雨が強まるとみられます。 青森県だけでなく、秋田県や岩手県を含む東北北部の広い範囲で雨量が増加し、大きな災害につながるような大雨になるおそれがあります。 週末以降の雨の予測に関しては、やや不確実性が高くなっていますので、できるだけ最新の情報を確認の上、大雨災害への備えや避難などを進めるようにしてください。 (WeatherNews = 8-10-22)

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前線や低気圧の影響で東北・北陸、17 河川氾濫

前線や低気圧の影響で山形県や新潟県などでは 3 日から記録的な大雨に見舞われ、4 日夜時点で、岩手県と山形県で計 2 人の安否がわからないままとなっている。 4 日は石川県で大雨が降り続き、県南部を流れる梯川(かけはしがわ)が氾濫した。 岩手県によると、雨がやんだ 3 日夕に様子を確認しようと外出した一戸町宇別の男性 (78) が行方不明という。 4 日午後 3 時時点の山形県のまとめでは、飯豊町で行方不明者が 1 人いるとしている。

新潟県村上市小岩内では住宅 4 軒が土砂崩れに巻き込まれ、80 代男性が足の骨が折れるけがをした。 同市では荒川地区全域が浸水。 陸上自衛隊員らがボートなどで住民を救助した。 国土交通省によると 4 日午後 1 時時点で青森、秋田、山形、石川、福井の 5 県の計 17 河川で氾濫を確認した。 気象庁は山形県の 6 市町に加え、4 日朝までに新潟県の関川村、村上市、胎内市に大雨特別警報(土砂災害、浸水害)を発表したが、昼前までに大雨警報に切り替えた。 4 日は石川県などで 1 時間に 100 ミリ以上の猛烈な雨を観測。 福井県の嶺北では線状降水帯が確認された。 北陸などでは 5 日朝にかけて激しい雨となる所がある。 (asahi = 8-5-22)

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青森など 4 県で線状降水帯 猛烈な雨、北海道新幹線駅が浸水

前線や低気圧の影響で 3 日は青森県や秋田県で記録的な大雨となった。 午前中に青森県の津軽、秋田県の沿岸や内陸では線状降水帯の形成が確認され、気象庁は「顕著な大雨情報」を発表して災害への厳重警戒と安全確保を呼びかけた。 山形、新潟両県にも線状降水帯が発生した。 警察によると、正午現在、人的被害の情報はない。 JR 北海道によると、青森県今別町の北海道新幹線奥津軽いまべつ駅の 1 階部分が浸水した。 新幹線の運行に影響はないが、駅に出入りできず、利用再開の見通しは立っていないという。 (kyodo = 8-3-22)


蔵王風力発電、事業中止 関西電力「配慮足りず、反省」

本県(山形)と宮城県にまたがる蔵王山に最大 23 基の発電用大型風車を設置する計画を進めてきた関西電力は 29 日、事業を中止すると発表した。 風車による景観への影響や自然保護の観点から、両県の自治体や地元住民らは反対を表明しており、蔵王を代表する御釜の風景が守られたことに胸をなで下ろした。 関電は「計画の見直しを検討した結果、環境への配慮と事業性の両立が難しいと判断した」とコメント。 「蔵王連峰に対する畏敬の念を十分に認識できていなかった。 配慮が足りず不信感を招いたことについて反省したい。」とした。

今年 5 月、関電は宮城県川崎町西部の山間部に最大 23 基の風車を設置する開発計画を明らかにした。 計画段階環境配慮書を関係自治体に送り、意見を求めたが、地元自治体や観光団体、議会などが相次いで反対の意を表明。 山形市は今月、これらの意見を踏まえ、眺望景観が著しく妨げられるなどとして「本事業は進めるべきではない」との意見をまとめ、県に提出していた。 関電によると、各地で開催した住民説明会では、景観への配慮を懸念する意見が多かったという。 配慮書に関する両県知事からの意見はまだ受け取っていなかった。 今後、事業廃止に関する通知書を経済産業大臣や各知事に提出する。

当初から建設に反対してきた蔵王温泉観光協会の伊藤八右衛門会長は「白紙撤回となり、良かった。 自然豊かな蔵王に風車は似合わない。 いろいろな人の協力のおかげだ。」と安心した様子だった。 吉村美栄子知事は「地域の人々の蔵王山への強い思いを理解してもらえたと受け止めている」とコメント。 佐藤孝弘山形市長は「適切な判断をされたと考えている」とした。 関電は北海道の 4 地域で計画していた事業のうち、伊達市や千歳市などの 1 地域の事業も断念した。 (山形新聞 = 7-30-22)


鹿児島・桜島で噴火、気象庁が警戒レベル 5 に引き上げ

24 日午後 8 時 5 分ごろ、桜島(鹿児島県)の南岳で爆発的な噴火が発生した。 大きな噴石が火口から約 2.5 キロに飛散した。 同庁は噴火警戒レベルを 3 (入山規制)から最も高い 5 (避難)に引き上げ、火口から約 3 キロで噴火に伴う大きな噴石に対し、避難を含む厳重な警戒を呼びかけている。 また火口から約2キロに火砕流が達する可能性があるとしている。 (asahi = 7-24-22)


群馬県・伊勢崎で今年 2 度目の 40℃ 観測 熱中症に最大限の警戒を

今日 6 月 29 日(水)、群馬県伊勢崎市で今年2度目となる 40℃ に到達しました。 体温を大きく上回る災害級の暑さで、熱中症に最大限の警戒が必要です。 関東は夏の高気圧にしっかりと覆われて、朝から強い日差しが照りつけています。 上空 1,500m 付近には +24 - 27℃ という非常に暖かい空気も広がり、群馬県伊勢崎市では 14 時 18 分に 40.0℃ を観測しました。 伊勢崎市は先日 25 日(土)に今年全国で初めての 40℃ 台を記録しています。 また、6 月に 2 回 40℃ 台を観測するのは国内観測史上初めてです。

明日も今日と同じような暑さが続く

明日 30 日(木)も気圧配置に大きな変化はなく、関東の内陸部では同等の暑さが予想されます。 内陸部だけでなく、東京も猛暑日が続く予想です。 (WeatherNews = 6-29-22)

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群馬・伊勢崎で 40.2 度 6 月の 40 度超えは観測史上初

本州付近は 25 日、高気圧に覆われ、各地で厳しい暑さとなった。 気象庁によると、群馬県伊勢崎市では午後 2 時 56 分、40.2 度を記録した。 6 月に 40 度を超えたのは観測史上初めて。 また、東京都で今年初の猛暑日となり、千代田区では午前中に気温が 35.4 度に達した。 午後には青梅市で 38.3 度、八王子市で 38.1 度を記録した。 (大野友嘉子、高島博之、mainichi = 6-25-22)


北海道 明日にかけて 200 ミリ近い大雨の恐れ 回復はいつ?

今日(28 日)から明日(29 日)にかけて、大陸の低気圧からのびる前線が北海道付近に停滞する影響で、道内では大雨が予想されています。 どの地域で、どのくらい降るのか。 いつ天気が回復するのか、詳しく解説します。

雨のピークはこれから

道内では、道南方面などで雨雲がかかり始めており、渡島半島周辺ではすでに雨脚の強まっている所があります。 今後、雨雲はその他の地域にも次第に広がり、夜には全道的に雨となりそうです。 今日の雨の中心は道南方面や後志地方周辺で、雷を伴って雨脚が強まり、局地的には 1 時間に 30 ミリから 40 ミリと、傘を差していても濡れてしまうくらいの激しい雨となる見込みです。 明日も各地で断続的に雨となります。 朝までは日本海側やオホーツク海側が雨の中心となり、日中以降は道南方面の山沿いの地域に雨の中心が移る予想です。

明日正午までの 24 時間で予想される降水量は多い所で、日本海側で 180 ミリ、太平洋側で 150 ミリ、オホーツク海側で 120 ミリとなっています。 その後、明日正午から 30 日の正午にかけての 2 4時間で降る雨の量は、日本海側や太平洋側の多い所で 50 ミリから 100 ミリと、さらに雨量が増える恐れがあります。 道央や道南方面では明日にかけて、大雨による土砂災害に警戒が必要です。 また、全道広い範囲で、低い土地の浸水や河川の増水などにも十分注意してください。 なお、低気圧や前線の動向によっては、警報級の大雨となる恐れもあります。 最新の気象情報や注意報・警報などを確認するようにしてください。

回復はいつ?

早い所では、日本海側やオホーツク海側などで明日の夕方以降に雨のやんでくる所が出てくるでしょう。 30 日になると、停滞していた前線は南下し、北海道の北から高気圧が張り出してくる予想となっています。 朝には全道広い範囲で雨はおさまりますが、道南方面などでは日中以降も弱い雨が降ったりやんだりしそうです。 なお、大雨になった地域では、雨が弱まったり、雨がやんだ後も、傾斜地や川の近く、用水路など危険な場所には近づかないようにしてください。 (tenki.jp = 6-28-22)


フロントは鉄道の無人駅、客室は街中に 広がる「分散型ホテル」

フロントはひとつで、客室は街中にいくつか点在する。 そんな「分散型ホテル」と呼ばれる宿泊施設が、全国で増えている。 観光客に街を周遊してもらって消費をうながすことができるため、地域経済を底上げする新たな業態として期待も大きい。 城下町や商店街のほか、ローカル線の駅周辺でも開発計画が立ち上がっている。

愛媛県西部の大洲市で 2020 年 7 月に開業した「NIPPONIA HOTEL 大洲城下町」。 大洲城のまわりに点在する町屋や古民家を「ひとつのホテル」として運営している。 今年 4 月に 5 棟 8 室が新たに加わり、全部で 22 棟 28 室になった。 1 棟貸しの建物も 9 棟あり、ほかの宿泊者との接触を避けられる。 開発に携わる KITA によると、稼働率は開業以来、目標の 3 - 4 割を保っている。 宿泊単価は 2 万 - 4 万円という。

フロント棟から最も遠い客室までは約 500 メートルある。 その道中で、地域の特産品などを買う人も目立つ。 ホテルではチェックインの時に、宿泊者全員に「パスポート」を渡す。 地域の飲食店などの情報が書かれていて、そのお店で買い物をするとコーヒー 1 杯無料などのサービスを受けられる。 ホテルの宿泊回数が増えると、地域で受けられるサービスの幅が広がるという。

KITA の井上陽祐社長は「街並みを残すために、地域との連携を今後も深めたい」と話す。 ホテルではないが、地域では大洲城に 1 泊 110 万円で泊まれる「城泊」にも取り組んでおり、昨年度は 4 組が利用した。 「NIPPONIA」ブランドは、兵庫県丹波篠山市の開発会社 NOTE が全国展開している。 すでに 28 地域で、約 150 棟の古民家を宿泊棟や土産物店に改修した。 ホテルは 3 - 4 割の稼働率なら 10 - 15 年で投資を回収できるよう設計。 今年は、埼玉県秩父市や沖縄県国頭村でも開業を控える。

大津市では 18 年、地元の買い物客らが利用するアーケード商店街などにある町屋 7 棟を生かした「商店街ホテル 講 大津百町」が開業した。 フロント棟から最も遠い客室までは、約 500 メートル離れている。 宿泊者全員に、地域の飲食店などを紹介する冊子を配布。  朝と夕方には商店街をめぐるツアーも無料で行っている。 ホテルの運営企業「自遊人(新潟県南魚沼市)」の藤本葉子取締役は「地域の特徴を生かしながら、地域と共存できるホテルをめざしている」と話す。

ホテルを開発したのは、滋賀県竜王町の谷口工務店。 16 年に谷口弘和代表が大津市に支店を設けた際、「県庁所在地なのに閑散としている」という印象をもった。 大津市はかつて宿場町として栄え、江戸時代に建てられた町屋も残る。 ただ市によると、人口減などの影響により、コロナ前には約 1,500 棟あった町屋の約 1 割が空き家になっていた。 谷口代表は「商店街ホテルなら町屋の活用と地域活性化をどちらも実現できると考えた。 全国の商店街の活性化のモデルにしたい。」と話す。

分散型ホテルをローカル線沿線の活性化につなげようとする動きもある。 「新たな人の流れと活気を生み、地域を動かすほどのインパクトを生み出したい。」 東京都西部の山間部を走る JR 青梅線の鳩ノ巣駅(奥多摩町)。 6 月 1 日午前、地域開発のコンサル企業「さとゆめ(東京都千代田区)」の嶋田俊平社長は JR 関係者や地元住民らを前に、意気込みを語った。

鳩ノ巣駅の駅舎は、周辺を分散型ホテルとして開発する「沿線まるごとホテル」計画の拠点として整備した。 無人駅が、「有人駅」として再始動した。 ホテルの計画はさとゆめと JR 東日本が共同で進める。 駅舎では会議やワークショップを行い、ホテル開業後にはフロント棟として活用する考えだ。 今後は周辺の古民家の改修を進めて、23 年度の開業をめざす。 地域の住民や事業者を「コンシェルジュ」に任命し、ワサビの収穫ツアーやホタル観賞会などを一緒に企画することも考えている。

JR 青梅線の青梅 - 奥多摩間は、13 駅のうち、鳩ノ巣駅を含めた 11 駅が無人駅だ。 沿線人口が減るなか、観光客を呼び込んで利用客の増加をはかるのが重要な課題になっている。 21 年には 1 カ月半にわたり、実証実験を実施。 1 泊 2 日で 1 人あたり 2 万 7 千円のツアーは、120 人の予約枠が完売した。

青梅線の白丸駅で降りて周辺をめぐり、奥多摩町と隣接する山梨県小菅村の古民家ホテルに宿泊。 2 日目には青梅線の奥多摩駅で解散した。 実証実験だけの効果ではないが、期間中の両駅の利用者は前年同月比で 1 - 3 割増えるという成果もあった。 40 年までに、JR 東日本管内の 30 地域で、同じようなホテルを開きたいと考えている。 嶋田社長は「イベントやキャンペーンは、予算がなくなると終わってしまう。 継続的な事業をつくることで、鉄道沿線の認知度向上にもつなげたい」と話す。 (箱谷真司、asahi = 6-23-22)


小笠原群島付近で M6 級地震か 欧米研究機関が発表

ヨーロッパの非政府機関、ヨーロッパ地中海地震学センターによると、日本時間の午後 4 時 17 分ごろ、小笠原群島でマグニチュード 6.1 の地震があったということです。 震源の深さは 40 キロとしています。 アメリカ地質調査所も日本時間午後 4 時 14 分頃にマグニチュード 5.9 の地震が起き、震源の深さは 10 キロと発表しています。 (TBS = 6-21-22)


石川県能登で震度 6 弱の地震 … 福井県や新潟県、富山県でも揺れ観測

気象庁によると 6 月 19 日午後 3 時 8 分ごろ、石川県能登地方で震度 6 弱を観測する地震があった。 震源の深さは 10 キロで震央地は石川県能登地方。 地震の規模を示すマグニチュードは 5.4 と推定される。 この地震による津波の心配はないという。 福井県嶺北地方と石川県加賀、新潟県上越、富山県東部、富山県西部では震度 3 を観測した。 石川県警珠洲署によると、震度 6 弱を観測した地震で、19 日午後 3 時半現在、けが人の情報は入っていない。 (福井新聞 = 6-19-22)


知床の遊覧船が今季の運航開始、観光客「揺れることなく安心」、「クマやイルカが見えた」

北海道・知床で観光船「KAZU I (カズワン)」の沈没事故を受けて営業を自粛していた別の運航会社 2 社は 16 日、今季の営業運航を始めた。 2 社は運航記録の保管状況などに関して国土交通省の監査で不備を指摘されていたが、是正した。 知床小型観光船協議会は事故後、「安全運航に関する基本方針」を策定。 複数の会社で出航の可否を判断することや、単独運航を回避することなどを盛り込んだ。

午前 10 時に乗客 19 人を乗せた遊覧船「DOLPHIN 3 (ドルフィンスリー)」が客を乗せていない僚船とともにウトロ漁港を出港し、2 時間後に帰港した。 東京都文京区から訪れた観光客 (88) は「乗船すると揺れることもなく安心した。 知床の山々がすばらしかった。」と話した。 山梨県南部町の男性 (76) は「船からクマやイルカが見られて楽しめた。 安全対策をしっかり取った上での運航で不安もなかった。」と喜んでいた。

運航開始した観光船運航会社の菅原浩也社長は、「事故の影響でキャンセルも多い状況だが、二度と事故を起こさないように安全対策をしっかり守って運航していきたい」と話した。 水につからずに体ごと乗ることができる「救命いかだ」を発注して準備中だといい、菅原社長は「乗客にも安全対策を分かってもらって、安心して知床観光を楽しんでもらいたい」と話した。 事故を起こした知床遊覧船と同じく、斜里町ウトロを拠点とする小型観光船事業者は 3 社あり、うち 1 社は同省の監査で指摘された不備について是正がまだ認められていない。 (yomiuri = 6-17-22)


帰還困難区域で初めて居住再開 福島・葛尾村の復興拠点

東京電力福島第 1 原発事故で飛散した放射性物質の影響で立ち入りが規制されてきた帰還困難区域のうち、福島県葛尾村野行地区の特定復興再生拠点区域(復興拠点)は 12 日午前 8 時、避難指示が解除された。 将来にわたって居住を制限するとされた帰還困難区域で、住民が暮らせるようになる避難解除は初めて。 政府は復興拠点での除染とインフラ整備に国費を投入しているが、原発事故から 11 年が過ぎ住民の帰還意欲は低迷。 コミュニティー維持などの課題に直面していくことになる。 野行地区の復興拠点は 0.95 平方キロ。 村によると、住民登録する 30 世帯 82 人のうち、帰還意向を示すのは 4 世帯。 (kyodo = 6-12-22)


旬のサクランボが「危機的な不作」 3 割高騰、観光事業にも影響

全国 3 位の収穫量を誇る山梨県のサクランボが、記録的な不作となっている。 価格は昨年の 3 割増しに跳ね上がり、直売所は品薄状態が続く。 観光農園は予約を受けられず頭を抱える。 「ルビーの妖精」と称される人気の高級フルーツを天候不順が直撃した。

「おっ、来たぞ!」 9 日、南アルプス市の「道の駅しらね」。 JA 農産物直売所のサクランボ売り場で、買い物客から大きな声が聞こえた。 店員が 200 グラムパックのサクランボを手際よく並べていく。 1 パック 1,200 円(税込み)。 昨年は約 900 円だったといい、3 割以上も高くなった。 それでも売り場には人が集まり、パックを次々と買い物かごに入れていった。 甲府市の 40 代主婦は「品定めをする余裕もない」と苦笑いを浮かべた。

この売り場には例年、約 800 個のパックがびっしりと並ぶ。 しかし今年はスカスカだ。 品薄を伝える売り場の告知文には「危機的な不作」の文字が赤く強調されていた。 例年は発送用商品を正午ごろまで受け付けているが、今年は開店から 30 分で打ち切らざるを得ないという。 南アルプス市は県内一の生産地。 地元では「ルビーの妖精」の愛称で親しまれ、農園は貴重な観光資源にもなっている。

JA 南アルプス市によると、6 月上旬に出荷が本格化した主力品種の佐藤錦や高砂が、例年の約 5 割しか実を付けなかった。 3 月中旬 - 下旬に雨に見舞われ、4 月中旬に季節外れの夏日が続いたことが不作の原因となった。 今季の商品発送を取りやめた農家もある。 市内では露地物のサクランボ狩りがたけなわだが、農園を案内している市観光協会も困っている。 客を受け入れる農園が例年は連日 10 軒以上あるが、今年は 3 - 5 軒ほど。予約を断るケースが増えているという。

担当者は「コロナ禍の影響が大きかった昨季と比べてお客は 4 倍に増えているのに、とても残念」と肩を落とす。 サクランボに続いて旬を迎える桃やブドウの季節に果物狩りで訪れるよう案内しているという。 市内の道路沿いでサクランボを即売している「青柳農園」は、今季の販売期間を 5 月 29 日 - 6 月 12 日とし、昨季よりも前後を 1 週間ずつ短くした。 安価な「はねだし品」も今年はなし。 価格は昨年と同じという。 同園の青柳瑞穂さん (46) は「高くするとお得意さんが買わなくなるので仕方ない」と話していた。 (池田拓哉、asahi = 6-11-22)


「メディアとして高価値」 ファミマ DS、東海 3 県 700 店に設置へ

コンビニ店のレジ前にある大型液晶モニターから流れるメッセージ「地域の絆で詐欺行為防止」 - -。 新たな情報メディアをめざし、ファミリーマート(本社・東京)が店舗に設置を進めるデジタルサイネージ (DS) で、こんな情報を配信している。 広告や商品案内の動画がメインだが、ニュースやエンタメ情報、特殊詐欺防止の呼びかけなども提供する。 6 月末までに東海 3 県で約 700 店に広げる計画だ。 (鈴木裕、asahi = 6-6-22)


北方領土・貝殻島周辺のコンブ漁ようやく開始へ
日ロ交渉妥結に安堵

北方領土・貝殻島周辺水域でのコンブ漁について、北海道水産会は 3 日夜、操業条件をめぐる交渉でロシア連邦漁業庁と妥結した、と発表した。 ロシアのウクライナ侵攻の影響で交渉が遅れ、例年の漁解禁日の 6 月 1 日を過ぎても日本漁船の出漁ができずにいた。 地元・根室市の漁業者からは、約 60 年の歴史を持つ漁の継続に安堵の声が聞かれた。

昨年の交渉は 4 月中に 1 日で終えていたが、今年はウクライナ侵攻で日本や欧米各国が対ロ経済制裁を発動する中、交渉開始が遅れた。 解禁日直前の 5 月 27 日にようやく交渉を開始。 道水産会の山崎峰男副会長ら日本側とロシア漁業庁のシマコフ船団・港湾・国際協力局長らロシア側がオンラインで協議を続けた。 合意内容は、操業期間は昨年と同じ 9 月 30 日まで。 操業隻数は前年比 11 隻減の 220 隻。 採取量はコンブ 3,381 トン、チガイソ及びスジメ 406 トンの計 3,787 トンで、前年比 100 トン減。 ロシア側に払う採取権料は昨年より 233 万 20 円少ない 8,851 万 4,580 円。 機材供与は 350 万円で昨年と同じだった。

採取量などの前年との違いは交渉妥結の遅れに伴うもので、日本側の負担はほぼ例年通りとなった。 妥結を受け、コンブ漁船のまとめ役を務める歯舞漁協(根室市)の柿本康弘・昆布漁業部会長 (68) は、「今年も漁ができるようになって本当によかった。 長年、ロシアの管理する水域で漁をしてきて違反もなく、信頼関係がある。 漁の継続が大事で、安全操業に徹したい。」と話した。

鈴木直道知事は「安全な操業が確保されるよう、関係団体と連携して取り組んでいく」、石垣雅俊・根室市長は「市経済に重要な位置づけを占める沿岸漁業が継続され、交渉関係者に心より感謝する」とそれぞれコメントを出した。 ロシア関係の漁では、日本 200 カイリ水域での日本の小型漁船によるサケ・マス流し網漁も、日ロ交渉の遅れで例年より 3 週間あまり遅い 5 月 3 日に始まった。 例年 6 月に出漁するロシア 200 カイリ水域での日本漁船による引き網漁の試験操業は、まだ交渉も始まっていない。 金子原二郎農水相は 3 日の閣議後会見で、「日程調整中で、それ以上は差し控えたい」と述べた。

ロシアと接する北海道の漁業者にとって、ウクライナ侵攻とその後の日ロ関係の緊迫化は、対ロ交渉に影響に与えかねないため不安も大きい。 ロシア漁業庁のシェスタコフ長官は 5 月 27 日、「日本の対ロ経済制裁は、日本との水産分野での協力や採取量の割り当てに影響を与えない。 いまある協定を実行することに困難はない。」などと発言したが、ロシア政府の姿勢は見通せない。

8 月にはサンマ漁の主力の棒受け網漁も始まる。 サンマ大型船を持つ根室市の漁業会社経営者 (85) によると、根室・花咲港から公海の漁場に向かう際、ロシアの取り締まり強化を警戒してロシアの管理水域を通らずに迂回(うかい)すると、220 カイリ(約 407 キロ)ほど遠回りになる。 時間も燃料もかかり、魚の鮮度も落ちて大きな損失につながるという。 この経営者は「ロシア 200 カイリでのサケ・マス引き網漁の試験操業を安全な形で実現してほしい。 日本政府は、ロシア管理水域をサンマ漁船などが安心して通過・操業できるよう、ロシア側に働きかけてほしい。」と訴えている。 (大野正美、松尾一郎、asahi = 6-4-22)


国境の島の高校、韓国語教育 20 年 全国から入学、卒業生たちはいま

記事コピー (6-3-22)


函館でスルメイカ初水揚げ、「いけすイカ」続々 燃料費高騰で厳しく

北海道内のスルメイカ漁が解禁となり、2 日早朝、函館市の漁港で初水揚げがあった。 近年の漁獲量低迷に燃料費高騰が追い打ちをかけ、今季も厳しい船出となった。 1 日の解禁とともに道南から 16 隻が出漁。 帰港した船の水槽から、生きたままの「いけすイカ」が続々とすくい上げられた。 市水産物地方卸売市場で 894 キロが初競りにかけられ、最高価格で 1 キロ 2,100 円(昨年 1,650 円)の値がついた。

津軽半島沖から戻った吉田智さん (68) は約 80 キロを水揚げ。 1 回の出漁で約 6 万円の燃料費がかかるといい、「漁獲は昨年並みだが燃料代でぎりぎりだよ。」 函館魚市場の平松伸孝取締役部長 (58) は「コロナ禍も落ち着いて観光客も増えてきたので、今後の需要に期待したい」と話した。 函館水産試験場の調査によると、秋田県沖から松前沖にかけての日本海ではスルメイカの分布は過去 5 年の平均を下回り、「非常に低密度」という。 (阿部浩明、asahi = 6-2-22)


「生鮮カツオ日本一」気仙沼で今季初水揚げ 燃油高でも値は例年並み

初ガツオ、来たぞう - -。 2021 年まで生鮮カツオの水揚げで 25 年連続日本一を誇る気仙沼漁港(宮城県気仙沼市)に 1 日早朝、一本釣り船 3 隻が今季初めて入港し、計約 150 トンを水揚げした。 前年に比べると 3 週間遅くなったが、待ちかねていた仲買人らで港は活気に沸いた。 3 隻のうち、最初に入港したのは宮崎県の竜喜丸(たつよしまる、119 トン)。 午前 5 時前から水揚げを始めた。 ベルトコンベヤーに載せられたカツオは、丸々太った銀の魚体に朝日を照り返しながら、運ばれていった。

今年は 3 - 4 キロの大・中サイズが中心で、セリでは例年並みの 1 キロ平均 226 円の値が付いた。 竜喜丸の日高陽祐(ようすけ)漁労長 (43) によると、5 月 30 日に千葉県沖約 1 千キロの太平洋上で取れた。 「カツオの北上が遅く、群れがまだ薄い。 燃油高もあって厳しいが、カツオの脂乗りはいいので、たくさん食べて頂きたい。」と話した。 前年の気仙沼のカツオの水揚げ量は約 3 万 5 千トン(約 70 億円)と豊漁だったが、他の主力魚種であるサンマやサケは温暖化の影響で不振が続く。 (星乃勇介、asahi = 6-1-22)


「海外からのお客さん」はバイデン大統領 … 夕食会に名取のジェラート、震災がつないだ縁

岸田首相がバイデン米大統領と東京都港区の「八芳園」で行った 23 日の夕食会で、宮城県名取市の人気店「ナチュリノ」のジェラートがデザートとして振る舞われた。 同店の運営会社の鈴木知浩社長 (47) は「食べてもらえて誇らしい。 復興への感謝を少しでも届けられたのでは。」と喜んでいる。

同店のジェラートは宮城県色麻町の牧場から毎日仕入れる生乳や地元の食材を使い、素材を生かした濃厚な味が売りだ。 夕食会用にはミルク、ダブルチョコ、抹茶の 3 種類を提供した。 アイスクリーム好きで知られるバイデン氏。 東日本大震災直後の 2011 年 8 月には副大統領として、「トモダチ作戦」の活動を展開した仙台空港や、名取市内の仮設住宅を訪問し、被災者と懇談した。 大統領就任後、初来日のおもてなしに、縁のある名取市のジェラートが採用された。

鈴木社長によると、外務省の担当者から 13 日に電話で「海外からお客さんが来るので、食事にジェラートを提供したい」と問い合わせがあった。 数回のやりとりを経て各 40 人分を送った。 「ニュースでお客さんが大統領だと初めて知った」と話す。 店を運営する図南商事は震災の津波で社屋を失い、従業員 4 人が犠牲になった。 15 年に現在の場所で再出発を果たした。 夕食会から一夜明け、ニュースを見た人から「市民としてうれしい」と声をかけられた。 鈴木社長は「震災があってもこれだけのものを作れるようになったと知ってもらえたと思う。 今後も名取や宮城を盛り上げられるように頑張りたい。」と語った。 (yomiuri = 5-25-22)


乗鞍スカイライン 残雪のなか観光客でにぎわう 通常開通 3 年ぶり

岐阜、長野県境の北アルプス・乗鞍岳(3,026 メートル)を走る乗鞍スカイラインが 15 日、冬季閉鎖を終えて開通した。 環境保護のため、マイカーの乗り入れが規制され、観光客はバスや自転車などで標高 2,702 メートルの畳平をめざした。 2020 年はコロナ禍で通行自粛が求められ、21 年は災害復旧工事で開通が遅れた。 例年通りの開通は 3 年ぶりとなった。 全長 14.1 キロの山岳観光道路沿いには最大 5 メートルの積雪が残る。 この日の畳平は日中でも気温が 1 度前後だったが、多くの観光客でにぎわった。 (山下周平、asahi = 5-15-22)


なぜ若い女性は都会から地方に戻らない?
ジェンダーギャップを分析

なぜ若い女性は地方からいなくなるのか - -。 十六総合研究所(岐阜市)は、ジェンダーギャップ(男女格差)をテーマにした提言書「『女子』に選ばれる地方」を発刊した。若い女性が都会に移住したまま地方に戻ってこない現象に着目。男女の家事育児の分担や賃金格差の偏りなど、地方の現状を問い直し、ジェンダーギャップ解消の必要性を訴えている。 ジェンダーギャップ解消は、国連の SDGs (持続可能な開発目標)の一つ。 結婚し子育てをしている総研研究員の女性 3 人が中心となり、約 2 年間かけて分析結果や解決策などを提言書にまとめた。

萩原綾子さんは、働く女性が、仕事と家庭の二重負担に苦しむ構図が長く放置されていると指摘。 男女共同参画白書をもとに、男女が仕事や家事にどれだけの時間を充てているかという視点から、男女の役割分担の状況を年代ごとに分析した。 「夫は仕事、妻は家庭」という従来の役割分担から、共働きの夫婦が増えたことで「夫は仕事、妻は家庭も仕事も」へと変わり、働く女性の負担が増えているという。

一方、男性の長時間労働は相変わらずだが、若い世代は家事参加時間が増える傾向にあり、萩原さんは「仕事と家庭のジェンダーギャップを縮める鍵は家庭にある。 親の背中を見て育った子どもが悪い流れを変えてほしい。」と話す。 男女間の賃金格差の中身を分析した高木安希子さんは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとに比較した。 支払われる賃金の額には、都会と地方では差があり、女性の賃金は男性の賃金に比例していた。 女性管理職の比率にも地域差があることや、業種別では金融、保険業は男女間の賃金差が大きく、宿泊業、飲食サービス業などは男女とも低水準だった。

提言書では、県内で女性を積極的に雇用する企業 5 社を対象にしたインタビューや地方へ移住した女性 2 人の対談も掲載。 会社と仕事に魅力があり、処遇や評価に男女差がない企業は地方でも優秀な女性を呼び込むことができると結論づけた。 高木さんは「地方が持続可能な未来を築くためには女性の活躍は欠かせない。 その鍵を握る男性の意識改革につなげていければ。」と話す。 提言書は A4 変型判、127 ページ。 価格は 1 部 1,100 円(税込み)で、アマゾンや県内の一部書店で販売している。

住民基本台帳の人口移動報告によると、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)への転入超過数は、2010 年は男性が 3 万 8,748 人、女性が 5 万 4,081 人だった。 これに対し 19 年は男性が 6 万 6,014 人、女性が 8 万 2,769 人と東京一極集中が進んだ。 その間も、男性より女性のほうが 1 万 2 千 - 2 万人多く、地方から都会に女性の流出が続いている。

県内をみてみると、15 - 20 年の他の都道府県への転出超過数は、20、30 代男性の 1 万 3,087 人に対し、20、30 代女性は 1 万 7,090 人と約 4 千人も多くなっている。 男性は毎年 2,200 人前後でほぼ横ばいだが、女性は 15 年の 2,356 人から 19 年には 3,350 人と転出超過傾向がより強まった。 40、50 代では男性が転入超過に転じるが、女性は転出超過が続き、都会などへ流出した女性が地元へ戻っていないことになる。 (松永佳伸、asahi = 5-12-22)


今季トップ級、B ランク蜃気楼 魚津の海岸

魚津市内の海岸で 5 日、今季 17 回目の上位(春型)蜃気楼が観測された。 魚津埋没林博物館は 5 段階 (A - E) で示す発生規模を B ランクと認定。 富山、射水、黒部の各方面に風景の変化を肉眼で確認でき、大勢の人が今季トップ級となった神秘のショーに見入った。 午前 7 時半ごろ D ランクが発生、徐々に状態が良くなった。 午後 1 時半ごろ B ランクとなり、富山市水橋方面から射水市新湊方面にかけて、反転や伸びの変化が数時間続いた。 新湊大橋の変形も見られた。

海の駅蜃気楼そばの海岸に大勢の見物客が訪れ、歓声を上げた。 魚津蜃気楼研究会の野村英樹会長は「長時間にわたり、さまざまな変化を見られる蜃気楼だった。 高気圧に覆われる 6、7 日も期待できる。」と語った。 5 日は氷見市でも蜃気楼が確認できた。 島尾海岸から石川県境付近の風景を撮影した写真愛好家の愛甲喜一郎さん(砺波市)は「魚津に比べれば規模も頻度も 10 分の 1 程度だが、蜃気楼が見られるのは珍しい。 貴重なショットを収められて良かった。」と話した。 (北日本新聞 = 5-5-22)


百貨店が生き残りかけて水族館新設 売り場減らし、17 億円かけ改装

開店 90 周年を迎えた松坂屋静岡店(静岡市葵区)が 4 月 27 日、大規模改装を終え、リニューアルオープンした。 改装の目玉は、売り場ではなく、新たに作られた水族館だ。 売り場を抜けるエスカレーターで 7 階に上がると、数十匹の魚が悠々と泳ぐ大きな水槽が目に飛び込んだ。 新たにオープンした水族館「スマートアクアリウム静岡」だ。 100 種 2,200 匹ほどの魚が見られるほか、標本を拡大して観察できるコーナーや、本を読みながら環境や魚の生態を学ぶコーナーもつくられた。

百貨店が、売り場を減らして水族館を設ける。 その背景には消費者の百貨店離れがある。 同店は、1997 年度には過去最高となる約 347 億円の売上高を記録したが、その後は景気の低迷による節約志向の高まりや、ネット通販の台頭などで売り上げは右肩下がり。 コロナ禍もあり 2020 年度の売り上げは約 149 億円まで減少した。 そんな中で、「百貨店は地域の皆様の需要に応えられていないという危機感(落合功男店長)」を背景に、総額約 17 億円を投じ、生き残りをかけた大規模改装に打って出た。

改装は全売り場面積の約 55% にわたる。 水族館などの体験型施設をオープンしたほか、商品の売り場も大きく変えた。 従来は婦人・紳士服のように、商品や性別で分けられていた売り場構成を、「自分磨きを楽しむ」、「私のお気に入りを見つける」などのテーマごとに変更。 客が好みに合わせて買い回りしやすい構成に再編した。 狙いは、これまで百貨店で買い物をする習慣が無かった層を呼び込むこと。 買い物目的で来る客だけでなく、上階の水族館を目当てに訪れた客が、下の階で買い物もする「シャワー効果」を見込む。

27 日にあったオープニングセレモニーで、大丸松坂屋百貨店の澤田太郎社長は「この改装は完成形でもゴールでもない。 ここから独自の進化をしていくスタートだ。」とあいさつした。 ただ、今回の改装が反転攻勢の起爆剤となるかは見通せない。 静岡市中心部には百貨店や大型商業施設がひしめき、オーバーストア(店舗過剰)状態と言われる。 静岡市や周辺自治体の人口も減少しており、競争は激しい。 20 年 7 月には、市中心部にあった県内最大級の書店「戸田書店静岡本店」が閉店した。 21 年 3 月には、ファッションのシンボル的存在だった大型商業施設「静岡マルイ」も半世紀を超える歴史に幕を下ろした。

落合さんは「これまで中心部には食事や買い物をする場しかなかった。 滞在する時間を楽しんでもらう場を提供したい。」と話す。 隣接する葵区御幸町・伝馬町の一部では再開発が進められ、24 年春にも再開発ビルが完成する予定だ。 落合さんは言う。 「地方百貨店は苦境だが、駅前の百貨店にはまだ存在感がある。 チャレンジする県内の企業や人と共に、より静岡の価値を高められるエリアにしていきたい。」 (山崎琢也、asahi = 5-3-22)


色鮮やかなモザイクタイルの旧ショールーム、惜しまれつつ取り壊しへ

大正後期 - 昭和初期に造られ、モザイクタイルの組み見本が床一面に貼られた愛知県常滑市内の建物が、老朽化のため間もなく取り壊される。 タイルメーカーだった企業のショールームとして使われていた。 建物は旧杉江製陶所(現東窯工業)事務棟。 同社は 1932 年完成の大山崎山荘(京都府)や 33 年改修の大丸心斎橋店(大阪市)にも製品が使われた第一線のタイルメーカーだった。 床には、杉江製陶所が製造した無釉(むゆう)モザイクタイルの組み見本がパネル状に貼り尽くされている。

タイルに関する著作がある加藤郁美さん = 東京都杉並区在住 = が、2018 年に常滑市を訪れた際、たまたま見つけた。 杉江重剛前社長から、1923 年から 28 年にかけて自社で焼いたタイルだと説明されたという。 杉江製陶所は、第 2 次世界大戦中にぜいたく品と言われたタイルの生産ができなくなり、砥石(といし)メーカーに転業したが、ショールームは事務所として使われた。

杉江前社長が 2020 年に亡くなり、今月にも旧ショールームが取り壊されると知った加藤さんは、前社長の妻節子さん (82) らの協力を得て、旧ショールームの見学会を 4 月 17 日に開催した。 SNS で事前に告知すると、発信日に 85 人が応募。 見学会には神奈川県や関西地方から参加の申し込みがあったという。

見学会前に事務棟の整理や清掃をすると、節子さん自身も存在を知らなかったタイルが次々と現れた。 研究室だった部屋の床からは、ほこりや土で隠れていた美術タイルが見つかった。 「こんなものが出てくるとは思わなかった。 私自身もうれしかった。」と節子さん。 金庫に隠れていた腰壁から、精巧な美術タイルの見本も見つかった。

「これだけのものが 95 年近く残っていたのは奇跡。 全国のタイルを見て歩いたが、ショールームとして残されているのはめったにない。」と加藤さん。 「このままの形の姿をたくさんの人に見てもらいたかった。」と、見学会を企画したという。 タイルの見本の一部は取り壊し前に取り置かれ、保存される予定という。 (戸村登、asahi = 5-2-22)

旧杉江製陶所で 5 月 4 - 7 日、見学会が開かれる。 午前 10 時 - 午後 5 時。 申し込みは、杉江製陶所(見本室タイル)緊急救出プロジェクト実行委員会のサイト (https://calico29.wixsite.com/sugiecraywaorks01/about) から。