次世代バイオ燃料、給油できます 名古屋の GS で 10 日から 全国初

脱炭素化への貢献が期待されるバイオ燃料をつくるユーグレナが 10 日から、名古屋市内のガソリンスタンド (GS) で、次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」を販売する。 一般客がサステオを日常的に給油できる GS は全国で初めて。 使用済みの食用油(廃食油)やミドリムシ由来の油脂を原料とするサステオは 2020 年以降、バスや配送車などの商用車、フェリー、ジェット機など陸海空の乗り物に徐々に供給されてきた。 21 年 4 月には東京都葛飾区の GS で 3 日間限定で販売されたが、一般のドライバーが利用できる GS で継続的に販売するのは今回が初めてとなる。

植物由来のバイオエタノールを混ぜたガソリンの販売に実績のあるエネルギー専門商社の中川物産(名古屋市)と連携。 同社のグループ会社が運営する名古屋市港区の GS「名港潮見給油所」で、サステオを 20% 混ぜた軽油を売り出す。 既存の軽油と同等の品質を確保しており、軽油と同じようにディーゼル車に給油して使える。 名古屋港に面した潮見埠頭にある GS で、伊勢湾岸自動車道の名港潮見インターチェンジ (IC) に近い。 主に近隣の運送業者や倉庫業者の利用を見込んでいる。

ユーグレナは、自動車レース「スーパー耐久シリーズ」に参戦しているマツダのディーゼルエンジン車にサステオを供給している。 実証プラントで製造するサステオの価格は現在 1 リットルあたり 1 万円ほどだが、今回の販売価格は 1 リットルあたり 300 円前後に抑える見込み。 既存の軽油と混ぜ、海外の協力会社が製造した比較的安価な燃料も調達することで価格を引き下げたという。 それでも既存の軽油よりはかなり割高だが、25 年に商業ベースにのせることをめざして、どれぐらい試してもらえるかを確かめたい考えだ。

中川物産の担当者も「割高でも環境にいい燃料を使おうという荷主や運送業者の変化を最近ひしひしと感じている。 一般向けの販売開始を普及のきっかけにしたい。」と話している。 (編集委員・木村裕明、asahi = 6-9-22)


薪を使った暖房で脱炭素 環境に優しい農業

「SDGs ミライのためにできる」ことです。 西海市で去年から始まった「環境に優しい暖房方法」をご紹介します。 西海市西彼町にあるハウス。 農業法人「アグリ未来長崎」がスナップエンドウを栽培しています。

「重量のある野菜だったり果樹だったりは、(高齢化で)段々辞められているところもあると聞いているので、このスナップエンドウは軽いんですね。 (収穫や選果など)ある程度のお年寄りの方でもできる。 これを地域に普及できたらいいなと思って。(農業法人「アグリ未来長崎」葉山千恵子副場長)」

去年 11 月に種をまき、1.5 トンを収穫しました。 スナップエンドウは、気温が氷点下になると成長が止まってしまいます。 この冬、石油ストーブの代わりに登場したのが「薪を使った暖房機」です。

「一日に使う(薪の)量が大体これが 40s ぐらいなので、多い時はこれの倍 (80kg) ぐらいですね。(葉山副場長)」

これによって、翌朝まで 15 時間、暖かい状態を保つことができます。 木材を燃やして排出される二酸化炭素は、自然界で(燃料となる)木が吸収するため、石油ストーブと比べて、3 か月間で 8 トンも削減されます。

「昨年、灯油も重油もだいぶ高かったので(石油ストーブの費用の)多分、3 分の 1 ぐらいで済んでいると思います。 経済的な面でも助かったと。 環境にも優しいしですね。(葉山副場長)」

ストーブの場合は、一冬およそ 15 万円かかりましたが、"薪暖房機" だと 5 万円足らずで済みました。 そして、思わぬ "イイこと" も - -。

「(薪を)焚くことによって煙突から煙が出るんですけど、煙が出ていなかったら "今日は焚いていないの?" と声がかかったり、"焚く物がないの?" と言って、みかんの木を持ってきてくれたりする方がいらっしゃいました。 地域の方との関わりという面でも良かったですね。(葉山副場長)」

これからは、燃やして出た灰の活用方法も探しつつ、別の作物にも挑戦したいそうです。 (NBC 長崎放送 = 6-5-22)


使用済み太陽光パネルを再資源化 環境省、義務付け検討

環境省は 28 日、使用済み太陽光パネルのリサイクルを義務化する検討に入った。 2011 年の東日本大震災後に各地で広がったパネルが寿命を迎えて大量に排出される 20 年代後半を見据え、適切な処理制度をつくるのが狙い。 政府は 50 年脱炭素社会の実現を掲げており、太陽光発電の導入拡大が見込まれる。 適切に処理されなければ、埋め立て処分場の逼迫につながるとの懸念が背景にある。 建設リサイクル法を改正して対象品目に追加し、解体業者などに再資源化を求める案を軸に制度設計を進める。 太陽光パネルに特化した新法制定も視野に入れる。 法案は 24 年の通常国会にも提出したい考えだ。 (kyodo = 5-28-22)


果てしなき「脱炭素コスト」 公金 51 兆円の試算と見えない未来図

「脱炭素」の費用負担は?

記事コピー (10-19-20〜5-15-22)


樹木が理想的な再生可能エネルギー源になる理由

樹木をはじめとする木質バイオマスは、再生可能エネルギー源のなかでも物議を醸している。 だが、それはおかしい。 というのも、木質バイオマスは、適切に管理すれば、極めてサステナブルな資源になるからだ。 バイオマスをエネルギー源と考える際には、潜在的に多くの落とし穴がある。 一部の形態のバイオマスは、栄養素を大量に消費し、したがってかなりの施肥が必要とされる場合がある。 それはつまり、肥料生産に多くの化石燃料が投じられ、土壌が消耗するリスクが高くなる可能性があることを意味している。 また、一部の作物は、水も大量に消費する。

樹木は違う。 一生の最初の 10 年ほどは、木は年間に 1 エーカー(約 4,047 平方メートル)あたり 7 - 10 絶乾トン(絶乾トンは、含水率ゼロ % で算出された実重量)のペースでバイオマスを生成する。 他のバイオマス源でこうした規模の収量がうたわれているのを目にしたことがある人もいるかもしれないが、それはほぼ間違いなく、肥料と大量の水によって実現したものだろう。

だが、樹木を活用すべき、さらに説得力のある理由も存在する。 ときに燃料生産の原材料になる場合があるほとんどの短期輪作作物とは違って、木は実際に、土壌の質と健全さを向上させる。 なぜなら樹木には、下層土から栄養素を吸い上げ、葉や樹皮で濃縮する力があるからだ。 その葉や樹皮が最終的に地面に落ちると、土壌に有機物が加わることになる。 使用する木の種類にもよるが、森林を管理すれば、燃料を提供すると同時に、土壌の質を高めることができるのだ。

カーボンリサイクル

もちろん、重要な問題がある。 樹木を燃料に使用する場合のカーボンフットプリントだ。 エネルギーを得るために木を燃やすと、その木が隔離したばかりの二酸化炭素が放出されることになる。 木を育て、そのあとに燃焼させるサイクルのあいだ、大気中の二酸化炭素の正味排出量は変化しない。 これは、たとえば石炭を燃やす場合とは異なる。 石炭の場合、大昔の二酸化炭素が放出され、大気中二酸化炭素の正味排出量は増加する。

現実には、「木からエネルギーへ」のスキームのカーボンバランスに影響を与える要素は他にもある。 たとえば木の根は、多くの炭素を地面の下に隔離する。場合によっては、根が何十年にもわたって、木の使用可能な部分に存在する以上の炭素をとどめておくこともある。 方程式の反対側にあるのが、木を育て、運び、ペレットなどの使用可能な形態に変換するために必要なエネルギー投入量だ。 だが、ライフサイクル分析 (LCA) をすれば、各種のインプットとアウトプットを整理し、カーボンフットプリントを計算することができる。

帳尻が合う仕組み

幸いにして、それはすでに実施されている。 メリーランド州を本拠とする上場企業エンビバは、サステナブルな木質ペレットの世界最大の製造会社だ。 こうした木質ペレットは、主に欧州の石炭火力発電所で、石炭のかわりに使われている。 2019 年、エンビバのある大株主が、調査会社バウンドレス・インパクト・リサーチ・アンド・アナリティクスに、木質ペレットエネルギーの持続可能性とカーボンインパクトの検証を依頼した。

バウンドレスは、木質ペレットに伴う温室効果ガスのインパクトに関する最新の査読つき論文を用いて、木質ペレットサプライチェーンから放出される温室効果ガスのライフサイクル分析をおこなった。 分析にあたっては、木質ペレットのカーボンフットプリントを、石炭や天然ガスなどの他の燃料と比較した。

その報告書には、多くの重要な知見が含まれている。 なかでも注目すべきは、木材をベースにしたバイオエネルギーによって、風力や太陽光などの間欠性エネルギー源を、安定したエネルギーで補完できる点が強調されていることだ。 現在のところそうした役割は、サイクルの速い天然ガス火力発電が担っているが、木質ペレットなら、その何分の1かのフットプリントで実現することができる。

したがって、適切に管理さえすれば、樹木は理想的な再生可能エネルギー源になる可能性がある。 木は、燃料を提供し、炭素排出量を減らすだけでなく、下層土から表土への栄養素の再循環という重要なはたらきを行う。木が切り倒されたあとには、植え直すこともできる。 こうした木の利用は、熱帯雨林や原生林の木を使うこととは明らかに異なるものであり、その両者を混同すべきではない。 (Robert Rapier、Forbes = 5-7-22)


「アリが象を動かす」 気候危機、環境 NGO の株主提案

今月 22 日の昼下がり、東京・丸の内のオフィス街。三井住友フィナンシャルグループ (FG) 本社前で、男女 7 人が「気候変動に投融資しないで!」と書かれた横断幕を掲げた。 そのうちの 1 人、国際環境 NGO 「350.org」の日本支部代表、横山隆美さん (69) 自身も、4 年半前まで運転手付きの車で送迎されていた金融幹部だった。 米国系保険会社 AIU (現 AIG 損害保険)で企業営業や資産運用を担当。 39 歳でグループ企業の日本支店代表に抜擢されて以来、富士火災海上保険(同)社長など国内トップを 25 年以上務めた。

元金融マンのざんげ

環境問題に関心はあったものの、経済優先の世界では利潤の追求が第一。 社長時代は「社員の給料を上げることが一番の喜び」だった。 しかし、2017 年のリタイア後に入った NGO でのボランティアを通じ、痛感した。 金融機関は化石燃料の開発や設備に投融資することで、温暖化に加担しているのではないか。 古巣も大手電力会社と火力発電所の保険契約を交わすなど無縁ではなかった。 「当時は全然意識が回らなかった。 今はざんげの気持ちだ。」

企業を動かそうと、横山さんたちがとったのは、「株主提案」という手法だ。 一定の株を持っていれば、株主総会で議題を提起できる。 可決されなくても、社会に注目されることで対策を促す効果もある。 横山さんらは今月 11 日、マーケット・フォース(豪州)などほかの NGO と三井住友に株主提案を出した。 ほかに石炭火力に関わる三菱商事、東京電力ホールディングス (HD)、中部電力にも同様の提案をした。

三井住友は 50 年までに投融資先全体で温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げる。 一方で化石燃料事業への投資をやめておらず、目標達成への道筋は明らかでない。 提案では、短中期の削減目標を示し、目標に沿った投融資にするよう求めた。 独 NGO などによると、みずほ FG、三菱 UFJ FG もあわせた日本の 3 メガバンクは、石炭産業への融資総額で世界トップ 3 だという。 排出が多い石炭火力は世界で見直しの動きが加速。 「いつまで使えるか分からない石炭火力への融資は、回収できない座礁資産になるリスクもある」と横山さんは言う。

「350.org」は株主提案を前にした約 1 カ月間、ボランティアを含めた 124 人が、3 メガバンクに脱炭素を訴える電話をかけた。 その数、271 回。 横山さんも率先して受話器を握った。 企業側も株主の声は無視できない。 昨年行った三菱 UFJ への同様の株主提案には約 23% の株主が賛同した。 「これだけの株主が同じ考えを持っているということ。 企業も配慮せざるを得ない。」 三井住友はこの半年で 4 回、横山さんらと直接の話し合いに応じた。

「気候変動対策をリードしてほしい。 世界の潮流に遅れると経済にも大きなマイナスになる。」との訴えに、三井住友は「お客様との対話を重ね、(取引先の)温室効果ガス削減の具体的な行程を描き、可能な限り早く目標設定するべく最大限努力する(サステナビリティ企画部)」という。 三井住友が気候関連財務情報を開示した後、横山さんらに説明の場を用意するなど対話が続く。

横山さんは手応えを感じつつある。 「350.org」の日本事務所は 5 人。 メンバーには「アリが象を動かしつつある」との実感も湧く。 6 月の株主総会に向け、次の一手は「手紙作戦」だ。約 100 の株主に向け、提案への賛同を呼び掛ける文書を発送した。

かき集めた 500 万円、予想以上の反応

国内で最初の気候変動に関する株主提案は、2 年前、環境 NGO 気候ネットワーク(京都市)が行った。 対象は 3 メガバンクの一つ、みずほ FG。 NGO 調査で、石炭事業に関わる企業への融資額が世界トップだった。 気候ネットは、パリ協定の目標に沿った投融資計画を定款に盛り込むよう求めた。 理事の平田仁子さんは「海外の株主アクティビズム(行動主義)は以前から耳にしていたが、気候変動対策としての効果が分からず、大金がかかるので、なかなか踏み切れなかった。」

上場企業の場合、株主提案には通常 3 万株が必要で、当時の価格で約 500 万円。 活動費をやり繰りしたが、金欠状態の NGO には大きな決断だった。 ところが、20 年 3 月に株主提案を出すと、思った以上の反応があった。 みずほは翌月、株主提案に対応するかのように新たな石炭火力に投融資をしないなどとする対策の強化を発表。 提案に賛成すべきかどうかを株主にアドバイスする議決権行使助言会社の世界的大手 2 社、ISS とグラスルイスが、気候ネットの提案に賛成するよう勧めた。

6 月の株主総会での賛成率は 35%。 「予想以上の数字。 株主の 3 分の 1 以上が会社方針に反対するのは極めて異例なことだと言われた。」と平田さんは振り返る。 昨年の環境 NGO による株主提案はさらに勢いを増した。 気候ネットに加え、豪 NGO 「マーケット・フォース」、米 NGO 「レインフォレスト・アクション・ネットワーク (RAN)」、国際 NGO 「350.org」の個人株主が、別のメガバンクである三菱 UFJ FG に対して定款変更を要求。 マーケット・フォースは、海外で石炭事業を展開する住友商事に対しても株主提案を出した。

提案自体は否決されたものの、三菱 UFJ では 23%、住友商事では 20% の賛成を得た。 株主提案の提出後、両社は石炭火力に関する気候変動対策の強化を発表。 温暖化対策を求める「モノ言う株主」の動向は目が離せないものとなった。 欧米でも、BP や JP モルガン・チェースなどのエネルギー関連企業や金融機関に対して、脱炭素化を求める株主提案が相次ぐ。 実際に一部の提案が可決されたり、合意が成立したりするケースもある。

米石油大手エクソンモービルでは昨年 5 月、0.02% を持つ投資会社のエンジンが気候変動対策の強化を求めて取締役変更を提案。 その結果、取締役 12 人のうち、投資会社が推薦する環境派とされる 3 人が取締役に選ばれた。 気候ネットは、今回の三井住友、三菱商事、東京電力 HD、中部電力の 4 社への株主提案にも参加している。 平田さんは言う。 「過去 2 回は否決されたが、株主として企業と対話し、企業も不十分ながら対応したので大きな意味があった。 今回の提案が、多くの株主に支持され、対象企業の脱炭素への動きが加速することを期待している。」 (関根慎一、編集委員・石井徹、asahi = 4-29-22)


「パナソニック」工場で使う電力を "100% 再エネ" に 水素の本格利用は世界初

水素を使った "世界初の取り組み" が滋賀県草津市で始まりました。 4 月 15 日、滋賀県草津市にあるパナソニックの燃料電池工場で、再生可能エネルギーだけで電力を賄う発電システムがスタートしました。 太陽光発電だけでなく、水素と酸素を化学反応させて発電する燃料電池や、余剰電力を蓄える蓄電池も利用します。 工場の電力を再生可能エネルギーで賄うのに本格的に水素を利用するのは世界で初めてだということです。

「実証実験設備をしっかりと世の中の社会に貢献できるよう、これからもいろいろな実証実験や取り組みを進める中で広げてまいりたい。(パナソニック 重田光俊執行役員)」

パナソニックは今後、この発電システムをヨーロッパや中国にも広げていきたいとしています。 (毎日放送 = 4-15-22)


なぜホンダが「藻」を開発?
「ホンダは CO2 を吸収する義務がある」と言って入社した研究員、苦節 9 年の挑戦

「世間に理解される技術をいま研究しても遅い。 理解されない技術こそ価値や可能性がある。」

本田技術研究所(以下ホンダ)で藻の研究をするチームのリーダー、福島のぞみさん。 8 年近く結果が出ず、研究が打ち切りになるかもしれない場面が何度もあった。 「もうダメかもしれない」と思った時、上司がかけてくれたこの言葉に救われた。 車やバイク、ホンダジェットなどで知られるホンダが、一体なぜ藻の研究をするのか。 ずばり「藻で世界を救えるかもしれない」からだという。

「生意気ながら、『ホンダは CO2 をたくさん排出しているんだから、吸収する義務がある』と言って入社したんです。」

と、入社当時から変わらない熱意をにじませて福島さんは語った。 苦節 9 年。 福島さん一人、工場の片隅で始めた藻の研究がついに日の目をみることになった。 ホンダ独自の藻「Honda DREAMO」として 3 月 30 日、ついに公表されたのだ。

藻が世界を救うってどういうこと?

近年、カーボンニュートラルの実現に向けて動きが加速する中、海や川に生える「藻」は、CO2 の吸収源としても、バイオ燃料やバイオプラスチックなどの原料としても注目されている。 ホンダ独自の藻「Honda DREAMO」は、そんな「藻」の可能性を広げることになるかもしれない。 世界トップレベルの CO2 の吸収量を誇るという Honda DREAMO には、特別に温度調節された部屋も、生産のための大量のエネルギーも、滅菌も必要ない。 少ない水を足すだけで繰り返し培養ができ、寒さにも強いため、他の植物が育ちにくい環境であっても育てられるという。

また、Honda DREAMO は培養液を調整すると、3 日で成分が変わるのも特徴だ。 燃料やバイオプラスチックに活用したい時は炭水化物が多い藻に、化粧品や食料の原料に活用したい時は、タンパク質が多い藻に変化させることができる。 育てる地域や消費者、生産者のニーズに合わせて生産するためだ。 Honda DREAMO は、屋外で、水道水で育つ「雑菌に負けない強い藻」だそうだ。 それは安価に幅広い地域で育てられる利点がある反面、強すぎる種が川や海の生態系を破壊してしまわないだろうか。 福島さんはその点について以下のように説明する。

「Honda DREAMO は今のところ自動車工場に併設した栽培設備で育てる予定ですが、万が一外へ流れ出てもその場所に元々生息している藻の方が強いと、実験を通して分かっています。 その土地の生態系を破壊しないように配慮しています。」

藻で貧困問題を解決したい

千葉県船橋出身の福島さん。 子どもの頃から九十九里浜や葛西臨海水族館によく遊びに行っていたこともあり、元々海や魚が大好きだったという。 そのうち、藻が海の生態系を支えていると知って、藻の世界にのめり込んでいった。

「子どもながら、この海の生態系を支えることができるのだから、藻は絶対すごいものだと思っていました。」

もう一つの原体験は、小学校でアフリカの貧困問題について学んだ授業だった。 「ボランティアで毛布や食料を送るのは大事だが、それだけでは現地の人たちの力で自立することはできない」という先生の言葉が、頭から離れなかったという。

「子どもながら必死に考えて、もし藻でアルコールランプの燃料をつくることができれば、貧困地域の子どもが夜、アルコールランプの光で本を読んで、自分でなんとかできるという気持ちや知恵を養ってもらえるようになるのでは、と考えたのを覚えています。」

「1 万円の予算で、部品買ってやってみろ」

大学を卒業後、化学分析の専門職を経て、2007 年にホンダに入社した福島さん。 「藻でバイオエタノールを作りたい」と言って入社したものの、すぐにできたわけではなかった。 最初に配属されたのは、不具合があって返ってきた車を分析する品質改革センター。 研究開発の部署に異動したいと希望を出し続け、3 年後、生産設備を開発する子会社「ホンダエンジニアリング」の車体開発研究部に異動した。 この異動が転機となった。 同じようにバイオ燃料、カーボンニュートラル燃料をつくりたいと思っている人たちがいたのだ。 「藻だよ、藻で燃料を作ろう」とすぐに声を上げた。

「同じ部署の人たちと、ホンダの未来について語り合いました。 車によって CO2 が排出されたり、環境が破壊されたりすることで迷惑をかけられている世界中の人たちも、潜在的なホンダのお客さんだよね、と。 そんな負の影響も考えた上で、その人たちのニーズをいかに満たせるかを追求するのもホンダの仕事ではないか。 そのためには、燃料にも食料にもなる藻がカギになる、と話しました。」

上司に直訴して、藻の研究にこぎつけた福島さん。 当時の上司から「予算 1 万円でどこまでできるか考えてみろ」と言われ、ホームセンターへ買い物に出かけたこともあったという。

「最初は研究室もなくて、自動車の部品を作る作業場の片隅で、トイレの手洗い用の水を使って藻を育てていました。 トイレに藻を流してしまって、詰まらせて怒られたこともあります。(笑)」

Honda DREAMO は、"藻の専門家集団じゃないから" 実現した

一人で始めた藻の研究だが、徐々に仲間が集まった。 取材の中でも、お互いに信頼し合うチームメンバーの姿が印象的だった。

「"できる・できない" ではなく、"やる・やらない" で動けるチームです。 この人たちとなら、世界を変えられると思いました。」

同じチームの木下さんは、福島さんのことを「まさにリーダーという感じ」と話す。

「突拍子のないこともいいますが、みんなを引っ張っていく力がずば抜けているし、一人一人を見てくれます。 まさか自分がホンダに入って藻の研究をすることになるとは思いませんでしたし、結果がなかなか出ない時は不安でしたが、目指す世界はチームみんな一致していたからこそ、諦めずにここまで来れたと思います。」

また、福島さんは「藻の専門家集団じゃないからこそ、Honda DREAMO が実現できた」という。

「2050 年カーボンニュートラルに向けて私たちが作ろうとしている藻の理想像は、藻の専門家なら『そんなのムリ』と言ってしまう条件ばかりなんです。 私以外チームに藻の専門家がいなかったからこそ、『これがあったら世の中に役立つよね』、『いつまでに必要だよね』と目指したい姿から逆算して研究を進められたのが大きかったと思います。」

Honda DREAMO は、2050 年カーボンニュートラルに間に合うのか

2050 年のカーボンニュートラルに向けてさまざまな技術研究が進んでいる。 しかし、規模やコスト面をクリアし、実際に実用化して CO2 削減目標に貢献できるのか、そのスピード感が課題だ。 Honda DREAMO は、22 年秋から拡大検証を開始し、翌年には東南アジアや国内の自動車工場での検証を目指す。 一方、その先の見通しはこれからだという。 間に合いますか。 福島さんに聞くと、「間に合わせます」と意気込んだ。

「1 日でも早く自動車工場に Honda DREAMO を届けて、1 日も早く世界の気候変動対策に貢献したいと思っています。」

最後に、なぜ福島さんはそんなに頑張れるのか聞いた。

「自分が勉強してきたのは、なんのためだったのか? というところにいつも立ち返っています。 『貧困地域にも持っていける、一番困っている人たちが使いやすい』という軸さえブラさなければ、間違った方向にはいかないと思っています。 それに、今は一緒に同じ夢を持ってやってくれる仲間もいますから。」

一人の研究員の熱い思いが、会社もチームも動かした。 企業間、国家間の連携を広げ、やがて世界をも動かすことになるか、注目したい。 (Huffpostt = 4-4-22)


中国の環境改善、昨年は 810 万 ha 北海道の面積と同規模

中国は急激な経済成長を遂げた一方、環境破壊や公害が深刻化し、市民の生活や社会の発展に悪影響を及ぼしている。 近年は国を挙げて環境保全に取り組んでおり、環境破壊を伴いながら経済成長にまい進する時代から、自然を生かしながら国民の生活を豊かにする時代に向かっている。 中国全国緑化委員会弁公室は 3 月 12 日の「植樹節(植樹の日)」に先立つ 11 日、「2021 年国土緑化状況公報」を発表。 昨年 1 年間で 360 万ヘクタールの造林と 306 万 6,700 ヘクタールの草原の改良が行われ、砂漠化・石漠化した土地 144 万ヘクタールを再生した。 合計すると 810 ヘクタールを超え、北海道の総面積(834 万 2,400 ヘクタール)に匹敵する。

重点生態保全プロジェクトでは、天然林 113 万 3,300 ヘクタールを育成し、耕地を森林に変える「退耕還林」は 38 万 800 ヘクタール、耕地を草地に戻す「退耕還草」は 2 万 3,900 ヘクタールに及んだ。 中国政府は 2030 年までに二酸化炭素 (CO2) 排出量をピークアウトさせ、2060 年までに CO2 排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指す二大公約を掲げている。 そのためにも全土で緑化の推進が不可欠だ。

中国中部を流れる長江、南部の珠江、北部の太行山脈、東部の沿岸地区では計 34 万 2,600 ヘクタールの防護林を整備。 北京市と天津市周辺の砂漠化を防ぐプロジェクトでは 21 万 2,500 ヘクタールを造林した。 また、環境保全機能が劣化した森林 93 万 3,300 ヘクタールを修復し、土壌流出対策をした面積は 6 万 2,000 平方キロ増えた。 森林・草原の保全も進んでいる。 有害生物対策をした森林は 966 万 6,700 ヘクタール、草原は 1,373 万 3,300 ヘクタールに達した。 マツ科樹木に発生する感染症「マツ材線虫病」対策に効果が見られ、拡大傾向を緩和。 森林火災の発生回数や森林・草原の被害面積はいずれも減少している。

環境保全を進めながら産業を興す「緑色富民」は規模が拡大している。 食用油や美容液などに使われるツバキ科の常緑低木・油茶は 25 万 1,300 ヘクタールを造林・改良。 自然を楽しむエコツーリズムの観光客数は延べ 20 億 9,300 万人を数え、前年比 12% 増となった。 人と自然が共に豊かになるウィンウィンの関係構築に向けた取り組みが進んでいる。 (東方新報/AFP = 3-30-22)


アップルの環境債発行 47 億ドルに CO2 を排出しないアルミ調達も

米アップルは 24 日、2016 年から発行してきたグリーンボンド(環境債)の総額が 47 億ドル(約 5,700 億円)となったと発表した。 アップルは今回、精錬の過程で二酸化炭素 (CO2) を出さない技術を開発したカナダ企業から、アルミを調達するとしている。

アップルは 18 年から、米アルミ大手アルコアと英豪系資源大手リオ・ティントの合弁企業であるカナダのエリシス社に対し、CO2 を排出しない精錬技術の開発を支援してきた。 今回調達するアルミは、iPhone (アイフォーン)の廉価版「SE」向けに使うという。 アップルは、30 年までにサプライチェーン(供給網)全体で温室効果ガスの排出を実質ゼロにする取り組みを進めている。 同社の日本のサプライヤーでも「再エネ 100%」に賛同する企業が増えており、こうした企業の支援にも環境債で調達した資金が使われているという。 (サンフランシスコ = 五十嵐大介、asahi = 3-24-22)


ミドリムシと食用油を使って大空へ プロペラ機に使うエコな燃料

使用済み食用油やミドリムシ由来の油脂を、燃料の一部に使ったアジア航測(東京)のプロペラ機が大阪の空を舞った。 脱炭素社会をめざした取り組みだ。 燃料はユーグレナ(同)が開発。 食用油の原料である植物やミドリムシは、二酸化炭素を吸収して育つため、燃やしても環境負荷が低いという。 船やバス、ジェット機などでも利用が進むが、高価なのが課題だ。 「バイオ燃料を倍々に生産して、循環型社会に笑顔も循環させたい」と担当者。 (鈴木智之、asahi = 3-19-22)


CO2 削減へ、防波堤に作った藻場 森林の 2.4 倍の効果

釧路港の沖合の防波堤に人工的に作った藻場で、海藻類が二酸化炭素 (CO2) を取り込む効果が、推計で森林の 2.4 倍に上ることを国土交通省北海道開発局などが確認した。 CO2 の新たな吸収源とされる「ブルーカーボン」への注目が高まることを期待している。 開発局は国立研究開発法人土木研究所「寒地土木研究所」と連携し、1997 年度から釧路港の西港区で、浚渫した土砂を有効活用するプロジェクトに取り組んでいる。 沖合 2 キロの防波堤の港内側に浚渫土を使った浅場を造成。 防波堤の安定化やコスト縮減を図る一方、海藻や魚介類など多様な生物の生息環境を生み出す取り組みだ。

試験場の面積は 3,600 平方メートル。 水深 1 - 3 メートルの浅場にはスジメやガッガラコンブ、アナメといった海藻類、メバルやハナサキガニといった魚介類が生息するようになり、2006 年度から生育状況を調べてきた。 ある程度のデータが蓄積されたことから、今年度にブルーカーボン定量化検討会を設置し、専門家らが海藻類による CO2 削減効果を調べた。 海藻類は光合成により海中の CO2 を吸収し、枯れた後は海底に埋まり、そのまま閉じ込める貯留効果がある。 検討会の試算によると、試験場全体での海藻類による貯留効果は年間約 1.9 トン。 同じ面積の森林の吸収量と比べると 2.4 倍の効果があるという。

将来は浅場を 4 万 3,200 平方メートルまで拡大する計画で、完成すれば年間 22.9 トンの CO2 削減効果が見込めるという。 約 10 万 4 千平方メートルの広さの森林に相当するとしている。 開発局港湾計画課は「森林が吸収する身の回りの大気中の CO2 と、海中に溶け込む CO2 では意味合いが異なる」とした上で、「藻場の造成などの市民活動や、カーボンオフセットなど企業の取り組みで、ブルーカーボンへの注目が高まるきっかけになれば」としている。 (中野龍三、asahi = 3-18-22)


環境 : 米国における花粉放出期の長さに対する気候変動の影響の評価

米国における植物の花粉の放出は、21 世紀末になると、気候変動の結果として、今よりも最大 40 日早く始まるかもしれないというモデル化研究の結果を報告する論文が、Nature Communications に掲載される。 今回の知見は、気候変動と環境汚染が、花粉関連アレルギーの季節を長期化して、ヒトの健康にさらなる悪影響を及ぼす過程を明らかにしている。

風による花粉の生成は、気温や降水量と関係があり、植物の受精に重要な役割を果たしている。 花粉症などの花粉誘導性の呼吸器アレルギーは、世界人口の 30% が罹患しており、欠勤や医療費支出による経済的損失の一因になっている。 こうした健康問題や経済的問題のため、植物の花粉生成量、そして季節性アレルギーが気候変動によってどのように変動するかを解明することは重要だ。

今回、Yingxiao Zhang と Allison Steiner は、気候データと社会経済的シナリオを組み合わせて、21 世紀末(2081 - 2100 年)の米国における花粉放出量の変化を予測するためのモデル化法を開発し、過去の期間(1995 - 2014 年)と比較した。 その結果、21 世紀末には、花粉の放出が最大 40 日早く始まり、19 日長く続く可能性があり、米国全土の年間花粉放出量が 16 - 40% 増加することが分かった。 さらに、このモデルに二酸化炭素濃度を組み込んだところ、人為起源の環境汚染のために年間花粉放出量が最大 250% 増加する可能性のあることが判明した。

著者たちは、二酸化炭素濃度が花粉生成量に及ぼす影響についてのデータは、実験室内での研究結果に基づいたものであるため、自然環境における影響を定量化するためにはさらなる研究が必要だと指摘している。 また著者たちは、今回の知見は、気候変動が花粉の放出パターンに及ぼす影響とその結果としての健康への影響に関するさらなる研究の出発点だと結論付けている。 (nature = 3-16-22)


環境対策の重要課題、「生物多様性保全」は商機になる

企業の環境対策で生物多様性(用語参照)が重要課題として浮上する。 自然回復を意味するネイチャーポジティブが世界目標として掲げられようとしているからだ。 しかも「森林破壊ゼロ」や「負の影響を半減」など厳しい要求を企業に突きつける。 一方で自然保全に 10 兆ドルのビジネスチャンスがあり、投資家も情報開示を迫る。 これまでとは次元が異なる生物多様性保全が企業に求められる。

ネイチャーポジティブ目標

「ネイチャーポジティブビジネスへの移行が始まっている」。 10 日、MS & AD インシュアランスグループホールディングスが開いたシンポジウムで、レスポンスアビリティ(京都市中京区)の足立直樹代表は言葉に力を込めた。 同社は生物多様性のコンサルティングを提供しており、足立代表は海外動向に詳しい。 ネイチャーポジティブは「自然に良い影響をもたらす」、「自然を優先する」といった意味だが、最近では「自然を損失から回復に転じさせる」と定義付けられようとしている。 21 年 6 月に英国で開催された先進 7 カ国首脳会議(G7 サミット)で「自然協約」が採択され、各国首脳は 30 年までに生物多様性を回復軌道に乗せることを約束した。

経済界もネイチャーポジティブを支持している。 政財界のリーダーが集う世界経済フォーラムは 20 年 7 月、自然を優先するビジネスによって 30 年までに 10 兆ドルの市場と 3 億 9,500 万人の雇用創出が可能とする報告書を公表した。 スマート農業による収穫量増加や屋上緑化、節水、適切な廃棄物処理など自然を保護する幅広い分野に商機がある。

こうした機運を受け、ネイチャーポジティブは世界共通の目標になろうとしている。 4 月、国連の生物多様性条約第 15 回締約国会議 (COP15) が中国・昆明市で開かれ、生物を守る世界目標「ポスト 2020 生物多様性枠組み」が決まる。 この枠組みに、30 年までに生物多様性を回復軌道に乗せることが明記される。 気候変動対策では 50 年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ達成が世界目標となっている。 15 年の国連気候変動枠組み条約第 21 回締約国会議 (COP21) で「パリ協定」が採択され、国際社会が「ゼロ達成」に合意したためだ。 企業は脱炭素に続き、ネイチャーポジティブへの転換も迫られる。

世界のビジネス界 森林破壊ゼロへ

ネイチャーポジティブに先行するように、世界のビジネス界は「森林破壊ゼロ」への取り組みを始めている。 途上国では木材や農作物の販売で生計を立てる住民が多く、収入を増やそうと森林を伐採した農地を拡大している。 深刻な森林破壊を根絶しようと環境団体は企業への批判を強めている。 農園から原料を購入することで森林破壊に加担していると映るためだ。

そこで、森林を開発した農園と取引しないことで破壊阻止を支援する「森林破壊ゼロ」を宣言する企業が増えている。 国際団体「フォレストトレンド」のウェブサイトには宣言した 500 社以上が掲載されている。 米スリーエム (3M) や米アップル、ドイツ・アディダスなど海外企業とともにイオンや味の素など日本企業も名を連ねる。

政府も追随する。 21 年に英国で開かれた気候変動枠組み条約第 26 回締約国会議 (COP26) では、30 年までに森林破壊を終わらせる「グラスゴー・リーダーズ宣言」に日本を含む 143 カ国が参加した。 また、英国は大企業に対し、森林破壊が疑われる原材料の調査を義務化する方針だ。 欧州連合 (EU) の行政機関である欧州委員会も同様の規則導入を提案している。

森林破壊ゼロへの賛同が広がっているものの、企業への視線は厳しい。 チョコレート原料のカカオ栽培による森林破壊を調査する団体、米マイティー・アース(ワシントン)のサム・マワトワシニア・アドバイザーは「企業は(森林を破壊せずに栽培した)カカオを調達したと主張するが、それは調達量の一部にすぎない。 市民を混乱させるような発表は控えるべきだ」と注文を付ける。

2020 枠組み達成へ規制強化

森林破壊ゼロ以外にも企業への具体的な要求が増える。 COP15 で決まるポスト 2020 生物多様性枠組みは 21 項目の目標も設定する。 原案によると「ビジネスによる負の影響を半減」、「バイオテクノロジーによる生物多様性・人の健康への悪影響を防止」など、企業活動に影響する目標も多い。

また、有害な補助金を年 5,000 億ドル削減する目標も盛り込まれる。 気候変動をめぐって石炭火力発電への資金支援停止が金融機関に求められたのと同じ構図だ。 生物多様性においては生物資源の乱獲を助長する資金が「有害な補助金」とみなされる。 魚介類を大量に漁獲できる大型漁船の建造費が該当する。 枠組みの達成を目指し、各国で規制が強化されそうだ。 足立代表は「COP15 の決定を待たずに先進企業は動いている」と話す。 先手を打つことで規制が強まっても有利に事業を展開するためだ。

自然保護対策情報開示迫る

生物多様性に関連した情報開示を企業に求める国際的な組織「自然関連財務情報開示タスクフォース (TNFD)」の活動も始まっている。 温暖化対策の情報開示を迫る気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD) の "生物多様性版" だ。 TNFD は開示項目を定めた枠組みを議論している。 投資家は開示内容を精査し、対策を検討する企業を「持続可能」と評価する。 TNFD は 4 月に試行し、23 年には枠組みを完成させる。

日本で生物多様性保全というと敷地の緑化や植林が連想されやすい。 今後はネイチャーポジティブへの貢献が評価基準となり、破壊ゼロのような明確な目標設定を迫られる。 投資家も情報開示を要請するため、これまでの生物多様性保全から発想の転換が必要だ。 (編集委員・松木喬、NewSwitch = 3-1-22)

用語・生物多様性 = 種や生態系、遺伝子の多様性が保たれた状態。 資源調達や水の利用、廃水浄化などで企業も恩恵を受けている。 多様性が失われると事業活動に支障が出るため、企業にも対策が求められている。

松木喬・編集局第二産業部 編集委員 = 生物多様性はネイチャーポジティブ、気候変動はカーボンニュートラルと「世界ニ大環境目標」ができます。 しかも 30 年までに自然を回復軌道に乗せると期限を区切ったのは 50 年カーボンニュートラルと同じ。 「できる、できない」を議論する余地もなく、動いている状況も同じです。 工場の緑化や生き物の保護は取材をして興味を持てる活動ですが、世界は調達先の森林破壊阻止まで要請しています。 日本企業にとっては新たな課題と思います。