COP26、気温上昇「1.5 度」を世界目標へ 大胆な脱炭素化必須

英国で開かれている国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP26) は 13 日、会期を延長して大詰めの交渉が続いた。 これまでの議論で、温暖化対策の国際ルール「パリ協定」で掲げた産業革命前からの気温上昇を「1.5 度」に抑える努力目標を格上げし、各国が目指す世界目標に位置づける見通しになった。 この 10 年間で対策の加速が求められる。

2015 年に採択されたパリ協定では、気温上昇を 2 度よりかなり低くし、できれば 1.5 度に抑える目標を掲げてきた。 ただ、1.5 度目標は、大胆な脱炭素化が求められるため、これまでの COP の決定ではパリ協定の文言の域を出なかった。 その後、科学的な知見の蓄積や、各地で洪水や熱波など深刻な被害が相次いだことから、「2 度目標」では不十分とする機運が高まっていた。

今年 8 月に公表された国連の気候変動に関する政府間パネル (IPCC) の報告書は、このまま温室効果ガスの排出が進めば、今後 20 年以内に 1.5 度を超える可能性があると警鐘を鳴らした。 実現には、世界の排出量を 30 年までに 10 年比で 45% 減らし、50 年には実質ゼロにする必要がある。 COP26 に向けて各国政府が削減目標を引き上げ、今世紀半ばごろの実質ゼロを掲げる国も 130 以上に拡大し、1.5 度が現実的な目標として射程に入ってきた。

合意文書には、二酸化炭素を大量に出す石炭火力発電や非効率な化石燃料への補助金を廃止することのほか、各国に 5 年に 1 回のペースで求めていた削減目標の見直しを、年 1 回とする案も盛り込まれそうだ。 ガス削減量の国際取引を認める仕組み作りも焦点になっている。 うまく使えば削減が進むと期待されるが、過去 2 回の COP で折り合わず、先送りされてきた。 (グラスゴー = 川田俊男、香取啓介、asahi = 11-13-21)

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新車販売、2040 年に CO2 ゼロに COP26、24 カ国が合意

英国で開かれている国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で、英国政府は 10 日、2040 年までに新車販売をすべて電気自動車 (EV) など二酸化炭素 (CO2) を出さない「ゼロエミッション車」にする宣言に署名したと発表した。 宣言には、24 カ国の政府のほか、米カリフォルニア州など 39 の地域、米国のゼネラルモーターズ (GM) などの大手自動車メーカー 6 社も署名している。 日本や米国、中国、ドイツなどは参加を見送った。

宣言では、産業革命前からの気温上昇を 1.5 度に抑えるパリ協定の目標を達成するために、35 年までに世界の主要な市場で、40 年までに世界全体で、完全にゼロエミッションになるよう政府が取り組むとしている。 自動車メーカーは、35 年までに主要市場でゼロエミッション化を達成するために取り組むことなども盛り込んだ。 英国は COP26 に向けて、ガソリン車やディーゼル車から EV などへの移行を加速させるよう各国の政府やメーカーなどに求めてきた。 (グラスゴー = 川田俊男、asahi = 11-10-21)

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石炭火力発電廃止に 23 カ国が合意、中印などは不参加 COP26

[グラスゴー] 英グラスゴーで開催中の第 26 回国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP26) で 4 日、石炭火力発電廃止と新たな石炭火力発電所の建設停止に、インドネシア、ポーランド、ベトナムを含む 23 カ国が合意した。 ただ米国やオーストラリアのほか、中国やインドなどの主要な石炭消費国は参加しておらず、効果が疑問視されている。

石炭の燃焼で生じる温暖化ガスは気候変動の最大の要因になっており、世界的な気候目標の達成には脱石炭が必須。 今回の合意では、富裕国は 2030 年代、貧困国は 40 年代に石炭火力発電を廃止するほか、大半の国が国内外の新規石炭発電所への投資を行わないと確約した。 主催国の英国はこれまでも「石炭火力発電を過去のものにする」ことが COP26 の主要な目標の一つと表明。 COP26 のシャーマ議長は「石炭の終焉が視野に入ってきたと言える」と述べた。

この日は、「脱石炭連盟」が、主要産炭国のウクライナを含む 28 カ国が新たに加盟したと表明。 専門家も、一歩先に進んだと評価している。 ただ今回の合意には法的拘束力がないほか、一部の国は他の国から資金支援が得られなければ石炭火力発電を廃止できないと表明。 英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の 環境・社会プログラム専門家、アントニー・フロガット氏は「クリーンエネルギーへの移行が世界的にいかに平等でないかが浮き彫りになった」と述べた。 (Reuters = 11-5-21)

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30 年までに森林破壊停止、COP26 で 100 カ国超が署名

英国で開かれている国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP26) で 2 日、2030 年までに森林破壊を止め、回復させるとする宣言に 100 カ国以上が署名した。 官民あわせて 192 億ドル(約 2 兆 2 千億円)を、森林保護や修復にあてるという。

宣言には、日本や米国、中国のほか、アマゾンの違法伐採が問題になっているブラジルや、パーム油の生産のために熱帯雨林が減っているインドネシアなども署名した。 英政府によると、世界の約 85% の森林をカバーするという。 森林は温室効果ガスである二酸化炭素の重要な吸収源だが、火災などで破壊されると発生源になるとともに、生物多様性も失われる。 ジョンソン英首相は「巨大な生態系は私たちの地球の肺だ。 森林は、コミュニティー、生活、食料供給を支え、私たちが大気中に放出する炭素を吸収する」と述べた。 (英グラスゴー = 香取啓介、asahi = 11-3-21)


20 年の CO2 濃度、排出量減でも過去最高更新

【パリ = 白石透冴】 世界気象機関 (WMO) などは 25 日、大気中の二酸化炭素 (CO2) 濃度が 2020 年に過去最高を更新したと発表した。 新型コロナウイルス禍による経済の停滞で化石燃料由来の CO2 排出量は 19 年比約 6% 減ったが、森林などが自然に吸収する量を依然上回っていたとみられる。 温暖化の危険はさらに高まった。

20 年の CO2 濃度は約 413.2ppm (ppm は 100 万分の 1)で、19 年から 2.5ppm 増えた。 増加幅は過去 10 年の年平均である 2.4ppm を上回り、産業革命前の 49% 増の水準に達した。 他に温暖化効果をもたらすメタンと亜酸化窒素の濃度も高まった。 WMO によると、人間が出す二酸化炭素の約半分は海や森林などが吸収している。 吸収量は温暖化の速度を左右するが、今後干ばつ、森林火災、海水温の上昇などによって吸収量が減る恐れがあると警告した。 (nikkei = 10-26-21)


CO2 を大気から回収 成否のカギはドライアイス 子会社出向が転機

地球温暖化の原因になる二酸化炭素 (CO2) を、大気中から回収する研究が加速している。 東邦ガスが名古屋大などと組んで開発を進めているのが、ドライアイスを活用した新しい手法だ。 挑戦のきっかけは、ベテラン社員の子会社への出向だった。 大気中の CO2 の回収はダイレクト・エア・キャプチャー (DAC) と呼ばれ、欧米で開発が先行する。 特殊な膜や液体で CO2 を集める。

東邦ガスの研究員は「課題は効率化だ」と話す。 膜や液体に通すために空気の流れを変えたり、液体から CO2 をとり出したりするときに、エネルギーが要る。 それをまかなうために化石燃料を燃やせば、CO2 がまた出てしまう。 新たなエネルギーの利用をいかに抑えるかが、成否のカギを握る。 東邦ガスの新手法では液体に CO2 を吸収させる。 その後、通常なら液体を加熱して CO2 を分離させるが、熱を出すにはエネルギーが必要だ。 そこでドライアイスを活用する。

冷凍食品の保存などでおなじみのドライアイスは、CO2 を凍らせたものだ。 容器内に CO2 を吸収させた液体と気体の CO2 を入れ、気体を冷やしてドライアイスに変える。 すると容器内の圧力が下がり、加熱なしで液体から CO2 が分離されるという。

ポイントは、ドライアイス化のために新たなエネルギーをつくる必要がないことだ。 東邦ガスが家庭などに供給する都市ガスの原料は、海外産の液化天然ガス (LNG)。 日本にはマイナス約 160 度の液体の状態で届き、海水で温めて気体に戻している。 このときに利用した海水が冷やされる力は「冷熱」と呼ばれ、一部を発電などに使っている。 だが 7 割は利用されていない。これを使って CO2 を冷やしてドライアイスにする、というわけだ。

開発のきっかけは 2018 年夏にさかのぼる。 子会社に技術担当役員として出向中だった梅田良人さん (60) は、名大の則永行庸教授らが CO2 吸収液を研究中だと知って訪ねた。 協力を申し出て、半年ほど議論を重ねてドライアイスの活用にたどり着いた。 「ガス会社にとって CO2 は避けては通れない課題。 出向を機に、冷熱をもっと使えないか本格的に考えるようになった。」と梅田さん。 子会社では、冷熱を利用した樹脂の粉砕などの事業を手がけていた。 今春に定年退職したが、名大特任教授に転じて開発に携わり続けている。

政府の支援も受けており、東邦ガスは 24 年度に試作機をつくる予定だ。 早ければ 30 年代に LNG 基地で実証実験を始めたいという。 回収した CO2 を水素と反応させてメタンをつくり、都市ガスとして供給する構想も描く。 (内藤尚志、asahi = 10-18-21)

《東邦ガスの脱炭素計画》 2050 年度に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする計画について 7 月に公表した。 まずは 30 年度までに供給するガスの 5% 以上を CO2 が実質出ないものに変える。 顧客の省エネ支援や水素の供給網の整備などに加えて、CO2 の回収と再利用にも注力する。


環境問題に「関心ある」 75% マイバッグなど持参

マイバッグやマイボトルを持参する人が、7 割近くにのぼった。 日本生命が初めて行った環境問題についてのアンケートによると、環境問題に「とても関心がある」または「関心がある」と答えた人は、75.5% にのぼった。 関心の高いテーマは、「気候変動・地球温暖化」が 75.8% と、1 位だったほか、日常的な取り組みとして、「マイバッグ・マイボトルなどの持参」と答えた人が 67.8% と、最も多くなった。 また、持続可能な開発目標を意味する「SDGs」という言葉を「知っている人」は 77% にのぼった。 (FNN = 10-15-21)


夢の燃料・水素は総合力で日本先行 リード生かせるか

脱炭素の切り札として、世界が水素の普及に取り組み始めた。 水から作ることができ、燃やしても二酸化炭素 (CO2) を出さない「夢の燃料」と期待を集めてきた。 2050 年に世界市場が 2 兆 5,000 億ドル(約 280 兆円)に膨らむと予測され、国境を越えた連携も活発だ。 燃料電池や輸送など関連技術の開発で世界をリードしてきた日本は総合力の評価は高い。 今後も先行優位を生かせるのか。

水素の総合力は 1 位日本、2 位中国、3 位米国、4 位韓国、5 位ドイツ - -。 技術情報分析を手がけるアスタミューゼ(東京・千代田)が 10 - 19 年に世界で出願された 17 万弱の特許について、総合的な競争力を評価した。 先頭を独走する日本、米中韓の 2 位集団、独などの後続という構図になっている。 企業別でも日本の総合力が際立つ。 トヨタ自動車が 2 位以下を大きく引き離してトップ。 2 位に日産自動車、4 位にホンダ、7 位にパナソニックと、10 位以内に 4 社が入った。 10位台にも住友電気工業、京セラ、日本特殊陶業、日本ガイシ、東レなど部材・素材メーカーが居並ぶ。 燃料電池のほか、水素の製造や貯蔵・圧縮技術で評価が高い。

化石燃料はもちろん水からも製造できる水素は枯渇する心配がない。 燃やしても出てくるのは基本的に水だ。 日本は早くから産官学で技術開発に取り組み現在のリードがある。

韓国・現代自動車や米国勢が追撃

一方、競合他社にとって大きな脅威となりうる特許については海外企業が存在感を示す。 トップは韓国の現代自動車が保有する燃料電池車の制御技術で、故障時でもモーターを正確に動かせるようになる。 特許の総合力でも 3 位。 28 年までに商用車の全車種に燃料電池を搭載する計画で、トヨタと先頭を争う。

目立つのは米国の大学や企業だ。 2 位のカリフォルニア工科大学、3 位のガス・テクノロジー・インスティテュート(イリノイ州)、4 位のパイオニア・エナジー(コロラド州)をはじめ、20 位以内に 11 の企業と大学が入った。 ガス・テクノロジーは植物などを加熱してガスにし、水素や一酸化炭素が混ざった燃料の製造技術を開発した。 パイオニア・エナジーは化石燃料に高温の水蒸気を加え、CO2 と水素に分離して地下に隔離する技術を開発。 さらにガスを液体燃料にする装置も研究している。

製造めぐり競争、海外と協業も

日本には様々な分野で優れた技術が集中し、アスタミューゼは水素を事業化しやすい環境にあると分析する。 しかし、水素社会への道のりは険しい。 政府は 16 年、普及への数値目標を掲げた。 20 年までに燃料電池車 4 万台、水素ステーション 160 カ所と「堅め」に設定したにもかかわらず、達成できていない。 地球温暖化に対する危機意識の急速な高まりで、欧米やオーストラリア、中国、韓国なども水素の製造や普及に取り組み始めた。 日本政府は 30 年に 1 立方メートル 30 円、50 年に同 20 円に引き下げる目標を掲げる。 安く大量に作るとともに、グローバルな供給網を築くことがカギを握る。

日本は水素の製造に使う再生可能エネルギーのコストが高い。 協業先として模索が始まったのが海外だ。 近年、太陽光発電を中心に再エネが急速に普及し、多くの国でコストダウンが進む。 再エネから作る CO2 フリー水素の利用が現実味を帯びてきた。

住友電工は 17 年、豪クイーンズランド州が進める集光型の太陽光発電による水素製造プロジェクトに東京大学などと参加した。 太陽を追尾しながら光をレンズで集めて発電し、海水などを処理して水素を作る。 現在は太陽光発電の余った電力をいったんレドックスフロー電池に蓄え、電力網に流す実証事業に参加し、技術やシステムの検証に取り組んでいる。 プロジェクトでは、25 年に開かれる大阪万博に合わせて日本へ輸出する計画だ。

ENEOS は海外で生産した CO2 フリー水素を取り扱いやすいメチルシクロヘキサン (MCH) にして輸入。 水素を取り出して燃料や化学品の原料として利用する実証実験に取り組むとともに、事業化に向けた調査を進めている。 国内に運んだ MCH から水素を取り出し燃料や化学品の原料として利用する。

マレーシアでは、2 つのプロジェクトが動く。 水力発電の余った電力を使ったり、石油化学プラントから出る副生水素を活用したりする。 いずれも年に数万トンの水素を供給できる可能性があり、安定的でコスト競争力が高いという。 水力発電の活用では、エンジニアリング会社も入って事業化調査を続けている。 オーストラリアでは、太陽光や風力の余った電力を使う事業でエネルギー大手との協業の検討を始めた。

岩谷産業や川崎重工業などは 21 年 9 月、豪の電力会社と組み、再エネから水素を作って液化し、専用の運搬船で日本に輸入する事業に向けた調査を始めると発表した。 26 年に日産 100 トン以上、31 年に同 800 トン以上を目指す。 政府はグリーンイノベーション基金から、こうした産学による水素製造・供給の実証に約 3,700 億円を投じ、後押しする計画だ。 ただ安定供給しても普及するわけではない。 政府は規制緩和や促進優遇策などにもっと知恵を絞る必要がある。 (青木慎一、日経産業新聞 = 10-7-21)


トヨタと FC 発電機を開発 長州産業が米国で水素事業に参入

長州産業(山口県山陽小野田市、岡本晋社長)は米国で水素事業に参入する。 トヨタ自動車の協力で開発した定置式燃料電池 (FC) 発電機を、2022 年春をめどにカリフォルニア州港湾局に納入する。 全額出資の現地法人・長州産業アメリカをすでに設立、営業活動を始めている。 水素を核に米国で環境関連事業の業容拡大を図る。 開発した発電機「MizTomo (ミズトモ)」は、トヨタの燃料電池車 (FCV) 「MIRAI」に搭載する FC システムを利用した。 蓄電池や冷却設備を備えており、出力は 200 キロワット。 20 フィードコンテナサイズの省スペース仕様だが、最大 8 台の並列運転で 1,600 キロワットの自立運転が可能となる。

また長州産業のソーラー水素ステーション「SHiPS (シップス)」を組み合わせることで、太陽光発電で水素を生成・供給するほか、非常時は防災基地として活用できる。 カリフォルニア州は二酸化炭素 (CO2 の排出削減に積極的に取り組んでおり、水素利用先進地として知られる。 港湾局も非常用電源や荷役機械、停泊船舶への電力供給などを従来の軽油から FC に置き換えたい意向が強いことから納入が決まった。 価格は非公表。

岡本社長は「環境意識が高い西海岸では社会貢献も図れる」と期待しており、数年後には年間数十億円の事業規模に育てる考え。 シップスは 17 年に発売した小型水素ステーション。 19 年に長野県企業局に納入するなど利用が広がっている。 (NewSwith = 9-30-21)


海のごみをドローンで回収 横浜、親子連れが環境問題学ぶ

国連の「持続可能な開発目標 (SDGs)」採択から 6 年を迎えた 25 日、八景島シーパラダイス(横浜市金沢区)は環境啓発ツアーを行った。 親子連れら約 35 人が参加し、東京湾の生き物について学んだり、プラスチックごみを海洋ドローンで回収したりして、海の環境問題を身近に考える一日を過ごした。 同園の「うみファーム」では、開業当初から海の環境を守る取り組みに力を入れてきた。 この日は、新たに導入した海上のごみを回収するドローンをお披露目した。

参加者は東京湾に生息するヒトデや魚などとふれあいながら、地上からは見えない海中で多様な生き物が暮らしていることを学習。 その後、子どもたちが器用にドローンを操作して、海に漂うペットボトルやボールなどのごみを回収すると歓声が上がった。 同館ではドローンのほか、浮遊ごみの回収装置も設置しているが、1 日に平均約 1 キロのごみが流れ着くという。

埼玉県から家族で訪れた小学 4 年の男児 (9) は「海の生き物が絶滅しないよう、自分が出すごみを減らしていきたい」と話し、小学 2 年の妹 (7) も兄の言葉にうなずいた。 ごみを減らすため、家族でペットボトルを買うのを控えているという。 ドローン体験は 10 月 9 日から、同館のツアー「東京湾ワンダーウォッチャーズ」内に組み込む。 問い合わせは同園、電話 045(788)8888。 (カナロコ = 9-26-21)


30 年に温室効果ガス 16% 増も 削減の引き上げ急務 国連報告書

10 月末から英国で開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP26) に向けて、条約事務局が 17 日、各国の温室効果ガスの削減目標を分析した報告書を発表した。 今の目標のままだと 2030 年の排出量は 10 年と比べて約 16% 増えるとし、早急に削減量の大幅な引き上げが必要だと指摘している。 温暖化対策の国際ルール「パリ協定」は、産業革命以降の気温上昇を 2 度未満、できれば 1.5 度に抑える目標をかかげている。 「1.5 度」の達成には 30 年までに 10 年比で 45% 削減しなければならない。

今回の報告書は、パリ協定に基づいて 7 月末までに提出された各国の削減目標から分析。 目標を引き上げるなどした 113 の国だけでみると、30 年には 10 年比で 26% 減らせるとした。 一方、それ以外の国を含めると逆に約 16% 増えるとした。 エスピノーザ事務局長は「16% の増加は非常に大きな懸念」、「COP26 までに多くの(引き上げた)削減目標が出てくることを期待する」としている。

日本は 30 年度の削減目標(13 年度比)を従来の 26% から 46% に引き上げることを決めている。 ただ、まだ国連に提出しておらず、今回の報告書には反映されていない。 条約事務局は、日本などが提出する目標を盛り込んだうえで、10 月下旬に改めて分析結果をまとめる予定だ。 (川田俊男、asahi = 9-18-21)


嫌われ者になったドイツの風力発電は危機的状況に

記事コピー (9-6-21)


「八峰能代沖洋上風力」総出力を倍増 国方針受け、変更を説明

ジャパン・リニューアブル・エナジー(東京、JRE)など 3 社による合同会社「八峰能代沖洋上風力」は 3、4 の両日、秋田県の八峰町と能代市で住民説明会を開き、国が近く風力発電の促進区域に指定する見込みの「八峰町・能代市沖」で計画している洋上発電事業について、総出力を最大 18 万キロワットから 36 万キロワットに倍増することを明らかにした。

合同会社は JRE と東北電力、ENEOS (エネオス)の 3 社が出資。 2017 年 12 月に公表した計画段階環境配慮書と 18 年 8 月の環境影響評価方法書では、最大出力を 18 万キロワットとしていた。 その後、国が洋上風力発電の大量導入などの方針を示したことを受け、事業規模を大幅に拡大してコストダウンを図る必要があると判断し、計画を見直した。 (秋田魁新聞 = 9-5-21)


田んぼの可能性 「環境も経済も」実現

昔ながらの田んぼは、生きものにあふれ多くの恵みを与えてくれる。 様々な農薬や機械を導入し、大がかりな工事で四角く大きな区画になるにつれ、労力は軽減され、面積あたりのコメの収量も上がった。 かつての農作業は多くの人手がかかったから、田植え、草取り、稲刈りなど近所や親戚同士で手を貸し、助け合いながら行われてきた。 近代化された田んぼでそのような姿は見られない。 サッカーグラウンドほどの広さの田んぼに農作業用の機械が 1 台、淡々と仕事をこなしていくが、孤独だ。

失われてきたものは大きい。 濃密な人間関係は、時に面倒と感じることもあるだろうが、苦楽を共にしたからこそ、祭りなどの地域独自の文化が育まれてきた。 経済的な効率性を追い求めた結果、多くの生きものも失われてきた。 メダカ、タナゴ、ゲンゴロウ、トノサマガエルなど、かつての子どもたちの遊び相手の姿を見つけるのは、年々難しくなっている。 環境省が選定した絶滅のおそれのある野生動植物の種のリスト(レッドリスト)には、本来身近な存在だったはずの種名がたくさん並んでいる。

豊かな自然環境があることで私たちの生活が支えられているし、持続可能な社会をつくっていくためにも必要だと、多くの人が理屈では感じているはずだ。 しかし、街に暮らしていると、食材がいつでも手に入るし、素材の姿がまったく想像できない食べものも数多いから、目の前の食事が自然の恵みだという実感がどうしても薄れてしまう。 この分断された構造を冷静に見ると、巨大な都市はヒトという生きものが現実逃避をする "ひきこもり空間" に見えてくる。

SDGs (持続可能な開発目標)の取り組みをはじめ、世界中で持続可能な社会への模索が続いている。 これまでは、一つの目標を達成しようとして、他の目標が損なわれてしまうような事例も多かった。 「誰も取り残さない」方針を掲げる SDGs では、全ての目標が前進あるのみ、部分的な後退は認めていない。 経済を優先して環境やいのちを犠牲にするのではなく、将来世代に自信を持って渡せる良い環境をつくったうえで、経済も回していくことが大切だ。

重要な湿地を保全するためのラムサール条約では、湖沼などの中核となる自然環境と、その周辺の水田という組み合わせでの湿地登録が行われてきた。 環境も経済も共に真剣に取り組んだ田んぼが生まれれば、田んぼ単独でラムサール条約への登録が行われていくことだろう。 そんな社会を実現したいし、田んぼにはそれだけの可能性があるのだ。 ((NPO 法人田んぼ理事長 舩橋玲二、nikkei = 9-4-21)


炭素税導入を要望 企業の二酸化炭素排出削減で 環境省

環境省は 31 日、来年度の税制改正で、地球温暖化対策として二酸化炭素 (CO2) の排出量に応じて税金をかける「炭素税」の本格導入などを要望した。 企業に新たな負担が伴うことから、経済産業省は導入に慎重な立場で、今後議論が進むことになる。 要望では、炭素税を含め、CO2 に値段をつけて排出量の削減を促す「カーボンプライシング (CP)」の推進を新たに盛り込んだ。 成長につながるものはちゅうちょなく取り組むとし、年内に方向性を示したうえで、対応を行うことを求めている。

一方で、税率などの具体的な制度設計は示しておらず、議論は難航しそうだ。 小泉進次郎環境相は 31 日の会見で、石油会社などが払う石油石炭税の税率についても見直しが必要との認識を示した。 CP については、2050 年の脱炭素社会の実現に向けて、菅義偉首相が環境省と経産省に検討を指示。 8 月までに両省の専門家会議が示した中間取りまとめでは、炭素税など CP の本格導入については結論を先送りしていた。 (川田俊男、asahi = 8-31-21)


「発電も給湯も」のガスエンジン、水素混焼で出力も維持

東邦ガスは 26 日、工場や病院、大学などの発電設備に利用されるコージェネレーション(熱電併給)用のエンジンについて、燃料の都市ガスに水素を混ぜて燃やす試験運転に成功したと発表した。 二酸化炭素の排出を減らせる。 従来型の出力を維持しながら「混焼」できたのは国内初という。 コージェネは都市ガスなどで動くエンジンで発電し、排熱も使って給湯などに生かせるシステム。 需要地に置くため送電ロスがなくエネルギー効率が高い。 今回の試験運転では、異常燃焼などの恐れから混焼が難しかった水素を体積比で 35% 混ぜることに成功した。 都市ガスを燃やす従来型のエンジンよりも二酸化炭素の排出量を約 13% 減らすことができるという。

東邦ガスによると、出力を落として混焼させた例は他の企業でもあったが、生み出すエネルギー量も減ってしまう課題があった。 試験で出力を維持できた意義は大きいといい、担当者は「安全性やコストなどを考慮しつつ、いずれ実用化をめざしたい」と話した。 東邦ガスは 2050 年までに温室効果ガスの排出実質ゼロをめざす。 水素の利用を促進して脱炭素の流れを加速させたい考えだ。 (根本晃、asahi = 8-26-21)


世界的おもちゃメーカーもプラスチックごみ削減へ 環境に配慮

プラスチックごみの削減が大きな課題になる中、世界的なおもちゃメーカーの間では環境に配慮した素材を使った商品づくりが相次いでいます。 バービー人形を手がけるアメリカの大手おもちゃメーカー「マテル」はほぼ海洋プラスチックごみを再生した素材でできた人形を初めてつくり、今月中旬から日本でも販売を始めました。 人形や花柄のワンピース、それに別売りのパラソルやイスなど全体の 9 割が再生素材でできているということです。 また、商品のパッケージにもプラスチックではなく紙が使われています。

マテル・インターナショナルの小林美穂さんは「2030 年までにすべての商品とパッケージに再生素材などを使うことを目指している。 子どもたちが環境問題について考えたり、まわりの人たちと話したりするきっかけになればと思っています」と話していました。

一方、ブロックのおもちゃで知られるデンマークのメーカー「レゴグループ」はことし 6 月、ペットボトルを再利用したブロックの試作品を公開しました。 1 リットルのペットボトル 1 本から平均で 10 個分のブロックの原材料が確保できるということです。 会社は今後、すべての商品を使用済みペットボトルや植物由来の素材などを使って生産することを目指すとしていて、プラスチックごみの削減に向けた動きが幅広い業界に広がっています。 (NHK = 8-23-21)


SDGs 学ぶビーガン給食 環境意識、多様な価値観も

東京都八王子市立浅川小が 5 月から肉や魚、卵など動物由来の食材を使わない「ビーガン(完全菜食主義者)給食」を月 1 回提供している。 畜産業に伴う温室効果ガス排出を削減できる菜食は、国連が掲げる持続可能な開発目標 (SDGs) の視点からも注目される。 一人一人の食生活が環境に与える影響を意識し、多様な価値観を学ぶ狙いもある。 国連食糧農業機関 (FAO) 報告では、人為的に排出される温室ガスのうち畜産業に由来するものは約 15% を占める。 環境への配慮や動物愛護の観点からビーガンは国内外で増えているという。 普段の給食に完全菜食を採り入れる例は珍しい。 (kyodo = 8-16-21)


世界の気温、20 年以内に「1.5 度上昇」 IPCC 報告

国連の気候変動に関する政府間パネル (IPCC) は 9 日、地球温暖化の科学的根拠をまとめた作業部会の報告書の最新版(第 6 次評価報告書)を公表した。 今後 20 年以内に産業革命前からの気温上昇が 1.5 度に達する可能性があるとし、温暖化の原因は人類が排出した温室効果ガスであることについて、「疑う余地がない」と従来の表現より踏み込んで断定した。

IPCC が総合的な報告書を公表するのは 2014 年以来 7 年ぶり 6 回目。 報告書は、科学論文 1 万 4 千本以上を各国の研究者たちが評価したもので、気候変動に関する最新の科学的知見として共有される。 温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の下で各国が進める国際交渉や、各国の政策作りのよりどころとなる。

パリ協定では、気温上昇を 2 度よりかなり低く、できれば 1.5 度に抑える目標を掲げている。 6 月の主要 7 カ国 (G7) 首脳会議でも、共同声明で「1.5 度に抑えることを射程に入れ続けるために努力を加速させる」とするなど、国際目標になっている。 報告書では、1.5 度目標について、温室効果ガスの排出量や将来の社会像にあわせて五つのシナリオを評価。 いずれの場合も今後 20 年で 1.5 度に達してしまう可能性があるとした。 さらに、今世紀中に排出を「実質ゼロ」にしなければ、2 度を超える可能性が非常に高い、とした。

化石燃料に依存なら 2100 年は 4.4 度上昇

2081 - 2100 年の平均気温は、50 年ごろに排出を実質ゼロにする「非常に低い排出シナリオ」でも 1.4 度上昇、化石燃料に依存して 50 年までに排出が倍になる「非常に高い排出シナリオ」では 4.4 度上昇すると評価した。 ただ、非常に低い排出シナリオなら一時的に 1.5 度を超えても、今世紀末には 1.5 度未満に戻る可能性があるとも指摘している。

一方、今回の報告書では、温暖化の原因が人間の活動による温室効果ガス排出かどうかについて、可能性を示すにとどめてきた従来の報告書よりも踏み込んだ。 前回は、95% 以上の確信度を表す「可能性が極めて高い」との表現だったが、今回は「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」とし、厳然たる事実だと言い切った。 (香取啓介、asahi = 8-9-21)


広がる「グリーンアルミ」 Apple や BMW が採用
再生エネで製造、CO2 抑制

世界的に脱炭素の流れが進む中、二酸化炭素 (CO2) 排出が少ない電力や製法で造る「グリーンアルミニウム」の市場が拡大している。 資源各社が開発を進め、米アップルや独 BMW など大手メーカーで採用が進む。 環境意識が高い消費者への訴求だけでなく、炭素税など将来的な規制強化への対応もにらむ。 プレミアム(割増金)を払って調達する動きもある。

英豪資源大手のリオ・ティントと米アルコアの合弁会社であるエリシスは、CO2 の排出をほぼなくした「ゼロカーボンアルミ」を開発した。 水力発電を使うと同時に、アルミ電解炉内の炭素電極を新しい材質に置き換えた。 2024 年以降の本格的な商業生産を目指す。 米アップルがノート型パソコンの最上位機種に採用する。 自動車では BMW グループが今年 2 月、中東のエミレーツ・グローバル・アルミニウムが太陽光発電で製造したアルミを調達すると明らかにした。 年 4 万 3 千トンを調達し、年間 22 万 2,000 トンの排出量を削減できるという。

ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブは、リオ・ティントが水力発電で製造した低炭素のアルミと、リサイクル原料を併用した素材を導入した。 北米で販売するビールブランドに採用し、1 缶あたり 30% 以上の排出量削減が可能とする。 企業の動きの背景には、アルミ製造時の環境負荷の大きさがある。 アルミは軽量で電気自動車 (EV) での使用が広がるなど、脱炭素で需要増が見込まれる素材の一つだ。 だが国際アルミニウム協会 (IAI) によると、18 年の世界のアルミ部門の排出量は CO2 換算で 11 億 2,700 万トンと、世界の総排出量の 3% を占める。

排出量を左右するのが利用する電力源だ。 アルミ製造 1 トンあたりの排出量は石炭火力の場合に約 15 トン、液化天然ガス (LNG) でも 8 - 10 トンに上るという。 一方、水力など再生可能エネルギーでは約 2 トン前後と大きく減らせる。 リオ・ティントやロシアのルサールなどアルミ大手は、電力の大半を水力で賄い、環境負荷を抑えたアルミを従来品と区別した形で販売する。

アルミの調達価格にも変化が表れ始めた。 アルミの現物価格はロンドン金属取引所 (LME) で決まる地金の価格に、運搬費などを加味した地域別の調達費、地金の形状別の加工費を上乗せする。 この上に、さらに「グリーンプレミアム」を負担する企業が出てきた。 LME のアルミ価格は現在 1 トン 2,600 ドル前後。 グリーンプレミアムは 10 - 15 ドルほどと低水準だが、「今までゼロだったものに価値が付いたのは大きな変化だ(ルサールジャパンの村上歩代表)」との声もある。

環境や人権問題などに配慮した商品を好む「エシカル(倫理的)消費」の浸透が企業の背中を押している。 非エシカルと見なされれば、製品の売り上げにも影響を与える可能性があり、企業側も無視できない。 欧州で先行する規制強化も影響する。 欧州連合 (EU) が導入を検討する「国境炭素調整措置 (CBAM)」は環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける仕組みで、国境炭素税とも呼ばれる。 アルミや鉄鋼などはその対象だ。

英調査会社のウッドマッケンジーは「排出量 1 トンあたりの炭素税が 150 ドルになった場合、排出量が最も多いアルミ生産者の製造コストは 2 倍以上になる」と試算する。 グリーンアルミの開発は生産者にとり、将来の経営リスクを軽減することにつながる。 欧州では原材料を含む製品の寿命全体で CO2 排出量を評価する「ライフサイクルアセスメント (LCA)」を規制の対象にする議論も進む。 自動車などのメーカーにとっても、原材料を含むサプライチェーン(供給網)全体での排出量削減が求められる。 (コモディティーエディター・浜美佐、蛭田祥子、nikkei = 8-7-21)

グリーンアルミ とは : 大量の電力を消費して製造する従来品に対し、二酸化炭素が発生しない、または発生量が極めて少ない電力源や製造法で作ったアルミを指す。 水素を使って製造した鉄をグリーンスチールと呼ぶなど、製造時の排出量が多い素材を環境に優しい製法で作ろうとする動きはアルミ以外にも広がる。


過去 1 年のアマゾン森林消失、広島県に相当 環境団体「野放し」と批判 - ブラジル

【サンパウロ】 ブラジル国立宇宙研究所 (INPE) は 6 日、2020 年 8 月から 21 年 7 月までの 1 年間にアマゾン盆地に位置する「法定アマゾン」 9 州で 8,712 平方キロの熱帯雨林が破壊されたとの暫定推計を明らかにした。 広島県の面積に相当する。 近年で最悪だった前年からは 5.8% の減少にとどまった。 アマゾンでは、環境保護を軽視するボルソナロ政権が誕生した 19 年から消失が加速。 環境 NGO 「オビセルバトリオ・ド・クリマ」は「アマゾンでは環境犯罪は野放しだ。 それどころか、現政権がパートナーとなっている。」と厳しくボルソナロ政権を批判した。 (jiji = 8-7-21)


「廃プラ根絶」、「"有害な補助金" 減額」 … 国連が掲げた生態系保全・新目標は企業活動を左右する

国連の生物多様性条約事務局が生物を守る新しい世界目標の原案を公表した。 21 個の目標があり、事業が与える生態系への影響の半減を迫るなど企業活動も左右しそうだ。 新目標は 10 月に中国・昆明市で開催される生物多様性条約第 15 回締約国会議 (COP15) で正式に決まる。 新目標は 2020 年が期限だった「愛知目標」の後継となる。 20 年中に COP15 を開いて採択するはずだったが、新型コロナウイルスの大流行によって延期されていた。

生物多様性条約事務局は 20 年 1 月、「ゼロ・ドラフト」と呼ばれる新目標の草案を公表し、すでに各国代表や NGO 関係者が議論を重ねてきた。 今月 12 日に公表された原案は「一次ドラフト」の位置付けで、合意に向けた土台となる。 ゼロ・ドラフトで話題となった「30 年までに生物多様性の損失をゼロにする」という意欲的な目標は消えたが、「野心度は維持している(環境省担当者)」という。 またゼロ・ドラフトで 20 個だった目標は 21 個に増加。 数値目標が目立ち「議論は前進した(同)」とみている。

例えば、目標 7 には「環境への養分流出を半減、殺虫剤の 3 分の 2 を削減、プラスチック廃棄物の排出を根絶」と並んでおり、殺虫剤メーカーや農業、プラスチック製品を扱う企業に影響が出そうだ。 目標 15 には「すべてのビジネスが生物多様性に対する依存状況と影響を評価・報告し、負の影響を少なくとも半減」と盛り込まれた。 中小企業にも対応を求めるが、「影響を測定する指標が定まっていない(同)」のも事実。 気候変動対策では二酸化炭素 (CO2) 排出量の削減が目標となるが、生態系への影響は定量化しづらく、数値目標の設定が難しい。

一方、23 日までイタリアで開かれた主要 20 カ国・地域環境・気候・エネルギー閣僚会合は共同声明で、TNFD (自然関連財務情報開示タスクフォース)に言及した。 TNFD は国連開発計画などによって 6 月に設立され、企業に生物多様性に関連した情報開示を求める議論を始めたばかりだが、国際社会では注目度が高い。 他にも目標 18 で生物多様性に有害な補助金を「少なくとも年 5,000 億ドル減額」と明記した。 気候変動対策では石炭火力発電の建設を支援する補助金を制限する動きが広がったように、生態系の損失を助長する補助金は見直しが迫られる。

8 月には COP15 に向けた準備会合が開かれる。 その場で「資金などの数値目標の根拠を把握する(環境省担当者)」予定だ。 特に資金は先進国と途上国が対立する火種となる。 原案では保全対策として年 2,000 億ドル、途上国支援として年 100 億ドルが記載されており、今後の交渉を左右する。 気候変動対策では 15 年に「パリ協定」が採択されると、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする脱炭素が潮流となった。 生物多様性でも新目標が企業のビジネスを大きく変革する可能性がある。 (編集委員・松木喬、NewSwitch = 7-31-21)