中国の景気回復、なおまだら模様 - 1 - 2 月に大幅なプラスでも

→ 工業生産と小売売上高の伸び、予想上回る - 固定資産投資は下回る
→ 力強い工業生産・外需、消費の見劣りという回復の違いも浮き彫りに

中国の経済指標は 1 - 2 月に大幅な増加となった。 しかし、新型コロナウイルス禍に伴う世界で最初のロックダウン(都市封鎖)から 1 1年を経ても、景気回復はまだら模様だ。 1 - 2 月の工業生産と小売売上高、固定資産投資はいずれも 30% を超える伸びを示したが、前年同期との比較でゆがみが生じている。 基調的な勢いとしては、力強い工業生産・外需と、見劣りする消費持ち直しという回復ペースの違いが浮き彫りになっている。

国家統計局が 15 日発表した 1 - 2 月の工業生産は前年同期比 35.1% 増。 ブルームバーグ調査の予想中央値は 32.2% 増だった。 小売売上高は同 33.8% 増加。 予想は 32% 増。 1 - 2 月の都市部固定資産投資は前年同期比 35% 増。 40.9% 増が見込まれていた。 2 月末の失業率は 5.5% と昨年末の 5.2% から上昇した。 固定資産投資の伸びが予想を下回ったほか、失業率は悪化しており、経済の持ち直しが一様でないことを示唆している。 個人消費は回復しているものの、小売売上高は工業生産ほどの力強い改善にはなっていない。

国家統計局の劉愛華報道官は声明で、「コロナがなお世界的に猛威を振るい、世界経済が厳しい課題に直面しているという点をわれわれは認識する必要がある」と指摘。 「国内的には不均衡な景気回復が依然として顕著で、経済持ち直しの基盤はまだしっかりしていない」とコメントした。 中国は早期にコロナを抑え込んだ後、医療用品や在宅勤務用機器の国外需要が急拡大したことで、昨年はプラス 2.3% の経済成長を確保した。 エコノミスト予想では 2021 年は 8.4% 成長が見込まれる一方、中国政府は今年の成長率目標を「6% 超」と控えめな水準に設定している。

華興証券の●(= まだれに龍)溟エコノミストは、この日発表された投資指標は製造業がなお慎重姿勢であることを示したとし、「民間企業を中心に利益の伸び回復が確認できた後にようやく投資意欲が高まることになるだろう」と分析。 消費者の需要も引き続き弱く、「春節(旧正月)による全国の消費の押し上げ効果は予想よりも小さかった可能性がある」との見方を示した。 (Bloomberg = 3-15-21)

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中国、20 年 2.3% 成長 10 - 12 月は 6.5% 増と回復拡大

不動産開発投資が経済持ち直しに大きく貢献した

【北京 = 川手伊織】 中国国家統計局が 18 日発表した 2020 年の国内総生産 (GDP) は、物価の変動を除く実質で前年比 2.3% 増えた。 新型コロナウイルスを早期に抑えこみ、投資など企業部門が回復をけん引した。 主要国で唯一プラス成長を維持したもようだ。 20 年 10 - 12 月は前年同期比 6.5% 増と、7 - 9 月(4.9% 増)より拡大した。 中国経済は新型コロナが直撃した 20 年 1 - 3 月、1992 年に公表を始めた四半期ベースで初のマイナス成長に沈んだ。 その後、新型コロナを抑え込んで生産を立て直した。 投資や輸出が成長を押し上げ、成長率は 4 - 6 月以降拡大した。

ただ 20 年暦年の伸び率は、文化大革命の最終年で経済が混乱した 1976 年以来、44 年ぶりの低さとなった。 20 年の実質 GDP は 10 年の 1.94 倍にとどまり、中国共産党が掲げた倍増目標は未達だった。 20 年 10 - 12 月の実質成長率は日本経済新聞社と日経 QUICK ニュースが調査した市場予想の平均 (5.9%) より上振れした。 新型コロナの感染が広がる前の 19 年 10 - 12 月 (6.0%) を上回った。 生活実感に近い名目成長率は 6.6% と、7 - 9 月 (5.5%) より拡大した。 前期比の実質成長率(季節調整済み)は 2.6% だった。 7 - 9 月 (3.0%) よりやや鈍化した。 先進国のように前期比の伸びを年率換算した成長率は 11% 程度となる。

18 日は GDP とは別に他の経済統計も発表した。 工場やオフィスビルの建設など固定資産投資は 20 年通年で前年比 2.9% 増えた。 春以降、政府がインフラ投資を加速。 主な担い手である国有企業の投資は堅調で、鋼材やセメントの生産も好調だった。 一方、民間投資は伸び悩み、設備投資は減少した。 投資のうちマンション建設など不動産開発投資は 7.0% 上回った。 新型コロナ対応の金融緩和であふれたマネーが金融市場に流れ込み、1 月からの累計額は 6 月にいち早く前年同期比プラスに転じた。 外需も成長を押し上げた。 輸出(ドル建て)は前年を 3.6% 上回った。 輸出から輸入を差し引いた貿易黒字は 27% の大幅増となり、金額も最高だった 15 年に次ぐ過去 2 番目の大きさとなった。

百貨店やスーパー、電子商取引 (EC) などの売上高を合計した社会消費品小売総額(小売売上高)は 20 年通年で 3.9% 減少した。 比較可能な 1994 年以降で初めてマイナスとなった。 家計調査でみた消費支出も実質 4.0% 減少した。 要因は経済の正常化に対して所得の改善が遅れたことだ。 1 人あたりの実質可処分所得の伸びが 2.1% にとどまり、6% 前後だった新型コロナ前と比べて見劣りする。 工業生産は 2.8% 増えた。 投資関連の原材料のほか、リモート需要が追い風となったパソコンなどの生産が伸びた。

足元の経済成長率はすでに新型コロナ前の水準に戻った。 21 年は前年の反動増もあり、中国当局は 8% 前後の高成長を見込む。 ただ新型コロナの感染が局所的にぶり返している。 省をまたぐ移動制限が消費など経済活動を鈍らせる可能性もある。 (nikkei = 1-18-21)


中国の輸出急増、ロックダウンの前年から回復 - 需要大幅増で

→ 1 - 2 月の貿易統計の数字はエコノミスト予想を大幅に上回る
→ データは前年のべースの低さで歪みがあるが、なお力強い需要示す

中国の今年 1 - 2 月の輸出は前年同期比で急増した。 工業製品への世界的な力強い需要を反映しているが、中国経済は昨年ロックダウン(都市封鎖)下にあり、数値は前年同期のベースの低さで歪みも出ている。 税関総署が 7 日発表した 1 - 2 月の輸出はドルベースで 60.6% 増加し、ブルームバーグがまとめたエコノミストの予想中央値(40% 増)を大きく上回った。 輸出は 2 月単月では前年同月の 2 倍強となった。 1 - 2 月の輸入は前年同期比 22.2% 増。 市場予想は 16.0% 増。 同期の貿易黒字は 1,032 億 5,000 万ドルに達し、予想の 590 億ドルの黒字を大きく上回った。

中国の年初 2 カ月間の経済活動は春節の連休のため、例年変動が激しい。 昨年は新型コロナウイルス封じ込めのために企業も活動を停止しており、今年の貿易統計の数字には一段と歪みが生じた。 医療機器や在宅勤務向け製品への世界的な需要急増で中国の輸出は過去数カ月間に大幅に増えており、パンデミックからの同国の V 字型回復を下支えるする要因となっている。  税関総署は 1 - 2 月の力強い貿易統計について、米国や欧州諸国など主要貿易相手国の需要改善を反映しているほか、中国国内の景気回復が輸入の伸びを押し上げ、昨年の輸出入の落ち込みの影響もあると説明。

マッコーリー・グループの中国担当チーフエコノミスト、胡偉俊氏は先進国が生産拡大を始める中で、今年の中国の輸出の伸びが今後緩やかになると予想している。 国別では 1 - 2 月の対米貿易黒字が 513 億ドルとなった。 米国との貿易額は前年同期比で 81.3% 増加した。 (Bloomberg = 3-7-21)


中国、21 年成長目標「6% 以上」 全人代が開幕

【北京 = 川手伊織】 中国の第 13 期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の第 4 回会議が 5 日午前、北京の人民大会堂で開幕した。 李克強(リー・クォーチャン)首相は所信表明にあたる政府活動報告で、2021 年の実質経済成長率目標を「6% 以上」と設定した。 選挙制度の全面的見直しを議論する香港問題では「外部勢力の干渉に断固反対する」と強調した。 11 日に閉幕する。 会期は例年 10 日前後だったが、新型コロナウイルスを意識して 20 年に続き、1 週間に短縮する。

李氏は政府活動報告で「経済回復の基盤はいまだ固まっていない」と述べ、雇用回復の遅れや個人消費の伸び悩みを課題に挙げた。 21 年の成長率は、6% 以上という数値目標を掲げた。 国際機関や中国内外のシンクタンクは 8% 前後との予測が多い。 世界経済の不確実性が高いなか、6% 以上という設定は「最低ライン」を強調する意味合いがある。 消費を左右する雇用を巡り、20 年は 5.6% だった失業率を 5.5% 前後にするとした。 都市部の新規雇用は 1,100 万人以上とした。

中国は新型コロナを早期に抑え込み、20 年 10 - 12 月の経済成長率はウイルスが広がる前の水準に戻った。 政府は危機対応で拡張した財政・金融政策の正常化も慎重に探る。 21 年の GDP に対する財政赤字の比率は 3.2% とする。 過去最高の 3.6% 以上とした 20 年より下げる。 20 年に新型コロナ対応で発行した財政赤字に算入されない「特別国債」は発行しない。 金融政策は「合理的かつ適度なものにする」と述べた。 人民元相場の安定や零細企業の資金繰り難解決に注力する。

21 - 25 年の第 14 次 5 カ年計画では、李氏は「双循環(2 つの循環)」という成長モデルの構築を急ぐと語った。 海外からの投資も利用しつつ、国内の需要と供給両面を強化し、成長を実現する考えだ。 海外の制裁やサプライチェーンからの中国外しに影響されない体制を築く。 ただ政府活動報告に今後 5 年間の年平均の成長率目標を明記しなかった。 昨年 11 月に公表した草案で「1 人あたり GDP を中等先進国並みにする」とした 35 年までの長期目標も盛り込まなかった。 (nikkei = 3-5-21)


中国紙、国防予算 7% 増と予想 前年上回る伸びか

【北京】 中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報英語版(電子版)は 26 日、複数の軍事専門家が今年の国防予算について前年を上回る伸びの約 7% 増と予想していると報じた。 昨年は新型コロナウイルスの感染拡大で経済が打撃を受け、前年以下の伸びだったが、6.6% 増を維持した。 同紙は、中国経済は回復しており「国防予算の着実な伸び」が見込まれると伝えた。 中国国防予算は米国に次ぐ世界 2 位の規模で、3 月 5 日に開幕する全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で明らかにされる見通しだ。 前年比 7% 増であれば、約 1 兆 3,570 億元(約 22 兆 3,000 億円)となる。 (jiji = 2-27-21)


中国はアメリカを抜く経済大国にはなれない

<中国の経済は近いうちにアメリカを上回って世界一になると予想する声は多いが、労働人口と生産性の動向に着目し、中国は永遠に二番手のままで終わるという説が登場した。>

中国の経済は 2050 年になっても依然としてアメリカを上回ることはできず、世界第 2 位に留まる可能性がある、という分析を、ロンドンを拠点とする経済調査会社キャピタル・エコノミクスが発表した。 同社の予想は、中国の経済力が遠からず世界一の経済大国アメリカを超えるという一般的な見方を覆すものだ。 中国の経済的影響力は、アメリカのように着実には増加していかない、と同社は予測しており、その一因として 2030 年までに中国の労働人口が年間 0.5% 以上減少することを指摘した。 一方、アメリカの労働人口は中国よりも高い出生率と移民による人口増加に支えられて、今後 30 年間で拡大すると見られている。

「生産性の伸びの鈍化と労働人口の減少によって、中国はアメリカを追い越すことができないという展開になる可能性が最も高い」と、同社は分析している。 同社の報告によると、アメリカと中国の経済力の関係がどうなるかは、生産性の行方と、インフレおよび為替レートの動向にかかっている。 中国が 2030 年代半ばまでにアメリカを追い抜かないとすれば、「永遠に追いつくことはないだろう。」 さらに「中国がアメリカをしのぐことがあっても、その地位を維持するのに苦労するかもしれない」と付け加える。 だが、2030 年以降の中国における労働者の生産活動の伸びはアメリカよりも速く、両国間の所得格差は縮小し続けるだろう。

人口動態の逆風が足かせに

この報告書の筆者であるキャピタル・エコノミクスのアジア担当主任エコノミスト、マーク・ウィリアムズによれば、中国の成長が鈍化している最大の要因は、指導者である習近平(シーチンピン)国家主席が経済開放の努力を拒んだことだ。 「国家による経済の支配は、共産党が中国社会のすべてを支配するべきであるという習近平の信念の 1 つの側面だ」と、ウィリアムズは本誌に語った。

「ほとんどの人が、中国の経済は今後も大きく成長を続け、アメリカを追い抜くのは時間の問題だと考えている。 私の見解では、中国の経済成長は過去 10 年間で大幅に減速しており、今後も減速し続ける可能性が高い。 これは主に生産性の伸びが減退しているからだ。」 「そうであれば、中国は 2030 年頃に経済規模でアメリカに近づくかもしれないが、追い越すことはできない」と、彼は語った。 「人口動態の逆風」は今後も中国経済の足を引っ張り続けるとウィリアムズは言い、「中国が経済力でトップになることがあっても、労働人口の減少が拡大するにつれて、再び後退する可能性がある」と、付け加えた。

昨年、中国はアメリカとの GDP ギャップを埋め、経済は 2.3% 拡大して 14.7 兆ドルに達した。 ビジネス専門ケーブルテレビ CNBC の報道によると、アメリカの GDP との差は 6.2 兆ドルで、2019 年の 7.1 兆ドルから縮めている。 今年 1 月に発表された米国商務省経済分析局 (BEA) の暫定的な見積もりによると、アメリカの GDP は昨年 2.3% 縮小して 20.93 兆ドルになった。 先月発表された別の分析は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によってアメリカの経済は中国より大きな打撃を受けたため、予想よりも早く中国の GDP がアメリカを追い抜く可能性があるとしている。 野村グループによる予測では、「合理的な成長予測」において、中国は 2028 年までにアメリカを追い越す可能性があるとされている。

だがフランスの投資銀行グループ、ナティクシスのアジア太平洋地域担当主任エコノミスト、アリシア・ガルシアヘレロは、中国の経済はアメリカに後れを取ったままになる可能性があることに同意した。 「それは、中国の平均実質 GDP 成長率が 2035 年以降に約 2.5% で推移するかもしれないからだ。 これは、中国がアメリカに追いつく努力を止め、別の道を行く可能性さえあることを意味する。」と、ガルシアヘレロは本誌に語った。 「労働力の減少はその理由のひとつだが、生産性の低下も影響を与えている」と、彼女は付け加えた。 (ブレンダン・コール、NewsWeek = 2-22-21)

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中国、28 年に米国抜き世界トップの経済大国に - 英民間調査機関

→ 従来見通しより 5 年早く達成 - 新型コロナのパンデミック乗り越え
→ インドは 30 年に世界 3 位の経済大国に - 日本は 4 位に低下見込み

中国は欧米諸国よりも新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)をうまく乗り越え、従来見通しより 5 年早い 2028 年に経済規模(ドルベース)で米国を抜き世界一の経済大国になるだろうと、英調査機関の経済ビジネスリサーチセンター (CEBR) が 26 日発表した。 世界 193 の国・地域を対象とする経済番付見通しで CEBR はまた、中国が 23 年にも高所得国になる可能性を指摘。 アジア経済の力が一段と増す中で、インドは 30 年に世界 3 位の経済大国になるとも予想した。 日本は 4 位に低下する見込みという。 中国の習近平国家主席は先月、新たな 5 カ年計画の下で経済規模を 35 年までに 2 倍にすることは「完全に可能」だと述べた。 (Lizzy Burden、Bloomberg = 12-27-20)


中国経済の "屋台骨" あえぐ、中小メーカー・商社「売るほどカネが出ていく」

新型コロナウイルス禍からいち早く立ち直った中国には、ロックダウン(都市封鎖)やソーシャルディスタンス(社会的距離)で海外からの注文が殺到している。 だが同国経済の屋台骨を支える約 100 万社の中小メーカーや商社は、人民元相場の上昇や輸送コストの急騰、人手不足に伴う人件費上昇にあえいでいる。

「売るほどカネ出る」

一番の難題は通貨高だ。 昨年 6 月以降、元は対ドルで 10% 強上昇し、現在は 1 ドル = 6.46 元近辺で推移している。 大半の輸出業者は決済をドル建てで受けるが、供給元や従業員には元建てで支払う。 支払いと受け取りの時期が最長 3 カ月あくため、その間の元高ドル安により、ただでさえ薄い多くの輸出業者の利益は失われてしまった。 庭園用家具やブランコ、テントを扱う商社のオーナー、クラーク・フェン氏は「輸出向けの注文が 7 割増えたが、売れば売るほどカネが出ていく」と嘆く。 現在、一部の商品を赤字で販売しており、今年は値上げするつもりだ。 「自国の経済が強くなるのはうれしいが、元高は輸出業者にとって災難だ」と訴える。

英スタンダードチャータード銀行の調査によると、元が対ドルで前年比 6.5% 以上、上昇すると工業利益の伸びが鈍化する傾向にあるという。 輸出業者が元高に対応してドル建て価格を引き上げると、製品の需要を損ないかねない。 だが、利益が減少すれば新規の設備投資もしにくくなる。 中国の製造業投資の動向を示す指標は、2020 年に 2% 余り低下した。 中国政府は今年、不動産投資の抑制を図っており、経済成長を促進するには民間設備投資の増加が不可欠だ。

だが、新型コロナ禍からの回復の過程で中国の製造業者には多くの問題が浮上した。 生産急増で一部地域では電力の供給に負担がかかり、工場の中には自前で発電機を購入せざるを得ないところも出た。 世界の海運業界は今も新型コロナのパンデミック(世界的大流行)の影響で混乱しており、コンテナ不足が遅延と物流コストの上昇を招いている。 さらに労働力の供給も大幅に減った。 中国の移民労働人口は昨年 1 - 3 月期のロックダウンを受け、500 万人以上減少している。 「複数の工場が熟練労働者を奪い合っていた」と話すフェン氏によると、アルミニウム溶接工の賃金はほぼ 3 倍に高騰しており、「われわれは労働者の言いなりだ」と語る。

政府は支援に消極的

輸出業者にとって一つ有利なのは、価格を引き上げたとしても、代替製品を調達できない買い手は、値上げを受け入れるしかない点だ。 中南米や東南アジア、中東向けに浴室用キャビネットを輸出する帝誠科技(浙江省杭州市)の販売マネジャー、アンソニー・ハン氏は「中国と異なり他の国はまだ、パンデミックの影響を受けている。 パンデミックは中国に長期的にプラスの効果をもたらす。 インドなど競合国よりもわれわれには信頼性があることを示しているからだ。」と強調する。 ただ、中国政府は新経済成長策の「双循環」の一環として、輸出への依存を減らす意向を示しており、ハイテク機器を使いこなせない輸出業者への支援に消極的な姿勢を示している。

海外では、トランプ前米大統領によって貿易戦争に拍車がかかり、製造業信頼感に大きな影響を及ぼした。 バイデン新大統領は、同じ民主党ながらオバマ政権に比べ中国政府に厳しい態度をとると表明している。 ハン氏は「国際政策がどう変わるかは分からない。 常軌を逸したトランプ政権を経て、われわれは海外の政策が一瞬のうちに変わり得ることを学んだ。」と語り、自社の製造業からの転換を計画している。

しかし、ハン氏は現在、中国の全産業に影響を及ぼしかねない、さらに差し迫った問題に直面している。 労働者が帰省する春節(旧正月、今年は 12 日)休暇の問題だ。 国内の複数の場所で新型コロナ感染症が新たに流行する中、工場オーナーらは労働者が休暇後に職場復帰したがらなかったり、戻れなかったりする可能性があると不安を募らせる。

ハン氏は「労働者が地元でロックダウン状態になれば、職場復帰はかなり遅くなる」と話す。 同氏が働く帝誠科技では、生産ラインを動かし続けるために旧正月の休暇中は賃金を上げて他の工場から臨時で労働者を雇い、彼らをホテルに宿泊させる決定を下した。 ハン氏は「臨時労働者は高くつくが、先立って商品を発送することができて為替差損を被らなければ、収入が増える。 為替レートとの競争だ」と話した。 (Jinshan Hong、Tom Hancock、Bloomberg = 2-10-21)


MSCI、中国企業 5 社を世界株価指数から除外へ

トランプ米大統領が火を付ける米中貿易戦争

記事コピー (3-11-18 〜 1-26-21)


中国、新規海外投資先として世界 1 位に アメリカ抜く

2020 年の世界の海外直接投資 (FDI) において、中国がアメリカを抜いて最大の投資先国になったことが、国連機関が 24 日発表した報告書で分かった。 アメリカは昨年、海外からの新規投資が前年比でほぼ半減。 世界トップの座から陥落した。 一方、中国は海外からの直接投資が前年比 4% 増に。世界経済において中国の影響力が増している状況が改めて明らかになった。

中国が「世界経済の中心」へ

国連貿易開発会議 (UNCTAD) の年次報告によると、昨年の海外直接投資は中国に対するものが 1,630 億ドルで、アメリカは 1,340 億ドルだった。 2019 年はアメリカが 2,510 億ドル、中国が 1,400 億ドル、新規の海外直接投資を受けていた。 中国は昨年、新規海外投資の受け手としてアメリカを上回ったが、海外投資の総額ではアメリカがいまだ、投資先として他国を圧倒している。 これは、アメリカが過去数十年間にわたって、国際的に最も魅力的な投資国だったことを反映している。 ただ複数の専門家が、中国がアメリカに代わり国際経済の中心的な存在へと近づいていることが今回の報告で強調されたと指摘している。 (BBC = 1-25-21)


中国の輸出、18 年 2 月以来の高い伸び - 11 月の貿易黒字は過去最大

→ 貿易黒字は少なくとも 1990 年からのデータで最大 - 対米黒字も更新
→ 効果的なコロナ抑え込みや力強いクリスマス受注の恩恵 - コメルツ銀

中国の輸出は 11 月にドルベースで 2018 年 2 月以来の大きな伸びとなった。 年末の需要増が寄与し、貿易黒字は月間ベースで過去最大に膨らんだ。 税関総署が 7 日発表した 11 月の輸出はドル建てで前年同月比 21.1% 増。 エコノミスト予想は 12% 増だった。 一方、輸入は前年同月比 4.5% 増。 予想は 7% 増だった。 この結果、11 月の貿易黒字は 754 億ドル(約 7 兆 8,400 億円)と、少なくとも 1990 年までさかのぼるデータで最大となった。 (Bloomberg = 12-7-20)

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中国の外貨準備、10 月末時点で 3 兆 1,280 億ドル - 145.8 億ドル減少か

中国人民銀行(中央銀行)が 7 日発表した 10 月末時点の外貨準備高は 3 兆 1,280 億ドル(約 322 兆 9,000 億円)となった。 市場の予想中央値は 3 兆 1,430 億ドル。ブルームバーグの計算によれば、10 月中に 145 億 8,000 万ドル減少した。 (Bloomberg = 11-7-20)

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中国の 10 月輸出額、前年同月比 11.4% 増 … 世界的な在宅学習・勤務でパソコン好調

【北京 = 小川直樹】 中国の税関当局が 7 日発表した 10 月の貿易統計によると、輸出額は前年同月比 11.4% 増の 2,371 億ドル(約 24 兆 5,000 億円)だった。 増加は 5 か月連続で伸び率は 9 月を上回った。 新型コロナウイルスの影響で世界的に在宅学習・勤務が増え、パソコンなどの輸出が好調だった。 内需の回復で、輸入額は 4.7% 増の 1,787 億ドル(約 18 兆 5,000 億円)と、2 か月連続で前年の水準を上回った。

輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は、1 - 10 月の累計で 3,845 億ドル(約 39 兆 7,000 億円)の黒字だった。 貿易黒字は前年同期より大幅に拡大した。 習近平(シージンピン)国家主席は 4 日の国際輸入博覧会の開幕式で、今後 10 年間でモノの輸入額が 22 兆ドル(約 2,300 兆円)を上回るとの見通しを示した。 (yomiuri = 11-7-20)

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中国の 5 月輸出額、2 か月ぶりにマイナス … 「マスクバブル崩壊」も

【北京 = 小川直樹】 中国の税関当局が 7 日発表した 5 月の貿易統計によると、輸出額は前年同月比 3.3% 減の 2,068 億ドル(約 22 兆円)と、2 か月ぶりにマイナスとなった。 新型コロナウイルスの世界的な大流行で、欧米など外需が低迷したことが響いた。 衣料品や靴、スーツケース、家具など幅広い製品の輸出が減った。 在宅勤務などで需要が高まったパソコンやマスクの輸出は大幅に増えたが、補えなかった。

世界的な景気の後退で輸出企業は注文取り消しなどに直面している。 4、5 月の輸出を支えたマスクも、中国メディアは「マスクバブル崩壊」を相次いで伝えている。 輸出のマイナス幅がさらに拡大すれば、景気回復の足を引っ張る恐れがある。 一方、輸入額は 16.7% 減の 1,439 億ドルと、マイナス幅は 4 月より拡大した。 米国からの 1 - 5 月の輸入額は前年同期に比べ 7.6% 減だった。 中国は米国との貿易協議の第 1 段階合意で米国からの輸入を 2 年間で 2,000 億ドル増やすと約束したが、基準年となる 2017 年の 1 - 5 月と比べると、増えるどころか 3 割近く減った。 トランプ米政権の不満が高まるのは確実だ。 (yomiuri = 6-7-20)


中国習主席 TPP 参加に意欲示す 米離脱で主導したい狙いか

中国の習近平国家主席は、20 日夜開かれた、APEC = アジア太平洋経済協力会議の首脳会議で、TPP = 環太平洋パートナーシップ協定への参加に意欲を示しました。 アメリカが離脱した TPP への参加に前向きな態度を表明することで、この地域での自由貿易の枠組みを主導したい狙いがあるとみられます。 中国外務省によりますと、習近平国家主席は 20 日夜、オンライン形式で開かれた APEC の首脳会議で演説し、「世界とアジア太平洋地域は大きな変革期にあり、新型コロナウイルスの感染拡大がそれを加速させている。

世界経済は低迷し、経済のグローバル化は逆風にさらされ、単独主義や保護主義が台頭している」と述べました。 その上で、「自由で開かれた貿易や投資を促進させ、早期にアジア太平洋地域の自由貿易圏を構築しなければならない。 中国は RCEP = 東アジアを中心とする地域的な包括的経済連携の署名を歓迎し、TPP に加入することを積極的に検討する」と述べ、日本やオーストラリア、カナダなどが加盟している TPP への参加に意欲を示しました。

中国は、アメリカとの対立が深まる中で、アジアにおける自由貿易の枠組みづくりに積極的な姿勢を示していて、今月 15 日には、みずからが参加する RCEP が合意するなど存在感を高めています。 アメリカが離脱した TPP への参加に習主席が前向きな態度を表明するのは初めてで、アジア太平洋地域での自由貿易の枠組みを主導したい狙いがあるとみられます。

外務省幹部「中国が TPP の高い基準満たせるかは見方いろいろ」

中国の習近平国家主席が、TPP = 環太平洋パートナーシップ協定への参加に意欲を示したことについて、外務省の幹部は、「関税や貿易のルールなど、TPP の高い基準を満たす国や地域に対して TPP は開かれていると言っている。 ただ、中国がすべての基準を満たすことができるかどうかはいろいろな見方がある。」と述べました。 (NHK = 11-21-20)


中国は質の高い発展重視、技術強国目指す - 次期 5 カ年計画

→ 5 中総会閉幕後のコミュニケでは成長率目標への具体的な言及なし
→ 「主要分野の核心技術で重大な突破」実現 - 向こう 15 年のビジョン

中国共産党は 26 日から開いていた重要会議、第 19 期中央委員会第 5 回総会(5 中総会)で、次期 5 カ年計画(2021 - 25 年)などの基本方針を採択した。 経済成長のペースよりも質を重視し、技術強国への発展を目指す。 共産党中央委員会は 29 日の 5 中総会閉幕後に、持続的成長の必要性を強調したほか、強大な国内市場を構築する方針を示した。 国営新華社通信が公表したコミュニケでは、具体的な成長率目標への言及はなかった。

習近平総書記(国家主席)らが総会前に示唆していた通り、テクノロジー自立が国家戦略の柱に格上げされた。 取り組みの中心となるのは、人工知能 (AI) や第 5 世代 (5G) 移動通信網、自動運転技術などイノベーションの基盤となる半導体の自立だ。 米国との対立激化や新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた世界経済を踏まえ、中国当局は成長確保に向けて国内資源と消費に軸足を置く。 「双循環」と呼ばれる同戦略はコミュニケで 2 度言及されたが、具体的な説明やそれに伴う詳細はなかった。

習氏が狙う中国経済の自立強化 - 世界のモノ・サービスの流れに影響も

共産党は 35 年までの向こう 15 年のビジョンについて、「中国は主要分野の核心技術で重大な突破(ブレークスルー)を実現し、イノベーション国家の前列に入る」と主張した。 国務院(政府)参事を務め、全球化智庫 (CCG) の創設者でもある王輝耀氏は、「テクノロジーが中国の次の発展分野で鍵になる」と指摘する。 「小康社会(適度にゆとりある社会)」を実現するため「中高速成長」を目指した現行の 5 カ年計画とは異なり、今回の総会は成長ペースではなく質を重視すると見込まれていた。 コミュニケでは、向こう 5 年間も内需拡大と経済開放を堅持する方針が示された。

具体的な国内総生産 (GDP) 成長率への言及はないものの、中国政府の野心的な経済見通しは変わらないとアナリストらはみている。 オーストラリア・ニュージーランド銀行 (ANZ) の大中華圏担当チーフエコノミスト、楊氏は「党指導部は経済規模と家計所得、1 人当たり GDP が 35 年までに新たな節目に到達するとなお見込んでいる」と分析。 「中国は GDP 目標を放棄したわけではない。 これまでに比べて微妙に異なる言い回しで表現しているにすぎない。」と述べた。 (Bloomberg = 10-30-20)


中国の 7 - 9 月期 GDP、4.9% 増 2 期連続のプラス

中国の国家統計局が 19 日発表した 2020 年 7 - 9 月期の実質国内総生産 (GDP) の速報値は、前年同期比で 4.9% 増となった。 4 - 6 月期(3.2% 増)から伸びが拡大し、2 期連続のプラス成長となった。 世界で新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、主要国の中で最も早い回復ぶりをみせている。 市場では 5% を超えるとの事前予想が多く、やや下回る結果となった。 一方、1 - 9 月期でみると前年同期比 0.7% 増となり、累計で今年初めてプラス成長に転じた。

同時に発表された 7 - 9 月期の生産や消費、投資の動きを示す統計もそれぞれ回復。 特に消費は小売総額が前年同期比で 0.9% 増となり、四半期ベースで今年初めてプラスに転じた。 政府が工場再開を後押しするなどして回復が進んでいた生産に比べ、消費の回復は遅れていた。 企業の生産動向を示す 7 - 9 月の鉱工業生産は、前年同期より 5.8% 増と伸びが加速。 固定資産投資は 1 - 9 月期、同 0.8% 増とプラスに転じた。 景気回復につれてマンション投資などが増え、1 - 9 月期の不動産開発投資は同 5.6% 増だった。 9 月の失業率は 5.4% で、8 月から 0.2 %ポイント改善した。 (北京 = 西山明宏、asahi = 10-19-20)

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中国は今年プラス成長が可能、900 万人の雇用創出目標達成なら - 李首相

中国は取り組みを強化し、不確実性に備えるべきだと李首相
事業継続と景気回復を確かなものとするため観光業界などに支援表明

中国の李克強首相は訪問先の重慶市で、900 万人の雇用を創出するという目標を達成できれば、中国経済は今年成長可能だと語った。 中国中央政府のウェブサイトに 23 日に掲載された声明によれば、李首相は最近数カ月でプラス成長を実現した後、中国は取り組みを強化し、不確実性に備えるべきだと訴えた。 中国は新型コロナウイルス感染拡大と景気下降を乗り切り、比較的小規模な企業と事業者が今年存続できることも目指している。

中国の国内総生産 (GDP) 成長率は 1 - 3 月(第 1 四半期)に前年同期比 6.8% 減少した後、4 - 6 月(第 2 四半期)は 3.2% のプラス成長を回復した。 李首相は事業再開と景気回復を確かなものとする助けとして、観光業界とサービス産業の他の業種を支援すると表明。 別の政府声明によると、東部地域からの産業移転を西部地域がさらに受け入れるべきだと首相は述べたという。 (Bloomberg = 8-24-20)

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中国経済、コロナ禍からの回復で世界リード−個人消費が今後の鍵

中国は 2020 年通年では主要国唯一のプラス成長が見込まれる
米国との対立が深まる中、習主席は自国経済の自立化を加速

世界で最初に新型コロナウイルス危機に陥った中国経済は、世界で最も速い回復を成し遂げつつある。 1 - 3 月(第 1 四半期)の国内総生産 (GDP) は歴史的な落ち込みとなったが、それ以降は工業生産主導の回復が継続。 2020 年通年では主要国で唯一のプラス成長となりそうだ。 ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想は 2.0% 増となっている。 これまでの中国の景気回復の理由は、厳格なウイルス対策の実施を受け入れる国民性や、世界が引き続き中国からの輸出を必要としていることなど多岐にわたる。 世界で経済活動が再開したのを受け、7 月の中国輸出は前年同月比で大幅増加となった。

ただ、公式統計からはコロナ禍による失業の全容は明らかになっておらず、消費者心理の急速な持ち直しがなければ景気回復は行き詰まる可能性もある。 また、米国との貿易戦争再燃のような出来事は、債券増発を主な手段とする抑制的な景気刺激策に変更を迫るかもしれない。 米国と中国は週末に計画していた貿易合意に関する協議を延期した。 14 日に発表された中国の各指標は、総じて同国経済の堅調ぶりをあらためて示す内容となった。

オックスフォード・エコノミクスのシニアエコノミスト、トミー・ウー氏は「中国の回復は概ね順調に進んでいる」と指摘。 「世界の他の国々のように財政政策は主に雇用と中小企業向けである一方、中国では投資がより大きな役割を果たしている。 これが、中国経済が回復の比較的早い段階でペースを速め、より強固な足場を築くことができている理由だ。」と述べた。 米国との対立が広がる中、習近平国家主席は自国経済の自立化を加速させている。 習氏はここ数週間の一連の発言を通じ、いわゆる「双循環」経済発展モデルを訴えてきた。 同モデルでは、特定の外国の技術や投資で補完しつつ、より自立した国内経済を主な成長エンジンとすることを目指している。

中国の株式投資家、早くも銘柄物色 - 習氏の経済新戦略「双循環」で

しかし、新型コロナ感染が多くの地域でここ数カ月落ち着いていることを考えれば、個人消費が盛り上がらないことは引き続き懸念材料だ。 バンク・オブ・アメリカの大中華圏担当チーフエコノミスト、喬虹氏はブルームバーグテレビジョンで「中国の消費者は欧米の消費者に比べ、通常の消費に戻るまで長い時間がかかっているようだ」と述べ、「消費者は比較的安全な公衆衛生環境の恩恵を受けるべきだ」との見方を示した。

また、7 月の失業率は調査ベースで 5.7% だったが、実際の失業率はもっと高いとみられることも気掛かりだ。 大卒者の就職状況も弱い。 中国最大級の求人サイト、智聯招聘によれば、4 分の 1 余りの登録大卒者が 6 月も仕事を探していた。 食品価格の上昇に所得減少が重なっており、家計の購買力に下押し圧力がかかっていることは間違いない。 (Bloomberg = 8-17-20)


中国、経済覇権「30 年天下」の焦り 体制維持に不安

中国の若者に人気の動画配信大手、ビリビリが異色の提携交渉を進めている。 相手は中国人民銀行(中央銀行)。 インターネット上で動画配信者を応援する「投げ銭」にデジタル人民元を用いる構想のようだ。

縮む中国人口「一人っ子政策」影 2100 年に 5 億人割れも

デジタル人民元の発行準備が加速している。 広東省深セン市では市民 5 万人が参加する実証実験が始まった。 スーパーや飲食店など約 3,400 店で使える。 実験は今後、北京、上海、広州など中国全土の 20 カ所以上に広げる計画だ。 共産党の外交部門の関係者は「2022 年 2 月の冬季五輪でデジタル人民元と 5G を世界に宣伝したい」と話す。 デジタル通貨は資金の流れを管理しやすく、強権支配や為替安定を狙う新興国には魅力。 いち早く発行し、技術や発行方式で世界標準をにぎる狙いだ。

香港の国家安全維持法を受け、米国が中国に金融制裁するのも発行を急ぐ理由だ。 制裁対象の個人や団体と取引した金融機関も制裁対象となり、最悪なら国際的なドル決済網といえる国際銀行間通信協会(SWIFT = スイフト)から排除されかねない。 中国国務院(政府)職員は「デジタル人民元はスイフトを迂回できる」とドル覇権に対抗する意向を隠さない。 弱点克服を急ぐのは、経済規模で米国が視界に入ったからでもある。

19 年の中国の名目国内総生産 (GDP) は米国の 3 分の 2になった。新型コロナウイルス後の最新の政府予測で、29 年のドル建ての名目 GDP は 28.1 兆ドル(2,950 兆円)になる。 米議会予算局は 29 年の米国の GDP を 29.8 兆ドルと予測しており、30 年前後には米中逆転が現実味を帯びる。

その経済成長にも静かな危機が迫る。 国連は 20 年の中国の年齢の中央値が 38.4 歳と初めて米国を上回ると推計する。 生産年齢人口(15 - 64 歳)は 13 年をピークに減り、27 年から「中国版団塊世代」の引退で減少が加速する。 世界銀行と国務院は 19 年の報告書で「改革なしなら 30 年代の平均成長率は 1.7%」と警告した。 日本経済研究センターは 50 年代に実質 GDP で米国に再逆転されるとみる。 中国の GDP 首位は「30 年天下」に終わりかねない。

経済成長は共産党の一党支配のよりどころだが、習近平(シー・ジンピン)政権は 12 年の発足以降、ずっと成長鈍化に悩む。 国民が豊かさの向上を感じにくくなるなか、一帯一路や軍備増強で中国の台頭をわかりやすく示し、党への支持をつなぎとめてきた。

新型コロナによるマイナス成長や失業は習指導部の危機感を高めた。 愛知県立大学の鈴木隆准教授は 6 月の香港国家安全維持法の施行について「習指導部が懸念したのは香港の民主化運動の本土への波及だった」とみる。 強引な振る舞いは国内の体制維持への不安の裏返しでもある。 将来、低成長が当たり前になれば、国内の不満を抑えこもうとデジタル技術による監視を強めたり、対外的な挑発行動に出たりしないか。 中国のもろさに世界は揺さぶられつづける。 (nikkei = 10-15-20)


中国の新築住宅 主要都市 84% で上昇 伸び拡大

【北京 = 川手伊織】 中国国家統計局が 14 日発表した 2020 年 8 月の主要 70 都市の新築住宅価格動向によると、前月より価格が上昇した都市の数は 7 月と同じ 59 だった。 全体の 84% を占め、都市の規模別に見た伸び率はいずれも拡大した。 新型コロナウイルス対策の金融緩和でじゃぶじゃぶになったマネーが不動産市場をなお押し上げているとみられる。 統計局によると、北京、上海、広州、深センの「1 級都市」のマンション価格は平均で前月を 0.6% 上回った。 上昇率は 7 月より 0.1 ポイント拡大した。 省都クラスの「2 級都市」、それ以下の「3 級都市」もそれぞれ前月比 0.6%、1.0% 上がり、伸び率も拡大した。

都市別では、恵州、銀川、錦州、唐山、温州などで前月比の上昇率が大きかった。 取引価格が自由な中古住宅でみると、広州が同 1.7% 上がり、最も伸びが大きかった。 1 級都市の平均では前月を 1.0% 上回り、伸び率は 0.3 ポイント拡大した。 統計局は「主要都市の不動産市場は総じて安定している」と分析した。 中国の金融当局は不動産市場の動向を注視する。 中国銀行保険監督管理委員会の周亮副主席は 6 日の講演で「不動産市場が過度に金融化するのを防ぐ」と強調し、不動産バブルを警戒した。 70 都市のうち、前月比で下落したのは 9 都市で、7 月より 3 増えた。 横ばいは 7 月より 3 少ない 2 都市だった。 (nikkei = 9-14-20)