大成建設、CO2 からコンクリート製造 脱炭素に寄与

大成建設は二酸化炭素 (CO2) からコンクリートを製造する技術を開発した。 CO2 を原料にした炭酸カルシウムを使い、1 立方メートルあたり最大 170 キログラムの CO2 をコンクリートに封じ込めることができる。 コンクリートは原料のセメントを製造する工程で大量の CO2 を排出するが、炭酸カルシウム製に置き換われば一転して大幅な削減が可能になる。 インフラ需要の大きい新興国で普及すれば、世界的な脱炭素の加速にもつながりそうだ。

大成建設によると、コンクリートの閉じ込めることができる CO2 の量は地中などに埋め込む CCS (回収・貯留)とほぼ同等だという。 建設工事で使用するコンクリートは製造工程で 1 立方メートルあたり 260 - 300 キログラムの CO2 を排出し、このうち約 9 割がセメントの製造過程で発生。 大成建設はセメントを使わず、大気中の CO2 とカルシウムを合成した炭酸カルシウムでコンクリートを作る技術をこのほど確立した。

炭酸カルシウムの製造工程でも CO2 は発生するが、コンクリート内に閉じ込める量が上回り、1 立方メートルあたり 5 - 55 キロのカーボンマイナスとなる。 解体後も再びコンクリートへの再利用を目指す。 これまで鹿島などが CO2 を吸収する素材をコンクリートに練り込み、製造工程で CO2 を吹き付けてコンクリート内にとじ込める技術を開発している。 この方法だと CO2 によってコンクリートの強アルカリ性が中和され、鉄筋コンクリートにすると鉄筋がさびてしまう課題があった。

炭酸カルシウムは弱アルカリ性なので、大成建設の技術ではコンクリートの強アルカリ性を保てる。 強度や粘度の面でも通常のコンクリートと同じく使えるという。 大気中の CO2 から炭酸カルシウムの製造を手掛ける出光興産は宇部興産や日揮などと共同で製造技術の確立を進めている。 量産コスト削減が CO2 を閉じ込めるコンクリート普及の課題となる。 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) の委託事業として採択され、2020 年度から 24 年度までの 5 年間実施する。 30 年ごろの実用化を目指す。30年ごろには実証プラントを建築する予定だ。 CO2 固定化に向けた炭酸カルシウムなどの製造は JFE スチールや太平洋セメントなども実証実験を始めている。

全国生コンクリート工業組合連合会によると 2020 年の国内生コン出荷量は約 7,900 万立方メートル。 炭酸カルシウム製のコンクリートにすべて置き換われば、年間最大約 435 万トンの CO2 を大気中から減らすことができる。 (nikkei = 2-15-21)


IHI が 100% 濃度の CO2 を大気から回収に成功、植物工場で活用へ

IHI はそうま IHI グリーンエネルギーセンター(福島県相馬市)のそうまラボで、空気中から二酸化炭素 (CO2) を回収する DAC (直接空気回収)で、100% 濃度の CO2 回収に成功した。 4 月から植物工場での実証に入る。 再生可能エネルギーで生成した水素で合成した濃度 99% のグリーンメタン製造実証も開始する。 CO2 排出削減に向け、技術開発を進める。 大気中から CO2 を分離・回収する DAC の小型プラントを開発し、100% 濃度で回収した。

アミン溶液へ球体の基材を浸し、引き上げて乾燥させて固化。 基材表面全体をアミンが薄い膜として覆い、ブロワーで空気を吸い込み CO2 を吸着する。 CO2 の分離には熱を加える。 CO2 の回収、単体での連続運転を確認した。 4 月には回収した CO2 を使う植物工場を稼働する。 400 平方メートルのハウスで水耕栽培を行い、CO2 は配管を通じて植物の根本へ供給する。 さらに 2021 年度に性能を向上・小型化した新しい DAC 装置を設置し、22 年度に CO2 排出量マイナスの植物工場のフル稼働を目指す。

また、DAC からの CO2 と、太陽光発電で生成した水素によるグリーンメタンの合成実証も行う。 このため同ラボ内に 1 時間当たり 12 立方メートルのメタンを製造するメタネーション実証装置を完成。 多段式反応機により都市ガスと変わらない 95% 以上のメタン濃度が目標。 CO2 と水素によるグリーン化学品についても、21 年度から小型試験装置を導入してポリエチレンなどのオレフィン系樹脂の原料開発に着手する。 (NewSwitch = 2-13-21)


想定外の研究が生んだ燃料アンモニア 脱炭素で注目

温室効果ガスの排出量を 2050 年までに実質ゼロにする。 政府が昨秋に掲げた脱炭素目標の達成に向け、にわかに注目されている資源がある。 アンモニアだ。 燃やしても二酸化炭素 (CO2) が出ないため、(CO2 を多く出す石炭に代わる火力発電の燃料として期待されているのだ。 ところが、燃料として注目されたのは、ごく最近のこと。 もともと全く別の使い道を探るために行っていたある研究がきっかけだった。

脱炭素化に向け、経済産業省が昨年末に公表した「グリーン成長戦略」では、先行する欧州で主力の洋上風力などと並び、「燃料アンモニア産業」が重点分野に挙げられた。 シナリオは、23 年までに石炭火力の燃料に混ぜて燃やす「混焼」技術を確立し、25 年以降に「20% 混焼」を実用化。 40 年以降にアンモニアだけを燃やす「専焼」を実現する、というものだ。 そうなれば、(CO2 を出さないうえに、原発や石炭火力と同じく、常に一定量を発電する「ベース電源」にもなる。 電気の需要に応じて出力を上げ下げし、変動の大きい再生可能エネルギーを補う「調整電源」としても使えるなどと、期待は大きい。

さらに、アンモニアには、早くから「(CO2 フリー」燃料として注目されてきた水素よりも扱いやすいという利点がある。 液体のアンモニアはマイナス 33 度で貯蔵でき、マイナス 253 度以下の液体水素に比べ、貯蔵タンクなどの整備費用が安くすみ、運搬もしやすい。 いまも自動車部品などの樹脂や化学肥料の原料に使われており、既存の流通網も活用できる。 しかし、普及に向けた課題もある。 最大の壁になりそうなのが、流通量の少なさだ。 19 年のアンモニアの国内消費量は約 108 万トン。 国内の石炭火力すべてで「20% 混焼」をするには、世界の年間貿易量に相当する約 2 千万トンが必要だ。

そこで、プラントメーカーなど民間企業と経産省でつくる「官民協議会」は今月 8 日、国内で 30 年に 300 万トン、50 年に 3 千万トンのアンモニア供給網を確立するとした報告書をまとめた。 出力 100 万キロワット級の石炭火力での「専焼」に必要な量は約 250 万トンとされ、50 年時点で12基分を確保できる計算だ。 アンモニアの合成には水素が必要で、天然ガスから取り出したり、再生可能エネルギー由来の電気で水を分解したりしてまかなう方針だ。 協議会は、こうした工程に適した条件がそろう北米や豪州などに製造プラントを設け、日本への供給網を築くシナリオを描く。

流通量を増やし、製造や輸送の技術革新も進めることで、もう一つの壁であるコストの低減もめざす。 政府が試算したアンモニアの 1 キロワット時あたりの発電コストは、「20% 混焼」で 12.9 円、「専焼」だと 23.5 円だ。 輸送コストのかさむ水素よりは大幅に安いが、石炭火力(10.4 円)と比べるとまだ高い。 協議会は 30 年までにアンモニア価格を天然ガス並みに下げることをめざす。

すでに動き出した民間企業もある。 三菱重工業は昨年 11 月、再生エネ由来のアンモニアをつくる事業に取り組む豪州企業に出資。 将来的に日本への輸出も視野に入れる。 東京電力と中部電力の火力・燃料部門が統合してできた「JERA」は昨年 10 月、同社の石炭火力を将来的に全てアンモニア専焼にする方針を発表。 将来的なアンモニアの生産に向け、最近はマレーシアの国営企業と協業に向けた覚書も結んでいる。

にわかに官民の期待を集めるようになったアンモニアだが、じつは、政府はもともと全く違う使い道を想定していた。 14 - 18 年度の 5 年間、政府主導で研究開発を進める「戦略的イノベーション創造プログラム」でのことだ。 研究テーマは、脱炭素の切り札と注目されていた水素を海外の産地から日本に安く大量に運ぶ手段を見つけること。その有力な手段として、水素をいったんアンモニアに転換して運ぶ方法が研究されていた。あくまで期待の燃料は水素で、アンモニアは運搬手段だったのだ。

ところが、研究が進むうちに、研究チームは気づいた。 アンモニアを発電所で直接燃やせれば、その方がいいのではないか。 事業のプログラムディレクターを務めていた村木茂・元東京ガス副会長は「並行してアンモニアを燃料として使う研究も進め、発電所で直接燃やせることが分かった」と振り返る。 燃焼時に出る有害な窒素酸化物がネックだったが、それも技術開発で排出量を環境基準値以下にできるようになったという。

しかし、主役の水素燃料の陰に隠れ、燃料アンモニアはしばらく注目されなかった。 関係者によると、この埋もれかけた技術を「発掘」したのは、LNG などの化石燃料政策を担う経産省の資源・燃料部だったという。 中東情勢の不安定化などを受け、同部が多様な資源を安定的に確保する戦略を練るなかで着目。 昨年 3 月にまとめた新たな国際資源戦略のなかで、初めて政府の温暖化対策の具体策に燃料アンモニアがとりあげられた。 それがいまや、「燃料としては、現時点では水素よりも実用的だ(経産省幹部)」と、期待は高まるばかりだ。

政府が昨年末に示した 50 年の電源構成の目標(参考値)では、「水素とアンモニア」による発電量は全体の計約 1 割とされた。 関係者からは「政府の参考値は低すぎる」との声も上がる。 エネルギー政策に詳しく、経産省の有識者会議で委員を務める橘川武郎・国際大教授は「アンモニアを使った『カーボンニュートラル火力』は業界のゲームチェンジャー。 実用化できれば原発が要らなくなる可能性すらある」と話す。 (伊藤弘毅、asahi = 2-10-21)


牛のふん尿から液体燃料 CO2 排出しない世界初の技術

オホーツク海沿岸の北海道興部町と大阪大学などが、乳牛のふん尿を活用した新たな産業育成に乗り出す。 ふん尿から発生するバイオガスを世界初の技術で液体燃料のメタノールなどに変換し、二酸化炭素 (CO2) を出さない「脱炭素」のエネルギーとして地域で利用する構想だ。 酪農が盛んな道内各地に広がる可能性がある。 興部町と阪大、産業ガス大手のエア・ウォーター北海道(札幌市)、岩田地崎建設(同)が 9 日、札幌市内で記者会見し、町内で 2 年以内に試験プラントを建設すると発表した。 興部町と阪大は 2019 年に連携協定を結んで共同研究を進めてきたが、民間企業 2 社を加えて「オール北海道」で実用化に踏み出す。

町内に約 1 万頭いる乳牛のふん尿をすべて使ってメタノールなどを生産した場合、町内の公共施設や水産加工施設で使うエネルギーの全量と、乳業工場の 3 分の 2 のエネルギーをまかなえる規模になるという。 試験プラントでは、阪大の大久保敬教授(光有機化学)らが世界で初めて開発した技術を活用する。 バイオガスに含まれるメタンを特殊な液体に溶かして紫外線を当て、メタノールとギ酸に変換。 常温・常圧で作業できるうえ、CO2 を排出しない。 メタノールの変換効率も従来の 1% から 14% (ギ酸は従来の 0% から 85%)と大幅に向上し、「無駄なく使い切れる(大久保教授)」という。

興部町では、ふん尿を活用したバイオガス発電も手がけるが、再生エネルギーの固定価格買い取り制度 (FIT) による売電期間の終了後にバイオガスをどう有効活用するかが課題だった。 ためることが難しい電気ではなく、液体燃料のメタノールやギ酸に変換して保存できるようにして、「脱炭素」の街づくりにつなげる構想を描く。 メタノールの具体的な活用策としては、重油の代わりの燃料として工場で使ってもらうほか、燃料電池に供給して発電し、公共施設などの電気をまかなう。 公用車や生乳の運搬車両を電気自動車 (EV) にすることも検討している。 ギ酸は牛の飼料の添加物に利用できるほか、次世代のエネルギーとして注目される水素の原料にもなるという。

量産でコストが下がれば、合成繊維や塗料、農薬など様々な製品の原料にもなるメタノールの外部への販売も検討する。 大久保教授によると、メタノールは全量を輸入に頼るが、国内の乳牛のふん尿をすべて使えば、輸入量の2割を代替できるという。 24 年度をめどに試験プラントを増強して実用化し、30 年度以降は興部町以外の道内外での展開もめざす。 硲(はざま)一寿町長は「酪農は著しい規模拡大をみせているが、発生するふん尿の処理が課題だ。 研究がさらに加速し、町だけでなく、北海道全体の発展や、日本の産業にとって重要な役割を果たしたい」と語った。 (長崎潤一郎、asahi = 2-10-21)


インド洪水、ヒマラヤ氷河崩壊が原因か 温暖化指摘の声

インド北部ウッタラカンド州で 7 日に起きた洪水で、同州首相は 8 日、18 人が死亡し、約 180 人が行方不明になっていると発表した。 ヒマラヤ山脈の氷河が崩れたのが原因とみられ、地球温暖化などの影響を指摘する声が出ている。 政府は救助活動とともに原因の解明作業を進める。 現地報道によると、洪水があったのはガンジス川上流部の標高約 2 千メートルの地点で、約 7,800 メートルの高峰ナンダデビのふもと。 2 月の気温は朝晩に零下になるが、日中は 20 度まで上がることがあるという。

現地時間 7 日午前 10 時半(日本時間同日午後 2 時)ごろに発生した洪水は、下流の二つのダムを壊し、五つの橋を流した。 行方不明者の大半は、下流の水力発電所の建設作業に当たっていた労働者だった。 15 人が救助されたほか、作業現場のトンネル内に約 35 人が閉じ込められており、救出作業が続いている。 同州では 2013 年、モンスーンによる豪雨で洪水が起き約 6 千人が死亡したが、今回は目立った降雨は確認されていないという。

内外の専門家らは近年、温暖化でヒマラヤの氷河が急速に解け、洪水を引き起こす恐れを指摘してきた。 現場周辺の氷河に詳しく政府の調査チームにも加わる研究者のマニシュ・メータ氏は「一帯の氷河の面積はこの 30 年で 10% 減った」と話し、今回の事故に温暖化が影響した可能性を指摘する。 現場一帯も含め同州では多くのダム建設が進められている。 政府の水資源担当相も務め、ガンジス川やその支流域でのダム建設に否定的だったバーラティ氏は、現地メディアに「生態系が影響を受けやすいヒマラヤ一帯でダムを造るべきではない」とし、温暖化も含めた複合的な要因があった可能性を示唆した。

ネパールを中心にヒマラヤ地域の氷河の変動を研究している藤田耕史・名古屋大教授(氷河学)は、氷河や周囲の土砂が崩落して川の水をせき止め、それが決壊した可能性を指摘する。 12 年にはネパール中部で氷河と岩盤が崩落して土石流が発生、数十人が犠牲になった。 藤田教授は「地球温暖化に伴って同じような氷河の崩壊が増えていく可能性がある」と話す。 19 年に公表された国連気候変動に関する政府間パネル (IPCC) の特別報告書も、「永久凍土の融解や氷河の後退によって高山の山腹斜面の安定性が減少している」と指摘している。

藤田氏によると、氷河が解けてできた「氷河湖」が決壊した可能性もあるが、今回の流域をグーグルアースで見る限り大きな氷河湖は見当たらないという。 一般に、氷河湖をせき止める土砂はダムとして脆弱なため、今回のような大規模な洪水を引き起こすまで水をため込む可能性は低いという。 藤田教授は「断定はできないが、今回は氷河湖の決壊による洪水の可能性は低いのではないか」との見方だ。 (奈良部健 = ニューデリー、石井徹、asahi = 2-9-21)

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ヒマラヤの氷河が決壊、洪水で 150 人不明 インド北部

インド北部ウッタラカンド州で 7 日、ヒマラヤ地域の氷河が決壊して洪水が発生し、州政府などによると、発電所の建設工事の現場にいた作業員ら約 150 人が行方不明になった。 家屋も流されているといい、インド政府は救助活動のために軍を出動させた。 現場は、ガンジス川の支流の一つ。 洪水の原因はまだわかっていないが、ヒマラヤの氷河をめぐっては、地球温暖化によって急速に融解して洪水を引き起こす恐れがあると専門家から指摘されてきた。 隣国ネパールでも、雪を頂いていた山々の岩肌が見えるようになってきたとされる。

ヒマラヤとヒンドゥークシ山脈の地域の氷河の 3 分の 1 が、2100 年までに失われるとする専門家の予想もある。 この地域は中国やインド、バングラデシュ、ブータン、ネパール、ミャンマーなど 8 カ国にまたがっており、広大な地域の生活や農業にとって欠かせない川の流れにも影響を与える可能性があるとされる。 (ニューデリー = 奈良部健、asahi = 2-7-21)


黒川温泉の堆肥事業「黒川温泉一帯地域コンポストプロジェクト」動画
サステナアワード 2020 にて、"環境省環境経済課長賞" を受賞

黒川温泉観光旅館協同組合

黒川温泉観光旅館協同組合(代表理事 : 武田亮介、本社 : 熊本県阿蘇郡南小国町)は、2020 年 9 月から始めた堆肥事業「黒川温泉一帯地域コンポストプロジェクト」動画が、サステナアワード 2020 伝えたい日本の "サステナブル" にて、"環境省環境経済課長賞" を受賞したことをご報告致します。

サステナアワード 2020 伝えたい日本の "サステナブル" とは

サステナアワードとは、国連の持続可能な開発目標 (SDGs) の 2030 年までの達成を目指し、持続可能な生産と消費を広めるための活動を推進している「あふの環プロジェクト(農林水産省、消費者庁、環境省連携)」が開催するアワードです。 このアワードでは、SDGs ゴール 12 「つくる責任つかう責任」を踏まえ、食や農林水産業に関わる持続可能なサービス・商品を扱う地域・生産者・事業者の取組や、これらに賛同する消費者グループの方々の取組を広く国内外に発信していくことを目的として、取組をわかりやすく紹介する動画を広く募集し、表彰しています。

環境省、西村治彦環境経済課長よりコメント

旅館から出てしまう生ごみをコンポストで堆肥にし、その堆肥を農家さんに使っていただく。農家さんが育てた農産物を今後は旅館で使っていただく、という循環の様子が非常に良くわかる映像でした。 このような取り組みは今グローバルで話題になっているサーキュラーエコノミーや、環境省が進めている「地域循環共生圏」のまさに好例だと思っております。 この取り組みを通じて旅館、行政、農家の皆さまといった地域の人々の結びつきや観光振興にも繋がっていると見受けられました。 今後もこのような取り組みを通じて、黒川温泉一帯地域の皆さまが発展していっていかれることを祈っております。

黒川温泉の堆肥事業について

黒川温泉では、2020 年 9 月から旅館の残渣(生ゴミ)を利用した堆肥づくりを実施しています。 里山の温泉地として、地熱や水、草原、森林、美しい景観など自然からの多くの恵みをいただくことで成り立っています。 私たちは、これらの貴重な地域資源を利用するだけでなく、最適な規模で "循環" させる仕組みをつくり、環境負荷を軽減しながら経済を成り立たせることがこの自然環境が続いていくためにも重要なことであると考えています。

その考えのもとにある取り組みの一つが堆肥事業です。 旅館から出る生ゴミを完熟堆肥にして地元の農家さんに活用していただき、採れた美味しい野菜を旅館でお客様にお召し上がりいただく、そのような "循環" を目指しています。 本事業のアドバイザーとして、サーキュラーエコノミー研究家の安居昭博氏、コンポストアドバイザーの鴨志田純氏にチームに加わっていただきました。 まずは黒川温泉一帯で "循環" をつくり、次のステップとして町全体の "大きな循環" や、家庭単位の "小さな循環" につなげていく。こうした環境負荷を軽減する取り組みが南小国町全体に普及することでさらに住み良い町になるのではないかと考えています。 (PR Times = 2-6-21)


プラごみ削減へ新法 捨てずに循環、仕組み強化 - 小泉環境相

小泉進次郎環境相は 29 日の閣議後記者会見で、プラスチックごみの削減に向けた新法案を開会中の通常国会に提出すると発表した。 プラごみを捨てずに、リサイクルして循環利用するための仕組みを強化。 プラ製品の製造時にリサイクルしやすい設計とするための指針策定のほか、民間企業に使い捨てプラの使用抑制やリサイクルを義務付ける規定などを盛り込む。

小泉環境相は「プラスチックという物質に注目した法律の制定は初めてで、画期的だ。 日本が新たに循環経済に向けて社会を移行させていくスタートとしたい」と話した。 新法案の名称は「プラスチック資源循環促進法案」。 家庭から出るプラごみについて、容器包装だけでなく、歯ブラシや文房具といったプラ製品も一括回収できる制度の導入も明記する。 2022 年度の施行を目指す。 (jiji = 1-29-21)


水素 100% で発電するエンジン、三菱重工らが安定燃焼の手法を確立

三菱重工エンジン & ターボチャージャ (MHIET) は 1 月 21 日、産業技術総合研究所(産総研)との共同研究において、開発した水素を燃料とするエンジンについて、水素利用率 100% で安定燃焼できる条件を見出したと発表した。 MHIET はディーゼルエンジンやガスエンジンを母体とする水素エンジンの開発と実用化に向けた取り組みを進めている。 産総研とは 2019 年度から共同で研究を進めており、今回は改良した単気筒エンジンを、産総研の「福島再生可能エネルギー研究所(福島県郡山市)」に設置し、試験運用を実施した。

水素は、可燃範囲が広く燃焼速度が大きいという特徴がある。 そのため、バックファイアやノッキングとよばれる異常燃焼が発生しやすく、燃料として利用する場合にはその対策が課題になるという。 今回の試験では、現在 MHIET が販売している希薄燃焼ガスエンジン GSR シリーズを基本とし、水素の燃焼特性に合わせて、燃料供給方法、着火方法、給気弁閉じ時期、空気過剰率などの見直しを行った。 その結果、水素専焼・予混合方式での安定燃焼条件を見出すことに成功したという。

試験では 6 気筒換算で 340kW、16 気筒換算で 920kW までの試験運転に成功しており、今後はこの結果をベースに、さらに試験データを積み重ねて取得することで多気筒エンジンの開発を進める。 その後、2030 年代の水素利用の普及拡大を見据え、1MW 級水素エンジンの実用化を目指す方針だ。 (スマートジャパン = 1-22-21)


英大使館がデータの誤りを指摘 政府の脱炭素化向け戦略

2050 年の脱炭素化に向けた政府の「グリーン成長戦略」をめぐり、英国の再生可能エネルギーの導入政策の記述が誤っているとして、在日英国大使館が経済産業省に指摘していたことがわかった。 日本が 50 年までにめざす再生エネの導入比率の目安を「約 50 - 60%」とする根拠の一つとして示していたもので、経産省は修正することも含めて大使館側と対応を協議しているという。 成長戦略では再生エネの最大限の導入を図るとし、50 年の総発電量に占める再生エネの割合を参考値として「約 50 - 60%」と明記。 そこに「世界最大規模の洋上風力を有する英国の意欲的なシナリオでも約 65%」、「米国でも再エネ 55%」と併記した。

ところが、英国大使館は 12 日、経産省などの政府関係者や NPO などにメールを送り、「誤解を招く内容が含まれていた」と指摘。 英国のシナリオが「約 65%」とした部分についても「英国はこのような目標は掲げておらず、英国の政策ではない」と否定した。 英国大使館によると、英国は 50 年の温室効果ガスを実質ゼロにする目標を掲げているが、再生エネの導入目標は定めていない。 英国政府が設けた有識者機関は昨年 12 月 9 日、脱炭素化に向けた再生エネ導入の道筋を提言したが、それも「30 年までに 60%、35 年までに 70%、50 年までに 80%」と、数字が違うという。

日本の再生エネの目安をめぐっては、民間団体などから「低すぎる」との指摘があり、英国の記述の誤りも「意図的ではないか」と疑う声も出ている。 経産省資源エネルギー庁戦略企画室は朝日新聞の取材に対し、英国の有識者機関が 19 年に出した提言に基づいて「約 65%」と記述したと釈明。 昨年 12 月の提言に新たな数値があることは認識していなかったという。 年明けに英国大使館から指摘を受けたといい、「大使館と話して対応を考えたい。 修正もありうる。」としている。 (新田哲史、野口陽、asahi = 1-14-21)

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脱炭素戦略、50 年に経済効果 190 兆円 政府が試算

政府は 25 日、2050 年の脱炭素化に向けた「グリーン成長戦略」を正式に発表した。 家庭、運輸、産業の各部門のエネルギー利用をできるだけ電気でまかない、使用量が増える電力部門では再生可能エネルギーの導入を加速させる。 原子力発電も、既存施設の再稼働とともに将来の新増設に含みを持たせた。 経済効果は 30 年に年 90 兆円、50 年に年 190 兆円と試算する。

首相官邸で開かれた成長戦略会議(議長・加藤勝信官房長官)で報告された。 脱炭素を「経済成長の制約・コストとする時代は終わり、国際的にも成長の機会ととらえる時代になっている(加藤官房長官)」とし、洋上風力や水素、自動車、航空機、原子力など 14 の重点分野で取り組みの方向性や数値目標を掲げた。 規制や税制などの政策を総動員する一方、民間投資を促し、18 年に 10.6 億トンだったエネルギー関連の二酸化炭素 (CO2) の排出量を、30 年に 9.3 億トンに減らし、50 年に森林吸収分などを差し引いた実質でゼロにする。

家庭、運輸、産業の各部門では、遅くとも 30 年代半ばまでに乗用車の新車販売で電動車 100% を実現するなど、化石燃料に頼っていたエネルギー利用の電化を促す。 電動車に占める電気自動車 (EV)、燃料電池車 (FCV)、ハイブリッド車 (HV) などの割合は今後詰める。 電化が難しい製鉄などは、水素の活用を進める。 水素は運輸や産業部門での利用を加速させ、化石燃料に匹敵する水準までコストを下げることをめざす。 導入量は 30 年に最大 300 万トン、50 年に 2 千万トン程度と見込む。 それでも化石燃料を使わざるを得ない場合は、CO2 の回収・再利用を促す。

その結果、電力需要は 50 年に現在より 30 - 50% 増えると見込む。 日本では導入が進まない洋上風力発電を、40 年までに 3 千万 - 4,500 万キロワット(発電能力で原発 30 - 45 基分に相当)に引き上げると計画に明記した。 それでも再生エネですべてをまかなうのは難しく、50 年の総発電量に占める再生エネの割合は現状の 3 倍程度の 5 - 6 割(参考値)。 残りは原発と、CO2 を回収する火力発電で計 3 - 4 割、水素発電とアンモニア発電で計 1 割をまかなう。原子力を、確立した脱炭素技術と位置づけ、「可能な限り依存度を低減しつつも、引き続き最大限活用していく」とした。

目標の達成には、企業の技術開発や設備投資が欠かせない。 すでに閣議決定した今年度第 3 次補正予算案に盛り込んだ 2 兆円の基金や優遇税制のほか、長期資金供給の仕組みを創設して企業の活動を後押しする。 CO2 排出に価格を付けて企業に削減を促すカーボンプライシングは「成長戦略に資するものについて、新たな制度を含め、ちゅうちょなく取り組む」とした。 (新田哲史、桜井林太郎、asahi = 12-25-20)

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再生エネ 5 - 6 割、原発にも含み 2050 年電源構成案

経済産業省は 21 日、2050 年の総発電量に占める各電源の割合(電源構成)について、再生可能エネルギーを 5 - 6 割、水素とアンモニア発電を合わせて 1 割とする案を、参考値として有識者会議で示した。 残る 3 - 4 割は原発と二酸化炭素 (CO2) を回収・貯留・再利用する火力発電でまかなう。 菅義偉首相が掲げる「50 年までに温室効果ガス排出の実質ゼロ」の実現に向け、25 日にも発表される政府のグリーン成長戦略の実行計画に盛り込む方向だ。

発電部門からの排出は国内の温室効果ガスの約 4 割を占める。 経産省は今後、参考値をもとに、経済効率性や供給安定性などについて複数のシナリオで分析していく。 経産省は「(参考値は)政府目標として定めたものではなく、今後議論を深めていくための一つの目安・選択肢」とするが、原発の新増設・建て替え(リプレース)につながる可能性があり、論議を呼びそうだ。

国内の原発は東京電力福島第一原発事故後に廃炉が相次ぎ、いまは 36 基(建設中の 3 基を含む)。 すべての原発が運転期間を法律で定められた原則 40 年間とすると、50 年には建設中の 3 基だけとなる。 すべての原発に 20 年間の運転延長を認めても、50 年には 23 基まで減る。 有識者会議は原発容認派が多く、「カーボンニュートラル(CO>2 排出実質ゼロ)の実現には火力と原子力をきちんと活用していくことが重要」、「新増設の準備を始めるべきだ」といった声が相次いだ。 一方で、「信頼回復がどこまでできているのか」、「原発が本当に経済効率的なのか疑問」との指摘もあった。

また、実行計画では原子力が 15 程度の重要分野の一つに位置づけられることもわかった。 小型原発 (SMR) の国際連携プロジェクトへの参画や高温ガス炉の試験・実証のほか、太陽の中で起きている反応を人工的に起こす国際熱核融合実験炉 (ITER) 計画の着実な推進などを掲げる方針だ。 (伊藤弘毅、桜井林太郎、asahi = 12-21-20)

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温室効果ガス、2050 年に実質ゼロ 首相が表明へ調整

政府が、温室効果ガスの排出量を 2050 年に実質ゼロにする目標を掲げる方針であることがわかった。 複数の政府関係者が明らかにした。 菅義偉首相が、26 日に召集される臨時国会での就任後初の所信表明演説で表明する方向で調整している。 すでに欧州連合 (EU) が「50年実質ゼロ」を掲げており、足並みをそろえることで地球温暖化対策に取り組む姿勢をアピールする狙いだ。

温暖化対策の国際ルール「パリ協定」には、産業革命以前からの気温上昇を1・5度以内に抑える目標があり、実現するには 50 年までに世界全体の温室効果ガス排出を森林吸収分などを差し引いた実質ゼロにする必要がある。 日本政府は、これまで「50 年までに 80% 削減」や「50 年にできるだけ近い時期に脱炭素社会を実現できるよう努力」といった目標は掲げていたが、いつ「実質ゼロ」を実現するのか、具体的な年限を示していなかった。

世界では、EU のほかにも最大排出国の中国が今年 9 月、60 年までに「実質ゼロ」とする目標を掲げたほか、米大統領選では民主党のバイデン候補が温暖化対策に積極的に取り組む姿勢を見せている。 日本は、石炭火力政策をめぐって「温暖化対策に消極的だ」と国内外から批判を受け、取り残される懸念が出ている。

「実質ゼロ」とは、二酸化炭素 CO>sub>2 などの温室効果ガスをできるだけ減らした上で、どうしても減らせない分は森林吸収分などで埋め合わせすること。 経済産業省は、国のエネルギー政策の中長期的な方向性を示す「エネルギー基本計画」の改定に向けた議論を始めたばかりだが、欧州の主要国に比べて低い再生可能エネルギーの比率の引き上げや、CO>sub>2 排出が多い石炭火力の削減など、電源構成の見直しなどを迫られそうだ。 一方、再生エネ同様に発電時に CO>sub>2 を出さない原発の扱いも焦点となる。 来年 11 月には、国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP26) がある。 50 年実質ゼロとともに、30 年の日本の温室効果ガスの削減目標も上積みして報告できるかが、今後の焦点だ。 (asahi = 10-21-20)


エコ農法で途上国支援 節水・低コスト 環境保護へ

ローマ神話の果実の女神にちなんで名付けられた、三重県多気町の農業法人「ポモナファーム」。 たわわに実るトマトの根元にあるのは土ではなく、高密度で編まれた繊維シートだ。 必要最低限の水分量を調整するコントローラーと点滴チューブの組み合わせで与える水の量を従来の 10 分の 1 程度に抑え、排水も出ない。 トマトには適度なストレスがかかり、糖度が増す。 「低コストで栽培でき環境にも優しい技術を開発できた。 途上国でも安心して使ってもらえるはず。」 代表取締役 CEO の豊永翔平さん (31) は胸を張る。

幼い頃から化石や遺跡が好きで、考古学者に憧れた。 12 歳だった 2001 年 9 月、米国で同時テロが発生。 報道を通じてテロの首謀者をかくまっていたイスラム原理主義勢力がアフガニスタンの文化遺産を破壊していたと知り、衝撃を受けた。 「文明が残した美しい遺産を守り、平和にも貢献したい。」 早稲田大に入るとカンボジアでアンコール遺跡群などの調査にあたった。 しかし、そこで目にしたのは環境汚染だった。 かつては白かったという遺跡は排ガスなどで黒ずみ、滞在先の村では、子どもたちが飛び込んでいた川がどんどんよどみ、最後は誰も遊ばなくなった。 「自分がやるべきことは過去の調査より、今の世界を変えることなのでは」と気づき、大学院進学をやめた。

環境問題に関われそうなコンサルティング会社に入ったが、望む仕事はできなかった。 「会社を起こそう。」 グーグル創業者など著名な実業家が、同年代で起業していたことにも背中を押され、2 年弱で退社した。 勉強のために本を読みあさる中で、化学肥料や農業排水が汚染の一因になっていると知った。 「環境に優しい農業技術を確立すれば、地域を守り、雇用も生み出せる。」 職を求めて若者が離れていったカンボジアの村のことも頭に浮かんだ。

知人の紹介で、植物生理学の専門家でもある新潟県の農業技術者の男性 (67) に教えを請うた。 男性が基礎研究に着手していた、湿気を保つ繊維を土の代わりに使う、節水型の栽培技術開発に加わり、16 年、農業技術ベンチャーを起こした。 翌年には、環境に配慮した木質バイオマス発電所を誘致していた多気町に地元の製薬会社などとファームを設立。 技術を広める際に役に立てばと、ハウスの電気や水道などの設備工事も自ら手がけた。

この年、台風の被害を2度受け、設備も水につかった。 わずかに出荷できたレタスの売り上げは 7 万円。 それでも、地道に仕事に取り組んだ。 「作物としっかり向き合おう」とハウスに泊まり、装置の働きや植物の成長を夜通し確認した。 派手な宣伝はしなかったが、技術の評判は国内外に広がった。 10 か国以上から視察があり、米国の複数の企業が技術を導入してくれた。 環境に関心をもつ大学生や地元の高校を出た若者たちがファームに就職した。

今年は新たな挑戦の年だ。 カンボジアにレストランとファームの開設を計画中で、学生時代、ともに遺跡調査に関わった現地の仲間も参加を申し出てくれている。 ゆくゆくは、それらをシェフや農業者の学校にもしたいと考えている。 考古学から舞台は変わったが、夢の根幹は同じだ。 「環境に優しく、力強い産業を育てることで、地域に人を根付かせ、美しい文化が継承される世界をつくりたい。」 そんな思いで、今日も農業と向き合っている。 (中村亜貴、yomiuri = 1-10-21)


二酸化炭素をジェット燃料に変換、新たな研究結果が示す「炭素循環型経済」の可能性

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次世代太陽電池「ペロブスカイト」、脱炭素へ期待

菅義偉首相が 2050 年に温暖化ガス排出を「実質ゼロ」にする目標を表明し、次世代の太陽電池「ペロブスカイト太陽電池 (PSC)」への注目が高まっている。 低コストで薄く作れる利点があり、エネルギー変換効率などの向上が進んでいる。 大型化や耐久性などの課題解決に向けて、産学の連携が重要だ。 変換効率 28% を達成 - -。 11 月に発表した東京大学の瀬川浩司教授らの研究成果が注目を集めた。 1平方センチメートルの小さなものだが、優れた数値を達成したからだ。 9 月には梶山弘志経済産業相が研究室を視察し、国内で PSC の材料を自給できることなどに興味を示したという。

従来の太陽電池のほとんどは発電部にシリコンを使う。PSC はペロブスカイトという結晶構造の材料を発電部にする。 印刷技術で簡単に作れて折り曲げることも可能だ。 製造コストがシリコン製の半分以下になると期待されている。 PSC の変換効率は実験室レベルで 20 数% 程度だったが、瀬川教授らは銅やインジウムなどの発電部と組み合わせた「多接合型」にして大幅に高めた。 調整すれば同 30% 超も可能だという。 瀬川教授は「将来はシリコン製の太陽光パネルを全て PSC で置き換えたい」と意気込む。

脱炭素社会の実現には再生可能エネルギーの利用拡大が欠かせない。 小泉進次郎環境相は 15 日、30 年度の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合を現在の目標の倍となる 4 割以上に高める意向を明らかにした。 太陽電池の利用拡大には、技術革新が不可欠だ。 調査会社の富士経済(東京・中央)が 3 月に公表した調査報告では、PSC など次世代太陽電池の世界市場は 19 年には 6 億円にとどまるが、30 年には 4,563 億円になると予想する。

国際的に注目を集めており開発競争は激しい。 米スタンフォード大学は今後の量産につながる成果を出した。 PSC の発電部の薄膜を量産する技術を開発した。 ノズルから原料の溶液と反応性の高いガスを噴射して瞬時に乾燥させる。 従来は約 30 分加熱して乾燥させる必要があった。 シリコン製太陽電池の 4 倍の速度で量産できるという。 実用化への課題の一つは電池の大型化だ。 PSC は数平方センチメートル以下という小さな電池では高い変換効率を示すが、大型になると不純物が混入したり、溶液を均一に塗れなかったりするため効率が大幅に下がる。

耐久性も課題だ。 熱や湿気で劣化し、せいぜい数カ月しかもたない。 沖縄科学技術大学院大学のヤビン・チー教授らは光を 2,000 時間受けても 14% しか変換効率が落ちない電池を開発した。 特殊な高分子を混ぜて劣化を防いだ。 まだ実験室レベルだが今後、大型の電池で試す考えだ。 課題を解決して実用化につなげるには企業との擦り合わせが必要だ。

パナソニックは新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) と協力し、変換効率 17.9% の大型 PSC を開発した。 リコーも印刷技術を生かし、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) と宇宙で発電できる劣化の少ない PSC を開発中だ。 ただ「開発に本気で取り組む企業はまだ少ない。(瀬川教授)」 こうした取り組みを加速することが求められる。 (三隅勇気、nikkei = 12-20-20)