北海道の町が独自の電線 大停電 2 年、電力は自ら守る

2018 年 9 月の北海道胆振(いぶり)東部地震で国内初のブラックアウト(全域停電)が発生し、北海道では最長 2 日間にわたり電気のない生活を強いられた。 大規模な停電の再発に備えて、北海道の各地では電力会社の送電網から「独立」し、再生可能エネルギーで電気の供給を続ける取り組みを自治体や企業が始めている。

非常時は「独立」 太陽光の電気を供給

北海道十勝地方の鹿追(しかおい)町。 人口 5 千人余りの町が、「自営線」と呼ばれる電線を 1 年がかりで整備し、8 月から電気を流し始めた。 といっても、町内全域に電線を張り巡らせたわけではない。 北海道の自治体としては平均的な大きさとはいえ、鹿追町の面積は山手線の内側の約 6 倍の 400 平方キロ。 町によると、電線の整備には 1 キロあたり 1 億円かかり、全域をカバーするのは現実的ではない。

対象は町中心部の半径 300 メートルほどのエリアに絞り、町役場や町民ホール、小学校などの公共施設 9 カ所をつなぐ。総延長は約 3 キロで、44 本の電柱を立てた。 近くに新設した太陽光発電所(出力計 440 キロワット)でつくる電気を、この電線を使って届ける。 8 月の小学校を皮切りに、10 月上旬までに全ての施設への送電を始める。 ただ、太陽光でまかなえるのは、各施設で使う電気の 3 割程度にとどまる。 このため、引き続き北電から電気の供給を受ける。 これまでは施設ごとに別々だった契約を一括受電に切り替え、太陽光では足りない分を北海道電力から買う形にする。

北電側で大規模停電が起きた場合は、互いの電線の境界点でシステムを切り離し、災害時に避難所となる町民ホールなどに電気の供給を続ける。 太陽光発電所に併設した蓄電池などを使い、電力の需要と供給のバランスを調整する。 大型発電所に頼らず、地域でつくる電気を地域で使う仕組みは「マイクログリッド」と呼ばれ、近年注目を集めています。 記事の後半では、北海道最南端の地で風力を活用する東急不動産の取り組みも紹介します。

この取り組みは環境省の補助事業で、17 - 20 年度の 4 年間の計画だ。 太陽光の電気を使って二酸化炭素の排出量を減らすのが主な目的だが、「ブラックアウトを機に地域のエネルギーを活用する意義はより強くなった」と鹿追町企画財政課の林大介係長は話す。

年 580 万円の「黒字」 採算確保にめど

ブラックアウトでは、離島をのぞく北海道全域で 295 万戸が停電した。 震源から約 100 キロ離れ、地震による直接的な被害はなかった鹿追町でも日常生活は大混乱した。 自家発電機を動かし、町役場でコンセントを開放したところ、電気を求める町民が相次ぎ訪れた。 携帯電話の充電はもちろん、「温かいご飯が食べたい」と炊飯器を持ってきた人もいたという。

原発の電源を確保せよ! 大停電から手探りの復旧

国の補助事業は今年度で終了するが、採算確保のめどは立っている。 総事業費 7.7 億円のうち、国の補助金は 4.6 億円。 人口減が進む自治体に国が返済額の 7 割を負担する過疎債(借金)も活用するため、実質的な町の負担は 1 億 1,700 万円という。 これに対し、電気代の削減が年 1,500 万円。 設備の維持費などを差し引いても年 580 万円の「黒字」で、投資額は 20 年で回収できると見込む。

再生エネを「地産地消」、地域の活性化も狙う

将来的には、町が一般家庭向けの電力販売に乗り出す構想もある。 再生エネルギーでつくる電気の「地産地消」による地域の活性化が目的だ。 酪農が盛んな鹿追町には、牛のふん尿を使うバイオガス発電設備(計約 1 千キロワット)がある。 今は再生エネルギーの固定価格買い取り制度 (FIT) で北電に売っているが、買い取り期間が 28 年以降に順次終了する。 年間の発電量は、全世帯の使用量の 7 割に相当する。 この電気を町内の家庭に売るという考えだ。 コスト面を考えると、既存の電線を使うことになりそうだが、「電気代として町外に流出しているお金が地元で回るようになる」と町は期待する。

遠く離れた大型発電所に頼らず、地域でつくる電気を地域で使う仕組みは「マイクログリッド」と呼ばれる。 再生エネルギーの有効活用につながるため、国も補助金を出して整備を後押ししている。 課題はコストだ。 鹿追町と同じ北海道十勝地方の上士幌(かみしほろ)町では、経済産業省の補助を受けてマイクログリッドの構築をめざすが、計画は暗礁に乗り上げている。 バイオガス発電設備に併設する蓄電池などの費用に最大約 20 億円かかることが判明。 町の担当者は「完成後も維持管理のコストがかかる。 採算の確保が見込めず、町民の理解が得られない。」と説明する。 一方で、既存の設備を活用してコストを抑える動きもある。

北電の送電網を活用し、コスト抑制

北海道最南端の松前町では、東急不動産(東京)などが昨年 4 月に運転を始めた風力発電所(出力約 4 万キロワット)を使う。 自前の電線は整備せず、北電グループの送電網を活用する。 大規模停電が発生した場合には、一定のエリアだけを北電側から切り離して独立させ、そのエリア内の電力供給を風力でまかなう。 風力は太陽光と同じように天候次第で発電量が安定しないのが弱点だが、出力の変動を調整する蓄電池も設置済みで、大がかりな投資は必要ないという。 風力による年間発電量は、町の人口を上回る一般家庭 3 万世帯分に相当する。 普段は FIT で北電に売電しているが、非常時は公共施設だけでなく、一般家庭にも届けるという。

東急は今年度中に具体的な計画をつくる予定で、非常時に切り離すエリアの設定や技術的な課題について北電側と協議している。 東急の担当者は「ブラックアウトを経験した北海道で、再生エネルギーを活用した分散型の電力供給を実現させてたい」と話す。

ブラックアウトで浮き彫り 「集中電源」リスク

電力会社の供給エリアが丸ごと停電するブラックアウトは、大型発電所に電気を頼りすぎる「集中電源」の問題を浮き彫りにした。 18 年 9 月 6 日の北海道胆振東部地震で、道内の電力需要の半分近くをまかなっていた苫東厚真(とまとうあつま)発電所(出力計 165 万キロワット)が停止した。 これがブラックアウトの最大の要因だ。 需要(使用量)と供給(発電量)のバランスが崩れ、北電は本州とつながる送電線「北本連系線」を通じた緊急送電を受け、需要を減らす「強制停電」を 3 度実施した。 だが、需給バランスは回復せず、地震の 18 分後の午前 3 時 25 分、北電の全ての発電所が連鎖的に停止した。 停電の全面復旧は約 45 時間後だった。

再発防止の取り組みは進んでいる。 19 年には石狩湾新港発電所 1 号機(出力 56.94 万キロワット)が運転を開始し、北本連系線の容量は従来の 1.5 倍の 90 万キロワットに拡大され、今後 120 万キロワットに増強される。 北電は「ブラックアウトの再発リスクは極小化されている」と説明する。 (長崎潤一郎、asahi = 9-8-20)



北海道厚真町で震度 6 弱 マグニチュード 5.7

21 日午後 9 時 22 分ごろ、北海道胆振地方を震源とする地震があり、厚真町で最大震度 6 弱を観測した。 気象庁によると、震源の深さは約 30 キロ、地震の規模を示すマグニチュードは 5.7 と推定されている。 地震による津波の心配はないという。 (asahi = 2-21-19)



停電、患者全員が人工呼吸 医師が選択した「御法度」

9 月 6 日未明に起きた北海道地震の直後、道内はほぼ全域で大規模停電(ブラックアウト)が起きた。 入院患者全員が人工呼吸という札幌市の病院では、復旧の見通しがないまま、医師たちが焦燥にかられていた。 自家発電機の燃料は残りわずか。 そのとき、医師の脳裏をよぎった過去のある経験が苦境に道を開いた。 札幌市中央区の平成会病院は入院患者 82 人全員が人工呼吸という病院だ。 「停電は即、患者全員の死につながる」と副院長の米山重人(よねやましげと、63)は言う。 全患者の呼吸器と連動する生体モニターを医師らが 24 時間見守る。

6 日未明の北海道地震で同区は震度 4。 だが、朝、米山が病院に電話すると「自家発電が動いています。」 重大な事態と気づいた。 北海道電力からは、通常の送電線が不能になった事態に備え「予備線」もひいていた。 それも途絶えたわけだ。 病院に着くと、薄暗がりに緊急用ランプがともっていた。 3 階建ての屋上にあがり、発電機を確かめた。 ざっと見積もって燃料がもつのは残りあと 6 時間だ。 (中山由美、asahi = 11-9-18)


東京 - 新函館北斗 1 万 310 円 東北・北海道新幹線が半額のネット商品発売

東北・北海道新幹線が 50% 割引になる「お先にトクだ値スぺシャル(乗車券つき)」と「スーパーモバイル Suica 特急券スペシャル(スーパーモバトクスペシャル)」が発売されます。 JR 北海道と JR 東日本は 2018 年 9 月 28 日(金)、北海道胆振東部地震で落ち込んだ観光需要を回復させるため、東北・北海道新幹線「はやぶさ」を対象に期間限定で運賃・料金が 50% 割引となるインターネット商品を設定すると発表しました。 (乗りものニュース = 10-2-18)

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北海道地震 観光客に "宿泊費用" を補助

北海道胆振東部地震の被害を受けた北海道に、観光客を呼び込むため、宿泊費用を補助する「北海道ふっこう割」などの対策が決まった。 北海道内では、今月 6 日に発生した北海道胆振東部地震のあと、宿泊予約のキャンセルが相次ぐなど影響が広がっている。 政府は、道内を訪れる観光客の宿泊費用を補助する、「北海道ふっこう割」などの対策をとりまとめた。

「ふっこう割」では、北海道を訪れる観光客の旅行商品や宿泊代金について、1 泊あたり 2 万円を上限に、日本人旅行者の場合、最大 3 泊まで 50 - 70% が、外国人旅行者の場合は、最大 5 泊まで 70% が補助される。 28 日、政府が閣議決定した、北海道胆振東部地震と台風 21 号の被害を受けた対策のための予備費、合わせて 153 億円の中から、81 億円があてられる。 石井国土交通相は、「北海道の風評被害を迅速に払拭し、宿泊需要の回復に全力を尽くしていく」としている。 (日テレ = 9-28-18)

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羽田 - 新千歳 6,400 円、関西 - 新千歳 8,000 円から JAL、北海道被災支援で先得運賃値下げ

地震被害を受けた北海道を応援するため、JAL が「北海道支援パッケージ」を展開。 北海道発着国内線の先得運賃値下げなどが行われます。

搭乗期間は来年 3 月 30 日まで

JAL (日本航空)は 9 月 21 日(金)、「平成 30 年北海道胆振東部地震」からの一日も早い復興に向けて「北海道支援パッケージ」を展開し、その一環として北海道発着国内線の先得運賃を値下げすると発表しました。 早期予約で購入できる運賃で、東京(羽田)から札幌(新千歳)までは 6,400 円からと、正規運賃から最大およそ 84% の割り引きに。 大阪(関西)から札幌(新千歳)までは 8,000 円からと、正規運賃から最大およそ 83% の割り引きになります。

対象路線は、道内路線を含む北海道発着全路線で、搭乗期間は 2018 年 10 月 28 日(日)から 2019 年 3 月 30 日(土)までです(便・期間によって設定がない場合もあり)。 このほか JAL は北海道への支援として、お得な旅行商品の設定、海外での宣伝・販売促進などを行うとしています。 (乗りものニュース = 9-21-18)


厚真など 3 町の避難生活、長引くおそれ 賃貸住宅が不足

北海道地震で多数の住宅が全壊した 5 市町の仮設住宅をめぐり、説明会や入居手続きが始まっている。 札幌など 2 市は賃貸住宅が多く、今月末にも提供が始まる。 一方、厚真など 3 町は賃貸住宅が少なく、仮設住宅の完成は早くても 10 月末で、避難所生活が長引くおそれが出ている。 道庁によると、道内の住宅被害は 24 日現在、全壊は 5 市町の 156 棟、半壊は日高町を加えた 6 市町の 434 棟。 仮設住宅はプレハブなどの「建設型」と賃貸物件を借り上げる「みなし仮設」がある。

札幌市は賃貸物件が多く、全てみなし仮設で対応し、今月末までに提供を始める予定だ。 隣の北広島市も建設型はゼロ。 25 日以降、13 戸以上のみなし仮設を順次、提供する。 これに対し、厚真などの 3 町はみなし仮設や公営住宅で対応しようとしたが、町内に物件が少なく、建設型も進めている。 仮設住宅に入れるのは、全壊と大規模半壊などの被災者に限られるが、第 1 期として 3 町で計 130 戸の建設が決まった。 足りない分は追加で建設する方針だが、時期は未定という。 (伊沢健司)

「どこでもいいから入りたい」

36 人が犠牲になった厚真町では 24 日、避難所の小学校など 8 カ所で説明会が開かれた。 出席した農家の田口平作さん (81) と和子さん (78) 夫妻は自宅が全壊。 隣の苫小牧市の知人宅に身を寄せる。 25 日に着工し、10 月末に完成する第 1 期分に入居できる予定だが、毎日、自宅まで通い、トマトやタマネギを収穫し、札幌市で販売を続ける。 1 週間ほど前には疲労がたたって病院に搬送された。「住むところが早くほしい」と話す。

同町の幌内地区で一人暮らしだった女性 (81) の隣家は、土砂崩れで 3 人が犠牲になった。 自宅は土砂を免れたが、地震で壊れて住めない。 「おばあちゃん大丈夫?」と声をかけてくれる人がいる幌内が好きだ。 建設型でもみなし仮設でも、住宅が用意されるなら「生まれ育った町を出たくない」という。 町では最大 130 戸程度の仮設が建設される見通しだが、第 1 期は 85 戸まで。 建設型より早く入居できるみなし仮設は、賃貸物件が少なく難航している。 空き家の活用も考えたが、水回りなどの修理が必要で難しいという。

住宅 230 戸の全半壊が確認されている安平町。 23 日に説明会があり、午前と午後でそれぞれ 100 人ほどが集まった。 町は 25 日に第 1 期工事を始め、10 月末までに 20 戸を完成させる予定だが、それ以降は決まっていない。 みなし仮設の約 15 戸を合わせても足りていない。 住民の意向を調べ、入居戸数を確定してから追加工事に取りかかる考えだという。

同町の小塚恵子さん (73) は地震で自宅入り口のドアが閉まらなくなった。 夫は人工透析が必要で、避難所に入っていない。 一部損壊だと仮設に入れないまま寒い季節を迎えることになる。 「年金生活で、修理したり新しい家を建てる余裕はない。 どこでもいいから入りたい。」 (今泉奏、遠藤美波)

「みなし仮設」、地方では賃貸の確保困難

暮らしの復興に向けた拠点となる仮設住宅。 阪神・淡路大震災ではプレハブや木造の「建設型」がほとんどだったが、最近は自治体が賃貸住宅を借り上げ、被災者に提供する「みなし仮設」の活用が増えている。

その契機となったのが、東日本大震災だ。 津波に襲われ、原発事故が起き、避難先は広域化。 建設型だけでは対応しきれず、仮設住宅 12 万 3,723 戸のうち 6 割がみなし仮設だった。 熊本地震ではさらに活用が進み、みなし仮設の割合は 8 割に上った。 政府は南海トラフ地震が起きた際、仮設住宅が最大で 205 万戸必要になると推計。 みなし仮設のほか、空き家の活用も促している。

みなし仮設は早期に入居でき、居住性にも優れる一方、地方では賃貸物件を確保しにくいという問題点がある。 建設型は完成に時間を要する上、比較的簡易な造りで住居としての環境が十分ではないと指摘されている。 (岡戸佑樹、asahi = 9-25-18)


北電の強制停電、3 回目は不十分 ブラックアウト誘発か

6 日未明に北海道で起きた地震後、北海道電力が全域での大規模停電(ブラックアウト)を防ぐために、一部地域を強制的に停電させて電力需要を減らす措置を 3 回試みていたことがわかった。 最初の 2 回は全域停電の回避に一定の効果があったが、地震で損傷した火力発電所の停止直後に実施した 3 回目は不十分で、ブラックアウトにつながったとみられる。

経済産業省と国の電力広域的運営推進機関(広域機関)が 19 日、地震直後の 6 日午前 3 時 8 分からブラックアウト(同 25 分)に至るまでの 17 分間の道内の電力需給バランスについて、北電などから得たデータに基づき、概要を公表した。

地震直後、道内最大の火力で震源に近い苫東厚真(とまとうあつま)発電所(厚真町)の 2 号機、4 号機が地震の揺れで自動停止した。 これで地震前の電力供給約 310 万キロワットの 4 割弱が一気に失われた。 電気はためられないため、その時々に使う量に合わせて発電所の出力を細かく調整する必要がある。 需要に対して供給が少ないと需給のバランスが崩れ、発電機が壊れるなどの影響が出る。 最悪の場合、ブラックアウトにつながる。

需給のバランスがとれている時、北海道を含む東日本では、発電機の回転速度に当たる周波数が 50 ヘルツで推移(西日本は 60 ヘルツ)する。 電気の需要が増えると周波数は下がり、供給が増えると上がる。 苫東厚真の 2 基の停止で北電の供給力は急速に落ち、周波数は平常時にはあり得ない 46.13 ヘルツまで一気に下がった。 道内すべての風力発電所と、水力発電所の一部も止まった。

北電はすぐに 1 度目の強制停電を発動。本州からの電力融通(最大約 60 万キロワット)も受けて 3 時 9 分にいったん、需給バランスが回復した。 ただ、それは 2 分間ほどしかもたなかった。 「夜中の地震に驚いて電灯やテレビをつける人が多く、地震から数分で需要が急増した(経産省担当者)」とみられる。 同 11 分からは、再び需要が供給力を上回り、周波数が低下。 ギャップを埋めるため、苫東厚真以外の火力発電所が出力を上げ、同 18 分過ぎには再び、需給バランスはおおむね回復した。

ところが、同 21 分から苫東厚真で唯一発電を続けていた 1 号機の出力が低下。 「ボイラーの配管が損傷し、蒸気が漏れたため」(同)とみられる。 これを受け、北電は同 22 分に 2 度目の強制停電を実施。 需給バランスはやや改善したが、同 25 分には苫東厚真 1 号機が停止。 北電は 3 度目の強制停電に踏み切ったものの、強制的に停電できる地域を「すべて使い切った(広域機関)」とみられ、需要を十分に減らせなかった。 ほかの火力発電所や水力発電所もすべて止まり、北海道ほぼ全域のブラックアウトに陥った。

3 回の強制停電の地域や規模はわかっていない。 北電による強制停電が適切だったのかも含め、ブラックアウトに至った原因を検証するため、広域機関は研究者 4 人による第三者委員会の初会合を 21 日に開き、10 月中に中間報告をまとめる。 北電による人為的ミスの有無について、経産省は「把握していない」としつつ、「検証対象になる」と説明した。 (関根慎一、桜井林太郎、asahi = 9-20-18)

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苫東厚真発電所、再稼働は 19 日にも 道は「安全宣言」

北海道電力は 18 日、地震で止まっていた道内最大の火力発電所、苫東厚真(とまとうあつま)発電所 1 号機(厚真町、35 万キロワット)を 19 日にも再稼働させると発表した。 政府と北電は、1 号機が動けば危機的な状況は脱するとして、節電要請を解除する。 当初は 18 日中の再稼働をめざしていたが、試運転の工程が遅れ、19 日にずれ込む。 北電の電力供給力は緊急時の本州からの送電分を含めると 431 万キロワットに積み上がる見通し。 ピーク需要は 383 万キロワットとみており、節電なしでも安定供給のメドが立つ。 2 号機と 4 号機も 11 月までに運転を再開する方針。

世耕弘成経済産業相は 18 日、「北海道経済の復興に力を入れたい」と語り、北海道もこの日、観光客を呼び戻そうと「安全宣言」を打ち出した。 地震と停電で宿泊施設のキャンセルが相次ぎ、観光消費が落ち込んでいたが、英語や中国語など 5 カ国語で「大部分の地域では観光客の受け入れに支障がない」と訴えた。 また、北電の大規模停電(ブラックアウト)の原因究明のため、19 日に国の電力広域的運営推進機関による検証委員会が設置されることになった。 第 1 回会合を 21 日に開き、10 月中をめどに中間報告を出す。 (asahi = 9-18-18)

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北海道の大停電防止、一時は機能 本州から電力融通受け

北海道で 6 日未明の地震後に起きた大規模停電をめぐり、地震直後に北海道電力が本州側から緊急の電力融通を受けるなどして、いったんは電力の需給バランスを回復していたことが、大手電力間の電力融通などを担う国の電力広域的運営推進機関の分析でわかった。 だが、その後何らかの理由で再びバランスが崩れ、地震から 18 分後に道内ほぼ全域の停電(ブラックアウト)に陥った。 広域機関や北電はこれまで、ブラックアウトまでに本州から電力融通があったかを明らかにしていなかった。 世耕弘成経済産業相は 11 日、停電に至った経緯を第三者も交えて検証する意向を示した。

広域機関や北電によると、6 日午前 3 時 7 分の地震発生直後、震源に近い苫東厚真火力発電所(厚真町) 2 号機と 4 号機が自動停止し、130 万キロワット分の供給力が一気に失われた。 すぐに本州側から 60 万キロワットの融通を受けたほか、北電が一部地域を強制的に停電して需要を減らす措置を取り、3 時 11 分までに電力の需給バランスは回復したとみられるという。

需給バランスが崩れたままだと、各地の発電所の機器が故障を防ぐために自動停止し、大停電につながる。 これを防ぐための措置が地震直後に一時的に機能したもようだ。 だが、この後に再び均衡が崩れ、午前 3 時 25 分、苫東厚真 1 号機を含め道内の火力発電所などが停止してブラックアウトした。 この間、北電の運用が適正だったかどうかが、原因究明の焦点の一つになりそうだ。 (桜井林太郎、asahi = 9-12-18)

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照明は 3 割消灯、テレビは省エネモードで … 節電策を紹介

北海道の電力需給が厳しい状況を受け、政府は需要が増える平日午前 8 時半から午後 8 時半に、道内全域で 2 割の節電を呼びかけているが、経済産業省は、家庭やオフィスでできる取り組みを紹介している。 家庭では照明が消費電力の 19% を占めており、まず不要なものをできるだけ消すことが必要という。 約 3 割を消せば 7% の効果が出るという。 これまで 3 部屋でつけっぱなしにしていたら、そのうち 1 部屋を消せば減らせる。

テレビは「省エネモード」に設定し、見る時間を 3 分の 2 にすれば 2% 減らせる。 冷蔵庫は設定を「強」であれば「中」にし、食品を詰め込まなければ 2% がカット。 温水便座はプラグを抜き、炊飯器はタイマー機能で早朝に 1 日分を炊いて冷蔵庫に保存。 使わない家電は本体の主電源を切ったり、プラグを抜いたりすれば、これらを合わせて 7% ほどが減らせる。

オフィスビルでは、消費電力の約 4 割が照明。 執務エリアの半分ほどを間引けば 15% の効果がある。 パソコンなどの OA 機器も電源を切れば 3% 減らせる。 オフィス・集合住宅とも上りは 2 階分、下りは 3 階分までなら歩き、エレベーターの使用を控えることも節電につながる。 経産省はインターネットの特設サイト (http://www.enecho.meti.go.jp/category/others/setsuden/) を設け、詳しい節電対策法を紹介している。 (asahi = 9-10-18)

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北海道の停電 地元コンビニ「セイコーマート」が車から電力供給して営業 広報「コードを常備している」

9 月 6 日に北海道で発生した地震の影響で道内全域で停電が発生し、道内のコンビニエンスストアでは一時休業する店舗が相次いでいます。 そのような中、北海道のローカルコンビニチェーン「セイコーマート」はほとんどの店舗が "車から電力を供給" して営業しており、Twitter では非常時に物資が購入できるのは助かるとして称賛の声が集まっています。 なぜこうした対応ができたのか、セイコーマートに取材しました。

北海道電力は、北海道胆振地方中部を震源とする最大震度 7 の地震により、道内のほぼ全世帯となる約 295 万戸で停電が発生したと発表(すでに約 140 万戸が復旧)。 交通機関のインフラ機能がストップした他、ローソンでは道内 664 店舗中約 300 店が一時休業するなど大きな影響が生じました(ローソンは随時営業を再開)。

しかしセイコーマートは道内 1,100 店舗のうち、休業したのは地震によって店舗が損壊してしまった 7 店舗のみ。 エンジンをかけた車の DC 電源(シガーソケット)などにコードをつないで店舗へ電力を供給することで、停電時にかかわらずほとんどの店舗がレジを利用して営業可能になっていたといいます。 Twitter では、緊急事態でも臨機応変に営業を続行できたセイコーマートに対し「すごい」、「ありがたい」、「感心した」と絶賛する声が続出しました。

セイコーマートの広報部に取材したところ、同チェーンでは停電時に備えて全店舗に車からの電力供給コードを常備しているとのこと。 Twitter で話題の対応も、各店舗が停電時のマニュアルにのっとって営業しているものだと説明しました。 またオフラインでもバーコードを読み取れるハンディの POS 端末も普段から備えており、今回の停電時にこれを使って会計している店舗を見かけたというツイートがあがっています。 (ねとらぼ = 9-7-18)

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使えぬクレジットカード、下ろせぬ現金 「電気ないと」

地震と停電の二つのショックが北海道の政治経済の中心、人口 200 万人を擁する札幌市を直撃した。 液状化現象で住宅が傾き、道路はいたるところで波を打った。 地下鉄や鉄道はストップし、コンビニエンスストアやスーパーは薄暗い中で営業を続けたが、次第に品物不足になるなど、市民生活に大きな影響が出ている。

札幌市清田区の住宅街では、液状化現象が発生。 道路に大きな亀裂が入り、複数の家屋が傾いた。 道路が大きく盛り上がったり、陥没したりしたほか、マンホールが路面から飛び出したところもあった。 近くに住む男性 (37) は「午前 4 時 20 分ごろ、コンビニへ買い出しに出ようとしたら、すでにこの状態だった。 こんなことは初めてで驚いている。」と話した。

付近は断水したままだ。 生後 6 カ月の乳児を抱いた住人の女性 (23) は「水が出ない。 ミルクやおむつが足りなくなるのではないかと心配です。」 地震から 10 時間以上が経過した 6 日午後 1 時 40 分ごろ、同区の駐車場では、救急隊員が液状化で噴き出した泥に埋まっていた一ノ瀬康孝さん (60) を救助していた。 一ノ瀬さんは正午過ぎに勤務先の駐車場に来たところ、別の男女が泥にはまっているのを発見。助けようとして自らも泥にはまったという。 「泥がどんどん重くなり、動けなくなった。」 救助活動は約 3 時間に及んだ。

一方、停電の影響も広がっている。 札幌市内の信号機は一部をのぞき停止したまま。 交差点では、警察官が中央に立ち、笛を吹きながら交通整理した。 市内の路線バスも、信号機の回復まで運行を取りやめた。 医療機関でも、停電で患者に対応できなくなる事態が相次いだ。 非常電源を持つ市立札幌病院には未明から、停電した病院から患者の受け入れ要請が続き、正午までに、人工呼吸器を使う入院患者や、人工透析が必要な人を 5 人ほど受け入れたという。

交通機関も混乱した。 JR 北海道は全線がストップ。 JR 札幌駅では、午後 2 時半過ぎ、列車の運行再開を待つ人々が、薄暗く蒸し暑い構内にあふれた。 改札口周辺には、シートを床に敷いて地べたに座り、スマートフォンで情報収集する人々が目立った。

早朝から列車の再開を待っているという北海道帯広市から出張で来た会社員男性 (47) は、気がかりなのがお金だ、という。 ふだんはクレジットカードなどを使っていて現金をほとんど持ち歩いていなかった。 「ATM (現金自動出入機)が使えないのが致命的だ。 電気がないとこんなにも不便になると、身をもって感じた。」と話した。

同じころ、駅前のタクシー乗り場には約 200 メートルの列ができた。 先頭にいた札幌市白石区のアルバイト男性 (38) は、1 時間以上、タクシーを待っているといい、「JR も地下鉄もバスも走っていないので、どこにも行けない。 早く家に帰りたい。」と疲れ切った表情をみせた。

スーパーやコンビニでは、食料や水、生活必需品を買い求める市民が長い列をつくった。 札幌市中央区の狸小路商店街「ドン・キホーテ狸小路店」前には、食料品や乾電池などを求める市民が殺到。 近くに住む小学 3 年生の馬渕日向子さん (8) は学校が休校になり、母と 2 人で 3 時間並んで乾電池や携帯の充電器を買った。 「足が疲れた。 うちに帰って休みます。」と話した。

札幌市東区の美容師小林由紀子さん (50) は、朝からコンビニやガソリンスタンドなど 10 店舗ほど回った。 ガソリンスタンドを 3 軒回ってようやく 2 千円分だけ給油できた。 「4 日の台風 21 号の影響で停電になって、復旧したと思ったらまた停電になった」と不安そうだ。

一方、ゼミ合宿で首都圏から 5 日に札幌にやってきた千葉県の大学生池田和輝さん (21) は午後 2 時ごろ、ゼミ仲間と手分けして食料を探していた。 「朝はコンビニも開いていたのですが、今はどこも閉まってしまって。」 午前中から 3 時間近く歩き回っても、食べ物は手に入っていない。 「とりあえず、仲間と合流してまた探します。」と途方に暮れていた。

外国人観光客ら対象に臨時避難所

札幌市内のホテルを 6 日にチェックアウトし、行く先がなくなった外国人観光客らを対象に、札幌市経済観光局はオープン前のさっぽろ創世スクエア(札幌市中央区)の 1、2 階部分を開放し、臨時の避難所を作った。 約 540 人が身を寄せ合い、携帯電話の充電をしたり、テレビに見入ったりした。 午後 4 時ごろから、椅子を並べたり充電できる場所を設置したりした。 スペースはすぐに外国人観光客であふれかえった。水を配りはじめ、夜には毛布を配布する予定で、軽食も可能な限り集めて配りたいという。

家族とともに旅行で札幌に滞在して 3 日目という韓国人観光客の女性 (36) は「ホテルがなくて困っていた。 携帯電話の充電もできるし、このスペースはありがたい」と話した。 道によると、2017 年度に北海道を訪れた外国人観光客は 279 万人。 (asahi = 9-7-18)

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需給バランス崩壊、発電所停止の連鎖 初の道内全域停電

北海道全域の約 295 万戸での停電という事態が起きた背景には、発電拠点の立地に加え、本州との連系線の弱さもある。 大手電力会社のほぼ全域での停電は国の電力広域的運営推進機関によると初めてだ。 震源地に近い苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所(北海道厚真町)は 165 万キロワットを発電できる北海道電力で最大の火力発電所だ。 地震が起きた当時は、北海道全体の約半分の電力を供給していた。

これが地震でとまった。 経済産業省によると、苫東厚真でボイラーの配管が損傷した可能性がある。 北海道全体の使用量と発電量のバランスが崩壊。 本来は一定に保つ必要がある周波数が下がった。 周波数低下の影響で道内のほかの火力発電所も運転がとまり、離島を除く北海道ほぼ全域の停電に至ったという。

大阪電気通信大の伊与田功教授(電力系統工学)によると、電力の需要と供給のバランスが大きく崩れると、設備への負荷やトラブルを避けようとして、各地の発電所で電気の供給を遮断する安全機能が働く。 今回の地震では、北海道各地で電気の遮断がドミノ倒しのようにいっせいに起こり、すべての発電機が電気系統から離れて広域で停電する「ブラックアウト(全系崩壊)」が起きたとみられる。

北海道では、最大の電力消費地である札幌都市圏の南東に苫東厚真発電所、西に泊原子力発電所(北海道泊村、207 万キロワット)があるが、泊原発は再稼働していない。 重要施設の直下に断層が走っており、原子力規制委員会の審査が続いている。 その泊原発では午前 3 時 25 分、停電に伴い送電線からの外部電源を喪失。 同 28 分に非常用ディーゼル電源 6 台が作動し、電源を確保。 使用済み核燃料の冷却を続けている。

北海道と本州のあいだには、電力をやりとりできる「北本連系線」がある。 しかし、これを使うには北海道側で受け取る直流を交流に変換するための交流電力が必要で、これを調達できなくなった。 また、この連系線の能力は 60 万キロワットで、苫東厚真の発電能力の 2 分の 1 に満たない。 連系線の脆弱さが浮き彫りになった形だ。 (asahi = 9-6-18)