再生カートリッジ業者、キヤノンを提訴 仕様変更めぐり

プリンターのインクカートリッジの仕様を変えられリサイクル品販売を違法に妨げられたとして、リサイクル品製造・販売業「エコリカ(大阪)」が 27 日、大手精密機器メーカー「キヤノン(東京)」に 3 千万円の損害賠償などを求める訴えを大阪地裁に起こした。 訴状によると、キヤノンは 2017 年 9 月に発売したインクカートリッジでインク残量を表示させる IC チップの仕様を変更。 インクを再注入してリサイクル品を販売しようとしてもプリンター上で「インクなし」と表示されるようになったため販売できず、仕様の変更は独占禁止法が禁じる「競争者に対する取引妨害」などと訴える。

インクカートリッジ市場では、純正品を売るメーカー側と、リサイクル業者や純正品を使用しない互換品を製造・販売する業者側が攻防を繰り広げる。 東京地裁でも昨年 12 月、東京と大阪の互換品の製造・販売業者が、ブラザー工業(名古屋市)に仕様を変更され、販売を妨げられたとして仕様変更の差し止めや損害賠償を求めて提訴。 ブラザー側は取材に「コメントは控える」とした。 メーカー側がリサイクル業者を訴えた例としては、キヤノンがエコリカとは別の業者に対し、特許権侵害を理由に販売停止などを求めた訴訟は 07 年、キヤノンの勝訴が確定。 エコリカがセイコーエプソン(長野)から販売差し止めなどを求められた訴訟では「特許権が無効」として同年、エコリカの勝訴が確定した。

提訴後に会見したエコリカの宗広宗三社長 (62) は「純正品と再生品のどちらを使うかというユーザーの選択肢を奪うのはどうなのか。 キヤノン以外のメーカーは配慮してくれている。 市場競争に参加できるようにしてほしい。」と話した。 キヤノンは取材に対し、仕様変更の理由について「開示できない」とし、訴訟については「訴状が届いていないのでコメントできない。 届き次第、精査したい。」としている。 (米田優人、新屋絵理、asahi = 10-27-20)


電子部品各社が「自動運転」向けビジネスへ本格的に動き出す!?

コロナ後のニューノーマル(新常態)を見据えた新技術の一つが自動運転などのスマートモビリティー社会の実現だ。 電子部品各社は自動運転時代で重視される車室内の快適性や静粛性に向けた技術や関連部品をシーテックで提案している。

「京セラ」は、コンセプトカー「Moeye (モアイ)」を開発。 光学迷彩技術を用い、ダッシュボード部分が透明になったように見える。 フロント回りで通常は死角で見えない外の風景を同部分に映す。 人の触覚や聴覚などに訴える独自製品も多数活用。 車室内空間の演出を通じて車の新たな価値を提案する。

「アルプスアルパイン」は、車内の天井に設置した大画面ディスプレーや乗員個別に音を響かせるゾーンサウンドなどを組み合わせて車内空間を高度化する「デジタルキャビン」を出展した。 機器の操作性を向上できる HMI (ヒューマン・マシン・インターフェース)やセンサー、コネクティビティー(接続性)技術などで構成する各種出入力装置を同社独自の ECU (電子制御ユニット)「HPRA」を用いてソフトウエア処理することで、乗員の五感に訴えかける豊かで上質な快適移動空間を創出する。

「TDK」は、車のタイヤとホイールの境界部に配置し、路面から受ける力を利用して発電ピエゾ環境発電デバイスを出展した。 この電力を利用して自動運転車の姿勢制御や快適性確保のためのデータをバッテリーレスで収集できる。 「ローム」は、車載バッテリーの電圧が変動する時も安定動作し、過電圧対策用コンデンサーが不要の車載用電源 IC を開発した。 独自方式で入力電圧への高速応答を実現し、電力変換効率も高めて消費電流を一般的な従来品比で 3 分の 1 に低減した。 電子制御ユニット向けに提案する。

自動運転が普及すれば、車 1 台当たりの電子部品搭載量の増加も見込める。 車の電装化による需要増を取り込むべく、電子部品各社の開発競争も熱を帯びることになる。 (NewSwitch = 10-25-20)

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電子機器の展示会「CEATEC」きょう開幕 初のオンライン

電子機器などのアジア最大級の展示会「CEATEC」が、20 日開幕します。 新型コロナウイルスの影響で、初めてオンラインでの開催となり、「ニューノーマル = 新しい日常」をテーマに最新の技術が紹介されます。 CEATEC はアジア最大級の電子機器などの展示会として毎年この時期に千葉市の幕張メッセで開催されてきましたが、ことしは初めてオンラインでの開催となります。 今回のテーマは、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた「ニューノーマル=新しい日常」で、国内外から350余りの企業や団体が参加し、感染防止対策やテレワークなどに関わる最新の製品やサービスが紹介されることになっています。

閲覧を希望する人は、登録すれば無料でパソコンやスマートフォンで各企業や団体のサイトを見ることができ、チャット機能を使って担当者に質問することができるということです。 一方、出展する企業や団体は、本人の同意があった場合にはみずからのサイトを訪れた人の履歴などを確認して、後日、商談などに活用することもできるということです。 CEATEC は、20 日午前 10 時に開幕し、今月 23 日まで開かれます。 (NHK = 10-20-20)


東芝「究極の暗号」事業化へ 特許数最多で海外勢を追う

理論上は絶対に破れないとされ、「究極の暗号」と期待される量子暗号を使った通信の事業化に東芝が乗り出す。 2021 年 1 月に実証的に国内で始め、4 月に本格化させて欧米やアジア向けにも広げる。 開発をめぐる国際競争は熱を帯びており、政府や国内の通信事業者などとの連携も見据え市場の開拓を急ぐ。 21 年 1 月に国の研究機関に納入し、複数拠点間のデータ送受信で実証的に使われる予定だという。 今は専用のケーブルが必要だが、25 年までに既存の通信回線を使ったサービスも開始するとしている。 日本のほか、欧米やアジアの金融機関、医療機関などからの受注を期待する。

暗号技術は政府や企業が持つ機密データを扱ったり、個人でも電子メールやオンライン通販で安全にやり取りしたりする上で欠かせず、現代の社会インフラのひとつになっている。 ただ 10 - 20 年後に実現すると言われる高性能の「量子コンピューター」では現在の技術水準の暗号を簡単に突破できるとされ、データなどを守る「盾」として量子暗号に注目が集まる。 量子暗号通信では暗号を解く鍵を、光をつくる「光子」という物質に載せて送る。 光子は分割もコピーもできないことから、通信の途中で鍵を盗むことが不可能とされ、量子暗号は「究極の暗号」とも呼ばれる。 東芝では約 20 年前から研究を進め、光ファイバー回線を使う方法での実証実験などに成功してきた。

一方、世界では中国の国営企業がすでに北京 - 上海間の量子暗号通信網を構築しており、韓国やドイツでも整備する動きがある。 「日本はこのままでは遅れてしまう(東芝の島田太郎執行役上席常務)」という危機感があった。 東芝は量子暗号の市場が 35 年には 2 兆円規模になると予想する。世界では「後発」だが、関連する特許数は東芝が世界最多で「技術では日本が最も先行している(島田氏)」とする。 通信の速度や精度を武器に、30 年に売上高で 3 千億円規模、世界シェア 25% を占めることを目標に掲げる。 (小出大貴、asahi = 10-19-20)

量子コンピューターとは : 現在のコンピューターが「0」と「1」の数字の組み合わせで計算するのに対し、0 でも 1 でもある「重ね合わせ」という量子力学の状態を応用することで、スーパーコンピューターをはるかに超える計算能力を実現させる。人工知能の性能の飛躍的な向上や画期的な新薬の開発などが期待される。 実用化までに 10 - 20 年かかるとされている。


パナソニック、35 万円洗濯機が快走 開発の舞台裏

パナソニックが 2015 年に投入したドラム式洗濯乾燥機「キューブル」が売れている。 店頭想定は約 35 万円と高額だが、同分野の国内シェアは 10% 近くを占める。 特徴は角張った独自のデザインと洗剤の自動投入機能など。 シンプルな見た目の裏には、開発チームによる地道な工夫の積み重ねがあった。

衝突恐れず 「用の美」追求

「スタイリッシュなフォルムがお気に入り」、「カクカクでめちゃかわいい。」 写真投稿アプリのインスタグラムを見ると、消費者が自宅に置いたキューブルの写真をコメント付きで投稿していた。 「ハッシュタグ付きで投稿してもらえる洗濯機はキューブルだけ」とデザイン担当の田上雅彦さん (33) は話す。 「デザインのコンセプトは『用の美』だ」と田上さんは解説する。 丸みを帯びた一般的な洗濯機と違い、直方体のシンプルな外観を採用した。 収納棚や洗面台など直線的な形の設備が多い脱衣所になじませるためだ。 衣類の投入口を従来品より 4 割広げて洗濯物を出し入れしやすくするなど実用性にもこだわった。

いかに丈夫で低コスト、短納期で作るかという視点も欠かせない。 工場との窓口である機構設計担当の川名啓之さん (49) は「デザイナーと意見がぶつかり、何度も怒鳴り合った」と振り返る。 例えば洗濯機の外面の素材選び。デザイナーは「ガラスの質感を出したい」と一面ガラス張りを求めた。 川名さんは「ガラスは取りつけづらいうえ、洗濯機の振動に弱い」とアクリル樹脂にこだわった。 最終的に樹脂の縁をサッシで覆って見た目を一枚物のガラスに近づける工夫を凝らし、最適解を導き出した。

「スタート」、「水量」など洗濯機におなじみの文字を、普段は見えなくするという難題にも挑んだ。 タッチパネルの文字は電源を切っても、うっすらと見える。 川名さんはインクを層状に重ねる工夫で、消灯時は見えない文字が、電源を入れるとはっきり浮かび上がるようにした。 開発に約 2 年をかけて生まれたキューブル。 同社は「別格プロジェクト」と位置づけ、15 年の発売に合わせて量販店向けに半年間の大規模な営業を展開した。 その中心人物が営業・マーケティング担当の佐藤弘和さん (33) だ。

佐藤さんは自社のショールームに脱衣所の空間を再現。 量販店のバイヤーを招き、空間に調和するキューブルのデザイン性の高さを訴えた。 ドラム式洗濯機の取り扱いが少ない量販店には「キューブルで販売単価を上げましょう」と呼びかけ、「目立つ場所に 3 - 4 台並べて置いてくれる店もあった」という。

洗濯機は「インテリア」

パナソニックはドラム式洗濯機で 4 割前後の国内シェアを持ってきた。 それがキューブルの投入で 5 割近くに伸びた。 入社以来、洗濯機一筋の商品企画担当、竹内健悟さん (33) は「洗濯機をインテリアと捉え、デザイン性を重視する新たな顧客層を開拓できた」と胸を張る。 現在販売しているキューブルは 5 世代目にあたる。 「コンセプトはぶれずに貫く」とデザイナーの田上さん。 外観は極力変えず、その上でドラム式の主な顧客である、子供のいる共働き世帯を意識し、忙しい朝でも効率よく洗濯できる機能を拡充してきた。

その代表例が 17 年発売の機種から導入した洗剤の自動投入機能だ。 洗濯機内のケースに洗剤や柔軟剤を注いでおくと、洗濯機が自動で衣類の量を測り、適量の洗剤を注ぐ。 スマートフォンのアプリを使えば、外出先から洗濯が始められる機能もある。 洗剤の自動投入は以前から構想があった。 だが液体洗剤は銘柄や室温によって粘り気が違い、配管が詰まる恐れがあった。 技術担当の植田健大さん (32) はポンプを使い、注射器のように洗剤を注入する仕組みを考案した。 さらに洗剤の通り道を洗濯に使う水が流れる構造を採用し、長年の課題を克服した。

植田さんは実験室にこもり、市販の液体洗剤を 50 種類以上は試して、どの洗剤でもスムーズにポンプで注げるように調整した。 「ネットで洗剤を 5- 6 箱まとめて買った。 いいものになる確信があった。」 その粘り腰が実った。 商品企画の竹内さんは開発チームの良さを「ちゃんとケンカができるところ」と表現する。 各部門の担当者が試作品を持ち寄り、とことん議論を重ねた。 対立することもあったが、竹内さんが調整役としてチームをまとめた。

11 月には 6 代目の新機種を発売する。 自動で 2 度洗いができ、洗濯物の汚れ移りを抑える機能を備える。 営業担当の佐藤さんは「新しいことに挑戦し、ヒットが続く好循環が生まれている」と手応えを感じている。 (梅国典、nikkei = 10-18-20)


パナの「純水素燃料電池」、五輪選手村跡地に導入

パナソニックが水素を燃料に発電する大型施設用の「純水素型燃料電池」を開発した。 来年 10 月に発売し、東京五輪・パラリンピックの選手村跡地にできる街にも納入する。 水素は次世代のクリーンエネルギーとして注目を集めており、商業施設やオフィスビルにも導入を働きかけてゆく。 この電池は本棚ほどの大きさで、出力 5 キロワット。 24 時間稼働させると一般家庭 10 軒強の電気を取り出せる。 選手村跡地には 2022 年度中に 24 台を設置する計画で、主に街灯に使う。 発電時に出る熱で湯を沸かし、足湯や共同浴場に注ぐ。 水素は燃料電池車用の水素ステーションからパイプラインで供給を受ける。

水素は利用時に温室効果ガスを出さず、政府も普及に力を入れている。 パナソニックは 12 年からこの電池の開発を進め、太陽光発電の電気で水素をつくってためるといった「水素社会」の実現に向けて取り組んできた。 導入費用がかさむのが課題だが、同社の担当者は「燃料電池車の普及とともに街中での利用先を広げ、コストダウンにもつなげていきたい」と話す。

「朝日地球会議 2020」の第 3 日では、水素社会をめぐるパネル討論(13 日午後 7 時~)があり、パナソニックの担当幹部も参加する。 当日の様子はオンライン (https://www.asahi.com/eco/awf/) で配信する。 視聴は無料。 (西尾邦明、asahi = 10-13-20)


【クボタ x NVIDIA】 エッジ AI 搭載の完全無人農機、開発加速!

クボタは、人工知能 (I) のプラットフォーム(基盤)を提供する米エヌビディアコーポレーション(カリフォルニア州)と、農業機械の自動運転分野で戦略的パートナーシップを締結したと発表した。 天候や生育状況などを踏まえ、適切な農作業を実行する次世代型の完全無人農機の開発につなげる。

無人農機は周囲の状況を正確に把握する「目」と、瞬時に次の動作を判断する知能を両立させた車載型の「エッジ AI」による画像認識が欠かせない。 半導体メーカーのエヌビディアはコンピューターのグラフィックス処理や高度な計算処理ユニットで実績が豊富。 クボタは同社と 2018 年から連携しており、完全無人農機の研究開発で協業を加速する。 (NewSwitch = 10-9-20)


幻の「セメダイン」相次ぐ発見に感激 C → B の次は …?

戦前のセメダイン

記事コピー (9-29-20)


手洗い機、スマホ除菌 … 豊田合成の LED、体育館で活躍

トヨタグループの豊田合成(愛知県清須市)が JR 稲沢駅(同県稲沢市)前に新設した「豊田合成記念体育館(通称エントリオ)」が 27 日、オープンした。 新型コロナウイルスの感染力を失わせるのに有効とされる、自社開発の発光ダイオード (LED) 搭載の手洗いスタンドなどを置き、感染防止対策に力を入れている。

開発したのは「深紫外線」を出す LED の機器で、ウイルスを不活化する効果が確認されたという。 館内の手洗いスタンドに搭載して水を浄化するほか、この機器を使った除菌脱臭機や、スマートフォンなどの除菌に使える「除菌ボックス」も配置している。 新体育館はガラスをふんだんに使った明るい雰囲気の外観が特徴でアリーナは最大 3,500 人収容できる。 同社のバレーボールやハンドボール、バスケットボールチームの試合のほか、地域のスポーツ大会などに使われる。 試合を盛り上げるため、大型スクリーンを設けたり、LED 照明を充実させたりした。 館内には、レストランやコンビニもある。 (三浦惇平、asahi = 9-27-20)


ワイヤレス電力伝送、実用化へ技術開発 天野教授が発表

マイクロ波を使ったワイヤレス(無線)の電力伝送で、金沢工業大が世界最高の電力変換効率を達成したと、天野浩・名古屋大教授が代表の研究チームが 23 日発表した。 今後、名大が開発した従来の 3 倍程度の電力を流せるダイオードを使い、より大きな電力を送る基盤技術の確立をめざす。 天野教授によると、ワイヤレス電力伝送の技術によって、室内の機器やセンサーの電源コードや電池交換が不要になる。 屋外でも機器に積むバッテリーを小型化できたり、ドローンに送電して上空からインフラを点検することが簡単になったりするという。

ただ、送る電力が多くなると、受電側の効率が下がる課題があった。 金沢工大の伊藤健治教授らは、受電アンテナの形を変えてダイオードを直接接続することで、マイクロ波電力 1 ワットを送った時に 92.8% の電力変換効率を達成した。 これまでの電力変換効率は 70% 程度だったという。 受電する装置は、32 ミリ x 11 ミリの小ささだ。 研究チームは、10 ワットの電力伝送でも世界最高効率をめざす。 「10 ワットは全く問題なくできると思う」と金沢工大の伊藤教授。 名大の天野教授は「これまで、受電側が課題だった。 載せるバッテリーを小型化できたり、スマートフォンの電池切れがなくなったりするだろう。 有益なシステムになる。」と話した。 (木村俊介、波多野陽、asahi = 9-23-20)


オンキヨーが経営再建の正念場 再起かけた「会社分割」

オーディオの名門、オンキヨーが正念場を迎えている。 長年にわたる販売不振にコロナ禍が重なり、2020 年 3 月期はついに債務超過に陥った。 綱渡りの資金繰りが続くなか、25 日には会社を事業別に分割する再建案を決める。 事業ごとに提携相手を見つけやすくする狙いだが、切り売りにつながる恐れもある。 世界に知られた老舗ブランドを守ることはできるか - -。 JR 大阪駅前の家電量販店「ヨドバシカメラマルチメディア梅田(大阪市)」のオーディオ売り場には、オンキヨーとグループのパイオニア製品がそろうコーナーがある。 アンプやスピーカーなどの主力製品を試せるが、実際に買えるのは数えるほどしかない。 今年に入り、オンキヨーから生産中止の通知が徐々に届くようになったからだ。

売り場の責任者は「50 - 60 代の男性を中心に買いたいとの声は根強い。 売り場は当面維持する。」と話し、生産再開を待っている。 かつて数々の名機を世に出したオンキヨーは、レコードや CD の普及とともに成長してきた。 だがスマートフォンが浸透し音楽配信が主流になると、大型アンプやスピーカーを通じて音楽を聴く文化が急速に廃れていく。 オンキヨーも 14 年 3 月期から 5 年連続で最終赤字となり、20 年 3 月期は 98 億円もの赤字を計上。 取引先への支払いも滞り、33 億円の債務超過になった。

この間、オンキヨーも様々な手を打ってきた。 15 年にパイオニアの音響機器事業を買収して、規模拡大と効率化を目指した。 だが不振から抜け出せず、19 年 5 月には家庭用 AV 事業を米大手サウンドユナイテッドに売却することで合意した。 中国のテレビメーカー向けのスピーカー生産に集中して再建を図る計画だったが、「米側が買収資金を用意できなかった(関係者)」といい、白紙に戻った。

当てが外れたオンキヨーは、増資で乗り切る策に出る。 海外の投資ファンドに対して複数回にわたり新株を割り当てた。 直近では、今年 8 月から来年 2 月に計 8 回発行し、40 億円超を調達する。 取引先への支払いと借金返済にあて、債務の株式化とあわせて債務超過の解消を目指す。 だが決算で再び巨額赤字になれば、またも危機に陥る。 信用調査会社幹部は「異例の資金調達でしのいでいる」と苦しい実情を分析する。

さらに、「奥の手」として打ち出したのが、事業ごとに会社を分割する案だ。 将来性があるスピーカーの OEM (相手先ブランドによる生産)と、音楽配信など新規事業を担う新会社をつくり、資本提携先を探す。 他社の投資を呼び込んで生き残りを図る戦略だ。 今月 25 日の臨時株主総会で承認が得られれば、10 月 1 日に新体制を発足させる。

一方、売り先が見つからなかった家庭用 AV は本体で抱える。 高音質なサラウンド放送の対応機器や、ゲームに特化したヘッドホンといった「巣ごもり需要」に活路を見いだす。 住宅用のサウンドシステムを提案する建築事務所も開いた。 7 月には米大手メーカーと販売代理店契約も結び、欧米市場にも攻勢をかける。 復活は容易ではないが、広報担当者は「AV 事業はリストラが進み、利益を生みやすい体質になった」とする。 オーディオ業界に詳しい早稲田大の長内厚教授は「技術を磨けば売れるという時代は終わった。 一流の技術には一流の経営手腕が必要だ」と指摘する。 (井東礁、asahi = 9-18-20)

オンキヨーの歴史
1946年松下電器産業(現パナソニック)出身の五代武が大阪市都島区に大阪電気音響社を設立
1957年東芝の子会社に
1971年社名を「オンキヨー」に変更
1981年高速録音可能なダブルカセットデッキ発売
1984年高級スピーカー「GS-1」発売 91年にフランスのジョセフ・レオン賞受賞
1985年世界初の光伝送 CD プレーヤー発売
1993年高品質の音響機器に与えられる「THX マーク」を家庭用 AV アンプとして世界で初めて取得
東芝傘下から独立
2004年ジャスダック市場に株式上場
2009年3月期の売上高 850億円(上場後最高) 純損益は 63億円の赤字
2012年米ギブソン、ティアックと資本業務提携
2014年ギブソン、ティアックと共同で東京にショールームを開設 17年 12月に閉鎖
2015年パイオニアの音響機器事業を買収
河合楽器製作所と資本業務提携
2018年ギブソンが経営破綻
河合と資本提携解消、業務提携は継続
2019年米サウンドユナイテッドと AV 事業の譲渡で合意 その後、白紙に
クラウドファンディングで eスポーツ用ヘッドセットと USB コントロールアンプを販売
2020年3月期の売上高 218億円 巨額赤字で債務超過に転落
米ボックスグループと米国販売代理店契約
10月会社分割によるグループ再編(予定)


「次世代」住宅照明スイッチ 触れるだけ、スマホ操作も

住宅に使われる照明のスイッチが大きく変わる。 国内シェア首位のパナソニックは、触れるだけでつけたり消したりでき、スマートフォンなどで遠隔でも操作可能な「次世代」のスイッチの導入を進める。 帰宅時に「カチッ」とスイッチを押す習慣が懐かしくなる日が来るかもしれない。 同社が 12 月に売り出す照明スイッチ「アドバンスシリーズ リンクプラス」は、長方形のスイッチの中心付近に指で触れるだけで電源のオンオフができ、上下に動かすと調光できるタイプもある。 いずれもスマホやスマートスピーカーから無線経由で動かせる。 寝る前に家の中にある全ての照明を一度に消したり、外出先から確認したりできるようになる。 遠隔操作すれば、新型コロナウイルスの家庭内感染を防ぐことにも役立つという。

このスイッチを取りつける際、新たな電線工事は不要。 一軒家で 20 カ所の照明を交換する場合、20 万円前後の費用がかかるという。 パナソニックは創業者の松下幸之助の時代から照明の配線器具に力を入れてきた。 照明スイッチは初期の黒くて小さな形のものから、ライト付き、お年寄りら指の力が弱くても押しやすい大型のタイプなどに改良。 今では国内シェア約 8 割を占めるまでになった。 同社は照明スイッチのうち、今回の新商品シリーズの販売比率を 8 割にする目標を掲げ、将来的に海外展開もめざす。 担当者は「新築だけでなくリフォームでの導入も手軽。暮らしを変える新しいスイッチとして日本のスタンダードにしていきたい」と話す。 (西尾邦明、asahi = 9-15-20)


盗む気も失せる「鳥のうんちシール」 自転車を守ります

鳥の糞(ふん)の付いた自転車をわざわざ選んで盗もうと考える人はいないはず - -。 そんな発想から生まれた盗難防止グッズ「鳥のうんちシール」が、ヴィレッジヴァンガード(名古屋市)のオンラインストアで販売されています。 3 枚入りで税込み 1,430 円で売られているこのシール。 ヴィレッジヴァンガードオンラインストアの商品説明には、こう書かれています。 「もし自転車のサドルに鳥の糞が付いていたら、きっと嫌な気持ちになるでしょう。 それは、自転車を盗もうと考える人も同じです。 鳥の糞の付いた自転車をわざわざ盗もうと考える人はいないはず。 『鳥のうんちシール』はそんな『鳥の糞 = 汚い』という共通認識を利用した自転車盗難防止グッズです。」

実はこの商品、5 年前にも発売しており、今回はその復刻版にあたります。 前回は千葉工業大学大学院に在籍していたもときれおがさんのアイデアを元にヴィレッジヴァンガードが商品化しましたが、今回はもときさんが個人で制作したものを仕入れて販売しているそうです。 「思い入れのあった商品だったので、廃番になった後で個人でクラウドファンディングで資金調達して作ったんです」ともときさん。 28 歳になった現在は、文具メーカー「プラス」に勤めていて、使っていくうちに消しゴムが富士山のようになるヒット商品「エアイン 富士山消しゴム」も手がけています。

工学部デザイン科学科の卒業制作として取り組んだ鳥のうんちシール。 きっかけは、自分の自転車を見て「こんな汚い自転車、誰も盗まないだろうな」と思ったことでした。 制作にあたって、駅前や商店街など鳥の糞が落ちていそうな場所を見て回り、自分たちが想像する鳥の糞の形状と、実際の形状が異なるということに気づいたそうです。 「大事なのは鳥の糞と認識されることであって、リアルな糞を作ることではないんだと気づけたことが大きかったです。」 糞の形を数パターン作って友人にヒアリングして回り、最も評価が高かった形状を採用したそうです。

再販に向けたクラウドファンディングでは、目標金額 20 万円に対して倍以上にあたる 45 万円が集まりました。 ヴィレッジヴァンガードオンラインストアだけでなく、自身のウェブサイトなどでも販売しています。 「サドルの側面へ垂れるように貼り付けることでリアルに表現できます。 自転車だけでなく傘に貼ったり、友人へのサプライズに使ったりと、ぜひ活用してください」ともときさんは話します。 (若松真平、asahi = 9-11-20)