子どもの 7 人に 1 人が貧困状態 18 年調査で高い水準に

2018 年の子どもの相対的貧困率が 13.5% だったことが 17 日、厚生労働省が 3 年ごとに発表する国民生活基礎調査でわかった。 前回 15 年調査から 0.4 ポイント改善したが、依然として子どもの約 7 人に 1 人が貧困状態にあり、国際的に高い水準だ。 調査は 3 年おきで、今回は約 3 万 2,500 世帯の所得を調べ、有効回答率は 68.51% だった。

子どもの貧困率は 03 年の 13.7% から上昇傾向が続き、12 年は過去最悪の 16.3% だった。 15 年に続き 2 回連続の改善となるが、主に先進国でつくる経済協力開発機構 (OECD) の平均 12.8% (17 年)を上回り、主要 7 カ国 (G7) でも貧困率の低い順から 5 番目だ。 OECD が 15 年に改定した新基準でみると、日本の子どもの貧困率は 14.0% となる。

全体の相対的貧困率は 15.4% と、15 年から 0.3 ポイント改善した。 ひとり親世帯の貧困率も同 2.7 ポイント改善して 48.1% と初めて 5 割を切ったものの、なお高水準だ。 母子世帯の 18 年の雇用者所得は平均 225 万 6 千円で、全世帯平均の 383 万 9 千円を大きく下回る。 一方、介護分野では、自宅で介護している世帯のうち、介護をする人もされる人も 65 歳以上の「老老介護」の割合は 19 年が 59.7% と、16 年の調査から 5.0 ポイント増えて過去最高となった。 (田中瞳子)

母子家庭、コロナで打撃

子どもの貧困率がわずかながら改善した背景には、景気拡大が調査時点の 18 年まで続き、給与収入を押し上げたことがある。 だが、その後景気は腰折れしたとみられ、足元では新型コロナウイルスの感染が再び拡大。 雇用が不安定なひとり親家庭の暮らしを追い詰めている。 東京都墨田区で中学 1 年生の長女 (12) を育てるシングルマザー (46) は、多い時で手取り 25 万円ほどあった月収が今春、12 万円に落ち込んだ。 印刷会社の正社員として働くが、大口の契約が見込める国内のイベントが相次いで中止されて業績が悪化し、残業が一律禁止になった。

娘の教育費を捻出するため、ここ数年は月 80 - 100 時間の残業で収入を確保してきた。 昨秋、低所得のひとり親に支給される「児童扶養手当」の所得制限をわずかに上回って支給対象から外された。 その矢先の新型コロナで、役所に再度の支給を相談したが「決まりは決まり。 支給できない。」の一点張りだった。 家賃だけで月 7 万 5 千円。 今は新型コロナの特別定額給付金として振り込まれた計 20 万円を少しずつ取り崩す。 「いつまでもつのか。 子どものために頑張った結果、手当も打ち切られ、この先が本当に不安だ。」と話す。

福岡市のシングルマザー (37) も新型コロナの影響で勤め先が一時期、休業になった。 休業補償は出たものの、月 20 万円近い収入が 15 万円ほどに減った月もあった。 昨年まで月約 3 万 8 千円の児童扶養手当を受け取っていたが、この女性も年間所得が所得制限額を 8 万円上回り、昨秋に対象外になった。 手当打ち切りで年 45 万円以上の収入が断たれると同時に、市が手当受給者向けに独自に実施する医療費の助成制度も受けられなくなるなどして負担は激増した。 長女 (3) は、保育園の友だちが英会話やバレエなどの習い事を始めるのをみて自分も行きたがったが、金銭的にも、時間的にも余裕がない。

「両親のいる世帯と同じように育ててあげたいが、色々と我慢をさせてしまっているのが現状。 今の制度の所得制限はひとり親の実情に合わない。 もっと幅広くひとり親を支援してほしい。」と訴える。 児童扶養手当は 16 年に第 2 子以降の加算が増額されるなどの動きがあった。 NPO 法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長は「ひとり親に財政的な支援を投じる施策は一定程度進んできたが、貧困率をぐっと下げるにはあまりにも足りない。 根本にある男女の賃金格差の解消に取り組みつつ、児童扶養手当の倍増なども必要だ。」と指摘する。 (伊藤舞虹、asahi = 7-17-20)

相対的貧困率 : 世帯の可処分所得(手取り)などをもとに子どもを含めた一人一人の所得を仮に計算し、順番に並べた時、真ん中の人の額の半分(貧困線 = 18 年調査では 127 万円)に満たない人の割合。 子どもの相対的貧困率は、貧困線に届かない 17 歳以下の割合を示す。


小売店員の感染、初の労災認定 経路不明でも接客多く

新型コロナウイルスに感染した小売店の販売員が、感染経路は特定できないが仕事で感染した可能性が高い働き手として、医療従事者以外で初めて労働災害(労災)に認定された。 加藤勝信厚生労働相が 10 日、記者会見で明らかにした。

厚労省によると、認定された販売員は日々数十人に商品を説明するなど客との接触が多かったため、業務による感染として支給が決まったという。 厚労省は、感染リスクが高い医療従事者の場合は業務外での感染が明らかな時を除いて原則労災と認めることにしているほか、スーパーのレジ担当など日常的に不特定多数と接する仕事などの場合も、柔軟に認定する方針を示していた。 新型コロナ感染による労災の申請は今月 9 日までに 501 件あり、うち 96 件の支給が決まっている。 (asahi =7-10-20)


「単身赴任、意味なくない?」カルビー、改革の舞台裏

製菓大手カルビーは 7 月 1 日から、オフィスで働く社員約 800 人を対象に、テレワーク(在宅勤務)を原則とする働き方を無期限で延長し、業務に支障がなければ単身赴任の解除も認める制度に移行した。 新型コロナウイルスの感染拡大を契機に働き方改革を加速させるカルビーの武田雅子・常務執行役員(人事総務本部長)に新しい働き方の狙いを聞いた。

- - 社員の意向を踏まえて、テレワークの無期限延長を決めたそうですね。

「4 月初めから一気に在宅勤務が広がりました。 人事の責任者として社員が元気に働いているかとても気になったので、約 300 人の社員とオンラインでワークショップをしたら、思ったよりみんな元気なんですよ。 『通勤時間って何だったんだろう?』といった生の声も聞けた。 直感的に、これはコロナ前の働き方に戻しちゃいけないなと思ったんです。」

- - 全社員の 2 割にあたるオフィス勤務の社員にアンケートも実施したとか。 結果は。

制度「社員に追いつこう」

「以前の働き方から変わりたい人が 6 割で、どちらでもいいが 2 割。 前の働き方に戻りたい人は 2 割以下でした。 テレワークが原則になっても、『意外と平気だったね』というのが社員の反応。 『在宅でも全然平気だった』という営業のベテラン社員もいました。 実は、今までの人事制度の方が社員より遅れていた。 他社に先駆けて制度を変えたというよりは、社員に追いつこうと思ったんです。」

- - オフィス勤務の社員を対象に、コロナ前からテレワークを積極的に導入していました。 それで社員が適応できた面もあるのでは。

「それはありますね。 社員はテレワークをうまく取り入れていました。 金曜日は在宅勤務をする社員が多く、もともと社員が全員そろって仕事をする状況はありませんでした。 社長もたまにテレワークをしていましたし。」

- - フレックス勤務のコアタイム(午前 10 時 - 午後 3 時)も廃止して、より柔軟な働き方も認めました。

「コロナ下の在宅勤務では、お子さんを預けられず、子どもを寝かせてから仕事をするママさん社員もいっぱいいたんですね。 そういう声もリアルで聞いていたので、午前 5 時から午後 10 時の間で柔軟に働けるようにしました。 コアタイムの制度自体が機能していないし、ニーズもなかった。 社員が働く形に合わせただけなんです。 働きやすい職場をどう作ってあげるか。 それが人事の仕事なので。」

- - 結果として、短時間勤務をしてきたママさんなどがフルタイムに戻る例も出てきたとか。

「すごくうれしいですよね。 すでに 6 人から申請が出ていて、今後も増えると思います。」

- - 業務に支障がないと所属部門が認めれば、単身赴任の解除もできるようにしました。

仕事が回れば、それでいい

「単身赴任者は製造現場で働く社員や、地域で営業をしている社員など 100 人弱。 実際の申請はまだこれからですが、今後出てくると思います。 反響が大きくてびっくりしているんですが、もともと東京の本社内の部署に所属していても、転勤ができないので大阪で働くのを個別に認めている社員もいるんです。 仕事がちゃんと回っていれば、それでいいので。コロナによって、集まらなくても仕事はできることがみんなにばれちゃった。 人事の中でも『単身赴任って意味なくない?』っていう会話がごく自然に出てきました。」

「社員から『単身赴任っておかしくないですか』って絶対に聞かれると思ったんです。 『おっしゃる通りです』としか言えないので、クレームが来る前に早くやめようと。 人事施策上必要な転勤はありますし、海外赴任など個人のキャリアにとって必要な転勤もあるので、撲滅しようとは思っていませんが。 希望者については、極力考えていくというスタンスです。」

- - 今後は 30% 前後の出社率を目安にすると。 オフィスの役割は変わりますか。

「これからのオフィスをどうするかの議論も始めていますが、オフィスが要らないという社員は 1 人もいません。 偶発的に生まれるリアルのコミュニケーションにも良さがある。 会社に来る楽しさと、家で仕事をする良さを同じぐらいにしないといけないと思っています。」

- - カルビーは松本晃さんが会長兼CEO(最高経営責任者)だったときから働き方改革で注目を集めてきた会社ですが、今回打ち出した新しい働き方は会社にとってどんな転機になると考えていますか。

「松本さんの時代は、会社から与えられたルールの中で進める働き方改革でしたが、会社に出勤するかしないかも社員が自分で決めていいのが今回の改革。 個々の社員が自分で問うて、働き方を決めていく『圧倒的当事者意識』が必要になります。 完全にシフトチェンジした感じですね。」

「今度は僕らが成果出す番」

- - 社員の反応は?

「すごい反応です。社員から『親や友だちから、いい会社に入ったねと言われた。幸せに働けるから、今度は僕らが成果を出していく番です』というメールをもらいました。人事冥利(みょうり)に尽きます。」

- - 管理職のマネジメントも変化を迫られそうですね。

「部下が近くにいないんだから、積み上げの進捗管理はもうできません。 『いま何やってる?』という管理ではなく、できあがった成果物で管理するタスクマネジメントをしていかないと。 時間管理の必要もなくなります。 視座の転換が必要です。」

- - 管理の本質が見えてきて、管理のうまい、下手がばれちゃいそうですね。

「その通りです。 部下にゴールを明確に示して、お互いに握っておかなければ、仕事は進みません。」

- - コロナ危機が日本の企業人の働き方に及ぼしたインパクトをどうとらえていますか。

「何で働いているんだろう? 何で満員電車に乗ってたんだろう? 成果を出すってどういうこと? などと、この間に内省された方は多い。 ご自分なりの答えを見つけた方も多いでしょう。 『単身赴任って何の意味があるんですか?』と聞かれるのを私が恐れていたように、腹落ちする大義があるかどうかをみんなが考え始めた。 これから先は、本質的な議論をして、一緒に共感できなければ、前に進めないと思います。 会社も変わり、社員も目覚めてほしい。 よりイーブンな関係になっていくのにいいチャンスです。 元に戻るのは何の意味もありません。」 (聞き手 木村裕明、asahi = 7-3-20)


日本流の終身雇用は「これからもずっとそう」 東レ社長

仕事の内容を細かく示して、その仕事ができる人を雇う欧米流の「ジョブ型」雇用を採り入れる動きが、大企業を中心に広がっている。 新卒者を一括採用して社内で育てる日本流の終身雇用は、時代に合わないのか。 従業員の半数以上を海外が占める東レの日覚昭広(にっかくあきひろ)社長に、雇用のあり方を聞いた。

東レは、いわゆる終身雇用的な考え方でやっているし、これからもずっとそうでしょう。 終身雇用だから安定しているといっても、ちゃんと競争はあるし、みんなの生活が成り立ついい仕組みだと思います。 一方、アメリカなどはジョブ型で、雇う時に一人ひとりに、あなたにはこういう仕事をしてもらいますとジョブ・ディスクリプション(職務記述書)で明確にし、給料はいくらですという仕組みです。

しかし、私たちの仕事の中には、ジョブ・ディスクリプションに書けない、あいまいな部分がかなりあると思います。 本当に大事なのは、常にクリエーティブな発想をすることでしょう。 だから、欧米のグループ会社で現地出身の幹部と話すと、東レの日本流のやり方がいいと言います。 東レでは、飛行機などに使われる炭素繊維は、事業として成り立つまで 50 年以上かかったし、海水の淡水化装置などに使われる RO 膜(逆浸透膜)も 50 年かかっています。 その間、赤字でも事業の中身を知っている人が研究開発を続け、使い道を開拓してつないできたのです。 素材産業は、10 年、20 年の技術の蓄積がないと、新しいものを生み出せないのです。 (聞き手・真海喬生、諏訪和仁、asahi = 6-22-20)


訪問保育で相次ぐ事件 防ぐはずの仲介サイト、機能せず

シッターを仲介するサイトを通じて訪問保育を受けていた子どもが、性被害に遭う事件が相次いでいる。 幼い兄弟が殺害されるなどした 6 年前の事件を受けて対策が進んだものの、シッターの質の確保に依然課題が付きまとう。 利用する場合、どこに注意したらいいのか。

4 月以降、訪問保育中の事件でシッターが警視庁に相次いで逮捕された。 男 (29) は昨年 9 - 11 月、未就学の男児 2 人に計 3 回、それぞれの自宅で性的暴行を加えたなどとされる。 別の男 (30) は今年 5 月、女児(5)宅と散歩に連れ出した公園のトイレでそれぞれ、女児の下半身を触った疑いがある。 いずれも保育士の資格を持ち、同じ仲介サイトを通じて親から依頼を受けていた。

仲介サイトには、登録されたシッターの保育経験などの情報が掲載され、保護者らが都合に合わせて選ぶ。 大手の登録数は数千人とされ、共働き世帯の増加などを背景に、急に必要になったときにも見つかりやすいと評判という。 1 歳の長男がいる都内の会社員女性 (32) は昨年 7 月ごろから週 2、3 回、資格試験の勉強の際に利用している。 自身や長男が体調を崩して急きょ頼んだときにも、翌日には駆けつけてくれたという。 「保育にも問題はなく、使ってみてよかった」と評価する。

仲介サイトをめぐっては 2014 年 3 月、シッターの男が預かった男児(当時 2)を殺害し、弟にも重傷を負わせる事件が起きた。 これを受け厚生労働省は、シッターの自治体への届け出と研修受講を定めた制度を導入。 さらにサイト事業者向けに、▽ 登録できるのは研修を修了したシッターに限る、▽ 苦情やトラブルの対応窓口の設置や解決に取り組む - - など 7 項目のガイドラインを策定した。 項目ごとに適否を判定し、承諾を得られた 14 の事業者について結果を特設サイトで公開している。

だが結局、シッターや事業者次第というのが実情のようだ。 長男の保育で仲介サイトを利用した都内の会社員女性 (39) によると、シッターが特定の宗教や政党に関する冊子を持参したり、頼んでもいないバイオリンの指導をして別途料金を請求してきたりした。 外国語を教えて「この国の文化はすばらしい」と言うシッターもいたという。 女性が苦情をサイト事業者に伝えても、「当事者同士で解決を」と対応されたという。 「シッターに自宅を知られているので逆恨みも怖い。 事件に遭わずに済んでいるのは単なる運だと思う。」と話す。

この事業者は今月、登録シッターの男が逮捕された事件を受け、男性シッターによる訪問保育の新規予約の受け付けを停止した。 「専門家から性犯罪が男性により発生する傾向が高いと指摘され、安全性を重視した」としているが、詳しい説明を求める声が上がる。 「仲介さえすればいい、というサイトが多い。」 そう指摘するモス恵さんは、運営する仲介サイト「ケアファインダー」で、登録にあたり保育知識などを測る口頭形式の「試験」を実施。 登録後は、保育への影響を防ぐため仕事を入れすぎていないか一人ひとり状況を管理。 保育ごとに利用者から必ず聞き取り、問題を確認すれば対処にあたるという。 「仲介サイトと派遣事業者の中間のような存在を目指している」という。

全国のシッター派遣事業者が加盟する「全国保育サービス協会」(東京)によると、仲介サイトに比べ、派遣事業者は即応性で劣る半面、登録時の面接や研修で保育の充実に力を入れていて、トラブルの際は仲裁にも入るという。双方の経験がある 30 代女性は、研修が一切なく、登録後すぐ働き始めた仲介サイト事業者と違い、派遣事業者では先輩シッターに同行する実地研修などを受講した。 トラブルの仲裁があることも「シッターとしても安心」と言う。 保育問題に詳しい恵泉女学園大学の大日向雅美学長は「国は研修制度やガイドラインをつくっただけで事業者任せにすることなく、自治体とともに事業者への指導を徹底すべきだ」と話す。 (滝口信之、asahi = 6-21-20)


介護職員支援の給付金、ニチイが申請せず 戸惑う福岡市

新型コロナウイルスへの感染リスクを抱える介護職員を支援するための福岡市の特別給付金について、介護事業大手「ニチイ学館(本社・東京)」が、申請しないことを決めた。 社の対応として全国の従業員に慰労金を支払ったという。 ただ、申請しないことに市側は「想定外」と戸惑っており、従業員のために申請するよう働きかける方針だ。 福岡市は 4 月、高齢者や障害者の介護に従事する職員に給付金を支払うと発表。 1 事業所あたり利用者数に応じて 15 万 - 150 万円とし、事業所から全額を従業員に支払うよう求めた。 市は対象の約 7 千事業所に申請書を送付。 市によると、6 月 12 日時点で 8 割近くから返送があったという。

ニチイの複数の関係者によると、今月 3 日、市内の複数の事業所を統括する同社支店から、事業所ごとに所属人数が違うため、同じ仕事をしている従業員間で受給額に差が生じ、「公平性を保った配賦が困難」などとして、給付は申請しないとの通知があった。 従業員の一人は「入浴の介助など利用者との接触は避けられない。 市から応援してもらえているとうれしかったのに。」 別の従業員も「不安を抱えて働くことが報われると喜んでいた。 会社の決定は納得できない。」と話す。 市は給付額を事業所の利用者数に応じて決めたが、ニチイによると、従業員数には必ずしも比例していない。 同じ市内でも事業所ごとに 1 人当たりの給付額が異なるケースもあるとしている。

ニチイの広報担当者は取材に対し、「同じ市内なのにどこの事業所で働いているかで従業員の待遇に差が出るのは公平性が保てない」と説明。 支給方法が公平だと判断した福岡市以外の自治体では介護職員への給付金がある場合は申請しており、自治体の給付金とは関係なく、社の対応として全国の従業員に特別慰労金を払ったという。 個人が望んでも事業所が申請しない判断について、市の担当者は「想定外」と戸惑う。 「給付対象はあくまで従業員。 最前線で働く人への感謝の気持ちを示す給付金なので、事業所には申請してもらいたい。」と強調する。 個人申請にすると、従業員であることの証明などに時間がかかるため、給付スピードを重視して事業所ごとの申請にしたという。

労働問題に詳しい福岡県弁護士会の梶原恒夫弁護士は「給付申請は窓口として使用者を通しているにすぎず、使用者が労働者の受給権を制限するのは適切ではない。 申請するかどうかを判断する立場にもない。」と指摘している。 (山田佳奈、島崎周、asahi = 6-20-20)


生活保護申請、東京 23 区で 4 割増 コロナで困窮広がる

新型コロナウイルス対策で休業要請などが行われた「特定警戒都道府県」 13 都道府県の主な自治体で、4 月の生活保護申請件数が前年と比べて約 3 割増えたことが、朝日新聞の調べでわかった。 東京 23 区に限ると増加率は約 4 割に達した。

生活保護利用者数はここ 5 年は減少傾向が続いてきたが、コロナ禍による失業や収入減などで生活困窮が急速に広がった実態が浮き彫りとなった。 4 月の雇用統計では休業者が過去最多まで急増しており、預貯金や他の公的支援でしのぐ期間など申請までのタイムラグもふまえれば、5 月以降さらに生活保護申請が増加する可能性がある。 東京 23 区と 12 道府県の指定市、県庁所在市の計 39 市区に 4 月の申請件数を聞いた。 35 市区で申請が前年の 4 月と比べて増加していた。 39 市区の合計で 8,686 件の申請があり、前年同月比で 31% 増えた(一部は速報値)。 同じ 39 市区の 3 月の申請件数(7,980 件)は前年比 8% 増で、4 月に申請が急増したことがうかがえる。

前年比 46% 増の 930 件だった横浜市は、「新型コロナによる失業、収入減による困窮が増えている(生活支援課)」と影響を指摘する。 同 50% 増えた水戸市によると、3 月半ばから 5 月半ばまでに新型コロナの影響による困窮相談が 68 件あり、3 分の 1 が申請にいたったという。 ほかにも大阪市 1,618 件(同 37% 増)、京都市 388 件(同 40% 増)、名古屋市 635 件(同 25% 増)、北九州市 181 件(同 21% 増)など、大半が 2 割 - 6 割増加していた。

新宿区 196 件(同 73% 増)、渋谷区 52 件(同 100% 増)など、伸びが目立ったのが東京 23 区だ。 23 区全体では 2,107 件で前年より 39% 増加した。 板橋区によれば、同43% 増となった 182 件の申請のうち、49 件 (27%) がコロナ影響による減収・失業などが原因だったという。 区では「預貯金の活用や住居確保給付金などの支援でぎりぎりがんばっている方も多いと思われ、今後さらに保護申請が増える可能性もある(板橋福祉事務所)」と見込む。

生活保護利用者は約 206 万人(2020 年 2 月)。 リーマン・ショック後に急増したが、15 年 3 月(約 217 万 4 千人)をピークに微減傾向が続いていた。 3 月から 4 月にかけて、厚生労働省は、食費などに事欠く人への速やかな保護決定、保護の弾力的な運用(一時的な減収で保護が必要になった場合の増収に向けた転職指導の停止など)をする方針を自治体に示した。 今年度の 2 次補正予算案には、新規相談・申請の増加を見込んで、自治体の福祉事務所が臨時職員を雇う費用の補助として、4.2 億円を計上した。

日本弁護士連合会は 5 月、「生活困窮に陥る人々が爆発的に増えることも予想される」として、生活保護の積極的な活用を求める会長声明を発表した。 非常時のさらなる特例として、ウェブ申請の導入、保護開始時に保有が認められる現金・預貯金の上限額引き上げなどを要請している。 一方、保護が必要な人に様々な口実で申請をさせない「水際作戦」が、なお一部の自治体で横行しているとして、困窮者支援団体などからは窓口対応の改善、人員体制強化、オンライン申請導入を求める声があがっている。 (田中陽子、松本紗知、編集委員・清川卓史、asahi = 6-1-20)


有効求人倍率、4 カ月連続の低下 完全失業率もまた悪化

厚生労働省が 29 日発表した 4 月の有効求人倍率(季節調整値)は 1.32 倍で、前月を 0.07 ポイント下回った。 新型コロナウイルスの影響が本格化し、低下は 4 カ月連続。 総務省が 29 日発表した 4 月の完全失業率は 2.6% で、前月から 0.1 ポイント悪化した。 悪化は 2 カ月連続。 (asahi = 5-29-20)


雇用改善、誇り続けたアベノミクスのツケ 続く派遣切り

働くってなんですか

1 万 835 人 - -。 加藤勝信厚労相は 22 日の記者会見で、コロナ禍での解雇・雇い止めがふくらんでいるとして、各地の労働局などが 21 日までに把握した数を集計して示した。 正社員や非正社員といった内訳はない。 地域や業界もわからず、どのような人たちが苦しんでいるかは見えてこない。

厚労省は当初、朝日新聞の取材に「内訳を調べることは考えてこなかった(雇用政策課)」などとして、詳しい調査に否定的だった。 加藤氏は会見で「非正規と正規、それぞれの動向がわかるよう事務方に指示した」と発言。 把握が不十分だったことを認めた。 ただ、調べ方や内容は検討中で、調査を始めるめどは立っていないという。 雇用の状況は急に悪くなっています。 厚生労働省はコロナ禍による解雇・雇い止めが 1 万人を超えたとしていますが、詳しい実態を調べておらず、この人数は「氷山の一角」です。 実際はもっと多くの人が仕事を失い、暮らしをこわされようとしています。

仕事を奪われる人たちは続出している。 「派遣がこんなに弱い存在だとは、思いもしませんでした。」 西日本に住む派遣社員の 30 代の女性は、こう漏らす。 派遣先の会社は、訪日外国人客向けの事業を手がけている。 派遣契約は 3 カ月間だが、更新を重ねて働き続けてきた。 派遣先の会社に仕事ぶりが認められ、今春から社員として直接雇われる方向だった。

社員化は「なかったことに」

ところが、コロナ禍が騒がれはじめた 2 月下旬、「社員にする話はなかったことにして」と派遣先の職場の幹部に告げられた。 派遣先の会社の売り上げは落ち込んでいて、「仕方がない」と引き下がるしかなかった。 その後、派遣先の正社員らは時差出勤やテレワーク(在宅勤務)が認められたが、女性には指示はなかった。 不安になって派遣会社に働き方について確認したら、3 月下旬になって「派遣先での仕事がなくなったから、もうそこでは働けなくなる」と言われた。

4 月から 3 カ月間の契約更新は決まっていたのに、4 月に数日ほど働いただけで休みになった。 6 月末までの残りの期間は休業手当が出るものの、7 月からの次の派遣先が見つからなければ、派遣会社との雇用契約はなくなる。 いわゆる「雇い止め」で、女性にとっては「失業」を意味する。 女性は妊娠中で、年内にも産休・育休に入る予定だった。 7 月からの派遣先は見つかりそうになく、失業を覚悟している。

派遣先の正社員からは「出産に集中できるからよかった」、「旦那が稼ぐから心配ない」などと声をかけられた。 なぐさめようとしてくれたのだろうが、専門性を磨いて仕事に打ち込んできた自負があるだけに、悲しくなった。 出産後はできるだけ早く仕事に戻りたいが、幼い子どもを抱えて再就職先と保育園をさがすことを思うと不安が募る。

命にかかわることまで格差が

女性は大学を卒業後、複数の会社で正社員として働いた。 週末も勤務しなければいけないのに嫌気がさし、仕事と休みのメリハリをつけられるのではないかと思って、派遣という働き方を選んだ。 派遣先での仕事は正社員とほぼ同じ。 それなのにテレワークなどが認められず、「正社員とは命にかかわることまで格差があると感じた」とふり返る。 その仕事さえも奪われ、雇用保険の財源からの育児休業給付金も受けとれない。 「まともに働いてきて、なぜこんな目にあわないといけないのでしょうか …。」

国内で働く派遣社員は約 140 万人いる。 半数超はこの女性のように、派遣先での仕事があるときだけ派遣会社に雇われる「登録型派遣」の働き方だ。 派遣契約は四半期決算にあわせた「3 カ月間」が主流で、契約の更新は 1 カ月前までに伝えるルールになっている。 新年度が始まる 4 月から 3 カ月間の契約で働いている人も多い。

5 月末のタイミングで雇い止めを通告される「5 月危機」が現実のものになりつつある。 今後も「8 月」、「11 月」と、更新のタイミングを迎えるたびに、危機が懸念される。 契約を更新しないことによって減らしやすい派遣社員は、これまでも景気の「調整弁」にされてきた。 会社側は景気がよいときには人手不足を補うために増やし、悪くなれば減らす。 そんな「派遣切り」がくり返されてきた。

リーマン上回る雇用危機か

2008 年のリーマン・ショック後も派遣切りが横行した。 厚労省は同年 11 月に非正規雇用の調査に乗り出し、派遣社員約 2 万人を含む約 3 万人が、09 年 3 月までに解雇・雇い止めになる見込みだとわかった。 約 1 カ月後の調査では、その見込みが派遣約 5 万 7 千人、全体で約 8 万 5 千人までふくらんだ。 今回のコロナショックは、当時を上回る経済危機になると心配されている。 それでも厚労省はなかなか重い腰を上げなかった。 派遣会社は雇い止めの詳しい状況を公表しておらず、国が調べなければ派遣切りの実態はつかめない。

雇用の改善はアベノミクスの成果のはずだった。 完全失業率や有効求人倍率は改善し、安倍晋三首相はたびたび誇ってきた。 だが、コロナ禍で潮目は完全に変わった。 雇用統計の悪化はこれから急速に進むとみられる。 登録型派遣の見直しや正社員化への支援など、雇用安定化への取り組みが不十分だったツケが、一気に噴き出そうしている。 広がる解雇・雇い止めの実態をつかみ、派遣切りに対応するのが緊急の課題だ。 政治や行政がこれまでの取り組みの遅れを認め、弱い立場の働き手に向きあうことが欠かせない。 (内藤尚志、asahi = 5-28-20)


妊婦を有給で休業、企業に助成金 1 人最大 100 万円

女性の雇用・勤務条件

記事コピー (2-29-20 〜 5-28-20)


介護現場の悲鳴、財務省の壁崩す 20 万円の舞台裏

政府が 27 日に閣議決定した新型コロナウイルス対策の第 2 次補正予算案に、医療、介護、障害の現場で働く人たちへの慰労金が盛り込まれた。 感染者らに直接対応すると 20 万円、そうでない場合も 5 万円が配られる。 これら三つの業界で事前に決められた報酬以外に政府が現金給付するのは極めて異例だ。 リスクを抱えながら働く人たちの声を置き去りにしたままでは立ちゆかなくなるとの危機感が、政府の「岩盤」を突き動かした。 厚生労働省は当初、感染者に対応した施設については優遇して補助する姿勢だった。 医療機関向けの動きは比較的早く、4 月 18 日から病院の収入となる「診療報酬」について、集中治療室 (ICU) での治療は倍増するなどの手を打った。

「感染リスクは通勤と同じ」予算措置に慎重

介護施設でも、加藤勝信厚労相が 5 月 1 日、感染者が療養を続ける施設などで危険手当を支払う場合には補助する考えを示した。 だがその間も、医療や介護、障害者福祉の現場でいつどこで感染するか分からない状況で働き続ける人への手当てを求める声が強まっていた。 業界の声に突き上げられた形で、厚労省内でも「抱えているリスクの大きさを評価すべきだ(幹部)」との立場に傾く。 2 次補正予算では、より広く慰労金を配る方向性を探り始めた。

だが、予算配分を握る財務省の返事は冷たかった。 「感染リスクという点では、通勤を続ける多くの人と同じで、際限がない。」 患者に直接対応をしていない医療機関や介護施設などにまで慰労金の範囲を広げるのは、小売業などほかの業界とのバランスを考えると理屈が立たないとの立場だった。

相次ぐ介護施設の集団感染

感染症対策の予算獲得で優先されやすいのは医療分野だ。 新型コロナによる「医療崩壊」への危機感は早い段階から広く浸透しており、医療機関については助成が認められやすい地合いだった。 それでも、今回は介護分野を「置き去り」にはできない状況だった。 新型コロナが介護の現場にかつてないリスクを強いていることが、日に日に明らかになってきたからだ。 厚労省によると、5 月 15 日時点で日本の介護施設では少なくとも 40 件の集団感染(クラスター)が発生した。 利用者や職員の感染者は 446 人にのぼり、うち 39 人が死亡。 入院先が見つからず感染者を施設内で見続けるところもある。

「ウイルス移さないか不安でうつに」

「3 密」を避けるためにデイサービスは利用者を減らして営業をするなど、身を削って感染予防に取り組み、収入減に陥っている。 東京都江東区など 3 区の介護職員でつくる「ケアワーカーズユニオン」が今月 22、23 日に実施した「介護労働ホットライン」では、職員から「自分が利用者にウイルスを移さないか不安で、うつ症状になった」、「マスクやアルコールが不足するなか、対策に神経をすり減らしている」、「職員は 1 日 3 回、熱のある利用者は 1 時間に 1 回検温している」といった声が寄せられた。

国より先に自治体・企業動く

危機的な介護現場の状況を前に、自治体や企業は国に先行して動き出していた。 福岡市は 4 月中旬、「介護従事職員への特別給付金」として、高齢者施設や障害者施設に 15 万 - 150 万円の給付を決めた。 SOMPO ケアやニチイケアパレスなどの大手介護事業者も、独自の手当を導入した。

鹿児島県のある高齢者施設では 5 月、約 170 人の職員に一律 1 万円の手当の支給を決めた。 経営者の女性は「感染者が少ない地域でも、いつ発生するかわからない心理的な負担は変わらない」と話す。 職員には、家族が他県の人と会うことも控えるなど勤務外でも注意を促し、自身も眠れない夜が続いた。 「心が折れそうな中で、働いてくれていることに報いたかった」と話す。 神経をすり減らす介護現場に国の予算で報いることができるのか。 当初、介護行政を担う厚労省の老健局では「一律の手当支給を勝ち取るのは難しい」との見方が強かった。 そこで、事業所などの判断で手当を支給する場合に、そこに補助金をつける方向で検討を進めた。

医師会が官邸に働きかけ

功を奏したのは、政治力の強い医療分野と足並みをそろえたことだった。 日本医師会は 5 月、第 2 次補正予算案への要望に危険手当を盛り込んだ。 横倉義武会長も個人的に親しい安倍晋三首相にメールを送り、慰労金を要請していた。 最終盤の 5 月下旬、首相官邸が動いた。 介護と障害者施設も合わせて、一律の慰労金を配ることを認めた。 当初は医療機関の支援を念頭に都道府県へ配るためにつくられた「緊急包括支援交付金」を 2 兆円規模に増やし、介護などにも活用することで決着した。 ある与党議員は「首相官邸(の意向)が強かった」と話す。

「日が当たらなかった介護、評価された」

東京都の金山峰之(たかゆき)さん (37) ら介護福祉士の有志は 4 月下旬、厚労省に「特別手当」など介護職への支援を求める署名活動を始め、1 カ月で約 5 万 6 千件の賛同を得た。 金山さんは「医療崩壊を招かないために、医療への支援が最優先になったことは理解できる。 その次の段階として、介護の全体に支援が届くことがうれしい」と受け止める。 一方で「人材確保のためにも一時的な手当だけでなく、介護報酬の引き上げなど継続的な支援をお願いしたい」と注文する。

高齢者施設を経営する女性は「介護は医療と比べ、多くの人にとっては身近ではない。 日が当たらず残念な思いもあったが、人知れずがんばってきたことが評価されたということ。 すごいことだ。」と喜ぶ。 (石川春菜、久永隆一、asahi = 5-27-20)


助成金申請、ハローワークで断り続出 国の通知伝わらず

経済対策で助成金を出やすくしたのに、厚生労働省の通知が窓口の現場まで伝わらず、企業の申請が断られるケースが相次いでいる。 厚労省は仕事があるときだけ短期の雇用契約を結ぶ人らを支援するため、改めて全国の労働局に柔軟な取り扱いを徹底させる。 国は経済対策で助成金などを出やすくしたとアピールするが、窓口対応が追いつかないなど「目詰まり」が指摘されていた。 困っている人や企業にお金が届くまで時間がかかる事例もめだち、緊急時における行政のあり方が問われる。

問題となったのは従業員を雇い続ける企業に支払われる雇用調整助成金。 企業が働き手に払う休業手当の一部を、雇用保険の財源で肩代わりするものだ。 国が 4 月に発表した経済対策の柱の一つで、助成率が引き上げられ適用条件も緩和された。 厚労省は 4 月上旬、従来のやり方にとらわれず柔軟に対応するよう、本省の担当部署から各労働局にメールで通知した。 仕事があるときだけ短期の雇用契約を結んだり、シフト制で働いていたりする人たちを支援するためだ。 具体的には、ツアーの中止で仕事がなくなった派遣添乗員や、休業が続く店舗・施設の従業員らが対象となる。

会社の都合で働き手を休ませた場合は休業手当を払わないといけないが、雇用契約がない人はもらいにくい。 時給で働くパートやアルバイトらも、シフトが組まれなければ、仕事がもともとなかったことにされてしまう。 厚労省は過去の勤務実績などをもとに、仕事があったと「みなし」て対象にするよう通知した。 添乗員の派遣会社でつくる日本添乗サービス協会(東京)によると、全国に 1 万人弱いる添乗員の多くが、ツアーの期間だけ派遣会社と雇用契約を結ぶ人たち。 複数の派遣会社が、みなしの手法で助成金を申請しようとしていた。

ところが、同協会によるとハローワークの窓口などで断られるケースがあった。 ある派遣会社は、管轄のハローワークから「指示は本省から来ておらず現時点では承認は困難」と説明されたという。 この会社は登録する派遣添乗員に、ツアーの予定がない人に休業手当を払うのは難しいと伝えた。 正社員並みに働いてきた派遣添乗員の一人は、「これで収入は一切なくなる」と嘆く。

別の派遣会社が協会などからの情報をもとに厚労省の通知があることを窓口で訴えたところ、一転して申請が受理された例もあったという。 厚労省は窓口で断った件数を把握していないが、休業が続く店舗・施設分などを含めると、伝達ミスによって多数の企業がもらえるはずの助成金をあきらめた可能性がある。 背景には助成金の相談や申請が集まり、人手不足もあって現場が混乱していることがある。 助成金の相談は全体で 35 万件超(18 日時点)。 厚労省は申請から 2 週間で支給するとしているが、実際はそれ以上かかることも少なくない。

厚労省の担当者は「窓口は多忙を極めているが、通知が十分に伝わっていなかったとすれば申し訳ない。 雇用を維持するため支給できるものは積極的に出すという姿勢だ。」と釈明する。 国の経済対策をめぐっては、一律 10 万円を支給する「特別定額給付金」のオンライン申請でトラブルが続出。 経済産業省の「持続化給付金」のコールセンターがつながりにくくなるなどほかにも混乱が見られる。 (榊原謙、asahi =5-24-20)