5 千円分の商品券が 2 千円 市長「類を見ない」 大阪

大阪府高槻市が、市内の店で使えるプレミアム率 150% の商品券を独自に発行する。 新型コロナウイルスの影響を受けた店を応援し、市民の家計を支えるのが狙いで、発行総額は 16 億 2 千万円を予定している。 商品券は「(仮称)地元のお店応援券」。 500 円券が 10 枚つづりになった 1 冊(5 千円分)を 2 千円で販売する。 市から約 16 万 2 千の全世帯に購入引換券を 9 月中に送る予定で、1 世帯あたり2冊まで購入できる。 商品券の使用期間は 10 月ごろから 12 月末ごろまでの 3 カ月を想定している。

市は、現金給付について「貯金に回って消費の底上げにつながらない可能性がある」とする一方、商品券でもプレミアム率が低いと市民の購入意欲が高まらないと判断。 プレミアム率 150% という「類を見ない(浜田剛史市長)」お得な商品券の発行を企画したという。 商品券を使える店舗を今後募る予定で、昨年 10 月の消費増税に合わせてプレミアム商品券を企画した際の約 790 店を上回る規模を目指す。

これまでの商品券はショッピングセンターといった大規模店舗で多く使われる傾向があったため、今回は商品券 10 枚のうち 5 枚は、地元の飲食店や小規模な店だけで使えるようにする。 浜田市長は「市民に市内の店を利用してもらい、みんなで協力して店を応援できれば。経済活動を回復させる起爆剤になるよう、しっかり取り組みたい」とコメントした。 (瀬戸口和秀、asahi = 6-27-20)


座席にはリンゴ しなの鉄道が新型車両「SR1系」公開

しなの鉄道(長野県上田市)は、7 月 4 日から営業運転を始める新型車両「SR1 系」を公開した。 今回、6 両(1 両約 2 億円)を導入。 車両の色は「高原のさわやかな風」をイメージしたロイヤルブルーで、主に全席指定の快速列車として観光や通勤用に運行する。 今月 19 日、戸倉駅(同県千曲市)で 2 両が公開された。 1 両に 40 ある座席はリンゴの図柄をあしらった赤が基調だ。 普通列車にも転用するため、自動で向きを変えられるシートを採用。 電源コンセントや無料 Wi-Fi (ワイファイ)も利用できる。 車いすで利用できる洋式トイレも設置した。

平日朝は下りの「しなのサンライズ号」として小諸 - 上田 - 長野間で 1 本、平日夕は「しなのサンセット号」を上田 - 長野間で上下 3 本運行。土日と祝日は「軽井沢リゾート号」として、軽井沢 - 妙高高原間、軽井沢 - 長野間でそれぞれ上下 2 本運行する。 運賃とは別に指定料金が必要で、平日の上田 - 長野間は 300 円。 土日祝日は全区間で大人 500 円、小人 250 円。 発売は同社ホームページなどから。 同社は、旧国鉄以来の現有 115 系を順次 SR1 系に更新する計画で、来春には普通列車用の 8 両を導入する予定。 昨年の台風 19 号や新型コロナの影響で厳しい経営が続くだけに、新型車両導入を業績回復のきっかけにしたい考えだ。 (土屋弘、asahi = 6-23-20)


移動自粛解除後、初の週末 にぎわう観光地も

新型コロナウイルスの感染防止策として自粛が求められていた都道府県境をまたぐ移動が全面解除されて最初の週末となった 20 日、各地の観光地には久しぶりに外出を楽しむ人たちでにぎわう場所もあった。

東京・浅草の雷門は観光客で混雑し、横浜市の照井梅子さん(73)は「日常が少しずつ戻ってきた感じがする」。京都市の世界遺産・清水寺に向かう参道では、留学先から都内の実家に帰国した方佳思さん(23)が「町並みや雰囲気を楽しみたい」と着物姿で巡っていた。奈良市の東大寺周辺も多くの人が訪れた。 (sankei = 6-20-20)


知事「白紙撤回の感触」、市長「怒り心頭」 … イージス手続き停止

政府が地上配備型迎撃システム「イージスアショア」の配備手続きを停止すると発表したことを受け、秋田県の佐竹敬久知事は 16 日、住宅地に近い陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)が配備候補地となったことなどを挙げ、「出だしで全ての面から検証しておけば、こういうことにはならなかったのではないか」と指摘した。 佐竹知事は報道陣に対し、河野防衛相から 15 日夕に手続き停止の連絡があった際、「凍結か中止か」と問いかけたと明かした上で、「配備計画自体が白紙撤回ではないかという感触を受けた」と話した。

秋田市の穂積志もとむ市長も 16 日、取材に応じ、「安全安心に支障がないと言い続けた防衛省の姿勢は許されるものではない」と強調。 「地域住民の不安や振り回されたエネルギーを総合すると怒り心頭というか、あまりに無責任な対応だったと言わざるを得ない」と語った。 同じく配備候補地の陸上自衛隊むつみ演習場(山口県萩市、阿武町)がある萩市の藤道健二市長は同日の市議会一般質問で、「今回の停止に関し、改めて国に経緯の詳細な説明を求める」と述べた。 その後、報道陣の取材に「再度、復活させるのは難しいだろう」と語った。 (yomiuri = 6-16-20)


成田の日航スタッフが畑作業お手伝い 減便、人材生かす

成田空港で働く日本航空の地上スタッフらが、空港近隣に農作業の手伝いに出向いている。 新型コロナウイルスの影響による減便や運休で本来の仕事が減った人材を、地域で生かしてもらう取り組みだ。 4 月下旬から 4 カ所に多いところで 1 日 10 人を派遣している。

12 日には空港南側の千葉県横芝光町の畑で、普段は航空機の貨物積み下ろしなどを担う 4 人がネギの収穫を手伝った。 海に近い土壌で育ったネギは甘みがあり、町の代表的な作物になっている。 高橋陸さん (27) は「大切な商品を傷つけないよう、気を使って収穫している。」 ネギを栽培する「GREEN GIFT」の鈴木敏弘社長 (35) は「1 年で一番忙しい時期なので本当に助かる。 農家とは違う視点で改善の提案などもしてくれて、良い刺激になる。」 (福田祥史、asahi = 6-14-20)


ブランド果物、手が届くかも コロナで販売戦略に変化

新型コロナウイルスの影響で、高級フルーツの生産者らが販売戦略を練り直している。 あえてブドウの房を大きくせずに価格を抑えたり、百貨店だけでなく地元のスーパーにも販路を広げたり。 輸出や都市部の需要が落ち込み、従来の高級路線だけではピンチを乗り切れないとの判断がある。

「ストップ! 大房化!」 JA 全農おかやま(岡山市)は 4 月、農家向けに発行する情報誌に、大きな房のブドウを作らないよう呼びかける記事を載せた。 新型コロナの影響に伴い、「輸出は不安要因が大きい」、「大房は国内では高すぎて販売苦戦」といった市場関係者の見方を紹介。 栽培が本格化する 5 月を前に、700 グラムほどの標準的な大きさになるよう、実の元になる花穂(かすい)を間引き、先端を切って3 - 3.5 センチにそろえるよう求めた。

岡山県は全国有数のブドウの産地だ。 大粒で種がなく、皮ごと食べられるシャインマスカット「晴王(はれおう)」が県産ブランドで、県内に約 3,200 戸あるブドウ農家の多くが手がけている。 標準的な大きさの方が糖度は安定するというが、800 グラムを超す大房は台湾や香港の富裕層の人気が高く、1 房 2 万 - 3 万円の高値で売れてきた。 しかし、今年は新型コロナの影響で、ブドウを輸送する飛行機が激減した。

JA は例年のような輸出は難しいと判断。 「国内向けに絞ることが最も堅実(担当者)」とし、房を大きくせず、販売価格を下げるよう生産者に促した。 JA によると、栽培農家はおおむね肯定的に受け止めているという。 倉敷市内の 6 棟のハウスでシャインマスカットを栽培する浅野三門(みかど)さん (56) は「大房は木も土も弱らせてしまう。 長い目で見れば、適切なサイズが『岡山産』のブランド力を守ることになる」と話す。

一方、「休業要請」による影響も出ている。 糖度 15 度の高級マンゴーとして知られる宮崎県の「太陽のタマゴ」。 化粧箱に入れられ、1 個 1 万円以上することも多く、卸し先は首都圏や阪神圏の百貨店が中心だ。 ただ、4 月以降、新型コロナの影響で百貨店が休業し、販売量が激減。 JA 宮崎中央会では、太陽のタマゴ以外の完熟マンゴーも含め、4 月までの売り上げが前年同期比の 6 - 7 割にとどまった。

「何とか売れる場所を探してほしい。」 こうした状況を受け、JA の担当者は市場関係者に相談。 首都圏のスーパーや量販店に卸すことになった。 値段は 1 個 5 千 - 6 千円に下げたが、「こんなおいしいマンゴーがあったのか」などと消費者にも好評で、思いの外売れたという。 JA の担当者は「新しい客層を開拓できた。 百貨店は営業を再開したが、客がすぐに戻るとは思えない。 今後もスーパーなどを卸し先に併用する」と話す。 同じように、首都圏などに高級マンゴーを出荷する沖縄県でも、航空機の減便などで出荷量が減少。 JA おきなわによると、本格的な出荷は 7 月だが、スーパーや直売所など県内の販売を強化するという。

対面ダメならネットで

生産者と消費者がふれあう「直売所」でも新型コロナ対応が模索されている。 種なしブドウ(デラウェア)の生産量で全国 3 位の大阪府。 その中心を担う柏原市で 5 月 29 日、ブドウ農家を対象にしたオンラインの勉強会が開かれ、10 人が参加した。 生産者が農作物を出品し、消費者が直接購入するアプリ「ポケットマルシェ」の運営会社の担当者から、出品方法などについて説明を受けた。

市内には直売所やブドウ狩りの場所が約 50 カ所ある。 大阪市や神戸市などから買い付けに来る客も多く、出荷だけでなく直接販売するのが柏原の特徴だ。 デラウェアの 3 割、巨峰やマスカットはほぼ全てが直売所など現地で売れる。 ただ、今夏は新型コロナの影響で外出を控える人も多いことが予想され、直売所やブドウ狩りの売り上げの減少が懸念される。 人を集める PR イベントなども開催しにくい。 そのため、市はネット販売の強化が必要と判断したという。

市内には約 200 戸のブドウ農家があるが、ネット販売をしているのはわずか数戸。 勉強会に参加した奥野成樹さん (33) は「これまでは直売所で売ることばかり考えていた。 ピンチをチャンスと捉えネット販売に挑戦したい」と話した。 (小沢邦男、山中由睦、asahi = 6-10-20)


「ドラゴンアイ」、八幡平にお目見え 雪解けの季節だけ

岩手県と秋田県にまたがる八幡平(はちまんたい、1,613 メートル)の山頂付近の鏡沼(かがみぬま、直径約 50 メートル)で、雪解けの季節に見られる「八幡平ドラゴンアイ」が出現した。 八幡平は山頂付近に雪が残っており、鏡沼を上から眺めると残雪が巨大な「竜の目」のように見える。

沼中央部の雪が解けて雪がドーナツ状になると「開眼」とされ、今年は 7 日に開眼した。 好天に誘われ、9 日は山頂近くの駐車場は近県ナンバーの車で混雑し、大勢の人が石畳の散策路を上って鏡沼をめざした。 岩手県花巻市から来たパート藤根忠雄さん (68) は「今年は竜の瞳を見られて良かった。 写真をフェイスブックにあげたい。」と話した。 (曽田幹東、asahi = 6-10-20)


タマネギ 180 トン、畑で廃棄「最高の出来栄えなのに」

笠岡湾干拓地(岡山県笠岡市)で育てられた出荷前のタマネギが行き場を失い、廃棄に追い込まれた。 新型コロナウイルスの影響で需要が落ち込んだため。 「表現できない悔しさ」と生産者は唇をかむ。 廃棄を余儀なくされたのは、県産の 35% を占める年間 1,500 トンを生産する農業法人「エーアンドエス」。 干拓地に広がる約 30 ヘクタールの畑で、5 月 26 0日から廃棄作業を始めた。

直径 10 センチを超す大きさに育った無数のタマネギが、破砕カッターをつけた大型トラクターで畑にすき込まれていく。 グシャッという音と同時に、刺激臭が一帯に広がる。 2003 年に法人設立以来、初めての事態。 「最高の出来栄えなのに出荷できない。 表現できない悔しさです。」 大平貴之社長 (44) は作業光景に背を向けた。 JA 全農おかやまによると、今年のタマネギは国内最大産地の北海道で豊作なうえ、外食産業の営業自粛が追い打ちとなって需要が激減。 4、5 月の市場での平均価格は、1 キロ当たり 30 - 50 円台と前年の 3、4 割ほどに低迷した。 担当者によると「過去にない下落率」だという。

エーアンドエスも、出荷の大半が外食などの業務用向けのため、営業自粛の影響をもろに受けた。 一部を地元スーパーに出したり、笠岡市の学校給食やふるさと納税の返礼品に活用してもらったりなど対策を尽くしたが、3 ヘクタール分の 180 トンが残った。 廃棄による損害は 900 万円に上る。 廃棄は 3 日に終えたが、報道などで知った新たな買い手もいたという。 大平社長は「割り切れない思いもあるが、いい勉強と思うことにする。 応援してくれた方に感謝し、次の一手を考えます。」と話した。 (小沢邦男、asahi = 6-7-20)


地震多発する上高地、落石・地割れで異様な風景に

4 月下旬から、北アルプス玄関口の上高地(長野県松本市)で続く群発地震が止まらない。 間近にそびえる穂高連峰では大規模な雪崩や山崩れが発生したほか、遊歩道には落石や地割れが起きている。 県の外出自粛要請が解除され、路線バスの運行も再開されたが、観光や山小屋の関係者らは警戒を強めている。 「ゴーッ。」 5 月 30 日に取材のため訪れた上高地で、地鳴りのような音が響くと同時に体にはっきりわかる揺れを感じた。 小梨平キャンプ場近くの遊歩道を歩いていた時のことだ。 途中、直径 10 センチほどの落石がいくつも転がっていた。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、4 月 18 日 - 5 月 15 日、マイカー規制されている上高地への主要な移動手段である路線バスが運休。 運行再開から 2 週間ほど過ぎたが、観光客や登山客はわずか。 客足が戻らないのは、外出自粛ムードが続くほか、群発地震が響いたとみられる。 5 月 29 日午後 7 時過ぎ、上高地に近い松本市安曇で震度 3 を観測する地震が発生。 上高地の観光関係者は「地震による衝撃で、土砂が火事の煙のように山全体で舞い上がった。穂高連峰では雪崩も多発した。」

実際、観光名所の河童橋(かっぱばし)から望む穂高連峰の岳沢では何カ所も雪崩の跡が確認できた。 近くの斜面では立ち木ごと崩落し、赤茶けた地肌がのぞいていた。 明神岳の谷筋には落石の跡も目立つ。 梓川左岸の遊歩道では落石や地割れが多発。 通行自粛を呼びかける看板も設置されていた。 バスターミナルで静岡県から来た若い男女の登山者に話を聞いた。 前日、河童橋から徒歩 2 時間ほどの徳沢でテントを張ったところ「身の危険を感じるほどの揺れ(女性)」に襲われたという。 穂高連峰の登山基地・涸沢(からさわ、約 2,300 メートル)に行く予定を取りやめたと話していた。

穂高連峰周辺の山小屋は、7 月 14 日まで営業を休止中。 北アルプス山小屋友交会会長で横尾山荘社長の山田直さんは「地震のため登山道が荒れ、雪崩の危険もある。登山は自粛してほしい」と呼びかける。 梅雨入り前の上高地は、1年で最も美しいとされる新緑の季節を迎えている。 だが、命を守るため、河童橋周辺の観光にとどめ、登山はもう少し我慢すべきだと強く感じた。 (山岳専門記者・近藤幸夫)

4 月末に続き、5 月 30 日に上高地周辺を調査した信州大学の大塚勉教授(地質学)に話を聞いた。 1 カ月前と比べると、新たな崩壊地が増えていた。 上高地から目視した範囲でも崩壊地は増えていて、明神岳や穂高岳では山腹崩壊も見られる。 いったん崩れたところが震動を受けるとさらに崩れる。そのため上高地トンネル開通に伴う廃道など、1 カ月前に落石があった場所の被害が増えている。 新たな崩れも多い。 今回は落石の記録を取ったが、重さ 1 トンを超える岩が 16 個あった。 最大は 1 カ月前にもあった直径 5.6 メートル、推定重量 82 トン。 今回は新たに 70 トンクラスの岩も落ちていた。

地震の原因は、やはりプレート同士の押し。 押し合う中で、地震の起きやすい場所で起きている。 予想はなかなか難しいが、1998 年の群発地震と同じく 2 カ月程度続くかもしれない。 つまりあと 1 カ月ほど続く可能性がある。 震源が上高地の南東→西→北と移動しており、今後はこれまで強い揺れを感じなかった場所で新たな被害が起きる危険性がある。 観光客が入ってきているが、危険だ。 きちっとした規制をする必要がある。 (依光隆明、asahi = 6-3-20)

◇ ◇ ◇

北アルプス玄関口で地震多発 「落石注意」相次ぐ地鳴り

北アルプスの玄関口、上高地(長野県松本市)周辺で、4 月下旬から地震が続いている。 新型コロナウイルス感染拡大で、ホテルや旅館、山小屋、キャンプ場など全ての施設が営業休止中。 再開の準備にあたる地元関係者は、沈静化しない地震に不安を感じている。 先月 29 日、取材のため上高地を訪ねた。 バスターミナルから徒歩約 1 時間の明神池への遊歩道では、地震の影響とみられる地割れ(幅約 5 センチ、長さ約 10 メートル)が 1 カ所あった。 また、明神池手前では、ひと抱え以上もある巨大な落石が遊歩道をふさいでおり、「落石注意」の看板があった。

明神池では、地鳴りのような音が鳴り響いた。 直後に足元が数秒間揺れ、湖面もわずかに波打った。 気象庁のホームページを見ると、マグニチュードは 2.7。 地図上で震源を示すバツ印は上高地付近を示していた。 観光名所の河童橋(かっぱばし)近くのホテルの従業員は「23 日は余震も多く、雪崩が多発した」と話す。 河童橋からは真っ白に雪化粧した穂高連峰が望め、谷筋には雪崩の跡が確認できた。 長野地方気象台によると、22 日未明に震度 3 を観測して以降、5 月 1 日正午までに県中部で計 57 回の揺れを観測。 ほとんどの震源が上高地付近に集中し、最も大きな揺れは 4 月 23 日の震度 4 だった。

上高地周辺では 1998 年夏にも約 3 カ月間、震度 1 以上の揺れを 200 回以上観測。 うち 2 回はマグニチュード 5 以上で、上高地の入り口、大正池付近を走行中のタクシーに落石が直撃するなどの被害があり、客足も落ち込んだという。 今回の地震では、遊歩道に落石や地割れが何カ所もあり、上高地温泉ホテルでは 26 日に従業員らを避難のために下山させたという。

「山に囲まれているので水や電気が止まってしまわないだろうか …。」 バスターミナルからほど近い、小梨平キャンプ場の支配人斉藤正仁さん (62) は心配する。 最初の地震があった 22 日未明、地鳴りと大きな揺れで目が覚めた。 その後も小刻みな揺れで寝付けない夜だったといい、「電気が止まればラジオしか情報がなくなるのがこわい。」 同気象台は、地震の原因を「特定できていない」としている。 大正池近くにそびえる活火山の焼岳(2,455 メートル)の活動には特に変化は見られないという。 同気象台は「過去にも地震が起きているので、今後も地震活動がしばらく続くことが考えられる」と注意を呼びかけている。 (里見稔、asahi = 5-7-20)

◇ ◇ ◇

バス運休で行けない … 上高地、GW まで休業 北アルプス

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、北アルプスの玄関口、上高地(長野県松本市)の宿泊施設や売店などが 17 日、本格的な観光シーズン到来となる大型連休終了まで営業を自粛することを決めた。 マイカーの乗り入れが禁止されている上高地への路線バスも全て運休を決め、行く手段はほぼなくなった。

ホテルや旅館などでつくる上高地観光旅館組合(小林清二組合長)は 17 日、加盟する 20 施設の 5 月 6 日までの休業を決めた。 また、路線バスを運行するアルピコ交通も 18 日 - 5 月 6 日の全ての便を運休する。 このほか、上高地インフォメーションセンターなどの施設も 5 月 6 日まで休館する。 同組合は、上高地タクシー運営協議会にも乗り入れ自粛を要請している。 小林組合長は「お客様の安全を考えて営業休止という苦渋の選択をした。 一日も早く安全な上高地を取り戻したい。」と話している。 (asahi = 4-17-20)


葬式もするガソリンスタンド 住民出資、コロナにも強い

人が減り、生活に必要なインフラも次々に消えていく。 それなら自分たちでやってしまおう、と考えた町がある。 ガソリンスタンド、日用品の売店、高齢者の見守り、そして葬儀まで。 人口減少に悩む自治体のモデルになるかもしれない。 高知県北部の山あいにある人口約 3,500 人の梼原(ゆすはら)町に、全国から視察が相次いでいる。 今年 2 月、高知市から車で 2 時間以上かけて記者が訪ねると、道沿いに小さなガソリンスタンド (GS) が見えてきた。 見た目はなんの変哲もないが、この「しまがわ SS」が注目されているのは、住民らが自ら出資し、経営しているからだ。

「いらっしゃい。仕事は順調?」 顔見知りの運転手に声をかけて給油していたのは、地区のとりまとめ役である区長の空岡則明さん (68) だった。 GS は住民らが出資した株式会社「四万川」が経営し、空岡さんが社長を務める。 午前 7 時の開店前に出社し、社員らとともに給油するのが日課だという。

この GS がある四万川区は明治期に合併した旧 6 村の一つだ。 住民約 500 人の半数が 65 歳以上で、小中学校や幼稚園もなくなり、農協の支所も撤退した。 かつては個人経営の GS があったが、法改正で義務付けられた地下タンクの老朽化対策の費用が捻出できず、2013 年 1 月に廃業した。 唯一の GS がなくなり、灯油の配達に頼っていた高齢者は生活に不便をきたすようになった。

そこで、住民らは自前の GS を設けようと動いた。 整備費約 7,400 万円の確保が課題だったが、県と町からの計 6 千万円の助成金のほか、地区からもお金を出して賄った。 こうして廃業から 1 年 3 カ月後、待望の GS が開業した。 野菜や特産品、日用品の売店も併設され、GS と合わせた四万川の年間売り上げは 7 千万円を超える。 いまは高齢者の見守りを兼ねた配食サービスや、遊休農地での米作りといった事業に手を広げ、地域を支えている。

昨年には「最後は地域で見送ってあげたい」という声に応え、葬祭事業にも乗り出した。 廃園した幼稚園を多目的ホールに改装して、祭壇などを設置し、一式 30 万円で葬儀を執り行う。 これまで数件の利用があった。 新型コロナウイルスの影響で、現在は地域外から訪れる観光客はいないが、もともと地元客が中心だったため、GS や売店の売り上げは 1 - 2 割減で持ちこたえているという。

空岡さんはこうした四万川の事業について「住民の居場所や心のよりどころになり、みんなが喜んでくれている。 暮らしに必要なものは提供していきたい。」と手応えを感じている。 一方、今後も人口減は続き、地域の存続も万全とは言い難い。 だが、空岡さんは前を向く。 「いかに人口減を食い止めるか、地域生活を維持できるか。 町ぐるみで前を向き、やっていけば希望は見えてくる。」

面積の大部分を森林が占める梼原町は、周辺自治体と違うまちづくりを進めている。 図書館や総合庁舎は建築家の隈研吾さんの事務所による設計で、町営ホテルには町産の木材がふんだんに使われ、電柱も一部は地中化されている。 町の後押しで、四万川区を含む町内 6 地区すべてが県の制度である集落活動センター事業を活用し、特色ある取り組みをしている。 町長を 17 年まで 2 期 8 年務め、こうした地域づくりを主導した矢野富夫さん (65) は「すべては住民の危機感から生まれた」と語る。

初瀬区は、韓国レストランとサウナを併設した「チムジルバン・レストラン鷹取」を開業し、年間 3 千人以上が訪れる。 地元の主婦が作るキムチも人気だ。 いずれも、韓国の大学生との交流から生まれた。 西区は農作物を荒らすイノシシやシカの肉を「ジビエ」として有効利用している。 解体施設を備えた特別車両のジビエカーを導入し、肉や加工品として販売している。

越知面(おちめん)区は、小学校の廃校舎を合宿所「遊友(ゆうゆう)館」として改装し、大学・高校生の部活の合宿を年間 2 千人ほど受け入れている。 耕作放棄を防ぐため、集落営農にも乗り出した。 越知面区長の上田末喜さん (69) は「何もしなかったら集落機能が失われ、地域が廃れてしまう。 若手も育てつつ、やれることをやっていく。 何とかして人口減を緩和し、地域を維持したい。」と前を見つめる。 (清水康志、asahi = 5-30-20)


「地域を助け、地域で生きる」 コロナ禍の地銀の役割

地方銀行の苦悩

記事コピー (4-3-20 & 5-25-20)


限りなく透明 … 積丹ブルーを映すジンはさわやかな香味

グラスに注がれた無色透明の液体。 記者がグラスを傾け、顔を近づけてみると、かんきつ系の香りがつーんと漂う。 ひとくち口に含むと、さわやかなミントの香味がふくらむ。 舌でころがしながら流し込むと、口中に森の香りが広がった。 この液体の正体は、カクテルにも使われる蒸留酒「ジン」。 群青と淡い青色がおりなす海やウニが魅力の北海道積丹町にある「積丹ブルー蒸留所」の試作品だ。 アルコール濃度は 45 度。 この蒸留所で初蒸留するジンとなる。

ジンは、酒税法上、ウォッカやテキーラ、ラムなどと同じスピリッツに分類される。 大麦やライ麦、トウモロコシなどの穀物を原料とした蒸留酒に、ジュニパーベリー(ねずの実)をはじめとした香草などの植物(ボタニカル)を加え、再蒸留して造られる。 原料や産地、製法にこだわったジンはクラフトジンと呼ばれ、国内外でブームになっている。 世界中のさまざまなメーカーが、それぞれ独自の香りや風味を競っている。

一番のこだわりは原材料だ。 ジンの原料となるハーブや樹木を育てる 5 ヘクタールの自社農園や乾燥室を備え、積丹の風土に育まれたボタニカルをふんだんに使った。 北海道に生育するアカエゾマツの若芽は熟成したかんきつ系の香りがする。 これにエゾノカワラマツバ、ミヤマビャクシン、セイヨウノコギリソウなど 10 種類以上の植物と、欧州産のジュニパーベリーをサトウキビ由来のアルコールに漬け込んで蒸留する。

もう一つのこだわりは、ボタニカルの生産から蒸留までを一貫して製造できる態勢だ。 自社農園のほか、ドイツ製蒸留器を備え付けた蒸留室や瓶詰室などの施設をそろえた。 試飲スペースのある店舗などを含め、床面積は 225 平方メートル、総工費は 1 億 2 千万円ほどだ。 ジンはウイスキーやワインと違ってビンやたるに詰めて熟成させる必要はない。 瓶詰めすれば、すぐに出荷できる。 4 月には税務署から製造免許が交付された。 18 日から蒸留が始まり、6 月には、発売を始める。

ブランド名は「火の帆(ほのほ)」とした。 人の魂に火をともし、勇気と希望を与える「火の酒(スピリッツ)」を目指すという意味を込めた。 このほか、キタコブシ、オオバクロモジなど道内産の 10 種類ほどの植物だけを使った単品のスピリッツもつくる予定だ。

観光地に増える耕作放棄地を利活用 ウニに次ぐ名産品へ

積丹町はウニをはじめ新鮮な魚介類が豊富で、神威岬や積丹岬などの名勝地もあり、年 90 万人の観光客が訪れる。 一方で、少子高齢化と過疎化がすすみ、耕作放棄地も増えている。 このため、積丹町は、国の地方創生交付金を使って新たな事業の立ち上げを模索してきた。 そのひとつがジン事業だった。 2018 年に農業法人積丹スピリットを立ち上げた。 酒類総合研究所(広島県)では、20 種類以上の植物をあれこれ組み合わせ、試験蒸留を繰り返してきた。

積丹スピリットの岩井宏文社長 (50) は「過疎化のすすむ積丹町で、地方創生事業として大切に育てていきたい。 道内産の植物を使った希少なジンとして世界に売り出していきたい。」と話す。 蒸留所長の妹尾大輔さん (42) は「国内でジンの魅力を知るのは少数派。 積丹のボタニカルをがつんと感じる、積丹ならではジンをつくりたい。」と抱負を語った。 (佐久間泰雄、asahi = 5-24-20)

「積丹で世界に通用するジンを」 提案者の木工デザイナー・煙山泰子さん

積丹なら夢のジンができる。 そう思い、5 年前に積丹町の地域活性化策としてジン事業を提案した。 思い浮かんだのはスコットランド最北のシェットランド諸島の蒸留所。 島の植物を使い、島の人口と同じ 2 万本あまりの限定のこだわりのジンだ。 2016 年に英国を訪れ、ジンの原料となる植物や製法を視察した。 積丹の豊かなボタニカルを使えば、世界に通用するジンができると確信した。 これまで木工デザイナーとして、「木とふれあい、木に学び、木と生きる」という「木育」を提唱してきた。 積丹のジン事業は、いわば大人のための木育。 これが軌道に乗って休耕地の解消や森林保全につながればうれしい。


カンパチ 20 万匹、通販でセール中 コロナで行き場失い

新型コロナウイルスの影響で、飲食店向けの水産物の出荷が落ち込み、全国有数の養殖カンパチの産地・高知県須崎市の野見漁業協同組合が 22 日、行き場を失った約 20 万匹のカンパチを全国の消費者向けにネットで販売し始め、支援を呼びかけている。 太平洋を望む野見湾で育てたカンパチに、真水を使った淡水浴をさせ、みずみずしい身の味や食感が売りだ。 野見漁協によると、カンパチの出荷量は年約 40 万匹に上る。 だが、コロナ禍が全国のすし店や料亭、旅館などの需要を直撃している。

前年の 5 月の 1 週間の出荷は 5 千 - 6 千匹だったが、今年は 10 分の 1 の約 500 匹まで激減した。 現在、養殖中の 20 万匹以上が売れ残っているという。 これまでは卸売業者に出荷していたが、同漁協などに加盟する 14 の養殖業者が個人向けに初めて直接販売する。 須崎市などが運営する特産品の EC サイト「高知かわうそ市場」を使い、商品は刺し身用の柵を用意。 2 人前(2,800 円)から、6 - 8 人前の半身 4,670 円(通常約 6 千円)、12 - 16 人前の 1 匹 6,888 円(同約 1 万円)で出品している。 野見漁協の西山慶組合長は「値下げにはなるが、20 万匹が廃棄になるよりはましだ。 漁業者の生活を守りたい。」と話している。 (湯川うらら、asahi = 5-23-20)


秋田米新品種、名称公募に 21 万件超 システムはパンク

秋田県が 2 年後の市場デビューをめざす秋田米の新品種「秋系 821」の名称案公募が 17 日に締め切られ、応募件数が少なくとも 21 万件を超えた。 県秋田米ブランド推進室は「コメのネーミング募集では全国最多となった」としている。 4 月 7 日から始めた全国公募の応募件数は、今月 17 日午後 4 時の速報値で 21 万 7,641 件。 内訳は、県外からの応募が約 7 割、県内は約 3 割だった。

締め切り直前の 16 - 17 日にはメールでの応募が殺到し、受信システムがパンク。 一時、応募が受け付けられない事態に陥った。 この不具合が原因で応募できなかった人に限り、県は 21 日まで再応募を受け付けており、最終的な数はさらに上積みされそうだ。 同室の調べでは、これまで名称案を公募した他県産米の中で、最多は福井県の「いちほまれ(約 10 万 7 千件)」。 次いで、山形県の「つや姫(約 3 万 4 千件)」が多かった。

県は隣県の「つや姫」を意識し、当初 5 万件の応募を目標に掲げた。 最優秀賞 1 人に賞金 100 万円などを贈ることを前面に打ち出して告知。 新型コロナウイルスの影響で実施できないイベントの予算は、ネット広告に回すなどした。 同室の担当者は「賞金の情報が SNS のツイッターを通じて全国に拡散されたことが一番効いた。 想定以上の PR 効果があり、うれしい悲鳴を上げています。」と話している。 今後は専門家の選考部会で 8 月までに候補を 5 件に絞り、秋には佐竹敬久知事が最終選考。 11 月に新名称を発表する。 (佐藤仁彦、asahi = 5-22-20)


アルコール「77%」の心意気 コロナ迎え撃つ地場産業

新型コロナウイルスの感染拡大で消毒用アルコールやマスクが不足するなか、異業種参入で商品を供給する動きが広がっている。 とりわけ各地の地場産業は、本業で培った技術を生かし、「困っている人に 1 日でも早く届けたい」と生産に取り組む。

酒造会社に注文殺到

厚生労働省は、酒などアルコール濃度 70 - 83% の代替品を手指消毒用に使用できると臨時の見解を示し、4 月下旬には 60% 台の使用も有効とした。 酒の製造・販売を許可する国税庁も認めた。 高知県安芸市の菊水酒造は 4 月 10 日にスピリッツ「アルコール 77 (500 ミリリットル、税込み 1,320 円)」を売り出した。 問い合わせのメールは 5 万通を超え、電話は鳴りっぱなしだ。 ホームページにもアクセスが集中。 更新ができなくなったため、一時注文の受け付けを停止したが、18 日に再開した。

「アルコール消毒液が不足しているようだ。」 品薄の状況は 2 月末には春田和城社長 (46) の耳に入っていた。 「潤沢な醸造アルコールを使って何かできないか」と、県や消防、国税局などに問い合わせ、濃度は「汎用性が高い」と 77% に落ち着いた。 同社は 2018 年 7 月の西日本豪雨で瓶詰め工場や事務所が浸水。 物資の支援を受け、取引先の協力で復旧にこぎつけた。 春田社長は「製造設備を活用して恩返ししたかった」と話す。

富山県砺波市の若鶴酒造も先月 13 日、リキュール「砺波野スピリット 77 (300 ミリリットル、同 968 円)」を発売。 直営店に並んだ商品は即日完売した。 発売までに 500 件以上あった問い合わせのうち、約 100 件は医療機関からで、優先的に納品している。 アルコール濃度は消毒液の基準に照らし、語呂も良い 77% にした。 サトウキビを原料にした 95% の醸造アルコールに加水し、保湿剤としても使われる食品添加物のグリセリンを足した。

山梨県大月市の笹一酒造は 77 度のスピリッツ「笹一アルコール 77 (500 ミリリットル、同 1,320 円)」を発売。 眼科や歯科、小児科の医師や鍼灸(しんきゅう)師からの引き合いも多い。 一般の消費者からは励ましの電話やお礼のお菓子が届くことも。 「こんな経験は初めて」と天野怜社長 (41)。 「感染収束に向け、業種の垣根を越えて医療現場などに役立ててもらえたらうれしい。」

泡盛の酒蔵 サントリーも

沖縄県では、泡盛の請福酒造(石垣市)が消毒用の代替品を売り出した。 県酒造組合は知事からの協力依頼を受け、47 の酒造所に生産を呼びかけている。 岡山市中区の宮下酒造、愛媛県新居浜市の近藤酒造、宮崎県日南市の京屋酒造、熊本県人吉市の高橋酒造なども同様の商品を投入した。 大手も名乗りを上げた。 米国で製造実績があるサントリー(大阪市)は 4 月末、傘下の大阪工場で蒸留したアルコールを医療機関に提供した。 製造費用は同社が負担するという。

アルコールは手につけて乾くまですり込むと、「エンベロープ」と呼ばれるウイルスの膜を壊す働きがある。 厚労省は消毒用の供給不足を受け、「やむを得ない場合」に限り、酒類などを代替品として使えると認めた。 アルコール濃度は、医薬品や医薬部外品を承認する際の基準や前例に基づいて定めた。 濃度が高すぎると、揮発して消毒の効果が薄れるという。 濃度が 60% 以上のアルコールは引火性のある危険物にあたる。 東京消防庁は火気の近くでの使用を控え、通気性の良い場所で使うよう注意を促している。

縫製会社、越前和紙とタッグ

品薄のマスク製造では、各地で和紙が活用される。 縫製会社のファインモード(福井県越前市)は 3 月 13 日、石川製紙(同市)と連携し、越前和紙を使ったマスクを 1 枚 1,650 円(税込み)で売り出した。 外側はポリエステルで、内側のオーガニックコットンをポケット状にしてフィルター用の和紙を入れた。 和紙は 5 枚セット。 4 月には山伝製紙(同市)の和紙を使った商品も加えた。 上坂達朗社長 (57) は「伝統産業を広める意味でも製紙会社とタッグを組んだ。 マスク不足の不安を解消したい。」と話す。

工場直送を売りにする衣料品販売のライフスタイルアクセント(熊本市)も、国産和紙を生かしたマスク(税込み 1 枚 2,090 円)を 4 月 2 日に発売した。 和紙の繊維を平織りした布をフィルターにした三重構造で、外側と内側の布は和紙の繊維と綿の糸で編まれている。 洗って繰り返し使える。 繊維会社のキュアテックス(東京)の福井工場と提携し、ライフ社のブランド「ファクトリエ」でネット販売した。 申し込みが殺到し、約 2 カ月待ちだ。

紡績・ニット製造の佐藤繊維(山形県寒河江市)も 4 月 6 日に和紙の繊維を使った洗えるマスク(同 2,970 円)を発売。 和紙繊維にポリエステルやナイロンをより合わせた糸を使い、縫い目がなく肌触りが良いという。 担当者は「和紙繊維は速乾性が高く、細菌が発生しづらい」と話す。

聖路加国際大の大西一成准教授(公衆衛生学)によると、マスクを着ければ汚れた手で口や鼻を触ることを防ぎ、感染者ならウイルスを含む大きな飛沫の拡散を防ぐことが期待できる。 ただ、通常のマスクに使われる不織布は、通気性とウイルスを捕らえる機能のバランスを考えて作られているが、和紙そのものは植物繊維が絡みあって空気を通しにくいため、顔とマスクの隙間などからウイルスが入り込む可能性があると、大西准教授はみる。 「過信せず、着用しても密集した場所は避けてほしい。」 (平畑玄洋、asahi = 5-10-20)

◇ ◇ ◇

余ったビールを消毒用に アサヒとキリン、無償で提供へ

アサヒビールとキリンビールは 8 日、余っているビールを消毒用アルコールにするため、茨城県の酒類メーカーに無償で提供すると発表した。 ビールを蒸留して高濃度のエタノールを取り出し、5 月中旬から同県内の自治体に無償で提供する予定だ。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う飲食店の営業自粛の影響で、業務用につくられた大量のビールが行き場をなくしている一方で、消毒用アルコールは不足している。 4 月からウイスキーの原酒を消毒用アルコールとして販売している木内酒造(茨城県那珂市)は、キリンとアサヒに余ったビールの活用を提案し、3 社の協業が実現した。 キリンは取手工場、アサヒは守谷工場から、それぞれ 1 万 2 千リットルのビールを木内酒造の蒸留所に提供。 高濃度エタノール 1,260 リットルができる見込みで、茨城県や取手市、守谷市など 3 社の施設がある自治体に提供する。 費用は 3 社で負担する。 (若井琢水、asahi = 5-8-20)