EU 環境政策に 122 兆円 50 年、温室ガス「ゼロ」へ 「孫世代の利益のため」

欧州連合 (EU) 欧州委員会は 14 日、今後 10 年で気候変動対策などの環境政策に官民で少なくとも 1 兆ユーロ(約 122 兆円)を投じる計画を発表しました。 ロイター通信が報じました。 欧州委のヨハネス・ハーン委員は同通信に、「気候変動の破滅的事態を防ぐため」の投資だと強調。 「孫世代の将来の利益のため」の行動だと訴えました。

1 兆ユーロを投じるのは「持続可能な欧州投資計画」です。 同計画は、昨年 12 月に就任したフォンデアライエン欧州委員長が主要政策と位置付ける「欧州グリーンニューディール」の一環。 加盟国が石炭火力発電依存から脱却するのを支援し、2050 年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標の実現を目指します。 欧州委によれば、1 兆ユーロの約半額は EU 長期予算から拠出。 加盟各国政府から 1,000 億ユーロ以上の共同出資を引き出します。

また、民間資金から約 3,000 億ユーロを集めます。 ポーランドなど石炭火力に依存する加盟国向けの対策資金として、公正移行基金 (JTF) が残り 1,000 億ユーロを投資します。 EU は、域内の競争条件をゆがめる恐れのある国家補助を原則禁じた規制を年末までに見直す予定です。 各国政府は再生可能エネルギーや、鉱山の閉鎖で解雇された労働者への支援などをすることができるようになります。

昨年 12 月の EU 首脳会議でポーランドを除く各加盟国は、気候変動を抑制するため 50 年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすると合意。 ポーランドは発電を石炭火力に頼っているため、目標を拒否していました。 ハーン氏は、同国が目標を共有するために「十分な投資額だろう」と述べました。 (しんぶん赤旗 = 1-16-20)


温暖化でアマゾンの最大 16% 燃える? 米科学誌が発表

温暖化に伴う暑さや乾燥で熱帯林アマゾンで発生する森林火災が増え、2050 年までに、ブラジルのアマゾン南部では熱帯林の最大 16% が燃える可能性があると、米国とブラジルの研究チームが 10 日付の米科学誌サイエンス・アドバンシズで発表した。 最大 170 億トンの温室効果ガスを排出する可能性があると指摘している。 論文によると、2010 年までの 10 年間、アマゾンで 8 万 5 千平方キロメートルの原生林が火災で焼けた。 大部分が 05 年と 10 年の干ばつによるものという。

論文は気候変動によって干ばつの頻度や規模が大きくなる可能性が高く、それによって森林火災が増えると指摘。 大半の熱帯林火災は1ヘクタールあたり 20 - 60 トンの炭素を放出し、火災後の樹木が枯れて分解されることで数十年間にわたり温室効果ガスを排出するという。 こうしたデータに基づき、ブラジルのアマゾン南部についてシミュレーションしたところ、現状のように温室効果ガスの排出が多いままでも、低く抑えた場合でも、森林火災は増えた。

排出が多いケースだと、伐採で一層の森林減少があると、火災によって 10 - 50 年に計 22 万 3 千平方キロメートルが焼失、170 億トンの二酸化炭素 (CO2) など温室効果ガスが排出されると推定した。 新たな森林伐採がない場合に比べて焼失面積は 30%、温室効果ガスの排出は 22% 多くなる。 伐採により乾燥化が進むためと考えられる。 研究チームは、森林火災が、アマゾンを炭素の吸収・貯蔵源から排出源に変える恐れがあると指摘したうえで「新たな伐採を避けることで、火災が原因の温室効果ガス排出を大幅に削減できる」としている。

論文は(https://advances.sciencemag.org/content/6/1/eaay1632)で読める。 (神田明美、asahi = 1-11-20)


韓国、PM2.5 削減へ 2 兆円弱 検出の 3 割は中国から

韓国政府が今年から、大気汚染の改善に向けた取り組みを本格化させる。 5 年間で PM2.5 (微小粒子状物質)の平均濃度を 35% 以上削減する目標を立て、約 20 兆ウォン(約 1 兆 8,500 億円)を投じる。 検出される PM2.5 の 3 割は中国由来で、政府は中国にも削減の協力を求める考えだ。 韓国では毎年、中国からの北西の風が吹く冬から春先にかけて大気汚染が悪化する。 PM2.5 は日本の環境基準で 1 日平均で 1 立方メートルあたり 35 マイクログラムだが、韓国環境省が同 50 マイクログラムを超えるなどして出した注意喚起は昨年 12 月以降で、計 5 回に上る。

韓国政府の提案で 2013 - 17 年に日中韓で PM2.5 の越境移動についての共同研究を実施。 それによると、韓国の主要都市で 17 年は国内由来の PM2.5 が 51% を占めたのに対し、中国からの流入も 32% に上っていた。 研究の責任者を務めた釜山大の金哲熙教授は「公表した報告書の数値は、中国の意向で夏も含めた年平均になった。 冬から春の期間に絞れば中国の影響はもっと大きい」と指摘する。 こうした結果を踏まえ、政府は総合計画を策定。 文在寅(ムンジェイン)大統領は 7 日の新年の辞で「大気の確実な変化を作る」と述べた。

計画では、16 年に年間平均で 1 立方メートルあたり 26 マイクログラム(日本の約 2 倍)だった PM2.5 の平均濃度を、24 年までに 35% 以上減らす。 ▽ ばい煙や粉じんを排出する零細企業の設備支援、▽ 旧式のディーゼル車の買い替え促進、▽ 地下鉄駅構内に空気浄化装置を設備、▽ 保育所や高齢者施設の空調点検 - - などの対策を進めるという。 韓国外交省の関係者は「大気汚染の問題はこの地域の共通の課題であり、中国や日本との協力を進めなければならない」と話す。 (ソウル = 鈴木拓也、asahi = 1-9-20)


台湾洋上風力、官民後押し メガバンク融資に貿易保険

台湾で計画中の洋上風力発電プロジェクトを日本の官民が後押しする。 3 メガバンクは、三菱重工業とデンマークの風力大手ヴェスタスが折半出資する MHI ヴェスタスが風車を輸出する契約に融資をする。 この一部に政府系の日本貿易保険 (NEXI) が損失をカバーする貿易保険を引き受ける。 洋上風力で先行する台湾を足がかりにして、アジアでの需要を取り込みたい考えだ。

MHI ヴェスタスによる風車タービンの輸出に対する融資契約は 8 日に調印する見通しだ。 三菱 UFJ 銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の 3 行がドイツ銀行や香港上海銀行などと協調して計 1 千億円弱を融資する。 NEXI がこのうち最大 450 億円分について保険を引き受ける。 日本の再生エネ関連の貿易保険では過去最大規模という。 デンマークの政府系金融機関も融資の一部に貿易保険を提供する。

台湾には浅瀬の海に囲まれた洋上風力の適地とされる場所が多い。 台湾は 25 年までに 570 万キロワットという高い目標を掲げる。 JXTG エネルギーが双日や中国電力などと共同で開発を進めるほか、デンマークのアーステッドなど海外勢も発電計画を立てており、アジアの中で有望な市場と位置づけられている。 日本政府は 19 年 6 月に「インフラシステム輸出戦略」をとりまとめ、再生可能エネルギーや水素などのインフラを積極的に海外展開していく方針を打ち出した。 台湾の洋上風力プロジェクトを官民で支えることで、技術やノウハウの蓄積を狙う。

洋上風力は国際的に市場拡大が見込まれる。 国際再生可能エネルギー機関によると、30 年までに世界では現在の約 10 倍の 2 億 2,800 万キロワットが導入される見通しだ。 これまでは欧州が先行してきたが、今後は石炭火力が主力のアジアで需要が伸びるとみられている。 (nikkei = 1-6-20)


独、再生エネ発電が逆転 昨年 46% 化石燃料上回る

【フランクフルト = 深尾幸生】 ドイツの発電量に占める再生可能エネルギーの比率が 2019 年に初めて化石燃料を逆転した。 太陽光や風力などの再生エネの発電シェアは 18 年から 5.4 ポイント上昇し、46% に達した。 石炭などの化石燃料は約 40% だった。 英国でも原子力を含めた二酸化炭素 (CO2) 排出ゼロの電源が初めて化石燃料を上回り、欧州の脱炭素を裏付ける結果となった。

ドイツは風力発電が 24.6% で電源別発電量でトップに

独フラウンホーファー研究機構太陽エネルギー研究所 (ISE) が 2 日、ドイツの 19 年の純発電量をまとめた。 企業の自家発電は含まない。 1 年間の発電量 5,155 億 6 千万キロワット時(515.56 テラワット時)のうち 24.6% を風力が占め、最大の電源となった。 発電量は 18 年比 16% 増え、シェアは 4.2 ポイント上昇した。 太陽光のシェアは 0.6 ポイント上がり 9.0% だった。 バイオマスと水力もそれぞれシェアを伸ばし、再生エネ全体で 237 テラワット時となり、化石燃料の 207 テラワット時を上回った。

化石燃料では品質の悪い褐炭が 4.4 ポイント減、石炭が 4.5 ポイント減とそれぞれ大きくシェアを落とした。 発電量でもそれぞれ 22.3%、32.8% 減った。 天然ガスはシェアが 3.1 ポイント上昇し、10.5%、22 年までに運転をすべて停止する原子力は 0.5 ポイント増の 13.8% だった。 フラウンホーファー ISE は、再生エネの逆転の理由について「発電費用の安い再生エネの拡大で、欧州排出量取引制度 (EU-ETS) の排出枠価格が上昇し、CO2 排出の多い褐炭などの発電では利益が出なくなっている」と指摘する。

英米ナショナル・グリッドによると、英国では 19 年に風力・太陽光・水力・原子力を合わせた CO2 排出ゼロの発電量シェアが 48.5% となり、化石燃料の 43.0% を初めて上回った。 欧州連合 (EU) は 19 年 12 月、2050 年に域内の CO2 の純排出をゼロにする目標で合意した。 自動車などの電動化が柱のひとつで、動力となる電気を生み出す発電の脱炭素が実現のカギを握っている。 (nikkei = 1-4-20)


「地球環境の殿堂」に IPCC など 京都

京都府と京都市などは、地球環境の保全に尽くした人らをたたえる「KYOTO 地球環境の殿堂」に、IPCC (気候変動に関する政府間パネル)と、メアリー・ロビンソン元アイルランド大統領 (75) を選んだ。 来年 2 月、京都市左京区の国立京都国際会館で表彰式がある。 「殿堂」事務局によると、アフガニスタンで今月銃撃されて亡くなった NGO の現地代表・中村哲医師ら、過去 10 年で 24 人が選ばれている。 IPCC は 1988 年設立の政府間組織で、195 の国と地域が加盟。 気候変動に関する報告書などを発表し、温暖化対策に貢献していることから団体として初めて殿堂入りする。

ロビンソン氏は大統領や国連人権高等弁務官を経て、自身の名を冠した財団を設立し、「Climate Justice (気候正義)」を提唱。 気候変動による病気や災害を人権問題だと捉えて解決に努めている。 表彰式は 2 月 11 日午後 1 時から。 2 時 10 分からの「京都環境文化学術フォーラム」国際シンポジウムでは、IPCC 議長(予定)の講演やロビンソン氏のメッセージ上映、専門家や高校生によるパネル討論がある。 定員 1 千人、無料。 申し込みは 2 月 10 日まで、「インターグループ」内運営事務局 (06・6372・3051、earth-kyoto@intergroup.co.jp) へ。 詳細はホームページ (http://www.pref.kyoto.jp/earth-kyoto/) で。 (佐藤美千代、asahi = 12-26-19)


世界を変える超高効率太陽電池 コスト 200 分の 1 へ

ガリウムヒ素 (GaAs) 系の超高効率太陽電池はこれまで、変換効率は現在主流のシリコン (Si) 系太陽電池の 2 倍近くと高いが、製造コストが高価なため、人工衛星など限られた用途にしか使われていなかった。 今、コストを 200 分の 1 に低減する技術開発が進展している。 街乗り用電気自動車 (EV) が必要とするエネルギーの大半を太陽電池で賄えるなど、エネルギー問題のゲームチェンジャーになりそうだ。

街乗りなら充電作業なし

1 日数十キロの街乗りであれば太陽電池だけで EV が走る - -。 そんな世界の到来が急速に現実味を帯びてきた。 ここにきて、GaAs 系の超高効率太陽電池を車体に 1 キロワット分前後と大量に貼り付けた 4 人乗り前後の乗用車の開発例が急増している。 中国・漢能移動能源控股集団(ハナジー・モバイル・エネルギー・ホールディング)は米国の GaAs 系太陽電池メーカーである米アルタデバイセズを 2013 年に買収。 その技術を利用し、16 年に 4 種類のコンセプトカーを発表した。 1 日の太陽光による充電で 80 キロ走るクルマや、太陽電池パネルが可動式で駐車時などはフロントグラスを覆う一石二鳥のクルマなどである。

動きは海外ばかりではない。 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) とシャープおよびトヨタ自動車は 19 年 7 月、トヨタのプラグインハイブリッド車「プリウス PHV」にシャープの GaAs 系太陽電池(約 860 ワット分)を貼り付けたクルマを発表した。 計算上は 1 日分の太陽光充電で 50 キロ前後走るが、これを実証する走行試験を 19 年度末まで続ける。 一般に日本の自家乗用車の走行距離は、国土交通省の 04 年の調査で 1 日平均約 29 キロ。 15 年のソニー損害保険の調査でも、自家乗用車の 6 割は 1 日平均 19 キロしか走っていない。 こうしたクルマは、2 - 3 日のうち 1 日晴天であれば、超高効率太陽電池の発電分で走行に必要な電力の大半を賄えることになる。

これらの数字を見ると良いことずくめだ。 しかしこれまで普及していないのには理由がある。 GaAs 系太陽電池の価格が非常に高いのである。 価格は 1 ワット当たり約 5,000 - 2 万円。 一方、大規模太陽光発電システム(メガソーラー)などに用いられている Si 系太陽電池は同 50 円前後であることから、実に100 - 400 倍になる。 乗用車 1 台に実装する 1 キロワット分の GaAs 系太陽電池セルは、500 万 - 2,000 万円する計算だ。

大幅なコスト低減技術が進展

それでも最近になって、大量の太陽電池を貼り付けたクルマの試作が増えてきたのには、このコストの高い壁を大幅に低減する技術開発が進んでいることがある。 それを推進するのは、米国立再生可能エネルギー研究所 (NREL) や NEDO だ。 NREL は既存の GaAs 系太陽電池のコストを 100 分の 1 にするロードマップ、NEDO は 200 分の 1 にするロードマップをそれぞれ描いている。 仮にコストが 200 分の1になれば、発電単価は Si 系太陽電池に並ぶ水準となる。 すると変換効率の高さが大きな強みとなり、Si 系太陽電池の大部分が GaAs 系に置き換わる可能性も出てくる。 同面積であれば、発電出力は Si 系の 1.5 - 2 倍となり、世界や日本のエネルギー問題の軽減に大きく寄与することにもなる。

NREL と NEDO のコスト低減のシナリオの大枠はよく似ている。 NEDO によるコスト 200 分の 1 化計画は具体的にはこうなる。 まずはおよそ 4 種類の技術的な改善で製造コストを 10 分の 1 にする。 具体的には、(1) 現在のコストの約 3 割を占める GaAs 基板を「ELO」という技術で太陽電池から剥離し、繰り返し再利用できるようにする、(2) 太陽電池の発電層を 3 分の1以下に薄くすることで、「エピタキシャル成長(エピ成長)」の時間短縮と材料の低減を図る(3)エピ成長の層の一部をSi系太陽電池に置き換えたり、低集光のモジュールにしたりする、(4) 製造装置の革新と製造プロセスの高速化による装置の減価償却の期間短縮や材料の利用効率の向上を図る - - の 4 種類だ。

これらの技術的改善によって、結果としては製造プロセスのスループットも 10 倍以上に向上する。 残る 20 分の 1 のコスト低減は、主に量産規模を拡大することで進める計画だ。 現状の GaAs 系太陽電池の市場規模は年間 1 メガ - 2 メガワット。 これを年間 10 ギガワットと 1 万倍に拡大できれば、量産効果によって自然にそれだけのコスト低減が実現できるとする。 (野澤哲生、nikkei = 12-25-19)


「脱石炭を」南太平洋の大統領、安倍首相に異例の書簡

地球温暖化による海面上昇に直面する南太平洋の島国の大統領が今月、安倍晋三首相宛てに異例の書簡を送った。 「私たちが生き残れるかは日本のような大排出国が野心的な温暖化対策を取るかにかかっている」と切実に訴えている。 書簡は南太平洋に浮かぶ人口約 5 万 8 千人の島国マーシャル諸島のヒルダ・ハイネ大統領が送ったもので、12 月 4 日付。 スペインで開かれた第 25 回国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP25) の期間中だった。

朝日新聞記者が確認した書簡の写しによると、「我々のような海抜の低いサンゴ礁の国々にとって、長期的に生き残れるかどうかは、日本のような大排出国が野心(削減目標)を引き上げられるかどうかにかかっている」と指摘。 日本が掲げる 2030 年度までに 13 年度比で 26% 減という温室効果ガスの削減目標は「我が国の未来を守る助けとなり、日本への最悪の影響を避けるには十分とは思えない」とした。 30 年に少なくとも 10 年比で同 60% 減、再生可能エネルギーの比率も 50% に引き上げることを促した。

また、世界的に石炭火力を使い続けることが、平均気温の上昇を 1.5 度に抑える最大の障害になっていると指摘。 日本政府が 30 年までの脱石炭を約束し、国際協力機構 (JICA) や国際協力銀行 (JBIC) を通して進める海外での石炭プロジェクトを直ちに見直すよう求めた。 COP25 には日本から小泉進次郎環境相が出席し、演説したが、削減目標の引き上げや石炭火力からの排出抑止策などの具体策を打ち出せなかった。

マーシャル諸島は、海面上昇の危機にさらされている。 15 年の COP21 では、欧州連合 (EU) とともに「野心連合」を結成。 気温上昇を 1.5 度に抑える目標の設定や、各国の削減目標を定期的に見直し、引き上げる仕組みを推進して、パリ協定採択で大きな役割を果たした。 昨年 11 月には、世界でいち早く削減目標を更新し、30 年に少なくとも 10 年比 45% 削減し、50 年に実質排出ゼロにする目標を国連に提出している。 日本はパリ協定が採択された COP21 の前も、削減目標の策定が遅れた。 その際も 15 年 3 月、当時の英国のエネルギー・気候変動相から書簡が届き、野心的な削減目標の早期提出を促されていたことが分かっている。 (ワシントン = 香取啓介、asahi = 12-24-19)


「脱トランプ氏で、温室ガス半減」 COP で発言したのは

トランプ政権が代われば、米国の温室効果ガスを今後 10 年間で半分にできる - -。 米大統領選に名乗りを上げたマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長が、スペイン・マドリードで開催された第 25 回国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP25) のイベントに登壇し、こんな計画を披露した。 気候変動対策に消極的なトランプ米大統領と自らの違いをアピールした形だ。

11 月下旬に大統領選への立候補を表明したブルームバーグ氏は 10 日、COP のイベントで「私がここに来た理由はとても簡単。 ホワイトハウスから誰も来ないからだ。」と発言。 トランプ氏が 2017 年 6 月にパリ協定離脱を表明した直後から、「We Are Still In (私たちはまだ中にいる)」という枠組みを立ち上げ、温暖化対策を加速させる自治体や企業などを募ってきた成果を語った。

この日に発表した報告書「アメリカの約束」によると、米国では 25 州や 2 千以上の企業、400 の大学などがパリ協定に賛同し、連携して行動を取っている。 米国の人口の 65%、国内総生産 (GDP) の 68% に相当し、中国を上回る規模という。 これらの関係機関が対策を進めれば、連邦政府が何もしなくても、米国の温室効果ガスの排出を 30 年までに 05 年比で 37% 削減することが可能という。 さらに、連邦レベルの対策が加われば 30 年にほぼ半減することは可能で、パリ協定に沿うことができるという。 ブルームバーグ氏は「選挙が楽しみだ。 米国が(パリ協定の目標実現の)解決策になれる、新たな大統領が生まれる」と話し、自身が当選すれば米国の優先課題として取り組むことを示唆した。

イベントでは、俳優のハリソン・フォード氏も登場した。 「世界の現状と未来に絶望している。 リーダーが代わらなければ、この状況は続く。」と反トランプの色をにじませた。 ブルームバーグ氏は自身の創業したブルームバーグ通信の最高経営責任者 (CEO) で大富豪。 慈善事業家としても知られ、国連の都市・気候変動担当特使も務めた。 米国が支払いを止めた条約事務局への分担金 1 千万ドル(約 11 億円)を肩代わりしているほか、17 年から米連邦政府にかわり、COP で米国の取り組みを伝えるパビリオンの出展も支援している。

米政府は 11 月 4 日にパリ協定からの離脱手続きを正式に始めた。 政府代表団は COP での交渉に参加しているが、温暖化被害の救済策や途上国への資金援助をめぐって後ろ向きな姿勢を取っている。 (マドリード = 香取啓介、asahi = 12-14-19)

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COP25 開幕 温室効果ガス削減目標の上積みなど焦点

第 25 回国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP25) が 2 日、スペインの首都マドリードで開幕した。 温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の本格実施を来年に控え、各国が温室効果ガスの削減目標の引き上げや、新たな排出抑制策を打ち出す機運が高まるか注目される。 パリ協定の運用の具体的な仕組みづくりで合意できるかも焦点だ。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は 2 日の開幕式典で演説。 「私たちは危険な地球規模の加熱を抑え込むための岐路に立っている」とし、「一つの道は降伏だ。 惑星が燃えているのに直面せず事なきを得ようとした世代として本当に記憶されたいのか」などと訴えた。 その上で「世界的な気温上昇を 1.5 度までに抑えるためには、2050 年までに二酸化炭素の実質排出ゼロを達成しなければならない」と呼びかけた。

パリ協定は、産業革命前からの平均気温の上昇を 2 度未満、できれば 1.5 度に抑えるとして、今世紀後半に温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にすることをうたう。 各国は来年、新たな削減目標を提出するが、現在の目標を各国が達成しても 3 度以上の上昇になると指摘されており、一層の削減が欠かせない。 日本からは小泉進次郎環境相が現地入りし、11 日に演説する見込みだ。 主要 7 カ国 (G7) で日本だけが、石炭火力発電所の新設を続け、海外への石炭火力発電プラントの輸出にも乗り出していることから、世界的に NPO などの批判の的になっている。 石炭火力への対策をはっきりと表明できるかが注目される。

ただし、日本政府は 6 月に閣議決定した温暖化対策の長期戦略で、「2050 年までに温室効果ガスの 80% の排出削減」としており、削減目標の引き上げは難しいとみられている。 また、温室効果ガスの排出量が多い石炭火力発電について、長期戦略は「依存度を可能な限り引き下げる」と記し、事実上容認した。 米国のトランプ大統領が先月、パリ協定離脱を正式に通告したことが COP にどう影響するかも注目されている。 開会式には、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)率いる米国議会の代表団が出席した。

また、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん (16) も大西洋横断を 3 日にも終えて参加する予定だ。 彼女が始めた温暖化対策を大人に迫る学校ストライキは世界の若者らに広がっている。

市場メカニズム、実現するか

COP25 で焦点となるのが「市場メカニズム」と呼ばれる仕組みづくりだ。 他国での取り組みで生まれた温室効果ガスの削減分を、自分の国の削減分として計上する際のルールを定める。 パリ協定の運用のためのルールの多くは昨年の COP24 で決まったが、この点は合意に至らなかった。 削減分のやりとりの際、互いの国が適切に自国の排出量に算入しないと、合計が実際の排出量と異なる事態が起こりうる。 こうした「二重計上」を避ける方法も合意を目指す。 日本は、途上国に省エネ製品や技術を提供するなどして温室効果ガス削減に貢献する日本独自の制度に、積極的に取り組んでいる。 パリ協定の枠組みの中でどう扱われるかがポイントとなる。 (松尾一郎、asahi = 12-2-19)


日本と中国 温室効果ガス削減など環境関連 26 事業で合意

日本と中国が省エネや環境分野での協力について話し合う会議が東京で開かれ、国際的な課題となっている温室効果ガスの削減に向けて石炭火力発電所から出る二酸化炭素を再利用するなど、26 のプロジェクトを具体的に進めていくことで合意しました。 今年で 13 回目となる「日中省エネルギー・環境総合フォーラム」には、日中両国の政府や企業関係者などおよそ 800人が参加しました。

この中で梶山経済産業大臣は「多様なエネルギー源を活用しながら『脱炭素化』の歩みを進めることが重要だ。 中国や世界と連携し、イノベーションで経済成長と環境の両立を目指したい。」と述べました。 会議では、地球温暖化対策を話し合う国連の会議、COP25 でもテーマとなっている温室効果ガスの削減について意見が交わされ、中国の石炭火力発電所から出る二酸化炭素を燃料としてだけでなく化学製品の製造過程でも再利用できないか、日中両国が検討していくことで合意しました。

このほか、中国の化学メーカーの工場で発生する副産物の水素をエネルギーとして使う事業に日本の大手商社が協力するなど、合わせて 26 のプロジェクトを具体的に進めていくことで合意しました。 日本としては、二酸化炭素の排出量が世界最大の中国と技術協力を進め、世界全体の削減につなげたい考えです。 (NHK = 12-8-19)


日本最大級メガソーラー 軽米に完成

再生可能エネルギー開発業レノバ(東京、木南陽介社長)が軽米町山内に整備した大規模太陽光発電施設(メガソーラー)「軽米東ソーラー発電所」の竣工(しゅんこう)式は 3 日、同町内で行われた。 同社によると、既に稼働している軽米西ソーラーと合わせた敷地面積、年間発電量は山間地を利用した発電所として日本最大級となる。 「軽米東」は八戸道折爪サービスエリア東側にあり、今月から稼働。 約 304 ヘクタールにパネル約 29 万枚を設置し、最大出力は 80.8MW、年間発電量 8.7 万 MW/時。 「軽米西」は敷地面積約 155 ヘクタールで年間発電量 5 万メガワット時。両発電所を合わせた年間発電量は 13.7MW/時で一般家庭 4 万 1,100 世帯分に上る。 (岩手日報 = 12-4-19)


鍋や自転車のサドル … 漂流ごみに悩む世界遺産・沖ノ島

世界文化遺産の島、沖ノ島(福岡県宗像市)が、漂着する多種多様なごみに困惑している。 今月上旬の宗像市の調査に同行し、回収を手伝いながら環境保全について考えた。 沖ノ島は神領、または社領ともいう。 2017 年に世界文化遺産に登録され、宗像大社が管理する。基本的に神職以外の上陸は不可能だ。 市世界遺産課の説明では年に 10 回程度、島のモニタリング調査をする。 職員は海に入りみそぎをすませてから上陸。 チャーターした海上タクシーで島の外周を巡り、岩や樹木、遺物などの状態のほか、漂着したごみも見て回る。

今回の取材は、市が報道関係者に「島の漁港の範囲に限る」という条件付きで漂着ごみの現状を見る機会を設けたもの。 私を含む報道陣と市職員の計 9 人が、宗像市の神湊港から海上タクシー「宝栄丸」に乗船して、約 60 キロ沖の沖ノ島へと向かった。 漁港一帯には多数の漁具の発泡スチロールやペットボトルが転がる。 なぜか鍋や自転車のサドル、重そうな鉄製の歯車も。そして薬品類のボトルなどが散乱。 ラベルの字には中国語や韓国語も目立つ。堤防の外に積まれた消波ブロックの間に、発泡スチロールのようなものが大量に浮遊。透きとおる海とはまさに正反対な光景に、がくぜんとした。

沖ノ島は、宗像大社の三女神のひとつ、田心姫(たごりひめ、沖津宮)をまつる。 神職は、神を敬い島を守るため、交代で 10 日間滞在。 不審船が島に至近距離まで近づいていないか、といった海上警戒の役目もあり、気の抜けない 10 日間だ。 この日滞在中だった宗像大社の権禰宜(ごんねぎ)で広報部長の長友貞治さん (42) が、漂着ごみの現状を説明してくれた。 長友さんの島での勤めは 19 年目。 「島に漂ってくるごみの量は、風向きと波によって違い、特に台風の後は多い。 台風直後の 6 - 7 年前には岸壁にびっしりと流木やごみが流れ着いたことがあった。」と話した。

大社は沖ノ島を保護するため、毎年 5 月 27 日に島で開いてきた現地大祭を世界遺産登録の翌年の 2018 年から中止する措置をとった。 これで、大祭前に大社の氏子青年会が中心となって進めてきた島の清掃もなくなってしまった。 大社と行政はこれから先、島の保全とどう向き合うのだろう。 市世界遺産課の飯野英明課長 (46) はごみを前に、「島の現状を発信して、子どもたちへの啓発やごみの回収といった地道な活動を続けていく」と言った。 10 人が約 40 分の作業で集めたごみは、乗ってきた海上タクシーで神湊港に運び、市の軽トラック 2 台に積み込まれた。 滞在時間の制約があって島を後にしたが、ごみは、まだたくさんあった。

福岡県宗像市の玄海東小では 10 月、子どもたちが沖ノ島について学ぶ授業があり、島に流れ着いたごみの問題が取り上げられた。 市世界遺産課の再任用職員、岩佐芳弘さん (62) は、捨てられたごみが海を漂い、プラスチックはやがて砕け、マイクロプラスチックとして海を汚すことを話した。 魚が食べ、それが内臓から出てくることもあると説明した。 「ドイツやオマーンでは景観や自然を守れずに、登録を取り消された世界遺産もある」という事例も紹介。 「自然を守るのも壊すのも人間だ」と語りかけた。

宗像大社の権禰宜(ごんねぎ)で広報課長の鈴木祥裕(よしひろ)さん (34) は、沖ノ島で神職が集めたペットボトルや漁具、靴などのごみが入った網袋を掲げて見せた。子どもたちは一斉に驚いた顔に。松本千宏君 (9) は「ごみは、魚にとっては凶器になると思いました」と感想を話した。 (上田真仁、asahi = 12-1-19)


仏トタル、日本で洋上風力発電を検討 メガソーラーと両輪で

仏エネルギー大手のトタルが日本での洋上風力発電事業に参入する検討に入った。 具体的な事業の開発に向けて複数の企業と交渉を始めており、早期に投資決定にメドをつけたい考え。 トタルは日本では大規模太陽光発電所(メガソーラー)の運営に参入済み。 新たな事業機会の開拓余地が大きい洋上風力との両輪で、日本の再生可能エネルギー市場で基盤を強化する狙いだ。

トタルは国際石油資本(メジャー)の中でも、米エクソンモービルなどスーパーメジャーと呼ばれる大手の一角を占める。 日本での再生エネ事業の投資戦略はフランスの本社が指揮し、日本支社が地元企業との交渉などを担う。 日本支社事業開発部の榊田剛ジェネラル・マネージャーが「洋上風力発電の事業化に向けて複数の事業者と交渉している」と明らかにした。 一定の進展がみられているもようで、今後、特別目的会社 (SPC) の出資比率など詳細を詰め、早期に事業化を決める考えだ。

風力設備の様式としては「(風車を洋上に浮かべる)浮体式も視野に入れている(榊田氏)」という。 トタルは 60 万キロワットの大型案件の入札に参加した実績もあり「建設や資金調達のノウハウを生かして日本でもコストを下げることは十分に可能(同)」とみている。 洋上風力には浮体式のほか、風車の支柱を海底に施工する「着床式」がある。 遠浅が少ない日本は着床式の適地が限られる一方、浮体式は着床式に比べて開発コストが大幅に高いとされる。

一方トタルは 10 月、宮城県で出力 5 万キロワット超のメガソーラーの建設に着工。 2017 年に日本の太陽光発電市場に参入して以来、稼働済み・建設中の計 3 カ所の太陽光発電所の合計出力は約 10 万キロワットに上る。 エネルギーの消費・生産の両方の側面で「脱炭素」の流れが強まるなか、トタルは全社的に再生エネ事業やガス事業を強化する方針を掲げている。 25 年には、19 年末に 300 万キロワットを見込む再生エネの世界での発電容量を 2,500 万キロワットまで引き上げる計画を打ち出しており、日本での再生エネ事業にも注力していく構えだ。 (湯前宗太郎、nikkei = 11-18-19)


日本より二酸化炭素削減率高い 米パリ協定離脱影響は

米国が温暖化対策の国際ルール「パリ協定」からの脱退を国連に通告した。 トランプ大統領はすでに 2 年以上前に脱退を表明しており織り込み済みで、米国内の温室効果ガス排出量も減少している。 ただ、気候危機を回避できるかどうかは時間との闘いになっており、大国の対策が遅れれば、温暖化の影響を拡大しかねない。

産業界実利ある温暖化対策取り組む

米連邦政府はパリ協定を敵視するが、米国内には協定を支持する声も強い。 2017 年発表の宣言「We Are Still In (私たちはまだパリ協定にいる)」には、企業や自治体、大学などのリーダー 3,800 人以上が署名。 傘下に 1 億 5 千万人がおり、人口で米国の 65%、GDP で 70% を占めるという。 米国のメタンなどを含む温室効果ガス排出量(CO2 換算)も減っている。 17 年は約 64 億 6 千万トンで、05 年より 12% 減。 パリ協定の米国の削減目標である「25 年に 05 年比 26 - 28% 減」をすでに半分近く達成している。 石炭からシェールガスへの燃料転換が大きいとみられるが、再生可能エネルギーも大きく伸びている。

17 年 8 月から 1 年間イリノイ州の大学で教壇に立った小林光・東京大学客員教授(環境経済政策)は「ワシントンでの政治対立とは別に、地方や産業界は実利のある温暖化対策に取り組んでいる。 CO2 削減率は日本より高い。」と言う。 国際的にも企業や自治体などによる取り組みが進む。 実際に脱退できるのは通告から 1 年後の来年 11 月 4 日。 米大統領選の翌日になるが、「短期的には国際的な影響はない。 世界が脱炭素に向かう姿勢は揺るがない。」と、地球温暖化を巡る国際交渉に詳しい高村ゆかり・東京大教授(国際法)は言う。 再生可能エネルギー拡大による大気汚染の改善や無電化地帯の解消は、途上国にもプラス効果をもたらす。

対策強化にブレーキ、中長期的には影響も

ただ、中長期的には懸案もある。 パリ協定が目指す産業革命以前からの気温上昇を 2 度未満や 1.5 度未満に抑えるためには、各国で温室効果ガスを減らす対策の強化が欠かせない。 だが、世界 2 位の排出国の脱退は、対策の強化に反対する勢力を説得する際に障壁になりかねないという。 来月スペインで開かれる第 25 回国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP25) への影響を、専門家はどうみているか。

昨年 12 月にポーランドで開かれた COP24 を現地で見守った世界自然保護基金 (WWF) ジャパンの小西雅子さんは「米国は少なくとも今までよりは仕事がしにくくなるだろう。 ただ、COP は技術的なことを粛々と決める場なので、米国が離脱手続きを進めていても、何事もなかったように進むと思う。」と話す。 COP24 では、20 年からのパリ協定本格実施に向けて詳しい運用ルールが決まり、先進国と途上国が共通のルールのもとで取り組むことになった。 そこで共通ルールを強く主張した国の一つが、一昨年にすでに脱退を表明していた米国だった。

京都議定書では先進国のみに排出削減義務が課されたために米国が締結しなかった経緯がある。 共通ルールなら、米国が将来的にパリ協定に再び戻ることになった際にも、ハードルが低いとみられている。 一方、小泉進次郎環境相は 5 日の閣議後会見で米国の脱退通告を「非常に残念」としながら、「COP の場で(米国との)対話を継続することはできる」と語った。 (神田明美、編集委員・石井徹、asahi = 11-14-19)


超大型洋上風力発電機を開発 中国初

中国重慶市科学技術局高新技術処によると、中国船舶重工集団海装風電股●(= 人偏に分)有限公司(中国海装)の研究者が風力タービン直径 210 メートルの洋上風力発電機 H210-10MW の開発に成功した。 中国の超大型洋上風力発電機の空白を埋める快挙だ。 この洋上風力発電機は 1 基の容量が 10 メガワットで、中国初となるタービン直径 200 メートル以上の発電機。 中国電力科学研究院が設計認証証書を交付した。 (新華社/AFP = 11-11-19)


四国電、増える太陽光発電 迫る出力制限の影

記事コピー (11-3-19)


世界最大の洋上風力発電 イギリス、再生可能エネルギーが化石燃料発電を上回る

<英国で最初の発電所が稼働を始めた 1882 年以来初めて、再生可能エネルギーによる発電が化石燃料による発電を上回った。>

40% が再生可能エネルギーによる発電

英国における発電史上初めて、再生可能エネルギーを利用した発電量が、化石燃料を使った発電量を上回ったことがこのほど明らかになった。 気象科学、気象政策、エネルギー政策に関する情報を発信する英国のウェブサイト、カーボン・ブリーフが明らかにした。 今年の第 3 四半期(7 - 9 月)、風力、ソーラーパネル、バイオマス、水力など「再生可能エネルギー」による発電は、29.5 テラワット時に達した。 同時期、化石燃料による発電量は 29.1 テラワット時だった。

カーボン・ブリーフは、英国で最初の発電所が稼働を始めた 1882 年以来初めて、再生可能エネルギーによる発電が化石燃料による発電を上回ったことになるとしている。 第 3 四半期の全発電量に占める割合を種類別に見ると、石炭、石油、ガスによるものが約 39% (内訳はガス 38%、石炭と石油の合計が 1% 未満)だった。 一方で再生可能エネルギーは、約 40% (内訳は風力 20%、バイオマス 12%、太陽光 6% など)に達した。 残りの約 20% のうち最大は原子力発電で、全体の 19% を占めたという。

世界最大の洋上風力発電所などが後押し

再生可能エネルギーの発電量が増えた理由のひとつに、複数の発電施設が 2019 年に稼働を開始したことが挙げられる。 ヨークシャー沖に位置するホーンシー・プロジェクト・ワンは、今年の 2 月に電力の供給を開始。 BBC によるとこの発電所は、2020 年に完成してフル稼働となった場合、世界最大のオフショア風力発電所となる。 また今年 7 月には、スコットランド最大のオフショア発電所となるベアトリス・オフショア風力発電所が稼働を開始した。

一方で英国政府は、炭素捕捉技術を採用していない石炭火力発電所は 2025 年までにすべて閉鎖する方針を打ち出している(ロイター)。 2020 年 3 月には英国全土で稼働している石炭火力発電所は 4 カ所のみとなるため、カーボン・ブリーフは、2025 年の目標よりもかなり速いペースで閉鎖が進んでいるとしている。 ただし、2019 年を通年で見た場合に、再生可能エネルギーが化石燃料を上回る可能性は低いとの見通しをカーボン・ブリーフは明らかにしている。

2050 年の目標達成は見込み薄

英ガーディアン紙によると、エネルギー担当閣外相のクワシ・クワーテング氏は、再生可能エネルギーの発電量が化石燃料を上回ったことは、2050 年までに英国の気候変動への寄与を終わらせるという目標に向けたマイルストーンに沿っているとの見解を示した。 英国は、2050 年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出を実質的にゼロとする)になることを法的義務としている。 「英国は 1990 年以来、経済を 3 分の 2 成長させた一方で、炭素排出量をすでに 40% 削減した」とクワーテング閣外相は自信をのぞかせた。

しかしカーボン・ブリーフは、2050 年までにカーボンニュートラルにするという目標を英国が達成できる可能性は低いとの考えを示している。 電力セクターでの進展をもってしても、暖房や運輸からの炭素排出を抑えない限り、達成できないという。 なお、第 3 四半期に 12% を占めたバイオマスに関しては、ゼロカーボン(炭素排出量ゼロ)にはならない。 場合によっては化石燃料よりも二酸化炭素の排出量が増えるため、英独立行政機関である気候変動委員会 (CCC) は、大規模なバイオマス発電所からは「離れる」べきだとの見解を示しているという。 (松丸さとみ、NewsWeek = 10-28-19)