「就職氷河期」支援に 650 億円超 政府が行動計画

30 代半ばから 40 代半ばとされる「就職氷河期世代」を支援する行動計画を、政府がとりまとめた。 この世代に対象をしぼった事業の費用として今年度の補正予算案に 66 億円、来年度の当初予算案に 199 億円を計上。 2022 年度当初予算までの 3 年間で計 650 億円超を確保する。 政府は、この世代の正規雇用者を 22 年までに 30 万人増やすことをめざす。

支援対象者が研修に参加するための交通費や奨学金の返済などを支援。 国家公務員への中途採用については、まずは内閣府と厚生労働省が今年度中に公募を始める。 支援策は、都道府県や市町村ごとに行政と支援団体などが話し合う「プラットフォーム」などでも検討していく。 西村康稔経済再生相は 23 日、内閣府で支援団体の代表者らに行動計画の内容を説明した。 ひきこもり UX 会議の林恭子代表理事は「当事者の意見を採り入れていただいたのが大きかった。 今後も、まずは当事者らが本当に必要なものは何か聞いて一緒に考えていく姿勢でお願いしたい。」と話した。 (asahi = 12-25-19)

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「就職氷河期世代」限定の採用、2 カ月で正規雇用 16 人

「就職氷河期世代」の就職を後押しするため、厚生労働省が 18 カ所のハローワークで特例として行っている 35 - 54 歳に限った求人に対し、10 月末までの約 2 カ月間に 434 件の求人が寄せられ、16 人が正規雇用に採用された。 厚労省が 29 日公表した。 今のところ求人は運輸業や製造業など人手不足の業種に偏っており、人気の高い事務系の職種は少ない。 厚労省は来年度、全国約 60 のハローワークに専門窓口を設ける方針で、「さらなる求人増につなげたい」としている。

政府は今年 6 月、バブル経済が崩壊し、採用が冷え込んだ時期に社会に出た 30 代半ばから 40 代半ばの世代の就職を後押しする方針を打ち出した。 今後 3 年間を集中的に取り組む期間と決め、正規雇用を 30 万人増やす目標を掲げる。 厚労省は 8 月末、企業の採用に年齢制限を設けることを禁じた法律の例外に就職氷河期世代をあてはめ、35 歳以上 55 歳未満に限った求人ができるようにした。 これまでに大阪府や兵庫県など西日本を中心に 18 カ所のハローワークで専門窓口をつくっている。

一方、年齢を問わず、職業経験も重視しないなど、支援の趣旨に沿った「歓迎求人」は 1,073 件あり、64 人が採用された。 このうち求人の 7 割超を愛知県などの中部地方が占めたという。 愛知県では、地元の経済界や労働・福祉団体などと手を組んで就業支援を始めた。 政府は今後、愛知県などの取り組みを全国の自治体に広げる。 (asahi = 11-29-19)

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「砂漠に 1 滴の水」に反響 各地で氷河期世代採用の動き

「就職氷河期世代」とされる 30 代半ばから 40 代半ばの人を対象にした正規職員の採用試験を実施した兵庫県宝塚市が近く、結果を発表する。 募集した 3 人の枠に全国から応募が殺到し、倍率が 600 倍を超える反響があった。 同様の取り組みは各地に広がり始めた。 就職氷河期世代は不景気の影響で新卒時に正規雇用の道を閉ざされ、いまも非正規で働く人が多い。 そこで行政機関が率先して安定した働き方を提供しようと、宝塚市は 7 月、就職氷河期世代を対象にした採用試験の実施を打ち出した。

事務職員 3 人の募集枠に全国から計 1,816 人が応募。 筆記の 1 次試験は 1,635 人が受験し、グループワークなどの 2 次試験には約 170 人が挑んだ。 今月 4 日にあった最終面接の 3 次試験には、20 人が臨んだ。 「挫折や苦労の経験を生かしたい。」 市内で小中学生の子ども 2 人を育てる女性 (45) は最終面接を終えた後、報道陣に話した。 宝塚市内から熊本県の私大に進学。 就職活動は厳しかった。

就職説明会で採用担当者との面談を希望しても、「予定はいっぱい」と断られ続けた。 電話などでアプローチした 100 社のうち、採用試験を受けられたのは 10 社ほど。ようやく関西の外食関連会社に入社できた。 大学ではチーズの研究に取り組んでおり、社長から「社内で続けて」と言われたが、かなうことはなく気落ちした。 店舗運営を指示され、2 カ月で退社した。

宝塚市内の実家に帰り、フィットネスクラブでアルバイトを始めた。 結婚後、長女の出産を機に専業主婦に。 だが夫と別居後に「生活費を払いたくない」と言われ、4 年前からレジャー施設で働き始めた。 月収は手取りで約 12 万円。 実家に戻り、夫と今春に離婚した。 職場の仕事が増え、小中学校の PTA 役員も任せられ、余裕がなくなった。 今後の人生設計を考えたいと 8 月に仕事を辞めた頃、宝塚市の採用試験を知った。

ママ友が子育てを手伝ってくれるなど地域に支えられてきた。 一方で地元は少子化が進み、自身の小学校時代と比べ長男の学級数は半分になり、寂しさも感じる。 「地域の役に立てる仕事をしたり、宝塚の良さを発信してより住みやすい街づくりに関わったりしたい。」 そんな思いで試験に臨み、結果を待っている。 「宝塚市だけでは砂漠に一滴の水を落とすようなもの。」 中川智子市長は、他の自治体などに就職氷河期世代の人々を安定的に雇うよう訴えてきた。 採用試験の実施の発表以降、各地で同様の動きが出てきた。

兵庫県内では、三田市が就職氷河期世代を対象に事務職の正規職員 1 人程度を採る方針を決め、10 月から募集を始めた。 加西市も今月から応募を受け付け始め、事務職と建築職を若干名採用する。 赤穂市、太子町は事務職での採用を予定。 障害者施設などを運営する県社会福祉事業団も 10 人程度の採用を予定し、武庫川女子大学などを運営する武庫川学院(兵庫県西宮市)は事務職など 1 - 3 人を募集している。 兵庫県外でも和歌山県が来年度、正規職員の採用試験を実施する。 募集人員は 5 人程度。 茨城県境町は来春に一般事務 1 人を採用予定で、宝塚市での応募殺到を受け、町の担当者は「実施を決めた」と話す。(太田康夫)

阿部真大・甲南大学教授(労働社会学)の話 宝塚市の取り組みで就職氷河期世代への関心が集まり、同様の支援策が広がっている点は評価できる。 今後は採用に漏れた人を人手不足で悩む企業へつなぐといった支援を担えば、さらに手厚い施策となる。 ただ課題の根本的な解決には、非正規から正規にキャリアアップできる仕組みづくりなど、社会全体で働く環境を整える必要がある。 (asahi = 11-8-19)


「脱・日本型雇用」を明記 来春闘方針で経団連

来春闘で経営側の指針となる経団連の「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」の原案が明らかになった。 新卒一括採用や終身雇用、年功型賃金を特徴とする日本型雇用システムのさまざまな課題が顕在化していると指摘し、職務の遂行に必要な能力を持つ社員を配置する「ジョブ型雇用」の活用を含めた人事・賃金制度の再構築を会員企業に促している。 経団連は今月下旬に経労委を開いて細部を詰め、来年 1 月下旬に公表する予定。

原案では、日本型雇用システムについて、社員の安心感となって、高い定着率やロイヤルティーにつながっていると評価する一方、転職の阻害要因となり、人材の流動化を妨げている面があると指摘した。 そのうえで、日本型雇用システムをいかしながら雇用の多様化を図ることを提言している。 中西宏明会長(日立製作所会長)はかねて、「終身雇用は制度疲労を起こしている」との持論を展開している。 デジタル化で企業の主力事業が変化し、それに応じた柔軟な雇用が必要との考えが背景にある。 日本型雇用の見直しについては、今春闘の経労委報告でもふれているが、巻末の話題とした程度だったが、来春闘の報告では本文に「格上げ」している。 (加藤裕則、asahi = 12-18-19)


国民・厚生年金の積立金、国が統合検討 支給額減に備え

厚生労働省は、いまは別々に管理している国民年金と厚生年金の積立金の統合を検討している。 相対的に財政が安定している厚生年金の積立金を活用し、将来の年金水準が大きく下がる国民年金の底上げを図るのが狙い。 ただ、制度の独立性に関わるため丁寧な議論が必要で、2025 年の国会への法案提出を目指す。 政府は来年の通常国会に、厚生年金のパートらへの適用拡大などの年金改革法案を提出する方針。 成立後の来年夏以降、積立金の統合について、厚労省は社会保障審議会(厚労相の諮問機関)で具体的な検討を始める予定だ。

公的年金は、1 階部分が国民年金(基礎年金)、2 階部分が厚生年金になっている。財政管理は別々で、それぞれ保険料収入の一部を積立金にして、将来の年金支給に備えている。 17 年度末の国民年金の加入者は約 1,505 万人で、18 年度末時点の積立金は約 9 兆円(時価ベース)。 一方、厚生年金は約 4,358 万人で約 157 兆円だ。

今年 8 月公表の年金財政検証では、夫婦 2 人のモデル世帯が 19 年度に受け取る国民年金と厚生年金の合計額は、現役世代の平均収入の 61.7% (所得代替率)だった。 少子高齢化にあわせて収支のバランスをとるために自動的に年金水準を引き下げる「マクロ経済スライド」が終わるのは、代表的なケースでは厚生年金が 25 年度だが、国民年金は 47 年度まで続く。 47 年度時点の所得代替率は 50.8% に下がるが、水準低下の度合いは厚生年金(基礎年金を含む)が約 2 割なのに対し、国民年金は約 3 割も下がる。

国民年金は今でも、満額で月6万5千円ほど。保険料の納め方次第でさらに少なくなるため、無年金・低年金対策が課題となっている。 厚労省は、国民年金と厚生年金の保険料や年金支給の仕組みは変えずに、積立金を統合することを検討。 統合によって収支のバランスが取れる時期をそろえ、国民年金の引き下げ終了を早めれば、国民年金の所得代替率は、積立金を統合しない場合よりも数ポイント上がると見込む。 自民党が 5 日にまとめた年金制度改革の提言でも、国民年金の底上げについて検討すべきだと指摘している。 (山本恭介、asahi = 12-11-19)


セブン、バイトの残業代 4.9 億円未払い 70 年代から

コンビニ最大手のセブン-イレブンのアルバイトらの残業代の一部が 1970 年代から未払いであることが分かった。 本部のセブン-イレブン・ジャパンによると、資料が残っている 2012 年 3 月以降だけで全国 8 千店以上の 3 万人以上にのぼり、金額は遅延損害金を含めて少なくとも 4 億 9 千万円という。 10 日午後に会見し説明する予定だ。 セブンでは、加盟店がアルバイトらを雇い人件費を負担する。 ただ、給与の計算はセブン本部が代行しており、その計算式が誤っていたことが今年 9 月の労働基準監督署の指摘で発覚した。

時間給で働く従業員が休まずに出勤した場合に払う手当や、職務の責任に対して払う手当について、その残業代の計算の方法が、労働基準法で定められた方法と違っていたことが発覚した。 この計算式は 01 年 10 月から使ってきた。 ただ未払いそのものは 1970 年代から続いてきた。 未払い分を精査し、すべて本部が支払うという。 (神沢和敬、asahi = 12-10-19)


兼業・副業も労災対象に 残業時間の計算見直し、厚労省

労災認定で労働時間は副業も通算

仕事を掛け持ちする人が業務中にけがをしたり病気になったりした場合、労働災害と認定するうえで判断要素となる残業時間の計算方式が見直される。 いまは複数の勤め先があっても残業時間は会社ごとに出すため、労災認定のハードルが高い。 厚生労働省は複数社の労働時間を通算したうえで、法定労働時間を超える残業時間を出す方式に改める。 兼業や副業をする人が増えるなか、いまよりも過労死などが労災に認定されやすくなる。

10 日に開かれた労働政策審議会の部会で見直し案が大筋了承された。 厚労省は正式決定後、来年の通常国会に労災補償保険法の改正案を提出し、早ければ 2020 年度中の施行をめざす。 仕事中のけがや病気で働けなくなった場合に労働基準監督署で労災と認定されると、賃金を元に算出される労災保険が給付される。 だが、いまの仕組みは一つの会社を勤め上げることが前提で、兼業や副業をしている働き手を踏まえた仕組みになっていない。

たとえば本業の A 社で週 40 時間、副業の B 社で週 25 時間働く人が心臓疾患で倒れたとする。 いまの仕組みだと、労働時間は本業が月 160 時間、副業は月 100 時間と会社ごとにみるため、いずれも法定労働時間(週 40 時間)の 4 週分に収まり、どちらの会社も残業時間は「ゼロ」になる。 見直し後は、月の労働時間は合計で 260 時間と計算される。 残業時間は月 100 時間の「過労死ライン」に触れ、労災の認定基準を満たす。

総務省の 17 年調査によると、正社員やパート、派遣などを含めて複数の職場で雇われて働く人は、10 年前よりも約 25% 増えて約 129 万人に達する。 おおむね 3 分の 2 は本業の所得が 299 万円以下だ。 生活費を補うために兼業や副業をしている実態が浮かび上がる。 安倍政権は働き手のキャリア形成のためなどとして、兼業や副業を広げる方針だが、過労死問題に取り組む弁護士などから、労災認定の判断基準の見直しを求める声が出ていた。

厚労省は同時に、労災保険の給付額も、労災が起きた勤め先とほかの勤め先の賃金を通算して金額を決める方式にする。 また、うつ病などの精神障害の労災認定に当たっても、会社ごとに判断していた従来の方法を改め、複数の会社で受けた心理的な負荷を総合して判断するようにする。 労政審では、副業や兼業をしている社員の労働時間を会社がどう把握するかも議論している。 働き手の自己申告に基づき、会社側が合算して管理しやすくする案などが浮上しているが、結論は出ていない。 (滝沢卓、asahi = 12-10-19)


いのちの電話、かけてもかけても話し中 足りない相談員

悩みを聞いてほしくても、なかなか電話がつながらない - -。 自殺防止などに取り組む各地の電話相談で、こうした状況が常態化している。 相談員がこの 10 年で約 1 千人減り、対応できる件数が減っているためだという。

神戸市の女性 (29) は昨春、スマートフォンで「いのちの電話」に電話した。 交際相手から「死んでしまえ」と怒鳴られ、自暴自棄になって自宅を飛び出していた。 「誰かに話を聞いてもらいたかった。」 しかし、何回電話しても「ツーツーツー」と話し中の音が流れるだけ。 ほかの相談電話も 2 カ所ほど調べ、それぞれ数回ずつ電話してみたが、どこも話し中でつながらなかった。 「誰も助けてくれないのか …。」 かえって、絶望感が募ったという。

女性が電話をかけた先の一つが、大阪を拠点にする「関西いのちの電話」だ。 事務局によると、1 年間に受けている電話相談は約 2 万 3 千件。 しかし実際にかかってきている電話は 10 倍以上とみられるという。 電話は毎日 24 時間、ボランティアの相談員が受けている。 1 件あたりの会話の平均時間は 40 分ほど。 2 時間に及ぶこともあるうえ、相談員が足らずに 4 台の電話機をすべて稼働できないときもある。 結果的に一部の電話しかとることができず、大半は話し中の状態だ。

「何時間もかけ続けた」、「いのちの電話まで私を見捨てるのか」

そんな言葉をぶつけられることもあるという。 こうした状況はどこも同じだ。 悩みや孤独感を抱える人の話を聴く「いのちの電話」は、社会福祉法人や NPO 法人が全国で 50 のセンターをそれぞれ運営している。 時間帯にもよるが、横浜でつながるのは 10 回に 1 回程度、名古屋でつながるのは 20 回に 1 回ほどという。 福岡でもここ数年、「10 0回電話してもつながらない」といった苦情が増えているという。 ある相談電話の窓口では平日の夜、相談員が一人で電話を受けていた。 横では、別の電話機が「トゥルルルルル」とひっきりなしに鳴っていた。 スタッフの一人は「着信音は気になるけど、目の前の相談者の話を途中で切るわけにもいかない」とジレンマを口にした。

相談員、10 年で 1 千人減

電話がつながらない最大の要因は、人手不足だ。 各地のセンターによると、人手不足は以前から課題だったが、最近はさらにひどくなっている。 昨年 1 年間に全国のセンターで受けた電話相談件数は 63 万 6 千件で、10 年で 9 万件減った。 かかってくる電話は依然多いが、対応できる件数が減っているという。 受付時間の短縮を迫られたケースもある。 「いのちの電話」とは別に、年間 1 万 1 千件ほどの電話を受けている NPO 法人「国際ビフレンダーズ 東京自殺防止センター」でも、相談員が十数年前と比べて半減した。 午後 8 時から翌日午前 6 時まで電話相談に対応していたが、相談員の負担を軽くする目的もあって、今年 2 月から、曜日によって受付時間を 30 分 - 3 時間半短くした。

日本いのちの電話連盟によると、各センターは寄付を中心に運営している。 相談員はボランティアだ。 全国に計 6 千人いるが、高齢化が進み、この 10 年で 1 千人減った。 以前は、募集すると主婦が多く集まった。 応募者の大幅減の背景には、共働き世帯が増え、仕事や介護などの忙しさがあるとみられる。 また、1 - 2 年間ほどの研修期間があることも応募の壁になっているとみられている。 国の補助を受けて有給で相談員を雇っている窓口もあり、「そちらに人材が流れている」と指摘する声もある。

横浜では年 1 回の募集に 100 人ほど集まることもあったが、最近は 25 人ほどにとどまっているという。 多くの人に応募してもらえるよう、「70 歳未満」としていた応募者の年齢上限を昨年から撤廃した。 厚生労働省によると、2018 年の自殺者数は 2 万 840 人。 9 年連続で減っているが、19 歳以下はほぼ横ばいの傾向が続く。 年末年始はクリスマスや正月で街がにぎわい、孤独を感じている人がさらに孤立を深めがちになる季節。 つぶやきに耳を傾けてくれる電話相談の窓口は重要な存在だ。 ネット上でも「86 回目で電話がつながった。 『死ななきゃ』と思っていたが、やっと救われた気がした。 もう少し頑張ってみます。」といった声があがっている。

東京自殺防止センターは活動の様子を少しでも広く知ってもらおうと、傾聴体験の講座やワークショップを定期的に開き、ホームページやツイッターなどを活用して相談員の募集にあたっている。 同センターの中山町子所長も 20 年ほど相談員を務めてきた。 「電話のやりとりを通して、人との関わりの大切さを学び、自分も成長できる。 やりがいはあるので、多くの人に関心を持ってもらいたい。」と呼びかけている。 (井上裕一、asahi = 12-8-19)

日本いのちの電話連盟
・ フリーダイヤル 0120・783・556 (毎月10 日午前 8 時 - 翌日午前 8 時)
・ ナビダイヤル 0570・783・556 (午前 10 時 - 午後 10 時)
* 各地のセンターの番号は連盟の HP に掲載

東京自殺防止センター
03・5286・9090 (午後 8 時 - 午前 5 時半。火曜日は午後 5 時〜午前 2 時半、木曜日は午後 8 時 - 午前 2 時半)


電通、有罪後も違法残業 ずさんな労務管理に是正勧告

広告大手、電通の東京本社(東京都港区)が、労働基準法と労働安全衛生法に違反したとして三田労働基準監督署(東京)から今年 9 月に是正勧告を受けていたことが分かった。 社員の違法残業や、残業時間の上限を定める労使協定(36〈サブロク〉協定)の違法な延長などを指摘された。 法人としての電通は、違法残業を防ぐ措置を怠った労基法違反の罪で 2017 年に有罪判決が確定したが、その後もずさんな労務管理が続いていたことになる。

関係者によると、是正勧告は 9 月 4 日付。 労基法違反が 2 件、安衛法違反が 1 件で、いずれも、残業時間に罰則付きの上限規制を初めて設けた改正労基法が施行される前の 18 年中の法令違反が対象だった。 電通は 18 年、残業時間の上限を原則として月 45 時間、事前申請すれば月 75 時間に延長できる 36 協定を労働組合と結んだが、上限を超す違法残業を社員にさせたケースが 4 回あった。 いずれも営業関連の部署で、最長で上限の 2 倍以上にあたる月 156 時間 54 分の残業をさせていた。

上限を月 75 時間に延長するために必要な事前申請をせずに、違法に延長したケースも 6 回認められた。 さらに、社員の安全や健康を確保するために社内に設ける安全衛生委員会の運営に際し、最低 1 人を委員とすることが義務づけられている産業医をメンバーに入れていなかった。 委員のメンバーの半数を労働側委員にしなければならない規定にも違反していた。 経営側委員が半数以上を占め、経営側の意見が通りやすい状況になっていた。

電通は朝日新聞の取材に対し、「是正勧告を受けたことは事実。 事務手続き上の問題は、システム対応により速やかに解決を図った。 (安全衛生委員会は)法令にのっとった形式での委員選任を再度実施した。 19 年度は現時点までに 36 協定違反は発生していない。(広報)」などと回答した。 電通では 10 - 15 年、社員に違法残業をさせたとして本支社が相次いで是正勧告を受けた。 労組加入者が従業員の半数を超えていなかったため、15 年 10 - 12 月に本社の 36 協定が「無効」と認定されたこともあった。

15 年 12 月には新入社員だった高橋まつりさん(当時 24)が都内の女子寮で自殺し、16 年 9 月に労災が認められた。 法人としての電通が労基法違反容疑で書類送検され、17 年 1 月に石井直(ただし)社長(当時)が引責辞任。 17 年 10 月に罰金 50 万円の有罪判決が確定した。 後任の山本敏博社長は労働環境の改革を「最優先の経営課題」と位置づけ、18 年末までに 36 協定違反を「ゼロ」にする目標を掲げていた。

電通は今年 2 月に発表した「労働環境改革の進捗状況」で、36 協定の上限を超す残業をした社員が 17 - 18 年度に「一時的に数名みられたものの、現在では解消されている」としている。 (千葉卓朗、編集委員・沢路毅彦、asahi = 12-5-19)

初 報 (10-14-16)


厚労省がパワハラ指針案 「企業の弁解カタログ」批判も

職場での発言やふるまいがパワーハラスメント(パワハラ)かどうかを判断するための厚生労働省の指針案が 20 日、大筋で固まった。 年内にも最終案をとりまとめ、来年 6 月から大企業、2022 年 4 月から中小企業にパワハラを防止する対策をとるよう義務づける。 関係者からは「パワハラとして認める範囲が狭い」との批判もなおくすぶっている。 5 月に成立した改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)は、パワハラを、@ 優越的な関係を背景にした言動で、A 業務上必要な範囲を超えたもので、B 労働者の就業環境が害されることと定義した。

具体的にどんな行為がパワハラにあたるかは指針で定めることになっており、労使代表らで構成される労働政策審議会の分科会で検討。 厚労省は先月の会合で素案を示したが、ハラスメント被害者の支援団体や労働組合などからの批判を受け、20 日に修正案を示した。 この日の議論でさらに修正を加え、労使が大筋で了承した。 修正後の指針案は素案と同様、「身体的な攻撃」や「過大な要求」など、厚労省が定めたパワハラ6類型に沿ってパワハラに当たる例と当たらない例を列挙した。 仕事から外して長期間、別室に隔離することはパワハラに当たるとする一方、新規採用者の育成のために短期間、集中的に別室で研修させることはパワハラではない、とした。

性的マイノリティーなどの性的指向・性自認や、不妊治療などの個人情報を本人の了解を得ずに周囲に伝えることもパワハラに当たるとした。 素案段階でも盛り込まれていたが、「表現が不十分だ」といった指摘があり、修正案では、こうした例がパワハラになると周知・啓発することを企業に義務づけることが明記された。

素案段階から削除された項目もある。 素案では「経営上の理由により、一時的に能力に見合わない簡易な業務に就かせる」ことはパワハラに当たらない、としていたが、削除された。 「退職を促す『追い出し部屋』を許容している」といった批判が労働側などから出たためだ。 同様に、素案では「誤って物をぶつけるなどしてけがをさせる」ことはパワハラに当たらないとしていたが、批判を踏まえて削除した。

パワハラかどうかの判断基準として、素案では「身体的または精神的な苦痛の程度などを総合的に考慮」するとしていたが、「相談した労働者の心身の状況や受け止めなどの認識にも配慮」する、との一文を加えた。 参院の付帯決議が「労働者の主観」にも配慮するよう求めていたにもかかわらず、素案に反映されていないとの野党などの批判を踏まえた形だ。

判断例、解釈次第で対象狭めかねず

労働者側委員である連合の井上久美枝氏は分科会終了後、「100 点満点ではないので、不満が残るところはあると思う」と語った。 パワハラかどうかの判断例は、表現が抽象的なため、解釈次第でパワハラの対象を狭めかねない。 判断例は「企業の弁解カタログ(日本労働弁護団)」との批判がくすぶる。 企業が防ぐように求められているのは「業務を遂行する場所」で起きたパワハラだ。だが、パワハラの実態に詳しい新村響子弁護士によると、居酒屋で上司が部下を激しく叱ったり、けがをさせたりすることもあり、こうした例が漏れる恐れがあるという。

民事訴訟では「職場外」の行為でも会社側の責任が認められることがあるという。 新村弁護士は「企業は指針の対象外だからといって対策を取らないと訴訟で足をすくわれる。 定義が狭いことは労使ともに良くない。」と指摘する。 企業に防止策を義務づける労働者は、正社員やパートタイムなどの非正規雇用者だ。 雇用関係にない就活中の学生やフリーランス(個人事業主)などは対象外で、指針案では「必要な注意を払うよう配慮」を企業に求めるにとどまる。 対象範囲を広げるよう求める意見も出たが、施行が半年後に迫る中、厚労省は修正に応じなかった。 (滝沢卓、内山修、asahi = 11-21-19)

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「心の病」の労災、認定まだ 2 - 3 割 パワハラ立証に壁

トヨタ自動車の男性社員(当時 28)が自殺したのはパワハラが原因だったとして、豊田労働基準監督署(愛知県豊田市)が労災認定した。 認定をめぐって、死に至った原因がパワハラだと立証するのは簡単ではない。 長時間労働による過労死の場合は、建物の入退時間やパソコンの使用履歴などの客観的なデータが集められる。 これに対し、パワハラの場合は本人のメモなどがあっても、録音や同僚の証言などの「裏付け」が求められることが多く、「ハードルが高いのが実情(労災や過労死問題に詳しい川人博弁護士)」だ。

とりわけ、今回のように休職後に職場復帰して自殺に至った場合、休職前に受けたパワハラを死と関係づけるのは極めて難しいとされてきた。 遺族側代理人の立野嘉英弁護士によると、トヨタも当初はパワハラと死との因果関係を認めていなかったが、労基署は因果関係があると結論づけた。 川人弁護士は「日本を代表する企業で労災認定された意義は大きい。 国内の各企業は今回の事案を重く受け止めるべきだ。」と指摘する。

パワハラを含め、仕事で受けたストレスによってうつ病などの「心の病」を患い、労災申請する人は近年、増加の一途をたどっている。 厚生労働省によると、2018 年度の申請者は 1,820 人で、6 年連続で過去最多を更新した。 一方で、実際に労災と認められた人の割合は 2 - 3 割にとどまり、18 年度に認定されたのは 465 人。 このうち自殺や自殺未遂をした人は 76 人だった。 ハラスメントに対する世論が厳しさを増すなか、政府も遅ればせながらハラスメント対策に取り組み始めている。

今年 5 月には、企業にパワハラの防止策を義務づける改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が成立。 大企業には 20 年 6 月、中小企業は 22 年 4 月に適用される見通し。 今年 6 月には国際労働機関 (ILO) が、仕事上の暴力やハラスメントを禁じる初の国際基準となる条約を採択した。

厚労省は今月 1 日、精神障害の労災認定基準を見直す方針を表明した。 11 年につくったいまの基準にはパワハラという項目がなく、職場で具体的にどんな行為がパワハラにあたるかがはっきりしない。 厚労省は、どのような行為がパワハラに当たるのか、指針を年内にもつくる。 たとえば「業務に関する必要以上に長時間の厳しい叱責の繰り返し」はパワハラに当たる、などとする案をまとめたが、労働組合などはパワハラをより広く解釈すべきだと反発している。 厚労省は 20 日に改めて指針案を示す見通しだ。 (滝沢卓、内山修、asahi = 11-20-19)


「出世の敗北」植え付ける日本型雇用 中高年の活躍カギ

会社員の多くが、50 代になると管理職から外される「役職定年」を迎える。 どんな気持ちで、その時を迎えるのだろうか。 法政大大学院教授の石山恒貴さん (54) とパーソル総合研究所は 2017 年、40 - 60 代のミドルシニア世代の社員約 4,700 人にアンケートを行った。 役職定年を経験した会社員には、こんな回答が並んだ。

「夜も眠れない日が続いた」
「このままでは廃人になると感じた」
「会社っていったい何だったのか」

出世競争とモチベーション

調査をした同研究所の主任研究員、小林祐児さん (36) は「強い失望感を示す言葉が多く、衝撃を受けた」と振り返る。 企業にとって役職定年は、人件費の抑制や若手の起用などの狙いがある。 一方で、懸命に会社で働いてきたビジネスパーソンにとっては、この制度は大きな挫折感を生みかねない。 それは、会社での「居場所」を失う感覚にもつながっていく。 もともと日本型雇用は、中高年で挫折を感じやすい構造になっている。 新卒一括採用で大量に入社した「同期」は、若いうちは平等に昇進の機会を与えられる。 しかし 40 歳を過ぎるとポストは限られ、出世競争の行方ははっきりとしてくる。 「敗れた」と感じる社員がモチベーションを維持して働き続けるのは簡単ではない。

「敬われて当然」は疎まれる

バブル期に入社した世代が 50 代にさしかかった今、中高年を対象にした希望退職募集が相次ぐ。 ただ、小林さんは「何度も希望退職を募集してしまうと、次世代の若者も採用しにくくなる」と指摘する。 その半面で、調査では、役職定年後の会社人生を前向きにとらえる人たちもいた。 現場に戻って業績を上げることに専念し、社長交代の後に役員に起用された人。 会議などが減って仕事に没頭する時間が増えたという人。 給料は減っても、実績は今まで以上に残そうと奮起した人 - -。 石山さんは「私は部長だったから若い世代から敬われて当然、という態度の人は疎まれるでしょう。 しかし、役職定年を人生の転機と位置づけ、気持ちを切り替えてうまく乗り越える人もいます。」と話す。

50 代の「やる気」 成長のカギに

パーソル総合研究所が中央大と共同で行った試算によれば、2030 年、日本では 644 万人の働き手が不足する。 石山さんらが企業の現場を調べたところ、50 代の社員に裁量や責任を与え、挑戦しがいのある仕事を任せると、活躍する行動につながる傾向が見られたという。 「競争力のある企業の問題意識は、希望退職でベテラン社員を減らすことではなく、どうすれば活躍してもらえるかにシフトしている。」と石山さんは指摘する。

若い世代を中心に中高年世代を「働かないおじさん」などと批判する動きがある。 しかし、日本型雇用の挫折を生み出す構造が変わらない限り、ほとんどの人が将来的には出世競争に敗れ、若手に「働かない」と批判される運命が待っている。 世代間の断絶をあおることは、組織の競争力を奪うことになる。 それよりも、50 代のやる気をどうやって引き出すか。 その成否が、企業の今後の成長を占うカギになりそうだ。 (古屋聡一、asahi = 11-12-19)


働く高齢者の年金減額基準「月収 50 万円台前半」で調整

働いて一定の収入がある 60 歳以上の厚生年金を減らす「在職老齢年金制度」について、厚生労働省は減額対象の基準を月収 50 万円台前半に引き上げる方向で調整に入った。当初は「62 万円超」まで引き上げる案を軸に検討したが、与野党から高所得者優遇といった批判が相次ぎ、引き上げ幅を縮小する。 13 日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会で示す予定だ。

在職老齢年金制度は、少子高齢化で年金財政が厳しくなる中、一定の収入がある高齢者への年金支給を抑えるために導入された。 今は、給与と年金の合計額が 60 - 64 歳は月 28 万円超、65 歳以上は月 47 万円超の場合、超えた分の半額を厚生年金から差し引くなどしている。 高齢者らの就労促進を掲げる安倍政権は、「就労意欲を損ねている」として見直しに着手した。 厚労省は 10 月上旬の年金部会で、60 - 64 歳と 65 歳以上の減額基準を、いずれも 62 万円超とする案を提示。 この場合、65 歳以上の減額対象者は約 18 万人減って約 23 万人となり、年金の年間支給総額は約 2,200 億円増えるとした。

しかし、支給額が増えれば年金財政は厳しくなる。 厚労省の試算では、モデル世帯が約 30 年後に受け取る年金額は、現役世代の平均収入の 50.6% と、減額基準を引き上げない場合に比べて 0.2 ポイント下がる。 このため、与野党からは「高所得者の年金を増やすために、将来世代の年金水準が下がるのはおかしい」などの批判が相次いでいた。 厚労省は今回、平均的な男性会社員の給与と厚生年金の月額を足し合わせると 50 万円台前半になることなどから、この月収水準を新たな減額ラインとする方向だ。 減額対象から外すのは、あくまでも中間所得層で、高所得層ではないとの説明がつくと判断した。

ただ、内閣府の調査では、60 - 64 歳では在職老齢年金制度が就労抑制につながっている傾向がみられたが、65 歳以上ではほとんどみられなかった。 野党は「就労促進」という減額基準の引き上げ理由そのものも疑問視するが、厚労省は「働く高齢者の増加で減額対象者も増える可能性がある。 基準を引き上げておく必要がある。」と説明する。 (山本恭介、asahi = 11-9-19)


日本マイクロソフト、週休 3 日制導入実験で生産性が 40% も向上
会議は 30 分まで、メール対応も制限 キビキビ働こう

日本マイクロソフトが、働き方改革の新たな取り組みとして週休 3 日制を導入した「ワークライフチョイスチャレンジ 2019 夏」をこの 8 月に実施し、その効果として社員ひとりあたりの売り上げに換算した労働生産性が 40% も向上したと発表しました。 マイクロソフトは取り組みの一環で週休 3 日制のほかメール対応や会議に費やす時間を減らすよう制限をかけ、メッセージアプリの活用によって会議そのものをなくす試みなども実施したとのこと。

その結果、取り組みを終えた段階で社員 2,280 人を対象としたアンケートにおいて、90% 以上の従業員が仕事に対する意識や行動に良い変化があったと回答しました。 また、毎週金曜日を休みとしたこともあり、取り組みが行われた月の電力消費量は前年同期比 23.1% 減少。 会議をなくしたことで書類の印刷枚数は 58.7% も減少したとのこと。

日本マイクロソフトは今年の冬にもふたたび「ワークライフチョイス チャレンジ」を実施する予定。 ただし、夏のチャレンジでは金曜日の休みを特別有給休暇としたものの、冬のチャレンジではこの特別措置は行わず、社員自身が手持ちの有給を消化するなり、年末年始の休暇を組み合わせることで週休 3 日にすることを奨励するとしています。

考えてみれば、忙しい忙しいと日々の仕事に追われている人ほど長時間労働の割に仕事が一向に片付かなない傾向はあるかもしれません。 一方で本当は定時に帰れるはずのひとも、他の人に合わせてついだらだらと終業時間後も仕事を続けている … と言うことも考えられます。 週休 3 日制は、社員に金曜日も休めるよう仕事を早くこなす意識をもたらし、生産性の向上につながると言えそうです。

ちなみに、日本マイクロソフトは休ませることで生産効率が上がったと発表しましたが、中国アリババ創業者のジャック・マー氏は今年 4 月、週休を 1 日に減らして社員は週 6 日間を午前 9 時から午後 9 時までみっちりと働くべきだとする "996 システム" を提唱しています。 (Munenori Taniguchi、engadget = 11-6-19)

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大企業にも「週休 3 日」の波 会社にとってのメリットも

土日に加えてもう 1 日休みがある「週休 3 日」の働き方が、じわりと広がっている。 平成で定着した「週休 2 日」は、令和で「3 日」に変わるのか。 東京都内のオフィスに無人のコンビニエンスストアを設置しているベンチャー企業「600 (ろっぴゃく)」は、土日だけでなく、水曜日も休みにしている。 一昨年の創業時、妻のつわりがひどかった久保渓代表 (34) が、家庭と仕事のバランスをとるために勤務を週 4 日にした。 「週の真ん中が休みになることでメリハリがきく」と言う。 従業員は 20 人ほど。 求人を出すと、仕事とプライベートの両立を重視する若い世代の応募が殺到する。

久保さんは仕事の優先順位付けを徹底させ、従業員は「月火は営業、木金は開発」など 2 日単位でやるべき業務を設定し、集中してこなす。 午後 6 時過ぎには、大半の従業員は退社している。 フルタイムの労働者を対象にした厚生労働省の昨年の調査によると、月 1 回以上の週休 3 日制など完全週休 2 日制より休みの多い制度で働く人は 9%。 トラック運転手ら運輸業の比率が高いが、他の業種でも増加し、10 年ほど前と比べるとほぼ倍だ。

東京都産業労働局の 2016 年度の調査では、導入を望む労働時間制度として「週休 3 日制」を挙げた人が 51.6% で最も多く、20 代では 59.0% に上った。 こうした働き手の思いも受け入れ、週休 3 日は大企業でも広がっている。 東京・品川の日本マイクロソフトで働く南郷佑奈(ゆな)さん (31) は 10 日、インターネット関連の資格試験を受け、合格した。 同社は今年、8 月に限り毎週金曜日を休みにする週休 3 日を導入。 育児休業から復帰したばかりの南郷さんは、その休みを資格を取るための勉強にあてた。 「仕事と育児に追われていたので、まとまった時間はとても貴重でした。」

会社側も、社員が効率よく働き、増えた休みを自己研鑽や家族のために使ってくれれば、仕事にもプラスになると見込む。 働く時間を減らしたが、8 月の給料はそのままで、収益の目標も変えなかった。 効率化を後押しする仕組みも整えてきた。 2016 年に就業規則を変え、どこで働いてもいい「フレキシブルワーク」を導入。 必ずしも毎日出社する必要はなく、取引先を回ってそのまま自宅に帰ったり、終日自宅で作業をしたりする働き方を認めている。 会議にもオンラインで参加するケースが珍しくないという。

実施日を限った週休 3 日の取り組みは、電通が昨年から月 1 回限定で始め、日本製鉄も 8 月限定で実施。 ヤフーや NEC など、介護や育児といった事情のある社員を対象に認めている社もある。 振り返ると、日本の会社でいち早く週休 2 日制をとり入れたのは、1965 年の松下電器産業(現・パナソニック)とされている。 80 年代以降には他の企業にも広がり、官庁でも 90 年代初めまでに完全に実施された。

中央大学大学院の佐藤博樹教授(人事管理論)は、週休 3 日の働き方は「長く働くことがいい仕事につながる」という意識から脱却しきれていない日本の職場に変化をもたらすとみる。 ただ、勤務を週 4 日にしても、仕事が 1 日 8 時間で終わらず、慢性的に 10 時間になれば総労働時間は変わらない。 「残業に依存している企業の体質を変え、無駄な仕事を 2 割減らすことが前提になる。 共働き世帯が増え、働き方が多様化するなかで、仕事と休みに対する考えも変わっていくだろう。」と話す。 (土屋亮、asahi = 9-19-19)