常用漢字じゃないけど「絆」使いたい → 9 割 震災で浸透

常用漢字ではなくても、「絆」という字を使いたい人は 9 割にのぼる。 文化庁が 29 日に発表した 2018 年度の「国語に関する世論調査」で、そんな結果が明らかになった。 東日本大震災を機に広く使われたこの字が、日常生活に浸透している様子がうかがえる。 調査は今年 2 - 3 月、16 歳以上の 1,960 人が答えた。 国が定める「常用漢字表」は一般の社会生活における漢字使用の目安だが、表になくてもよく使われる字がある。 文化庁はそうした字について尋ねた。

「絆を深める」という例文で尋ね、「この漢字を使うのがいい」を選んだ人が 90.0%。 振り仮名を付けるが 7.0%、仮名で書くが 2.6% だった。 29 年ぶりだった 2010 年の常用漢字表改定の際は、社会での使用頻度がそれほど高くないこともあり見送られた。 だがほぼ同時期に日本新聞協会がまとめた「新聞常用漢字表」では新たに入り、朝日新聞も含め多くの新聞が振り仮名なしで使うようになった。

翌 11 年の東日本大震災を機に、人と人とのつながりを表す言葉として多用された。 文化庁の武田康宏国語調査官は「震災以降、文化庁に『絆のつくりの半の点は上が開いているのか下が開いているのか』などの質問が増え、書く機会が増えているようだ」と話す。 ほかに支持が高かった漢字は、「手を叩(たた)く」の「叩 (76.1%)」と「癌(がん、72.6%)」。

一方、「障碍(がい)を乗り越える」という例文で示された「碍」という字については、「別の漢字を使うのがいい」が 40.3% と最多だった。 「振り仮名をつけるのがいい」が 33.4% 、「仮名で書くのがいい」が 14.2%。 「この漢字を使うのがいい」は 7.9% にとどまった。 「碍」をめぐっては、障害と書くときに、否定的な印象のある「害」でなく「障碍」と表記できるよう常用漢字化を求める声があり、昨年には国会の衆参委員会が検討を求める決議をした。 現在、文部科学相の諮問機関・文化審議会が審議している。 調査結果は次の常用漢字表改定時に参考にされる。 (上田真由美、asahi = 10-29-19)


空前ブームはいいけど … 人気キャンプ場、悲しい閉鎖理由

キャンプを楽しむ人が増える一方で、マナー違反が全国各地で問題になっている。 ゴミを片付けず、深夜まで大声で騒ぐ。 そんな不心得者のせいで、閉鎖を余儀なくされるキャンプ場もある。 東京・調布空港から飛行機で 45 分。 伊豆諸島の神津島(東京都神津島村)の西部に沢尻野営場はある。 目の前に広がるのは、日本有数の透明度とたたえられる海と白い砂浜。 沈む夕日と満天の星が、2001 年の開業から人々を魅了してきた。

5 泊するという東京都調布市の男性会社員 (32) は、「こんなに美しい海は見たことがない。 最高のキャンプ場です。」 20 年以上通う宮森一成さん (63) は「東京で生まれ育った私にとっては、唯一ふるさとと呼べる場所」と話す一方、寂しそうな顔を浮かべた。 「閉鎖されるのは本当に残念。」 東京都は島で、沢尻と長浜の二つの野営場を無料で運営してきた。 両キャンプ場の年間申込者数は、18 年が 2,016 人。 SNS で存在が広く知られるようになり、3 年前の 2 倍ほどに増えた。

「苦渋の決断」

問題はマナーが悪い一部の利用客だ。 ゴミを散らかし、深夜にロケット花火を飛ばす。 禁止区域でたき火をし、急性アルコール中毒で運ばれる。 地元の女性 (52) は「夜になると酔っ払った人に絡まれる心配もあるから、キャンプ場には近づきたくなかった。」 英文のサイトで紹介されるようになり、外国人が 70 - 80 人で押し寄せて、ほかの利用客ともめ事になったこともあった。

村は昨年 12 月から都に閉鎖を相談。 今春の 10 連休でも迷惑行為が続いたため、7 月に正式に閉鎖を申し入れた。 来年 4 月以降、両キャンプ場は昼間は使えるが、夜間は立ち入りが禁止されることになった。 村産業観光課の小川徳柾課長は「本当にマナーの悪い人は全体の 2 割ほど。 一部の心ない人のせいでキャンプ場を閉鎖することは、村としても苦渋の決断だった。」と胸の内を明かす。

兵庫県猪名川町の大野アルプスランドにある無料キャンプ場も、今年 1 月から閉鎖に追い込まれている。 路上駐車、芝生への直火、電柵の破壊といった行為が相次いだからだ。 町によると、マナー違反が目立つようになったのは数年前からで、担当者は「一部の身勝手な利用者によって、管理者の負担が増大した。 再開のめどは立っていない。」と嘆く。

背景にあるのは、空前とも言われるキャンプブームだ。 一般社団法人「日本オートキャンプ協会」の推計によると、車を使うオートキャンプを楽しむ人は 18 年に 850 万人。 5 年前に比べて 100 万人増えた。 1990 年代のキャンプブームを子どもとして楽しんだ団塊ジュニア世代が大人になり、家族や友人らと再びアウトドアレジャーを楽しんでいる。 最近は 1 人で過ごす「ソロキャンプ」も人気で、その様子が動画サイトに投稿されるようにもなっている。

協会の堺広明事務局長代理は、ライフスタイルとして定着し、末永くキャンプを楽しむ人が増えることを期待する。 「キャンプ場で快適に過ごすために、まずは管理人から説明されたことはしっかり守る。 楽しくキャンプを続けるには他人に迷惑を掛けず、気を遣うことが大切になってくる。」と語る。 (軽部理人、岡戸佑樹、asahi = 10-21-19)

キャンパーが心得ておくべきこと
・ 野営場の備品を壊さない
・ 大騒ぎして周りの客に迷惑をかけない
・ 大人数で占拠しない
・ 植物や生態系を傷つけない
・ 直火やたき火をしない
・ ごみは指定の場所で分別
(神津島の野営場の注意事項から)


ポイント還元、実施は 52 万店どまり 対象の 4 分の 1

キャッシュレス決済時のポイント還元事業で、経済産業省は 11 日、還元が受けられる店の数が 11 日時点で約 52 万店になったと発表した。 1 日のスタート時から約 2 万店増えたが、全国約 200 万店とされる対象の 4 分の 1 程度に依然とどまっている。 経産省に登録した店でクレジットカードや QR コード決済など、現金を使わずに買い物をすると、税込み価格の 5% (大手チェーンのフランチャイズ店は 2%)分がポイントなどを通じて消費者に還元される。 消費税率が原則 10% に引き上げられた 10 月から始まり、来年 6 月末まで。

経産省によると、登録を申請した店の数は 9 日時点で約 86 万店。 次に発表される 21 日には登録を終えた店が約 61 万店に増える見込み。 還元額を 1 日からの 1 週間でみると、1 日平均約 8 億 2 千万円だった。 2019 年度当初予算に計上された還元分の費用(1,786 億円)の 1 日当たり(約 9 億 8 千万円)をやや下回った。 ただ、還元を受けられる店はさらに増え、年末商戦も控えることなどから、担当者は「順調に進んでいる」と話した。 また、決済業者が還元率を誤設定するなどのトラブルが約 2 万件見つかり、11 日までにその約 9 割が修正されたという。 修正が終わるのは来週になる見込み。 (伊藤弘毅、asahi = 10-12-19)

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吉野家、増税ポイント還元に不参加 レジ改修間に合わず

牛丼チェーンの吉野家は、政府が 10 月に始める消費増税対策のポイント還元制度への参加を見送ることを決めた。 当初は参加する意向を示していたが、レジの改修などが間に合わない見込みで、参加を取りやめる。 来客数の低下を防ぐため独自の還元キャンペーンを検討しているという。 政府のポイント還元制度は、中小店舗でのキャッシュレス決済が対象で、外食やコンビニなど大手のフランチャイズ (FC) 店の還元率は 2% となる。 直営店は対象外だ。

吉野家は当初、直営店では自社で還元分を負担し、FC 店と併せて全 1,200 店での制度参加を表明していた。 しかし、政府のガイドラインに沿ったレジの改修に時間がかかると判断し対応を見直したという。 大手外食チェーンでは、「ケンタッキー・フライド・チキン」は全店でポイント還元制度に参加しない方針だ。 牛丼の「すき家」や「松屋」も、「全店が直営のため(すき家)」といった理由で不参加。 大半が FC 店の「モスバーガー」は「未定」という。

一方、「マクドナルド」は全店の約 7 割にあたる約 2 千店の FC 店で参加するが、直営店ではレジのシステム変更などが難しいためポイント還元しないという。 コンビニ大手は FC 店のほか、制度の対象外となる直営店でも自社負担して 2% の還元を実施する。 (長橋亮文、asahi = 9-6-19)


セブン & アイが大リストラ コンビニ閉鎖・移転 1 千店

セブン & アイ・ホールディングスは 10 日、グループの事業構造改革の方針を公表した。 主力のコンビニエンスストア「セブン-イレブン」は約 1 千店の閉鎖・移転のほか、加盟店の負担を減らして収益力を改善させ、不振の総合スーパー「イトーヨーカドー」や百貨店の「そごう・西武」は店舗閉鎖や事業見直しなどのリストラを進める。 人手不足やネット通販の普及に伴い、流通大手が事業の大幅見直しを迫られた。

セブン-イレブンでは、フランチャイズ (FC) 契約する加盟店の加盟店料を減額し、各店の収益力を改善させる。 セブン本部の利益は約 100 億円減る見込み。 コンビニ事業の利益水準を維持するため、2019 年下期以降に不採算店 1 千店を閉鎖・移転させ、本部人員の見直しや売り場の見直しも行う。 ヨーカドーでは、33 店舗で閉店やグループ外企業との連携を検討する。 具体的な店舗名は公表していない。 また、衣料や住居関連事業を見直し、同事業の売り場面積を減らす。 従業員数を 22 年度末には 18 年度末比で約 1,700 人減らす。 そごう・西武では 5 店舗を閉鎖し、2 店舗の売り場面積を減らす。 従業員数は 22 年度末には 18 年度末比で約 1,300 人減らす。 (asahi = 10-10-19)

セブン & アイ・ホールディングスの構造改革骨子

セブン-イレブン

  • 店主が本部に支払う加盟店料(チャージ)の見直し。 24 時間営業の店、非 24 時間営業の店ともに店主側の負担を軽減。 具体的には、利益水準に合わせてチャージを 24 時間営業店については月額 3 万 5 千円 - 20 万円減額。 非 24 時間営業店については月額 1 万 5 千円 - 7 万円減額する。
  • 2019 年下期以降、約 1 千店の不採算店を閉鎖・移転

イトーヨーカ堂

  • 33 店舗をグループ内外の企業と連携、閉店を検討
  • 22 年度末の従業員数を 18 年度末より約 1,700 人減

そごう・西武

  • 20 年 8 月から 21 年 2 月にかけて 5 店(西武岡崎店、西武大津店、そごう西神店、そごう徳島店、そごう川口店)を閉鎖、2 店(西武秋田店、西武福井店)は売り場面積を減らす
  • 22 年度末の従業員数を 18 年度末より約 1,300 人減

火災保険料、また引き上げ 2020 年度中、支払い増で

火災保険の保険料率が 2020 年度中にも引き上げられる見通しとなった。 大手損害保険各社は今月 1 日に値上げしたばかりだが、台風などの自然災害による保険金支払いが増えており、損保各社でつくる「損害保険料率算出機構」が保険料を決める目安の「参考純率」の引き上げ方針を固めた。 参考純率の引き上げ幅は 5% 程度の見込み。 機構は金融庁に届け出て、早ければ今月中にも審査結果を受け取る。 損保各社はこれを踏まえて保険料率や値上げ時期を決める。 値上げ時期は、地震保険料の値上げが予定される 21 年 1 月の可能性が高いとみられる。

機構は昨年も参考純率を 5.5% 引き上げることを決め、損保大手は今月、火災保険料を 6 - 7% 値上げした。 ただ、昨年夏に関西地方などで大きな被害が出た台風 21 号や西日本豪雨などが発生し、損保各社の昨年度の保険金支払額が過去最大の 1.5 兆円に膨らんだ。 その支払い分は昨年の機構の引き上げ分には含まれていなかった。 (新宅あゆみ、asahi = 10-7-19)


柿食えば健康に? 弱った体の「点滴」、医者も青く

果物がおいしい季節。 ぶどうや梨、りんごなど多くの果物が旬を迎える。 その中でも古くから日本で親しまれてきたのは柿。 奈良時代には食べられていたらしい。 農林水産省がまとめた主な果物の収穫量(2017 年)を見ると、柿は、みかん約 74 万 1 千トン、りんご約 73 万 5 千トン、日本梨約 24 万 5 千トンに次ぐ 4 位で約 22 万 5 千トン。 ぶどうや桃よりも多い。

柿には甘柿と渋柿がある。 成熟期の渋柿は渋みのもととなる水溶性のタンニンを多く含むが、甘柿はほとんど含まない。 農研機構果樹茶業研究部門の佐藤明彦ブドウ・カキ育種ユニット長によると、甘柿はタンニンを蓄積する細胞が途中で成長を止めるため、成熟すると渋みを感じなくなる。 渋柿もアルコールや二酸化炭素で渋抜き(タンニンの不溶化)すると甘くなる。

昔から食べられてきたので各地に多くの品種があるが、よく知られるのは、甘柿の富有(ふゆう)や次郎、渋柿の平核無(ひらたねなし)や刀根早生(とねわせ)といったところだろう。 品種づくりが仕事の佐藤さんたちは「今は大きくておいしく、生産性の高い甘柿の育種が目標」と話す。 タンニンは、さまざまな生理活性作用が注目されているポリフェノールの一種だ。

近畿大農学部の米谷俊(こめたにたかし)教授(栄養機能学)らのラットを使った研究では、柿から抽出したタンニンには消化酵素の働きを妨げて食後の血糖値上昇を抑える作用があった。 ヒトでも同様に血糖値の上昇を抑制する働きを確認しており、「血糖値の急激な上昇を抑えるために、柿のタンニンをうまく使える」と米谷さんは考えている。 渋抜きをしてタンニンが不溶化していても、作用に変わりはないそうだ。 もちろん糖尿病などの病気を抱える人は、主治医と相談をするのが望ましい。

農研機構食品研究部門の庄司俊彦・食品機能評価ユニット長は、柿を食べれば「ポリフェノールに加えて、カロテノイドも併せてとれる。 こちらは脂溶性なので体に残りやすい。 習慣的に食べれば良い効果が期待できる」と指摘する。 カリウムやビタミン C も果物の中ではかなり豊富だ。 「柿が赤くなれば医者が青くなる」ということわざがあるのは、秋が過ごしやすい季節であることとともに、柿が魅力的な健康食品だという証しかもしれない。 「エネルギーが豊かで、その他の栄養分も豊富。 夏の暑さで弱った体には点滴みたいなもので、プラスの効果が大きいという意味では。」というのが米谷さんの見立てだ。

食べ方・品種で変わる食感も魅力

そんな柿は皮をむいて、そのまま生で食べるのが基本。 日本園芸農業協同組合連合会の丸岡秀一・業務部次長兼落葉果樹課長は「日を追って出回る品種も変わるし、一方で産地間のリレーによって同じ品種を長く楽しむこともできる」と話す。 そして「富有はカリカリ、コリコリだし、太秋(たいしゅう)はシャリシャリしていて、まるで梨。 渋柿はしっとり、ねっとり。 いろんな食感を楽しめる。」とも。 熟しすぎてどろどろになると食べにくいが、冷凍してシャーベットのように食べるのも一つのアイデアだ。

一方、昔ながらの干し柿には市田柿や三社柿など、各地のご当地品種がよく使われる。 ドライフルーツ好きの海外からの観光客にも人気がある。 水分が抜けた分、食物繊維をたっぷり取れる点も魅力だ。 明治期に活躍した俳人の正岡子規は、柿好きだったことを随筆の中に書いている。 ならば「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」の名句を残した人だというのもうなずける。 この句にちなみ、子規が奈良を旅した 10 月 26 日は「柿の日」となった。 最近は若い人たちにもっと柿を食べてもらおうと、10 月末のハロウィーンに向けた商戦で、「カボチャと同じ色でかわいい」とハロウィーン柿が各地の果物売り場をにぎわすようになってきた。 (米山正寛、asahi = 10-5-19)


「創業以来の忙しさ」消費増税目前 レジ製造急ピッチ

10 月 1 日の消費増税と軽減税率の導入が目前に迫る中、2 種類の税率に対応できるレジの駆け込み需要が続き、メーカーは急ピッチで製造作業に追われている。 岩手県奥州市のレジメーカー「デジアイズ」には全国のスーパーなどから受注が相次ぎ、6 月以降、出荷台数が例年の約 3 倍に跳ね上がった。 製造工程はほとんどが手作業で、作業員を 3 割増やして組み立てや動作チェックを続ける。

製造中のレジはすべて複数税率に対応し、受注内容によっては商品コードの登録など店舗ごとの設定まで行うため、納入した小売店ではすぐに使える状態になる。 担当者は「創業以来、一番の忙しさ。9 月末まで続く見込みです。」 消費増税に合わせた軽減税率をめぐっては、酒類を除く食料品などの税率は 8% に据え置かれる。 中小企業庁は 9 月 30 日までに販売業者と契約を結んだ中小企業や小規模事業者を対象に、対応レジの購入補助金などを支給する。 (川村直子、asahi = 9-28-19)

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駆け込み需要こんなところに 振り袖商戦は 3 カ月前倒し

10 月の消費増税が近づいてきた。 消費増税といえば、「駆け込み需要」。 過去の増税時は住宅や新車などで駆け込み需要がみられたが、今回は駆け込みの動きが鈍いとされる。 そんななか、意外なものが増税前に売れている。

売れているものの一つが、成人式に着る振り袖だ。 百貨店大手、高島屋の各店では、例年 11 月に始める振り袖の新作の売り場展開を、今年は 8 月に始めた。 数十万円以上の買い物で、吟味して良いものを選びたい客も多いため、商戦は年々早まっていたというが、増税も意識して展開を 3 カ月前倒しした。 客の反応は上々で、高島屋全体の振り袖の 8 月の売り上げは前年に比べて 7 割増になったという。

オートバックスセブンでは、冬タイヤが売れている。 増税に加えて、メーカーの出荷価格の 2 - 3% 値上げもあり、10 月にはダブルパンチでタイヤが値上がりする。 値上げの告知とともに、冬用タイヤの販売を 1 - 2 カ月早め、7 月ごろに全国の店舗で売り始めた。 8 月の売り上げは、北陸では前年の 4 倍、東北では 1.2 倍だという。

仏壇も売れている。 大手の「はせがわ」は、例年、秋の彼岸で買い替え需要が高まるため 9 月はじめにセールを展開していたが、今年は 1 週間早め、8 月下旬に行った。 セールの 1 週間の売り上げは前年同時期に比べて 2 割増。 平均単価は仏壇と付属品を合わせて 30 万円ほどという。

ビックカメラでは、20 万円台前半の有機 EL テレビの 8 月の売り上げが前年同月の約 2 倍に。 ドラム式洗濯機は約 1.6 倍、冷蔵庫も約 1.4 倍の売れ行きという。 「20 万円を超える商品が特に売れている。 直前になれば、お酒などをまとめ買いする動きも強まってくると思う。(広報)」としている。 (佐藤亜季、asahi = 9-10-19)


銀行 ATM、月 30 万円の維持費が重荷 共通化の時代へ

三菱 UFJ 銀行と三井住友銀行が 22 日から、駅前や商業施設など約 2,800 拠点の ATM を共通化する。 預金者は相手行の ATM でも、自行と同じ手数料で使える。 現金を使わないキャッシュレスが広がり、自前の ATM 網充実を競ったメガバンク同士も共同利用で効率化する時代を迎えた。 対象は三菱 UFJ 約 1,600 拠点・三井住友約 1,200 拠点の店舗外 ATM。 22 日午前 4 時から始める。 これまで相手行の ATM を使う際、平日の日中は手数料 108 円がかかったが、互いに無料になる。 休日は手数料体系の違いから、両行で料金が異なる。

例えば、三菱 UFJ の預金者が休日に三井住友の店舗外 ATM を使う場合、これまで必要だった 216 円の手数料が無料になる。 一方で、逆のケースだと、手数料はこれまでの 216 円から 108 円になる。 「スイカ」、「イコカ」など電子マネーの広がりもあり、ATM の利用件数は「10 年間で 2 割減った。(三井住友の担当者)」 両行は共同利用で、近接する 600 - 700 ほどを今後廃止・集約する計画だ。 店舗外だけでなく、支店など店舗内での共通化も考える。 年数十億円の経費削減を見込んでいる。

銀行関係者らによると、ATM の購入費は 1 台数百万円。 賃料や警備費や障害対応費などと合わせ、維持費も月 30 万円ほどかかる。 現金輸送など人件費を含めた費用は業界全体で年 2 兆円にのぼるという。 顧客からの手数料ではカバーできないのが実情だ。 これまでは ATM の「赤字分」を、預金を貸し出して得る金利収入などで補ってきた。 長引く超低金利で金利収入が減り、維持費は重荷。 銀行業界は 10 年間で約 6 千台減らした。

削減だけでは利便性が落ちるため、共通化に取り組んでいる。 地方銀行は数年前から近隣行同士で進めており、信用金庫も全国 257 の信金の預金者が ATM を相互に使える。 三菱 UFJ と三井住友は今後、さらなる共通化を進める可能性がある。 三井住友の泉純・チャネル戦略部長は「両行でやれば(共通化の)モデルができる。 ゆくゆくは他行にも参加頂きたいし、機械の保守などの運営も一緒にしたい」と話す。 三菱 UFJ の幹部も「悩みはみんな同じ。 オールジャパンでやりたい。」

「肩代わり」するコンビニ ATM

銀行が減らす一方、「肩代わり」する形で増やしてきたのがコンビニ ATM などを置く流通系の銀行だ。 セブン銀行は約 2.5 万台を抱え、10 年前の約 1.8 倍に増やした。 新生銀行の国内約 30 店舗の ATM の置き換えなどに取り組んできた。 今月 12 日には顔認証ができる日本初の新型 ATM を発表。 将来は口座開設や、キャッシュカードを使わず「手ぶら」での入出金サービスもねらう。 舟竹泰昭社長は「新しい技術で新しい社会的価値を生むことが生き残りに必要だ」と話す。

昨年 10 月にサービスを始めたローソン銀行は ATM の拡大に力を注ぐ。 JA バンクが持つ約 1.2 万台を、各 JA の希望に応じてローソン銀のものに置き換えられる契約を結んだ。 メガバンクとの連携を進めるのはイオン銀行。 三菱 UFJ、みずほ銀行と ATM をそれぞれ共通化した。 クレジットカードの磁気の不調で情報をうまく読み取れないとき、支店などで再発行を頼まずカードを ATM に入れるだけで修復できる国内初のサービスも始めた。

流通系銀行の主な稼ぎは金利収入ではなく、ATM 提携先の銀行から受け取る手数料。 店舗内の設置のために賃料負担がないうえ、集客にもプラスとなる。 金融業界に詳しいボストンコンサルティンググループの平野聡久氏は「銀行の支店が減るなか、コンビニなどの ATM が『ミニ支店』として発展するかもしれない。 ATM で映像を介して融資相談などもできるようになれば、顧客との接点を持つ場所になりうる」と指摘する。 (笠井哲也、鈴木友里子、箱谷真司)

「現金お断り」までも

キャッシュレス化が日本より急速に進む海外でも、スマホ決済の普及などで ATM 網が縮む傾向だ。 英国の調査会社 RBR (リテールバンキングリサーチ)によると、世界の ATM 台数は 2018 年に初めて減少。 5 カ国が全体の半数超を持つが、うち中国・米国・日本・ブラジルが減少し、インドは伸びが鈍った。 RBR によると、日本の台数は前年比 0.2% 減の 20 万台、世界は同 1.3% 減の 324 万台だった。

スマホでの QR コード決済が広がり、キャッシュレス化が進む中国。 個人間のお金のやりとりはアリペイやウィーチャットペイなどの「ペイ」アプリで済ませるのが一般的だ。 現金の出番が減り、銀行の個人向け業務は大きく変わった。 中央銀行「中国人民銀行」によると、全国の ATM 台数は 6 月時点で約 110 万台。 18 年 9 月の約 113 万台をピークに減る。 銀行の窓口業務もリストラが進み、支店も減少傾向だ。

銀行は「現金なし」への対応を、経営スリム化のきっかけにもしている。 中国工商銀行や中国銀行など 6 大銀行は 19 年上半期に従業員の約 1.9% の 3.5 万人を減らした。 18 年の年間削減数を半年で超えている。 6 大銀行の上半期の純利益は前年同期と比べ、平均 5% ほど増えた。 リストラの一方で、ATM やスマホアプリの利便性を高める「選択と集中」も展開。 中国農業銀行などの ATM は今や顔認証でお金をおろせる。 ペイを使わず、銀行のアプリで相手の口座の QR コードを読み取り、お金を受け渡しする方式も始まった。

米国でも、預金を扱う銀行の支店は 09 年の約 10 万カ所をピークに減り、17 年に 9 万カ所を切った。 農村部などが拠点の地域銀行は増やしているが、大手行がそれを上回る勢いで再編。 ATM も大都市部を中心に減っているとみられる。 加えて、小売店や飲食店にある金融機関乗り合いの ATM は老朽化が目立つ。 カードが IC チップ対応に切り替わる一方で、古い ATM は更新コストがかさむため割に合わず、そのまま撤去されることもある。

米国はクレジットカード社会のため、現金決済は 17 年時点で全体の 3 割ほど。 少額決済でもカードを使う傾向が近年加速する。 米誌ハーバード・ビジネス・レビューが一定の消費者層を調べたところ、カード決済を選ぶ最低額は 19 年に 4.5 ドル(490 円)と 15 年の 8 ドルから大きく下がった。 街角のカフェでは 4 ドルほどのコーヒーもカード決済が当たり前だ。

中国と同様に都市部などでスマホ決済も広がる。 米モルガン・スタンレーは、米アップルの「アップルペイ」による決済額が、22 年に 1,900 億ドル(約 20 兆円)に達すると試算する。 アップルが米銀大手ゴールドマン・サックスと今夏始めたクレジットカード「アップルカード」も、ペイ移行を後押ししそうだ。 キャッシュレスの普及で、「現金お断り」をうたう飲食店も現れている。 ただ、米国では収入や信用度が低いなどの理由でクレジットカードを持たない世帯が 3 割ある。 米東部フィラデルフィアなど複数の都市や州が「現金お断り」を法律で禁じるようになった。 (北京 = 福田直之、ニューヨーク = 江渕崇、asahi = 9-21-19)


サンマ漁の出足、過去 50 年で最低 目黒の祭りも冷凍物

秋の味覚「サンマ」の漁の出足が、大不漁となっている。 今秋に日本近海に来遊する量の予測からその恐れは出ていたが、現実になってきた。 スーパーや飲食店はサンマの確保に四苦八苦し、店頭の値段も上がって食卓に影響が出ている。 サンマの水揚げ量日本一を誇る北海道・根室の花咲港。 秋の漁が 8 月上旬、小型船を皮切りに解禁、同月 16 日までに戻ると衝撃が走った。 水揚げはほぼゼロ。 22 日に中型船が実質的に「初水揚げ」をしたが、その量は 17 トンで、昨年の 120 トン強を大きく下回った。

26 日に大型船の帰港が始まったが、昨年のこの時期の量には及ばない。 サンマ漁船の古林勲機関長は、「魚群がなかなかいないうえ、魚体も小さめ。 例年になく漁は厳しい。」と話す。 毎年恒例の「根室さんま祭り」にも暗雲が漂う。 9 月 21、22 日に開き、会場で箱詰めの生サンマを販売して開催費に充てる計画だが、不漁で必要量を確保できるかがわからない。 実行委員会の関係者は、「来年以降は開催時期を後にずらすことも考えないといけない」と頭を抱える。

宮城県気仙沼市の気仙沼港では 8 月 27 日に初水揚げがあり、60 トンを超えた昨年の 1 割強の 8 トンだった。 6 割が 130 グラム未満と小さい魚が多い。 東京・目黒駅前で 9 月 28 日に開かれる「目黒のさんま祭り」は今年、炭火焼きのサンマを冷凍物にすることに。 毎年生サンマを送ってくれた岩手県宮古市が、不漁で祭りに必要な 7 千匹を確保できなかった。 祭りのサンマは、「専門店や料亭でもなかなか味わえない『トップクラス』の味」と新鮮さを売りにしてきた。 急きょ、北海道産への切り替えも検討したが、脂の乗りが良いものを集められなかったという。 祭りの実行委員長の中崎政和さんは、「今回で 24 回目だが、こんな事態は初めてだ」とため息をつく。

同県大船渡市で 8 月 25 日にあった恒例の復興支援の恩返しイベントでも同様に、炭火焼き用の生サンマが冷凍になった。 生サンマの販売も、「後日発送」とした。 漁業情報サービスセンターによると、8 月に全国で水揚げされたサンマは約 1 千トン。 約 9 千トンだった昨年どころか、48 年ぶりの大不漁だった 2017 年(約 7 千トン)にも届かない。 市場での平均価格(1 キロあたり)は 642 円。昨年(316 円)の倍に跳ね上がった。 渡邉一功・漁海況副部長は、「今秋のサンマ漁の出足は、過去約 50 年間で最低水準とみられる」と話す。

08 年は 34 万トンあった日本のサンマの水揚げ量は、15 年以降は 10 万トン前後と不漁続きだ。 水産庁は、日本近海の海水温上昇で、温かい水を嫌うサンマが近づかなくなったことに加え、中国や台湾の漁船による公海での漁が本格化し、資源が枯渇していることが原因とみている。 国の研究機関「水産研究・教育機構」の予測では、今秋に日本近海に来遊するサンマの量は、比較できる 03 年以降で 17 年に次ぐ少なさだった。 このため大不漁の恐れが出ていたが、予測通りの出足になっている。

不漁続きの近年は、漁場が従来よりも沖合にできる傾向がある。 水研機構は、9 月下旬になれば来遊量が増えると予想するが、今年の漁場は近年よりもさらに沖合になると見ている。 沖合だと燃料代がかさむうえ、往復に時間がとられ、漁の時間が短くなる。 鮮度の維持も課題になる。 冷凍設備が無く、沖合で漁ができない小型船も少なくない。 同センターの渡邉副部長は「9 月下旬以降も厳しい水揚げの状況は続くのではないか」と予想する。 (大野正美、佐々木達也、大日向寛文)

飲食店やスーパーも苦慮

東京都江東区のスーパーで 8 月末、並べられたサンマを目にした中年男性は妻に「高(たけ)え!」と話しかけた。 1 匹税抜き 398 円。 手にしたパックのサンマを見つめ、「しかも細い」とつぶやいて棚に戻した。 秋のサンマは飲食店やスーパーにとって、目玉商品の一つ。 各社は不漁の対策に苦慮している。 イオンは、まとまった水揚げがあった時には即座に仕入れるが、生サンマが品薄になることも。 その時は冷凍物やほかの青魚を並べて穴埋めしているという。 イトーヨーカ堂は、「水揚げは少ないが、企業努力で十分な量を確保している。」 ただ価格は安売り時でも 1 匹 198 円と例年よりやや高めだ。 頭や内臓をとるなど「付加価値」を高め、割高感の払拭を図る。

定食チェーンの大戸屋は、9 月 3 日に始める予定だった「生さんまの炭火焼き定食」の発売を延期した。 「漁は自然が相手なので、水揚げが増えるのを待つしかない」と担当者。 9 月下旬の販売開始を検討中だが、例年より値上げする可能性もあるという。 東京都内を中心に約 40 店舗を展開する居酒屋「さくら水産」は、仕入れがあったときだけメニューに加えている。 9 月上旬の都内のある店舗の姿造りの価格は税抜き 399 円。 2 年前に比べると 100 円ほど高い。 広報は「仕入れは毎日が綱渡りです」と話す。

「ほっともっと」は 10 日から 10 月中旬までの限定で、サンマ 1 匹を使った「北海道産さんま塩焼き御膳」(税込み 690 円)を売り出す。 運営するプレナスの担当者が「太くて脂が乗っていて、おいしいです」というサンマは、昨年とれた冷凍ものになる。 (佐藤亜季、土居新平、asahi = 9-7-19)


地震の揺れ始め、規模の大小で差なし 超速報は「困難」

大きな地震も小さな地震も、発生直後の揺れ方は意外と似ている - -。 東京大の井出哲(さとし)教授が、東日本大震災を含む過去 15 年に発生した地震の観測結果からそんな成果を明らかにし、英科学誌ネイチャーに発表した。 日本の周辺では 2 分に 1 回の頻度で地震が起きている。 マグニチュード (M) 6 以上の地震も年十数回ある。

井出さんは、北海道から関東の太平洋沖で 2004 年以降に発生した M4.5 以上の地震約 2,500 回のうち、プレート境界が破壊されて滑った東日本大震災と同型の約 900 回を抽出。 同じような場所で起きた M2 以上 4 未満の小さな地震と地震波を比べた。 地震波のデータは震源の近くの 10 地点のものを使った。 すると、全体の 2 割は地震波の始まり方の特徴が極めて似ていた。

これまで、同じような場所と規模で繰り返し起きる地震については、揺れ始めの地震波が酷似するという報告はあった。 今回、揺れ始めは同じで、途中から規模が大きく変わる分かれ道があるらしいことが分かった。 逆に言うと、発生から 1 秒未満の短時間では地震の規模は予測できないことを意味する。 井出さんは「緊急地震速報の改良や高速化は難しいという残念な結果」としつつ、プレート境界で破壊滑りが進むシナリオづくりに生かしたいとした。 (小林舞子、asahi = 9-12-19)


フラット 35 不正、業者に行政処分も 国交省検討へ

長期固定金利の住宅ローン「フラット 35」を、目的外のマンション投資に使う不正が多数発覚した問題で、石井啓一国土交通相は 3 日の閣議後会見で「事実確認を行い、宅地建物取引業法にもとづき適切に対処していく」と述べた。 不動産業者を監督する国交省や東京都が調べ、不正が明確になれば業者に対する行政処分を下す方針だ。

フラット 35 を提供する住宅金融支援機構は、かねて不正が疑われていた 113 件のうち、105 件で実際に不正利用を確認した。 さらに別の 49 件でも不正の疑いがあることが明らかになった。 不正には国の補助金で金利が優遇されるローンも使われ、支出された補助金計 2,100 万円について、機構は近く国に返還。 業者らの刑事責任を追及することも検討している。 朝日新聞の取材では、少なくとも 10 社超の業者が不正に関与。 住宅ローンでのマンション投資を客に勧め、物件を割高な価格で買わせていた。 業者の多くは国交省や都から宅建業免許を受けている。 (藤田知也、asahi = 9-4-19)

前 報 (5-4-19)


令和初おせち商戦早くも号砲 軽減税率で「外食より得」

百貨店のおせち商戦が、早くも始まった。 松屋と高島屋は 2 日、報道向けに内覧会を開き、そごう・西武は詳細を発表した。 10 月の消費増税で外食の税率は 10% に上がるが、おせちはほとんどが 8% のまま。 各社は外食に比べた「お得感」を強調している。

松屋のテーマは「お得に華やかに、ご家庭で楽しんで。」約 5 人前で税込み 2 万 4,840 円の「松屋オリジナル和洋オードブルおせち二段重」など手ごろな商品を用意する一方、著名レストラン監修による高級おせちにも力を入れている。 ザ・ペニンシュラ東京のシェフが担当した「和洋中三段重」は約 4 人前で税込み 4 万 8,600 円だ。 200 点ほどの平均価格は 2 万 7 千円で、昨年より数千円高い。 「外食よりお得感がある(鈴木章浩おせち担当バイヤー)」と、強気の価格設定で挑む。

高島屋も外食に比べた割安感をアピールしつつ「機動戦士ガンダム」などのキャラクターをあしらったアニメものや、スーパーフードを使った健康志向の商品を用意した。 そごう・西武は、自宅でつくったおせちと組み合わせられるよう、少量多品種の料理を小分けした品を充実させた。 「例年、おせちを買わずに外食したり自分でつくったりする新規顧客も開拓したい」と広報担当者は話す。

3 社が取り扱うおせちのごく一部には 10% の消費税率が適用される。 有田焼などの器を使った高額の商品だ。 食品そのものの価格が全体の 3 分の 2 未満の場合などに 10% となる。 (佐藤亜季、asahi = 9-2-19)


風邪、花粉の予防だけじゃない マスク需要拡大のワケ

家庭用マスクの売上高が拡大を続け、今年は新型インフルエンザが流行した 2009 年を上回る規模になる予測だ。 従来の風邪や花粉の対策とは違った、新たな活用法も登場している。 調査会社の富士経済によると、2009 年は新型インフルエンザの世界的流行で前年の約 2 倍の 340 億円になった。 その後はいったん落ち込むが、またじわじわと拡大し、19 年の予測は 370 億円となっている。

「ファッションの一部になるなど、本来の使い方ではない用途でマスクを求める人が多くなってきた」と話すのは大手ユニ・チャームの広報担当。 同社が 16 年に発売した「小顔にみえマスク」は、あご先から耳にかけてのラインを丸くすることで顔を小さく見せる効果をねらったもの。 若い女性を中心に人気で「すっぴん顔」を隠す用途でも使われているという。 ほかにも、エアコンの効いた室内で口元やのどを乾燥から守るために使うなど夏に使う人も増えている。 特に記録的な猛暑だった昨年はよく売れていたといい、「一年を通じて着用する人が増加傾向にある」としている。

色つきマスクへの需要も多いといい、今月は「超快適マスク」シリーズに、スタイリッシュな印象の黒や、女性に人気のある薄いピンク色を追加。 見た目の良さを気にかける人に向け、アピールしている。 日傘や帽子などを販売する「芦屋ロサブラン(兵庫県芦屋市)」がつくる、紫外線対策の布マスクも人気だ。 日傘と同じ生地を使い、紫外線を含めて完全遮光するタイプのマスクを 6 年前から売っている。 日常生活で受ける紫外線から肌を守ることができ、シミなどを気にする人から支持を得ている。 「毎年完売で生産が追いつかないほど」の売れ行きだという。 (金本有加、asahi = 8-27-19)

〈メモ〉 ユニ・チャームはマスクをつけた時の見た目が気になる人向けに、「超快適マスク 息ムレクリアタイプ ブラック(5 枚、店頭想定価格で税込み 418 円)」を今月、発売する。 色つきマスクは「病的な印象が薄い」と訪日客にも人気という。


チャイルドロックが裏目か 車内「閉じ込め」で女児死亡

那覇市で 24 日、車の中で倒れていた 3 歳の女児が、熱中症で亡くなった。車の後部座席のドアには、子どもが中から開けることができない「チャイルドロック」がかかっていた。 子どもを守る仕組みが、車内への「閉じ込め」を招いた可能性がある。 24 日午後 2 時ごろ、那覇市の住宅敷地内に止めていた乗用車の後部座席で、この家に住む女児 (3) が横向きに倒れているのを母親が見つけた。 女児は正午前から姿が見えなくなっており、見つけた母親が病院へ搬送したが、間もなく死亡が確認された。 沖縄県警は 25 日、死因は熱中症だったと発表した。

県警によると、車の後部座席はスライド式のドアで、両側ともチャイルドロックがかかり、内側から開けられないようになっていた。 車のカギはボタンでドアを開閉する方式で、後部座席から見つかった。 運転席と助手席のドアは施錠されていない状態だったという。 これらの状況から県警は、女児がカギで後部座席のドアを開けて乗り込み、外に出られなくなったとみている。 24 日の那覇市の最高気温は 32.2 度。 日本自動車連盟 (JAF) の実験では、外気温が 35 度の場合、正午からの 2 時間で車内の温度は 50 度近くまで上がる。 女児が車内に閉じ込められた時間帯も、高温になっていたとみられる。

車のカギは女児が持ち出したとみられ、沖縄県警幹部は「車のカギを子どもの手の届かない場所に置くなど、注意喚起の仕方を考えていく必要がある」と話している。 子どもが車内に取り残されて出られなくなるケースは相次いでいる。 JAF によると、昨年 8 月の 1 カ月間で、車内の子どもの救援件数は全国で 246 件に上った。 保護者らが車内にカギを置いて外に出て、子どもが過ってカギをかけた事例が多く、窓ガラスを割って救助したケースも 8 件あった。 チャイルドロックが関係した事例はなかったが、夏場は命に関わりかねないこともあり、消費者庁は「車内に子どもを残したまま、車から離れないように」と注意を呼びかけている。 (藤原慎一、asahi = 8-26-19)

1970 年代から搭載

チャイルドロックは、自動車の後部座席に乗っている子どもが、走行中に過ってドアを開けることができないようにする装備。 複数の自動車メーカーによると、1970 年代から搭載されるようになったという。 車種によって形状は異なるが、開けた後部ドアの内側にあるレバーを操作すると、車の外側からしかドアが開かなくなる仕組みが一般的。 運転席にロックをかけるスイッチがある車種もある。 メーカーによっては「チャイルドプルーフ」、「チャイルドセーフティドアロック」とも言う。 国土交通省によると、自動車にチャイルドロックを付ける義務や機能に関する決まりはない。 だが、日産自動車などの自動車メーカーは「トラックや商用車などを除いて、一般の車には標準装備されている」と説明している。(福島慎吾)