高くても売れる、タピオカ流行の謎 若者「ご飯代わり」

タピオカ入りの飲み物が空前のブームだ。 1 杯 500 円前後と安くはないが、若い女性を中心に支持を集め、出店が相次ぐ。 なぜなのか。 ファッションブランドの旗艦店が集まる東京都渋谷区の表参道。 路地に一歩入ると、タピオカミルクティーの店が立ち並ぶ。 所々に行列ができ、飲みながら歩く人の姿も。 月に 2 - 3 回飲むという女子専門学校生 (18) は「ちょっと高いけれど、おいしい。 ご褒美みたいな感じ。」 友達が集まる時にも「とりあえずタピオカだったら、反対する子がいなくてまとまりやすい」と言う。

ここ 1 - 2 年で都市部を中心に店が増え、首都圏だけで数百店とも言われる。 全国で 35 店を展開する「ゴンチャジャパン」の葛目良輔社長兼 CEO (48) は「女性を中心にカフェは好きだが、コーヒーは苦手という層を取り込んでいる」と解説する。 2020 年末までに 100 店に増やす計画だ。 タピオカは、芋の一種であるキャッサバから作る粒状の炭水化物だ。 世代・トレンド評論家の牛窪恵さん (51) はブームの背景に「3 食習慣の崩壊」をみる。

食品メーカーと共同で日本人の食生活を約 15 年調べてきた牛窪さんは、決まった時間に食事をとらず、おなかがすいたときにご飯とお菓子の中間のような物を食べる人が増えていると指摘。 「かみごたえがあって腹持ちのいいタピオカと、健康によさそうなお茶の組み合わせが、若者の心をとらえたのではないか」と話す。 都内の会社員女性 (31) は「週 2 - 3 回、昼ご飯の代わりに飲む」と言う。

実はタピオカ入りドリンクが注目されるのは 3 回目。 1990 年代や 2000 年代の初めにもブームがあったが、今回は規模が大きい。 クリームやゼリーなど様々なトッピングができ、お茶の種類も豊富でカラフルなため、インスタグラムなどの SNS で拡散している面もある。 一方、飲み残しの容器が街中に散乱し、新たな問題にもなっている。 過去 2 回と今回とで違うのは、タピオカミルクティーの発祥の地である台湾人気の高まりだ。 台湾観光局によると、18 年に日本から台湾へ旅行した人は 197 万人にのぼる。 10 年前の 1.8 倍に増え、過去最高を更新した。

旅行会社を対象にした日本旅行業協会のアンケートでも、台湾は近年、ハワイを抜いて海外旅行の人気ランキングの 1 位だ。 格安航空会社 (LCC) で安く旅行できるようになったのが大きい。 台湾発祥の「春水堂(チュンスイタン)」を展開するオアシスティーラウンジの木川瑞季社長 (40) は「現地で飲んだ人たちが口コミで広げてくれている」と言う。

木川さんは 1 杯約 500 円という値付けも人気の秘密と分析する。 過去 2 回のブーム時はもっと安かった。 木川さんが意識したのは、コーヒーチェーンのスターバックスだ。 500 円前後の高めの飲み物が多いが、ブランドとして消費者に受け入れられている。 「20 - 40 代の女性に飲んでもらうことを意識し、品質のよさを PR した。」 そこから下の世代である 10 代に広がっていったとみる。

調査会社の富士経済によると、コーヒーなどの喫茶市場の年間売り上げは 1 兆 4 千億円で毎年ほぼ変わっていないが、1 杯 400 円以上する比較的単価の高い商品が好調だという。 「最初から中高生向けに安い価格帯で出していたら、ここまで息の長い人気にならなかっただろう。 下から上へのブームの広がりはあまりない。 大人の女性が飲み、その憧れから 10 代の間でも火がついた。」と木川さんは話す。 (土屋亮、asahi= 6-20-19)


遺産の預貯金払い出し可能に 7 月から、上限 150 万円

亡くなった人の相続預貯金を遺産分割前でもおろせる払戻制度が、7 月に始まる。 故人のお金は遺産分割の対象になるため、口座が凍結されてしまう。 葬儀代の支払いなどに使えず、困る遺族もいた。 約 40 年ぶりの相続法見直しで、150 万円を上限に使い道を問わずにお金を引き出せる。 改正相続法は 2018 年に成立し、法務省が今年 7 月施行に向けて上限額など制度の詳細を詰めてきた。 全国銀行協会も、手続きや必要書類の告知を始めた。

故人(被相続人)の口座は、銀行が死去を知った時点で凍結される。 お金をおろすには、預貯金などの遺産分割協議を遺族間で終えて、必要書類を出すのが原則だ。 協議が長引くと、遺族が生活費や葬儀代の支払いに困る事態もあった。

新たな払戻制度だと、被相続人の口座残高の 3 分の 1 の範囲で、相続人は自らの法定相続分をおろせる。 例えば、相続人が長男と長女の 2 人で、被相続人の預貯金が 600 万円だと、長男は 3 分の 1 (200 万円)のうち、法定相続分である 2 分の 1 (100 万円)をおろせる。 長女の同意は不要だ。 長女もまた同様におろせる。 同一金融機関での上限は 1 人 150 万円。 複数の金融機関に口座があれば、別々に計算できる。

全国銀行協会などによると、新制度の必要書類は、▽ 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書、▽ 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書、▽ 預金を払い戻す人の印鑑証明書(金融機関によっても一部異なる)。 これまで必要だった遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書は不要だ。 口座凍結でお金を引き出せないため、現在は被相続人のキャッシュカードで死後に現金自動出入機 (ATM) からこっそりおろす人もいる。 こうした行為は遺族間のトラブルを生む恐れがあり、分割協議中に引き出す方法が求められていた。

また、金融機関によっては現在も、遺産分割前に葬儀代などを便宜的に払い出す対応がある。 ただ、葬儀の領収書や請求書が必要となるなど制約が多かった。 新制度でも、書類確認などに一定の時間はかかる。 メガバンクの三井住友銀行の場合、払戻制度の申込書提出から払い戻しまでは 1 カ月が目安。 遺族の人数や構成によっては前後する。 同行は「遺産分割協議が長引く顧客はこれまで、生活費や葬儀代を引き出すのが難しかった。 新制度が始まれば、ご遺族にとって有効だ。」という。 (鈴木友里子、asahi = 6-16-19)


おむすび海苔なしに? 一斉値上げ、漁師「海変わった」

食卓や弁当で親しみ深いノリの製造大手が今月、値上げにかじを切った。 背景にあるのは、1972 (昭和 47)年度以来という養殖ノリの凶作だ。 さまざまな原因が指摘されているが、対策は道半ば。 「おむすびにノリを巻けなくなる」という悲鳴も上がっている。

やむを得ず海苔製品の価格を改定させていただくことといたしました - -。 今年 4 月、白子(東京)、大森屋(大阪)、ニコニコのり(大阪)のノリ製造大手 3 社が 6 月出荷分からの値上げをウェブサイトで相次いで発表した。 家庭用商品の値上げ率は 0.5 - 8.4%。 このうちの 1 社の担当者は、「その後から卸業者に理解を求めて回った。 今は小売業者に事情を説明している。」 東京都内のノリ店の店主は「駆け込み需要なのか、5 月は客が多かった」と話す。

値上げの背景にあるのは、全国で 46 年ぶりの水準というノリの凶作だ。 「もう無理。」 千葉県富津市のノリ漁師、小柴浩幸さん (53) は、この春での引退を決めた。 15 歳からノリ一筋。 「海が変わった。 体を酷使しても、採れる量がぐっと減った。」と語る。 「江戸前」で知られる東京湾の南東に位置するこの海で、異変が始まったのは 4 年前。 収穫の準備に入る 11 月のことだ。 小柴さんが所属する新富津漁業協同組合の小泉敏組合長 (64) は「急にノリが短くなり、なくなってしまった」と振り返る。 「理由はわからないし、みんなパニックになった。」 生産量は 5 年前から半減し、この秋には漁協のノリ漁師 73 人中 10 人以上が養殖をやめるという。

全国漁連のり事業推進協議会によると、ノリの出荷量にあたる全国の共販枚数は昨年度、約 63 億 7 千万枚(1 枚は 21 センチ x 19 センチ)。 約 107 億枚だった 2001 年度から 4 割減り、機械化が進む前の 1972 年度(約 61 億枚)並みに落ち込んだ。 有明海を擁し、共販枚数全国トップの佐賀県も、昨年度は 16 年ぶりの低水準(前年度比 89%)だった。 県の担当者は晴れ空が続いた 1 月を振り返り、「ノリの栄養につながる雨が降ってほしいと祈りながら過ごした。」 全国 2 位の兵庫県も前年度比で約 8 割。 三重県では 4 割落ち込み、「原因を調べているところ(県漁連担当者)」という。

「おむすびにノリ、欠かせない」との声も

同協議会によると、産地での共販価格は 08 年度に 1 枚平均 8.8 円だったが、昨年度は 13.04 円と 1.5 倍に膨らんだ。 大手メーカーの値上げを受け、スーパー各社は「いずれ店頭でも値上げせざるを得ない」、「上げる可能性はある」と口をそろえる。

おむすび専門店「ほんのり屋」を 12 店舗展開する「ジェイアール東日本フードビジネス(東京)」は、価格の上昇を背景に 2、3 年前からノリを巻かない商品の開発に注力。 「十穀米むすび」が人気を博しているが、「おむすびにノリは欠かせない」との声も根強い。 担当者は「おむすびは手軽な値段で買われるもの。 このままノリの値上げが続けば、ノリが巻かれなくなる日が来るかもしれない。」と危機感を募らせる。

ノリ製造・卸の老舗「吉田商店(東京)」の古市尚久社長 (62) は「今春、のれんを下ろした問屋もある」と打ち明ける。 利益を削って耐えていたが、今年はすし屋に出すノリを 35 年ぶりに値上げしたという。 「これから店にも一般の食卓にも影響が出てくるでしょう。」

色落ちも

東京海洋大の二羽恭介准教授(応用藻類学)は「全国で共通するのは、高水温の影響とノリの色落ち」と語る。 「養殖が始まる秋に水温が十分に下がらず、ノリがよく育たなかったり、漁期そのものが短くなったりしている」と指摘する。 千葉県では、クロダイがノリを食べているのを 17 年に県水産総合研究センターが撮影した。 高水温で魚の活性化につながった可能性もあるという。 防御ネットで囲う対策をしているが、それでも育たない場所があり、同センター東京湾漁業研究所の川津浩二所長は「複合的な要因が考えられる」と話す。

ノリの生産減にもつながる色落ちを生むのは、窒素やリンといった栄養塩の不足だ。 兵庫県の明石浦漁業協同組合の戎本裕明組合長 (56) は「ひどくなったのは 90 年代後半。 水が澄んでいかりまで綱が見えると、決まって色落ちして回復しなかった」と話す。 県の担当者は「下水の処理能力の向上などで、水がきれいになりすぎた。」 窒素やリンの濃度が国が定める環境基準よりはるかに低くなり、全国で初めて「下限」の目標値設定に動いている。 (荻原千明、asahi = 6-12-19)


犬猫にチップ義務化、飼い主特定 改正動物愛護法が成立

販売用の犬猫へのマイクロチップの装着義務化などを柱とする議員立法の改正動物愛護法が 12 日、参議院本会議で全会一致で可決され、成立した。 販売を始められる時期も現状の生後 49 日(7 週)超から同 56 日(8 週)超に改めた。 ただ、特定の条件で繁殖か販売される「天然記念物として指定された犬(日本犬)」は例外として生後 7 週超となる。

マイクロチップは獣医が皮膚に埋め込む。 飼い主を明示することで、遺棄や虐待を防ぎ、災害時などに飼い主を特定しやすいといった効果がある。 チップは飼い主に販売するまでの間に埋め込むことが義務づけられる。 繁殖業者(ブリーダー)のもとにいる段階で行われる見通し。 環境相への登録も義務化される。 生後 7 週超が認められる対象は、日本犬を専門の繁殖業者が一般の飼い主に直接販売する場合とされた。 日本犬は柴犬(しばいぬ)、秋田犬、紀州犬など 6 種が対象。

ペットの虐待などへの対応として、厳罰化も盛り込む。 殺傷に対する罰則を 5 年以下の懲役または 500 万円以下の罰金に強化、虐待や遺棄の罰則に 1 年以下の懲役を加える。 超党派の「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟(会長・尾辻秀久参院議員)」と、「自民党どうぶつ愛護議員連盟(会長・鴨下一郎衆院議員)」が原案を調整し、議員立法で提出していた。 (松尾一郎、桑原紀彦、asahi = 6-12-19)


コンタクト 3 社に立ち入り 公取委、販売拘束疑い

小売店によるコンタクトレンズの販売方法を不当に拘束した疑いが強まったとして、公正取引委員会は 11 日、医療機器メーカー 3 社の本社など関係先を独占禁止法違反(不公正な取引方法)容疑で一斉に立ち入り検査した。 関係者への取材で分かった。 検査対象はいずれも業界大手の日本アルコン(東京・港)、クーパービジョン・ジャパン(同)、シード。 3 社は「調査には全面的に協力する」などとコメントした。

関係者によると、3 社は遅くとも数年前から大手小売店などに対し、チラシ、ホームページなどで自社製の使い捨てコンタクトレンズの小売価格を明示しないことを要求したとされる。 「特別価格」、「店頭発表」など具体的な価格が分からない表示をさせた疑いが持たれている。 店頭販売と比較し、割安な傾向にあるインターネット販売で一部商品を取り扱わないよう求めた形跡もあるという。

こうした要求の背景には小売店の価格競争と連動し、卸値が下落するのを回避する狙いがあったとみられる。 メーカーの利益確保のために消費者が割高な負担を強いられていた可能性がある。 コンタクトレンズを巡っては、業界最大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(東京・千代田)が今回の違反容疑と同じ要求を行い、公取委が問題視してきた。 公取委はネット通販の制限について、独禁法違反の恐れがあるとして 2002 年に同社に対し警告を出した。 価格表示に対する拘束についても 10 年に同法違反を認定し、同社に再発防止を求める排除措置を命じている。

コンタクトレンズは人気の高い 1 日使い捨てタイプで、片眼1カ月分が 1 千 - 3 千円台で販売されている。 日本コンタクトレンズ協会(東京・文京)のホームページによると、コンタクトレンズの国内市場規模(出荷額)は 18 年時点で 2,347 億円。 09 年時点は 1,668 億円で増加傾向にある。 独禁法は、取引先のビジネスを不当に縛る行為を「拘束条件付き取引」として禁じる。 同法違反が認定された場合は排除措置の対象となる。 行政処分に必要な証拠が集まらなかったものの、違反の恐れがあるケースは警告で行為の取りやめを指示している。 (nikkei = 6-11-19)


香取市、成人式は 20 歳で 「18 歳は大学受験の最中」

千葉県香取市は、民法改正で成人年齢が 20 歳から 18 歳に引き下げられる 2022 年度以降も、20 歳を対象として成人式を開くことを決めた。 宇井成一市長が 5 月 30 日の記者会見で発表した。

市では昨年 9 月、法改正の影響を受ける市内の中学 2、3 年生と市内の高校の 1 年生(いずれも当時)、保護者、学校関係者ら計約 4 千人を対象にアンケートをした。 「成人式を 20 歳、または 18 歳のどちらで行うのが望ましいか」という設問に、回答者 1,624 人のうち、20 歳を希望した人が 90.2% (1,465 人)、18 歳を希望したのが 9.1% (147 人)となった。 新成人となる対象者からは「20 歳の成人式で仲間がどんな風になっていて、自分がどの位置にいるか知りたい」、「18 歳では大学受験の最中で楽しめない」などの意見が寄せられ、保護者からは「18 歳で式をする方がスムーズだが、受験などに重なって欠席する人が増えそう」との声があった。

宇井市長は「アンケートの結果、20 歳での開催希望が 9 割以上を占めたので従来通りとすることにした」と話した。 式典の名称は今後、新成人による実行委員会などで検討する予定。 県内ではすでに松戸市が今年 4 月、22 年度以降も 20 歳での成人式開催を決めている。 (根岸敦生、asahi = 6-9-19)


昨年生まれの赤ちゃん、最少 91 万人 出生率 3 年連続減

2018 年に国内で生まれた日本人の子どもの数(出生数)は 91 万 8,397 人で、統計がある 1899 年以降で最も少なかった。 これまで最少だった前年を 2 万 7,668 人下回った。 出生数から死亡数を引いた自然減は 44 万 4,085 人で過去最大の減少幅となり、少子化と人口減少が続く。 厚生労働省が 7 日、18 年の人口動態統計を公表した。

1 人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数を示す「合計特殊出生率」は、前年より 0.01 ポイント低い 1.42 で、3 年連続で下がった。 人口の維持に必要とされる 2.07 を大きく下回っている。 都道府県別では沖縄が 1.89 で最も高く、東京が 1.20 で最低だった。 政府は、子どもを作りたいという希望がかなった場合に見込める出生率「希望出生率 1.8」の実現を掲げて少子化対策を進めているが、低下傾向が続いている。

出生数は、第 2 次ベビーブームが終わった 1974 年以降、減少傾向が続く。 第 2 次ブームで生まれた団塊ジュニア世代が 40 代半ばになるなど、親になる世代の人口が減っているため、厚労省は今後も出生数は減り続けるとみている。 一方、死亡数は戦後最多の 136 万 2,482 人。 9 年連続で増え、前年より 2 万 2,085 人多かった。 高齢化の影響で、2012 年からは死亡数の 7 割超が 75 歳以上になっている。 18 年 10 月 1 日現在の人口は約 1 億 2,422 万人で、65 歳以上が 28.5% を占めた。

結婚は 6 年連続で減り、58 万 6,438 組。 前年より 2 万 428 組少なく、戦後最少を更新した。 再婚の割合は夫 19.7%、妻 16.9% で、どちらも前年より 0.2 ポイント上昇した。 離婚は 20 万 8,333 組で、前年より 3,929 組減った。 平均初婚年齢は 14 年から変わっておらず、夫 31.1 歳、妻 29.4 歳だった。 都道府県別で最も低いのは宮崎で、夫 29.7 歳、妻 28.7 歳。 最も高かったのは東京で、夫 32.3 歳、妻 30.4 歳だった。

厚労省の担当者は「少子化の理由には、子育てと仕事の両立の難しさや経済的事情などが考えられる。 子どもを産みたい人が産める環境、安心して子育てできる環境を整えるための施策の促進が必要だ。」と話す。 (浜田知宏、asahi = 6-7-19)


パンプス着用、社会通念で 厚労相、容認とも取れる発言

女性にハイヒールやパンプスを強制する職場があることに関し、根本匠厚生労働相は 5 日の衆院厚労委員会で「社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲かと思います」と述べた。 事実上の容認とも取れる発言だ。 足を痛めるなどとして着用強制に反対する活動が広がっており、根本氏の発言は波紋を呼びそうだ。 職場でのハイヒールやパンプスの着用を巡っては、強制をやめるよう「靴・苦痛」を掛け合わせた「#KuToo」と名付けられた動きがオンラインで広がり、3 日には約 1 万 8,800 人超の署名と要望書が厚労省に提出された。 (kyodo = 6-5-19)


「結婚は非喫煙者と」 7 割が希望、半数がやめること条件

将来、結婚する相手はたばこを吸わない人が良い - -。 独身者の約 7 割がそう考えているとする調査結果を、国立がん研究センターがまとめた。 このうち半数近くが、「たばこをやめることを結婚の条件とする」と答えた。 調査は今年 3 月、たばこへの意識を調べるためにインターネットで実施。 20 - 90 代の男女 2 千人(喫煙者 1 千人を含む)から回答を得た。

独身者 794 人に結婚相手の喫煙について聞くと、「絶対たばこを吸わない人が良い」と答えた人は 46.4%。 「できれば」 23.4% で計 69.8% だった。 うち、「たばこをやめることを結婚の条件とする」が 45.2%。 「家の中で吸わないことを条件」が 18.1%、「自分の前で吸わないことを条件」が 5.8% いた。 「たばこは条件としない」と回答した人は 19.0% だった。

未成年の子どもがいる 448 人に、成人したときの子の喫煙について聞くと、「絶対吸わせたくない」、「できれば吸わないでほしい」と答えた人が、非喫煙者で合わせて 8 割超、喫煙者でも 7 割近くに上った。 調査をしたセンターの若尾文彦・がん対策情報センター長は「たばこを吸うことや受動喫煙による健康への影響についての知識が、多くの人に広まってきている結果ではないか」と指摘する。 (土肥修一、asahi = 6-4-19)


結婚式ではスマホ撮影禁止 広がる「デバイスフリー」

バージンロードでパシャリ、指輪交換でパシャリ、ケーキカットでパシャリ - - カメラやスマートフォンのシャッター音が鳴り響くのがおなじみの結婚式。 そんななか、海外ではカメラやスマートフォンの使用を禁止する結婚式が広がってきている。 「アンプラグド(電源を抜いた)」や「デバイスフリー(電子機器なし)」と呼ばれる。 せっかくの晴れの舞台を写真に収めたいのになぜ?

昨年 10 月 20 日、米カリフォルニア州の海辺で行われたエイミー・ハートスタインさん (30) と、マイケル・ウィンタースさん (30) の結婚式。 司会者が式の冒頭、集まった出席者たちにこう言い渡した。 「みなさん、どうぞ電子機器やスマホをしまってください。 そしてこの 2 人との時間を楽しみましょう。 会場にはなんと、この特別な日を記録するために、2 人以上のカメラマンと、ビデオ撮影のカメラマンまでいます。 プロに任せましょう。」

出席者はその言葉に従い、あたたかい雰囲気の中で式が行われた。 新郎新婦にスマホをかざす出席者の姿はどこにもなかった。 なぜこのような結婚式にしたのか。 新郎新婦は言う。 「友人の多くが『デバイスフリー』で結婚式をしていて、いいなと思ったのがきっかけ。 とても一般的になっている。(エイミーさん)」 「出席してくれる人に、撮影に夢中になるのではなく、その場を楽しんでほしかった。 僕たち自身も、式の途中で会場を見渡した時、スマホじゃなくて家族や友達の笑顔を見たかったから。(マイケルさん)」

画像共有サイト「ピンタレスト」では、「スマホを持ち込まないで」と伝える結婚式用メッセージボードのアイデアが多く紹介されている。 豪 ABC テレビは昨年配信の記事で「ここ 3 年間はほとんどのカップルがスマホ禁止の結婚式を希望している」と話す司祭の声を紹介。 「SNS には自分たちが最初に写真を投稿したい」というカップルの声もとりあげた。 多くの人が SNS を利用するようになり、ネットには様々な画像があふれる。 ただ、一生に何度もない結婚式の画像の投稿は自分の手で管理したい、という新郎新婦の思いもあるようだ。

米紙ニューヨーク・タイムズが 2013 年に配信した記事によると、スマホ禁止の結婚式は当初、SNS などに写真が流出することをおそれる有名人らから始まったという。 こうした海外の動きは、国内にも波及するのだろうか。 約 10 年にわたりブライダル業界で働いてきたウェディングプランナーの米田由香さんは、これまで関わった結婚式で、「撮影を禁止したカップルはゼロ」と話す。

一部の神前式やキリスト教会式では撮影を制限される場合があるが、海外の「デバイスフリー」とは異なり、厳格な宗教上の理由によるもの。 披露宴のケーキカットなどでは司会者が「シャッターチャンス」と盛り上げることも多い。 米田さんは「『たくさん写真を撮ってシェアして欲しい』というカップルの方がほとんど。 日本で広まるにはしばらくかかるのでは。」という。 (栗林史子、asahi = 5-29-19)


「食べられるのに捨てる」は違法に 食品ロス削減法成立

まだ食べられるのに捨ててしまう「食品ロス」の削減を目指す議員立法「食品ロス削減推進法」が 24 日、参院本会議で全会一致で可決され、成立した。 「国民運動」として食品ロス削減に取り組むよう求めている。 政府に対して基本方針の策定を義務づけ、自治体にはそれを踏まえた削減推進計画を作るよう求める。 事業者には国や自治体の施策に協力するよう求め、消費者には食べ物の買い方や調理方法を改善するなど自主的な取り組みを促す。 まだ食べられる食品を、支援が必要な人に提供する「フードバンク活動」を支援する。 (野村杏実、asahi = 5-24-19)


セブン、期限切れ迫る弁当にポイント 秋から全国 2 万店

セブン-イレブン・ジャパンは、消費期限が迫った弁当やおにぎりなどの食品を買った場合、自社が展開する電子マネーのポイントで還元するしくみをこの秋から、国内の約 2 万店で導入する方針を決めた。 期限切れ直前の商品を実質的に値下げすることで、食品ロスの削減をめざす。 ローソンも同様のしくみの導入に向けて、6 月から実証実験に乗り出す。

セブン-イレブンでポイント付与の対象になるのは、おにぎりや弁当、生麺といった消費期限が 1 日の「デイリー商品」を中心に 500 品目ほどという。 消費期限が 4 - 5 時間後に迫った段階で買った客に、自社の電子マネー「nanaco (ナナコ)」のポイントとして定価の 5% ほどを還元する方向で検討している。 現金やクレジットカード払いでは還元されない。 セブン-イレブンでの nanaco の利用率は 25% ほどという。

消費期限直前の値引きは「見切り販売」と呼ばれるが、セブン側は「制限していない」との立場。 ただし、「かといって本部は見切りを推奨していない。 その意向には逆らいにくい(あるコンビニ店主)」との声もあり、広がっていなかった。 このため、消費期限が近づいたコンビニ食品の大半が廃棄処分されてきた。 食品ロスの費用の大半は店側が負担しており、ロスがあっても本部の損失は少ない形になっている。 今回のポイント還元についてはすべて本部が負担するとし、すでに直営店での実験をすませたという。

ローソンの 6 月からの実験でも、消費期限が迫った商品を買った客で、「Ponta (ポンタ)」、「d ポイント」カードの会員に 5% ほどを還元する。 愛媛、沖縄両県内の店で、シールで示した商品が対象という。

鈍い成長、ビジネスモデル見直し

国内にあるコンビニは昨年 12 月時点で 5 万 5,743 店(日本フランチャイズチェーン協会調べ)。 ただ、最近は伸び率が鈍って「飽和状態」にあるとの見方もある。 24 時間営業や定価販売など、消費者に便利さを提供するためとして本部が強い指導力を発揮してきたこれまでのビジネスモデルは、変化を迫られている。 24 時間営業をめぐっては、大阪府のセブン-イレブンの店が 2 月から営業時間を短縮。 アルバイトが集まらなかったためで、こうした人手不足は全国で課題になっている。

こうした流れを受け、セブン-イレブンやファミリーマートは店側が希望すれば時間を短くする実験を開始。 人手不足を補うための「セルフレジ」の導入も各社が進めている。 2 月の節分シーズンに売れ残った恵方巻きの大量廃棄など、食品ロスも社会問題になっている。 その対策として今回、原則だった定価販売を部分的に見直した形だ。 (土居新平、asahi = 5-17-19)

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コンビニ、ついに「飽和」? 大手が出店に急ブレーキ

人口減少に伴う人手の不足を背景に、コンビニ大手が戦略の変更を余儀なくされた。 営業時間を 24 時間から縮める試みを強いられ、出店のペースも落とさざるを得なくなった。 国内のコンビニは「飽和状態」を迎えたのか。 コンビニ 3 位ローソンの竹増貞信社長は 11 日の決算会見で、国内の店の 19 年度の増減数をゼロにする計画を明らかにした。 「質を追いかけていく」、「持続可能なモデルをつくっていく」などと話した。 人手を補う「セルフレジ」を年内に全店に導入するなど対策も進める。

首位セブン-イレブン・ジャパンの 19 年度の増加数は、初めて出店する沖縄を含め 150 を予定する。 ほぼ 40 年ぶりの低水準だ。 親会社・セブン & アイ・ホールディングスの井阪隆一社長は 4 日の会見で「意思ある踊り場をつくる。」 新たな出店よりも、既存店の改装に力を入れる。 従来は投資額の 6 割を新規出店にあててきたが、19 年度からは 6 割を既存店に振り向ける。 売り上げが伸びている冷凍食品売り場の拡大など店の改装を進める。

2 位ファミリーマートも 19 年度は、前の年度の 2 倍にあたる 1,130 億円を既存店投資にあてる。 コンビニの一般的なフランチャイズ契約では、各社の本部が経営指導の対価として店主から受け取る料金は、売上高などで決まる。 チェーン全体の売上高が伸びれば、本部の実入りは膨らむ。 規模の効果で商品の仕入れ価格を抑えられる。 大量出店の原動力の一つになってきた。

しかし、人口が減り始めた国内に他社も含めて 5 万 5 千以上のコンビニがひしめき、バイトも客も奪い合う。 リクルートジョブズによると、3 大都市圏のコンビニバイトの時給は、この 8 年間で 1 割ほど上昇。 その負担はフランチャイズ契約に沿って、店主にのしかかっている。 セブンの 1 日 1 店あたりの売上高が頭打ちになるなど、店主を取り巻く環境は厳しさを増す。 こうした不満は、セブン本部と大阪府東大阪市のセブン店主の対立や、経済産業省の各社店主へのアンケートなどで表面化。 各社とも対応せざるを得なくなった。

営業時間については、ローソンは 24 時間から縮める時短営業を全国 41 店で認めており、5 月にはさらに 2 店で認める。 ほかにも相談があり「個別に認めていく(竹増氏)」という。 セブンは 3 月下旬から順次、時短実験を十数店で進めている。 その結果を踏まえて対応するが、営業時間を店主の判断に委ねる「選択制」には否定的だ。 ファミリーマートは時短実験の対象を 6 月から FC 店に広げる方針。 秋田、東京、長崎の計 270 ほどの店に参加を呼びかけており、セブンより大規模になる可能性がある。

ただ、ファミマの沢田貴司社長は 24 時間営業の原則見直しにつながるかどうかについては「実験の影響をみて考えたい。」 各社とも消費者の反応や物流システムの見直しなどが課題となっており、「脱 24 時間」が本格的に広がるかは、まだ見通せない。

決算、コスト増の影響も

コンビニ大手の 18 年度(19 年 2 月期)決算が出そろった。 人手を補う設備投資や、既存店をてこ入れするコストの増加が影を落とした企業もある。 セブン-イレブン・ジャパンの営業利益は前年比 0.4% 増の 2,450 億円。 新商品の売り上げは伸びたが、客数の減少が重しになった。 ファミリーマートは採算の悪い店を閉めた効果が出て単体の営業利益が 29.4% 増えた。 ローソンの国内コンビニ事業の営業利益は 10.4% 減。 営業減益は 2 年連続となった。 新型レジの導入などの費用が膨らんだ。 4 位のミニストップは 5 億円の営業赤字。 営業赤字は 93 年度の上場以来初めてだ。 (佐藤亜季、澄川卓也、asahi = 4-12-19)

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うきうき半袖ワンピース、1 週間早く夏服に衣替え 神戸

神戸市灘区の私立松蔭中・高校で 13 日、衣替えがあり、生徒たちは白い半袖のワンピース姿の夏服で登校した。 同校によると、1925 年から夏服の制服を導入。 最寄りの阪急王子公園駅や JR 灘駅から学校までは約 1 キロメートルの長い上り坂が続く。 13 日は暑くなる予報が出ていたため、例年より 1 週間早く夏服に切り替えたという。(小林一茂、asahi = 5-13-19)


原因は未知の竜巻か 5 人死亡の対馬・漁船連続転覆事故

2015 年 9 月、長崎県対馬沖で漁船 5 隻が転覆し 5 人が死亡する事故があった。 東京大と気象庁が当時の気象状況をスーパーコンピューター「京」で再現したところ、巨大な渦の中で、竜巻に似た小さな渦が繰り返し発生していた可能性があることがわかった。

15 年 9 月 1 日未明、対馬東方沖でイカ釣り漁船 5 隻が相次いで転覆した。 救助された漁師が「竜巻のようだった」と証言したが、海上では痕跡が残らず、国の運輸安全委員会は「竜巻かどうか明らかにできなかった」との報告をまとめた。 その後、東大大気海洋研究所と気象庁気象研究所の研究チームが、当時の気象データをもとに京で再現シミュレーションを行った。

その結果、当時の海上に直径 30 キロ、高さ 4 キロほどの巨大な渦ができ、その内部で直径 1 キロ以下の竜巻状の渦が 1 時間に 10 個以上、繰り返し発生する様子がみられた。 巨大な渦内部の風の変化によって引き起こされたものとみられ、積乱雲が原因で起きる一般的な竜巻とは異なるタイプという。 当時の風速は最大で 50 メートル以上だった可能性があり、チームは「漁船を転覆させた突風は竜巻状の渦が引き起こしたものと考えられる」と結論づけた。

11 年 8 月に山口県西方沖で漁船が転覆し、死者が出たときの気象条件を同様にシミュレーションした結果、巨大な渦が発生する様子が確認された。 巨大な渦は海面付近で回転が強いなどこれまで知られていない特徴が分かったが、なぜ発生するかは不明という。 チームの栃本英伍・東大特任研究員は「現在はシミュレーションの段階だが、発生する条件などの研究を進め、突風の予測や予報につなげられれば」と話している。 (竹野内崇宏、asahi = 5-7-19)


空き家 850 万戸、自治体の撤去は 118 件 進まぬ交渉

倒壊の恐れや衛生上の問題がある空き家を自治体が撤去できる法律が施行されて 4 年。 実績は 100 件余りにとどまっている。 全国の空き家は総住宅数の 1 割強、850 万戸近くあり、周囲に影響を及ぼすケースも出ているが、自治体の人手やノウハウ不足に加え、私有財産の強制的な取り壊しは容易ではない実情がある。 総務省は 4 月下旬、2018 年の調査で、全国の空き家がアパートなどの空き室も含めて 846 万戸あり、総住宅数の 13.6% を占めると発表した。 いずれも過去最高で、少子高齢化に伴い、急増している。

自治体が強制撤去する際に根拠となる空き家対策特別措置法は 15 年 2 - 5 月、順次施行された。 倒壊の恐れが高い、衛生上著しく有害 - - といった空き家を「特定空き家」に認定。 撤去や修繕の助言・指導、勧告、命令ができ、従わなければ市区町村長が代執行して強制的に撤去できる。 放置すると、衛生面や防犯、景観上の問題が生じる可能性があるほか、災害時に損壊して周囲に危険を及ぼす恐れがあるからだ。 国の調査によると、助言・指導に至ったのは 15 年度以降、計 1 万 3,084 件。 代執行に踏みきった事例は、計 118 件。 15 年度が 9 件、16 年度が 37 件、17 年度が 52 件、18 年度(半年間)が 20 件だった。

ただ、代執行は所有者の理解や金銭的負担のほか、そもそも所有権が複雑だったり交渉相手が見つからなかったり、簡単には進まないのが現状だ。 国土交通省は代執行に至るまでの対策も重視し、17 年 10 月には空き家の利活用を促進するため、空き家・空き地バンクを開設。 現在約 600 自治体が参加し、延べ約 9 千件の情報を掲載している。 自治体も撤去費の補助や、更地にしても税負担を軽減するといった施策を設け、所有者の自発的な対応を促している。

「ごみ屋敷」撤去の実情は

老朽化した家屋は傾き、散乱したごみが敷地外にまではみ出していた - -。 古い空き家など危険な建物が 160 件ほどある東京都板橋区。 区は 2 年前、成増地区の住宅街にあった築 60 年ほどの木造住宅を代執行で撤去した。 「道路までごみの山。 特に夏場は鼻をつくような臭いがひどく、窓を開けられなかった。」 近くの女性は、今は更地となった現場を見ながらそう振り返る。 弁当の食べかす、布団、100 本以上のビニール傘 …。 ごみは 2 メートルほど積み上がり、ゴキブリや蚊がわいたという。 ただ、所有者の独居男性には「けんかになるのが嫌で何も言えなかった」と話す。

区によると、ごみの臭いがひどく、近隣のアパートに居住者が入居しないといった影響も出ていた。 近くの住民から 20 年以上前から相談があり、以来、数十回にわたって男性に改善を求めてきたが、「ごみは自分のもの」と応じないまま、15 年に亡くなった。 その後、男性の身内は相続を放棄。 傾いた建物を、敷地内で積み上がったごみが支える状態が続いた。 撤去費約 2 千万円は敷地の売却代などが充てられ、一部で税金が使われる可能性も残っているが、区は「建物倒壊の危険もあり、早急に解決する必要があった」と説明する。

ただ、区が空き家対策特別措置法に基づく代執行に踏みきったのは、この 1 件のみだ。 所有者に修復や除却といった対応を求め、代執行は「最後の手段」と位置づける。 所有者が反対する中、私有財産である空き家を強制撤去すれば、訴訟のリスクを抱えるからだ。 所有者がわからないケースもあり、案件ごとに対応方法が異なるため、代執行のノウハウが不足しがちという側面もある。

「都市の空閑地・空き家を考える」の編著者、東大大学院の浅見泰司教授は「代執行をする前に所有者に適切な対処を求めることが第一。 空き家の放置が有利にならないような制度を構築すべきだ」と指摘。 その上で、「所有者が空き家を不要としたり、所有者が不明だったりした場合、公共財産に移管できる仕組み作りが必要」と話す。 (岡戸佑樹、asahi = 5-5-19)


フラット 35 を悪用し不動産投資 「住む」偽り賃貸用に

1% 程度の固定低金利で長年借りられる住宅ローン「フラット 35」を、不動産投資に使う不正が起きていることがわかった。 ローンを提供する住宅金融支援機構も「契約違反の可能性がある」とみて調査を始め、不正を確認すれば全額返済を求める方針だ。

不正が見つかったのは、東京都内の中古マンション販売会社が売った物件向けのローン。 元男性社員 (50) が朝日新聞の取材に応じ、「フラット 35 を投資目的で使ったのは、昨年 6 月までの約 2 年間に売った 150 戸前後。 仲間の仲介業者らと一緒にやった。 このしくみでトップセールスマンになれた。」と証言した。 販売会社は昨夏にこの社員を懲戒解雇し、昨秋までに機構へ届け出た。 利用客の一部も機構から事情を聴かれている。

元社員が関与した不正な融資の顧客は 20 代 - 30 代前半の若者を中心に 100 人超。 融資額は 1 人 2 千万 - 3 千万円ほどで、計数十億円規模になる。 不動産業者らがお金に困った若者らを、投資セミナーやネット上で勧誘したとみられる。 機構によると、こうした不正が大規模に発覚した例はないという。 同様な手口がほかの業者でもあれば、不正はさらに広がる。

元社員によると、利用客は年収 300 万円台以下の所得層が大半で、200 万円前後の借金を抱える人も多かった。 「借金を帳消しにして不動産も持てる」などと勧誘していた。 利用客はマンションの賃貸収入でローンを返す。 本来は投資用なのに「住む」と偽って融資を引き出す手口で、不動産業界では「なんちゃって」と呼ばれる。 フラット 35 を借りる際、利用客は不動産業者を経由し、機構の提携先の取り次ぎ金融機関に申し込む。

業者らは本来の売却額を数百万円水増しした契約書を提出。 物件価値を上回る融資引き出しの不正もした。 その分は借金の肩代わりや、利用客を探したブローカーへの紹介料などに充てた。 融資の審査は金融機関や機構が担うが、不正はチェックのすきをつかれた。 利用客は業者の指示で、本人の居住を示すために当初だけ物件に住民票を移し、ほどなく元に戻す。 また、機構からの郵便物は転送させるなどして発覚を防いだ。

機構は政府が 7 千億円超を全額出資する独立行政法人。 自らは直接貸さず、取り次ぎ金融機関に融資実務を担ってもらい、その債権買い取りで資金を出している。 機構のローンを巡ってはこれまでも融資金をだまし取るなどの不正が続発。 会計検査院が 2012 年、十分な審査態勢を金融機関とともに築くように求めた。 機構は今回の不正を踏まえ、フラット 35 が投資目的で使えないことを強調するなど対策に着手。 「必要に応じて審査態勢をさらに強化する」という。 (藤田知也、asahi = 5-4-19)

フラット 35 住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が民間銀行などと連携して提供する住宅ローン。 国民の住宅取得を支えるため、低い固定金利で最長 35 年間借りられる。 転勤などで入居途中から賃貸に回すことは認められるが、当初から投資目的で借りると融資契約に違反する。 住宅ローンは不動産投資向けローンと比べ、金利が低い。