ワイン好む高齢者、認知機能高い? 研究者「量程々に」

ワインを飲むお年寄りは飲まない人に比べて認知機能が高い可能性があるという研究結果を大阪大学の樺山舞助教(地域看護学)らがまとめた。 6 日に仙台市で始まった日本老年医学会の学術集会で発表する。 2016 - 17 年、東京と兵庫に住む 76 歳前後と 86 歳前後のお年寄り計 1,217 人を対象に、飲酒習慣と認知機能などを調べた。

67 人がワインを飲み、1,150 人は飲んでいなかった。 記憶力や注意力をみる検査で認知機能を評価すると、ワインを飲む人の認知機能は有意に高かった。 一方、ビールや日本酒などワイン以外の 6 種の酒では、認知機能に有意差はみられなかった。 これまでの別の研究で、ワインを飲むと認知機能の低下を防ぐ効果が報告されている。 赤ワインに含まれるポリフェノールなどによる抗酸化作用が理由に考えられるという。

同大学院の共同研究者、赤木優也さんは「ワインを好む人は健康志向が強いという影響も考えられる。 ワインに認知症の予防効果があるとわかったわけではなく、さらなる研究が必要。 過度な飲酒は認知機能に悪影響なので量はほどほどに。」と話す。 飲酒と認知機能の関係は世界中で調べられているが、酒の種類との関係や高齢者を対象にした研究は珍しいという。

また、種類に無関係にアルコールを飲む頻度と認知機能の関係を調べると、「週 1 日未満」または「週 1 - 6 日飲む」人は、「全く飲まない」人と比べて、認知機能が有意に高かった。 全く飲まない人の認知機能は、飲酒による社会的交流がないことなどが影響している可能性があるという。 (水戸部六美、asahi = 6-6-19)


市販「液体のり」、白血病治療の救世主に? 専門家驚嘆

白血病の治療で重要な細胞を大量に培養することに、東京大と米スタンフォード大などのチームがマウスで成功した。 これまでは高価な培養液でもほとんど増やせなかったのが、市販の液体のりの成分で培養できたという。 白血病などの画期的な治療法につながる可能性があり、専門家は「まさにコロンブスの卵だ」と驚いている。

白血球や赤血球に変われる造血幹細胞は、0.5 リットルで数万円するような培養液でも増やすことが難しい。 このため、白血病の治療はドナーの骨髄や臍帯血(さいたいけつ)の移植に頼る場面が多かった。 東京大の山崎聡特任准教授らは、培養液の成分などをしらみつぶしに検討。 その一つであるポリビニルアルコール (PVA) で培養したところ、幹細胞を数百倍にできたという。 マウスに移植し、白血球などが実際に作られることも確認した。

PVA は洗濯のりや液体のりの主成分。 山崎さんは実際、コンビニの液体のりでも培養できることを確認した。 共著者で理化学研究所で細胞バンクを手がける中村幸夫室長は「結果を疑うほど驚いた。 研究者はみんな目からウロコではないか。」と話した。 大量培養できれば、臍帯血移植に使う造血幹細胞の不足が解消できたり、骨髄移植のためのドナーの負担を軽くできたりする可能性がある。 別の幹細胞も培養できそうだといい、山崎さんは「再生医療や基礎研究に大きく貢献できるかも知れない」と話す。 論文は 30 日に英科学誌 ネイチャー に掲載される。 (合田禄、asahi = 5-30-19)


はしか患者、また増加 GW に一時帰国、妻子に感染も

いったん沈静化したかにみえた、はしか(麻疹)の患者が再び増えている。 東南アジアなど世界的に流行しており、10 連休中に海外に渡航したり、一時帰国したりした人が現地で感染したことが一因と見られる。 専門家は、高熱などはしかを疑う症状が出たら、感染を広げないために医療機関に電話した上で受診するよう呼びかけている。

国立感染症研究所が 28 日に発表した、直近 1 週間(13 - 19 日)に届け出があった患者数は 32 人で、3 週連続で増加した。 前週より 4 人多かった。 はしかは感染後 10 - 12 日間の潜伏期間を経て発症するため、連休中に感染した人が受診したとみられる。 都道府県別では、東京が最も多く 10 人。 大阪(5 人)、茨城(4 人)が続いた。 佐賀県唐津市ではベトナムに単身赴任中の 40 代男性が連休中にはしかに感染したのに気づかずに一時帰国し、妻と 2 人の子が感染した。 長野県駒ケ根市では 30 代女性が 4 月 29 日から 3 日間インドネシアに滞在して帰国し、5 月 18 日にはしかと診断された。

はしかは、感染力がとても強く、患者がせきではき出したウイルスを吸い込むことなどでうつる。 発熱や発疹などの症状が出て、肺炎などの合併症を起こし死亡することもある。 熱を下げるなど対症療法しかないが、ワクチンで感染を防ぐことができる。 日本では予防接種が普及し、はしかに対して免疫のない人は 5% ほどとされる。 国立感染症研究所感染症疫学センターの多屋馨子室長は「母子手帳などでワクチンを接種したか確認し、受けていなければ接種してほしい」と呼びかけている。 (三上元、asahi = 5-28-19)

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成田空港従業員の男性、はしか感染 利用客らに注意喚起

千葉県は 30 日、成田空港第 2 ターミナルで働く 20 代の男性従業員が、はしか(麻疹)と診断されたと発表した。 県は他人に感染させた可能性がある 22 - 26 日の男性の勤務時間帯などを公表し、利用客らに注意を呼びかけている。 県によると、男性は 23 日に 39 度近くの発熱があった。 27 日に発疹が出て千葉県成田市の医療機関を受診し、28 日にはしかと診断された。 県は勤務先を明らかにしていないが、関係者によると、男性は接客業務に従事していたという。

男性が勤務したのは、▽ 22 日午前 7 時 - 午後 10 時半、▽ 24 日午後 2 時半 - 10 時半、▽ 26 日午前 6 時 - 午後 6 時半。 県は、この時間帯から 2 時間後までの間に第 2 ターミナルにいた人に感染した可能性があるとし、発熱や発疹など疑わしい症状がある場合、まず電話をした上で医療機関を受診するよう促している。 男性は車で通勤しており、公共交通機関は利用していなかった。 県は感染ルートを調べるとともに、近くにいた職場の従業員ら約 40 人の経過観察をしている。 (asahi = 4-30-19)

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撲滅したのに … はしか、米で大流行 NY で非常事態宣言

はしかが米国で大流行している。 2000 年に撲滅を宣言したが、今年に入って 4 月 4 日までに 465 人が感染。 流行の中心地の一つニューヨーク市は 9 日、公衆衛生上の非常事態を宣言した。 ニューヨーク市では昨年 10 月以降、285 件が確認され、そのうちこの 1 週間だけで 26 件に上る。 会見したデブラシオ市長は「2017 年は 2 件だった。 この危険な病気を復活させるわけにはいかない。 直ちに行動をとる。」 居住者や通勤・通学者に予防接種を義務づけ、ワクチンの未接種者には 1 千ドルの罰金を科す方針を明らかにした。

米国での感染はニューヨーク周辺や西海岸北部など 19 州に広がる。米疾病対策センター (CDC) は、流行地域である東欧やイスラエルを訪れた旅行者がウイルスを持ち帰り、ワクチン未接種の人に感染が広まったとしている。 米国では各州が学校に通う児童に必要な各種ワクチンを定めているが、宗教的理由や個人の信条でワクチン接種を免除できる州が大半を占める。 ワクチン接種義務化が個人の自由を侵害すると考える保守層も多く、幼児のはしかのワクチン未接種率がじわじわと上昇している。

世界保健機関 (WHO) は今年の公衆衛生上の 10 の脅威の一つに「ワクチンを避ける態度」を挙げる。 ワクチンの効果を疑問視したり、科学的根拠のないまま副反応があるとあおったりする誤情報が、ソーシャルメディアを通じて子を持つ親の間に拡散している。 トランプ米大統領もかつてツイッターでワクチンが自閉症を引き起こすとの懐疑論をつぶやいている。

はしかは最も感染力の高い病気の一つと言われる。 WHO のタリク・ヤサレビッチ報道官は「はしかは他の病気のリトマス試験紙。 はしかの予防接種を受けていない子どもは、他の重要なワクチンも受けていない可能性が高い。 いつか大流行する結果になる。」と警告している。 (藤原学思 = ニューヨーク、香取啓介、asahi = 4-10-19)

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あべのハルカス、新たに客 2 人がはしか感染 計 18 人に

大阪市保健所は 15 日、超高層ビル「あべのハルカス(大阪市阿倍野区)」を訪れた客 2 人が、新たにはしかに感染したことが判明したと発表した。 今月に入って同ビルのバレンタインフェア会場の店員やビルの利用客らが発症し、感染者は計 18 人になった。 新たに感染が判明した客は 20 代と 40 代の男性で、それぞれ 1 月 25 日と 26 日にバレンタインフェア会場を訪れたという。 保健所は同一の感染源の可能性が高いとして、同ビルを訪問した人たちに注意を呼びかけている。 (asahi = 2-15-19)

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ハルカスの店員 2 人がはしか バレンタインフェアで接客

大阪市保健所は、超高層ビル「あべのハルカス(大阪市阿倍野区)」のバレンタインフェア会場の店員 2 人がはしかに感染したと、11 日発表した。 会場を訪れた人に対し、3 週間以内に発熱や発疹などはしかのおそれがある症状が出た場合、医療機関を受診するよう呼びかけている。 感染したのは、バレンタインフェアが開催中のウイング館 9 階のそれぞれ別の店で勤務した女性店員 2 人。 1 人は 3 日と 5 日、もう 1 人は 5 日と 8 日に接客をした。 発熱後に発疹などの症状が出たため検査を受けたところ、はしかに感染していたことが判明した。 (asahi = 2-12-19)

前 報 (11-3-18)


WHO が認知症予防で初指針 有酸素運動 1 回 10 分以上

世界保健機関 (WHO) は、初となる認知症予防の指針を作り、公表した。 習慣的な運動や禁煙、血圧を適正に維持すること、生活習慣の改善などによる糖尿病治療などを推奨する。 WHO によると世界に現在、約 5 千万人いる認知症の人は、このままでは 2050 年に約 3 倍の 1 億 5,200 万人になると推計されている。 指針は 12 の項目で構成される。 運動に関しては、65 歳以上は認知機能の低下を防ぐため、1 週間に 150 分以上の中程度の有酸素運動をすることを勧める。 有酸素運動は 1 回に 10 分以上するとよいという。

多量の飲酒を避ける、体重を一定に保つことも、認知症や認知機能低下のリスクを減らす可能性があるという。 健康的な食事を勧める一方、ビタミン B や E、不飽和脂肪酸などのサプリメントをとることは、認知症のリスクを下げる効果が確かめられていないため、推奨しないとした。 国内でも認知症の人の増加は課題だ。 厚労省研究班は、国内の認知症の人を 15 年時点で約 500 万人と推計。 高齢者の増加とともに 25 年には 700 万人近くになるとされる。

福岡県久山町で 50 年以上続く高齢者らの疫学調査によると、糖尿病や高血圧が認知症のリスクになり、運動量が多いと発症リスクが下がると報告されている。 糖尿病になる人が減らなければ、25 年時点で約 730 万人が認知症になるとの推計もあり、糖尿病予防が重要だと指摘されている。

疫学研究を続ける九州大学の二宮利治教授(公衆衛生学)は、認知症はまだ根本治療薬が開発されていないと指摘。 二宮教授は「様々な疫学調査からどういう人が認知症になりやすいかが分かってきた。 これらをヒントに、生活を変えることで認知症の予防につながると期待される。」と話す。 WHO によると、認知症による社会的費用の損失は、15 年時点で世界で 8 千億ドル(約 90 兆円)と推計されている。 (月舘彩子、asahi = 5-21-19)


熟練医師並みの AI 開発 心筋梗塞、高精度で画像判別

人工知能 (AI) 技術を使って、心筋梗塞(こうそく)を超音波(エコー)検査の画像から判別するシステムを、徳島大学の楠瀬賢也助教(循環器内科)らが開発した。 AI は熟練の医師並みの高い精度で判別できたという。 研究成果が 16 日、米科学誌に掲載された。 研究チームは心筋梗塞の心エコー画像 720 枚と、正常な心臓のエコー画像 240 枚を AI で分析。 ディープラーニング(深層学習)という手法で、人が教えなくても、AI 自身が心筋梗塞の特徴を見つけた。

心筋梗塞は心臓の動脈が詰まり、心筋が死んで心臓の機能が低下する病気だ。 AI は複数のエコー画像を比べ、いずれの画像でも心筋が動いていない場所で心筋梗塞が起きていると判断した。 人間の医師と同じ方法だった。 その後、心筋梗塞と正常な心臓の画像 240 枚を AI に見せると、心筋梗塞かどうか、97% の精度で判別できた。 検査を始めて 1 年以内の初心者の医師の精度は 83% で AI より低く、10 年以上の熟練者では 95% で AI と同等だった。

チームによると、AI を使った心筋梗塞の診断は、心エコー検査では初めてという。 楠瀬助教は「心エコー検査は心筋梗塞の診断のために広く用いられている。 AI の精度をさらに高めて、将来は医療現場に活用できるようにしたい。」と話した。 (鈴木智之、asahi = 5-17-19)


乳がん治療薬、服用後に1人死亡 間質性肺炎を発症

昨秋に発売された乳がん治療薬ベージニオ錠(一般名アベマシクリブ)を使った患者が間質性肺炎になり死亡した事例も報告されたとして、厚生労働省は 17 日、製造販売する日本イーライリリーに添付文書の改訂と医療関係者らへの注意喚起を指示した。 厚労省によると、ベージニオ錠は、一部のタイプの乳がんで手術ができなかったり再発したりした患者の治療薬として 2018 年 11 月に発売された。 今年 5 月までに国内で 14 人が重症の間質性肺炎などを発症し、3 人が死亡した。

このうち 4 人がベージニオ錠との因果関係を否定できず、うち 1 人が亡くなった。 死亡したのは 50 代女性で、ベージニオ錠をのみ始めて 37 日目に自宅で間質性肺炎の症状が現れ、その 7 日後に亡くなった。 添付文書には間質性肺疾患が起こるとの記載はもともとある。 しかし、発売から半年で国内で死亡例が出たことから、厚労省は「警告」欄などに間質性肺疾患の初期症状を確認することなどを加え、注意喚起を徹底するよう指示した。 5 月 14 日までの使用患者数は約 2 千人とみられる。 (姫野直行、asahi = 5-17-19)


マダニ感染症、都内で初の患者確認、長崎旅行で感染か

東京都は 15 日、マダニが媒介するウイルス性感染症、重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) を、都内の 50 代の男性が発症したと発表した。 都内での患者発生の報告は、2013 年に届け出が義務付けられて以来初めてという。

都によれば、男性は 1 - 5 日に長崎県内を旅行した際、草むらなどに入った際にマダニにかまれて感染したとみられる。 6 日に発熱や下痢などの症状を訴え、9 日に都内の医療機関を受診。 その後病院に入院し、14 日に感染が確認された。 SFTS の感染例は西日本を中心に報告されているが、都は、地域に関わらず、マダニが多い場所では肌の露出を少なくするよう呼びかけている。 (asahi = 5-16-19)

前 報 (9-8-18)


オプジーボ、11 人に副作用 = 1 人死亡、脳機能障害 - 厚労省

厚生労働省は 9 日、免疫の仕組みを利用したがん治療薬オプジーボを投与された患者 11 人が脳下垂体の機能障害を起こし、うち 1 人が死亡したとして、製造元の小野薬品工業(大阪市)に対し、薬の添付文書に重大な副作用として追記するよう指示した。 オプジーボは、2018 年のノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑京都大特別教授の研究成果を基に開発されている。 機能障害が起きたのは脳下垂体で、成長ホルモンなどの分泌に関わる部位。 薬の添付文書では、投与中は脳下垂体の検査を定期的に受けることなどを求める。 (jiji = 5-9-19)

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がん免疫療法の効果、事前予測できるかも 阪大が新技術

がん患者の免疫細胞が、どれくらいがんを攻撃する力があるかを調べる技術を開発したと、大阪大の岩堀幸太特任講師(呼吸器内科)らのチームが 22 日、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに論文を発表した。 この技術を使えば、オプジーボなどのがん免疫療法の効果を事前に予測できる可能性があるという。 オプジーボやキイトルーダといった免疫の力を利用してがんを攻撃する薬は「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれ、様々な種類のがんに使われるようになっている。 ただ、よく効く人は 2 - 3 割とされる一方、事前に効果を予測する方法は確立していない。

チームは、免疫細胞とがん細胞の両方に結合する性質を持った物質を使用。 患者の血液に含まれる免疫細胞とともに皿の中に入れ、がん細胞が死滅する割合をみることで、免疫細胞の攻撃力を評価できることを確認した。 さらに培養皿にオプジーボを加えて実験。 攻撃力が高いと評価した免疫細胞ほど、オプジーボの効果が高いこともわかった。 実際に免疫チェックポイント阻害剤を使った患者 6 人を比べると、免疫細胞の攻撃力が高い 3 人の方が、低い 3 人より、薬の効果がないなどの理由で治療を中断しないで済んでいたという。

岩堀さんは「現在、さらに多くの患者できちんと効果を予測できるか調べている。 3 年後くらいには実用化したい。」と話している。 (合田禄、asahi = 2-22-19)

前 報 (10-4-18)


100 歳以上の「百寿者」を科学する その体の共通点は

高齢化で、100 歳以上のお年寄り「百寿者(センテナリアン)」の数が増えています。 健康調査や遺伝学的解析から、何が分かってきているのでしょうか。 国内の百寿者は、統計を取り始めた 1963 年は 153 人でしたが、98 年には 1 万人を突破。 2018 年には 6 万 9,785 人となりました。 男女比は、男性 1 に対して、女性 7 です。 急速な増加に国の財政難も加わって、毎年 100 歳になった人に国が贈る銀杯が、16 年度には純銀製から銀めっき製に変わりました。

百寿者の共通点として挙げられるのが、体内の炎症の少なさです。 血液検査で「CRP」という指標をみれば分かります。 炎症は、けがをしたり、感染症にかかったりして起きる急性のものと、熱や痛みはないものの血管などの細胞がじわじわ傷つく慢性のものがあります。 慢性のものは、細胞の老化が関係していると言われます。 老化した細胞は、炎症を引き起こす物質を分泌。 さらに周りの細胞も傷つき、老化していくと考えられています。 動物実験レベルで、老化した細胞のみを薬でなくす研究も始まっていますが、人に応用できるかはまだ分かっていません。

長寿と遺伝の関係は

長寿に対する遺伝の寄与率は、欧州の双子を対象にした研究などで、2 割程度と推計されています。 事故や生活習慣など環境に影響される部分が大きく、長寿に関連する遺伝子を見つけるのは難しいのが現状です。 そうした中でも、人種を越えた長寿関連遺伝子として知られるのが「ApoE 遺伝子」です。 この遺伝子は、いくつか型があり、「ε4」という型だと、アルツハイマー型認知症のリスクが高まると言われています。 そして、110 歳以上のお年寄りは「ε4」を持つ人が少ないことも分かっています。

老年医学が専門の大阪大の神出計教授 (53) は「脳の老化である認知症など、生きていく中でかかる様々な病気になりにくい遺伝素因を持つ人が長寿なのではないか」と指摘します。 人の限界寿命が何歳かはまだ決着がついていません。 16 年、英科学誌「ネイチャー」に「人間の寿命が 125 歳を超えることは難しい」とする論文が載りました。 一方、18 年には米科学誌「サイエンス」で、人の寿命がまだ上限に達していない可能性を指摘する論文が発表されました。

慶応大学百寿総合研究センターの新井康通講師 (52) は「どこかに限界はあるだろうが、予防医療などの発達で、まだ人の限界寿命はのびる可能性がある。 決着にはまだ時間がかかる」と語ります。

110 歳以上は「スーパーセンテナリアン」

実は、ひとくちに百寿者と言っても、その状態は様々です。 100 歳時点で認知症もなく自立している人は全体の 2 割程度。 残りの人は、認知症があったり、介助が必要だったりします。 110 歳以上の「スーパーセンテナリアン」は、100 歳時点で自立していた人がなる確率が高いと言われます。 国内に百寿者が 7 万人近くいるのに対し、110 歳以上は 150 人程度と、極めてまれな存在です。 これらの人々を研究することは健康長寿の秘訣をさぐることにつながります。 百寿者の人口割合が最も高い日本では、特に研究が進んでいます。

第一人者である同センターの広瀬信義・元特別招聘教授 (70) は、延べ約 150 人の 110 歳以上の人と直接会ってきました。 喫煙はせず、酒はのまないかたしなむ程度、動脈硬化が軽度で、性格は外向的な人が多いそうです。 そこまで長生きしたい人には「認知機能は遺伝的な要素もあるが、生活習慣の改善やフレイル(体がストレスに弱くなっている状態)の予防は誰もが心がけられること」とアドバイスします。 (水戸部六美、asahi = 5-2-19)


がんゲノム医療、拠点病院 30 カ所を指定へ 体制を強化

厚生労働省は 26 日、がん細胞の遺伝子を網羅的に調べて患者に最適な治療法を探る「がんゲノム医療」で中心的な役割を担う病院として、9 月をめどに約 30 カ所を拠点病院に指定すると決めた。 がんゲノム医療の遺伝子検査システムは近く保険適用される見込みで、患者数の増加に対応できる体制を整備する。 がんゲノム医療は、患者のがん細胞の遺伝子情報を解析。 そのデータを元に、「エキスパートパネル」と呼ばれる専門家チームで議論し、それぞれの患者に合った治療法を分析する。

こうした分析ができる施設は現在、国立がん研究センター中央病院(東京)など 11 カ所の中核拠点病院に限られる。 分析できるのは11 施設で年間 4 千 - 5 千人と推計される。 今回の拠点病院の指定により、年数万人の患者にエキスパートパネルを実施、対応できるようにするという。 厚労省は今後、遺伝子情報の解析結果を分析できる専門家がいるかどうかなど、どんな条件が拠点病院に必要かを決める。 拠点病院は公募し、専門家でつくる検討会で審査をし、選定する。 (月舘彩子、asahi = 4-27-19)


ヒト受精卵のゲノム編集、遺伝病研究を容認 治療法へ道

「ゲノム編集技術」で人間の受精卵の遺伝子を操作する基礎研究をめぐり、政府の生命倫理専門調査会は 22 日、遺伝病の治療法の開発などを容認する見解をまとめた。 現時点では安全面や倫理面から、その受精卵で子どもを誕生させることは認めないが、受精卵の遺伝子改変による遺伝病の予防に道を開くことになる。 来春にも研究が認められる見通し。 調査会は、遺伝病を防ぐ治療法開発などにつながりうるとして、遺伝病や生まれつきの病気に関する研究を認めると結論づけた。 これまでは受精卵の発達などを調べる研究のみ認めていた。

ゲノム編集で受精卵の段階で遺伝子の異常を修復すれば、生まれる子の病気を防げると期待されている。 原因の遺伝子がわかっている遺伝病は 5 千以上あるという。 ただ、今の技術だと狙いと別の遺伝子を書き換えることがある。 健康被害につながる恐れのほか、その影響は子孫に受け継がれる。 倫理的にも、人為的に遺伝子を変えることに慎重な意見もあるため、遺伝子を操作した受精卵を子宮に戻すことは認めなかった。

受精卵にゲノム編集を応用した研究は、米中などで少なくとも 12 件行われ、約半数は遺伝子を修復して難病などの予防を目指すものだ。 調査会の議論に参加した専門家は「受精卵のゲノム編集に期待されるのは遺伝病の予防。 基礎研究をしないと遺伝子改変の精度も上がらない。」と話す。 一方、実用化が現実味を帯びれば、どこで規制の線引きをするか難しさもある。 2 万以上とされる人間の遺伝子では、生命に関わらない病気の原因となるものや、筋力を決定づけるものも特定されている。 こうした遺伝子まで操作されれば、能力を望むように高める行為や、障害がある人は生まれない方がよいとする「優生思想」が広がることを危ぶむ見方もある。

調査会は文部科学省と厚生労働省に対し、個別の研究計画について、その病気を研究する妥当性や、能力を高めるといった目的でないことを審査する仕組みづくりを求めた。 国がこうした仕組みを整え、来春にも研究の審査が始まる見通しだ。 (福地慶太郎)

難病患者の家族「研究を進めて」

現在、治療法がない遺伝病患者の家族には、ゲノム編集による治療の実現を望む声がある。 「また明日も来るね。 おやすみ。」 東京都内の病院で、会社員の女性 (44) は病室のベッドに横になった長女 (5) に声をかけ、優しく頭をなでた。 長女は 1 カ月前、自宅で呼吸ができなくなり、病院に運ばれた。 呼吸を安定させるため人工呼吸器をつけている。 長女は 1 歳のときに熱性けいれんを起こし、検査で「テイ・サックス病」と診断された。 多くの人と違う型の遺伝子を持つため、運動や認知機能が落ちていく病気だ。 治療法はない。

女性と夫は検査で、ともにテイ・サックス病の原因になる型の遺伝子を持つものの発症はしない「保因者」だと知った。 日本人は約 150 人に 1 人が保因者とされる。 保因者同士の子どもは 4 分の 1 の確率でこの病気を発症する。 長女は口からの食事が難しく、1 歳 9 カ月のとき、胃に穴をあけて栄養を届ける「胃ろう」をつくる手術を受けた。 4 歳で呼吸をしやすくするために気管切開もした。 「娘がこんなにつらいなら、一緒に死んでしまおうかと考えてしまうこともある。」 女性は明かす。

難病患者の家族との情報交換を通じ、ゲノム編集技術で受精卵の遺伝子を修復して、病気の発症を防げる可能性があると聞いた。 「同じ病気になるのはとてもつらいこと。 受精卵の研究を進め、選択肢のひとつにしてほしい。」と訴える。

テイ・サックス病に詳しい鳥取大の難波栄二教授は「受精卵の段階で原因の遺伝子をピンポイントで修復すれば、病気の発症を防げる」と語る。 一方、研究で安全性を確認することに加え、ゲノム編集を用いて治療するかは社会的な議論も必要だと指摘する。 米科学アカデミーなどは 2017 年、他に治療法がない重い遺伝病の治療に限り、安全性の確認などの条件を満たせば、子どもの誕生を認めうる、との報告書を出している。 (asahi = 4-22-19)


パーキンソン病、脳にたまる物質検出 阪大チームが成功

パーキンソン病の患者の脳内にたまる物質を「脳脊髄(せきずい)液」から見つける方法を開発したと、大阪大などの研究チームが 12 日、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。 この物質は発症の 10 年以上前から患者の脳にたまり始めると考えられており、新たな診断方法に活用できる可能性があるという。 パーキンソン病は脳内の神経細胞が減少し、手の震えや体のこわばりなどの症状が出る神経の難病。 患者の脳には「αシヌクレイン」というたんぱく質が異常な状態でたまることが知られている。 病気が進行するほどたんぱく質が増えるが、脳内にあるため患者が生きている間に直接調べることはできなかった。

そこで、チームは脳から腰へ伸びている脊髄を囲む「脳脊髄液」という液体に注目。 患者 44 人の腰に針を刺して液を採取したところ、液にたんぱく質が含まれていた。 さらに、別の検査結果と照らし合わせると、たんぱく質が多いほど病気が進行している可能性が高いこともわかった。 パーキンソン病の患者は国内では約 16 万人いるとされる。 高齢化に伴い、増えているとされる。 阪大の角田渓太医師(神経内科)は「現在は症状などから、はっきりした段階で判断しているが、より簡単に早く診断できる可能性がある。 異常なたんぱく質が凝集するのを抑える薬を開発する際にも活用できる」と話している。 (合田禄、asahi = 4-12-19)


ベトナムから日本に持ち込みの豚肉製品で豚コレラ陽性 2 件、農林水産省

日本の農林水産省動物検疫所は 9 日、ベトナムから日本に入国した旅客が所有していた豚肉製品について、アフリカ豚コレラ (ASF) ウイルスのモニタリング検査で陽性が確認された事例を発表した。 これは、2018 年 8 月に中国で、また今年 2 月にベトナムでアフリカ豚コレラの発生が確認されたことを受けて、両国からの旅客が所有し、日本の到着空港における検査で輸入が認められなかった豚肉製品の一部について動物検疫所が検査を行ったもの。

発表されたリストには、ベトナムから日本に到着した旅客が所持していた豚肉製品でアフリカ豚コレラウイルス遺伝子検査が陽性だった事例として 2 件が挙げられている。 これらの豚肉製品は、豚肉を使ったハムや発酵ソーセージとみられる。 ベトナムから持ち込まれた豚肉製品の陽性事例は、◇ 2 月 20 日、ハノイ発成田空港着 : 豚肉製品 6.1kg (所有者の申告で所持確認)、◇ 3 月 27 日ハノイ発成田空港着 : 豚肉製品 0.18kg (税関検査で所持確認)の 2 件。

動物検疫所は、中国とベトナムから到着する旅客に対する検疫探知犬による携帯品の探知や、家畜防疫官による旅客への口頭質問を行う便を増やすなど、水際検疫を強化している。 なお、ベトナムではこれまでに北中部地方以北の 23 省・市でアフリカ豚コレラの感染が確認され、7 万 3,000 頭超の豚が殺処分された。 うち 5 省・市では、8 日までに新たな感染が 30 日以上確認されておらず、終息宣言の条件が整っている。 (VietJo = 4-11-19)

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感染力あるウイルス確認 アフリカ豚コレラ

農林水産省は 2 日、中国からの旅客が持ち込んだ二つのソーセージに、アフリカ豚コレラの生きたウイルスを確認したと発表した。 感染力のあるウイルスの持ち込みが分かったのは初めて。 違法な畜産物の持ち込みに対し、家畜伝染病予防法に基づく告発など対応を強化する方針も明らかにした。

アフリカ豚コレラでこれまで国内で確認されたのはウイルスの遺伝子で、そこから陽性か陰性かを調べていたが、感染力は不明だった。 生きたウイルスがいた豚肉のソーセージは今年 1 月 12 日に中部空港に持ち込まれ、25 日にウイルスを確認した。 上海と青島を出発した航空機で来た中国人とみられる 2 人がそれぞれ持ち込んだ。 2 人に直接の関係はなく、土産用として持ち込んだとみられる。

家畜伝染病予防法では、違法な畜産物の持ち込みは 100 万円以下の罰金か 3 年以下の懲役となっている。 ただ、これまでは罰則を適用するのは違法に持ち込み販売するなど悪質な事例に限っていた。 今後は違反事例を集約し、持ち込みを繰り返した場合は告発するなど対応を強化する。 (sankei = 4-2-19)

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ほぼ 100% 死亡、ワクチンなし 豚コレラ上回る伝染病

「豚(とん)コレラ」の感染が 5 府県に拡大しているが、それ以上に養豚家が恐れる家畜伝染病がある。 「アフリカ豚コレラ (ASF)」。 名前と症状は似ているが、有効なワクチンは存在しない。 まだ日本には侵入していないが、脅威は忍び寄りつつある。 「一つの点が、あっという間に面になった。」 養豚家がそう漏らすのは、中国での ASF の広がり方だ。

ロシアや欧州で発生していた ASF が、アジアで初めて確認されたのは、昨年 8 月。 中国東北部・遼寧省の農場でのことだった。 国際獣疫事務局への報告によると、47 頭が死に、農場周辺や関係先の 1 万 9 千頭超を殺処分。 一帯を消毒し蔓延防止策が取られた。 だが、約半年で少なくとも 25 省市区の 122 カ所に感染が拡大。 殺処分は 91 万頭以上にのぼる。 今年 1 月には北隣のモンゴルの農場でも ASF の発生が確認され、広がっている。

「一度日本に入ってしまえば、とんでもない打撃になる」と、日本養豚協会の香川雅彦会長は懸念する。 宮崎県で畜産会社を営み、2010 年の口蹄疫(こうていえき)では全頭殺処分のつらさを味わった。 「殺処分の痛手はもちろん、事業再開までに相当な時間がかかるだろう。 地域の食肉処理場や飼料関連の業界、物流業者まで影響を受けるのではないか。」 (荻原千明 = 2-17-19)


ウェッジに 330 万円の賠償命令 研究ねつ造報道は誤り

子宮頸(けい)がんワクチンの副作用に関する研究発表を「捏造」と報じた月刊誌「ウェッジ」の記事で名誉を傷つけられたとして、信州大医学部の池田修一・元教授が発行元と、執筆したジャーナリストらに約 1,100 万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が 26 日、東京地裁であった。 男沢聡子裁判長は「記事の重要な部分が真実とは認められない」と述べ、ウェッジ側に 330 万円の支払いと謝罪広告の掲載などを命じた。

ウェッジの 2016 年 7 月号やウェブマガジンは、池田氏が同年 3 月に発表した研究について、ワクチンの影響が強く出たマウス実験の結果を意図的に抽出したと報じた。 判決は「池田氏が虚偽の結論をでっちあげた事実は認められない」と指摘。 裏付け取材も不十分で、ウェッジ側が「捏造」だと信じた「相当な理由はない」と述べた。 池田氏は「私の主張を的確に捉えてくれた判決」と評価。 同社は「判決を真摯に受け止めつつ、対応を検討する」とコメントした。 (asahi = 3-26-19)


人へのゲノム編集応用、登録制へ方針 WHO で初会合

狙った遺伝子を改変できる「ゲノム編集技術」を人間の受精卵に応用する臨床研究について、世界保健機関(WHO、本部・ジュネーブ)の専門家会議は 19 日、研究を登録する制度の創設など、「研究の透明性と説明責任を高めるための実行可能な方策が必要だ」とする方針を示した。 今後 1 年半かけて議論し、提言としてまとめるという。

ゲノム編集技術の臨床応用をめぐっては、中国の研究者が昨年、遺伝子を改変した受精卵を使って双子を誕生させたことが安全性や倫理面で大きな問題となった。 これを受けて WHO は、生物工学や生命倫理、司法など様々な分野の専門家 18 人を集めた会議を設置。 18、19 日に開かれた初会合では、研究者が世界各地で進められている研究の状況を把握することができ、様々な分野の専門家から意見を得られるような仕組みづくりなどについて議論した。 (ローマ = 河原田慎一 、asahi = 3-21-19)

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「ゲノム編集の双子」 中国当局が事実と認める 世界で初

中国広東省の南方科技大の賀建奎副教授が「ゲノム編集により遺伝子を改変した受精卵で双子を誕生させた」と発表した問題で、同省の調査チームは賀氏の主張は事実だと認定した。 動機については自分の名声や利益を追い求めるため、としている。 国営新華社通信が 21 日に伝えた。 ゲノム編集によって子どもが生まれたのは世界で初めて。

賀氏は昨年 11 月、香港大で開かれた国際会議で、ゲノム編集を経た双子の誕生を発表した。 しかし、根拠となる具体的な情報を明らかにしなかったため、「真偽不明」として国内外で疑問視されていた。 当局が事実だと認めたことで、今後、倫理面や安全性に問題があるとする批判が、さらに高まりそうだ。 (広州 = 益満雄一郎、asahi = 1-21-19)

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受精卵のゲノム編集「禁止に」 国内 4 学会が共同声明

ゲノム編集で受精卵の遺伝子を改変し、世界で初めて双子の女児を誕生させたとする中国の研究者の発表を受け、日本遺伝子細胞治療学会などの 4 学会は 4 日、共同声明を発表した。 受精卵のゲノム編集は、改変の影響が世代を超えて続くため、人類の多様性や進化にも影響する重大な事態が懸念されるとし、「臨床応用は禁止すべきだ」と訴えている。

声明を出したのは、日本遺伝子細胞治療学会、日本人類遺伝学会、日本産科婦人科学会、日本生殖医学会の4学会。 ゲノム編集技術について「生命科学の研究に不可欠とも言える重要なツールで、基礎研究における活用を今後も推進する」としながらも、「精度や効率などの点で発展途上の技術であり、予期しない結果を生じる可能性がある」と指摘した。 そして、人間の受精卵や生殖細胞のゲノム編集の禁止を訴えたうえで、国民の理解を深めるため、4 学会で連携し、社会への情報提供や啓発活動を積極的に行っていく、とした。 (福地慶太郎、asahi = 12-4-18)


食中毒の原因、アニサキスが初の 1 位 カツオで感染急増

魚の内臓に寄生するアニサキスによる食中毒の報告件数が急増している。 厚生労働省が 13 日に公表した集計によると、2018 年は 468 件(患者数 478 人)で、前年の 230 件(同 242 人)から約 2 倍に増えた。 特にカツオの刺し身を食べたことが原因による食中毒が急増していたという。

厚労省によると、アニサキスの報告件数はここ数年、増加傾向にある。 18 年は、ニワトリなどにいる細菌カンピロバクターの 319 件(同 1,995 人)を上回り、食中毒の原因として初めて 1 位になった。 これまでは刺し身でサバやイカ、サンマを食べたことによる感染が多かったが、18 年はカツオによる件数が前年比 10 倍の 100 件(同 103 人)に増えていた。 厚労省の担当者は「海水温の変化などで昨年カツオがとれた海域にアニサキスが寄生する餌が多かった可能性もある」としている。 現在、厚労省研究班が実態を調査している。 (黒田壮吉、asahi = 3-13-19)


白血病の新たな仕組みを発見 大阪大などチーム

血液のがん「白血病」の発症にかかわる新たな仕組みを、大阪大微生物病研究所の高倉伸幸教授らの研究チームが発見し、12 日発表した。 研究成果は英科学誌 (https://www.nature.com/articles/s41467-019-09028-w) に掲載された。 白血病はがん化した血液細胞が一気に増える「急性」とゆっくり増える「慢性」に、さらに細胞の種類によって「骨髄性」と「リンパ性」に分けられる。 白血病と診断される人は年間約 1 万 2 千人(2014 年)で、年々増えている。

チームは、「レグネース 1」という遺伝子に着目。 この遺伝子をなくしたマウスでは、脾臓やリンパ節が肥大化し、異常な造血幹細胞が増え、急性骨髄性白血病の症状を示すことがわかった。 11 匹のマウスはすべて約 100 日以内に死んだ。 この遺伝子は、たくさんの別の遺伝子のはたらきを調節し、造血幹細胞が増殖しすぎないようにする「ブレーキ役」と考えられるという。

また、複数の白血病の人の細胞を解析すると、この遺伝子の働きが低下していることも確認できたという。 阪大の木戸屋浩康・助教(血管生物学)は「急性骨髄性白血病の新しい発症メカニズムを明らかにできた。 この遺伝子をターゲットにした治療薬の開発などにつなげたい。」と話す。 (後藤一也、asahi = 3-12-19)