人手不足時代の切り札? 給与前払い、企業の導入続々

毎月の給料日を待たずに給料をもらえる「給与前払いサービス」。 働いた分の給料を早めに受け取りたい学生らに好評で、人手不足の中、求人でアピールしたい企業の導入が増えている。 導入後、求人に対する応募者数が 10 倍近くになった飲食店もあるという。 新サービスは、人手不足に悩む企業の「切り札」になるのだろうか。

「24 時間 365 日、即時に受け取りできます。」 ジャパンネット銀行はこんなキャッチコピーで、給与前払いサービスの提携先企業を増やしている。 提携先は、企業の給与支払い業務を担うシステム会社だ。 ジャパンネット銀はすでに前払いサービスを展開していたが、今年 1 月に 24 時間受け取りも可能にしたところ、昨年末に 10 社に満たなかった提携先のシステム会社が、今年度は 30 社以上に増える見込みという。

前払いサービスはどんな仕組みなのか。 導入された会社の従業員は、まずスマートフォンなどで働いた給料分の前払いを申請する。 すると従業員の勤務データが即時に確認され、同時に、すでに働いた分について口座などに入金される。 前払いの申請は、お金が必要になった時にいつでもできる。 月末などの給料日には、前払いされた分を除いた給与が支払われる。 ジャパンネット銀によると、システム会社を通じて前払いサービスを導入した企業は、大手ショッピングセンターや運送会社、ファミリーレストラン、コンビニエンスストアなど。 アルバイトが多く働く業種が目立つ。 学生や主婦の利用頻度が高く、今後は外国人労働者の利用も高まりそうだという。

セブン銀行も今月 7 日から、24 時間受け取れる前払いサービスの提供を始めた。 それまでは、セブン銀以外の口座への前払いは、朝や夜には即時にできなかったが、これが可能になった。 この結果、提携先のシステム会社は今年度、現在の倍の 10 社以上になる見込みだ。 システム会社「ペイミー」のサービスを導入した、関東で飲食店 6 店を展開する「B・H・C ダイニング」では、求人への応募が導入前の 6 - 8 倍に増えたという。 千葉啓介社長 (41) は「求人広告に『前払い』や『日払い』制度あり、とうたえるのとうたえないのとでは、(募集への)反応が全く違う」と話す。

金融機関側にもメリットがある。 キャッシュレス決済やスマホを利用した送金などが広がれば、現金自動出入機 (ATM) の利用が減り、送金などの手数料収入も伸び悩む。 新たな収益源を確保するため、銀行は前払いサービスの浸透に力を入れている。 ジャパンネット銀行の推計では、給与前払いサービスは現在、全国で 1 万社超、12 万人ほどが利用しているとみられる。 (佐藤亜季、asahi = 5-22-19)


今春の大卒就職率 97.6% 理系に引き合い、高水準続く

文部科学省と厚生労働省は 17 日、今春卒業した大学生の 4 月 1 日時点の就職率が 97.6% だったと発表した。 過去最高となった前年同期を 0.4 ポイント下回ったが、1997 年の調査開始以来 2 番目の高水準。 景気回復と企業の高い採用意欲を背景に好調な就職環境が続いた。 特に理系学生への引き合いが強い。 就職率は就職希望者のうち、実際に職に就いた人の割合。 調査は全国から国公私立大 62 校を抜き出し、4,770 人を対象に調べた。 大学生の就職率は過去最低だった 2011 年 (91.0%) を底に 7 年連続で上昇していた。

文系学生の就職率は 0.8 ポイント減の 97.4% だったのに対し、理系は 1.2 ポイント増の 98.4% と好調さがうかがえる。 男女別では男子が 0.2 ポイント減の 97.3%、女子が 0.8 ポイント減の 97.8% だった。 就職率を 6 つの地域別にみると、最高は関東で 0.4 ポイント減の 98.1%。 近畿が 0.6 ポイント増の 98.0%、中部が 1.6 ポイント減の 97.9% で続いた。

卒業に際し就職を希望する学生は増えている。 就職希望者の割合は 0.7 ポイント増の 76.0% で、8 年連続で高まった。 文科省の推計によると、今春の就職希望者は 43 万 6,700 人で9,200 人増。 就職した卒業生は 42 万 6,000 人で 6,700 人増だった。 一方、今春の高校卒業者の就職率は 0.1 ポイント増の 98.2% で、バブル経済末期の 91 年春以来の高水準だった。 就職希望率は前年と同じ 17.7%。

20 年春卒の就職戦線も学生優位で進んでいる。 就職情報大手のマイナビによると、4 月末時点の大学生・大学院生の内定率(内々定含む)は 39.3% で前年同期より 6.1 ポイント高く、理系が文系を上回っている。 (nikkei = 5-17-19)


東証 1 部の 35%、初任給アップ 平均 21万 2,304 円

東証 1 部に上場している大企業の 35.7% が今年度、新入社員の初任給を前年度より引き上げた。 民間調査機関の労務行政研究所が 8 日発表した。 前年度は 39.7% だった。 東証 1 部の 2,090 社を対象に調べ、うち 241 社から回答を得た。 大卒初任給(残業代と通勤手当は除く)の平均額は 21 万 2,304 円。 前年度よりも 1,479 円 (0.7%) 高くなった。 引き上げた企業の割合は製造業で 46.9%、非製造業で 22.5% だった。 (asahi = 5-8-19)


フェリー利用のトラック 8 万台増、阪神 - 九州間 運転手負担減

長距離カーフェリーを使って移動する貨物トラックが増えている。 船に乗っている間にドライバーが休憩できる利点があり、働き方改革にあわせて、輸送ルートを海路に切り替える動きが広がっているためだ。 阪神 - 九州間の航路では貨物トラックの利用が年間 64 万台にのぼっており、5 年ほど前から 8 万台近く増加した。 自動車から船舶や鉄道への貨物輸送の転換は「モーダルシフト」と呼ばれる。 1997 年の気候変動枠組み条約第 3 回締約国会議 (COP3) で、先進国に温室効果ガスの排出削減を義務づける京都議定書が採択されて以降、温暖化対策につながる手法として、知られるようになった。

そこに近年は、ドライバー不足を背景にした働き方改革の動きが加わり、モーダルシフトを後押し。 運送会社がフェリーを率先して利用するようになった。 今年 4 月から順次施行された働き方改革関連法では、従業員の残業時間が上限を超過すれば企業に罰則が科されるが、乗船中は運転手の休憩時間に充てられるため、過労や残業超過を防ぐことができる。 九州運輸局によると、阪神 - 九州間を運航するフェリーは現在、4 社 7 航路ある。 フェリーを利用するトラックは平成 22 - 24 年度は年 57 万台前後で推移していたが、28 - 29 年度は年64万台超に達した。 船の更新で、車両積載台数を増やすたびに、利用も増えたという。

神戸 - 宮崎間を十数時間で結ぶ宮崎カーフェリー(宮崎市)は、1 隻あたり大型トラックを最大 130 台積めるが、「神戸行きの便は満船の日が多い(担当者)」という。 大阪・南港と北九州市の新門司港を結ぶ名門大洋フェリー(大阪市西区)では車両積載率が平均 85% にのぼり、山本哲也常務執行役員は「平日は新たに申し込まれても、断らないといけないほど」と話す。 令和 4 (2022) 年ごろに船を更新する際には積載台数を増やす方針だ。

一方、政府も平成 28 年の物流総合効率化法改正で、2 社以上の連携により、二酸化炭素削減を達成できると認定された事業者への助成制度を整備した。 インターネット通販の普及で物流需要は拡大傾向にあり、運送業界の労務環境を改善する手段として、今後もモーダルシフトが進む可能性がある。 (藤谷茂樹、sankei = 5-5-19)


全国 2,802 事業所で違法な残業 月 200 時間超も多数

厚生労働省は 25 日、過労死の労災請求などがあった全国 8,494 事業所を対象に昨年 11 月に実施した集中取り締まりで、33% に当たる 2,802 事業所で違法な残業が見つかったとして是正を勧告したと発表した。 このうち 868 事業所で月 100 時間超の残業をしていた労働者がいた。

違法な残業が見つかった事業所のうち、残業時間が月 150 - 200 時間だったのは 142 カ所、月 200 時間超も 34 カ所あった。 今年 4 月に施行された働き方改革関連法は、休日労働を含めて月 100 時間超の残業を労働者にさせると企業に罰則が科される。 このほか、労働安全衛生法で義務づけられた健康診断を労働者に受けさせていないなどとして、是正を勧告した事業所が 948 カ所あった。 集中取り締まりは毎年 11 月の過労死等防止啓発月間の一環で行われた。 (松浦祐子、asahi = 4-25-19)


テレ東「ガイアの夜明け」、2 度の産休・育休を経た「伊藤忠」女性社員に
「遅れている」と指摘した上司に SNS 上で疑問が殺到

23 日に放送されたテレビ東京系「ガイアの夜明け(火曜・後 10 時)」で特集した「シリーズ さらば平成! 君は "夜明け" を見たか 5 "16 年後" の新入社員」の放送内容が SNS 上でで物議を醸している。 この日の放送では、16 年前の 2003 年に同番組が「商社マン一年生物語」と題し、放送した大手商社「伊藤忠」の男性 2 人と女性 1 人の新入社員 3 人の 16 年後の今を特集した。 番組公式ホームページでは「16 年前の映像を駆使しながら、躍進する伊藤忠の最前線で戦う当時の新入社員 3 人を通して、商社にとっての平成を見つめた」と特集の内容を告知した。

中でも 16 年前にエネルギー貿易部で初めて女性総合職として入社した 38 歳の女性は、会社の先輩社員と結婚し 2 度の産休・育休を経て、2 年前に職場復帰した姿を映し出した。 SNS 上で物議を醸し出しているのは、この女性が上司の課長と今後の働き方についてキャリア面談をしたシーンで課長が「産休と育休で合計 3 年?」と尋ねると女性社員が「3 年 7 か月です」と答えた。 これに課長が「連続してブランクがあったわけで、言ってみれば同期の中では遅れている」と指摘した。 これに女性社員が出張などを命じられても育児があるため「行きたい気持ちはあっても物理的に行けないとかすごく歯がゆい」と吐露した。

この悩みに課長は「職能部門(経理や総務)は?」と提案し「要するに職能部門は 9 時から 5 時で時間も読めて出張もない」などと伝えていた。

番組では、子育てと仕事の両立に悩みながらも今の仕事を続けていく姿を放送したが SNS 上では、この面談に「育休はとっていいけど、取ってない人と比べたら遅れる。 普通のことやろ。 あほか。 それを覚悟の上で挽回することを選択した、伊藤忠の女性は素晴らしいわけで。 上司も言いづらいことを言いつつ鼓舞した、いい関係。」と理解する意見や「伊藤忠社員の話を見ていると、色んな事情を抱えながら16年間もの積み重ねてきた経験と挑戦していく姿が素晴らしい 失敗を乗り越えて働き続ける事の大切さを知ることできた」と放送内容を評価する書き込みが寄せられた。

一方で産休、育休を「ブランク」、「同期と遅れている」と上司が指摘したことへの疑問が噴出。 「伊藤忠でも、女性が育児して男性は働く。 男性が育休をとる。 男性が女性に合わせるというには難しいんですね。」 「なんかがっかり。 #伊藤忠 本当に女性のこと知らないし理解しようともしない。 毎月の月経と妊娠、出産と子育て、更年期障害と仕事との両立をぜひあの課長に体験させたい。 働き方改革やってるなんて言わないでよ。」

「気兼ねなく使える家事サービスをつくり、気兼ねなく伊藤忠社員が利用する社風が根付かない限り、あの部門は女性が珍しい存在であり続けるんだろうな。 あのワーママさんが価値観の古すぎる恥ずかしい男性社員にこれ以上削られないことを祈りたい。 ワーママさん偉すぎるし周りが甘えすぎ。」 「産休、育休を経て職場復帰したら同期よりキャリアが遅れてるって言われたらやりきれないよな。 出産、育児をキャリアだと認めなければ商社に未来はない。」

「#tvtokyo で #伊藤忠の特集見てるけど産休明けの社員に配置転換提案ってそれ会社的にマズいやつじゃないのかな。 なんかいろいろと昭和だな、平成も終わろうとしてるのに。」 「働くママに対して、産休と育休がブランクと言う課長。 朝 9 時に出勤して気まずそうにしてる。 大手がまだこんなんじゃ女性活躍なんてまだまだ遠い …。 出産して子育てしてるのにあの課長の言葉と態度は納得いかない。」 「テレ東『ガイアの夜明け』、伊藤忠商事の上司が育休と産休取った女性社員に『休暇取った分は確実に同期から遅れを取っている』と、肩たたきに総務への転属を提案する展開。

一流商社の立場ある人間がこんなこと言うてる。 勝ち組ばかりだから、立場の弱い人への視点に乏しいね。」 「子どものいる女性社員の方がキャリア面談してたけど、見てて苦しくなったわ。 産休育休を取った分同期より "遅れてる" と言われたり、総務、経理はどうかと聞かれたり。 あと夫婦で話し合ってお互い納得してるならいいんやけど、朝からご飯の用意と子どもの送りは妻がやってるのね …。」などの意見が集中した。

さらに放送した番組側に「観てたけど、二人の子育てをしながらすごい努力して成果も出ている女性に『同期より遅れてる』って表現はアリなのか? って思った。 しかも内勤への異動も提案していたような。 言う方も言う方だけど、放送する方もその辺りセンシティブになれないもんかな。」 「入社 16 年目の 3 人に密着。 男性 2 人に女性 1 人。 女性の取材時には家庭での様子もあるけど、男性の取材時には職場だけ。 家庭は一切出ず。 そうゆうことなんだろうなぁ。」など疑問を投げかける意見も集まっていた。 (スポーツ報知 = 4-24-19)


厚生年金加入、70 歳以上も 厚労省が納付義務を検討

受給額を上乗せ

厚生労働省は会社員らが入る厚生年金について、一定額以上の収入などがある場合、70 歳以上も加入して保険料の支払いを義務付ける検討に入る。 現在は 70 歳未満としている保険料の納付期間が長くなるため、受給できる年金額は増える。 健康寿命は延び続けており、将来に備えて長い期間働く高齢者が増える可能性がある。 厚労省は今年、公的年金制度の健全性を確認する 5 年に 1 度の検証作業を実施する。 6 月をめどに厚生年金の加入期間を延長した場合の年金額の変化を試算した結果を公表し、その後に本格議論に入る。 保険料を半分負担する企業側からは慎重な意見が予想されるが、人材確保面ではプラスに働きそうだ。

70 歳超からでも年金を受け取れるようにする制度改正とセットで検討する。 保険料の支払期間は「75 歳まで」といった具体的な延長幅が焦点になる。 2020 年にも関連法案を国会に提出する可能性がある。 現行制度では月額賃金が 8.8 万円以上の人が厚生年金への加入が義務付けられている。 一度リタイアした後に再び働き始めた場合も、改めて厚生年金に加入して保険料を支払う必要がある。

厚労省の試算によると、現行制度では会社員の夫と専業主婦のモデル世帯では、夫が 65 歳まで働いて夫婦 2 人が 65 歳から年金を受け取る場合で月 22.8 万円もらえる。 これに対し、夫が 70 歳まで平均的な賃金で保険料を納付し続けると、70 歳以降の年金額は月 23.6 万円と月額 8 千円増える。 仮に 75 歳まで加入した場合の年金額は、さらに数千円が上乗せされると見込まれる。 年金の受け取り開始を遅らせ、金額を増やす「繰り下げ受給」も活用できる。 自身の健康寿命や時間の使い方に応じて、選択の幅が広がる。

ただし厚生年金の保険料を毎月負担すれば手取り額は減ってしまう。 直近の手取り額を重視し、厚生年金の保険料を負担に感じる人も出てきそうだ。 健康寿命が長くなり、働く高齢者は増えている。 総務省の 18 年の労働力調査によると、70 - 74 歳の役員を除いた雇用者は 129 万人おり、75 歳以上も 53 万人いる。 内閣府の調査では仕事をしている高齢者の約 4 割が「働けるうちはいつまでも」と答える。 長生きに備えて、健康のうちは一定時間以上働く高齢者にとっては、加入期間の延長によるメリットは大きくなる。

一方で、働いて一定の収入がある高齢者の年金を減らす「在職老齢年金」という制度がある。 一部の人が年金額を減らさないために労働時間を抑制している側面もあり、見直しが検討課題だ。 厚生年金への加入期間が延びれば公的年金財政の支え手が増えるが、企業の負担は増えることになる。 厚生年金を巡っては厚労省は強制的に加入者を増やす「適用拡大」を進めている。 16 年 10 月に適用の基準が緩和され、従業員数 501 人以上の企業では週 20 時間以上で月額賃金 8.8 万円以上などの条件を満たせば厚生年金に加入しなければならない。

16 年の適用拡大によりパートなどの短時間労働者の加入者数は 40 万人増えた。 これにより企業側は 17 年度で 850 億円の負担増となった。 厚労省はさらに拡大させる検討を進めており今秋までに結論をまとめるが、「これ以上、利益を削って保険料を拠出するのは難しい(全国スーパーマーケット協会)」との声は根強い。 飲食業や旅館業などでつくる全国生活衛生同業組合中央会は、負担が困難な事業者がいるとしながらも「従業員にとってはメリットがあり、人材確保に良い影響がある」としている。 (nikkei = 4-15-19)


ローソン、店の増減ゼロへ 前年度の 667 店増から一転

コンビニ 3 位のローソンは 11 日、来年 2 月末までの 2019 年度、前の年度と比べた店の増減がプラスマイナスゼロになるとの見通しを発表した。 前年度の増減はプラス 667 店で、急ブレーキを踏む。 最大手のセブン-イレブン・ジャパンの 19 年度の増減数は、前の年度より 8 割ほど少ない 150 店を見込む。 コンビニ各社は大量出店を続けてきたが、現場の人手不足に伴う人件費の高騰が重荷になってきた。 (asahi = 4-11-19)

◇ ◇ ◇

コンビニ「原則 24 時間」維持 国はプレッシャー強める

人手が足りず 24 時間営業が厳しくなりつつあるコンビニに、霞が関からプレッシャーがかかっている。 経済産業省は 5 日、店主の不満を解消する策をコンビニ各社に求めた。 中央労働委員会は異例の注文をつけ、公正取引委員会も関心を寄せる。 大手は 24 時間営業の原則は保ち、「店ごとの対応」や人手を補う投資などで乗り切りたい考えだ。

「人手不足の深刻化やオーナー(店主)の満足度の低下は顕著。 どのように対応するのか行動計画を打ち出すようお願いした。」 世耕弘成経済産業相は 5 日の記者会見で、そう話した。 世耕氏は会見に先立つ早朝、コンビニ 8 社の首脳らを経産省に呼び出し、店主の不満を解消する行動計画を各社ごとに早急につくるよう求めた。 各社から応じる姿勢が示されたという。

行動計画には、人手の確保策や営業時間などのフランチャイズ (FC) チェーン運営のあり方、本部と店主の役割分担、本部のサポート体制などが盛り込まれる見通し。 きちんと実行されているか、経産省がチェックしていく。 要請に至った一因は、全国のコンビニ店主を対象にした経産省のアンケート結果だ。 従業員の不足を訴える声が 6 割。 チェーン加盟に「満足していない」との回答が 4 割を占めた。

コンビニ各社の本部へのプレッシャーは、ほかの官庁からもかかっている。 労働紛争の処理にあたる厚生労働省の機関、中央労働委員会は 3 月、店主たちが求めた団体交渉権を認めない一方、店主との間にある問題を解決する仕組みをつくるよう、セブン-イレブンとファミリーマートの本部に注文をつけた。 独占禁止法を扱う公正取引委員会も、コンビニの動向に注目している。

24 時間営業の見直しを本部が拒んだ場合、強い立場を利用して取引相手に不利益を与える「優越的地位の乱用」にあたるのではないか、とみる幹部がいる。 慎重な意見もあるが、公取委がもし動けば、影響は大きそうだ。 (西山明宏、久保智、asahi = 4-5-19)

◇ ◇ ◇

24 時間営業やめた店主に「契約解かない」 セブン本部

24 時間営業をやめた大阪府東大阪市のセブン-イレブン店主が、セブン本部から、時短営業を理由にはフランチャイズ契約を解かないとの説明を受けたことを明らかにした。 本部は取材に対し、全国的な 24 時間営業の原則は維持する、としており、原則の行方が注目される。 この店は「セブン-イレブン東大阪南上小阪店」。 店主によると、人手不足を理由に 2 月から営業時間を 19 時間に絞ったところ、これを認めないセブン本部から、24 時間営業に戻さない場合は契約を解除し、違約金 1,700 万円の支払いを求める、と告げられた。

しかし、対立が表面化した後の 3 月 11 日、店を訪れたセブン本部の社員から、時短営業を理由に契約を解除したり違約金を求めたりはしないと伝えられた、という。 店主は取材に「時短営業は今後も続ける。 24 時間営業に苦しんでいるほかの店にも同様の対応をしてほしい。」と話した。 セブン本部側の広報は、契約解除や違約金について「そもそも契約解除などを店主に正式に提示したとは認識していない」としている。 (末崎毅、asahi = 3-14-19)

◇ ◇ ◇

セブン、時短営業を実験へ 1 都 7 県の直営 10 店で

24 時間営業を原則とするセブン-イレブン・ジャパンが、夜通しの営業はしない実験を 3 月中旬から一部の店で始める。 人手不足を理由に終夜営業をやめた大阪府東大阪市の店主との対立が表面化し、注目を集めていた。 コンビニ国内最大手の動きをきっかけに、外食産業で先行する 24 時間営業の見直しが広がる可能性がある。

セブンはこれまでオフィスビルや駅構内などの店を除き、24 時間営業を徹底してきた。 実験では、東北から九州にかけての 1 都 7 県の 10 店で営業時間を午前 7 時から午後 11 時に絞り、売り上げや商品の搬入などへの影響を調べる。 いずれも直営店で、全国約 2 万店の大半を占めるフランチャイズ (FC) 店は対象としない。

セブンの親会社、セブン & アイ・ホールディングスの広報は実験について「高齢化や人口減といった社会構造の変化に備える」と説明している。 東大阪市の FC 店、セブン-イレブン東大阪南上小阪店をめぐっては、店主が人手不足を理由に 2 月から営業時間を短くしたところセブン本部から契約解除と違約金 1,700 万円を求められた、と主張。 これを機に、各地の店主らでつくる「コンビニ加盟店ユニオン」が 24 時間営業の原則見直しをめざして団体交渉を本部に求め、拒まれていた。 (asahi = 3-1-19)


厚生年金、156 万人が加入漏れ 年金少なくなる可能性

厚生労働省は、厚生年金の加入資格があるのに国民年金に入ったままの人が全国に約 156 万人いるとの推計結果を公表した。 将来受け取れる年金額が本来より少なくなるため、厚労省は事業所に対し、厚生年金への加入を指導している。

公的年金は 1 階部分が国民年金(基礎年金)、2 階部分が厚生年金という構造になっている。 2017 年 3 月時点で国民年金に入る 20 - 59 歳の約 6 万 2 千人に郵送で調査を実施し、就業形態や労働時間などから本来は厚生年金に加入するべき人が約 156 万人いると推計した。 14 年 3 月時点と比べて約 44 万人減ったものの、国民年金加入者の約 1 割にあたる。

厚生年金は正社員のほか、労働時間や日数が正社員の 4 分の 3 以上のパートにも適用される。 厚生年金に加入すれば、将来受け取れる年金額が国民年金よりも多くなる。 ただ、国民年金は加入者が保険料を全額負担するのに対し、厚生年金の保険料は労使で折半する。 保険料負担を嫌がり、パートらへの厚生年金の適用を届け出ない「加入逃れ」をする事業主も少なくない。 厚労省によると、18 年 9 月時点の加入逃れの疑いは約 40 万事業所で、3 年前からほぼ半減した。 (山本恭介、asahi = 4-5-19)


介護保険料、200 億円不足の可能性 事務作業ミス原因

厚生労働省は 4 日、介護保険料の事務作業ミスにより 2019 年度に徴収予定の保険料総額が本来より約 200 億円不足する可能性があると発表した。 厚労省所管の「社会保険診療報酬支払基金」が 40 - 64 歳の加入者数を誤ったためだという。 厚労省は保険料徴収を担う企業の健康保険組合などに不足分の追加納付を求めている。

介護保険は市区町村が運営するが、40 - 64 歳の会社員や公務員が負担する保険料は、健保組合や共済組合などが徴収し、支払基金を通じて市区町村に交付される仕組みになっている。 支払基金は 40 - 64 歳の加入者 1 人あたりの 19 年度保険料の算出にあたり、17 年度の加入者数を使うべきなのに、誤って 19 年度の加入見込み数を使ったため、徴収すべき保険料が少なくなったという。

不足額は健保組合で約 150 億円、共済組合で約 50 億円。 厚労省は健保組合などに対し、予備費や準備金を活用し、できるだけ 19 年度に不足分を納付するよう求める。 難しい場合は、介護保険法に基づき 20 年度の納付も可能だとする。 厚労省は 1 月下旬に支払基金から報告を受けていたが、事実関係を確認するためとして、2 カ月以上公表しなかった。 同省の担当者は 4 日の記者会見で「支払基金による事務誤りは誠に遺憾。 再発防止に取り組みたい。」と述べた。 (asahi = 4-4-19)


非正規の公務員、増える一方 長崎県佐々町では 66% に

公務員の「非正規化」が地方自治体で進んでいる。 総務省の調査で長崎県佐々町が全国トップの 66.0% に達するなど、93 の自治体で非常勤や臨時採用の職員が 5 割を超えた。 人件費削減で正規職員が減らされ、身分や収入が不安定な非正規職員が行政サービスを担うようになってきている。 市営バスを運営する北九州市交通局。 1 月現在、正規職員 20 人に対し、非正規職員が 141 人で 87% を占める。 1995 年度末はその逆で、正規 195 人に対し、非正規 34 人だった。 非正規職員の時給は 1,180 - 1,580 円で、扶養手当や退職金はない。

総務省が全国の自治体に行った 2016 年 4 月時点の調査では、非正規雇用は 64 万人。 05 年の同じ調査に比べて 4 割増えた。 地方自治総合研究所の上林陽治研究員が、総務省に情報公開請求して自治体ごとに集計したところ、長崎県佐々町で非正規が全職員の 66.0% を占めて全国最高となり、沖縄県宜野座村が 65.8% と続いた。 非正規が全体の 5 割を超す自治体は、08 年の 17 から 93 に増えた。

非正規職員が増えた背景には、国が進めた行財政改革がある。 05 年の「集中改革プラン」では、公務員の人件費を抑制するため、地方自治体に 5 年間で 6.4% の職員を削減するよう要請。 正規職員が約 23 万人減る一方、多様化する業務に対応するため、非正規職員の数を増やし続けた。 上林さんは「現場では非正規に頼らざるを得ない状況になっている」と分析する。 こうした非正規職員の処遇改善のために、国は 20 年度から雇用形態を「会計年度任用職員」と改め、ボーナスや退職金などの手当も支払うことができるようにする。 国が民間に求める「同一労働同一賃金」に向けた動きに沿ったものだ。

ただ、待遇は自治体が条例で定めるため、どの程度の処遇改善につながるかは未知数だ。 各地の自治体では現在、職員の労働組合との交渉が進んでいる。

非正規の 7 割超が女性

総務省の 16 年の調査によると、自治体の非正規職員の約 75% が女性だった。 なかでも、保育士や学校給食の調理職員、看護師などの職種で割合が高かった。 北九州市の公立学校で非正規の給食調理員として 24 年働く女性 (59) は、新入職員と同じ時給だ。 正規職員と勤務日数や時間はほぼ同じだが、契約は 1 年ごとの更新。 「毎年、不安。 安定した雇用を求めたい。」

福岡女子大の野依智子教授(ジェンダー学)は、男性が稼ぎ、女性が家事や育児を担うといったジェンダー観が背景にあると指摘する。 女性向きとされる仕事は「家事の延長」で、家計を補助する程度の賃金で構わない、とみなされがちだという。 「女性の活躍推進を提唱しながら、実際は非正規職員が多い。 女性がきちんとした生活ができ、自立可能な雇用環境を整えるべきだ」と話している。 (山野健太郎、伊藤繭莉、asahi = 4-3-19)


三菱 UFJ、20 年春の新卒採用 45% 減へ

三菱 UFJ 銀行は 2020 年 4 月入社の新卒採用数を前年比 45% 減の約 530 人とする方針を固めた。 06 年 1 月に旧三菱東京 UFJ 銀行が誕生して以降で最も少ない。 長引く低金利に加え、インターネットバンキングの普及など経営環境が大きく変わり、店舗網の運営に必要な人員が減っていることなどに対応する。 直近のピークだった 14 年春の 3 分の 1 の水準となる。 採用数の減少は 6 年連続。 1 日入社した 19 年春の採用数は 960 人で前年比 6% 減だった。

三菱 UFJ 銀は 23 年度までに行員が窓口で対応する従来型の店舗を 515 拠点から半減させる計画だ。 今後は定型的な業務を自動化するソフトウエア「RPA (ロボティック・プロセス・オートメーション)」の導入などで効率化を進める。 目先は人員の減少により 1 人あたりの業務負荷が高まるため、三菱 UFJ 銀は今春の春闘で労働組合要求を上回る 1% のベア(ベースアップ)を回答している。 (nikkei = 4-1-19)


虐待の恐れある子、2,656 人 心愛さん事件受け調査

政府は 28 日、学校を長期欠席している子どもが虐待を受けていないか、緊急調査をした結果を公表した。 教員らが面会をしたうえで、「虐待の恐れがある」と判断し、児童相談所や警察と情報共有をした子どもが 2,656 人、面会ができず、「虐待の可能性が否定できない」として情報を共有した子どもが 9,889 人に上ったという。

緊急調査は、千葉県野田市の小学 4 年、栗原心愛(みあ)さん (10) が今年 1 月に死亡した事件を受けた対応の一貫として行われた。 28 日に開かれた、厚生労働省や文部科学省などによる合同プロジェクトチームで大口善徳厚労副大臣は「関係機関が連携し、最後のひとりまでしっかりと安全確認を行っていただきたい」と述べた。

調査では 2 月 1 - 14 日に 1 度も登校していない 18 万 7,462 人の安全確認を行った。面会ができた 16 万 7,156 人のうち、過去に児相によって一時保護されていたなどの理由で「虐待の恐れがある」と判断されたのは 2,656 人だった。 内訳は小学校が 797 人と最も多く、中学校 722 人、保育所 683 人、高校 85 人、幼稚園 68 人と続いた。

面会ができなかった 2 万 306 人のうち、受験や不登校、海外渡航中など「合理的な理由」が認められたのは 1 万 417 人で、これを除く 9,889 人について情報共有した。 内訳は中学校が 5,145 人、小学校 1,974 人、保育所 1,012 人、高校 952 人、幼稚園 126 人などだった。 (矢島大輔、浜田知宏、asahi = 3-28-19)

◇ ◇ ◇

保護者の体罰禁止、都条例が成立 国に先駆けて 4 月施行

保護者による体罰の禁止を明記した東京都の児童虐待防止条例が 28 日、都議会本会議で可決、成立した。 「しつけ」と称した保護者からの体罰を防ぐ狙い。 政府も同じ趣旨を盛り込んだ法改正案を国会に提出しているが、都の条例が先行して 4 月 1 日に施行される。

昨年 3 月に目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時 5)が虐待後に死亡したとされる事件が発生し、都が再発防止策を検討。 都道府県条例で初めて保護者による体罰の禁止を打ち出した。 この日の都議会で全会派が賛成した。 条例は保護者の責務として、「体罰その他の子供の品位を傷つける罰を与えてはならない」と規定。 保護者には児童養護施設の施設長や里親も含まれるとし、精神的苦痛を与えるような暴言も禁止対象としている。 体罰の具体的な定義は記載せず、罰則はない。 (土居新平、asahi = 3-28-19)

◇ ◇ ◇

保護者による体罰禁止へ、都が条例案公表 暴言も対象に

東京都は 13 日、子どもへの虐待防止を目指す条例案を公表した。 罰則はないが、保護者による体罰などを禁止する条文が盛り込まれ、成立すれば、こうした規定は都道府県の条例で初めて。 各地で虐待事件がやまないなか、「しつけ」と称した家庭内の体罰が虐待につながりかねないとして、広く禁止を訴えていく構えだ。 昨年 3 月に目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時 5)が虐待で死亡したとされる事件を受け、都が再発防止策の一環として条例案づくりを進めてきた。 20 日開会の都議会に提出する予定で、4 月からの施行を目指す。

条例案は「保護者の責務」を定めており、そのなかで「体罰その他の子供の品位を傷つける罰を与えてはならない」と明記。 都は、「その他の子供の品位を傷つける罰」について、暴言も対象としている。 体罰は許されないとのメッセージを打ち出す狙いだ。 (asahi = 2-13-19)

◇ ◇ ◇

児相の家庭への「介入」強化へ 親支援の部署と機能分離

児童虐待の防止に向けて、厚生労働省は児童相談所(児相)が子どもを保護する「介入」の機能を強化する方針を固めた。 現在は子どもと家庭をともに支える「支援」と同じ部署が担っていることが多いが、子どもの死亡を防げなかった事件が相次いでいることを受けて機能を分化し、介入を最重視する。 3 月中にも、関連法の改正案を通常国会に提出する。

介入から支援まで継続して対応することが大切との意見もあり、機能分化には慎重論もある。 ただ、昨年に東京都目黒区で起きた船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時 5)の死亡事件などで児相の不手際が指摘され、厚労省の有識者会議で議論を重ねてきた。 今年に入ってからは千葉県野田市で栗原心愛(みあ)さん (10) が亡くなる事件も発生し、厚労省は「子どもの命と安全を守る社会的使命に応えるためには、介入と支援を担当する部署などを分ける必要がある」と判断した。

厚労省はすべての児相に弁護士、医師、保健師を配置することも検討している。 根本匠厚労相は 8 日の会見で、「児相が子どもの保護センターとしての役割を果たせるよう、体制の抜本的強化などを行う」と述べた。 虐待が疑われた場合、児相は危険があると判断すれば、保護者の同意なしに子どもを一時保護する権限をもつ。 その後は子どもの心身の状態や家庭環境に応じて、家庭に戻すか、児童養護施設などに入所させるかを決める。

一方、保護に至らなかったり、一時保護から家庭に帰したりしたケースなどは家庭を支援する役割が児相にある。 こうした支援を進めるには保護者との関係を築くことが大切だが、「児相の職員が保護者との関係を重視するあまり、対立をためらう傾向があることは否めない」と指摘されてきた。 既に約 35% の児相が介入と支援の機能を分化しているが、すべてに広げ、保護者に毅然と対応することを目指す。 部署を分けることが基本だが、職員が少ない場合などは最低限、担当者を別にする。

米国などでは子どもの保護に特化した機関が介入機能を担い、家庭支援は別の機関が担っている。 専門家からは、日本でも介入の専門機関を設けるべきだという意見も出ている。 国の計画では、2022 年度までに子ども家庭総合支援拠点を全市町村に設置することになっており、厚労省は拠点の設置状況や支援の力量を見ながら、専門機関の可能性や必要性について検討していくとしている。 (編集委員・大久保真紀、asahi = 2-10-19)

児童相談所〉 虐待だけでなく、不登校や非行、引きこもり、障害など子どもに関するあらゆる相談に対応する機関。 都道府県と政令指定市に設置が義務づけられており、全国に 212 カ所ある。 2017 年度に全国の児童相談所で受けつけた相談は約 47 万件にのぼり、虐待相談は約 3 割を占めた。 虐待や非行などの対応にあたる職員の児童福祉司は 17 年 4 月現在で全国に約 3,200 人いるが、勤務年数は 3 年未満が 4 割超を占める。 人員不足も長年の課題で、22 年度までに 2 千人を増やすことになっている。

〈編者注〉 「幼児・小児の虐待は、明らかに犯罪である」わけですから、純粋に介入機能だけは警察に代行させるべきでしう。 「保護者の同意なしに子どもを一時保護」することなど、危険を伴う行為であり、一般の職員に委ねるのは現実的ではありません。


「業界」最強ゆえのジレンマ 注目されるトヨタの決断

低成長にあえいだ平成の時代、日本企業は非正規社員の雇用を膨らませた。 「右肩上がり」は望めなくなり、よほどのことがないと解雇できない正社員の採用には及び腰になった。 増産に次ぐ増産を重ねたトヨタ自動車も同じようなものだった。 拡大路線をひた走っていた 2007 年 1 月の夕方、トヨタグループの労働組合でつくる「全トヨタ労働組合連合会」が名古屋の繁華街で開いた集会を取材した。 マイクを握った会長の東(あずま)正元 (68) は「安定した社会をつくるため、非正規社員の待遇を改善しよう」と行き交う人に呼びかけた。

私は、組合の「本気度」は眉つばではないかと感じつつメモをとった。 正社員にとって「非正規」は、自分たちの雇用を守る「防波堤」にほかならないと、それまでの取材で感じていたからだ。 リーマン・ショックに直面したトヨタは、正社員の雇用を守りつつ、6 千人の「期間従業員」の契約を更新せず雇い止めにした。 経営側どころか組合の幹部も淡々と「違法ではない」と話した。

政府は、非正規雇用の不安定さを少しでも解消しようと 12 年に労働契約法を改正。 期間従業員が通算 5 年を超えて働いた場合、本人が望めば無期契約に転換しなけばならないルールを導入した。 トヨタはどう対応しているのか。 特定の業界や分野を離れた「遊軍」として企画記事などに関わった 17 年夏に取材すると、ルールは骨抜きになっていた。

労働契約法では、契約終了から再雇用までの「空白期間」が 6 カ月以上あると、以前の契約期間はリセットされる。 トヨタは空白期間を従来の 1 カ月から 6 カ月に変更した。 合法的に、非正規を雇用の調整弁に使えるようにした。 記事には「非正規頼み 手放さぬ企業」、「日本的経営が変化」といった見出しが並んだ。 立場の弱い者にしわ寄せ - -。 グローバル競争はトヨタを労使とも変えていった。 (大日向寛文、asahi = 3-24-19)


終業から次の始業まで 10 時間以上の休息義務づけ

ソフトバンクが「勤務間インターバル制度」導入

ソフトバンクは 3 月 19 日、社員の健康増進を目的に、終業から次の始業まで 10 時間以上の休息時間を取ることを義務づける「勤務間インターバル制度」などを 4 月 1 日から導入すると発表した。 勤務間インターバル制度は、4 月 1 日に施行される改正労働時間等設定改善法で定められた制度。 勤務終了後、一定時間以上の休息時間を設けることで、働く人の生活時間や睡眠時間を確保することを事業主の努力義務としている。

ソフトバンクはこれを導入し、終業から次の始業まで 10 時間以上の休息時間を取ることを全社員に義務づける。 緊急の対応が必要な業務や時差がある海外の企業との電話会議など、やむを得ないケースと上長に認められた場合は例外。 就業時間中は段階的に禁煙にする。 まず 4 月から、毎月最終金曜日に、10 月からは毎週水曜日の定時退社日の喫煙を禁止。 2020 年 4 月から全面的に禁止する。 事業所内の喫煙所は来年 10 月をめどに撤廃する。

年次有給休暇取得奨励日を設定し、プレミアムフライデーや、土日と祝日に 1 日だけ挟まれた平日などを取得奨励日に。 がんの通院治療が必要な社員を対象に、がん治療休暇を設ける。 (ITmedia = 3-19-19)


保育園、4 人に 1 人が落選 大都市圏外も深刻 朝日調査

今年 4 月の入園に向け、全国 72 自治体で認可保育施設に申し込んだ人のうち、4 人に 1 人が 1 次選考に落選したことが、朝日新聞の調査でわかった。 前年からほとんど改善しておらず、落選者は合計で 6 万 5 千人超。 10 月からの幼児教育・保育の無償化を目指す政府は、全国で待機児童の解消を進めた上で実施するとしてきたが、開始を半年後に控えてなお、一部自治体で入園が「狭き門」であることが浮き彫りになった。

認可保育施設への入園は、保護者からの申し込みを受けて自治体が審査。 4 月入園分は、1 - 2 月ごろに行われる 1 次選考で大半が決まる。 朝日新聞は政令指定市と東京 23 区、昨年 4 月時点で待機児童が 100 人以上いた自治体の計 75 市区町を対象に 0 - 5 歳児の 1 次選考結果を尋ね、名古屋市、兵庫県明石市、広島市を除く 72 市区町から回答を得た。 (田渕紫織、有近隆史、asahi = 3-17-19)

前 報 (1-30-18)