再生エネ、使い切れない矛盾 出力抑制は事業者に痛手

太陽光など再生可能エネルギーの受け入れを一時的に制限する「出力抑制」を九州電力が行っている。 昨秋に離島を除き国内で初めて踏み切って、1 月 3 日も実施した。 政府は、再生エネを主力電源にすると掲げるが、フル活用されない矛盾をどうすればいいのか。 九州一円が好天に恵まれた 1 月 3 日。 九州電力は午前 9 時から午後 4 時にかけて、管内の一部の太陽光発電事業者からの電力の受け入れを止めた。 遠隔操作などで送電網から切り離した。 太陽光の発電量は伸びる一方、正月休みのオフィスや工場が多く、電力の使用量が低下したためだ。

電力が余りすぎて需給バランスが崩れると、発電所が故障を防ぐために次々と止まり、大規模な停電につながる恐れがある。 このため九電は昨年 10 月 13 日の土曜日、出力抑制に踏み切った。 その後、需要が低下する土日や年始の 3 日を含めて計 9 回行った。 太陽光と風力の事業者約 2 万 3 千件から輪番で選んで実施している。 福岡県みやま市の太陽光発電所(計 5,500 キロワット)はこれまでに 2 回対象になった。 「太陽光発電に最も適した時に止める。 相当な痛手。」 運営するみやまエネルギー開発機構の石橋慎二業務部長はこぼす。

発電所は約 15 億円を借り入れて建設。 年間の売電収入の約 3 億円から、毎年約 1 億円を返済してきた。 売電できなかった分の損失額は 100 万円を超えると見込む。 石橋さんは「抑制が頻発すれば、返済計画が狂う可能性がある」という。 九州に約 15 カ所の太陽光発電所を持つチョープロ(長崎県長与町)はこれまでに約 1,100 万円の減収になった計算だ。 定富勉・新エネルギー事業部長は「売電収入全体に占める割合は今は大きくないが、年間を通じて何回の抑制があるかわからない。」

データが公表された 10、11 月分でみると、再生エネの想定発電量の約 1.4% (約 2,300 万キロワット時)を抑えたことになる。 一般家庭の電力使用量に単純換算すると約 4 万 6 千世帯の 2 カ月分に相当する。 九電の送電網に新たにつながる太陽光発電所は現在も増えている。 九電の池辺和弘社長は 7 日、「出力抑制の回数はこれから増えていくと思う」と話した。 (山下裕志、asahi = 1-19-19)

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九電、3 日に出力制御実施 2 カ月ぶり、三が日で初

九州電力は 2 日、再生可能エネルギー事業者に一時的な発電停止を求める出力制御を 3 日に実施することを明らかにした。 出力制御の本格実施は昨年 11 月 11 日以来約 2 カ月ぶり、9 回目の実施となり、正月三が日に制御するのは初めて。

電力の供給が需要を大幅に上回ることで最悪の場合は大規模停電に至る恐れがあり、制御して需給バランスを維持する。 制御対象に太陽光発電が含まれるのは確実。 3 日は休みの企業が多く、電力需要が大幅に減る見通し。 一方、供給面では九州全域が好天で太陽光発電量が増加する見込みで、火力発電の制御などを実施しても電力の需給バランスを保てない可能性がある。 (佐賀新聞 = 1-2-19)

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出力抑制、風力発電でも 九電が初の実施 太陽光に続き

九州電力は 3 日、大停電の回避を目的に再生可能エネルギーの受け入れを一部遮断する「出力抑制」を実施した。 先月中旬に離島を除き国内で初めて実行してから通算 5 回目。 過去 4 回はいずれも太陽光発電のみを抑えたが、この日は風力発電も初めて対象にした。

3 日は午前 9 時から午後 4 時に取り組み、最大 38 万キロワットを抑えた。 九電は抑制の対象事業者を輪番で選んでいる。 風力の事業者は約 60 件で太陽光の約 2 万 4 千件に比べて少ないが、5 回目で初めて対象に含まれることになった。 九電は 4 日の日曜も実施する。 出力抑制は、電力の需要と供給のバランスが崩れ、大規模な停電になるのを防ぐための措置。 これまではいずれも、天候に恵まれて太陽光発電などの供給が上がる一方、冷暖房やオフィス需要の落ちる土日に実施している。 (山下裕志、asahi = 11-3-18)

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太陽光発電、初の出力制御 大規模停電回避へ九電

九州電力は 13 日、太陽光発電の一部事業者を対象に、発電を一時的に停止するよう指示する出力制御を実施した。 太陽光の発電量が増える日中に、電力供給量が需要を大きく上回ることで大規模停電が起こるのを回避するためで、実施は離島を除き全国で初。 国が定めたルールでは、原発などの稼働が優先される。 今後も電力需要が下がる春や秋の休日に出力制御が頻発する可能性がある。

再生可能エネルギーの導入意欲が後退する恐れもあり、政府の再エネ政策が岐路を迎えそうだ。 出力制御は、北海道の地震時に発生した全域停電(ブラックアウト)のような広域停電を防ぐため、調整順を定めた「優先給電ルール」に基づき実施。 先に火力発電の稼働を最大限抑えたり、他の電力地域に送電したりしても供給過多が見込まれる場合に行われる。 (sankei = 10-13-18)

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太陽光発電、九電が停止要求の可能性 原発再稼働も一因

太陽光発電が盛んな九州で、九州電力が事業者に一時的な発電停止を求める「出力制御」に踏み切る可能性が高まっている。 早ければ、冷房などの電気の消費が減る 9 月にも実施されそうだ。 原発の再稼働も一因とみられる。

実施されれば一部の離島を除いて国内で初めてになる。 日照条件に恵まれた九州では、太陽光発電が普及している。 連休中の今年 4 月 29 日には、午後 1 時の時点で九電管内の電力消費のうち、8 割以上を太陽光発電でつくった電気がまかなった。 現在も、九電が受け入れる太陽光による発電は月平均で 5 万キロワット程度のペースで増え続けている。

電気の需要を超えて供給が増えると、電気の周波数が変動して大規模な停電につながりかねない。 九電は火力発電を抑えたり、昼間に太陽光発電の電気を使って水をくみ上げ、夜間に水を流して発電する揚水発電を行ったりして、需給のバランスを調整してきた。 これらの調整も難しくなったとき、実施するのが国のルールで決まった出力制御だ。 太陽光発電の事業者に指示し、発電をストップしてもらう。 すでに壱岐(長崎県)や種子島(鹿児島県)などの離島では実績があるが、離島を除く国内ではない。

出力制御の可能性が高まるのが、晴れて太陽光発電の電気が増える一方、冷暖房を使わず消費の伸びない春や秋だ。 工場や会社が休みになる休日には消費が一段と落ち込み、実施が現実味を増す。 「この秋にも実施する可能性がある(九電)」という。 天気などを考慮した需要予測に基づき、出力制御を行う場合は前日の夕方までに事業者にメールなどで指示をする。

九電では 2015 年の川内原発(鹿児島県薩摩川内市)に続き、今年に入って玄海原発(佐賀県玄海町)が再稼働し原発 4 基態勢になった。 供給力がより高まったことも背景にある。 (山下裕志、桜井林太郎、asahi = 9-3-18)


太陽光発電優遇「FIT」年内に 53 万世帯終了、争奪戦へ

住宅の太陽光パネルで発電した余剰電力を大手電力に高値で買い取ってもらえる優遇策「固定価格買い取り制度 (FIT)」が今年 11 月から順次、期限切れを迎える。 このため、新たな売電先として名乗りをあげる事業者が相次いでいるほか、日中に発電した電気を夜間に自家消費できる家庭用蓄電池を売り込むなど、期限切れの顧客を取り込むビジネスが広がっている。

「卒 FIT」狙え

FIT の前優遇制度「余剰電力買い取り制度」は平成 21 年 11 月に開始され、FIT に継承。 10 年で満了を迎える。 「FIT 切れ」、「卒 FITT」と呼ばれ、今年だけで 53 万世帯に上る。 2023 年までに 165 万世帯の余剰電力、大型原発 7 基分に相当する 670 万キロワットが宙に浮く見通しだ。 FIT 切れの世帯は、新たに小売り事業者などと売電契約を結ぶか、自宅で消費するか、両者を組み合わせるかを選ぶことになる。

FIT 切れの顧客を奪われたくない大手電力は、新たな買い取りの枠組みを打ち出している。 中部電力はイオンと提携し、今年 11 月以降に新サービスを始める。 中部電が顧客から買い取った余剰電力をイオンの店舗に供給し、イオンがその量に応じて顧客に買い物ポイントを付与する仕組みだ。 関西電力も量販店のポイントに還元できるサービスなどを検討中で、4 月ごろに公表する。

昼の発電、夜に消費

こうした動きに対し、電力小売り全面自由化で参入した新電力各社が対抗。 パネイル(東京)が丸紅と新会社を設立したほか、大阪ガスも買い取りを始める。 蓄電池メーカーも FIT 切れを商機と捉えている。 シャープは販売店とタッグを組み昨年 4 月から、自社の太陽光パネルを設置する家庭を対象に蓄電池の説明会を千回以上開催した。 平成 31 年 3 月期の販売目標は前期(約 7 千台)の倍以上となる 1 万 5 千台。 担当者は「今年 FIT 切れになる 53 万世帯のうち 30 万世帯は当社のパネルを設置している。 売れ行きは予想以上。」と自信をみせる。

パナソニックも 31 年 3 月期の販売台数を前期の 6 割増と見込む。 一方、積水ハウスは FIT 切れの余剰電力を自社の事業用電力に活用する考えだ。 同社は自社で使う電力をすべて再生可能エネルギーで賄う目標を掲げており、これまでに販売した太陽光パネル付きの戸建て住宅や集合住宅から余剰電力を調達する。 買い取り価格は卸売市場での取引価格に数円程度上乗せする方針。 広報担当者は「自社の二酸化炭素の排出量削減に寄与し、顧客満足度の向上にもつながる」としている。 (林佳代子、sankei = 1-18-19)

【用語解説】 固定価格買い取り制度 (FIT)

太陽光や風力といった再生可能エネルギーで発電された電力を一定期間、固定価格で全量買い取ることを電力会社に義務づける制度。 平成 24 年 7 月に開始された。 住宅用太陽光(10 キロワット未満)の買い取り期間は 10 年間。 21 年 11 月に始まった「余剰電力買い取り制度」を引き継いだため、最初に契約した世帯は今年 11 月に期限切れを迎える。

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事業用太陽光、買い取り価格 22% 下げ 19 年度 14 円、値下げ圧力一段と

経済産業省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度 (FIT) で、2019 年度の太陽光発電(事業用)の価格を 1 キロワット時あたり 14 円とし、現在の 18 円から 22% 下げる。 安い価格で発電する事業者から順番に買い入れる「入札制」の対象も出力 500 キロワット以上と、従来の 2 千キロワット以上から広げる。コスト重視を徹底するが、普及との両立が課題になる。 (nikkei = 1-9-19)

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太陽光の FIT 価格はついに 14 円台に、第 3 回の入札結果を公表

2MW 以上の太陽光発対象に、FIT の買い取り価格を決める第 3 回の入札結果が公表された。 最低落札価格は 14.25 円/kWh で、ついに 14 円台に突入している。

低炭素投資促進機構は 2018 年 12 月 18 日、太陽光発電の第 3 回入札結果を公表した。 落札件数は合計 7 件で、募集容量 196.96MW 全てが落札されている。 最低落札価格は 14.25 円/kWh だった。 2017 年度から 2MW 以上の太陽光発電を対象に、「再生可能エネルギーの固定買取価格制度 (FIT)」に基づく買い取り価格の決定に入札制度が導入された。 第 2 回入札から上限価格は非公開で行われ、入札後に公開される仕組みになっている。 第 2 回の上限価格は 15.50 円/kWh だったが、全ての入札がこの価格を上回るものだったため、落札件数はゼロだった。

公表された第 3 回の上限価格は、前回と同様に 15.50 円/kWh で据え置きとなった。 入札参加資格の審査のために提出された事業計画数の合計は 38 件で、実際の入札は 16 件あった。 これら 16 件の事業計画における発電設備の出力合計は約 307MW で、募集容量を上回った。

落札された 7 件のうち、最低落札価格は 14.25 円/kWh だった。 第 2 回の最低落札価格である 16.47 円/kWh から 2 円以上下がり、ついに 14 円台に突入した。 一方の最高落札価格は 15.45 円/kWh だった。 ただ、この 7 番目の落札案件については、募集容量の上限によって、落札容量が約 1.2MW に制限されている。 そのため、実質的な最高価格は、6 番目の 15.37 円/kWh とみることもできる。 (陰山遼将、スマートジャパン = 12-21-18)

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「卒 FIT 余剰電力」買います 丸紅が新サービス

太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、固定価格買い取り制度 (FIT) により、国が決めた価格で電力会社が買い取っている。 住宅の太陽光発電については、2009 年に FIT に先駆けて余剰電力買い取り制度が始まった。 おかげで住宅向けの太陽光発電設備は全国に広がった。 ところが、制度の対象期間は 10 年間。 来年には、買い取り期間が終わる住宅が相次ぐ「卒 FIT」と呼ばれる問題に直面する。 その数、約 53 万件。 その後も毎年 20 万 - 30 万件が期限を迎える。 「2019 年問題」とも呼ばれるこの事態を新たなビジネスにしようと、総合商社丸紅グループが卒 FIT 電力の買い取り事業に乗り出した。

買い取りに向けて動き出したのは、電力自由化にあわせてできた丸紅の子会社の丸紅新電力(本社・東京)。 次世代型エネルギー流通基幹システムを手がけるパネイル(同)と組んで 11 月上旬に新会社の丸紅ソーラートレーディング(同)を設立した。 電力事業のノウハウと IT 技術という両社の強みを持ち寄り、19 年 11 月からの卒 FIT 向けサービスの提供開始に向けて準備を進めているという。 (鳴澤大、asahi = 11-29-18)


太陽光パネルの下で稲を栽培、愛知県にソーラーシェアリング

太啓建設が愛知県豊田市で建設を進めていた営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が 2018 年 12 月に完成。 太陽光パネルの下では水稲栽培を実施する。

太啓建設が愛知県豊田市で建設を進めていた営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が 2018 年 12 月に完成した。 豊田市内におけるソーラーシェアリング発電所は初の事例で、事業化にあたっては千葉エコ・エネルギー(千葉市)が支援を行った。 発電所のパネル出力は 70.4kW、連携出力は 49.5kW。 110W のアイセス製の太陽光パネル 640 枚と、SMA 製の 9.9kW のパワコン 5 台を採用。 基礎部分にはグランドスクリュー杭、架台はソーラーシェアリング用のアルミ架台を導入した。

初年度の年間発電量は 80万kWh を見込んでいる。 発電した電力は売電し、同時に太陽光パネルの下では水稲栽培を実施する。 発電所の建設地はもともと水稲栽培を行っていた農地で、建設工事は営農に支障がないよう農閑期に実施。 2019 年春からこれまで通り水稲栽培に取り組む。

太啓建設は 2011 年より一般法人として農業事業に参入。 豊田市内にある地元農家の遊休農地を借り受けて水稲栽培を行い、飲食店などに米を提供している。 さらに太啓ホールディングスグループとしてアグリ事業の推進を目的に、2018 年には農地所有適格法人である TAIKEI ファームを設立している。 今回のソーラーシェアリング事業はこうした農業事業の延長にあり、同社としては初の取り組みとなる。 今後も千葉エコ・エネルギーと共同で、豊田市内におけるソーラーシェアリング事業の導入拡大を検討する方針だ。 (スマートジャパン = 1-16-18)


ソウルで PM2.5 の数値悪化 「近くのビルもかすむ」

大気汚染が深刻化しているソウルで 13 日、有害物質を含む微小粒子状物質 (PM2.5) の数値が悪化し、韓国政府は今年初めて非常低減措置を発令した。 14 日も措置は続き、首都圏を中心に工事現場の作業時間短縮などが実施される。 中国から飛来したという指摘もあるが、原因ははっきりしない。 韓国環境公団によると、13 日午前、ソウルの PM2.5 の平均濃度は 1 立方メートルあたり 79 マイクログラムを記録。 政府基準で「とても悪い」の 1 立方メートルあたり 75 マイクログラムを上回り、政府はマスク着用や不急不要の外出を避けるよう呼びかけている。

首都圏周辺の火力発電所では出力が抑制され、スケート場など屋外施設も一部が閉鎖された。 普段は観光客でにぎわうソウル市中心部の光化門広場も、13 日は閑散としていた。 マスクをつけて歩いていた 40 代女性は「近くのビルもかすみ、気持ちも沈む」と話した。 大気汚染の原因について、政府系シンクタンクは「8 割は中国からの飛来」とみるが、国内の火力発電所やディーゼル車の影響も大きいとする指摘もある。 PM2.5 は発がん性物質を含み、文在寅(ムンジェイン)政権は改善を約束しているが、成果は出せていない。 (ソウル = 武田肇、asahi = 1-13-19)


自転車の走行エネルギーを駐輪場で回収する「S-PARK」 アムステルダムで考案

オランダにおいて、自転車の走行エネルギーを電力に変換してバッテリへ蓄電し、駐輪場で回収して利用するシステム「S-PARK」が考案された。 S-PARK は、自転車の前輪として使える特殊なホイールと、このホイールに対応する駐輪用ラックで構成されるシステム。 S-PARK 用ホイールを装着した自転車は、走行時やブレーキング時に発電し、搭載しているバッテリに電力をためていく。 この自転車を専用「WhatDesignCanDo Clean Energy Challenge」の一環として考案された。 (佐藤信彦、Cnet = 1-8-19)


天然記念物の生きたサンゴが激減 7 割死滅、調査で判明

国の天然記念物に指定されている日本最大級のサンゴ礁群「八重干瀬(やびじ、沖縄県・宮古島沖)」で、生きたサンゴが激減していることが、朝日新聞社と国立環境研究所の共同調査で確認された。 海底に占める生きたサンゴの面積は、10 年前に比べて約 7 割減っていた。 白化現象に伴う大量死が主な原因で、海水温の上昇がサンゴ礁の生態系に深刻なダメージを与えていることが裏付けられた。

八重干瀬は大小 100 余りのサンゴ礁からなる。 ミドリイシ類やキクメイシ類など 300 種を超すサンゴが分布している。 調査では今年 10 月、本社機「あすか」を使って高度約 1,400 メートルから八重干瀬を高精度のカメラで約 900 枚に分割して撮影した。 さらに、国環研の研究者が 3 日間かけて八重干瀬内の 13 カ所でシュノーケリング調査を実施。 全地球測位システム (GPS) で位置を確認しながら海底のサンゴの状態を記録し、上空からの撮影データとの照合作業を行った。

これらのデータをもとに国環研が解析を行い、八重干瀬の海底(フデ岩など一部エリアを除く)を覆う生きたサンゴの面積を算出した。 その結果、2008 年に国環研が集計した同様の調査では約 71 万平方メートルあった生きたサンゴの面積が、約 23 万平方メートルへと激減していた。 八重干瀬で発生したサンゴの白化や大量死は、目視によるサンプル調査でも指摘されていたが、航空機を使った上空からの広域調査によって、その深刻さが浮き彫りになった。

八重干瀬は、人が住む島から離れた沖合にあるため、陸地から流れ込む赤土や生活排水などによる悪影響を受けにくい条件下にある。 このため、海水温の上昇がサンゴに与える影響を調べる上での「適地」とされる。 国環研の山野博哉生物・生態系環境研究センター長(自然地理学)は「もう少し多くのサンゴが残っているのではと期待していたが、予想よりも大幅に減っていた。 16 年の高水温による白化が主な原因だ。」と指摘している。

沖縄県のサンゴ礁をめぐっては、八重山列島の石垣島と西表島の間に広がるサンゴ礁群「石西礁湖(せきせいしょうこ)」でも 16 年に高水温による白化が深刻化し、サンゴが大量死したことが環境省の調査で確認されている。(田中誠士、asahi = 12-22-18)

八重干瀬 (やびじ)〉 沖縄県・宮古島沖に広がる国内最大級のサンゴ礁群。 南北約 17 キロ、東西約 6.5 キロの広がりがある。 海底にはテーブル状のサンゴが豊富で、大潮の干潮時に広大なエリアが海面から露出することで有名。 2013 年にサンゴ礁群としては初めて、国の天然記念物に指定された。 ダイビングのスポットとして人気があるほか、漁場としても古くから利用されている。


パリ協定の運用ルール採択 すべての国が温暖化対策へ

ポーランドで開かれている第 24 回国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP24) は 15 日深夜(日本時間 16 日早朝)、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の運用ルールを採択した。 先進国と途上国に大きな差を設けず、すべての国が対策に取り組むという協定の骨格は維持された。 詳細な運用ルールが決まったことでパリ協定は 2020 年以降に実施される。

パリ協定は、産業革命前に比べ世界の平均気温上昇を 2 度未満に抑えた上で、1.5 度未満にすることを目指す。 運用ルールでは、温室効果ガスの削減目標や達成の道筋についての情報などを提出し、説明する義務を全ての国が負う。 また、24 年末までに、削減の実施状況に関する最初の報告書を提出することなどが盛り込まれた。 実施状況のチェックなど一部の項目で途上国に能力に応じた柔軟な対応を認めるものの、全ての国が共通ルールのもとに温室効果ガスの削減に取り組むことになる。

京都議定書など 20 年までの仕組みでは、先進国のみに削減義務を課し、途上国には温室効果ガス排出の測定や情報提供についても義務がなかった。 しかし、世界のエネルギー起源による二酸化炭素排出量は、15 年に中国が 3 割弱を占め最大になるなど、途上国の割合が増えている。 パリ協定の運用ルールづくりでは、途上国側も含めた削減効果が高い仕組みにできるかが焦点だった。 (ポーランド南部カトビツェ = 神田明美、編集委員・石井徹、asahi = 12-16-18)

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パリ協定、運用できるか COP24 でルール協議大詰め

ポーランドで開かれている第 24 回国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP24) は 15 日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の運用ルールについて、会期を 1 日延長して大詰めの議論を続けた。 すべての国が対策に取り組むという協定の骨格は維持される見込み。 だが、国際的に協力して削減する排出量の取り扱いの手続きについて、最終的な合意に時間がかかった。

パリ協定は、産業革命前に比べ世界の平均気温上昇を 2 度未満に抑えた上で、1.5 度未満にすることを目指している。 今回の会議で運用ルールの全体像が決まれば、2020 年に終わる京都議定書から間を置かずにパリ協定が本格的に実施される。 運用ルールでは、温室効果ガスの削減目標や達成の道筋についての情報の出し方や範囲、排出削減の実施状況についてのチェック項目などが決められる。 15 日昼(日本時間 15 日夜)までに主な項目について各国は合意しつつあり、合意文書の草案ができた。

だが、対立点が終盤まで残った。 例えば、他国に対して支援したことで排出削減した場合、支援した国と削減を達成した国の削減量の計上方法で、意見が分かれている。 ブラジルのみが二重計上が可能になる仕組みを主張し、合意の草案作成に時間がかかった。 もう一つの柱は、各国が掲げる 30 年までの温室効果ガス削減目標の強化が合意文書に盛り込まれるかだ。 草案では明確にせず、弱い表現にとどまっている。

各国が掲げる 30 年までの削減目標は、すべて達成しても、協定目標の 2 度未満に抑えられず、今世紀末には約 3 度上昇するとされる。 このため各国は 20 年までに、削減目標を再提出したり更新したりすることになっている。 今回は 20 年までに目標引き上げの機運を高め、20 年以降に始まる 5 年ごとに目標を引き上げる仕組みに道筋をつけられるかが注目された。

国連気候変動に関する政府間パネル (IPCC) は 10 月に特別報告書を発表、気温上昇を努力目標である 1.5 度未満に抑える重要性を指摘した。 1.5 度未満に抑えるためには、30 年時点の世界の温室効果ガス排出量を現状の年 500 億トンからほぼ半減させる必要があるとしている。 (ポーランド南部カトビツェ = 神田明美、編集委員・石井徹、asahi = 12-15-18)


超電導技術で蓄電 JR 中央線で実験へ

JR 東日本は 10 日、県などと開発を進めていた超電導フライホイールの蓄電システムを JR 中央線の穴山駅近くに設置し、実証実験を始めると発表した。 このシステムは、電力を超電導磁石で浮かせた円盤の回転エネルギーに変えて蓄えるもの。 電車は停車や下り坂でブレーキをかけた際に発生するエネルギーを、再び電力に変換して近くを走っている電車に供給している。

これまでは近くに電車が走っていないと電力の受け渡しができなかったが、システムの導入で無駄になっていた電力が有効活用できる。 実証実験が行われるのは、線路の勾配が大きくブレーキの頻度が高い JR 穴山駅の近くで、蓄えた電力は周辺 5km 以内の電車で活用可能になる。 この区間を走る電車は 1 日約 100 本あり、1 日に 480kW アワーの電力削減につながる。 JR 東日本は 2020 年度から 2 年間実証実験を行い、有効性を見極める計画。 (日テレ = 12-10-18)


マツダ、低環境負荷のバイオエンプラ新意匠 2 層成形技術を開発 エコプロ 2018 で展示

マツダは 12 月 5 日、低環境負荷のバイオエンジニアリングプラスチック新意匠 2 層成形技術を開発したと発表した。 バイオエンプラ新意匠 2 層成形技術は、環境に優しく透明感のあるバイオエンプラを使用した表層樹脂と基材表面に柄を刻み込んだ基材樹脂との 2 層成形により、深みのある色合いと精緻感、陰影感など、従来の技術では実現困難な意匠を実現させながら、環境負荷を低減。 マツダは同技術により開発した自動車内装意匠部品を今後の新型車から順次採用していく予定だ。

植物由来原料を使用するバイオエンプラは、石油資源の使用量削減や CO2 排出量の抑制、無塗装による VOC (揮発性有機化合物)の削減により、環境負荷の低減に貢献する材料として注目を集めている。 マツダでは、深みのある色合いや鏡面のような平滑感など、塗装部品を超える質感を材料着色で実現するなど、高い意匠性を持つ自動車内外装部品としても使用できるよう開発。 2015 年に『ロードスター』の内装意匠部品に初採用して以来、現在国内で販売しているすべての乗用車の内装意匠部品や外装意匠部品に採用している。

マツダはバイオエンプラ新意匠 2 層成形技術による自動車内装意匠部品の試作品展示をはじめ、理想の内燃機関を目指した「SKYACTIV-X」や独自の電動化技術、塗装技術など、環境に関する取り組みについて、12 月 6 日から東京ビッグサイトで開催される環境・エネルギーの総合展示会「エコプロ 2018」にて展示を行う。 (纐纈敏也、Response = 12-5-18)


トランプ氏「俺は信じない」温暖化報告書を否定

【ワシントン = 三井誠】 トランプ米大統領は 26 日、米政府の地球温暖化に関する報告書の内容について「俺は信じない」とホワイトハウスで記者団に語った。 政府報告書を大統領が全面的に否定するのは異例だ。

トランプ氏はこの中で、中国や日本、アジアの全ての国々も対策が必要だとしたうえで、「米国はかつてないほどにクリーンだが、ほかの国が環境を汚染しているとしたら、それは良くないことだ」と主張した。 米政府は 23 日、国際的な対策が十分でなければ、地球温暖化は米経済に深刻な悪影響を与えるとする報告書を発表していた。 米航空宇宙局 (NASA) など 13 省庁が協力し、温暖化対策に消極的なトランプ政権に対策を求める内容で、トランプ氏の対応が注目されていた。 (yomiuri = 11-27-18)


山ごと崩れた太陽光パネル千枚超 再生エネ、もろさ露呈

7 月 7 日、兵庫県姫路市の国道 29 号沿いの傾斜地が崩れ落ちた。 西日本を襲った豪雨。 斜面を覆っていた発電用の太陽光パネルも、大きな音をたてて崩れた。 その数は 1,344 枚。 一帯に設置されていたパネル全体の約 4 割が損壊した。 「4 カ月すぎても、業者からいまだに直接の説明がない。」 近くの原田正昭さん (75) は憤る。 自宅は無事だったものの、台風が来るたびにパネルが心配で娘の家に避難した。 「行政が強くは取り締まれないと聞いて驚いた。 とにかく早く閉鎖してほしい。」

自然災害が相次ぐ今年、太陽光発電をはじめとする「再生可能エネルギー」はもろさを露呈した。 経済産業省によると、西日本豪雨と台風 21 号、北海道地震で事故の起きた事業用太陽光発電所は 41 件あった。 東日本大震災による東京電力福島第一原発の事故後、再エネは大事な電源として位置づけられつつある。 だが、自然災害や送電網、地域社会をめぐって課題が浮かび上がってきた。 (西尾邦明、asahi = 11-25-18)


札幌、最も遅い初雪観測 1890 年と同日

道内は上空に寒気が入った影響で 19 日、帯広市で初雪を観測した。 札幌市でも 20 日午前 0 時 50 分ごろ観測し 1877 年(明治 10 年)の観測開始以来、最も遅い記録に並んだ。 函館などではまだ観測していないが、20 日以降に日本海側北部を中心に雪が降りやすくなる見通し。 スキー場関係者はまとまった雪に期待する。 札幌管区気象台などによると、帯広の初雪は平年より 12 日、昨年より 27 日遅く、観測史上 5 番目に遅かった。 同市内は 19 日午前から雨が降り、午前 10 時半ごろから雪へと変わり、1 時間半ほどで再び雨に戻った。

札幌は、平年より 22 日、昨年より 27 日遅かった。 札幌でこれまで初雪が最も遅かったのは 1890 年(明治 23 年)の 11 月 20 日。 道内は 20 日、冬型の気圧配置が強まり、上空約 1,500 メートル付近に 12 月上旬並みの寒気が入る。 石狩、後志、上川管内などで雪が降りやすくなる。 23 日開業予定のニセコアンヌプリ国際スキー場(後志管内ニセコ町)は 19 日午後 5 時現在、山麓付近の積雪がゼロで、田中謙吾支配人は「ドカ雪が降ってほしい。」 24 日開業予定の富良野市の富良野スキー場の伊賀裕治支配人も「オープン前日に雪が 70 センチ降って営業が間に合った年もある」と、今後に期待している。 (北海道新聞 = 11-20-18)


「逃げろ」響く警察官の怒声 米山火事、止まらぬ勢い

米カリフォルニアの山火事

記事コピー (11-18-18)


太陽熱を最長 18 年貯蔵できる、画期的な太陽熱燃料が開発される

<スウェーデンのチャルマース工科大学の研究チームは、太陽熱エネルギーを最長 18 年も貯蔵できるという画期的な技術を開発した。>

地球温暖化対策のみならず、エネルギー自給率の向上や化石燃料の調達コストの軽減をはかるうえでも、再生可能エネルギーの普及は不可欠だ。 なかでも太陽光発電や風力発電は、天候や季節に影響を受けやすく、発電量を制御しづらいことから、これらのエネルギーを効率よく活用するためには、その貯蔵技術のさらなる進化も求められている。 そして、このほど、太陽熱エネルギーを最長 18 年も貯蔵できるという画期的な技術が開発された。

最大 10% の太陽スペクトルを吸収

スウェーデンのチャルマース工科大学の研究チームは、最大 10% の太陽スペクトルを吸収し、触媒反応によって熱エネルギーを放出する、液体の光応答性特殊構造分子「太陽熱燃料 (STF)」と、これを活用した「太陽熱エネルギー貯蔵システム (MOST)」を開発した。 一連の研究成果は、2018 年 3 月以降、「アドバンスト・エナジー・マテリアルズ」、「ネイチャー・コミュニケーションズ」、「ケミストリー:ヨーロピアンジャーナル」、「エナジー & エンバイロメンタル・サイエンス」で相次いで発表されている。

炭素、水素、窒素からなる「太陽熱燃料 (STF)」

「太陽熱エネルギー貯蔵システム (MOST)」では、炭素、水素、窒素からなる「太陽熱燃料 (STF)」に、建物の屋根などに設置した太陽熱集熱器で集めた太陽光を当てると、同じ原子で構成しながら、その結合や配置が異なる「異性体」となり、太陽光から得たエネルギーを長期間にわたって安定的に保持する。 エネルギーが必要になったら、コバルトフタロシアニンを触媒として、この「異性体」を反応させると、温度が 63.4 度上昇して元の分子に戻る仕組みだ。

たとえば、摂氏 20 度の空間でこの「異性体」を反応させると、「異性体」の温度は 84 度まで上昇する。 この熱は暖房などに活用でき、元の分子に戻った「太陽熱燃料 (STF)」は「太陽熱エネルギー貯蔵システム (MOST)」で再び利用できる。

10 年以内に実用化を目指す

「太陽熱エネルギー貯蔵システム (MOST)」は、地球環境に悪影響をもたらす廃棄物を一切排出せず、環境にやさしい循環型エネルギーシステムとして注目されている。 研究チームでは、10 年以内に実用化することを目指し、これまで開発してきた技術や手法を最適に組み合わせ、実用化に耐えうるシステムに仕立てるとともに、エネルギー抽出における効率性の改善にも取り組む方針だ。 (松岡由希子、NewsWeek = 11-12-18)


「ベランダ発電」広がる 装置はネット通販、自力で設置

「ベランダ発電」がじわり広がっている。 屋根のないマンションやアパート暮らしでも、日当たりの良いベランダがあれば、小型の太陽光パネルを置いて「発電所」にできる。 口コミで広がる「入門書」は増刷を重ねている。 大阪府豊中市の公務員三上亜弥さん (35) は昨年 8 月、60 センチ四方の太陽光パネルを約 1 万 2 千円で買い、マンション 3 階の東向きのベランダに置いた。 出力は 50 ワット。これを自動車用鉛バッテリーにつないで蓄電。 充電量を管理するチャージコントローラーや、直流を交流に変えるインバーターも自力で取り付けた。 装置はネット通販で手に入れ、材料費は計約 2 万 8 千円だった。

2007 年、大阪外国語大(現大阪大)を卒業した「文系人間」。 電気の知識はなかったが、口コミで広がる太陽光発電の入門書「わがや電力(著者・テンダー)」をネットで手に入れ、熟読した。 NPO 法人「豊中市民エネルギーの会」の理事で電気設備に詳しい会社員の平田賀彦さん (48) の指導を受けて、昨年 9 月 30 日から発電を始めた。

普段は携帯電話の充電と LED の室内灯の電気をまかなっている。 124 ワットのテレビの電気は供給できないとプラグを抜いた。 この夏の猛暑も扇風機 1 台で乗り切った。 「発電を始めて 60 ワットの白熱灯を 8 ワットの LED に変えた。 毎日使う電気をどれだけ節約できるか真剣に考えるようになった。」と言う。 月間の電気使用量は平均 43 キロワット時で、月額の電気料金は昨年 10 月以降、3 割減った。

電気の自給を目指そうと考えたのは、16 年 10 月に福島県を旅してからだ。 休みにレンタカーで東京電力福島第一原発を見に行った。 「この先双葉町 帰還困難区域」の看板があり、そこから先に行けないことを知った。 海側に家はなく、山側は背丈まで伸びた雑草が無人の家を覆い隠していた。 「そこに住んでいた人たちが帰れなくなったことを思うと、運転しながら涙が止まらなくなった。」 豊中に帰り、「地震国日本で、原発に頼って誰かが犠牲になるシステムの中に身を置く矛盾を考えた」と話す。 (中村正憲、asahi = 11-9-18)


フィリピン、観光地の環境対策強化 経済への悪影響も辞さず

フィリピンが観光地の環境対策を強化している。 海洋汚染などを理由に閉鎖したリゾート地のボラカイ島で 10 月 26 日に一部の観光客の受け入れを再開した。 今後は他の観光地にも法令順守を徹底させる。 ドゥテルテ政権はこれまでも環境破壊を理由に鉱山閉鎖を命じてきた。 地元経済に影響が出ることも辞さず、観光分野でも環境重視の姿勢を貫く構えだ。

ドゥテルテ大統領が「汚水だめ」と批判し、4 月に閉鎖された中部ボラカイ島。 違法に建てられた施設や海につながる排水管などが撤去され、26 日に一部の宿泊施設が営業を再開した。 観光客の姿が徐々に戻っているが、雰囲気は一変した。 深夜までにぎやかだった浜辺の飲食店群は閉鎖され、マリンスポーツは禁止。 砂山を作ることも禁じられた。 一面の白砂が戻り、観光資源としての魅力は高まったといえそうだ。 フィリピン航空は空港のある隣の島とつなぐフェリーの運航を始めると発表した。

「ボラカイ島を持続可能な観光地のモデルケースにしたい。」 プヤット観光相はこう話し、パラワン島などの人気観光地に環境関連の法律を順守するよう求める書簡を送ったと明らかにした。 ジンベイザメと泳げるとして有名なセブ島オスロブからは観光客を半減すると返答があったという。 環境規制を厳しくすれば、地元経済にも影を落としかねない。 政府は 2020 年までに外国人観光客を 17 年比 5 割増の 1 千万人に増やす目標も掲げている。

自然が多く残るミンダナオ島出身のドゥテルテ氏は、目先の利益を求める環境破壊に厳しい姿勢で臨む。 政権発足時には、国民に人気の環境保護活動家を環境資源相に起用、主要産業の鉱山開発で次々に鉱山閉鎖を命じた。 次はどこに矛先が向けられるか。 他の業界はひとごとではいられない。 (マニラ = 遠藤淳、nikkei = 11-6-18)


日本生まれ中国育ちの省エネ技術、世界へ 第三国で展開

日中両国は 26 日の首脳会談で、日本や中国の企業が第三国で市場を開拓する後押しをすることを合意した。 この事業手法は、新日鉄住金が 15 年前に北京で事業化し、中国企業と改良を重ねた省エネ技術が一つのモデルになっている。 技術は中国各地の製鉄所に普及しただけでなく、次の鉄鋼大国を目指すインドなどにも広がりを見せている。

この省エネ技術は、コークス乾式消火設備 (CDQ) と呼ばれ、製鉄所内の省エネ装置として設置されている。 鉄の材料のコークスを冷やす際に生じる蒸気を密閉状態で回収し、熱を電力に変えて再利用できる。 新日鉄住金が子会社の新日鉄住金エンジニアリング(2006 年に分社化)を通じて海外展開を強化している技術だ。

1 時間あたり 100 トンを処理する小規模なコークス炉で重油 6 トン分に相当する電力を生み出せる。 大気を汚す粉じんの排出も 100 分の 1 に抑制し、温室効果ガスの削減にもつながる。 装置は、旧ソ連の技術を土台に新日鉄(当時)が 1970 年代に開発した。 国内では深刻な公害や度重なる石油危機を教訓に環境対策への意識が高まったため、80 年代にはすべての製鉄所に設置。 君津製鉄所(千葉県)では工場の消費電力の 2 割を CDQ から供給している。

新日鉄は中国が改革開放にかじを切った 78 年から技術協力を進めていたが、当初は製鉄所の新設や増設を優先させたため CDQ 導入が進まなかった。 中国は北京五輪の誘致に力を入れ始めた 00 年代初頭から環境対策を重視し始め、一気に普及が進んだ。

新日鉄は 03 年、中国からの受注増に対応して、中国企業との合弁会社を北京に設立。 開発や製造拠点も中国に移した。 大半の部品は日本から輸出したが、その後、技術移転を進めて 8 割以上を現地で調達できるようになった。 製鉄所の大規模化を進める中国側の求めに応じて、日本の標準型より 2 倍大きい装置もつくれるようになり、中国にはこれまで計 71 基を納入している。 10 年からは中国の背中を追うインドで、タタ・スチールなどの企業にも供給。 すでに 10 基を納入済みで、「中国製」として輸出してきた。

17 年 10 月にはベトナムの製鉄大手からも初めて 2 基を受注。 韓国や台湾、ブラジルなどにも供給しており、CDQ の海外展開は 7 カ国・地域に及ぶ。 日本鉄鋼連盟によると、中国の粗鋼生産量は日本の 8 倍の年間 8.3 億トン。 CDQ を製造するライバル企業も増え、競争は厳しい。 だが、日本の製鉄業のエネルギー効率は中国を 16% 上回っており、培ってきた技術への引き合いは今なお強く、CDQ の需要は今後も増えると期待している。

新日鉄住金エンジニアリングの担当者は「これからも日中両国の協力を深め、東南アジアなど第三国の環境問題や省エネに貢献していきたい」と話している。(山口博敬、asahi = 10-26-18)