消費者物価、32 カ月連続の上昇も伸び率は鈍化、再上昇の見通しも

4 月の消費者物価指数(2020 年 = 100)は、値動きの大きい生鮮食品をのぞく総合指数が 107.1 となり、前年同月より 2.2% 上がった。 上昇は 32 カ月連続。 幅広い品目で値上がりが続いているが、伸び率は鈍ってきた。 歴史的な物価高は収まりつつあるのか - -。 総務省が 24 日、発表した。 伸び率は前月の 2.6% から 0.4 ポイント縮み、2 カ月続けて鈍化した。 23 年 1 月に 4.2% に達した後、3% 台を経て 23 年 9 月以降は 2% 台が続いている。

物価全体を押し上げてきたのは食料(生鮮食品をのぞく)で、4 月も 3.5% 上がった。 せんべいなどの菓子類と米などの穀類は 5% を超える伸び率となった。 不作でオレンジジュースも 3 割近く値上がりした。

消費者物価指数の伸びが落ち着いてきた

だが食料の伸び率は、昨夏に 9% を超えていたころと比べると、落ちついている。 昨年 9 月からは鈍化が続く。 3% 台は 22 年 7 月以来だ。 原材料費や円安による輸入コストの増加分を価格に転嫁してきた企業が、十分なもうけを得たことで、値上げ幅を縮めつつあるとみられる。

物価の伸び率が日本銀行の目標の「2%」に近づきつつあるのは、政府にとって好都合だ。 労働組合の中央組織・連合の集計によると、春闘で決まった賃上げ率は平均 5% を超える。 夏から給料への反映が加速し、物価高のペースを上回って実質賃金が増加に転じるとの見方もある。 岸田政権の金看板「物価と賃金の好循環」をアピールする好機になり得る。

ただ、大和総研の神田慶司氏は「実質賃金は 7 - 9 月期にプラスになりそうだが、物価の伸び率も拡大する可能性がある」と指摘する。  電気代・ガス代は政府の補助が 6 月請求分で終わり、物価の押し上げ要因に変わる見込みだ。 また、企業が賃上げコストを転嫁する値上げも、これから本格化するとみられている。 円安が重なって 1 ドル = 160 円台の水準が定着すれば、「実質賃金がマイナスに戻る可能性もある(神田氏)」という。 (内藤尚志、asahi = 5-24-24)


4 月から暮らしこう変わる 医療や介護負担増、働き方めぐる見直しも

物価高、少子高齢化、人手不足 - -。 直面する様々な課題が、4 月からの暮らしにも影響しそうだ。 医療や介護では社会保障を持続させるために負担増となる人が出るほか、働き方改革をめぐる制度の見直しも始まる。 医療分野では、75 歳以上の後期高齢者のうち、所得が高い約 3 割の人の医療保険料が上がる。 これまでは負担してこなかった出産育児一時金の一部を新たに賄うほか、現役世代の保険料負担の伸びを抑えるため、負担割合を見直す。

保険料は 2 段階で引き上げ、2024 年度は年金収入 211 万円超、25 年度は 153 万円超が対象となり、後期高齢者の約 4 割を占めることになる。 負担額は 1 人あたりの平均で 24 年度は 4,100 円増える見込み。 また年間の保険料の上限も、24 年度は 66 万円から 73 万円に、25 年度は 80 万円に引き上げる。 介護保険では、サービス利用料や 65 歳以上の保険料が 3 年ぶりに改定される。 保険料は市町村ごとに異なるが、高齢化や報酬引き上げなどにより、多くの自治体で増額となる見通し。 支払い能力に応じた「応能負担」の仕組みも強化され、国が示す保険料の基準段階では、高所得者を引き上げ、低所得者は引き下げる。

食品値上げ、約 2,800 品目

公的年金の支給額は 4 月(6 月支払い分)から、23 年度と比べ 2.7% 増える。物価や賃金の上昇を反映し、上昇率では 1992 年度の 3.3% に次ぐ高さ。 ただし、将来の年金を確保するため、労働者数の減少や高齢化の影響による「マクロ経済スライド」が 2 年連続で発動され、23 年の物価上昇率 (3.2%) と比べた実質的な価値は下がる。 会社員や公務員などの厚生年金では、「平均的な給与で 40 年間働いた夫と専業主婦の妻の 2 人分」のモデル世帯で計算すると、23 年度より月額 6,001 円増えて、23 万 483 円になる。

新型コロナウイルスの治療への公費支援は 3 月末で終わる。 4 月から、5 万 - 19 万円かかる治療薬代は、窓口での負担割合に応じて 1 - 3 割が自己負担となる。 入院医療費の支援も終わる。 コロナワクチンも、全額公費負担の臨時接種が終了。 65 歳以上や重い基礎疾患がある 60 - 64 歳を対象に、費用の一部を原則自己負担する定期接種となる。 標準的な自己負担額は 7 千円。 定期接種の対象外の人も接種できるが、原則、全額自己負担となる。

食料品をはじめとした値上げは、まだまだ続く。 帝国データバンクが主な食品メーカー 195 社を調べたところ、4 月に値上げされる食品は約 2,800 品目にのぼる。 記録的な値上げラッシュだった昨年 4 月の 5,404 品目よりは減るものの、世界的な原材料高は続いていて、さらに今年 5 月以降はコショウなどのスパイス類や大豆製品、食肉で値上げが予想されるという。 年内も、食品は毎月 1 千 - 2 千品目の値上げが続くと見られている。

ドライバーら「2024 年問題」 残業時間に上限規制

「働き方」をめぐっては、4 月からドライバーなどに労働基準法に基づく残業時間の上限規制が適用される。 1 人でこなせる仕事量が減り、人手の確保が難しい業務に支障が出てくる「2024 年問題」が指摘されている。 今回、規制が適用されるのはトラックやタクシー、バスのドライバーのほか、建設業の労働者や病院に勤務する医師など。 残業時間は会社と労働組合など働き手が協定を結ぶ必要があり、原則は月 45 時間、年 360 時間が上限。 特別条項をつけても年 720 時間になる。 このほか、ドライバーは年 960 時間、一部の医師は年 1,860 時間が上限になる。 違反した場合は、経営者などに懲役刑や罰金刑が科される。

もともと上限規制は、国による働き方改革の一環として法改正され、19 年に施行された。 ただ、ドライバーなど長時間労働に支えられた業種では、5 年間の猶予期間が設けられた。 長時間労働につながっていた業界の慣行や業務特性を変える準備期間が必要とされたからだ。 例えば、運送業では、荷主や倉庫管理者の都合で待ち時間が発生する場合がある。 建設業でも、悪天候で作業日数が限られる中、施主に指定された工期に間に合わせる必要があった。 関係者を含めた調整に時間がかかるとされた。

猶予期間が終わって今年 4 月から上限規制が適用されると、人手不足がより深刻化することが見込まれる。 その結果、運送・物流業界では物流が滞ると危惧され、建設業では工期の長期化や建設コストの増加を懸念する声が上がる。 医師については、地域の医療提供体制が維持できるかという心配が広がる。 各業界では、労働者の長時間労働に頼らずに業務を維持できるよう対策を急いでいる。 (吉備彩日、浜田陽太郎、神宮司実玲、上地兼太郎、宮川純一、asahi = 3-27-24)

4 月から暮らしこう変わる

【医療・介護・年金】

  • 後期高齢者の医療保険料増額 : 75 歳以上の高齢者のうち約 3 割の公的医療保険料を増額。 上限も年 73 万円に引き上げ
  • 新型コロナ治療、自己負担に : 新型コロナ治療への公費支援が 3 月末で終了。 薬代(5 万 - 19 万円)の 1 - 3 割が自己負担に
  • 介護保険料、3 年ぶりに改定 : 65 歳以上の介護保険料を多くの自治体で引き上げ。 特別養護老人ホームなどの利用料も増額
  • 公的年金の支給額引き上げ : 4 月(6 月支給分)から 2023 年度比 2.7% 引き上げ。 23 年の物価上昇率 3.2% より低い

【子育て】

  • 保育士の配置、手厚く : 保育士 1 人がみる 4 - 5 歳児の数「配置基準」を 76 年ぶりに改善。 30 人から 25 人に

【買い物・サービス】

  • 食品約 2,800 品目値上がり : 帝国データバンクの調べでは、ハムやケチャップをはじめ食品は約 2,800 品目で値上げ
  • 酒類値上げ : サントリーは酒類を値上げする。 希望小売価格(税抜き)が 16 万円の「響 30 年」は 36 万円に
  • 企業にも障害者への「合理的配慮」義務化 : 店や会社、団体などは、過重負担にならない範囲で障害のある人への対応が義務づけられる
  • 都市部の「ライドシェア」解禁 : 一般の人が自家用車を使ってタクシーのように客を運ぶ。 東京など大都市で先行開始

【働く】

  • トラックドライバーらの長時間労働を規制 : 自動車運転業務の残業時間の上限が年 960 時間に。 「2024年問題」とされる

1 月の消費者物価指数、2.0% 上昇 3 カ月連続で伸び率縮小

1 月の消費者物価指数(2020 年 = 100)は、値動きの大きい生鮮食品をのぞく総合指数が 106.4 となり、前年同月より 2.0% 上がった。 政府の補助金で電気や都市ガス代が安くなり、伸び率は 3 カ月連続で縮小した。 ただ、2 月以降は補助金の効果が一巡するため、伸び率は再び高まる見通しだ。

総務省が 27 日発表した。 上昇幅が大きかったのは宿泊料で、前年同月より 26.9% 伸びた。 観光客の増加で需要が高まり、単価が上がった。 コロナ禍でデータ収集を止めていた外国パック旅行費も伸びていた。 調査を再開したところ、コロナの影響が本格化する前の 20 年 1 月と比べて 62・9% 上昇。 この項目だけで全体の指数を 0.15 ポイント押し上げた。 生鮮食品をのぞく食料は前年同月より 5.9% 上がった。 伸び率は高いが、昨年春から夏にかけて記録した 9% 台からは徐々に下がってきた。

また、火災・地震保険料は前年同月より 3.7%、自動車の任意保険料は 4.3% アップ。 人手不足などを背景に、運送料は 10.0% 上がった。 一方、電気代は 21.0%、都市ガス代 は 22.8% 下がった。 政府の補助金は昨年 2 月請求分から始まった。 来月以降は値下がり後の料金どうしで比べるため、物価指数を押し下げる効果が弱まる。 明治安田総合研究所の小玉祐一氏は「生鮮食品をのぞく総合指数は 2 月にいったん 3% 近くに急上昇するが、食品価格の伸びが鈍化する ため、伸び率は緩やかに下がってゆく」とみる。 (米谷陽一、asahi = 2-27-24)


昨年の消費者物価、3.1% 上昇 値上げラッシュで 41 年ぶりの伸び

2023 年の消費者物価指数(2020 年 = 100)は、生鮮食品をのぞく総合指数が 105.2 となり、前年より 3.1% 上がった。 上昇は 2 年連続。 第 2 次石油危機の影響があった 1982 年以来、41 年ぶりの伸びだった。 足元では物価高の勢いは鈍っているが、家計は苦しい状態だ。 総務省が 19 日発表した。 小麦や砂糖など原料の高騰に歴史的な円安が重なり、生鮮食品をのぞく食料は前年より 8.2% 上昇。 1975 年に記録した 13.9% に続く伸びだった。

洗剤やトイレットペーパー、携帯電話の通信料など生活に欠かせないモノやサービスも軒並みアップした。 補助金の効果で電気・都市ガス代は下がったが、生鮮食品をのぞく全 522 品目の約 9 割が上昇した。 直近では食品の値上げが一服し、物価の上昇は弱まっている。 23 年 12 月の指数は前年同月より 2.3% 上がったが、この年のピークだった 1 月の 4.2% からは大幅に下がっている。 (米谷陽一、asahi = 1-19-24)


11 月の消費者物価指数 前年同月比 2.5% 上昇 3 3か月連続の 2% 台

家庭で消費するモノやサービスの値動きをみる 11 月の消費者物価指数は、天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が去年の同じ月より 2.5% 上昇しました。 上昇率は前の月から 0.4 ポイント下がり、3 か月連続で 2% 台となりました。 総務省によりますと、11 月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数が 2020 年の平均を 100 として去年 11 月の 103.8 から 106.4 に上昇し、上昇率は 2.5% でした。

前の月から 0.4 ポイント下がりました。 政府の負担軽減策や燃料価格の低下で「電気代」や「都市ガス代」の下落幅が拡大したことなどが主な要因です。 上昇率は、ことし1 月の 4.2% から鈍化傾向となっていて、3 か月連続で 2% 台となりました。 「生鮮食品を除く食料」は去年の同じ月より 6.7% 昇しました。 10 月から 0.9 ポイント下がっています。

具体的にみると、▽ 「鶏卵」は 26.3%、▽ 外食の「フライドチキン」は 19.2%、▽ 「調理カレー」は 16.8%、▽ 「アイスクリーム」は 12.3%、 ▽ 「食パン」は 7.9% 昇しています。 また、▽ 「宿泊料」は観光需要の回復などを背景に 62.9% 上昇し、比較可能な 1971 年 1 月以降、最大の上昇幅となりました。 一方、▽ 人件費の増加が反映されやすい「サービス」の上昇率は 2.3% で、消費税率引き上げの影響を除くと 1993 年 10 月の 2.4% 以来、30 年 1 か月ぶりの高い水準となりました。

総務省は「上昇率は全体でみると鈍化の傾向だが、サービスでは企業の価格転嫁や人手不足を背景に学習塾代や警備会社の料金が上がるなど、上昇の動きに広がりもみられる」としています。 商店街では、11 月の消費者物価指数で、消費者が購入する頻度が高い 44 品目についてまとめた上昇率は 6.4% となり、生鮮食品を含めた全体の上昇率、2.8% を大きく上回りました。 このところの物価の動向について、東京 品川区の商店街では、食料品の値上がりを実感しているといった声が聞かれました。

60 代の女性は「トマトやたまねぎといった野菜など、食料品はものによって高いです。 たくさんのお店があるので、値段を見ながら安いところでなるべく買っています。 ものの値段は上がったままで、このまま固定してしまうのではないか」と話していました。 40 代の男性は「物価が上がっているのは把握しているつもりなので、ぜいたく品は買い控えています。 物価と給料が両方上がっていくのが健全だと思います。 来年は、物価も給料もあがって生活はあまり変わらないという感じになってくれればよいと思います。」と話していました。 また、70 代の女性は「自分の趣味や友人との外出などにもお金を使いたいので、家計も工夫しています」と話していました。

ファミリーレストランでは、物価の上昇が続く中、消費者の節約志向に対応しようと、一部の商品の値下げなどによって売り上げや来店客数の増加につなげようという外食チェーンもあります。 全国で 1,200 店舗余りを展開するファミリーレストランでは 11 月 16 日から、すべての店舗で価格などを見直しました。 一部の商品については、卵や鶏肉といった原材料費や、人件費の上昇を理由に値上げを行い、このうちオムライスは 50 円値上げしました。 また、それまで無料だったトッピング用の粉チーズは有料にしました。

一方、主力メニューの 1 つでもあるハンバーグやピザ、それにアルコール飲料など、合わせて 30 品を、50 円から 200 円値下げしました。 値下げした商品にはパンやサラダ、デザートなど、小さな器に盛られたメニューも多く含まれていて、こうした取り組みによって、1 人の客が 1 回の食事で注文する商品の数を増やすねらいがあるということです。 会社によりますと、価格改定直後の 1 週間に、1 人の客が注文した商品の数の平均は改定前より、およそ7%増えたということで、値下げなどの取り組みが売り上げの増加にもつながっているということです。

東京 練馬区の店舗を訪れた 20 代の大学生は「値下げをしてくれて注文しやすくなった。 何かメインを食べたあと、もの足りなくなった時に小皿のメニューが安いとありがたいです。」と話していました。 ファミリーレストラン「ガスト」を運営する「すかいらーくホールディングス」の平野曉執行役員は「さまざまなニーズが混在する中、1 品 1 品の価格が高いと、選ぶものが限られてしまう。 値引き競争をすることが目的ではなく、値下げによって複数人でシェアしたり追加で 1 品注文したりする楽しさを提供したいというねらいがあり、今後も外食の機会を楽しんでもらえるよう努力したい。」と話していました。 (NHK = 12-22-23)