イオン、7 年ぶり赤字 スーパー事業不振、8 月中間決算
イオンが 5 日発表した 2016 年 8 月中間決算は、純損益が 53 億円の赤字(前年同期は 21 億円の黒字)だった。 中核事業の総合スーパーの不振を金融事業などで補えず、中間決算としては 7 年ぶりに赤字に転落した。 売上高は前年同期比 0.9% 増の 4 兆 1,118 億円、営業利益が同 0.1% 増の 723 億円だった。
総合スーパー事業は、夏場の台風による売り上げの減少や、ダイエーからイオンに転換した店舗の改装費などのコスト増が響き、営業損益が 183 億円の赤字となり、前年同期よりも赤字幅が 96 億円拡大した。 金融、食品スーパー、ドラッグストア事業などは営業利益を増やしたが、総合スーパー事業が足を引っ張った。 17 年 2 月期については、純損益で 100 億円の黒字を見込む 4 月時点の予想を据え置いた。
総合スーパー事業を手がけるイオンリテールの岡崎双一社長は同日の記者会見で、「改装店舗の売り上げを半年で戻す計画がスピードに乗せられなかった」と話した。 総合スーパーは衣料品や日用品の専門店などとの競合で客離れが続いているため、子どもが遊べる家族連れ向けの店づくりや保温性の高い下着類といった新商品の開発で巻き返す考えだ。 岡崎氏は、価格戦略で消費者の節約志向の高まりへの対応が遅れているとも分析。 売り上げが落ちている洗剤やシャンプーなどは今後、価格を引き下げる方針を示した。 (和気真也、asahi = 10-5-16)
ドンキホーテ、「27 期連続」増収増益を果たした 3 つの強み
イトーヨーカドーの大量閉店など小売業界には逆風が吹いているが、その中で、唯一気を吐く業態がある。 ドンキホーテや 100 円ショップといったディスカウントストアである。 アベノミクスによるインフレ期待が一転し、デフレ再来ともいわれる中、特にドンキホーテの躍進は著しい。 かつては「若者向け」というイメージがあった同社だが、さまざまな客層を取り込み、いよいよメジャー化してきた。 同社の強みはどこにあるのだろうか。
〈目次〉
1. ドンキ躍進と総合スーパー閉店は表裏の関係
2. 低コスト戦略のポイントは「居抜き」
3. ドンキは圧縮陳列を得意としてきたが …
4. ドンキがメジャーになるにあたって採用した戦略
5. いつかは成長の限界がやってくる
ドンキ躍進と総合スーパー閉店は表裏の関係
ドンキホーテホールディングスの 2016 年 6 月期の決算は業界関係者を驚かせた。 売上高が前年比 11% 増、営業利益が 10% 増という良好な業績に加え、第 1 号店の出店以来、27 期連続の増収営業増益を達成したからである。 昨年度は全国で 40 店舗を新規出店しており、今期も出店計画が目白押しとなっている。
一方、小売業界全体の状況は厳しい。 セブン & アイ・ホールディングス傘下の総合スーパー「イトーヨーカドー」は、今年に入って店舗閉鎖を加速させている。 同社は 2016 年度中に 20 店舗、2020 年度までに合計 40 店舗を閉鎖する計画を打ち出しており、今後も順次、閉店を進めていく予定だ。
イトーヨーカドーやイオンのような総合スーパーは、人口動態の変化による影響をモロに受けており、売上高は年々減少が続いている。 また勤労者の実質賃金は 5 年連続で低下しており、消費者の節約志向は今後、さらに強まる可能性が高い。 以前なら、不採算店舗を抱えていても、市況の回復を待つといった選択肢があったが、現在の小売業界にはそのような余裕はないというのが現実だろう。
ドンキホーテの大躍進と総合スーパーの大量閉店は、実は深く関係している。 その理由は、ドンキホーテは、スーパーが撤退した物件に「居抜き」入居することで、低コストでの出店を実現しているからだ。 同社が昨年新規に出店した 40 店舗のうち大多数が、スーパーやパチンコ店など他社の居抜き物件で占められているという。
低コスト戦略のポイントは「居抜き」
居抜きとは、以前、別の事業者が運営していた店舗をそのままの状態で引き取る形態のことを指す。 通常、店舗物件は、中に何もない状態で借り、自社の販売手法に合うようコストをかけて内装工事を行う。 居抜きの場合にはこれらの費用がかからないので、店舗あたりの減価償却費を大幅に削減できる。
確かに居抜き出店は、コスト的に見れば圧倒的に有利である。 しかし、店の内装が以前の事業者のままでは不都合なことも多い。 大規模小売店は、自社の商品ラインナップや販売戦略に合うよう、徹底的に効率化と画一化が進められている。 商品陳列の順番や密度、通路の幅や、顧客の動線など、細部にわたって細かいルールが決められているため、少しでも自社の基準に合わない内装があると効率良く店舗を運営することができない。
ところがドンキホーテの場合には、逆に売り場の状況に合わせて商品の陳列を変えるといった柔軟な運営が可能となっている。 これによって出店の制約が少なくなり、有利な場所に低コストで店を出すことができる。 これが同社の好業績を支えている。 では同社はなぜ、こうした自由な店舗運営ができるのだろうか。 その理由は、同社が独特の商品陳列手法を採用しており、それが収益拡大に寄与しているからである。
ドンキは圧縮陳列を得意としてきたが …
同社は、天井まで商品を高く積み上げ、あえて見通しを悪くするという「圧縮陳列」と呼ばれる手法を得意としてきた。 圧縮陳列の店内に入った顧客は、まるで迷路に入ったようになり、どこに何かあるか分からないという状態になる。 その結果、無目的に来店した顧客の滞留時間が長くなり衝動買いを誘発する効果があるとされる。
圧縮陳列では、店内に整然と商品が並んでいる必要がないので、居抜きの物件でも、前のお店の特徴を生かして店舗を設計することができる。 これによって自由な出店が可能になるという仕組みだ。 こうした陳列手法は小売業界における店舗理論では御法度とされてきた。 無目的にやってくる顧客だけを相手にしていては、大きなボリュームを稼ぐことはできないというのがその理由である。
買いたい商品がはっきりしていて、日常的に来店する顧客にとっては、圧縮陳列は必ずしも魅力的とはいえない。 このため、この手法を採用する大手チェーン店はほとんどなかったわけだが、同社はこれを逆手にとって成功した非常に珍しいケースといってよいだろう。
同社の規模が大きくないうちは、圧縮陳列の手法は非常にうまく機能した。 深夜営業を売りにしていたこともあり、無目的な若年層の顧客をしっかり取り込んで高い収益を上げることができた。 同社は以前、住宅地への出店に際して、近隣住民とのトラブルを多数抱え込んだ。 これもウラを返せば、衝動買いをする顧客層をうまく獲得できていたことを示している。
ドンキがメジャーになるにあたって採用した戦略
だが、同社が巨大企業になるにつれて、主婦層など、これまで大型スーパーが囲い込んでいた顧客層を取り込む必要が出てきた。 そこで近年、同社が積極的に採用しているのは、複数の陳列方法のハイブリッドである。 雑貨のコーナーでは圧縮陳列を行う一方、食品では台車に乗せた箱をそのまま並べるパレット陳列などを行うなど、複数の手法をうまく組み合わせている。
一般的に、衝動買いが多い雑貨の利益率は高いが、大きなパイは稼げない。 一方、食品はボリュームゾーンの商品だが利益率は低い。 たとえば、典型的なスーパーであるヨークベニマルの単位面積あたりの年間売上高は 72 万円とかなり高い。 しかしヨークベニマルの粗利率は 22% と低い水準にとどまっている。 食品が多いと売上高の規模は大きくなるが、収益体質にはなりにくい。
一方、雑貨が中心で、衝動買いも多い 100 円ショップ(キャンドゥ)の粗利率は 36.7% と高いが、単位面積あたりの売上高は 26.5 万円と低い。(両社とも単位面積あたりの売上高にテナントは含まれない。 粗利率はテナントを含んだ数字。) 近年のドンキホーテは、従来型の圧縮陳列で衝動買いを誘発し、そこで得た利益を、食品の安値販売の原資にしている。 圧倒的な低価格を提示することで、近隣のスーパーから主婦層の顧客を奪い、売上高を稼ぐ。
今のところ、この戦略は功を奏しており、ドンキホーテは、単位面積当たりの売上高の大きさと利益率の高さを両立している。(同社の単位面積あたりの売上高は約 80 万円で食品スーパー並みだが、27% の粗利率を維持している。) 同社の経営陣は、大型スーパーなどから顧客を奪う以外に業容を拡大する方法はないと明言しており、そのためには居抜きによる出店はむしろ好都合というわけだ。
以前に大型店舗があったということは、一定以上の商圏は確実に見込めることを意味している。 居抜きによるコスト削減効果をうまく組み合わせれば、売上高成長と利益成長の二兎を追うことが可能となる。
いつかは成長の限界がやってくる
同社には、居抜き物件の問い合わせが多数寄せられており、今後の出店計画もほとんどが居抜きで占められるという。 しばらくの間、同社独特の店舗展開はうまく機能し続けるだろう。 国内の景気もかなり厳しい状況となっており、年末から来年にかけては、さらに消費が引き締まるとの見方が有力だ。 総合スーパーの撤退はさらに加速する可能性があり、同社にとってはますます有利な市場環境となる。
同社のリスク要因はやはり、独特の店舗運営形態がいつまで続くのかという部分だろう。 スーパーの顧客を取り込み、ボリュームゾーンを狙いに行けば行くほど、衝動買いを誘発する特徴ある店舗色が薄くなり、やがては既存のスーパーと大差がなくなってしまう。
また、個性的な店舗展開はネット通販との親和性はあまり高くない。 このところアマゾンがネット通販のインフラ企業として急激に存在感を高めている現実は無視できない。 ドンキホーテが深夜営業を中心とした「ちょっと変わったお店」から、生活インフラへと変貌しつつある今、ネット事業との兼ね合いについても検討が必要な時期に来ているのかもしれない。 (加谷珪一、ビジネス + IT = 9-26-16)
消費者態度指数は4カ月ぶり低下 = 8 月消費動向調査
[東京] 内閣府が 9 日に発表した 8 月消費動向調査によると、消費者態度指数(一般世帯)は、前月から 0.3 ポイント低下の 41.2 となった。 4 カ月ぶりに低下した。 前年比は 1.9 ポイント低下となった。 「暮らし向き」は上昇したものの「収入の増え方」、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」の 3 項目が低下した。 1 年後の物価見通しについては、「上昇する」との回答が 0.6 ポイント増加してて 86.1% となったのに対し、「低下する」は横ばい、「変わらない」は減少した。 8 月消費マインド判断は「持ち直しのテンポが緩やかになっている」に下方修正された。 (Reuters = 9-9-14)
街角景気、4 カ月ぶり低下 = 悪天候響き「50」割れ - 内閣府
内閣府が 8 日発表した 8 月の景気ウオッチャー調査によると、3 カ月前と比べた街角の景況感を示す現状判断 DI (指数)は、前月から 3.9 ポイント低下の 47.4 となり、4 カ月ぶりに低下した。 台風や豪雨など天候不順で客足が鈍ったとの声が全国的に聞かれ、好不況の分かれ目となる 50 を 2 カ月ぶりに下回った。 2、3 カ月先の見通しを示す先行き判断 DI も、電気代など物価上昇懸念を背景に 1.1 ポイント低下の 50.4 と、3 カ月連続で低下した。 (jiji = 9-8-14)
7 月消費者物価指数、3.3% 上昇 14 カ月連続上がる
総務省は 29 日、7 月の全国の消費者物価指数(2010 年 = 100)を発表した。 価格変動の大きい生鮮食品を除く指数は、前年同月より 3.3% 上がって 103.5 だった。 上がり幅は前月と同じで、14 カ月連続で上昇した。 日本銀行の試算では、消費税率引き上げによる押し上げ分が 2.0% あり、増税分を除いた物価上昇分は 1.3% になる。 昨年 11 月以降、!% 台前半が続いている。 先行指標となる東京都区部の 8 月の指数(生鮮食品を除く速報)は、前年同月より 2.7% 上がり、102.1 だった。 上がり幅は前月と同じ。 増税分を除けば、0.8% の上昇だった。 (asahi = 8-29-14)
需給ギャップ、4 - 6 月期はマイナス 2.2% に拡大 内閣府試算
内閣府は 22 日、日本経済の需要と潜在的な供給力の差を示す「需給ギャップ」が 2014 年 4 - 6 月期はマイナス 2.2% だったとの試算を発表した。 マイナスは 24 四半期連続で、1 - 3 月期のマイナス 0.3% からマイナス幅は広がった。 マイナス幅の拡大は 2 四半期ぶり。
試算は 13 日発表の 4 - 6 月期の国内総生産 (GDP) 速報値を反映した。 年換算すると 10 兆円程度の需要不足となる。 4 - 6 月期の実質成長率は、4 月の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動で前期比年率マイナス 6.8% と潜在成長率(プラス 0.6%)を大きく下回ったため、需給ギャップのマイナス幅は拡大した。 需給ギャップは実際の GDP と、民間の設備や労働力を平均的に使って生み出すことができる潜在 GDP との差を示し、需要が供給を下回るとマイナスになる。 (nikkei = 8-22-14)
消費者物価指数 3.3% 上昇 伸び幅は縮小
総務省は 25 日、6 月の全国の消費者物価指数(2010 年 = 100)を発表した。 価格変動の大きい生鮮食品を除く指数は、前年同月より 3.3% 上がって 103.4 だった。 水準は前月と同じ。 上昇は昨年 6 月以来、13 カ月連続だ。 伸び幅は、5 月 (3.4%) より縮小した。
ガソリンや、ボーナス商戦向けに新商品が出たテレビなどの価格は上がったが、電気や都市ガスの値上がり幅が縮小した。 日本銀行は、消費税率引き上げによる押し上げ分は 2.0% と試算している。 物価上昇率は増税分を除くと 1.3% で、昨年 11 月以降、1% 台前半が続いている。 先行指標となる東京都区部の 7 月の指数(生鮮食品を除く速報)は、前年同月より 2.8% 上がり、102.0 だった。 前月と同じ水準で、伸び幅も 5 月と同じだった。 増税分を除けば、0.9% の上昇となる。 (asahi = 7-25-14)
消費者物価指数 3.4% 上昇 5 月、電気代の増税分など
総務省は 27 日、5 月の全国の消費者物価指数(2010 年 = 100)を発表した。 価格変動の大きい生鮮食品を除く指数は、前年同月より 3.4% 上がって 103.4 だった。 1982 年 4 月以来、32 年 1 カ月ぶりの高い伸び幅となった。 上昇は 12 カ月連続。
エアコンなどの家庭用耐久財やガソリンなどの価格が上がった。 4 月(前年同月比 3,2% 上昇)よりも伸び幅が拡大したのは、月をまたいで徴収される電気・水道代などが 5 月から消費増税分が上乗せされたためとみられる。 日本銀行の試算によると消費増税による物価の押し上げ分は同 2.0%。 これを除くと同 1.4% の上昇。 昨年 11 月以降、1% 台前半の水準が続いている。 (asahi = 6-27-14)
所得上位 4 割が消費リード、トレンドは「プチぜいたく」
[東京] 4月の増税をきっかけに、日本の消費構造が大きく変化しつつある。 バブル崩壊後も約 70% の中間層が消費動向を左右するとみられてきたが、ここにきて新たな主役が登場した。 「所得上位 4 割」の階層だ。 彼らの購買意欲は増税後も衰えず、堅調な消費を演出している。 一方で低価格に反応する階層の節約志向も根強い。 「二極化」の進む中で個人消費全体がどちらの影響をより強く受けることになるのか、マクロ政策にも影響しそうだ。
<売れるビビッドカラー>
東京・銀座の百貨店。 ブルーやグリーン系が主流だった紳士服売り場のイメージが劇的に変わっていた。 赤やオレンジなど明るい鮮やかな色使いが目に飛び込んでくる。 その流れは、化粧品売り場ではもっとアグレッシブだ。 この夏は、オレンジや濃いピンク、グロス(艶)入りなど「ビビッドカラー」が人気色となっている。
資生堂によると、日本人女性の好むローズに加えて昨年冬ごろから真紅の口紅がはやりだし、想定の 3 割増の売れ行きとなり、一時品切れに。 「そうした色使いが流行るのは、バブル以来。 自信や個性の表現。(同社)」という展開になっている。 「モノ」が動き出したのは、ファッションに限らない。 「食」の分野でもこれまでよりワンランク上のものが売れだした。 デニーズが 4 月から投入した 2,000 円近い「アンガス・サーロインのローストビ−フ」は、増税後にもかかわらず、発売からの売れ行きは計画の倍以上となっている。
20 - 30 代の客層が主体の六本木のスタンディング・バー。 1 杯数百円の手軽さが人気の秘密だが、ここでもマスターは「増税後の売り上げは好調で、特に変化はない」と語る。 4 月以降の反動減が最も懸念されてきた百貨店業界でさえ、落ち込みの「軽さ」を実感し始めている。 4 月の売上高は大手 5 社で前年比 2 桁のマイナスだったが、5 月は 1 桁に縮小している。
地下鉄・副都心線と東横線の相互乗り入れ効果が顕著な伊勢丹新宿店では、「デパ地下」を筆頭に休日の売り場は、来店客で前に進めないほどのにぎわい。 「増税後の 4 月以降も、3 月までと比べて入店客数は減っていない(広報)」という。 三越でも銀座店や日本橋本店では、宝飾品などでの反動減を除けば、婦人服や雑貨の売り上げはむしろ前年より増加している状況だ。
<上位 4 割はマーケティングでも主役>
増税前に、消費への悪影響を心配していたのは、ほかならぬ安倍晋三政権だった。 来年 10 月から消費税を 10% にできるかどうか、そのカギを握る個人消費が落ち込めば、景気減速につながるだけに慎重に見極めようという姿勢を鮮明にしてきた。 ところが、ふたを開けてみれば、拍子抜けするほど、消費の基調は堅調だ。 この背後には、どういうメカニズムが働いているのだろうか - -。
その秘密に迫ったある調査結果がある。 「増税後も消費態度を変えない消費者が 4 割いる」というデータを出した電通の分析だ。 同社が 5 月半ばに実施した調査では、駆け込み消費をしなかった人、4 月以降も消費トレンドを変えない人、それぞれ 3 - 4 割を占める。 世帯年収が 800 万円以上、あるいは将来の所得に不安のない立場にいる若者層など、ゆとりのある上位 4 割程度の所得層だという。
マーケティング・デザインセンター・研究主幹の袖川芳之氏は、企業の販売戦略も、確実に消費するこの層をターゲットに絞っていると解説。 増税後の消費は、彼らがけん引し、消費の行方を左右していると分析する。 こうした現象は、リーマンショック後の 09 年、11 年の東日本大震災後にも、見られたが、今回は「アベノミクスにより期待を超えた株高なども加わり、消費気分を変えた(袖川氏」)という。
<トレンドは「ハイテク」と「プレミアム」>
今年、そうした確実な消費層の関心を引き付けているのが、身近になったハイテク製品と、「プチぜいたく」と呼ばれるプレミアム商品だ。 三越日本橋本店では 3 月末から「家族写真の代わりに 3D プリンターで家族フィギュアを」とアピールし、3 世帯 6 人家族のフィギュアの販売を始めた。 大人 1 体で 10 万円、こどもは 8 万円台とかなりの高額だが、顧客から問い合わせも入り始めた。 今年中に国内でも発売される可能性のあるウエアラブル端末も含め、身近な商品としてハイテク技術が登場することへの関心が高まっている。
プレミアム・ブランド化した商品への人気も衰えない。 江崎グリコが「ポッキー」のプレミアム商品として発売した「バトンドール」。 1 箱 143 円で買える通常の商品に対し、プレミアム版は 481 円と「お高い」が、大阪のデパ地下で行列ができる人気だ。 「キットカット」やポテトチップにもプレミアム商品が登場し、今や「プレミアム」がつけば高価格でも売れる時代だ。 SMBC フレンド証券・チーフマーケットエコノミスト・岩下真理氏は、この夏の消費トレンドとして「プチぜいたくニーズ」を挙げる。
<二極化する物価>
他方、企業のマーケティングの対象外にある階層も存在する。 増税が直撃する低所得層やトレンド消費に関心の薄い層が、それに該当する。 ほぼ年収 300 万円以下の世帯に相当し、消費者全体の 4 割を占める。 価格に上乗せされた増税分を節約するために、低価格志向が強まる可能性がある。 もし、この動きが顕在化すれば、再びデフレ圧力が増大する事態になることも予想される。
牛丼の並盛りは「すき家」が 270 円、「松屋」が 290 円、「吉野家」が最も高く 300 円。 5 月の前年比売上高が増えたのはすき家と松屋だった。 前年 4 月には値下げで「吉野家」が独走していた。 やはり安くした牛丼が結果的に好成績を残しているともいえる。 食品では、西友が 6 月 5 日から税抜 81 円セールを開始し、食品 139 品目を低価格で提供する。 増税によって打撃が大きくなる客層を対象に低価格を武器に売り上げを確保する戦略が、引き続き残っている。
販売の低迷が続いてきた日本マクドナルドでも、4 月の増税に合わせてハンバーガーとチーズバーガーを 100 円に値下げした。 だが、4、5 月とも既存店売上は前年割れ。 低価格市場は、値下げが単純に売り上げ増へと直結しない「難しい市場」でもあることを浮き彫りにしている。
一方、ベアや夏のボーナスとも無関係な非正規雇用者にも、時給上昇や雇用増加が追い風となっているのは確かだ。 ただ「2 回の増税幅 5% の物価上昇に耐えられるのか」といった懸念は、政府内にも消えていない。 中でも低価格を「売り」にしてきた業界では、影響は 2 回目の増税が消費者の視界に入ってくる「これから出てくる」との見方も少なくない。
所得上位の 4 割をターゲットにするグループと、低価格に反応する階層をメーンの顧客層として絞り込むグループに、商品や企業が二分される傾向が、増税後に強まっている。 所得上位 4 割の購買力増加が、消費全体をけん引するのか。 それとも低価格戦略に反応する階層の節約志向が、個人消費全体を冷え込ませるのか - -。 マクロ指標がどちらの影響を受けることになるか、今後の展開は、政府・日銀が発動する政策の方向性にも大きな影響を与えそうだ。(中川泉 スタンレー・ホワイト、Reuters = 6-11-14)
4 月の全国消費者物価指数は 3.2% 上昇
総務省は 30 日、消費増税分を含めた 4 月の全国の消費者物価指数(2010 年 = 100)を発表した。 価格変動が大きい生鮮食品をのぞく指数は、前年同月より 3.2% 上がって 103.0 になった。 増税の影響でバブル経済末期の 1991 年 2 月以来、23 年 2 カ月ぶりの高い上昇幅となった。
日本銀行は、消費税率引き上げによる 4 月の物価の押し上げ分は 1.7% と試算しており、増税の影響を除いた上昇幅は 1.5% となる。 増税前の 3 月(1.3% 増)よりも大きく、ガソリンや外国パック旅行などを中心に増税分をのぞいても物価の上昇が続いている。
また、総務省が同日発表した 4 月の家計調査(速報)では、2 人以上の世帯が使ったお金(物価変動を除いた実質支出)は前年同月より 4.6% 減の 30 万 2,141 円だった。 東日本大震災があった 11 年 3 月に 8.2% 減となって以来の大きな落ち込み幅だった。 消費増税前の 3 月は、家電や日用品など幅広い品目で駆け込み購入があり、前年同月より 7.2% 増と 39 年ぶりの高い伸びとなっていた。 4 月はこの反動で支出が落ち込んだ。 (asahi = 5-30-14)
16 年度の物価見通しは 2.1% に上昇 = 日銀展望リポート
[東京] 日銀は 30 日の金融政策決定会合で、2016 年度までの物価見通しを盛り込んだ「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめた。 物価見通しは 1 月時点と比較して、13 年度はやや上方修正されたが、14、15 年度は変わらずだった。 今年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤ごろに 2% 程度に達する可能性が高いとしている。
新たに発表された 16 年度の物価見通しは 2.1% で、2% の物価安定目標をやや超えると見込んでいる。 金融政策上、重視すべきリスクについて、中長期的な予想物価上昇率の不確実性や金融機関の国債保有残高に言及した。
<消費税引き上げ後も潜在成長率を上回る成長継続>
発表された政策委員の経済成長率、物価見通しの大勢では、各委員の見通しのレンジが 1 月見通しより狭い範囲に集約されている。 成長率の中央値は 13 年度、14 年度が下方修正されたが、15 年度は変わらず、新たに発表された 16 年度はやや成長が鈍化する見通しとなった。 一方で、物価見通し(消費増税の影響を除く)の中央値は 13 年度はやや強めになり、14、15 年度は 1 月と全く変わらずだった。 16 年度は成長率鈍化にもかかわらず 2.1% にやや加速するとの見通しを示した。
その上で、見通しの本文では、14 年度から 16 年度までの日本経済を展望すると、2 回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される、とした。 消費者物価の前年比は、しばらくの間 1% 台前半で推移した後、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤ごろに 2% 程度に達する可能性が高いとし、その後次第に、これを安定的に持続させる成長経路へと移行していくとみている。
なお、 2 回の消費税率引き上げが物価に及ぼす影響については、税率の引き上げ分が現行の課税品目すべてにフル転嫁されると仮定して機械的に試算すると、14 年度の消費者物価の前年比は 2.0% ポイント、15 年度下期と 16 年度上期の消費者物価の前年比は 1.3% ポイント押し上げられると試算している。
<14 年度成長は下振れ、労働需給と期待インフレ率が物価押し上げ>
従来の見通しと比べると、成長率の見通しは、輸出の回復の後ずれなどから、14 年度については幾分下振れるものの、物価の見通しは、1) 雇用誘発効果の大きい国内需要が堅調に推移する下で労働需給が引き締まっており、この傾向がさらに強まることや、2) 中長期的な予想物価上昇率の高まりが実際の賃金・物価形成に影響を与え始めているとみられることから、おおむね不変とした。
<リスクは消費増税や労働需給、金融政策、必要な調整>
リスク要因として、輸出の動向や消費増税による家計の実質所得の減少など実体経済のリスクがあるとした。 物価面では消費税率引き上げに伴う幅広い品目の一斉の価格上昇が人々のインフレ予想に与える影響や、労働需給における製造業・非製造業間の労働集約度の違いからそのバランス次第で不確実性がある、といった点を挙げた。 また、企業が価格や賃金をどの程度引き上げていくか、あるいは為替相場や国際商品市況に左右されがちな輸入物価動向にも言及した。
金融政策運営の観点から重視すべきリスクについては、経済見通しでは輸出の動向などの不確実性が大きいものの、リスクは上下にバランスしていると評価している。 物価については、中長期的な予想物価上昇率の動向などをめぐる不確実性が大きいものの、リスクは上下におおむねバランスしているとみている。
より長期的な視点から、金融面の不均衡について、現時点では資産市場や金融機関の行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されないとしながらも、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高がこのところ減少しつつも引き続き高水準である点には留意する必要があるとした。
中心的な見通しとリスク点検を踏まえ、金融政策運営については「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は 2% の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続するとした。 その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うとしている。 (Reuters = 4-30-14)
消費者物価、2.7% 上昇 消費増税の 4 月、都区部
総務省は 25 日、消費税率が 8% に上がった4月の東京都区部の消費者物価指数(2010 年 = 100)を発表した。 価格変動が大きい生鮮食品を除く指数(消費増税分を含む)は前年同月より 2.7% 上がり、101.7 になった。 全国の消費者物価指数は消費増税前の 3 月の指数が発表された。 増税前に駆け込み購入が出たこともあって前年同月より 1.3% 上がって 100.8 だった。 (asahi = 4-25-14)
物価上昇率、16 年度に 2% 台 日銀経済見通し公表へ
日本銀行は 30 日に発表する経済見通しで、2016 年度の物価上昇率(消費税増税分を除く)を 2% 台前半にする方向で調整に入った。 景気回復を背景に、目標の「物価上昇率 2%」を 15 年春に達成し、その後も 2% 台で推移するとの見通しを示す公算が大きい。
日銀は 4 月と 10 月に向こう 3 年間の経済成長率と物価の見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめており、今月は 30 日の金融政策決定会合で決める。 今回は 13 - 15 年度分に加えて、16 年度の見通しも初めて示す。 (野島淳、asahi = 4-24-14)
需給ギャップが日銀の試算でゼロに改善、増税後も物価上昇 = 関係者
[東京] 日本経済の潜在的な供給力と需要との差を示す「需給ギャップ」が、日銀の試算でほぼゼロに縮小しているもようだ。 試算通りに需給ギャップがゼロになれば、雇用や設備の過剰感がなくなり、物価上昇に弾みが付きやすくなる。 日銀は消費増税後の消費動向やマインドの変化を注視しているが、これまでの試算では 4 - 6 月期に、需給ギャップのマイナス幅が大きく再拡大し、デフレ圧力が高まるリスクは小さいと想定しているとみられる。
<リーマン前以来のプラス転換も>
日銀は 4 月 30 日の金融政策決定会合で、半期に 1 度まとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表し、向こう 2016 年度までの経済・物価見通しをまとめる。 そこでの物価をめぐる議論の土台となるのが、需給ギャップ。 これまで日銀は、13 年 7 - 9 月分まで対外公表してきた。 現在、1 - 3 月までの需給ギャップを試算している。
複数の関係者によると、昨年 7 - 9 月はマイナス 0.9% だった需給ギャップが、ほぼゼロまで縮小しつつあるという。 試算の中にはプラスに転じたとの結果もあり、確定すればリーマンショック前の 08 年 4 - 6 月以来となる。 需給ギャップの測定は、潜在的な供給力を推定する必要があるため、前提や計算方法の違いで大きく振れる。 内閣府は 3 月 14 日に昨年 10 - 12 月の需給ギャップがマイナス 1.6% と同年 7 - 9 月と同水準にとどまったとの結果を公表している。
日銀は、前提となる潜在成長率を 0.5% 程度と内閣府の 0.7% よりやや下方水準に想定しているほか、計算手法や前提が異なり、需給ギャップ試算値が内閣府より小さく、着実に改善傾向にあると試算しているもよう。
<短観利用した簡易推計では 4 - 6 月も需給ギャップ悪化せず>
日銀では、計算の煩雑な需給ギャップの簡易な推定手法として、短観の生産・営業用設備判断 DI (業況判断指数)と雇用人員判断 DI を加重平均した DI も併用している。 グラフにして重ね合わせると、需給ギャップと似通った動きを示すためだ。 加重平均 DI は、昨年 7 - 9 月期から「不足」に転じ、不足超幅が拡大傾向にある。 4 月 1 日の短観に基づいた 1 - 3 月の加重平均 DI は、不足超幅が 6.3 と昨年 10 - 12 月の 5.3 から拡大した。
短観の先行きをベースとした 4 - 6 月の DI も 1 - 3 月と横ばいの 6.3 だ。 加重平均 DI が需給ギャップを反映していると仮定すれば、消費増税直後の 4 - 6 月も需給ギャップが大きくは拡大しないと推察される。 一方、民間エコノミストの間では「駆け込み需要で 1 - 3 月期は需給ギャップが前四半期比 1.1 ポイント改善するが、4 - 6 月期に 1.4 ポイント悪化する(第一生命経済研究所の新家義貴主任エコノミスト)」というのが、標準的な見方だ。
需給ギャップは将来の物価上昇圧力をみるための推計の 1 つ。 現在の日銀では、輸出低迷が長引いても、国内の雇用・設備過剰の解消で、物価を押し上げる力が働き、円安やエネルギー価格の上昇による物価上昇圧力が一服しても、物価上昇が持続するとの見方が中心的となりつつある。
もっとも消費増税の影響は、予断を許さない。 実質所得の減少がどの程度消費を冷やすのか、4 月 1 日以降の消費動向を丹念にフォローしなければ、はっきりしない面が多い。 仮に消費の落ち込みが政策当局や企業の想定よりも大きくなれば、企業のマインドにも悪影響を与えかねない。
そのことを起点にして、再び雇用・設備の過剰が増え、物価を押し上げる力が弱まるシナリオの現実性は決してゼロとは言い切れない。 日銀はあらゆるデータを収集し、増税後の景気・物価の動向を迅速に把握し、現実の経済・金融情勢がどのように変化してしているのか注視する構えだ。 (Reuters = 4-3-14)
2 月の消費者物価は 9 カ月連続で上昇 電気代などエネルギーの値上がり続く 生鮮食品も高く
総務省が 28 日発表した 2 月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、前年同月比 1.3% 上昇して 100.5 になった。 9 カ月連続の上昇で、昨年 12 月から 1.3% の上昇が 3 カ月続いた。 生鮮食品も含めた総合指数は前年同月比で 1.5% 上昇して 100.7 となった。 前月とは同水準。 食料とエネルギーを除く「コアコア指数」ベースでは、0.8% 上昇して、98.3 まで改善した。 これでプラスは 5 カ月連続。
生鮮食品を除く指数は、原発の稼働停止や円安による輸入燃料の高騰を受けて、エネルギー関連が 5.8% 上昇した。 電気代が 9.3%、都市ガスが 5.3% 上昇。 ガソリン価格も 2.6% 上昇した。 このほか家庭用耐久財や教養娯楽用耐久財も上昇した。 特に長く下落が続いたテレビは 1 月を上回る 5.8% の上昇幅となっている。 生鮮食品は 1 月の前年同月比上昇率 2.8% を大きく上回る 7.8% となった。 生鮮野菜 4.8%、生鮮果物 6.6% のほか、生鮮魚介が 12.6% も値上がりした。 (sankei = 3-28-14)
2 月の消費者態度指数、2 年 5 カ月ぶり低水準
内閣府が 12 日発表した 2 月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比 2.2 ポイント低下の 38.3 と 3 カ月連続で悪化した。 2011 年 9 月 (38.2) 以来 2 年 5 カ月ぶりの低水準。 マイナス幅は台風の影響があった 13 年 10 月(4.2 ポイント低下)以来 4 カ月ぶりの大きさだった。 4 月の消費増税後に耐久消費財を買い控えようとする心理が働いたことなどが影響した可能性がある。
関東や甲信で記録的な大雪が降ったことも指数を押し下げた。 内閣府は基調判断を前月の「足踏みがみられる」から「弱含んでいる」に 2 カ月ぶりに下方修正した。 指数を構成している「暮らし向き」、「収入の増え方」、「耐久消費財の買い時判断」、「雇用環境」の 4 項目全てが悪化した。 「暮らし向き」は 3 カ月連続で低下し、東日本大震災直後の 11 年 4 月以来 2 年 10 カ月ぶりの低水準となった。 「耐久消費財の買い時判断」は 5 カ月連続のマイナスで、09 年 2 月以来 5 年ぶりの低さだった。
1 年後の物価の見通しについては「上昇する」と答えた割合(原数値)は 0.1 ポイント低下の 89.3% と 2 カ月ぶりに減少したものの、高水準で推移した。 電気料金やガス料金、たばこやパンなどの一部食料品の価格などの引き上げ傾向が影響した。 調査は全国 8,400 世帯が対象。 調査基準日は 2 月 15 日で、有効回答数は 5,635 世帯(回答率 67.1%)だった。 (nikkei = 3-12-14)
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