「無印良品」名乗れない? 中国の "無印" に敗訴

あの「無印良品」に無印良品と名乗ることを禁じる判決が言い渡されていた。 シンプルなデザインが人気。 日本で約 450 店舗。 中国でも 240 店舗以上を展開している無印良品にまさかの事態。

中国語表記で無印良品と書かれた北京のお店。 日本の無印良品とは関係ないお店なのだが、実際に商品を見てみると …。 タグには無印良品と書かれている。 さらに、綿棒は表示が非常に無印良品のものと似ている。 この中国の無印そっくり店。 中国国内に 30 店舗ほど存在しているという。 だが、その評価は…。 商品の質の低さを指摘する声が多い。

そして、驚くべき展開が待ち受けていた。 無印そっくり店が日本の無印良品を「権利侵害」で訴えたのだ。 それだけでも驚きだが、なんと日本側が敗訴したと報じたのだ。 我々は無印そっくり店の関係者を直撃。 すると …。  "無印そっくり店" 関係者 : 「日本の無印の方が後からパクったんですよ。」

一体、どういうことなのか。 日本の無印良品は 2005 年、中国に 1 号店を開設。 だが、その前に中国では別の会社がベッドカバーやタオルなどで無印良品の商標を取得していたのだ。 その別会社が日本の無印良品を相手取り、権利を侵害されたとして損害賠償を求める訴訟を起こしていたのだ。 日本の無印良品は控訴して現在、係争中だという。 (テレ朝 = 11-2-18)

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無印のホテルと旗艦店 来年 4 月 4 日 銀座に開業

「無印良品」を展開する良品計画は 3 日、宿泊施設「MUJI HOTEL GINZA」と新たな旗艦店を来年 4 月 4 日に東京・銀座に開業すると発表した。 ホテルは中国の深セン、北京に続く 3 カ所目で、国内では初めて。 無印良品の世界観をじっくり体験してもらい、ブランド力の向上を狙う。 これに伴い、JR 有楽町駅に近い現在の旗艦店「無印良品 有楽町」を 12 月 2 日に閉店する。

銀座の並木通り沿いに建設されるビルの地下 1 階 - 地上 6 階を世界最大規模の店舗「無印良品 銀座」にする。 東京近辺の農家が生産した青果などを使うジュースやデザートのイートインコーナーや、茶葉の量り売りサービスも。 地下 1 階にはレストランも入る。

ホテルは 6 - 10 階。 6 階にはフロントのほか、ものづくりやデザインに関する二つの展示スペース、コーヒーやお酒が飲める空間、デザインやアートの書籍を集めたライブラリー、イベントも開けるラウンジなどを設ける。 客室は全 79 室で、1 部屋の面積は約 13 - 51 平方メートル。 「ちょうどよい価格でよく眠れ、旅先において心と体を整える空間」を目指す。 3 日に会見した松崎暁(さとる)社長は「無印良品が好きな世界中の方がターゲット。 無印の世界観を体感してほしい。」と話した。

同日発表した良品計画の 2019 年 2 月中間決算は、売上高が前年同期比 10.0% 増の 2,012 億円、営業利益は 11.5% 増の 235 億円、純利益は 24.1% 増の 181 億円で、いずれも過去最高。 昨年から衣料品や家具、雑貨など 2,700 余りの品目で値下げを継続しており、直営既存店の客数は前年同期比 8.2% 伸びた。 8 月末からパジャマやシーツなど秋冬物約 230 品目も値下げした。 (高橋末菜、asahi = 10-3-18)

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15 期連続で増収の「無印良品」好調な理由は衣料品の価格見直し

「無印良品」を展開する良品計画の勢いが加速している。 2018 年 2 月期の連結業績は営業収益 3,795 億 5,100 万円(前期比 13.9% 増)、経常利益 459 億 8,500 万円(同 19.2% 増)と 2 桁の増収増益。 増収は 15 期連続、経常増益は 7 期連続で過去最高益を 6 期連続更新した。 その後も店頭は順調で、直営既存店の売上げは 3 月が 6.3% 増、4 月は 4.9% 増、5 月は 2.4% 増、6 月は 5.9% 増と増収を続けている。 既存店が前年を割ったのは約 2 年前の 16 年 7 月(2.0% 減)までさかのぼらなくてはならない。 今回の快進撃の理由はどこにあるのだろうか。

価格の見直しで衣料品が急伸、客数が大幅に増える

前期の業績で特筆されるのは国内事業が全体を引っ張ったことだ。 国内事業の営業収益は 8.8% 増、営業利益は 30.1% 増で、直営既存店の伸び率は 6.8% と少なくとも今世紀に入ってからは一度もなかった高い伸びを見せた。 それを支えたのは衣服・雑貨の好調ぶりだ。 衣服・雑貨は既存店で実に11.9% 増とかつてない 2 桁の成長を果たした。 ちなみに主力の生活雑貨は 3.7% 増、食品は 4.2% 増。 衣服・雑貨の絶好調が際立っている。

衣服・雑貨がこれだけ伸びたのにはわけがある。 靴下や肌着など購買頻度が高い「生活の基本」商品を中心に数度にわたる価格の見直しをした結果、新しいお客が飛躍的に増えたのである。 振り返ってみると、良品計画は 14 年秋と 15 年秋に折からの円安基調に対応し原価高を吸収するために一部商品の値上げを実施した。

しかし 16 年秋にその方針を転換。 暮らしの定番商品を手頃な価格で提供する「ずっと良い値。」のシリーズを増やしつつ価格の見直しに入った。 17 年春には「豊かな低価格」と銘打って 200 品目を値下げ。 17 年秋にはさらに衣服・雑貨 110 品目を値下げした。 そして今年春には「新価格宣言。」として標準店で展開している約 5,600 品目のうち約 2,400 品目にわたる過去最大規模の値下げを断行した。 この中には切りが良く分かりやすい価格への変更もあり、衣服・雑貨の値下げが最も強いインパクトを与えた。

同社で展開している靴下の 7 - 8 割を占める「えらべる 3 足シリーズ」がその効果を如実に表している。 かつて 1,000 円だったより取り 3 足の売価を 15 年 12 月に円高対応で 1,200 円に値上げしたが、お客に受け入れられず苦戦した。 そこで 16 年 8 月下旬に 990 円に値下げ。 18 年 2 月からはさらに 890 円へと引き下げた。 1,200 円への値上げに伴って靴下の商品ラインは 15 年下期に売上数量が前期比 0.3% 減、売上金額が 3.1% 減と苦戦したが、990 円へと値下げした後の 16 年下期には売上数量は 49.0% 増、売上金額は 28.2% 増と一気に跳ね上がった。

その後も 17 年上期は売上数量 25.4% 増、売上金額 15.5% 増、17 年下期は売上数量 18.4% 増、売上金額 17.3% 増と数量・金額共に 2 桁増を継続。 何よりも客数が増え始めたのだ。 衣服・雑貨部門の直営既存店の客数は 15 年下期に 10.1% 減、16 年上期に 9.1% 減だったが、16 年下期に 1.3% 増と前年を上回り、さらに 17 年上期には 11.0% 増、17 年下期には 18.4% 増と尻上がりに伸びていった。

全体の客数も引き上げ、大型店化で衣料品売場を拡大

この靴下だけではなく、例えば 17 年秋には紳士の裏毛ロングパンツを 2,980 円から 1,290 円に、えらべるトランクス & ボクサーをより取り 2 枚で 1,490 円から 990 円に、軽量フレンチダウンポケッタブルスタンドカラーベスト(紳士・婦人)を 6,980 円から 3,990 円に値下げした。 旅行で使うハードキャリーも 17 年 3 月に小型の 35L タイプを 1 万 9,000 円から 1 万 4,900 円に値下げ。 計画を大きく上回る売れ行きだという。

好調な衣服・雑貨に引っ張られる形で、「無印良品」全体の客数が伸びていった。 16 年 2 月期に 2.6% 減だった直営既存店の全体の客数は価格の見直しを始めた 17 年 2 月期に 0.3% 増とプラスに転じ、前期の 18 年 2 月期には 6.1% 増と大幅に増えた。 しかも前期は全四半期で前年を上回った。 一品単価の引き下げで買上点数が増え、客単価も伸びは鈍化したとはいえ、総じてプラス基調で推移した。 なお、今第 1 四半期(3 - 5 月)における直営既存店の全体の客数は 8.3% 増、ただし客単価は 3.4% 減となった。

社長はこう話す。 「価格を見直したことで支持を受けた。 実は 08 年のリーマンショック後 16 年の時点で既存店の客数が前年を上回ったのは 13 年度の 1 年だけだった。 元来、無印良品は普段の生活に使ってもらう『生活の基本』の商品なので、使用頻度が高い商品は価格感度が重要なのだと改めて認識。 マーケットの潮目が変わったのだと感じた。 バイイングパワーを背景にした価格交渉や取引先の集約、産地の移管、流通経路の短縮によって価格を見直す努力は継続的に進めたい。 今後は全世界でも価格を見直していきたい。」

衣服・雑貨が無印良品全体に影響力を増している背景には、同社が新たな店舗戦略に踏み出しているという事情もある。 同社は前期からスタートした中期 4 カ年経営計画で国内店舗の大型化を掲げている。 同社の国内直営店の平均売場面積は前期末で 229 坪。 今後はこの約 2 倍の 500 坪級の大型店を 20 年までに 100 店に増やす計画だ。 500 坪ないと無印良品が展開する約 7,000 アイテムを効果的に並べられないという判断によるものだ。

この中核にあるのが衣服・雑貨売場の拡大だ。 500 坪の大型店では衣服・雑貨の構成比を 40% に引き上げる。 生活雑貨は 50%、食品は 10% をイメージしている。 このため有楽町と丸井吉祥寺、渋谷西武、広島パルコの各大型店ですでに改善投資を実施し、衣服売場を広げてその効果を検証。 実際に販売効率が高まっているという。 今後、既存店でも衣服売場を広げて店舗を大型化していく考えだ。

東アジアが全社利益の 4 割に 新たな店づくりに注目

直近だけの好調要因ではないが、ここ数年の同社の成長を継続的に支えているのは中国を中心とした海外事業だ。 前期の海外事業の営業収益は 23.1% 増、営業利益は 2.2% 増となった。 特に東アジアの営業利益は 168 億円とグループ利益の 37% を生み出している。 中国はテレビ番組の誤報の影響で上期は苦戦したが、通期では既存店が 4.6% 伸びるなど堅調に推移。 33 店を新規出店し、4 店を閉鎖、前期末の店舗数は中国だけで 229 店に広がった。 この結果、海外店は 457 店となり国内の 419 店を初めて上回った。

中国では現在、1、2 級都市に出店している店が全体の 8 割を超え、3 級以下の都市は 2 割未満にとどまる。今後は 1、2 級都市をベースにドミナント(地域集中)出店をしながら、3 級都市にも点で出店し店舗数を増やしていく。 中国では今後年間 30 店ペースで出店する一方で、20 店で改装を実施。 海外店全体では 50 - 60 店を出店していく計画だ。

良品計画は今、新たな店づくりに乗り出している。 今年 3 月にイオンモール堺北花田店を移転、増床。 昨年 7 月に有楽町店で始めた青果売場はもちろん、産地直送を基本に鮮魚や精肉まで品揃えを広げた大生鮮売場を開設。 グロサリーや焼きたてパン、「カフェ & ミール MUJI」、そしてフードコートも導入し、「食」をテーマとした大型専門売場を編成した。 出足は好調で、生鮮食品が来店頻度を高め、世界旗艦店である有楽町店の客数を超えて、計画を大きく上回る成果を挙げているという。

しかし本当に注目すべきはその食品売場ではなく、同社の売場全体の編集力の進化だ。 衣服・雑貨や生活雑貨、さらに書籍などが混然一体と融合し、「生活の基本」をコンセプトとした未来型の大型ライフスタイル提案型専門店が完成に近づきつつある。 そんな印象を受けた。 19 年春に東京・銀座に開業するホテル併設型の世界旗艦店を含め、しばらくはその店づくりから目が離せない。 (商業界 = 7-30-18)


空気に触れ変化 徳島の職人「藍は生きている」

2020 年の東京五輪・パラリンピックの公式エンブレムの組市松紋に採用され、「ジャパンブルー」として注目されるようになった藍。 徳島県の特産「阿波藍」や伝統の藍染めへの関心が高まっている。 藍を育てて、昔ながらの技法で天然の染料を作り、染める技は職人たちに受け継がれている。 草むすような発酵臭が鼻をくすぐる工房。 藍がめを満たす濃いあめ色の液面に、コバルト色のあぶくが浮かび、日差しに輝いていた。 「藍の華(はな)」と呼ばれるこの泡は、染めの準備が整った証しだ。

徳島市中心部にほど近い「紺屋古庄(ふるしょう)」の 6 代目、古庄紀治(としはる)さん (71) が、染め液に絹の布を浸す。 温度は 25 度で約 10 分。 引き上げた瞬間、緑色に見えた布は、空気に触れて青く変化していった。 古庄さんは、江戸中期の伝統技法で絹の藍染めを復活させた「現代の名工」。 その仕事を支えるのは、昔ながらの製法でつくられる天然の染料「すくも」だ。 「化学染料に押されて厳しい時代もあったが、藍師(あいし)さんたちがすくもを守り、受け継いでくれたおかげで、昔ながらの染めができる。」

すくもづくりは今、100 日間に及ぶ「寝せ込み」の最中。 春先に種をまき、梅雨明け後に収穫した藍の葉を腐らせて発酵させ、染料にする工程だ。 10 月中旬、徳島県内に 5 軒ある製造所の一つ、上板町の佐藤阿波藍製造所では夜明け前から葉藍をかき混ぜる藍師の息づかいが聞こえてきた。 熱気がこもる作業場。 19 代目の佐藤昭人さん (79) は全身汗まみれになりながら、葉藍の山を熊手で混ぜ返していた。 「藍は生きている。だからこそ発酵する。」

100 日間の「寝せ込み」が続く徳島県上板町の佐藤阿波藍製造所。 湯気がこもる室内で、19 代目の藍師(あいし)、佐藤昭人さん (79) と 20 代目の好昭さん (55) が葉藍を熊手などで混ぜていた。 発酵を促すために 5 日おきに繰り返される「切り返し」と呼ばれる作業だ。

アンモニア臭が目や鼻を突く。 葉藍の山に手を入れさせてもらった。 軟らかな感触の後、熱に包まれた。 「今の時期なら 65 度。 それ以上でも以下でもだめ。」と昭人さん。 外気温や発酵の進み具合を見極め、時には地下深くからくみ上げた水をかける。 猛暑や台風に見舞われ葉藍の出来が心配されたが、好昭さんは「いい藍ができそうです。」

徳島を東西に流れる吉野川の流域では、古くから藍が栽培されてきた。 たびたび氾濫する暴れ川は肥沃な土を運び、台風の季節の前に収穫できる藍が人々を潤した。 室町時代の 1445 年の文書「兵庫北関入船納帳(ひょうごきたせきいりふねのうちょう)」に、兵庫の港への阿波藍の荷揚げの記録が残る。

木綿の普及で需要が高まった江戸時代には一大産地として知られた。 藍住町文化財保護審議会長で郷土史家の三好昭一郎さん (89) は、阿波藍が全国の市場を席巻した理由を「工夫を凝らして技術改良した成果」と語る。 徳島藩による生産の奨励と、流通の後押しも背景にあった。 だが、明治時代にインド藍やドイツの化学染料に押され、阿波藍は衰退した。 「大量の軍服や官服を短時間で均一に染める染料が求められた。 手間がかかり、技術的にも難易度の高い阿波藍は敬遠された。」と三好さんは指摘する。

かつて藍畑が広がっていた吉野川の下流に立つ四国大学(徳島市応神町古川)に「藍の家」と名付けられた工房がある。 1979 年、キャンパスの一角のプレハブに藍がめが置かれ、その後、2 階建ての工房が建てられた。

10 月半ば、工房では染色デザイン研究室の学生が、21 日のファッションショー「インディゴコレクション 2018」で披露する浴衣やドレスを仕上げていた。 真夏に葉藍の収穫を体験し、藍師が作ったすくもを使って染め液の仕込みもした。 時間と手間がかかる厳しさを知ったという 4 年の西岡奈津美さん (23) は「色の濃淡の豊富なバリエーションが魅力。 若い人たちに日常の暮らしの中で藍染めを取り入れてもらいたい。」 指導する有内則子准教授 (44) は「藍の美しさや価値が見直されている今こそ藍の栽培やすくもづくり、藍染めの伝統が時間と労力をかけて受け継がれている実情を知ってほしい」と話す。

あの時この時

藍の栽培が危機を迎えた時代もあった。 タデ科の藍は一年草。 毎年栽培して次の年の種を確保する必要があるが、戦時中は食糧増産の国策のため栽培が禁じられたという。

徳島県板野町松谷にある「岩田ツヤ子の碑」には「叔父・佐藤平助の依頼を受け、憲兵・警察の目を逃れ、命がけで松谷の山奥で五、六年間種を採り続けた。 この努力が基礎となり、戦後一早(いちはや)く佐藤家で藍作りが復活した」と刻まれている。 2001 年に碑を建てたのは藍師の佐藤昭人さん (79)。 祖父の平助さんが藍を守った具体的な方法を、平助さんの死から数十年後に知ったという。 「おかげで、今も藍の栽培が続いているんです。」 (松尾俊二、asahi = 10-27-18)


アマゾン、"試着できる衣料品通販" 「プライム・ワードローブ」を日本でも提供

アマゾンジャパンは 10 月 25 日、プライム会員向けに、衣料品を購入前に試着できる通販サービス「プライム・ワードローブ」の提供を始めた。 試着後、気に入った商品のみ購入し、残りは返送できる。 送料・返送料は無料。

3 - 8 点までの商品をまとめて取り寄せ、配送された翌日から最長 7 日間のうちに購入する商品を選べる。 不要な商品は、届いたときの箱に詰め、同梱されている着払い伝票を使って返送が可能だ。 プライム・ワードローブの利用には、追加の会費はかからない。 商品ラインアップは、数千のブランドの中からレディース、メンズ、キッズ向けの服、シューズ、バッグ、腕時計、ジュエリーなどを用意する。 同サービスは、Amazon.com が 6 月から米国で提供していた。 (ITmedia = 10-25-18)


セールしない「スタイルデリ」 最安値より満足度の服

ネバーセイネバーの磐井友幸社長インタビュー

記事コピー (10-13-18)


オーダー紳士服、ゾゾ参入で競争激化 AOKI も新戦略

オーダーメイドの紳士服をめぐる競争が、激しくなっている。 きっかけは、ネット通販ゾゾの今夏の参入だ。 しにせはリアル店舗の強みを生かして、対抗しようとしている。 「完全オーダーメイドのスーツを家で注文できる。 いかがですか。」 7 月、前沢友作社長が新サービスを発表すると、会場から拍手が起きた。 無料で配るボディースーツで採寸し、ぴったりの一着を作る。 生地やボタン、裏地の色なども選べる。 製造から販売まで手掛ける自主企画ブランド (PB) のフルオーダースーツを、ワイシャツとセットで販売。 価格は税込み 2 万 4,800 円だ。

「ゾゾの参入で市場は厳しくなっているが、オーダーメイドへの世間の関心は高まった。 一緒に盛り上げ、新たなお客を獲得していきたい。」 AOKI ホールディングスの青木彰宏社長は 4 日、新戦略の発表会で力を込めた。 AOKI のオーダーメイドでは、全国全 570 のリアル店舗でスタイリストがコーディネートを助言する。 16 種類の型をベースに好みの生地やボタンなどを選んでもらう。 仕上がりまで 3 週間ほどかかるが、着た時のイメージは、タブレット端末で事前に確認できる。 一度、店で採寸した人なら自宅から注文を受け付けるサービスも、来年 1 月から実施予定だ。

販売価格は 1 着税抜き 3 万 8 千円からで、2 着買うと 4 万 8 千円から。 基本型が決まったパターンオーダーを採用することで、20 - 30 歳代に手の届きやすい価格にした。 (筒井竜平、佐藤亜季、asahi = 10-5-18)


スノーピーク x 帝人、難燃性と染色性に優れたアウトドア向け新素材を開発

スノーピークと帝人が、高い難燃性と優れた染色性を持つ新素材「テイジンコーネックス・ネオ」を活用した独自素材を共同開発し、「スノーピーク」のアウトドアアパレル「タキビ シリーズ」の新たなラインナップで採用した。 スノーピークと帝人は 2016 年に提携を開始し、防炎性に優れる帝人のメタ系アラミド繊維「テイジンコーネックス」をタキビシリーズで活用してきた。

新素材はアウトドアシーンに対応できる高い機能性や街にフィットする質感と着心地を追求し、着想から 2 年の歳月をかけて開発。 同素材を採用した新商品「タキビダウンジャケット(税別 7 万 2,000 円)」は 9 月 21 日から全国のスノーピーク直営店や、公式オンラインショップなどで販売されている。 (FashionNetwork = 9-21-18)


ショッピングモールで服が売れない深刻問題

秋風が吹き始めた 9 月上旬の平日。都内の大型ショッピングモールにある若年女性向けのアパレルショップでは、店先に並ぶ商品も茶色やワインカラーといった秋色に様変わりしていた。 ただ、実際に商品を手に取る客がいたのは店の奥。 そこでは定価 3,000 円前後の春夏物のブラウスやカットソーが、7 割引きの 790 円で大量にたたき売りされていた。

代表格のアダストリアが苦戦

イオンモールやららぽーとなど、ニューファミリー層や若いカップルの定番買い物スポットである郊外型ショッピングセンター (SC)。 その SC に出店するアパレルが、軒並み苦戦を強いられている。 代表格は、「グローバルワーク」や「ローリーズファーム」など SC 向けのブランドを多数展開するアダストリア。 前 2018 年 2 月期は主力ブランドの不振で売上高 2,227 億円(前期比 9.4% 増)、営業利益 50 億円(同 66.4% 減)と、増収ながら大幅減益に陥った。 今 2019 年 2 月期の出足はさらに厳しく、第 1 四半期は減益決算となった。

「アース ミュージック & エコロジー」や「アメリカン ホリック」を持つストライプインターナショナルも、2017 年度の決算は 15 億円の営業赤字に沈んだ。 業績悪化の最大の要因は、既存店売り上げの減少だ。 来店客が減り、売り切れなかった在庫を値引き販売で処分するため、たとえ売り上げを確保できても利益は削られてしまう。

現状を深刻視した企業の中には、経営体制の刷新で立て直しを図ろうとする動きも出てきた。 アダストリアは今年 3 月、創業者である福田三千男会長が社長も兼務することに。 前期に大幅赤字へと転落したジーンズカジュアル大手のライトオンも 4 月、経営推進本部長で 38 歳の川崎純平氏が社長に就任し、営業本部の拠点を茨城・つくばから東京・原宿に移した。

類似商品の比較が容易に

2000 年代以降、百貨店アパレルが凋落する傍ら隆盛を誇った SC 系アパレルに何が起きているのか。 「いかに低価格化の渦に巻き込まれないようにするか。とにかく今はそこに気をつけている。」 SC にも店舗を構える大手アパレルの経営幹部はそう危機感を募らせる。 SC系アパレルの頭を悩ませているのが、価格競争の激化だ。 海外生産へのシフトで始まった衣料品の低価格化は、消費者の節約志向の強まりを受け、年々顕著になっている。 店舗販売経験のある業界関係者は「今は若い人ほど即決しない。 『とりあえずメルカリで似た商品を探そうか』と、さらに安いものを求めていく。」と話す。

衣料品のネット通販が急速に広がり、消費者は容易に類似商品を比較できるようになった。「ZOZOTOWN (ゾゾタウン)」を筆頭とする EC モールでは、クーポンによる値引き合戦も熱を帯びる。 アパレル業界では 2015 年に大ヒットした「ガウチョパンツ」のような幅広パンツ以降、大きなトレンドの変化がないことも、顧客の来店頻度が下がる要因となった。 ただ、低価格志向の強まりやヒット商品の減少は表面的な問題にすぎず、SC 系アパレルの不振の原因はさらに根深い。 「ここ最近、『このブランドはこういう商品』と言えるような特徴が消えてきたように感じる。(商業施設のデベロッパー幹部)」

2000 年の大規模小売店舗立地法の施行以降、デベロッパーはイオンモールやららぽーとなどの大型 SC の出店ラッシュを続けた。 アパレルも大量出店への準備やそのための人材確保に追われ、物づくりの優先順位は徐々に下がっていった。 ドイツ証券の風早隆弘シニアアナリストは「他社との差別化のカギとなるはずの商品企画や生産を外部委託することで、低価格でも利益を稼ぐ手法が多くの SC 向けブランドで定着してしまった」と指摘する。

止まらない商品の "同質化"

物づくりへの投資を抑えながらも、アパレル側は確実に売れる商品をどう投入するかを模索する。 特に最近はネット通販の浸透などで各社の売れ行き動向が把握しやすくなり、シーズン途中で他社の売れ筋商品に似たものを追加投入する会社が増えた。

その結果、各ブランドの商品の "同質化" が進み、消費者も価格のみで比較購買する傾向が強まっていった。 アパレルに詳しいオチマーケティングオフィスの生地雅之氏は「『みんなで渡れば怖くない』と売れ筋商品のコピー生産を続け、今は各社が "怖い" 状況に陥っている。 必要以上の仕入れを抑えて、自社の味を出せる商品で差別化する必要がある。」と警鐘を鳴らす。

今年に入り、店頭や自社サイトではセールを抑制して新商品を取りそろえ、売れ残った在庫はゾゾタウンなど EC モールサイトで集中的に販売するなど、販路の使い分けに知恵を働かせる SC 系アパレルも出てきた。 とはいえ他社と同じような商品が並んでいるのでは、消費者はより安いものを求めるだけ。 生産体制を抜本的に見直し、価格以外でも商品の訴求力を高めていかないかぎり、SC 系アパレルの復活は遠のくばかりだ。 (東洋経済 = 9-16-18)


東レ瀬田工場、衣料開発拠点一新 豪雨もリアルに再現

大津市大江の東レ瀬田工場に今年 6 月、テキスタイル・縫製品の開発拠点「テクノラマ G3」が竣工した。 開発衣料の試験のために備えてきた人工気象室の数を増やしたほか、繊維素材情報を一括で管理する「テキスタイルライブラリー」も新設。 施設の内部はどうなっているのか知ろうと 6 日、瀬田工場を訪ねた。

「テクノラマ」の名前は、「テクノロジー (Technology = 技術)」と「パノラマ (Panorama = 次々変化する光景)」に由来する。 同工場内で紡績から縫製までの工程(繊維高次加工)における技術と商品開発を行う「テキスタイル・機能資材開発センター(テキ資開センター)」の一部。 その役割は開発商品の性能評価で、「軽いのに暖かい」、「汗で蒸れないのに防水」といった高機能衣料からスポーツウエアまで、多彩な商品を対象に実験を行っている。

メイン設備の一つ「人工気象室」では、気温や湿度、降雨量といった項目を調整することで、さまざまな気象条件を再現。 気象室自体は同工場に初代テクノラマ (G1) が誕生した 1983 年当時から備わっているものの、いっそう「現代の気象」に近づくようリニューアルされている。 例えば、G1 に備わっていた「降雪」機能は、1 時間あたり 0 - 200 ミリに設定できる「降雨量」機能になった。 テキ資開センターの清水敏昭所長は「G1 の頃はスキーブームで、ウエアの試験が多かったが、最近は豪雨が多い。 ここでは時代に合わせた気象を再現できる。」と説明する。

気象室は縦 5 メートル、横 6 メートル、高さ 4.5 メートルで、ステンレス張り。 今回はさらに、「副室」と呼ばれる気象室を 2 部屋、新たに併設した。 衣料を着用した被験者が計 3 つの気象室を行き来することで、急激な天候の変化を想定した実験が可能になったという。 実際のテストでは、筋肉の動きを調べる筋電計や発汗計なども活用し、生理学的な解析も実施。 さらに「仮想空間トレッドミル」と呼ばれる設備も導入した。 例えば極寒地を再現した試験で、大型モニターに映った雪山の景色が、被験者の歩行速度に合わせて変化。 仮想空間での実験ができる。

記者も実際にメイン気象室に入り、25 度で 1 時間に 100 ミリの雨を降らせてもらった。 すると、室内はあっという間に「どしゃ降り」に。機械から出ているとは思えないほどリアルなぬるい風が、「フワァ …」と肌をなで上げる。 屋外にいるかのように錯覚した。 センターには他にも、これまでに同社が原糸から開発、生産した織物のデータを一元管理する「テキスタイルライブラリー」などを新設。 新商品の開発時も、過去のデータをもとに操作するだけで、素材や製品の完成シミュレーションをパソコン上で確認できる仕組みだ。

新たな設備が加わり、清水所長は「複合環境の再現が可能になり、さまざまな環境に対応する衣料がつくれるようになる。 設計の幅が広がった。」と期待する。 あなたが手に取るその洋服も、もしかすると、テクノラマでの実験を経て、完成したものかもしれない。 (高田みのり、中日新聞 = 9-13-18)


世界の衣料品生産 中国から東南アジアへシフト

世界の衣料品生産で中国から東南アジアへのシフトが加速している。 ファーストリテイリングなどアパレル大手は東南アジアでの一貫生産体制の構築に着手する。 2010 年代初めに衣料品の世界輸出の 4 割を占めていた中国は、人件費の高騰などで 3 割まで縮小している。 一国に依存しない生産体制を整え、価格競争力を維持する。

「ユニクロ」を運営するファストリは 11 月にもインドネシアで東レなどと共同出資した新工場を立ち上げる。 衣料品を生産するための素材を現地でも調達し一貫生産する。 これまでは素材は中国から調達することが多かったが、現地での一貫生産に取り組む。 ユニクロの主要工場は中国が約 6 割だが、ベトナムやインドネシアの工場数が増加している。 ベトナムは環太平洋経済連携協定 (TPP) で関税障壁が低いことからアパレル企業の注目が集まっている。

アパレル大手のオンワードホールディングスはカンボジアでの生産を増やすため現地に駐在所を設置した。 現在は中国が世界生産の委託先の 6 割でカンボジアは 1 割弱にとどまる。 保元道宣社長は「(物流網や人件費など)中国よりもカンボジアが適している部分は移管する」と説明する。 カジュアル衣料を手掛けるアダストリアはベトナム、タイ、インドネシアで糸も調達し現地で衣料品の一貫生産を始めた。 約 8 割を中国生産に依存するが、2 - 3 年内に東南アジアの生産比率を 3 割に高める。

東南アジアを飛び越えて、「縫製の最終地」と呼ばれるアフリカ大陸に進出する企業も出始めている。 カジュアル衣料のストライプインターナショナルがエチオピアでの生産を始めたほか、ファストリもアフリカでの生産を検討している。 アフリカは「アゴラ」という無関税システムが導入されているほか人件費の安さから欧米への供給元として注目されている。

日本化学繊維協会によると、世界主要国のアパレル輸出額は 2016 年が 4,585 億ドル。 そのうち中国が 1,582 億ドルで 34% を占める世界最大のアパレル製品の輸出国だが、13 年比で 5 ポイント低下した。 2 位のバングラデシュ (6%)、ベトナム (5%) を圧倒するものの東南アジアの割合が急速に高まっている。 各国は付加価値の高い製品の開発や生産を中国に残しつつ、縫製などを人件費の安い東南アジアやアフリカにシフトする戦略を鮮明にしている。

オンワードも縫製をカンボジアなどに一部移管する一方で、日本向けのオーダースーツを生産する縫製工場を中国・大連に新設する。 2019 年春にも生産を開始する。 従来の 2.5 倍となる年約 10 万着のスーツを作れるようにする。 7 月にプライベートブランド (PB) のオーダースーツの生産を中国で開始したスタートトゥデイも、生産量の確保が遅れ納期が大幅にずれ込んでいる。 衣料品の生産が大量生産だけでなく、オーダーメードなど商品の多様化が進む中、用途に応じた生産拠点の確保を巡る競争が一層激しくなりそうだ。 (nikkei = 9-10-18)


デサントがワコールと提携 伊藤忠の買収提案を拒否

スポーツウエアと下着という異色のコラボが誕生する。 「デサント」、「ルコックスポルティフ」、「アリーナ」、「アンブロ」などを展開するデサントと、下着大手のワコールホールディングス (HD) が包括的な業務提携を結ぶことが、日経ビジネスの取材で明らかになった。 まずは業務提携だが、いずれは資本提携、そして経営統合も視野に入れているという。 2018 年 3 月期の連結売上高を合算すれば 3,400 億円に迫るアパレル企業が誕生するかもしれない。

包括的業務提携の内容としては、スポーツインナーやスイムウエアなどで両社の強みを持ち寄った女性向け新商品の共同開発などが考えられる。 加えて EC (電子商取引)サイトの相互乗り入れや、両社の海外拠点の相互活用によるグローバル展開の強化なども進められるだろう。 提携が一段と深化していけば、いずれは物流網の共通化、工場の共同使用なども視野に入ってくる。

両社が取り扱う商品は重複する分野がほぼなく、補完関係が強い。 海外販売を見てもワコールは欧米に強く、デサントはアジアに足場を持つ。 双方が持つブランドを取り扱えば、グローバルで販売増につなげられるメリットもありそうだ。 相乗効果を引き出しやすそうな絶好の組み合わせはいかにして生まれたのか。

実はこの背後には、伊藤忠商事の存在があった。 伊藤忠が両社の提携を取り持つといった関係ではない。 今春時点でデサント株を 25% 握る筆頭株主の伊藤忠はデサントに事実上の買収を提案したものの、デサントがこれに反発。 対抗策としてワコールをホワイトナイト(白馬の騎士)に選んだのだ。 この数カ月、水面下ではデサントと伊藤忠の間で激しい応酬があった。

「伊藤忠が主体性をもってデサントを経営したい」、「25% しか持っていない状況では何もできない。 (株主総会で他企業との合併など経営の重要事項を決める議決を否決できる) 34% でも意味がない。」 7 月下旬、岡藤正広会長の意向を受けた伊藤忠幹部は、デサントの石本雅敏社長にこう告げた。 事実上の最終通告だった。

不信感を強めたデサントは伊藤忠に対抗すべくホワイトナイト探しを急ピッチで進めた。 そしてたどり着いたのがワコールだ。 デサントと同じく創業一族が経営の要職に就き、創業家同士の交流もあった。 今年 6 月に就任したワコール HD の安原弘展社長もデサントの石本社長とは関西財界つながりで公私とも付き合いがあり、意見を交わすなど仲が良い。 こうした人間関係が短期間で一気に提携話をまとめる一助になったようだ。 (日経ビジネス = 8-30-18)


"10 年着続けられる服" を作る「10YC」が一時休止を発表

"10 年着続けられる服" をキーワードに、持続可能性・透明性・ストーリー性をコンセプトに掲げるアパレルブランド「テンワイシー (10YC)」が、8 月 31日をもってウェブサービスを一時休止することを発表した。 サービス再開時期は、10 月上旬を予定している。 テンワイシーは原価や生産に携わった工場などを公開する日本発のアパレルブランドで、工場との直接取引により中間コストを省き 50% 近い原価率を実現。 2017 年 11 月に自社 EC サイトを開設し、T シャツをはじめ、スウェットシャツやロングスリーブ T シャツなどを展開している。

一時休止の理由についてテンワイシーは「『お客さまが欲しいときに欲しいものを安定的に、継続して作る』ことの仕組みづくりまで取り組むことができていなかった」とし、より多くの人にテンワイシーのアイテムの魅力を伝えることができるよう課題解決を図るという。 休止期間中、安定的に生産できる生産供給システムおよび協力工場とのさらなる関係構築や、新しい販売方法のシステム構築、自社組織体制の強化などに取り組んでいく。 同ブランドは「この休止期間を経て、より多くの方々に喜んでもらえるように、パワーアップして帰ってきます」とコメントを発表している。 (FashionSnap = 8-30-18)


ユナイテッドアローズ、婦人服の好調かき消す冬のハードル

ユナイテッドアローズの婦人服が快走を見せている。 百貨店での販売が主流のアパレル大手が苦戦するなか、主力ブランド「ユナイテッドアローズ」の 2018 年 4 - 6 月期のフォーマルな婦人服の売上高は前年同期に比べ 2 割増加した。 カジュアルでありながら、ビジネスシーンでも違和感なく着られるデザインや品質が、働く女性の心をつかんでいる。 一方、株価は 8 月に入って下落に転じ、快走とは程遠い。 2019 年 3 月期の業績予想が上方修正されなかったことが、失望につながっている。

「ここに売っているものなら、どこに着て行っても恥ずかしくないんです。」 JR 錦糸町駅に直結するショッピングセンターに入居する U アローズの店舗で買い物をしていた 20 代女性の田中早紀さん(仮名)は、こう言って笑った。 普段なかなかファッションの研究に時間を割けないため、ジャケットやブラウスなどがワンストップで手に入り、品質と価格のバランスがいい同店で服をそろえるのだという。

田中さんのような働く女性が、婦人服の快走を支えた。 4 - 6 月は、主力ブランド「ユナイテッドアローズ」の婦人用フォーマルウエアの既存店売上高が 21% 増えた。 スカート、半袖シャツはさらに好調で、5 割増だった。 クールビズや、スポーツ庁が推奨する「スニーカー通勤」などの浸透で仕事着のカジュアル化が進んでいるうえ、「若い世代は価格が価値に見合っているかどうかに敏感になっている(第一生命経済研究所の永浜利広氏)」ことで、百貨店より価格が手ごろな U アローズに需要が流れているのも追い風だ。

きめ細かく在庫を管理するようになったことも大きい。 仕事着にも使える婦人服などは、シーズンの区切りをこれまでの 6 から 8 に細分化。 各シーズンの当初に投入する商品量をあえて抑えめにし、売れ筋を見極めながら追加発注で対応するように変えた。 シーズン途中でも新たに商品の企画を可能にし、流行に対応できる体制も整えた。

関東地方で 6 月中に梅雨が明け、例年より早く夏が始まった今シーズンも「夏物の需要長期化に対応でき、機会損失を減らせた。(竹田光広社長)」 値下げによる在庫処分も減らせたため、4 - 6 月は粗利益率や売上高営業利益率も上向いた。 「大手製造小売りを除いた中堅衣料専門店の中では突出して好調(JP モルガン証券の村田大郎氏)」と、アナリストの評価も高い。

ところが、8 月以降の株価には失望が色濃くにじむ。 8 月 6 日に発表した決算で 19 年 3 月期通期の業績予想を変えなかったことが影響した。 8 月は 17 7日までに 9% 下落した。 U アローズはこれまでも、第 1 四半期決算のタイミングでは業績予想を据え置くことが多かった。 だが、今年は婦人服の好調が目立ち、これを織り込む形で 6 - 7 月は株価が 8% 上昇しただけに、失望も大きかった。

19 年 3 月期の連結営業利益は 108 億円と、前期比 3% の伸びにとどまる見通し。 PER (株価収益率)は 18 倍台と特段に割安感もないので、業績に上振れ余地がないのなら、さえない株価は当然の反応ともいえる。 上方修正はどれくらい期待できるのか。 読み解くカギは、コートなど単価の高い衣料品が増える冬にある。

17 - 18 年の冬は、西日本の積雪量が平年より 6 割増えるなど、異例の厳冬だった。 U アローズも冬物衣料が売れ、17 年 10 月 - 18 年 3 月期の既存店売上高は前年同期比 4% 増えた。 下半期の既存店売上高の伸びとしては、4 期ぶりの高水準を記録する結果となった。 19 年 3 月期は一転してこれが「高いハードル」になるわけだ。

別の言い方をすれば、シーズン細分化による在庫管理といった自助努力の真価が問われる。 アナリスト予想の平均(QUICK コンセンサス、17 日時点)では、19 年 3 月期の営業利益は 9% 増の 114 億円と会社予想を 6 億円ほど上回る。 これを上回る効果を出すことが、U アローズの第一目標になりそうだ。 (nikkei = 8-20-18)