中国、広がる統計「異変」の裏側 日経・原田逸策

中国の経済統計に異変が相次いでいる。 地方の「水増し」だけでなく、国の統計にも不自然な数値がみられる。 経済減速のサインなのだろうか。 景気の先行きに目をこらす必要がありそうだ。

地方 GDP、修正続く

2018 年 1 月に国の国内総生産 (GDP) にあたる域内総生産の水増しを公表した天津市。 18 年 1 - 3 月の実質成長率は 1.9% と全国 31 の省・自治区・直轄市で最低だ。 市職員は「幹部が焦って会議ばかり開き、疲れる」とぼやく。 19 年から地方の域内総生産の作成も国が主導する。 不正があれば厳罰だから天津は正直な数字を出したのだろう。

ただ、全国 31 地区をみると吉林、雲南、青海、河北、内モンゴルの 5 地区は実質成長率が名目成長率を上回った。吉林や内モンゴルにいたっては名目成長率がマイナス。 卸売物価が大幅に上昇しているのに不自然だ。 恐らく真相はこうだ。 18 年から実態に近い域内総生産を出し始めたが、17 年までの水増しした数値は維持したまま。 過去に遡って修正すれば当時の指導者に傷がつく。 だから名目の成長率が実質を下回る。 19 年をにらみ、ひそかに水増しを正しているようだ。

全国 31 地区のうち 1 - 3 月の実質成長率が国 (6.8%) を上回ったのは 18 地区と過去 10 年間で最少。 逆に下回ったのは 12 地区と最多だ。 かつて全体の 9 割の地区が国を上回る異常事態が続いたが、正常化しつつある。

域内総生産の「季節性」も薄れつつある。 以前は 31 地区合計の域内総生産と国の GDP を比べると、1 - 3 月は国を下回り、4 - 6 月と 7 - 9 月はやや上回り、10 - 12 月は大幅に上回る傾向があった。 10 - 16 年の平均では 1 - 3 月は国を 4% 下回る一方、10 - 12 月は国を 14% 上回る。 毎年の成長目標の達成に向け「ラストスパート」をかけるかのよう。 これが 17 年 10 - 12 月は国を 5% しか上回らず、18 年 1 - 3 月は国とほぼ同じ。 今後の動向が注目される。

国の統計も伸び率に異変

異変は国の統計にもある。 国家統計局が毎月公表する小売売上高(社会消費品小売総額)。 実額と前年同月比の名目伸び率を公表するが、18 年から統計局が公表する伸び率と前年の額から計算した伸び率がずれ始めた。 3 月は公表値は 10.1% だが計算値は 4.8% だ。 16 - 17 年は両者はぴたりと一致していた。 統計局は「17 年の値を農業調査の結果を踏まえて修正した」とする。 「下方修正後の数字をもとに計算すれば高い伸び」との説明だが、修正後の17 年の実額は公表していない。

統計局が毎月公表する製造業などの企業利益。 統計局によると 18 年 1 - 4 月の累計で利益は前年同期比 15% 増の 2.1 兆元(約 36 兆円)。 だが、17 年 1 - 4 月の利益は 2.3 兆元で前年値をもとに計算すると 6.6% の減少だ。 小売売上高の伸びは「誤差」ともいえるが、利益の増加と減少では違いが大き過ぎる。 統計局の説明は「調査対象は毎年異なる。 伸び率は同じ対象で算出。」 売上高 2,000 万元以上が調査対象なので中小企業は入れ替えがある。

そこで 12 年 1 月以降の企業利益の伸びを前年値をもとに計算し、公表値と比べた。 わずかな差はあるが、両者の動きはほぼ一致する。 差が開いたのは昨秋から。17 年 1 - 12 月の伸びは公表値が 21%、計算値は 4.5%。 当時、インターネット上などで指摘されたのは「統計の水増し修正で一部の地方が国に報告する企業利益が大幅に減った。」 固定資産投資の伸び率でも昨秋に同じことが起きた。 地方の水増し是正が波及し、統計局もひそかに過去の数値を修正した可能性がある。 統計局は「国の国内総生産は地方の修正に影響されない」と繰り返すが、主張が揺らぐ。

統計に「下方硬直性」

中国の統計には「下方硬直性」がある、とよく指摘される。 経済が好調なときは問題ないが、不調になると実態と統計がずれる。 15 年に貿易や生産が落ちこんだのに成長率が安定していた件が記憶に新しい。 相次ぐ統計の異変は経済の下押し圧力の高まりを映している可能性がある。 信頼できない統計からどう経済実態をとらえるか。中国経済を観察する人々に古くて新しい問題が突きつけられた。 (中国総局原田逸策、nikkei = 6-18-18)


5 月の中国 PPI、2 カ月連続で伸び加速 CPI は横ばい 中国

[北京] 中国国家統計局が発表した 5 月の生産者物価指数 (PPI) は前年同月比 4.1% 上昇と、4 カ月ぶりの高い伸びとなり、4 月(同 3.4% 上昇)から 2 カ月連続で伸びが加速した。 伸び率はロイターがまとめたアナリスト予想(3.9% 上昇)を上回った。 最近の原材料価格の上昇などが要因。 PPI の伸び加速により、米国との貿易摩擦にもかかわらず、中国経済の成長の勢いが持続していることが示された。 また、中国当局による重工業セクターへの厳格な環境規制の導入や、地方政府の資金不足に伴う大型プロジェクトの削減で建材需要が減る中で浮上していた景気減速懸念も和らいだ。

PPI の伸び加速は中国工業部門の企業利益を後押しする可能性もある。 5 月の PPI は前月比では 0.4% 上昇。 4 月は同 0.2% 低下していた。 ロイター調査によると、アナリストは原油高が続くなか 6 月も PPI の前年比の伸びが加速すると見込んでいる。 鉄鋼セクターからの堅調な需要などで、5 月の原材料価格は前年同月比 7.4% 上昇。 4 月は同 5.7% 上昇していた。

CPI は横ばい

同時に発表された 5 月の消費者物価指数 (CPI) は前年同月比 1.8% 上昇。 伸びは 4 月と変わらず、アナリスト予想とも一致した。 食料品価格がおおむね安定推移したことが要因。 (Reuters = 6-10-18)


中国国債、海外投資家の保有増加続く - 年初来で発行純額上回る伸び

⇒ 海外投資家の保有増は 15 カ月連続、過去最高の 14.25 兆円に
⇒ デリバティブ市場開放で投資妙味さらに増す - 市場関係者

海外の債券投資家が、中国に対し本気になり始めている。 中央国債登記結算 (CCDC) のデータによると、本土外投資家による中国国債の保有残高は 15 カ月連続で増え、過去最高の 8,359 億元(約 14 兆 2,500 億円)となった。 年初からは 2,294 億元の増加。 保有高が 52 億 3,000 万元にすぎなかった 2017 年以降、急速な伸びが続いている。

錦成盛資産管理のマネジングディレクター兼ファンドマネジャーの昌明氏は、この傾向は続く見通しだと予想。 中国国内のデリバティブ市場開放で中国国債の投資妙味がさらに増し、外国勢による投資はいっそう加速するだろうと語った。 1 - 5 月に中国政府は純額ベースで 2,078 億元の国債を発行したが、本土外投資家による保有高の伸びはこれを上回り、中国国内の民間銀行が購入した 743 億元の 3 倍余りにも達する。 (Bloomberg = 6-8-18)


中国の資本フローに変化か、経常黒字縮小で - 新興国市場にリスク

⇒ 中国の経常黒字は対 GDP 比 2% 弱、10 年前から縮小 - IMF
⇒ 貯蓄超過が細れば世界的に利回り上昇圧力も

批判が集中している中国の貿易黒字が縮小しつつある。 世界の資本市場に回る中国の貯蓄超過も少なくなりそうだ。 米金利上昇への対応に既に苦しむ新興国にとって、この見通しは新たな脅威となる。 10 年にわたる過剰な借り入れの後始末に新興国市場が追われ始める中で、中国による買い入れ能力が長期的に下がっていくことになれば、世界的に利回り上昇圧力がかかるかもしれない。

米連邦準備制度のバランスシートが縮小し、利上げも進む中、指標となる 10 年物米国債利回りは今月、2011 年以来の高水準に達した。 ドル建てで多額の資金を借りていた国々には大きな負担となる。 トルコ中央銀行は通貨の下支えを狙って緊急利上げを迫られ、アルゼンチンは国際通貨基金 (IMF) に支援を求めた。 ここ 1 週間は利回りが低下したが、需給動向が変われば急上昇することが分かるかもしれない。

HSBC ホールディングスのアジア経済調査共同責任者フレデリック・ニューマン氏(香港在勤)は「中国が強大かつ貪欲な銀行であり続ける可能性はあるが、貯蓄バッファーは細りつつある。 世界の金利への影響に気付くか、これについてじっくり考える向きはほとんどない。」と指摘。 そのリスクは中国が蛇口を閉めれば、どこであれ資本コストが上昇し始めるという点であるに違いないと話す。

IMF のデータによれば、中国の経常黒字は対国内総生産 (GDP) 比 2% 弱と 10 年前の 9% 超から縮小。 今年 1 - 3 月(第 1 四半期)は珍しく経常赤字に陥った。 IMF は 23 年までに中国の経常黒字が 1,320 億ドル(約 14 兆 3,600 億円)にとどまると予想している。 経常収支の黒字分は資本勘定を通じて債券などの資産に回ることが多く、投資家にとって中国の経常収支動向は重要。 経常黒字が縮小すれば、世界の市場に向かう資金も少なくなる。

これは中国による国内消費の底上げと輸出依存低減の取り組み、中国人観光客の海外旅行増加を主因とするサービス収支の赤字拡大の結果だ。 また、トランプ米大統領は中国の貿易が公平でないと批判しており、中国政府は輸入を後押ししている。 この意味合いは、経常黒字の積み上げで世界最大の純債権国になった日本とは異なる道を中国が歩むことになりそうな点だ。 日本の財務省が先週公表したデータによると、中国は昨年、債権国としてドイツに後れを取った。 (Enda Curran、Christopher Anstey、Bloomberg = 5-31-18)


中国 EC をリードする京東集団が欧州と直結した専用定期列車の運行を開始

「京東商城 (JD.com)」を運営する大手 EC & 小売インフラカンパニー京東集団(代表 : 劉強東 本社 : 北京市)は、5 月 11 日より、ドイツ・ハンブルクと中国・西安を繋ぐ定期貨物列車の運行を開始したことを公表した。 中国市場を牽引する EC サイトを運営する京東集団は自社流通網も巨大だ。 中国最大規模となる流通網は、中国国外に 110 の倉庫、900 本以上の国際路線を持ち、現在 224 の地域へ京東商城で購入された荷物を宅配することが可能となっている。

今回、開通した「移動倉庫」は、中国国内最大の国際内陸港・西安国際港務区と、ドイツ・ハンブルクを繋ぐ、EC 物流初の定期貨物列車となる。 16 日間をかけて、ハンブルグからポーランド、ベラルーシ、ロシア、カザフスタンを経由し、新彊ウイグル自治区の阿拉山口市から中国に入国し、目的地である西安国際港務区の鉄路コンテナセンターに到着する。 その後貨物は、中国エリアの京東物流によって全国各都市の保税倉庫へと送られ、最速で消費者の注文後 1 時間半程度の時間で商品を配達するのだ。

列車そのものが「移動倉庫」になり注文ができる

今回の定期貨物列車の開通により、運輸コストは空輸の 5 分の 1 程度、時間は海運よりも半分以上の短縮が可能となるという。 貨物は現地の倉庫から鉄道のレール上の倉庫に移動し、そのまま中国国内の保税倉庫や中心部の倉庫へ移動するため、全移動工程において京東物流による追跡と厳格な監視が可能だ。 さらに、この物流モデルでは、商品が「移動倉庫」に移動した段階から世界中からデータにアクセス可能で、商品が国内倉庫に到着する前にも購入することができるのも大きな特徴となっている。

京東集団が生み出すダイナミズム

空輸は輸送速度が速いが、荷物着後の倉庫コストも安くはない。 また船便は、一度に大量の物資を運べるが、反面で極めて時間がかかる。 これに対して鉄道は、比較的迅速に物資を輸送できるうえに、今回の施策のように、専用列車そのものを移動式の倉庫にするというは極めて画期的なアイデアだ。 欧州大陸やロシアとも地続きで、鉄道を使った物流を最大限活用できる中国。 そして巨大 EC プラットフォームである京東集団だからこそできるダイナミックかつ思い切ったソリューションと言えるだろう。 (EC のミカタ = 5-25-18)


中国の富豪ランキング、10 の視点から読み解く「中国の大金持ち」像

『新財富』がまとめ

中国の『新財富(深セン市の新財富雑誌社発行)』が 5 月上旬、中国 500 富豪ランキングを発表した。 10 大視点として内容をまとめてあり、面白い読み物となっている。 経済サイト「金融界」が伝えた。 中国の大金持ちの実態に迫ってみよう。

視点 1 - 5 激しい浮き沈み

  1. トップ 5 は IT と不動産

    順位(前年順位)資産額(億元)氏名会社名主な業種性別・年齢
    5 位(18 位)1,620.1楊惠妍碧桂園不動産女 36
    4 位(1 位)1,782.6王健林・王思聡万達集団不動産男 63・男 30
    3 位(21 位)2,285.1許家印恒大地産不動産男 60
    2 位(2 位)2,602.6馬雲阿里巴巴IT 総合男 54
    1 位(4 位)2,794.4馬化騰騰訊IT 総合男 47

    きれいに不動産と IT に分かれている。

  2. トップ 500 の総資産は 9 兆 5,700 億元

    前年比で 1 兆 7,000 億元増加し、10 兆元に近付きつつある。 IT 巨頭の株と、香港市場上場の不動産株暴騰が影響した。

  3. 重量級の没落

    重量級富豪の没落も目立った。 映像サイト「楽視網」を創業した賈躍亭はその典型だ。 2016 年には資産 640 億元でトップ 10 にランキングされていたが、現在は裁判所に持株を凍結され、法人代表の座も譲っている。 また著名な投資顧問会社「九鼎投資」の呉剛/呉強兄弟は、243 億 5,000 万元の資産を 92 億元に減らし、65 位から 300 位以下にランクを落とした。

  4. 1,000 億元以上は 10 人

    資産が 1,000 億元を超えたのは 10 人だった。 今年初めて 1,000 億元枠に入ったのは、自動車メーカー吉利汽車の創業者、李書福だった。

  5. バイドゥ/百度の李彦宏らトップ 10 から転落

    IT 大手「百度」創業者の李彦宏は、600 億元から 851 億元と 1.4 倍に増やしたにもかかわらず、10 位から 13 位に転落してしまった。 同じく食品大手「蛙哈哈」集団の創業者、宗慶后も、7 位から 26 位に沈んだ。

視点 6 - 10 出身、性別、年齢など

  1. 北京と上海が増加

    トップ 500 を地域別に見てみよう。

    拠点2018 年人数資産合計平均資産2017 年人数資産合計平均資産
    広東113 人2 兆 8,610 億元253.2 億元114 人2 兆 0,487 億元179.7 億元
    北京87 人1 兆 7,546 億元201.7 億元84 人1 兆 5,400 億元183.3 億元
    上海61 人1 兆 0,845 億元177.8 億元58 人9324 億元160.8 億元

    北京、上海が 3 人ずつ増やし、広東省は 1 人減らした。

  2. 吉林省から初のトップ 500 入り

    昨年まで、吉林省は唯一トップ 500 富豪を一人も出していなかった。 今年初めて、吉林永大集団董事長、呂永祥がランクインを果たした。 同社の設立は 1993 年、電気関連設備のメーカーである。

  3. 最年少の oFo 創業者は 90 后

    最年少は、シェアサイクル「ofo」の創業者、戴威だった。 2013 年北京大学を卒業、14 年に ofo を創業した。 資産は 70 億 2,000 万元で、451 位にランクインしている。

  4. 女性トップは碧桂園の楊惠妍

    碧桂園の株価は、昨年 1 年間、香港市場で 252% も暴騰した。 彼女の資産も膨張し 1,640 億元に達した。 昨年の女性首位、藍思科技公司の周群飛は 648 億元にとどまり、1,000 億元近い差を付けた。

  5. 全体では小幅減少

    富豪 500 人のうち 20% は、資産を大きく伸ばした。 しかし全体では小幅に下降している。 これに伴いトップ 500 ランキングの最後尾も、昨年の 66 億 1,000 万元から、64 億元へ下降した。

上位集中と浮き沈み

広東省(深セン、広州)、北京、上海で 261 人と全体の半分以上を占める。 北、上、深、広、の 4 つが「一線級都市」と呼ばれる所以だろう。 それに対して吉林省はたった一人である。 地域間格差は大きい。 トップ 10 の下限は、600 億元から 1,000 億元に上昇した。 やはり上位による寡占傾向が強く、弱肉強食の状況が続いている。 トップ 10 以下でも、浮き沈み沈みは非常に激しい。 前年 242 位から 12 位まで上昇した IT 企業「奇虎 360」周鴻イなどである。 富豪の浮沈は中国経済のダイナミックさを表している。 日米以上に、厳しい資本主義社会なのかも知れない。(高野悠介、中国貿易コンサルタント、ZUU = 5-12-18)


中国の成長率 6.8% 1 - 3 月期、年間目標を上回る

中国の 2018 年 1 - 3 月期の国内総生産 (GDP) は、物価の変動分を除いた実質成長率(速報値)が 6.8% だった。 17 年 10 - 12 月期と横ばいで、政府の年間目標 6.5% 前後を上回った。 引き続き消費や生産が好調で、民間企業の投資や輸出も盛んだった。 国家統計局が 17 日発表した。 同時に発表された同じ時期の主要な経済統計によると、GDP への貢献が大きい消費では、小売総額が前年同期比 9.8% 増と引き続き拡大した。 なかでもインターネットを通じた小売額は 34.4% と大幅に伸びた。 国民の収入が増え、雇用と物価も安定し、人々の購買意欲が高まった。

建物や工場など固定資産への投資は 7.5% 増と前年同期より 1.7 ポイント下落した。 ただ、その大半を占める民間企業による投資を見ると 8.9% 増と好調だった。 一方、昨年 2 割増のペースで増えてきたインフラ投資は 13.0% 増にとどまった。 消費や民間企業による投資が好調ななか、インフラ投資で成長を支える必要性が減ったとみられる。

大都市での購入規制の影響で昨年、伸びが緩やかだった不動産開発投資は加速し、10.4% 増だった。 鉱工業生産は前年同期と横ばいの 6.8% 増だった。 好調な世界経済に支えられ、輸出額は 5,452 億ドル(約 58 兆 4 千億円)で 14.1% 増と大幅に伸びた。 国家統計局は 1 - 3 月期の経済について、「安定の中で改善する態勢が続いている」との見方を示した。 (福田直之、asahi = 4-17-18)

◇ ◇ ◇

中国経済、1 - 3 月は力強い成長に - トランプ氏の脅威、物ともせず

⇒ 17 日発表の第 1 四半期 GDP、予想 6.8% 増 - 18 年目標上回る見通し
⇒ 通年では成長鈍化の公算大だが減速はわずかだろう - HSBC

トランプ米政権が仕掛ける構えの貿易戦争や膨大な債務、規制当局による取り締まりなど忘れよう。 習近平氏が終身国家主席になる道が開かれたことを巡る議論も、いったん脇に置いて構わない。 中国経済は 1 - 3 月(第 1 四半期)に力強い成長を遂げ、こうしたあらゆる問題を打ち消したもようだ。 ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト予想中央値によれば、1 - 3 月期の国内総生産 (GDP) は前年同期比 6.8% 増の見込み。 政府が掲げた今年の成長率目標の 6.5% 前後をかなり上回る。

GDP は北京時間 17 日午前 10 時(日本時間同 11 時)に、国家統計局によって発表される。 3 月の小売売上高や工業生産などの統計も同じ時間に示されるほか、調査に基づく失業率の月次公表も開始される。 HSBC ホールディングスのアジア経済調査共同責任者、フレデリック・ニューマン氏(香港在勤)は「中国経済は政策的な障害に邪魔されることなく、エンジン全開で 2018 年に突入した」と指摘。 「国内での引き締め策や貿易を巡る不透明感を受けて、年間では経済成長が鈍る公算が大きい。 だが、減速はわずかなものにとどまるはずだ」と述べた。

1 - 3 月期の成長率が市場予想通り 6.8% なら、17 年 10 - 12 月(第 4 四半期)と同じ伸び。 17 年通年の成長率は 6.9% だった。 このほか、エコノミスト予想によれば、3 月の小売売上高は前年同月比 9.7% 増が見込まれている。 1 - 2 月も前年同期比 9.7% 増だった。 3 月の工業生産は前年同月比 6.4% 増と、1 - 2 月より伸びが鈍化する見通し。 1 - 3 月の都市部固定資産投資は前年同期比 7.7% 増の予想。 昨年 1 - 3 月は 9.2% 増だった。 中国政府は春節(旧正月)連休の影響を考慮し、一部の指標について 1 月分と 2 月分を合わせて公表している。 (Kevin Hamlin、Xiaoqing Pi、Bloomberg = 4-16-18)


中国、外資の過半出資容認へ 習主席が市場開放策

米中摩擦意識、関税下げで輸入拡大

【ボーアオ(中国海南省) = 原田逸策】 中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は 10 日、アジアを中心に政財界の要人が集まるボーアオ アジア フォーラムで講演し、国内市場を外資にさらに開放する方針を示した。 中国で証券や保険、自動車製造を営む場合に外資の過半出資を認める。 自動車などの関税を下げて輸入を拡大する方針も示した。 米国との貿易摩擦を和らげ、交渉による解決につなげる狙いだ。 3 月下旬に米中摩擦が激化して以降、習氏が公の場で貿易問題について発言するのは初めて。

2018 年はケ小平氏が計画経済から市場経済への移行を唱えた改革開放から 40 周年にあたる。 習氏は「中国人はいま『改革開放が中国の第 2 の革命であり、中国を大きく変えただけでなく世界にも深い影響を与えた』と誇りを持って言える」と表明。 「中国の開放の門は閉じず、どんどん大きく開かれる」と強調し、今後も対外開放を続ける方針を強調した。 具体的には金融市場の開放に言及。 習氏は「昨年に公表した銀行、証券、保険の外資出資規制に関する政策を確実に実施する」と述べた。 習氏は 17 年 11 月のトランプ米大統領との首脳会談で、外資出資比率の上限を上げる方針を示していた。

現在、外資が中国で証券や保険事業を営む場合、中国企業と合弁会社をつくる必要があり外資出資比率の上限は証券で 49%、保険で 50% にとどまる。 習氏の発言は外資の過半出資を容認する方針を示したもの。 保険事業は外資の業務範囲を広げることも明らかにした。 自動車製造でも外資出資の制限を緩める。 習氏は「製造業では自動車、船舶、飛行機などで外資規制があるが、すでに開放の基礎が整った」と指摘。 自動車は合弁企業の外資出資比率の上限は 50% だが、過半出資を認める方針だ。 外資誘致を拡大するため、18 年 6 月末までに外資の投資規制の全体像も明らかにする。

輸入を拡大する方針も示した。 習氏は「中国は貿易黒字を追求せず、本心から輸入を拡大し、経常収支をバランスさせたい」と表明。 自動車関税を大幅に下げるほか、その他の商品の関税も下げる方針を明らかにした。 米国が制限するハイテク製品の対中輸出を緩和することも求めた。 米国などが問題視する知的財産保護を強化する考えも強調した。 習氏は「中国での外資の合法的な知的財産を保護する。 同時に外国も中国の知的財産を保護してほしい。」と表明。 知財侵害の取り締まりを強めるほか、知財関連の政府組織も改組する方針を示した。

いずれも米中摩擦の緩和を狙った措置。 習氏は保護主義という表現は避けつつも「開放は進歩をもたらし、閉鎖は立ち遅れを招く」とトランプ米政権の姿勢を暗に批判。 「貿易投資の自由化を進め、多角的貿易体制を保護する」と語った。 世界貿易機関 (WTO) を軸にした国際貿易体制の守護者として振る舞い、米国との交渉が本格化する前に各国を味方につける狙いがあるとみられる。 (nikkei = 4-10-18)


中国経済、200 倍に = 貧富の差広がる - 改革開放 40 年

中国の李克強首相は 5 日に開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、「改革・開放にさらに力を入れる」と表明した。 1978 年に改革・開放政策が打ち出されて今年で 40 年。文化大革命で極度に疲弊した経済を立て直すことに成功し、国内総生産 (GDP) は 200 倍以上に膨らんだ。 一方で、時代に取り残され、かえって貧しくなった人も多い。

「以前は幸せだった」

「40 年前は一家 4 人で幸せに暮らせたが、今は苦しいだけの日々。」 中国北部・吉林省出身の男性 (59) は冷え込みの厳しい早朝、「日雇いの仕事がなかなか見つからない」と肩を落とした。 長く勤めた炭鉱をリストラで解雇され、職を求めて北京近郊の河北省燕郊にやって来たのは 45 歳の時。2008 年の北京五輪に向けて高度経済成長に沸く中、飲食店や建設現場などで働いた。

必死にためた資金で始めた小さな商店の経営が軌道に乗ると、「役人に閉店を命じられ、その役人が跡地に新たな商店を開いた。」 「改革・開放で豊かになったのは権力のあるやつらだけ」と憤る。 燕郊の街角で話を聞いていると、目の前に黒塗りの車が止まった。 出稼ぎ者が一斉に群がり、日雇い仕事の手配師に自分を売り込む。 だが、職にありつけるのは 50 代前半までだ。 農村出身の別の 50 代男性も「この 40 年、生活がどんどん悪くなった」と嘆く。 発展に追い付けない孤立感は強い。

トランプ氏が問題視

改革・開放政策は最高指導者だったトウ小平氏が打ち出した。 一律な平等が招く弊害を制度改革で打破し、生産意欲の向上を図るとともに、開放により外国の資金・技術を導入。 トウ氏の唱える「先富論」の下、一部の人や地域が先に豊かになることを奨励した。

南部沿岸にある広東省などには、安価な労働力を求める外資が次々に工場を建て、地元経済は活況を呈した。 トウ氏のもくろみは当たったが、中国全土に富が行き渡ることはなかった。 改革・開放政策の副作用は、貧富の差の拡大だけではない。 進出する外国メーカーが中国企業への技術移転を迫られることが慣行となり、「拒否すれば嫌がらせを受け、工場建設をはじめ、さまざまな認可が出ない。(日系企業)」

これをトランプ米大統領が問題視。 米企業の知的財産権を侵害しているとして、対中制裁を科す方向で動いている。 しかし、「技術移転は地方政府や地元企業が口頭で求める(外交筋)」ことから、実態把握が難しい。 報復を恐れる外資側の口も重い。 権力基盤を強固にした習近平国家主席にとって、貧困層の不満と対米経済関係がアキレスけんだ。 長期政権を狙うが、習主席を取り巻く環境は決して盤石ではない。(中国・河北省燕郊、jiji = 3-7-18)

◇ ◇ ◇

中国全人代が開幕、3 分で分かる今年の注目点

約 3,000 人が出席する中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が、北京の人民大会堂で 5 日から約 2 週間の日程で始まる。 今回の全人代で注目される議題やこの会議の役割をまとめた。

全人代の議題

最大の議題は、2 期限定とされる国家主席の任期を撤廃する憲法改正案だ。 実現すれば、習近平国家主席は、事実上無期限に権力の地位に留まることが可能になる。 昨秋の党大会で党規約に盛り込まれた習氏の政治思想「新時代の中国の特色ある社会主義思想」を憲法に明記する改正案も審議されるほか、新たに設立される汚職取り締まり独立機関「国家監察委員会」に憲法上の根拠を与える文言修正も議題に含まれる。 今年審議される唯一の法案は、同委員会の設置根拠となる「監察法」の制定だ。

政府の主要ポストの大幅な人事刷新も行われ、複数の副首相や、新たな閣僚、中国人民銀行(中央銀行)総裁などが決まるほか、政府省庁の再編も行われる見通しだが、詳細は明らかになっていない。 最も注目されているのが、国家副主席の人事だ。 習氏の盟友で、昨年まで党の最高意思決定機関である中央政治局常務委員会の委員として腐敗撲滅の陣頭指揮にあたった王岐山氏が、国家副主席に就くとの見方が大勢だ。 王氏は、対米関係のかじ取りを任されると見られている。

習氏の最高経済顧問を務める劉鶴氏は、経済財政担当の副首相に就くと予想されている。 劉氏は、次期人民銀行総裁の有力候補にも名前が挙がっている。 李克強首相は 5 日、全人代の開幕にあたり、18 年の国内総生産 (GDP) 伸び率の目標を昨年と同じ 6.5% 前後に据え置いたことを明らかにした。 中国経済は昨年、6.9% 成長し、2010 年以降で初めて成長が加速した。

また全人代は開幕に合わせて予算報告を発表し、2018 年の国防費は前年比 8.1% 増の 1 兆 1,100 億元(18 兆 5,000 億円)を計上すると明らかにした。 昨年の全人代では当初、予算額が公表されず、透明性を懸念する声が上がった。 全人代は、毎年恒例の首相記者会見をもって閉幕する。

全人代の機能

全人代は毎年 3 月に開催され、主要法案や予算案が審議・可決される。 また人事案の承認も行われる。 一般的に、全人代は中国共産党の政策や決定を全面的に追認する機関と考えられている。 ただ、公害などの一部の議案では議論が盛り上がることもある。

全人代の代表者

前首相で習氏と李氏に次ぐ党序列 3 位の張徳江・前副首相が議長を務める。 3,000 人近い出席者は、中国の 31 の省や地方自治体、自治区のほか、香港とマカオと人民解放軍を代表している。 このほか、主に台湾からの逃亡者やその子孫からなる「台湾代表」も参加する。 代表の任期は 5 年。

全人代の投票

投票は、共産党の方針に沿って行われ、圧倒的多数で可決されることがほとんどだ。 だが過去には、汚職や犯罪への対応への不満を表明するため、出席者が党方針と異なる票を投じたことがある。 法律上は、18 歳以上の国民ならだれでも全人代の選挙権と被選挙権がある。 だが実際は、ほとんどの代表が地方の役人によって選ばれている。

会議

全人代は、北京中心部にある天安門広場に面する人民大会堂で開催される。 1959 年に、中華人民共和国の建国 10 周年を記念してわずか 1 年で建設された大会堂のメーンホールは、1 万人を収容できる。 国政諮問機関である全国政治協商会議も、全人代と並行して開催される。 これは、ビジネス界の大物や芸術家、僧侶、非共産党員など、広く社会を代表するメンバーで構成されるが、立法権限はない。 (Reuters = 3-5-18)


ダイムラー筆頭株主に中国・吉利 取得額 1 兆円規模

独自動車大手ダイムラーは 23 日、中国の自動車メーカーの浙江吉利控股集団が株式の 9.69% (議決権ベース)を取得し、筆頭株主になったと明らかにした。 取得額は 1 兆円規模になるとみられる。 吉利はスウェーデンのボルボ・カーズを傘下に収めるなど、欧州の自動車メーカーとの資本関係を強めている。

開示資料によると、株式を取得したのは吉利の李書福董事長(会長)。 ダイムラーは「長期的な投資家になる」としている。 欧州メディアによると、吉利はダイムラーの電気自動車 (EV) に関する技術に関心を示しているという。 吉利は 10 年にボルボ・カーズを買収。昨年 9 月には英ロータスを買収したほか、12 月にはスウェーデンの商用車大手 AB ボルボにも出資することで合意した。 (寺西和男、asahi = 2-24-18)


中国政府、「高級ホテル爆買い」の保険大手を管理下に

中国政府は 23 日、米高級ホテル「ウォルドルフ・アストリア・ニューヨーク」を約 20 億ドル(約 2,130 億円)で買うなど海外資産を爆買いしたことで知られる中国保険大手・安邦保険集団を政府の管理下に置いた。 違法な経営で負債の返済能力が危ぶまれているとして、金融リスクの削減を掲げる習近平(シーチンピン)指導部が異例の実力行使に出た。

中国の保険監督当局・中国保険監督管理委員会によると、安邦トップの呉小暉会長は解任され、経済犯罪で起訴された。 呉氏を起訴した上海市の検察によると、罪は出資詐欺など。 政府による管理は 1 年続くが、民営企業としての性質や外部との債権債務関係は変えず、外部の資本導入を目指す。 習指導部はいま、中国経済を根底から揺るがしかねない金融リスクの削減を最優先の政策にしている。 安邦の政府管理はその象徴になりそうだ。 安邦は 14 年、当局の求めに応じて行った増資について「虚偽増資だった疑いがある」と報じられていた。

また、17 年初めまでの中国は、安邦による米高級ホテルの買収など海外資産の爆買いで中国から大量のお金が逃げ出し、政府は人民元相場の下落に悩まされた。 安邦はこうした派手な買収攻勢で財務が悪化したとみられている。 当局は今回、保険会社の経営難が中国経済全体に与える影響を軽減するため、政府管理に踏み切ったとみられる。 (北京 = 福田直之、asahi = 2-23-18)

前 報 (2-2-17)


中国、統計水増し次々「自白」 地方政府の実態浮き彫り

【北京・赤間清広】 中国の地方政府が、過去の統計データの「水増し」を相次ぎ「自白」しはじめた。 中国の統計の信用度はかねて疑問視されてきたが、実態が浮き彫りになった形だ。 統計の正確性を求める中央当局の追求に加え、習近平指導部の方針転換で、ひたすら数字を追い求めてきた地方政府の姿勢に変化が表れてきたとの見方もある。

「内輪の問題を自白した。」 中国国営新華社通信は今年 1 月、中国北部の内モンゴル自治区の党幹部が 2016 年の工業生産額の捏造を明かしたと報じた。 工業生産を約 4 割、水増ししていたという。 その 1 週間後、北京の東に位置する天津市の浜海新区も 16 年の域内総生産を公表済みの 1 兆元(約 17 兆円)から 6,654 億元に下方修正した。 過去の水増し分を修正した結果とみられる。

中国審計署(日本の会計検査院に相当)が昨年 12 月に公表した報告書によると、雲南省や吉林省などの計 10 の県や市では約 15.5 億元の財政収入水増しが判明した。 統計データの偽造は全国に拡大している。 中国では長い間、高い経済成長の実現が重視されてきた。 各地方政府は実績を誇示するため、統計データを日常的に粉飾してきたとされる。 中央政府が公表する国内総生産 (GDP) と、各地方政府がそれぞれ公表した域内総生産の合算値が毎年、数兆元単位で食い違っていることが何よりの証拠だ。

ここにきて水増しの慣習が崩れつつある背景には、中央政府が偽装統計の取り締まりに本腰を入れ始めたことがある。 国家統計局は昨年 4 月、統計データを監督する専門組織を新設。 19 年以降は地方の統計データ作成にも直接関わる方針で、過去のデータ水増しが判明するのは時間の問題だ。 中央のメスが入る前に自らデータ修正に乗り出した格好だ。

党幹部や地方官僚を取り巻く環境の変化もこの流れを後押しする。 中国の習近平国家主席は昨年 10 月の中国共産党大会で、経済成長の「量」よりも「質」を重視する新方針を打ち出した。 これまでは毎年の経済指標の内容が人事評価に大きな影響を与えてきたが、今後は新産業の育成や環境対策などが重視される可能性が高い。 無理やり、数字を水増しする必要性が薄れてきたというわけだ。

中国の 17 年の実質成長率は 6.9% 増と 7 年ぶりに前年実績を上回った。 減速傾向が続いていた中国経済の再加速が数字で確認された形だが、統計データの信頼が揺らいだままでは中国経済の「実力」を客観的に判断するのが難しくなる。 「我々にとっても(データ偽造は)大きな懸念事項であり、質の向上をはかっていく。」 国家統計局の寧吉哲局長は 17 年成長率を発表した記者会見で統計偽造問題を追及され、釈明に追われた。 世界第 2 位の経済大国は重い宿題を抱えている。 (mainichi = 2-21-18)

◇ ◇ ◇

17 年中国 GDP、地方合算が中央発表を 52 兆円超過 "水増し" 鮮明、信憑性にも疑念

【上海 = 河崎真澄】 中国全土に 31 ある省クラスの地方政府が 3 日までに個別公表した 2017 年の域内総生産 (GDP) 統計を産経新聞が独自に集計したところ、中国国家統計局が 1 月 18 日に発表した全土の GDP 統計総額(速報値)を 2 兆 9,769 億元(約 52 兆円)も超過していたことが分かった。 中国ではかねて地方政府による統計の "水増し" 疑惑が指摘されてきた。 習近平指導部は昨年から、地方の統計当局を監視する組織の設置など対応策を強めたが、効果は限定的で、中国の統計全体の信憑性も疑われる事態となっている。

国家統計局は、香港とマカオを除く全土の 17 年 GDP を名目で 82 兆 7,122 億元と発表。 地方政府からの報告も参考にした公式統計だった。 だが、中国中央テレビ (CCTV) などが報じた地方政府の個別統計を合算したところ、中央の発表を 3.6% 上回った。 地方 GDP の合算が中央統計を超過した額は、省クラスで国内 11 位の上海市(3 兆 134 億元)にほぼ匹敵する規模となった。 中国は昨年 4 月、「統計執法監督局」を新設して地方の統計当局を監視する態勢を強化し、8 月には統計の捏造を厳罰に処する「統計法実施条例」を施行。 横行するデータの水増しなどの撲滅に本腰を入れた。

その結果、内モンゴル自治区や天津市で財政収入や工業生産額などの水増しが相次ぎ発覚し、GDP を下方修正させた。 物価変動の影響を除く 17 年の実質成長率で、内モンゴルは前年比 4.0%、天津市は 3.6% と、いずれも全国平均の 6.9% を下回った。 昨年 1 月には遼寧省が意図的な統計捏造を認めている。 その一方、17 年の成長率で 10.2% だった貴州省を始め、31 地方のうち 22 地方までが 6.9% を超過。 中央と地方の整合性がとれなかった。 省クラス最大規模の広東省(8 兆 9,879 億元)は 7.5% だった。

習指導部は経済成長を量から質に転換させる方針を打ち出しているが、地域の経済成長が地方政府の幹部の人事評価に反映される時代が長く続いたため、統計の捏造体質がしみついている。 インフラ建設を重複してカウントするなどの手口も横行している。 地方政府の統計水増しは 00 年代後半から顕著になってきた。 中国の成長率は鈍化が続いてきたが、17 年の 6.9% で 7 年ぶりに前年を上回り、経済が加速に転じたことになっている。 (sankei = 2-4-18)