「実習」名目の就労、限界 外国人受け入れ拡大へ 労災や未払い、人権上配慮が課題に

政府が新たな在留資格を設け、外国人就労の拡大に大きくかじを切るのは、留学生や技能実習生が技術の習得を名目としながら、実際は人手不足の業界を支える重要な労働力となっている現状に「限界」が生じているからだ。 外国人を「労働者」として正面から受け入れることで、慢性的な人材不足を補う効果が期待されるが、事業者側が「安価な労働力」として活用する懸念は残り、人権上の配慮も重要な課題となる。

総務省によると、2017 年 10 月現在の日本の生産年齢人口(15 - 64 歳)は約 7,596 万人だが、30 年には約 6,773 万人に減少。 一方、厚生労働省の調査では、17 年 10 月現在の外国人労働者数は約 128 万人で、3 年間で 50 万人増加した。 このうち技能実習生と留学生のアルバイトが約 55 万人を占め、前年比 23% 増。 労働力として欠かせない存在となっている。 ただ、技能実習は最長 5 年間。 政府は、就労を目的とした新たな資格「特定技能」を創設することで、長期的な労働力として確保したい狙いだ。

介護は昨年 11 月から技能実習の対象に加わり、外国人を受け入れてきた。 厚労省などの試算では、25 年の介護人材の需要見込みは約 245 万人で、約 55 万人の不足が生じる。 これから年間約 6 万人の人材を確保する必要があるが、地方では新卒採用が少ない上、離職者が多いのが現状。 事業者への調査では、外国人の受け入れ拡大を求める意見が多く寄せられたという。

政府の試算では、介護分野は年間 1 万人の外国人労働者の受け入れを目指しており、来年度から介護施設での日本語教育の支援を検討している。 高齢化が進む農業の担い手不足も深刻だ。 17 年の外国人労働者数は技能実習生を中心に約 2 万 7 千人だが、試算では 23 年には最大で 10 万 3 千人程度が必要になると見込む。

政府は今年 3 月、愛知県など 3 カ所を外国人の就農を認める国家戦略特区に認定。 政府筋は「特区に限らず、全国で外国人の就農者を受け入れないと、日本の農業は持たない」とみる。 新制度では、農業法人などが外国人と契約し、年間を通じて幅広い農作業ができるようにするほか、派遣会社から収穫期に合わせて外国人を全国に派遣できる形態を想定している。 関係者は「非常に使いやすい制度になる」と歓迎する。

「宿泊業」を新たに技能実習の対象に加えるのは、増加する訪日客に対応するのが目的だ。 17 年の訪日外国人は約 2,869 万人。 現在は全国のホテルや旅館で約 3 万 8 千人の外国人労働者が働き、そのうち 7 割が留学生のアルバイトだ。 ほとんどが室内掃除など「裏方」を担っている。 政府は 30 年の訪日客目標を 6 千万人に設定。 観光庁は、それまでに現在の 2 倍超になる約 8 万 5 千人の外国人スタッフが必要になると見込み、都市部に集中する留学生だけでは不足するとみている。 技能実習生は、外国語の専門性を生かし、主にホテルのフロントやレストラン接客などを担うことで調整している。

技能実習を巡っては、労災事故や残業代未払いなどが相次ぎ、社会問題となっている側面もある。 政府は監督機関や罰則を設け、管理を厳しくしてきたが、新制度により、事業者が外国人労働者を直接受け入れる形が進めば、そうした問題が表面化しづらくなる恐れもある。 日本に先駆けて、外国人を労働者として受け入れる韓国には、政府による支援センターが約 40 カ所ある。 日本政府関係者は「日本がアジアの若者から注目されるのは 20 年の東京五輪まで」との危機感を抱く。 海外との人材獲得競争の激化が予想される中、日本も外国人のための労働、生活相談体制を整えることが課題になる。 (西日本新聞 = 5-21-18)


浴衣で散策、ネット中継も 中国人留学生着付け体験

佐賀・徐福長寿館で

佐賀に留学している学生でつくる佐賀地区中国学友会(何威会長)のメンバーが 19 日、佐賀市金立町の徐福長寿館で浴衣の着付けを体験、薬草植物園を散策した。 佐賀大と西九州大、佐賀女子短大に通う留学生 31 人がスマホのカメラで互いの姿を撮影し、中国のサイトでネット中継して体験を自国に発信した。

学生らはボランティアの着付けで浴衣姿になり、約 500 種の薬草木が約 5 万本植栽された新緑の園内を和装で散策した。 その様子を学生がスマホで動画撮影し、中国のライブ配信サイトで中継した。 中国の視聴者からは「これは何?」、「勉強になる」などのコメントが寄せられていた。 佐賀大芸術地域デザイン学部 1 年の王春梅さん (25) は「中国の大学で日本語専攻だったので、卒業式は和服を着た。 仲間と一緒にこんな体験をさせてもらえてうれしい。」と話していた。 (佐賀新聞 = 5-20-18)

参照記事 (4-27-14)


ベトナム人実習生など 7 人に賃金不払い 衣料品のプレス加工会社を送検 一宮労基署

愛知・一宮労働基準監督署はベトナム人技能実習生など計 7 人の労働者に対し、2 カ月分の賃金を支払わなかったとして、井上プレス(愛知県一宮市)と同社の代表取締役を最低賃金法第 4 条(最低賃金の効力)違反の疑いで一宮区検に書類送検した。

同社の代表取締役は琴祥(きんしょう)とココペリーナプラゼタンの屋号でも事業を行っていた。 事業内容は婦人服のアイロンプレスなどだった。 同社は正社員 1 人を、琴祥はパートタイマー 2 人を、ココペリーナプラゼタンはパートタイマー 1 人とベトナム人技能実習生 3 人を雇用していたが、平成 29 年 7 - 8 月分の定期賃金を支払わなかった。 不払い総額は 118 万 9,096 円に上る。

労働者の申告により同労基署が捜査したところ、不払いが認められた。 同社の代表取締役は容疑について認める供述をしており、不払いの理由について「経営難で支払えなかった」と話しているという。 同社は平成 29 年 9 月 8 日に事業を停止した。 労働者 7 人は未払い賃金立て替え払い制度によりすでに救済が図られている。 (労働新聞 = 5-17-18)


KND コーポ、ミャンマーで技能実習生の事前教育

物流・建築会社の KND コーポレーション(埼玉県戸田市)は建築分野で働くミャンマー人の技能実習生を事前に現地で教育する事業を始める。 日本で実習生として働く前に基礎的な技術や安全に関する知識を身につけることで、来日後に即戦力として働けるように養成する。 初年度は毎月 20 - 30 人を養成する目標で、売上高は約 3,000 万円を目指す。

同社は 2017 年 7 月、自社の建築現場で働く実習生を育成するためのトレーニングセンターをミャンマーのヤンゴンに開いた。 約 1 カ月間、座学や研修で工具の使い方や安全ベルトの付け方などを学ぶ。 センターを卒業した実習生は今年 1 月から日本の同社の現場で働いているが「事前知識がある分、即戦力人材となるスピードが速い(神田充社長)」という。

人手不足が深刻な建設現場では実習生は貴重な戦力。 自社の育成プログラムで養成した人材は他の住宅メーカーや建設会社などでも需要があるとみて、事業化を決めた。 育成費用は実習生 1 人あたり 25 万円。 基礎的な技術のほか、企業の求める人材イメージに応じて、断熱材の施工などの個別技術を学ぶカリキュラムも複数用意した。 年内にはサッシやバスなどの住宅設備の施工コースも設ける予定だ。

同社は 17 年、国際協力機構 (JICA) の支援事業の一環で、ミャンマーに技術訓練校を開いた。 ミャンマーで働く建築分野の人材育成が目的で、卒業生は既に 200 人を超えている。 同訓練校のカリキュラムは、ものつくり大学(埼玉県行田市)と連携して作成している。 同訓練校の運営ノウハウも新事業に生かす考えだ。 法務省によると、ミャンマー人の技能実習生は 5,019 人(17 年 6 月末時点)で増加傾向だ。

政府は 19 年 4 月にも、最長 5 年間の技能実習を修了した外国人を対象に、さらに最長で 5 年間就労できる資格をつくる方針。 介護や建設など人手不足が深刻な分野で外国人労働者を確保する狙い。 同社は新制度の導入も追い風となって、技能実習生を受け入れる企業は増えるとみる。 人材育成事業を新たな収益源にする。 (nikkei = 5-15-18)


外国人実習生で提携 トマト銀、国認可の団体と 取引先紹介

トマト銀行は 7 日、取引先企業による外国人技能実習生の受け入れ支援をめぐって、アジアなどから実習生を受け入れている流通産業協同組合(東京・中央)と業務提携を結んだと発表した。 受け入れを希望する中小企業などへの紹介に加え、外国人技能実習制度に関する研修やセミナーを開催する。 慢性化する人手不足の解消につなげてもらう考えだ。

トマト銀は 2006 年から順次、岡山県内 3 つの実習生あっせん団体と組んで企業の受け入れ支援を手掛けてきた。 しかし、繊維業向けが中心だったため実習生の紹介は数件にとどまっていたという。 今回の提携により、介護関係や自動車部品製造など幅広い業種からのニーズに対応できるようになる。 同組合は国から認可を受けた監理団体。 これまでに中国やベトナム、フィリピンなどから 2,000 人以上の実習生を受け入れた実績があり、既に仙台銀行などとも同様の提携を結んでいる。 (nikkei = 5-8-18)


交流会、ベトナム、もっと知ろう! 技能実習生と遊び通じ 江津

江津市後地町のカフェ「風のえんがわ」でこのほど、同市内で働くベトナム人技能実習生の女性 5 人(21 - 27 歳)を招く交流会があった。 地元の主婦、瓜崎恵子さん (64) が初めて開き、子どもたちや保護者ら約 15 人が参加した。 ベトナム語のあいさつなどを学んだ後、日本の鬼ごっこやジャンケンに似たベトナムの遊びを一緒に楽しんだ。 瓜崎さんは「今後も子どもたちと遊びを通じて親睦を深めたい」と話した。 同市立桜江小 3 年の松田将希さん (8) は「長い列を追いかける『ヘビ切り遊び』が面白かった」と笑顔だった。 (田中昭則、mainichi = 5-3-18)


福島原発、建設工事に外国人実習生 東電、就労制限反し

東京電力福島第 1 原発での建設工事に昨年秋から外国人技能実習生が従事している。 東電は 2017 年 2 月、技能実習制度を所管する法務省に相談した上で同原発で技能実習生を働かせない方針を示しており、これに反する形だ。 東電は取材に事実関係を認め、「外国人技能実習制度の趣旨にそぐわない。 元請け会社に在留資格の確認の徹底を求め、当社も在留資格を調査したい。」としている。 (mainichi = 5-1-18)


ロジオス、帰国後の外人技能実習生を現地グループ企業で採用

ロジスティックオペレーションサービス(ロジオス)は 4 月 24 日、外国人技能実習生の帰国後の雇用確保のため、グループ企業への就職斡旋を開始したと発表した。 物流や製造の業務受託を行っているロジオスでは、求人難による人手不足を解消する手立てとして、2015 年より外国人技能実習生制度を採り入れている。 実習生は日々日本語のの勉強に、業務習得に励んでいたが、このほど 1 期生として来日した中国人実習生 4 名が無事実習を完了し、帰国することになった。

ただ、中国人実習生 4 名は帰国後の就職先はあるのか、知識や技術、経験を活かす仕事はあるのか等の不安があった。 ロジオスでは、所属する三井倉庫グループ各企業に対し、帰国する実習生を斡旋し、2 名の内定獲得に成功した。 現在 61 名の技能実習生を採用しているが、今後、就職先も確保した上で、安心して帰国出来る仕組みづくりを進めていくとしている。 (LNEWS = 4-25-18)


技能実習生 不法就労あっせん疑い 県警 監理団体役員ら逮捕

就労資格のない外国人を食品加工会社にあっせんしたとして、竜ケ崎署と牛久署、(茨城)県警外事課は 19 日、入管難民法違反(不法就労あっせん)の疑いで、技能実習生の監理団体役員の男ら 2 人を逮捕した。 同課は 2 人の認否を明らかにしていない。  逮捕容疑は、共謀し昨年 2 月上旬ごろから同 9 月上旬ごろまでの間、資格外活動の許可を受けていない 30 代のネパール人男性 4 人を不法に就労させると知りながら、河内町内の食品加工会社にあっせんした疑い。 (茨城新聞 = 4-20-18)


別の会社でも除染作業 ベトナム人実習生 3 人

技能実習生として来日したベトナム人男性 (24) が福島県郡山市で除染作業に従事していた問題で、別の建設会社でも 20 - 30 代のベトナム人実習生の男性 3 人が除染作業にあたっていたことが 17 日、関係者の話で分かった。 制度の趣旨に合致しない作業に多くの外国人実習生が従事していた可能性が出てきた。 実習生を支援する全統一労働組合(東京・台東)や福島県郡山市の建設会社によると、3 人は 2015 年 7 月に来日。 翌月から建設会社で実習生として働き始めた。

このうち、20 代の 2 人は 16 年 4 月 - 18 年 3 月まで、30 代の男性は 16 年 12 月 - 17 年 10 月に郡山市などで住宅地の除染作業をしたという。 3 人の雇用契約で定められた業務内容は、1 人が「型枠施工・型枠工事作業」で、ほかの 2 人は「鉄筋施工・鉄筋組み立て作業」だった。 建設会社社長は日本経済新聞の取材に対し、ベトナム人 3 人の技能実習生に除染作業をさせていたことを認め、「『実習生』との意識はなく、労働力として考えていた」と話した。 3 人が携わった除染作業の現場について「放射線量が相対的に低く、被曝のリスクが少ない場所を選んだ」という。

この社長によると、3 人には社内のパソコンで動画を見せて除染作業の手順を半日がかりで説明。 半年に 1 度は病院へ送迎をして健康診断を受けさせたという。 社長は「震災から月日がたち除染作業の人手が不足する中、真面目に働いてくれるベトナムの若者の存在はありがたかった」と振り返る。 監理団体から技能実習生として紹介を受けたが「実習生というのは建前で、技術を教えるという意識はなかった」とも明かした。

ベトナム人の 3 人は「会社から除染であるとの説明はなかった」と話しているという。 社長は「3 人の日本語の理解力は乏しく、コミュニケーションが難しかった。 納得して仕事をしてもらうために、もっと努力する必要があった。」と話している。 ベトナム人実習生が除染作業に携わっていたことが 3 月上旬に初めて発覚したため、法務省は同 14 日に「除染は技能実習の趣旨にそぐわない」との見解を公表。 実習生を受け入れる企業などに、除染に従事させないとの誓約書を提出させることにした。 法務省は技能実習機構などを通じて、ほかに同様の事案がないか実態調査する方針を明らかにしている。 (nikkei = 4-17-18)

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ベトナム人技能実習生の手当、大半を未払い

外国人技能実習制度で来日したベトナム人男性が東京電力福島第一原発事故に伴う除染・解体作業に従事していた問題で、環境省は 6 日、男性の実習先だった盛岡市の建設会社が、男性に支給するはずの特殊勤務手当の大半を未払いにしていたと発表した。

同省によると、男性は 2016 年と 17 年に、ほかのベトナム人男性 2 人とともに、避難指示解除前の福島県川俣町で国直轄の解体作業に従事。 本来は 1 人につき 1 日あたり 6,600 円の特殊勤務手当が国から会社を通じて支給されるが、実際には 1 日あたり 2,000 円程度しか受け取っていなかった。 建設会社は手当を満額支給したように装うため、賃金台帳などの書類に虚偽の記載をして同省に提出していた。 建設会社の社長は読売新聞の取材に「未払い分は、会社運営上の色々な経費に充てた」と話した。 (yomiuri = 4-7-18)

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技能実習生が福島で除染作業従事 ベトナム人男性「説明なかった」

NPO 法人「移住者と連帯する全国ネットワーク(東京)」は 14 日、東京都内で報告会を開き、外国人技能実習生として来日したベトナム人男性 (24) が、東京電力福島第 1 原発事故に伴う福島県内の除染作業に従事していたと発表した。 男性は「実習先の建設会社から除染作業をするとの説明はなかった」と話した。 法務省入国管理局は「実習内容が計画と著しく異なる場合は不正行為になり得る」としている。 外国人技能実習制度に詳しい全統一労働組合(東京)によると、実習生が除染作業に従事したことが明らかになるのは初めて。 (kyodo = 3-14-18)


実習生「管理費」で所得隠し 中国国有企業の日本支店

外国人技能実習生の紹介業務をしている中国の国有企業「中国中軽国際控股公司(中軽公司)」の日本支店(岐阜市)が、名古屋国税局の税務調査で 2010 年から 15 年までの 6 年間で、約 2 億 2 千万円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。 技能実習生を紹介した日本企業などから受け取った「管理費」名目の収入を問題視され、重加算税を含めて約 8,500 万円を追徴課税されたとみられる。

日中間の租税条約は、日本国内に支店や事務所がある中国企業が日本で得た所得には、日本で課税するよう定めている。 中軽公司の担当者は本紙の取材に「日本の国税当局の指摘に従って不備を整理し、税金も全額納めた」と答えた。 複数の関係者によると、中軽公司は中国で実習生を募り、東海地方の縫製業を中心に日本各地の企業や仲介団体へ紹介。 日本支店には駐在員を置き、実習生と紹介先とのトラブル対応や、実習生の生活相談などをしているという。

こうした業務の対価として紹介先の企業などから「管理費」としてお金を受け取っているが、この 6 年間に日本での法人所得が全くなかったように申告していたとみられる。 日本支店は管理費を巡る日本での税務について中国の本社に相談していたといい、国税局が意図的な課税逃れと判断したもようだ。 実習生を受け入れた日本の企業などへの取材では、中軽公司の所得の一部は中国に送金された疑いがある。 しかし、中軽公司の担当者は「管理費は日本の駐在員の経費として使っており、中国へ送金していない」と否定した。

登記簿などによると、中国中軽国際控股公司は 1983 年、北京に設立された国有企業。 日本支店は 09 年 5 月に設置された。 日本に紹介した実習生は今回指摘を受けた 6 年間だけで延べ 4 万人を超えるという。 (中日新聞 = 4-13-18)

外国人技能実習制度> 途上国の実習生に日本の産業技術を習得させる目的で、1993 年に始まった。 縫製、建設業などの業種に、2016 年末時点で 23 万人が実習しながら働いている。 違法賃金など実習生の労働環境が国際的な批判を浴びるなどし、国は昨年 11 月に制度を改正。 受け入れ団体の許可制を導入するなど厳格化する一方、実習期間を最長 3 年から 5 年に延長したほか、対象に介護職などを追加した。


技能実習生のベトナム認定送出機関を公表、日越政府の協力覚書で

日本政府とベトナム政府が 2017 年 6 月 6 日に署名し、11 月 1 日に発効した技能実習に関する二国間の協力覚書 (MOC) に基づき、このたび認定送出機関が選定され、外国人技能実習機構のホームページに公表された。 これにより、2018 年 9 月 1 日以降は認定送出機関以外からの技能実習生の受け入れが認められなくなる。

2017 年 6 月 6 日、日本の法務省と外務省、厚生労働省の 3 省とベトナムの労働傷病兵社会省は、初の技能実習の協力覚書に署名した。 同覚書は、技能実習生の送り出しや受け入れに関する約束を定めることにより、技能実習制度を通じて日本からベトナムに対する技能の移転を適正かつ円滑に行い、国際協力を推進することを目的としたもの。

同覚書では、日本側は技能実習法の基準に基づいて監理団体の許可事務・技能実習計画の認定事務を適切に行うなどの事項を約束。 一方ベトナム側は、送り出し機関の認定事務を適切に行うほか、送り出し機関の認定取消処分について日本側に情報を提供することなどを約束している。 (VietJo = 4-5-18)


現場支えるベトナム実習生 GS 縫製・岡山

(岡山)県内で働くベトナム人が増えている。 技能実習生として企業で働く場合が多く、人手不足に悩む現場の担い手となっている。 実習生たちが働く現場を取材した。 ダダ、ダダダダー。 ユニホームやジャージーを製造する「GS 縫製(総社市井手)」の工場内にミシン音が響く。 日本人と一緒の加工ラインで外国人技能実習生たちがジャージー素材の生地を縫い合わせていく。

従業員 30 人のうち 9 人がベトナム人の技能実習生だ。 全員女性で 20 代中心。 ミシン加工から仕上げまでこなすという実習生について、洲脇康宏社長 (54) は「現場の担い手として欠かせない存在」と言う。 技能実習制度は、一定期間、開発途上国の人たちに日本で働いてもらう制度だ。 技術や知識を身に着けてもらい、母国の経済発展につなげてもらうことを目的とする。 ただ、実際は人手不足対策の一環として取り入れている企業が少なくない。

同社が初めて外国人実習生を受け入れたのは 2000 年。 1973 年の創業当時からの従業員が高齢化する一方で、工場勤務を希望する若い人材が見つからない。 そんな状況の中、新たな働き手として中国人実習生を頼ることにした。 ここ数年は中国人の応募が減少し、3 年前からベトナム人の受け入れを始めた。 現地の平均月収は 2 万円程度。同社の月収はその 5 倍以上のため、「貯金を目的に来る人も多い」と洲脇社長は言う。

ベトナム中部ハティン省出身のグエン・ティ・ノイさん (31) は今年 5 月に 3 年間の実習を終えて帰国する。 「日本のいい製品ができる環境で勉強したかった」と言うグエンさん。 仕事で必要な日本語なら問題なく話すことができ、「ベトナムでも日本の縫い物工場で働きたい」と語る。 母国では 7 歳の子どもが帰りを待っているといい、「会えるのが楽しみ。」

実習生の多くは日本語を十分話せず、社員が日本語の学習会を開いているほか、体調を崩せば病院にも同伴するという。 互いの国の料理を振る舞い合う日を設けるなど、実習生と社員との交流にも力を入れている。 実習生を取り巻く労働環境などが問題となる中、洲脇社長は「相手は生身の人間。 我が社で働いてもらうには人として付き合わないと。」と話す。

一方、3 年間ほどで帰国する実習生頼みの現状には危機感もある。 7 年ほど前から、県内の高校に採用説明に行くなどして日本人従業員の採用にも力を入れる。 「技術継承を考えたらずっと働いてくれる人を採用したい。」 同社を含めて 80 社以上が加入する県輸出縫製品工業協同組合によると、現在、実習生約 560 人の約 5 割をベトナム人が占める。 以前は中国人実習生が大半だったが、中国の経済成長に伴い、賃金水準の低いベトナムでの募集を始めたといい、組合の担当者は「実習生の制度は格差がないと成り立たないのが実情」と打ち明ける。(国米あなんだ)

賃金未払いなど 労働環境に課題

県内には昨年 6 月末時点で 2 万 4,588 人の在留外国人がいる。 前年末に比べ 442 人増え、過去最多だ。 国籍別では中国・台湾(7,921 人)、韓国・朝鮮(5,369 人)に次いでベトナムが 4,836 人。 14 年 6 月末の 1,362 人から 3 倍以上に増えている。 実習生を取り巻く労働環境には課題が残る。 岡山労働局が 16 年に実習生を受け入れている 194 事業所を調査したところ、134 事業所で賃金不払いや時間外労働など労働基準関係法令の違反が確認された。

「給料が来日前に聞いていた額よりも少ない」、「残業代が出ない」。 カトリック岡山教会(岡山市北区)のベトナム人神父ホアン・ドゥク・ロイさん (39) には実習生らからこんな相談が寄せられる。 会社側と話し合いの場を設けることもあり、「教会が相談窓口の一つになっている。」

教会は月に 1 度、ベトナム語のミサを開く。 参列者は多い時で約 180 人で、3 年ほど前から急増しているという。 日本で働くベトナム人が中心だが、信者でなくても訪れる人もいて「居場所や交流を求めている人は多い」という。 教会を拠点にベトナム人と日本人との交流に取り組むホアンさんは「労働力としてでなく生活者として日本にベトナム人が受け入れられるようにしたい」と期待を込める。 (asahi = 3-31-18)


日系 4 世の在留・就労規制緩和 年 4 千人の来日見込む

ブラジルやペルーなど海外で暮らす日系 4 世の若者が日本で就労できる新たな在留制度について、法務省は 30 日から受け付けを開始した。 一定の日本語能力を持つ18 - 30 歳が対象で、滞在は最長 5 年間。 7 月 1 日から実施し、年間 4 千人程度の来日を見込んでいる。 同省によると、日系の 2 世や 3 世は現在も「定住者」などの在留資格で長期滞在し働くことが認められている。 だが、4 世の場合、長期滞在が認められるのは、原則日本で 3 世とともに生活する未婚の未成年に限られていた。

新制度では、資格申請時にサポート役の親族や国際交流団体などを確保していることを条件に「特定活動」の在留資格を与え、期間中は日本で自由に働けるようにする。 在留期間の更新時には、サポート役の個人・団体に対し、4 世の生活状況の報告を求める。 同省は新制度について「現住国の日系人社会と日本との懸け橋になる人材の育成」と説明するが、「労働力不足の解消策にすぎない」との指摘もある。 (小松隆次郎、asahi = 3-30-18)


茨城県・JA が協議会 外国人実習生の活用拡大

茨城県と茨城県農業協同組合 (JA) 中央会は 28 日、農業における外国人技能実習生の仕事の範囲や受け入れ先を広げるための協議会を設立した。 これまでの農作業に加え、加工や製造、集出荷などの実習もできるようになる。 こうした協議会の設置は北海道に次いで全国 2 例目になる。 県と JA が設けたのは「第三者管理協議会」。 実習生の受け入れ窓口となる監理団体や受け入れ先への助言や指導などを通じ、実習環境をより適正にする。 実習生の苦情相談にも応じる。

これまで実習生は受け入れ先の農家など 1 つの農業経営体としか雇用契約を結べなかった。 今後は JA を通じて複数の経営体との契約・実習ができ、実習内容の幅を広げられる。 実習生は JA と契約を結び、JA グループの選果場や加工場でも実習できるようになる。 繁閑に応じた働き方がしやすくなり、人手不足の緩和効果が期待できる。 県内では年間で約 2,000 人の実習生を受け入れている。 協議会は 18 年度中にも受け入れを始め、当面は年間で 30 人程度を受け入れる考え。 2017 年に厚生労働、法務、農林水産の 3 省が、農業の人材不足を和らげるため、技能実習制度を見直し、各都道府県で協議会の設置が可能になった。 (nikkei = 3-29-18)


ブラック企業勤務より 10 倍ヒドい「中国人技能実習生」の悲鳴

失踪実習生の現実

記事コピー (3-24-18)


介護実習生、人材育て中国へ 名古屋の事業者受け入れ

一人っ子政策、職員不足懸念

昨年 11 月から外国人技能実習制度に追加された介護職の実習生を中国から受け入れようと、名古屋市の介護事業者らが今年 1 月、団体を発足させた。 少子高齢化が進む中国でも今後、介護の担い手不足が深刻化するとされる。 理事長の王洋さん (31) は「日本で育った人材に活躍してほしい」と期待する。 団体は「中日福祉人財協同組合」。 岐阜市や名古屋市で老人ホームを運営する会社など 3 社と長野県飯田市の NPO 法人が出資した。 制度上必要とされる「監理団体」となり中国の送り出し機関と連携し、出資先に実習生を紹介して受け入れてもらう計画。 発足準備に 1 年以上かけ、中国の介護施設を視察し日本の介護事業者への説明会を開いてきた。

日本貿易振興機構(ジェトロ)などによると、中国では一人っ子政策などの影響で、2016 年に約 1 億 5,000 万人だった 65 歳以上の高齢者人口は 25 年に 2 億人超まで増え、高齢化率は 14% を超えると予測されている。 一方で介護職員は足りない。 日本の特別養護老人ホームでは職員と入所者の比率が 1 対 3 だが、中国では 1 人が 5、6 人の世話をする施設もあるという。 王さんは「認知症のケアや自立支援に関する意識も日本に比べ遅れている」と指摘する。

実習生や監理団体を監督する「外国人技能実習機構」によると、今年 2 月 16 日時点で実習計画が提出された介護職の実習生は 30 人だが、来日した実習生はいない。 日本語の習得状況への不安などから、送り出し機関と受け入れ施設の双方で様子見の状態になっているとの指摘もある。 今回の団体の強みは介護に携わる在日中国人とのつながり。実習生を受け入れる予定の施設は、介護福祉士の資格を持つ中国人が勤務する。 入所者らとのコミュニケーション不足によるトラブルに対応し、気軽に相談できる態勢を整えている。

王さんは「中国でのキャリアアップを考えて、日本の技術や理念を学びたいという人は多い」と語る。 自身も 06 年の来日後に介護を学び始め、14 年に名古屋市中川区にデイサービス施設を開いた。 「実習生は職員不足に悩む日本の施設の力になれる。 日中双方の問題の解決に貢献したい。」と話している。 (mainichi = 3-20-18)


外国人のための防災教室 ベトナム人実習生が学ぶ 京丹後

「外国人のための防災教室」が 16 日、京丹後市であった。 市国際交流協会が初めて企画し、ベトナム人の技能実習生ら 11 人が参加した。 大地震などの災害時に身を守るため自宅近くの避難所の確認やけがをした時の応急処置などを学んだ。 多文化共生マネジャーの麻田友子さんが講師を務めた。 熊本地震の被災地に入って活動した体験を踏まえ、災害時に「どんな物を持って逃げるか」から避難所での生活を分かりやすく語りかけた。 「水道がストップした場合、ウエットティッシュを持っていると歯磨きにも便利」と具体的なアドバイスをした。 「いざという時は近所の人の手助けが一番」と、日ごろから周辺の人とコミュニケーションを取るよう求めた。 (塩田敏夫、mainichi = 3-17-18)


介護実習生に日本語新試験 人材確保に方針転換

介護分野の外国人技能実習生が働き続けるのに必要な「日本語能力」を測るため、介護に特化した新たな試験が作られることになった。 今の試験はハードルが高いとして、実習生を送り出す国側から反発が強い。 このままでは不足する介護人材を確保できないと、介護事業の海外進出を進める官民の「国際・アジア健康構想協議会」が 7 日、年内にも内容を決めて実施すると発表した。 厚生労働省もこの新試験を認可する方針だ。 協議会は、試験作成に向けて日本語教育や介護の専門家による検討会を立ち上げ、介護現場に必要な日本語能力の基準作りを進める。

技能実習制度の介護職は、初の対人サービスとして昨年 11 月に加わった。 厚労省は必要な日本語能力を測る物差しに、「日本語能力試験(国際交流基金など共催)」を採用。 入国の条件を「N4 (ややゆっくりの会話ならほぼ理解できる)」合格とし、1 年以内に「N3 (日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる)」に受かれば最長 5 年間働け、不合格なら帰国させられるとした。

昨年 9 月に決めたばかりだが、働き続けられる条件が 1 年以内の「N3」合格から、1 年以内の新試験の合格に変わることになる。 背景には、実習生を送り出す各国からの強い反発があった。 日本語能力試験は一般的な日本語力が試され、N3 は日本語教室に 1 年以上通って習得できるレベルとされている。 フィリピンの送り出し機関関係者は「ハードルは高く、大半は不合格で帰国させられる。 人材の『出し渋り』が起きている。」と話す。 このため、人材確保に道筋をつけたい日本政府が事実上方針を転換した形だ。 介護関連の日本語であれば仕事をしながらでも身につき、合格しやすいとの期待もある。 協議会は、入国時の日本語能力を測る新試験作成も検討するという。 (asahi = 3-8-18)


ラーメン「一蘭」社長ら書類送検 不法就労助長の疑い

とんこつラーメンチェーン「一蘭」で法定時間を超えて留学生を働かせたとして、大阪府警は 6 日、同店運営会社(本社・福岡市)の吉冨学社長 (53) や労務担当責任者の女性 (39)、店長ら計 7 人と、法人としての同社を出入国管理法違反(不法就労助長)の疑いで書類送検したと明らかにした。 吉冨社長については雇用対策法違反(外国人雇用の無届け)の疑いでも書類送検した。

南署によると、吉冨社長らは昨年 9 - 11 月、大阪市中央区の「一蘭 道頓堀店本館」など 2 店で雇っていたベトナムや中国からの 20 - 27 歳の留学生計 10 人を、出入国管理法が定める週 28 8時間を超えて働かせた疑いなどがある。 最長で週 39 時間以上働き、月 21 万円を得た留学生もいたという。 また吉冨社長は、留学生を雇ったのに名前や在留期間などをハローワークに届け出なかった疑いがある。

吉冨社長は、不法就労について「把握していなかったが自分の責任」と容疑を認め、外国人雇用の届け出は「法律を知らなかった」と話しているという。 店長らは「サービスを維持するために人手が必要だった」、「約 500 人のアルバイトの勤務を管理できず、確認もできない状態だった」などと話しているという。 一蘭の広報担当は取材に「アルバイトのシフトを把握できていない甘い部分もあった。 留学生の労働時間が週 28 時間を超えないよう、全店を挙げて徹底していく。」と話した。 (asahi = 3-6-18)

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「一蘭」摘発で業界の悲鳴 … 人気ラーメン店も外国人頼み

人気とんこつラーメン店「一蘭」が 11 月 29 日、大阪府警に "ガサ入れ" され、飲食業界関係者は戦々恐々だ。 一蘭といえば、一人一人仕切られた「味集中カウンター」で知られる。 「きっかけは、一蘭の道頓堀店別館(大阪市中央区)でアルバイトをしていたベトナム人の女 (29) です。 5 月に警察官から職務質問を受け、不法就労が発覚しました。(捜査事情通)」 女は 29 日までに、入管難民法違反容疑で逮捕され、一蘭も同日、必要な届け出を怠っていた雇用対策法違反の疑いで福岡市博多区の本社などを家宅捜索された。 一蘭は「事実関係を確認中でコメントできません(広報担当者)」としているが、急拡大のツケと見る向きもある。

「1993 年の設立から年商も店舗数も右肩上がりで、13 年度に 100 億円を突破し、16 年度は 174 億円。10 月時点で国内 69 店舗、海外 4 店舗という一大チェーンに成長しました。 昨年 10 月には米 NY に出店し、日本円で 1 杯 2,000 円という価格でも話題に。 有名ラーメン店の中でもインバウンド人気が高いですね。(調査会社関係者)」 1 月時点で社員数 295 人、アルバイト数 5,368 人という大所帯だ。 急拡大のひずみが生じても、不思議じゃない。

「逮捕されたベトナム人の女が働いていた道頓堀店別館では、アルバイトの基本時給が 1,200 円以上、早朝 1,300 円、深夜なら 1,500 円で募集をかけている。 それでも人が集まらない、人手が足りないから、外国人に頼らざるを得なかったのでしょう。 飲食業界は外国人労働者抜きに回らない。 一蘭に限らず、いずこも同じです。(外食チェーン関係者)」 一蘭の吉冨学社長は、HP で「人間教育に力を入れ、コンプライアンスを重視」などと語っているが、そうも言っていられない店は多い。

「一蘭の "摘発" は一罰百戒の意味もあるのでしょうが、外国人労働者に対する締め付けが厳しくなって人手不足が加速すれば、これまで以上に人件費が高騰する。 そのぶん材料費を削れば、客足が遠のく。 立ち行かなくなる飲食店が激増する恐れがあります。(経済ジャーナリスト・岩波拓哉氏)」 飲食業界全体にひずみが生じている。 (日刊ゲンダイ = 12-2-17)

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ラーメン「一蘭」で不法就労か ベトナム人の女を逮捕

とんこつラーメンチェーンの「一蘭」で、不法に働いていたとして、大阪府警は 29 日、大阪市西成区のベトナム人の女 (29) を出入国管理法違反(資格外活動)の疑いで逮捕したと明らかにした。 府警は同日、大阪市中央区の店舗や福岡市博多区の本社を家宅捜索した。 今後、同社の雇用実態を調べる。 南署によるとベトナム人の女は 4 - 11 月、大阪市中央区の店舗で、就労が認められていないのに働いていた疑いがある。 女は「悪いことだと知りながら働いていた」と容疑を認めているという。 (asahi = 11-29-17)


技能実習生の受け入れ現場を歩く

彼らが『労働者』としての役割を立派に果たしているということを実感した。

地元富士市で外国人技能実習制度を利用している企業を訪問してきた。 最初に訪れたのは、金属加工会社。 この会社は、10 年以上にわたって実習生を受け入れており、現在はベトナム人の男性 3 名が板金や溶接の現場で働いている。

研修生の採用は、社長が直々にベトナムに行って、現地の工業大学や専門学校の卒業生を面接して行うとのこと。 その後、彼らはベトナムの送り出し機関によって約半年の日本語教育や生活訓練などを経て、日本にやってくる。 採用には相当のコストがかかるが、深刻な人手不足で背に腹は代えられない。 若い研修生が入ってくることで、職場が活性化するメリットもあるという。

3 年の実習期間の中で、実習生は、基本的な技術の習得だけでなく、図面から製品として仕上げるまでに技術を取得する。 ただ、残念ながら、帰国後に母国で習得した技術が生かされることはほとんどないそうだ。 ベトナムに同じレベルの機械を使っている企業がないことと、金属加工の仕事で彼らが望む収入を得ることは難しいのだという。 実習三年目の彼に、ベトナムに帰国したら何をしたいか聞いたところ、「日本企業で働きたい」と話してくれた。 妻と子どもをベトナムに残してきているとのこと。 日本で高度な技術を習得した彼の夢が、ベトナムで実現すると良いのだが。

実習 1 年目の彼には、大学生と高校生と弟と妹がおり、その二人の学費を稼ぐために働いているとのこと。 休日には、ボランティアによって行なわれている日本語教室に通っているそうだ。 日本語で懸命に意思を伝えようとする姿から、真剣さが伝わってきた。 実習生として日本に来るためには、彼ら自身が 60 万円を超える負担をしなければならない。 途中で挫折すると、借金だけが残ってしまう。 ここでの研修に彼らの人生がかかっているのだ。 すぐに辞めてしまう日本の若者と違って、休むことなく一生懸命働いてくれる実習生はありがたいという社長の話も頷けた。

話を聞いた実習生の多くが、「実習が終わった後もここで働きたい」、「日本に戻ってきたい」と話していた。 せっかく技術を身に着けても 3 年でいなくなってしまうことは、経営者にとっても悩みの種になっている。 彼らが再び日本で働けるとすれば、『高度人材』と認められた場合のみ。 大学院などを卒業していることが条件となっており、狭き門になっている。 社長が見せてくれたものは、1 ミリ角のサイコロだ。 削り出したものではなく厚さ 0.2 ミリのステンレス板を切り出し、溶接して立方体をつくり、サイコロの目はレーザーで穴を空けたものだ。 これこそ専門的な技術が必要な分野だと思うが。

次に訪れたのは、紙の街、富士市らしい紙関係の会社だ。 ベトナム人女性 3 人の実習生と、スリランカ人男性 1 人の留学生が働いている。 1 年前から実習生の受け入れを開始したが、雇用許可制がある韓国(日本より稼ぐことができる)との間で人材の引っ張り合いが行われており、優秀な人材確保に苦労しているとのことだった。 この女性は、会社が提供する 150 円の昼食のお弁当も食べず、毎月 10 万円を家族に送金しているとのことだった。 彼女たちは、残業はもちろん、土日も含めて仕事をしたがるが、労働時間の制約でできないと、社長は話していた。

スリランカからの留学生は、4 月から高度人材としてこの会社の正社員となる。 すでに、アルバイトとは思えない手際の良さで機械を操っていた。 能力が高く、積極的な性格で、次から次へと仕事を覚えていくという。 会釈をしながら、流ちょうな日本語で答える姿から、日本社会に適応している様子が見て取れた。 「日本人よりよっぽど良い」という社長の言葉に、私は苦笑いするしかなかった。

技能実習生や留学生の姿を見て、彼らが『労働者』としての役割を立派に果たしているということを実感した。 今回、現場を歩いた製造業だけではなく、農業、コンビニをはじめとした小売り、介護の分野でも同様のことが起こっている。 政府は、外国人労働者の受け入れ拡大の検討を開始したが、すでに現実は先を行っていると言えるだろう。 深刻な労働力不足を考えると、さらに踏み込んだ対応が求められていることは間違いない。 私は、現場の声もしっかり聞いたうえで、積極的な提案を行っていくつもりだ。 (細野豪志、衆議院議員 blog、Huffpost = 3-1-18)