NY 円急伸、一時 101 円台 日銀の金融緩和に失望感

29 日のニューヨーク外国為替市場は、日本銀行が決めた追加の金融緩和に対する失望感が広がり、米景気に不透明感も強まったことから、円を買ってドルを売る流れが加速した。 対ドルの円相場は一時 1 ドル = 101 円 97 銭まで値上がりし、約 3 週間ぶりの円高ドル安水準をつけた。 日銀が 29 日に決めた株価指数に連動する上場投資信託 (ETF) の買い入れ額をほぼ倍増する追加緩和策に対し、市場は「投資家が想定した大規模な緩和策でなかった(米エコノミスト)」と受け止めている。

さらに、米商務省が 29 日朝に発表した 2016 年 4 - 6 月期の実質国内総生産 (GDP) の速報値が市場予想を大幅に下回ったことで、円買いドル売りが一気に強まった。 午後 5 時(日本時間 30 日午前 6 時)時点の円相場は、前日の同じ時刻に比べ 3 円 24 銭円高ドル安となる 1 ドル = 101 円 99 銭 - 102 円 09 銭だった。 (ニューヨーク = 畑中徹、asahi = 7-30-16)

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米 GDP、1.2% 増 4 - 6 月期、予想大きく下回る

米商務省が 29 日発表した 2016 年 4 - 6 月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)の速報値は、年率換算で前期(1 - 3 月期)と比べて 1.2% 増となり、専門家の予想(2.6% 前後の増加)を大きく下回った。 主力の個人消費は改善したものの、企業による設備投資や住宅投資などが落ち込んだ。 今年 1 - 3 月期の成長率は 1.1% 増から 0.8% 増に下方修正された。 国際通貨基金 (IMF) の最新の見通しでは、今年通年の米国経済の成長率は 2.2% と予想していた。 (フィラデルフィア = 五十嵐大介、asahi = 7-29-16)


国内の世界遺産は 20 件目 西洋美術館などの登録決定

トルコのイスタンブールで開かれているユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産委員会は 17 日、国立西洋美術館本館(東京都台東区)を含む「ル・コルビュジエの建築作品 - 近代建築運動への顕著な貢献」について、世界文化遺産に登録することを決めた。 日仏などが共同推薦し、2009 年、11 年の委員会では登録が見送られ、今回が 3 度目の挑戦だった。

国内の世界遺産は 20 件目(文化遺産 16 件、自然遺産 4 件)で、東京都内では初めての世界文化遺産。 16 日に審議予定だったが、トルコのクーデター未遂を受け、審議が延期された。 登録されたのは、フランスの建築家ル・コルビュジエ (1887 - 1965) が設計した、フランス、日本、ドイツ、スイス、ベルギー、アルゼンチン、インド 7 カ国にある個人邸宅や規格住宅、宗教建築、行政機関など計 17 作品で、複数の大陸にまたがる世界遺産は初めて。 新しい建築の概念を広め、20 世紀の「近代建築運動」に大きな影響を与えたことなどが、「顕著な普遍的価値がある」として評価された。 (守真弓、asahi = 7-17-16)


LED で野菜栽培、UAE に工場建設へ 丸紅など 3 社

丸紅と昭和電工、千代田化工建設は、LED (発光ダイオード)の光で野菜を育てる植物工場を、アラブ首長国連邦 (UAE) に建設する。 水資源に乏しい中東にはレタスなどの葉物野菜を輸入に頼る地域があり、富裕層を中心に、現地でつくる新鮮な野菜への需要は大きいと判断した。

3 社が 7 日発表した。 UAE の大手財閥アルグレアグループと共同で来年 1 月、ドバイに実証プラントを設ける。 光の波長や強度を変えて野菜の成長を早めたり、味を調整したりできる昭和電工の技術を活用。 通年生産が可能で、レタスなどを 1 日に 50 株収穫する能力を持つ。 1 年かけて栽培実験を進め、テスト販売もアルグレアが担うという。 UAE やカタール、オマーン、サウジアラビアなどの中東の国々は、葉物野菜の多くを欧州などから輸入している。 3 社は今回の実績をもとに、日照不足や寒さで野菜の栽培が難しいロシアや北欧などでも、植物工場の受注を目指す。 (石橋亮介、asahi = 7-8-16)


ダッカ襲撃、邦人 7 人死亡発表 官房長官「痛恨の極み」

バングラデシュの首都ダッカで 1 日午後 9 時(日本時間 2 日午前 0 時)ごろ、レストランに武装した男らが侵入し、日本人を含む客ら 30 人余を人質に立てこもった事件で、菅義偉官房長官は 2 日夜、日本人 7 人が死亡したと発表した。 日本人 1 人は救出された。 バングラデシュ治安当局によると、20 人が死亡し、多くは外国人だという。

菅官房長官によると、日本人で犠牲となったのは、男性 5 人、女性 2 人。 いずれも国際協力機構 (JICA) のプロジェクトに関わっていたという。 在バングラデシュの大使館関係者が、写真や所持品などから身元を確認した。 菅氏は「痛恨の極みで、残念至極だ。 政府として、なし得る限りの支援をしたい。」と語り、3 日に遺族や関係者を乗せ、政府専用機を現地に飛ばす考えを示した。

菅氏は、犠牲者の氏名や亡くなった時の状況については「家族の了解をいただいていないので、コメントは控えたい」と説明を避けた。 バングラデシュ政府の対応については「最善の対応をお願いしていた。 残念な結果に終わった。」とだけ述べた。 岸田文雄外相は 2 日夜、「国連安全保障理事会でも本件を取り上げ、強い非難のメッセージを発しなければならない」と記者団に語った。

亡くなったうちの 1 人は、家族によると、建設コンサルタント会社「アルメック VPI (東京都新宿区)」社員の岡村誠さん (32)。 外務省から連絡があったという。 救出された 1 人は、同社の 40 代の男性、渡辺玉興(たまおき)さん。 同社が明らかにした。 JICA によると、日本人 8 人は、いずれもコンサルタント会社の関係者で、交通インフラ事業に携わっていた。 コンサル会社は「アルメック VPI」のほか、「オリエンタルコンサルタンツグローバル(同渋谷区)」、「片平エンジニアリング・インターナショナル(同中央区)」など。

一方、日本政府は 2 日、木原誠二・外務副大臣と、外務省の職員らでつくる「海外緊急展開チーム (ERT)」を現地に派遣した。 日本政府は同日未明、現地の大使館に緊急対策本部を立ち上げ、同日午前には、首相官邸で国家安全保障会議 (NSC) を開いて対応を協議。 安倍晋三首相は同日予定していた参院選の北海道遊説を中止した。 首相は同日夜、「バングラデシュの発展のために尽力した皆さんであり、痛恨の極みだ」と記者団に語った。 これに先立つ同日午後、バングラデシュのハシナ首相と電話で会談し「貴国への連帯を表明し、国際社会と連携し、最大限支援する」などと語った。 (asahi = 7-3-16)

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JICA 理事長「大きなショック」 関係者不明で沈痛な表情

関係者 8 人がバングラデシュの飲食店襲撃事件に巻き込まれた国際協力機構 (JICA) は 2 日午後、都内で記者会見した。 北岡伸一理事長は「我々にとっても(ペルーで邦人技術者が射殺された) 1991 年以来の事態。 大きなショックを受け、全力で対応している」と沈痛な面持ちで話した。 北岡理事長によると、JICA では日本時間の 2 日未明に業務を委託する日本人コンサルタントの一部と連絡がつかないことが分かり、本部に対策室を設置。 情報収集と安否確認にあたったという。

北岡理事長は「バングラデシュの発展に取り組む日本人がこのような事件に巻き込まれ、犯人に強い憤りを覚えている」と強調。 一方で「安全対策を強化するとともに今後もバングラデシュの発展と平和に貢献したい」と険しい表情で話した。 安否が分からない 7 人については「巻き込まれた方々の家族の気持ちを第一に考え、個人の特定につながる情報は現時点では控えたい」と説明した。 (nikkei = 7-2-16)


世界 4 位のつり橋が完成 IHI がトルコで建設

IHI は、トルコで建設を進めてきた「イズミット湾横断橋」が 6 月 30 日に開通したと発表した。 つり橋として世界 4 位、トルコ最大の長さ。 昨年 3 月に足場が崩れる事故が起きて復旧に時間がかかり、計画より半年弱遅れて開通した。 トルコ西部にあるイズミット湾の南北を結ぶ全長 2,682 メートルの橋で、つり橋を支える主塔の間隔は 1,550 メートルと世界 4 位。 フェリーなどで約 1 時間かかったところが橋の開通で 6 分程度に縮まり、物流が大幅に効率的になるという。

2011 年、IHI の子会社 IHI インフラシステムなどが約 11 億ドル(約 1,122 億円)で受注していた。 IHI は、この橋の建設中に起きた足場の事故をはじめ、別の工事でも製品に間違った材料をつかうなどの問題が起きており、今年 4 月に「ものづくりシステム戦略本部」を新設して、立て直しを図っている。 (asahi = 7-1-16)


多国籍企業の課税逃れに新ルール OECD が対応本格化

パナマ文書問題で明らかになった多国籍企業の課税逃れに対応するため、経済協力開発機構 (OECD) は、参加国に共通の国際課税のルールづくりを本格化する。 年末までに、100 カ国以上が新ルールの枠組みに参加する見通しだ。 OECD の租税委員会(議長・浅川雅嗣財務官)が 30 日から 2 日間の日程で京都市で始まった。 会合では、多国籍企業が課税を逃れたり、税負担の少ない国へ利益を移転したりすることに対処する「BEPS プロジェクト」を途上国にも広げ、共通のルールづくりを進めることを確認した。

BEPS の正式メンバーは OECD の加盟国など 46 カ国だったが、京都市の会合で約 80 カ国・地域まで増えた。 OECD によると、20 カ国以上が今後の参加を検討しているという。 途上国には、BEPS への参加により、先進国の企業の進出を促すねらいがある。 共通ルールにより、過度な節税を防ぎ、経済活動の実態に即した納税のしくみを整えたい考えだ。

具体的には、世界各国で活動する企業に対し、グループ全体の財務情報を一括して親会社のある国の政府に提出させる。 通販会社の倉庫など課税対象になっていなかった施設も、事業の中核を担っている場合には課税の対象とすることも検討する。 ルールを厳格にする一方で、複数の国から課税される「二重課税」で企業に不公平が生じないよう紛争解決のしくみを整えることも確認した。 ただ、各国で異なる法制度をどのように見直すかや、各国の税務当局のノウハウをどう高めていくかなどの課題もある。 (鬼原民幸、asahi = 6-30-16)


一斉引き出し事件、銀行に承認記録なし 不正アクセスか

17 都府県の現金自動出入機 (ATM) から短時間で約 18 億 6 千万円が不正に引き出された事件で、犯行に情報を使われたカードを発行した南アフリカの銀行のシステムに、現金の引き出しを承認した記録が確認されていないことがわかった。 事件当時、不正アクセスを受け、誤作動を起こしていたという。

捜査関係者によると、事件では、南アのスタンダード銀行から流出した約 3 千件に上るクレジットカードやデビットカードの情報を記録した偽造カードが使われた。 南ア側の調査では、犯行が行われた 5 月 15 日午前 5 - 7 時台(日本時間)の 3 時間弱の間は、同行のシステムが不正アクセスを受けて誤作動を起こしていたといい、引き出しを承認させた後に痕跡を消したか、承認を経ずに引き出すことができたとみられる。

ATM は、カードを挿入し暗証番号を入力すると、その情報が銀行のシステムに伝わり、内容が正しければシステム上で承認されて現金を引き出せる仕組み。 暗証番号が違えば承認されないが、逮捕された引き出し役の男の一人は「(複数のカードの)暗証番号は同じだったと思う」と供述しているという。 また、約 3 千件のカード情報は事前に銀行のシステムがハッキングされて盗まれた可能性が高いとみられているが、その痕跡はシステムに残っていなかったという。 警察当局は、高度な技術を持つハッカー集団が関与し、偽造カードを引き出し役に配ったうえで一斉に犯行に及んだとみて、南ア当局と連携して捜査を進めている。 (asahi = 6-28-16)

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偽造カード一斉使用? 14 億円不正引き出し 17 都府県

全国 17 都府県のコンビニの現金自動出入機 (ATM) 約 1,400 台で今月 15 日、偽造とみられるクレジットカードが一斉に使われ、3 時間ほどの間に約 14 億 4 千万円が引き出されていたことがわかった。 取引記録から、使われたカードは、南アフリカの銀行が発行したクレジットカード約 1,600 枚の情報と一致したといい、警察当局が捜査を進めている。

捜査関係者などによると、不正に現金が引き出されたのは東京都や神奈川県が特に多く、大阪府、兵庫県、愛知県、福岡県など各地のコンビニに設置された同じ銀行の ATM。 15 日午前 5 - 7 時台の 3 時間近くの間に、限度額 10 万円の引き出しが 1 万 4 千回以上繰り返されたといい、銀行が不審な取引として、同日中に警視庁に届け出た。 一連の引き出しでは、ATM が不正を検知し、中国の焼き肉店の顧客カード 6 枚を自動的に回収していた。 6 枚はいずれも表記が中国語の磁気カードで、南アフリカの銀行のクレジットカード情報が書き込まれていたという。

警察当局は、ハッキングなど何らかの理由で流出した情報をもとにカードが偽造され、キャッシング機能で現金が引き出された可能性が高いとみている。 短時間のうちに全国で行われたことから、100 人以上が関与したとみて防犯カメラの映像の解析を急ぐとともに、国際刑事警察機構 (ICPO) を通じて南アフリカ当局と連携し、情報流出や偽造の経緯についても解明を進める方針だ。 (asahi = 5-23-16)


米カリフォルニア州、フランス抜き世界 6 位の経済規模に

[サンフランシスコ] 2015 年は米カリフォルニア州の経済規模が、フランスを抜いて世界第 6 位だったことが明らかになった。 州経済の活況と強い米ドル相場が支えとなった。 カリフォルニア州の 6 月の官報によると、同州の 2015 年の成長率は実質 4.1%、総生産は 2 兆 4,600 億ドルだった。 国際通貨基金 (IMF) の統計によるとフランスの国内総生産 (GDP) は 2 兆 4,200 億ドルで世界第 7 位となり、インドは 2 兆 0,900 億ドルで第 8 位だった。

州財務当局のチーフエコノミスト、イリーナ・アズムンドソン氏は、2014 年のカリフォルニア州の順位は 8 位だったと指摘。 電話インタビューで「2015 年のカリフォルニア州は、極めて好調だった」と語った。 同氏によると、カリフォルニア州は、シリコンバレーやハリウッドなど多様で力強い経済拠点があり、深刻な干ばつのなかでも製造業と農業が好調だった。 (asahi = 6-20-16)


米では顔のみキューピー パッケージのマーク、地域性・宗教に配慮

マヨネーズ大手キユーピーが、パッケージなどに長年使ってきたキューピー人形のマーク。 日本では「全身」でおなじみだが、米国など海外で販売する商品には「顔と両手」が中心のものを使い始めている。 地域性や宗教上の理由に配慮するためだという。 米国の現地法人は 5 月末、米国向け市販用マヨネーズの製造販売を始めた。 パッケージにはおなじみのキューピー人形があしらわれているが、顔と両手ぐらいで、おなかや足までは描かれていない。

キユーピーによると、日本と同様に全身のものを検討していたが、現地スタッフに「社会情勢や多様な民族、宗教に配慮すべきだ」と言われた。 衣服を着ていないことも問題視されたという。 そこで別のデザインを社内で示したところ、好印象という意見が多かったため採用した。 実はこのマークは、2013 年にマレーシアで初登場した。 その 2 年前、キユーピーマレーシアが同国でイスラム教の戒律に沿った食品証明「ハラル認証」を更新する際、認証機関に「これは天使ではないか」と指摘されたためだ。

イスラム教は偶像崇拝を禁じており、同社は「宗教性はなく、天使でも赤ちゃんでも男でも女でもない」との見解を説明、理解を得た。 それでも「誤解が生じないとも限らない」と考え直し、新たに顔のマークをつくったという。 いまのところ欧州やタイ、イスラム教圏のインドネシアでも、日本と同じ全身マークを使っている。 キユーピー広報は「できるだけ元のマークを使いたいが、誰にも不快感を与えない形を検討した」としている。 (栗林史子、asahi = 6-18-16)


中国 A 株の採用、今後の検討で別の問題生じる可能性 = MSCI

[香港] 株価指数を開発・算出する米 MSCI は 15 日、中国本土に上場する人民元建て株式(中国 A 株)のグローバル新興国株指数への組み入れを検討する上で、今後に別の問題が生じる可能性を排除できないとの見解を示した。 また、中国政府が進める既存のストック・コネクト制度はすべての投資家が使いたいプログラムではないとした。

MSCI のマネジングディレクター兼調査部門グローバル責任者、レミー・ブリアン氏は記者会見で「昨年夏の出来事(中国株の下落)は異常事態であり、それだけに株式の取引停止制度は重要だ。 まだ起こりうることだ。」と発言。 「今後われわれが検討を進める中で、別の側面が問題化する可能性はある」と語った。 MSCI は先に、中国 A 株のグローバル新興国株指数への組み入れは行わないと発表。 中国の適格外国機関投資家 (QFII) 制度の有効性や資本移動に関する政策変更、新たな取引停止政策の有効性を評価する時間がさらに必要だと説明した。 (Reuters = 6-15-16)

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中国「貿易戦争望まず」、WTO の地位格上げ要求

[北京] 中国の李克強首相は 13 日、同国を訪問中のメルケル独首相に対し、貿易戦争は望んでいないと述べ、欧州連合 (EU) との貿易摩擦をめぐり否定的な考えを示した。 両首脳は、中国が求める世界貿易機関 (WTO) における「市場経済国」認定について協議した。 中国は現在「非市場経済国」となっているが、「市場経済国」に地位が格上げされれば、貿易面で有利な扱いを受けることができる。

李首相はメルケル首相との共同記者会見で「中国は WTO 加盟に伴う義務をすでに果たしている。 他の加盟国も約束した相応の義務を果たす必要がある。」と主張した。 その上で「貿易戦争は誰の得にもならず、われわれはこれを望んでいない」と語り、メルケル首相と同様の考えを示した。 欧州委員会は中国を市場経済国として求める方針だが、中国の廉価製品に対する規制を強化したいとの思惑もある。

メルケル首相は、中国の「市場経済国」認定について、より専門家レベルの協議が必要との見解を表明。 中国市場が外国からの投資に開かれることを期待し、中国で活動する海外非政府組織 (NGO) が新たに成立した法律によって阻害されないよう望むと発言した。 李首相は、外国投資家に対し公正な機会を提供するために、一段の措置を講じる考えも明らかにした。 また、鉄鋼生産能力の削減に取り組む意向を示した。

メルケル首相は、中国の銀行に対する金融市場の開放について、中国が互恵主義に基づく措置を取るかを注視していくと指摘。 「金融部門の開放については、当然産業部門よりも相互性に注目していく」と語った。 国営新華社通信によると、並行して開かれた両国財界人の会合では、航空防衛大手エアバスや自動車大手ダイムラー、北京汽車 (BAIC) などが絡み、のべ 150 億ドル規模の経済協力で合意した。 (Reuters = 6-14-16)


アフガンに送る、希望の中古ランドセル NGO 職員奔走

2004 年 9 月、アフガニスタン。 紛争の地に届いたのは、日本からの 2 千 200 個の中古のランドセルだった。 アフガンに物資を届けることは難しい。 そう言われながらも、「ランドセルで救える命がある」と奔走した NGO 職員がいた。 これまでに 16 万個を超える「希望」が、海をわたった。 4 日、横浜市都筑区の倉庫に人の丈ほど積み上げられたランドセルを前にして、国際協力 NGO 「ジョイセフ」の高橋秀行さん (64) は目を細めて、口にした。 「アフガンの子たちの笑顔が浮かびますね。」

使い終えたランドセルを有効活用したい - -。 国際協力推進部長だった 03 年、ランドセルの人工皮革を製造販売するクラレから相談を受けた。 アフリカに送りたいと言われたが、「アフガンに送らないか。」 そう、訴えた。 その前年の 02 年、高橋さんはアフガンにいた。 ジョイセフは日本の NGO のはしりとして、アジアやアフリカで母子保健の向上、家族計画の普及に取り組んできた。 だが内戦が続いていたアフガンでは活動できなかった。 タリバーン政権が崩壊し、何かできないか。 その一心で赴いた。

母子保健の啓発には読み書きができることが重要だが、タリバーン政権は女子教育を認めず、女性の識字率は世界で最低レベルだった。 女性が保健や衛生について情報を得ることができず、妊産婦の死亡率が高い実情を目の当たりにした。 帰国し、教育支援の取り組みを模索した。 クラレから相談があったのは、そんな矢先だった。 「ランドセルは学校へ通う子どもたちの『象徴』。 ランドセルを背負って学校に行くことは当たり前なんだと伝われば、きっと就学のきっかけになる。」 紛争地に本当に届くのか。 クラレや同僚からも反対の声があがった。

そこで高橋さんはアフガンの医療団体に説いた。 「急がば回れだ。 ランドセル一つかもしれないが、学ぶ希望がアフガンの未来につながる。」 同団体はパキスタンでランドセルを荷揚げし、カイバル峠を越え、アフガン東部の小学校まで送り届けると約束。 事前に受けとったランドセルを教育省に持参し、関税をかけないことをとりつけた。 こうして動き出したランドセル事業。 反響は想像以上だった。 寄付が途切れることはなく、年々支援の輪は拡大。 今年 3 月には東京都豊島区から 500 個寄付された。 行政との連携としては初めてのことだった。

事業を始めて、高橋さんはアフガンの知人からこんな話を聞いた。 武力で制圧した地域は紛争が絶えないが、ランドセルを配った地域は違う。 子どもがランドセルを毎日背負い笑顔を見せる。 親はその笑顔に就学の大切さを少しずつ理解し始めた。 そういった日常の小さな幸せが安定した生活を生んでいる。 ランドセルは武器よりも強い、と。 この日、全国から届いた約 7 千 500 個が検品された。 ランドセルには、寄付した人が入れたノートや鉛筆などが詰められている。 様々な思いをのせたランドセルは 26 日、横浜港から約 6 千キロ離れたアフガンの子どもたちの元へと旅立つ。 (永田大、asahi = 6-6-16)

関連記事 (7-16-15)

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使用済みランドセルをアフガニスタンに 8 千個を箱詰め

6 年間使ったランドセルをアフガニスタンの子どもたちに届けようと、横浜市都筑区の倉庫で 2 日、200 人近いボランティアが点検、箱詰め作業を行った。 全国から約 8 千個集まり、ノートや鉛筆などの文房具を詰めて発送する。 ランドセルの主要素材である人工皮革を製造販売しているクラレが 2004 年から呼びかけ、これまでに約 10 万個を現地に届けた。 宗教上の理由から、豚革を使用した物は省くという。 ランドセルは 5 月初旬に船で東京港を出発、秋には現地の学校に届けられ、子どもたちに贈られる。(西畑志朗、asahi = 4-2-16)


2016 年世界競争力調査、独がトップ 10 落ち 日本は 26 位

[ベルリン] スイスのビジネススクール IMD が 30 日公表した 2016 年の世界競争力調査で、ドイツが昨年から 2 つ順位を落として 12 位に転落、トップ 10 から外れた。 日本は 1 つ順位を上げ、26 位だった。 同調査は 6 の国と地域を対象に、景気動向、政府の効率性、経営効率、インフラの 4 つの主な要因から 340 を超える基準の分析に基づいている。

IMD のディレクター、アートロ・ブリス氏は、政府と景気動向の評価が下がったことが、ドイツ転落の主な原因であることを調査は示していると指摘。 「ドイツにとって最大の脅威は自己満足」だとし、これをはねのければ再びトップ 10 入りできるとの見方を示した。 首位は香港で、スイス、米国がそれに続いた。 アジアでは、シンガポール(4 位)、台湾(14 位)、マレーシア(19 位)、中国(25 位)、日本(26 位)、タイ(28 位)、韓国(29 位)が上位 30 位までにランクインした。 (asahi = 5-31-16)

トップ 10 は以下の通り (カッコ内の数字は昨年調査での順位)
1香港(2)
2スイス(4)
3米国(1)
4シンガポール(3)
5スウェーデン(9)
6デンマーク(8)
7アイルランド(16)
8オランダ(15)
9ノルウェー(7)
10カナダ(5)

サミット首脳宣言、「新たな危機」回避へ 政策総動員を確認

[伊勢/志摩] 主要 7 カ国 (G7) は 27 日、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の首脳宣言を公表した。 世界経済の将来的な下方リスクに警戒感を示すとともに、全ての政策手段を総動員することを確認した。 経済の現状が「危機」かどうかをめぐっては、「新たな危機に陥ることを回避する」とし、現在は危機的状況ではないとの見方をにじませた。 首脳宣言では「G7 伊勢志摩経済イニシアティブ」を打ち出し、経済分野での諸課題に共同で対処することで一致。 世界経済の成長を「喫緊の優先事項」と位置付け、各国の状況を考慮しつつ、成長実現へ「均衡ある政策の組み合わせを用いる」とした。

安倍晋三首相が 26 日の討議で、コモディティ価格の下落などがリーマン・ショック級とする資料を各国首脳に提示したが「クライシスとまで言うのはいかがなものか」との異論もあり、世界経済の現状認識に注目が集まっていた。 首脳宣言は、世界経済の回復は続いているが「下方リスクが高まっている」とする一方、「新たな危機に陥ることを回避するため、経済の強じん性を強化してきている」とし、現在の状況が危機に当たるとの認識では一致しなかった。

焦点の 1 つだった財政出動については、機動的な財政戦略の実施と構造政策を果断に進めるとしたうえで、「G7 が協力して取り組みを強化することの重要性について合意」した。 為替に関しては、過去の G7 や G20 の声明を踏襲するかたちで、「為替レートの過度の変動が経済に悪影響を与える」と指摘。 為替レートを目的としないことに加え、すべての国が通貨の競争的な切り下げを回避することの重要性を強調した。

また、地政学紛争やテロ、難民問題と世界経済との関連にも言及し、こうした問題は「世界経済を複雑化させている」とした。 さらに 6 月の国民投票で結果が決まる英国の欧州共同体 (EU) からの離脱問題では、離脱すれば世界貿易や投資、雇用拡大の流れに逆行し、世界経済にとって深刻なリスクになると明記した。 (梅川崇、Reuters = 5-27-16)

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伊勢志摩サミット開幕 世界経済対応の足並みが焦点

主要 7 カ国 (G7) 首脳会議(伊勢志摩サミット)が 26 日午前、開幕した。 世界経済を下支えする対応策について、各国がどこまで足並みをそろえられるかが最大の焦点だ。 テロ対策や難民問題などについても話し合い、最終日の 27 日に首脳宣言を採択する。 日本でサミットを開くのは、2008 年の北海道・洞爺湖サミット以来、8 年ぶり。

安倍晋三首相は 26 日午前、伊勢神宮(三重県伊勢市)の宇治橋の前で各国首脳を一人ひとり出迎え、そろって神宮を訪問した。 その後、主会場となる賢島(同県志摩市)の志摩観光ホテルに移動する。 同日午後から 2 日間にわたり、「世界経済」や「政治外交」などのテーマについて話し合う。 27 日午後に閉幕し、議長を務める安倍首相が記者会見して、採択した首脳宣言について説明する。

最大のテーマに掲げた「世界経済」は、26 日昼の会合で協議する。安倍首相は、市場に出回るお金の量を増やす金融緩和に加え、政府が公共事業などにお金を使う財政出動と規制緩和などの構造改革に各国が協調して取り組むことで、G7 が世界経済の成長に貢献する姿勢を明確にしたい考えだ。 ただ、ドイツなどは財政支出を増やすことには慎重な姿勢だ。 経済分野では、「パナマ文書」で明らかになった租税回避問題への対応や、環太平洋経済連携協定 (TPP) をはじめとする自由貿易についても話し合う。

その後、政治・外交分野に議題を移し、過激派組織「イスラム国 (IS)」などによるテロや難民問題を協議する。 テロ対策では、航空会社による搭乗者名簿の記録などを各国で共有し、テロリストの入国を未然に防ぐことなどを盛り込んだ行動計画をまとめる予定だ。 日本政府は、南シナ海などに進出する中国を念頭にした海洋の安全保障問題、核実験や弾道ミサイルの発射を強行する北朝鮮問題を取り上げ、G7 で一致して厳しい姿勢を打ち出すこともめざしている。 27 日には、気候変動やエネルギー問題のほか、アジアとアフリカから招いた 7 カ国首脳を加えた拡大会合で、感染症対策などについても話し合う。 (鯨岡仁、asahi = 5-26-16)


ドル強含み、弱い中国指標で過度な悲観は不要の見方も

[東京] ドル/円は 108.92 円付近で強含んでいる。 週末に発表された中国 4 月小売売上高などの経済指標は市場予想に対して弱い数字が並んだ。 リスク回避ムードが強まれば、ドル/円の下押しにつながりかねないが、みずほ銀行のマーケット・エコノミスト、佐々木貴彦氏は「底割れしていく様子はない。 過度に悲観する必要はないだろう」と見ている。

市場では、中国の持ち直し基調の再減速を警戒する見方もあるが、3 月は「前年の数字が軒並み悪かった反動で、強すぎる数字になった面がある(佐々木氏)」という。 今後は、名目実効ベースでの人民元安が輸出の押し上げにつながるかや、不動産市場の腰折れがないかが焦点になりそうだという。 中国国家統計局 (NBS) が 14 日発表した 2016 年 4 月の指標では、固定資産投資、鉱工業生産、小売売上高がすべて予想を下回った。 4 月の鉱工業生産は前年同期比 6.0% 増で、3 月の 6.8% 増から減速。 4 月の小売売上高は前年同期比 10.1% 増で、予想の 10.5% 増に届かなかった。 3 月は 10.5% 増だった。 (Reuters = 5-16-16)


ペーパー会社設立関与、中国が突出 パナマ文書情報公開

国際調査報道ジャーナリスト連合 (ICIJ) は 10 日、タックスヘイブン(租税回避地)の利用実態を示した「パナマ文書」に関し、約 21 万社のペーパーカンパニーに関する情報を公開した。 カンパニー設立に関与した個人や企業の所在地は、中国が約 2 万 5 千人・法人に上り、突出して多かった。 多くの取引が香港やスイスを経由するなど、世界に広がる節税網の実態が明らかになった。

パナマ文書は租税回避地へのペーパーカンパニー設立を請け負うパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した内部資料。 文書を入手した ICIJ が同日、各国当局などが閲覧できるよう、ペーパーカンパニーの名前や住所など主要な情報をデータベース化して、ウェブサイトに公表した。

ペーパーカンパニー設立に関与した個人・法人は世界中に広がる。 カンパニーの役員や株主に名を連ねた個人・法人を住所別でみると、中国のほか、香港が約 1 万 3 千、英国が約 5,000 に上る。 多国籍企業が拠点を置いたり、富裕層が住んでいたりする国・地域が多かった。 日本に住む個人・法人は約 400 で、大手商社とみられる名前も含まれていた。 このうち親族や友人などがペーパーカンパニー設立に関与していた世界各国の有力政治家の名前は、既に ICIJ などの報道で明らかになっている。 アイスランドの首相が辞任したほか、キャメロン英首相やロシアのプーチン大統領などが釈明に追われている。

パナマ文書に含まれるペーパーカンパニー約 21 万社が金融業が発達した香港などを経由して、パナマや英領バージン諸島などの租税回避地に設けられた実態も浮き彫りになった。 顧客は香港、スイスなどにある富裕層向け銀行や法律事務所に依頼。 モサック・フォンセカが手続きを請け負い、租税回避地にペーパーカンパニーを設けていたようだ。 香港、スイスを経由してつくられたペーパーカンパニーはそれぞれ約 3 万 8 千に上る。 (nikkei = 5-10-16)

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「パナマ文書」スキャンダル、早わかり Q & A

3 日深夜に公表された膨大な量のリポートで、約 140 人の公人、企業幹部および著名人と、英領バージン諸島やパナマなどオフショア・タックスヘイブン(非居住者向け租税回避地)にある海外資産との関係が暴露された。 名指しされた一人であるアイスランドのグンロイグソン首相が辞任した。 一方、プーチン・ロシア大統領の報道官は批判を一蹴した。 今後、多くの政治家らに対する圧力が強まる可能性がある。

暴露までの経緯は

国際調査報道ジャーナリスト連合 (ICIJ) によると、76 カ国の 370 人以上のジャーナリストから構成される ICIJ が、何百万点にも上るパナマの法律事務所の記録を入手した。 この法律事務所はオフショアの持ち株会社を専門に扱っていた。 ICIJ はこの記録に基づき、一連の記事を出稿。 これと平行して、一部の報道機関も記事を出した。 ウォール・ストリート・ジャーナル (WSJ) は、記録の内容を独自で検証してはいない。 パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」は不正行為を否定している。

こうした行為は違法か

一般的に、オフショアの会社を持つことは違法でないが、各メディアによると、一部の仲介者は資産や疑わしい取引を租税回避地に隠すことで顧客を保護している。 政治家に関して言えば、その資金の入手経路や使途が大きな問題となる。

不正行為の疑いがある著名人は

これらのリポートによると、プーチン大統領の友人らは少なくとも 20 億ドル(約 2,200 億円)に上る取引に関与していた。 それだけではない。 中国共産党中央政治局常務委員や習近平国家主席の親族もオフショア会社と関係を持っていることが明らかになった。 アイスランドのグンロイグソン首相は、英領バージン諸島にある企業を一部所有していることを公表しなかったとして非難された。

なぜパナマなのか

パナマは長年、オフショア会社の設立場所として知られている。 法制度と銀行インフラがしっかりしていることが理由だ。 70 を超えるスイスの銀行が脱税をほう助していたと米政府に告白した際、多くはパナマ企業を使うスキームに関わっていたと述べていた。

こういった行為は増えているのか、減っているのか

ICIJ がまとめた数字によると、近年、こうしたオフショア会社の利用は急激に減っている。 米政府は、制裁を回避したり、コンプライアンス(法令順守)に問題があったりする国際的な銀行に巨額の罰金を科している。 また、米国ではオフショアの口座にある資金を内国歳入庁 (IRS) から隠すのがますます難しくなっている。 2009 年以降、秘密オフショア口座に関連する訴訟の解決のため、5 万 4,000 人を超える米国の納税者が 80 億ドルを超える金額を支払っている。

もうオフショア口座に資産を隠せないのか

米国でも外国でも、税当局から見えない場所に資産を隠すのは一層困難になっている。 だが配偶者や債権者などから隠れて現金を保有することは今も可能だ。 例えば、米国の納税者が租税回避地にある資産を元配偶者から見えない状態にしていた場合、この人は税申告書でこの口座について報告する必要がある。 だが、その配偶者はこの資産にアクセスできないかもしれない。 その発見と回収を困難にする租税回避地の法律があるからだ。

検察は調査に乗り出しているのか

米司法省は、訴追の対象となり得る汚職の証拠が含まれているかを確認するため、文書を精査していると述べている。 同じような調査は、英国やオランダなどでも始まっている。 また、パナマの検事総長も、問題の法律事務所の調査に乗り出した。 リポートで名前が挙がったプーチン大統領に近い人物の中には、既にロシアのウクライナ介入を受けて実施されている米財務省の制裁対象になっている人もいる。

途上国では

政治的敵対勢力ないし野党が事実上存在せず、国がメディアを強力に支配している国では、今回のリークによる影響はほとんどないかもしれない。 それ以外の国では、当局者によるオフショア会社の保有が不適切な行為とみなされる可能性がある。

政策は変わるか

オバマ大統領は 5 日、多国籍企業による課税逃れに関する協議の中で、パナマ文書に言及した。 この問題には、主要 20 カ国・地域 (G20) が集まる国際的な会議で大きな注目が集まる公算が大きい。 さらなるリポートと情報開示が続けば、法律や手続きの厳格化を求める市民の抗議が拡大する可能性があるほか、スキャンダルに関与した政治家や当局者の失脚につながるかもしれない。 (William Mauldin and Laura Saunders、The Wall Street Journal = 4-6-16)


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