ヤマト、中国に越境宅配 ネット通販 2 位と提携

【北京 = 太真理子】 ヤマトホールディングス (HD) は中国インターネット通販 2 位の京東集団(JD ドットコム)と提携する。 中国の消費者がネットで注文した日本製品を日本から最短 4 日で消費者の手元に届ける。 中国では購買力を持つ中間層が急成長し、化粧品や消費財などで品質の安定した日本製品の人気が高い。 国境をまたいだ宅配サービスの提供で日本企業の商機が広がりそうだ。

ヤマト HD の国際物流子会社、ヤマト グローバル ロジスティクス ジャパン(東京・中央)が京東と組み、5 月にも中国向け「越境 EC (電子商取引)」事業を始める。 中国のネット通販大手と日本の物流大手が越境 EC 分野で組むのは初めて。

中国で煩雑な税関手続きなどをヤマトが代行することで宅配期間を短縮する。 日本国内の集荷から中国の拠点までの輸送をヤマトが一括して手がけ、中国国内はヤマトの提携先で全土に配送網を持つ中国郵政集団(チャイナポスト)が担う。 これまでは現地通販サイトに出店する企業が個別に宅配会社に配送を依頼することが多く、注文から配達まで平均 8 日かかっていた。

ヤマトが中国・上海に持つ保税倉庫を活用することで、付加価値税や輸入関税など中国に商品を持ち込む際のコストを減らす。 一般的な化粧品では、企業が個別に宅配業者を手配する場合と比べて配送コストを 2 - 3 割抑えられるという。 ヤマトは京東を突破口にして中国ネット通販業界での提携先を増やす考え。

中国では購買力を持った中間層が急拡大しており、海外製品を手軽に購入できる越境 EC 市場の拡大が続く。 花王やライオンなど現地通販サイトに出店する日本企業も増えている。 日本からの販売額は 2015 年に訪日中国人消費と同規模の 8 千億円前後に達したもよう。 18 年には 1 兆 4 千億円になるとの予測もある。

京東は中国のネット通販市場で 2 割のシェアを占め、最大手のアリババ集団に次ぐ 2 位。 日本商品の人気の高まりを受け、日本商品専用サイトを設けるなどしている。 京東集団のネット通販事業部門を率いる沈皓瑜氏は「世界で最も信頼感がある日本製品の需要拡大は続く」と強調する。 ヤマトと京東は日本企業の京東通販サイトへの出店支援でも協力する。 京東は出店して間もない日本の中小企業などの広告を交流サイト (SNS) で無料発信して販売を後押しする。

中国のネット通販サイトで商品を売り込む日本企業には中国政府の産業政策の変化も追い風だ。 中国財政省などは 8 日、越境 EC にかかわる課税方式を見直す予定。 免税扱いだった個人輸入の貨物が減り、一般貿易のルールに基づき納税していた外国企業との公平感が強まるとみられている。 新たな課税方式はニセ物対策の強化にもつながるため、京東などの「正規販売店」と組む日本企業が一段と有利になるとの見方もある。

新たな課税方式では一部の高額品は実質減税となる見込み。 化粧品や日用雑貨など約 300 種類の商品を中国のネット通販サイトで販売するマツモトキヨシホールディングスは「高額商品を扱うチャンス」と期待する。 (nikkei = 4-6-16)


日本は停滞していなかった! 中国人は GDP の数値で有頂天になるな = 中国

バブル崩壊後の日本経済を表現した言葉に「失われた10年」というものがある。 これだけ長期間にわたって経済成長が停滞したことは、バブル崩壊の爪あとの深さを物語るものだが、近年は「失われた 10 年」ではなく、「失われた 20 年」であるとの指摘もある。 日本経済は今なお成長軌道に戻ることができていないが、中国メディアの捜狐はこのほど、「中国が日本衰退を叫ぶ背後で、日本は黙々と未来に向けた投資を行っている」と論じる記事を掲載した。

トムソン・ロイターが世界の革新企業や機関のトップ 100 を選出する 2015 年度の「Top 100 グローバル・イノベーター」によれば、日本からは世界最多となる 40 社が選出された。 日本経済全体としてみた場合は成長が停滞しているものの、競争力のある企業は今なお健在であることが見て取れる。 記事はまず、多くの中国人が「日本経済は衰退に向かっており、革新能力も失いつつある」と考えていると伝える一方、「Top 100 グローバル・イノベーター」に日本企業 40 社が選出されたことは「日本企業が未来への投資を続けていることを意味する」と主張。

さらに、経済の実力というものは GDP だけで推し量れるものではないとし、技術面の発言力や産業全体を左右できるだけの影響力こそが実力であると指摘。 中国は日本を抜いて世界第 2 位の経済大国となったが、それは単に母数の規模が大きいだけとも言える。 そのため、「経済の実力という点で見た場合は中国人はまだまだ誇るべきではない」と論じている。

日本の電機メーカーが近年、中国企業に事業を買収されるケースが相次いでいるが、これについても「日本企業の革新能力がなくなっているのではない」と指摘。 コモディティ化が進んだ家電市場から進んで撤退し、より付加価値が高く、今後の成長も見込める有望な分野へと事業領域を変化させていると指摘した。 つまり日本の「失われた 20 年」は構造転換によって停滞しているように見えるだけであり、実際には日本企業は成長分野に向けて革新を続けていると論じている。 (SearChina = 3-31-16)


日本にいて一番すごいと思うのは、技術ではなく「生きてるって感じられること」 … 在日中国人の声

日本を旅行で訪れた、あるいは日本で生活している中国人が「日本ってすごい」と感じる部分があるとすれば、大体は進んだ技術と行き届いたサービス、モラルの高さといったところだろうか。 中国メディア・海外網は 11 日、日本での生活でもっとも印象深いのは「自分が生きていると感じられることだ」とする文章を掲載した。

文章は、「日本は先進国であり、科学技術が優れているのは言うまでもない。 しかし、もっとも深い印象を受けるのはやはり人の心優しさであり、自分が『生きている』と本当に感じさせてくれることだ」としたうえで、日本の優れた点を列挙した。 まず挙げたのは、弱者に対する思いやり。 電車では車いすの人が利用しやすい設備が作られているのみならず、駅員が付き添って乗降者のアシストをしてくれると紹介。 また、店舗やホテル、交通機関における盲導犬の入場に対する理解も進んでいることを伝えた。

続いて、「おひとりさま」にとって非常に優しいことを挙げた。 中国ではレストランは社交の場であり、1 人で入ると周囲からじろじろ見られるのに対し、日本は「1 人客にもっとも友好的な国」とし、1 人用の定食メニューが豊富なうえ、1 人用の席も多く用意されていると紹介している。 また、街の清潔さ、非常口などの避難経路指示、田舎の小さな店でも価格表示がされているなど細かい部分に気を使っていること、自動販売機をはじめとするインフラがよく整っていることを併せて示した。

そして最後に、日本での生活は中国の古典「礼記」に描かれた「大同社会」を想起させるとし、「われわれの先賢が渇望した大同社会が今では、異国の島国で根付いているようだ」と評した。 生活における不条理、人間関係における不満などなど、日本で生きていくなかでも「生きにくい」と感じる場面は多々ある。 ただそれは中国や外国における「生きにくさ」とは違うものかもしれない。 ある人によっては「中国の方が楽に生きられる」と考える人もいるだろう。 「生きている」と思うポイントがどこにあるかによって、答えは変わってくるのである。 (SearChina = 3-14-16)


中国「親しみ感じない」、過去最高 83% 内閣府調査

内閣府による今年の外交に関する世論調査で、中国に「親しみを感じない」と答えた人が過去最高の 83.2% となった。 中国に対する親近感の傾向は、比較可能な 1978 年の調査から 40 年弱で完全に逆転。 国民感情の冷え込みが固定化している。 調査は 1 月 7 - 17 日、全国の成人男女 3 千人に面接で行い、1,801 人 (60%) が回答した。

中国に親しみを感じないと答えた人は尖閣沖漁船衝突事件があった 2010 年に急増し、その後も高水準で推移。 今回は過去最高だった前回 14 年の 83.1% をわずかに更新した。 中国に「親しみを感じる」人は 14.8% で、4 年連続 20% を下回った。 中国への「親しみ」は 80 年代前半まで 70% を超えることが多く、米国を上回る年もあった。 ところが、天安門事件の起きた 89 年に 20 ポイント近く下落、00 年代に中国で相次いだ反日デモの影響などで下がり続け、12 年以降はロシアをも下回っている。

現在の日中関係について、85.7% が「良好だと思わない」とする一方、今後の両国関係の発展を 73.3% が「重要だと思う」と回答。 「思わない」の 22.5% を大きく上回った。 年齢別では、20 - 40 代の若手・中堅層に関係を重視する傾向が強かった。

一方、韓国への「親しみ」は 33.0% で、過去最低だった前回に比べ 1.5 ポイント改善した。 昨年末に慰安婦問題で日韓が合意したが、国民感情への影響は限定的だったようだ。 米国への「親しみ」は 84.4% で、11 年以降 8 割超を維持している。 北朝鮮についての関心事項を複数回答で聞くと、拉致問題 (83.5%)、核問題 (76.1%)、ミサイル問題 (60.5%) の順だった。 調査が 1 月の核実験直後に行われたこともあり、ミサイル問題への関心は前回の 54.0% から伸びた。 結果の主な内容は、14 日から内閣府ホームページに掲載する。 (安倍龍太郎、asahi = 3-12-16)


無資格で爆買いガイド容疑 中国人男女、報酬 7 千万円か

就労資格がないのに中国人観光客のガイドをして不正に報酬を得ていたとして、福岡県警は、中国人のガイドの男女 2 人を出入国管理法違反(資格外活動)の疑いで逮捕、書類送検した。 県警への取材で 3 日わかった。 2 人は免税店からあわせて 7,600 万円の報酬を得ていたという。 県警は同日、2 人にガイドを委託した旅行会社や、報酬を渡していたとみられる免税店の運営会社など計 6 社(福岡市など)の役員らについても、同法違反(不法就労助長)容疑で書類送検した。 全員容疑を認めているという。

県警によると、女 (31) は昨年 5 - 11 月、日本での就労資格のビザがないのに、中国人観光客らを福岡県の免税店に案内するなどして、免税店から約 3 千万円を得ていた疑いがある。 今年 1 月に逮捕され、2 月に罰金 50 万円の略式命令を受けて国外退去になった。 男 (25) は 2014 年 9 月 - 15 年 9 月、同様に計約 4,600 万円の報酬を受け取っていたとして今年 2 月に書類送検された。 2 人はボランティアの名目でガイド役をしていたが、実際には旅行会社に委託され、免税店から報酬を得る仕組みだったという。 (井上怜、asahi = 3-3-16)


日本と言えば「爆発」を連想する風潮が浸透中 = 中国メディア

中国メディアがこのところ、日本絡みの記事で見出しに「爆」の文字を使うことが増えている。 当初は、日本で用いられるようになった、中国人観光客が「爆買い」との表現を、中国メディアが「爆買」と紹介したことだが、現在までに「爆紅」、「爆満」など、さまざまな「爆」の表現が多用されるようになった。 中国語の「紅(ホン)」には、「人気がある」との意味がある。 したがって、「爆紅」は、「爆発的人気」の意だ。 例えば女流棋士の山口恵梨子さんの人気について、「日本の美女棋士が『爆紅』」と紹介された(2 月 17 日付騰訊)。

中国の大型漁船が日本の排他的経済水域 'EEZ) のすぐ外にまで大挙して押しかけ、小さな魚まで取り尽くす目の細かい網を使って操業している問題では、中国漁船の行為を「爆漁」と表現した(2 月 22 日付環球網)。 安全保障問題で、政府方針に反対する人々が 2 月 21 日に国会周辺で抗議デモを行った際には、反対運動が「再爆」と表現した(2 月 22 日付捜狐)。

米国のファストフード・チェーンが、猿のキャラクターを採用する際に、中国のデザインと日本のデザインが競い、中国のデザインが採用された記事では、中国のキャラクターが日本を「完爆」と紹介。 「完全勝利」と強調したかったようだ(2 月 5 日付捜狐)。 中国人旅行客で、日本のホテルの客室稼働率が上昇していることを紹介する記事では、「旅館もホテルもみな『爆満』」と表現した。 さらに、日本の観光地に中国人が殺到することは「塞爆」、「擠爆」と表現した。 「塞」は「場所をふさぐ」、「擠」はつめかけるの意だ。

日本と特に関係ない記事でも「爆」の文字が使われるが、日本絡みの記事で「爆」が特に多くなる傾向がある。 直接のきっかけになった「爆買」は、中国語の語順としては成り立たない。 見慣れない用法だっただけに面白味を感じ、日本絡みの記事の場合には「爆」と結び付けようとの意図が働くようだ。 (SearChina = 3-1-16)


雑誌「在日本」 中国人留学生の見たこの国の文化 … 中国で創刊

日本を紹介する中国の雑誌「知日」の主筆を務めた神戸国際大の毛丹青教授 (53) = 兵庫県西宮市 = が 3 月、在日中国人の目を通して見た日本の伝統や文化を伝える雑誌「在日本」を中国で創刊する。 作家の村上春樹さんの小説の翻訳なども手掛ける毛教授は「観光や買い物で日本を訪れる中国人は多いが、日本人の精神や文化の奥深さも知ってほしい」と話している。

「在日本」は毛教授が編集長を務め、日本に住む中国人留学生らが執筆する。 上海を拠点に隔月で発行し、1 冊 39 元(約 700 円)。 創刊号の特集は「日本の 88 元素」で、「わびさび」、「丼」、「和洋折衷」、「結納」などを取り上げている。

「地震」では、四川大地震を経験し、阪神大震災の被災地・神戸に留学した男子学生が執筆した。 神戸市内の区役所で中国語で書かれた地震発生時のための資料を渡され、街には避難場所を示す看板があることを紹介。 災害時には無料に切り替わる自動販売機についても記している。 「多難興邦(難事多くして国栄える)」という中国の言葉を引用し、防災意識の向上を訴えている。

一方、2011 年創刊の「知日」は、中国人が日本を訪れるなどして取材している。 「妖怪」、「制服」、「美術館」などの切り口で幅広い分野を紹介し、平均販売部数は 10 万部、漫画の特集号は 50 万部が売れる。 「在日本」は「知日」で得た読者層や訪日経験のある人々がターゲットという。 創刊告知のために公開したインターネット動画「遊日通道」では、「水都大阪」、「村上春樹さんと阪神間」などを取り上げ、いずれもアクセス数が 100 万を超えた。 6 月には日本語版を日本国内で出す予定という。

毛教授は「観光客はすしを食べて『おいしい』で終わるが、留学生は『包丁の芸術』を感じるようになる。 そんな立体的な日本の姿を発信したい。」と説明している。 (石川勝義、mainichi = 2-20-16)


日本のコンビニエンスストア、なぜ国外進出で成功できたのか = 中国

中国語でコンビニエンスストアは「便利店」と表記する。 文字どおり「便利な店」ということだ。 しかし、日本人の思う「便利」が、中国人の求める「便利」とは必ずしも一致しない。 だが、日本のコンビニエンスストアのなかには、中国をはじめとする国外市場で成功を収めた企業もある。 中国メディアの贏商新聞はこのほど、日本のファミリーマートは国外の市場で成功を収めることができたと伝え、国外進出に成功した理由を分析した。

記事は冒頭で、日本のコンビニエンスストアは 1973 年に米国から日本に導入されたものと紹介。 その後、日本で発展を遂げ、日本のコンビニエンスストアは「Made in Japan」として海外展開がなされたと説明している。

記事はファミリーマートと他の同種企業を比較しつつ、ファミリーマートの成功の秘訣を挙げた。 1 つは合弁企業への出資割合だ。 ファミリーマートは他社に比べ、出資割合が高くない。 その結果、進出先の需要に合致した経営が行いやすくなっていると論じた。 それには以前の失敗が生かされているとし、記事は「台湾市場に進出した時、日本の商品を日本の陳列方法で店内に置き、地元に受け入れられなかった」と日本方式をそのまま導入しても成功しない事を既に学んでいたと説明している。

また、商品を地元の習慣を考慮しつつ提供している点なども挙げている。 記事は最後にファミリーマートの海外進出成功は「Made in Japan」の効果だと結んだ。 中国人には中国人の習慣や価値観が存在する。 日本と比べて優れている、あるいは劣っているといった問題ではなく、つまりは「郷に入っては郷に従え」ということだろう。 海外進出を考える時には地元の消費者にとっての「便利」や「利益」を見極める必要があるということだ。 (SearChina = 2-18-16)


航空機輸出、日中が火花 燃費の MRJ か安さの ARJ か

日中の攻防 - 中小型旅客機

記事コピー (2-17-16)


日本人が自国に誇りを感じる 10 の瞬間

中国メディアが「独断と偏見」交えて大絶賛を連発

中国メディアの捜狐は 10 日、「日本人が自国に誇りを感じる 10 の瞬間」と題する解説記事を掲載した。 政治や経済、科学技術には関係なく、「日本の文化」から 10 を選んだ。 中には「本当にそうだろうか?」と思える場合もあるが、いずれに対しても「大絶賛」を連発した。

冒頭で紹介したのは、「芸妓の伝統に身をゆだねる時」だ。 「日本では伝統的な芸妓文化がしっかりと伝えられている。 これは、われわれも学ぶべきだ。」と主張した。 伝統文化の保存を誇りに思う日本人は多いだろうが、なぜ「芸妓」に焦点を絞ったのかは不明。 ただ、記事担当者自身による「これは美しい。 すばらしい伝統だ。」と評価する気持ちは伝わってくる。

次に、日本人は「バラエティー番組を見て、日本人であることを誇りに思う」と論じた。 たしかに、番組の面白さに引きこまれることはあるだろうが、日本と外国を比較して日本のすばらしさを強調する内容でもないかぎり、「日本人としても誇り」に直結するとは思えない。 中国では時おり、日本のバラエティー番組の創意工夫が称賛されることがあるので、記事担当者に「日本人は自慢に思っているはずだ」との先入観があったのかもしれない。

次には「スポーツの国際大会で自国選手が優勝した際」とした。 これには「異存ない」と言いたいところだが、日本人が「日本人に生まれたこと」に誇りを感じるのはむしろ、例えば「惜しくも敗れた自国選手に、多くの日本国民が健闘を称えた」と言った、勝敗だけにとどまらない同胞としての心のつながりを感じるといったシーンではなかろうか。

記事は次に「日本のアニメを見た時」と主張した。 続けて「日本のアニメには人生や社会に対する見方が多く盛り込まれている」として、内容の深さを称讃した。 やはり、記事担当者の「称賛」という成分が多く盛り込まれた紹介だ。

次は「祭りに参加した時」とした。 これは、日本人にも比較的納得しやすいかもしれない。 祭りの高揚した雰囲気が好きで「日本人に生まれてよかった」と思う人も珍しくないだろう。 記事は日本の祭りを「団結心を強め、社会的な教育であり、伝統文化やよいしきたりを伝える」などと大絶賛した。 そして「夏の花火」を紹介。 伝統的な浴衣を着る人が多いことも紹介し、夏の夜を美しく彩る活動で、さまざまな夜店も出ると紹介した。

記事は次に「落し物が出てきた時」を挙げた。 「日本で遺失物が持ち主に戻ることが多いことには大いに驚く」、「ただ戻るだけでなく、迅速に、心を込めて、完全な形で戻ってくる」と紹介。 「遺失物が持ち主に戻った心温まる話も紹介されることもある。 (これらは)日本人の誇りだ。」と主張した。 「落し物関係」については、多くの日本人も同感するかもしれない。

その次は「茶道をした時」と論じた。 たしかに、日本の伝統芸術であり、物やパフォーマンスというよりも「心映えの美」を追求する茶道を誇りに思う日本人は多いだろう。 ただし、現在も根強い人気があるとはいえ、自分も茶会に足を運ぶ人は、それほどまでには多くないのではなかろうか。

最後に挙げたのが「古都を観光した際」、「日本料理を食べた際」だ。 確かに、古い時代に中国などから文化や技術を取り入れ、それを消化し、その結果を現在にまで残したことは、多くの日本人にとって誇りだろう。 日本料理(和食)を食べた際も、日本人としての誇りを感じる人は多いだろう。 もっとも、ほんとうに美味しい和食を食べた際には、誇りを感じるよりも先に、「ああ、日本人に生まれてよかった」と、感動や感謝の気持ちが先に沸くような気もするが。

記事全体を読むと、日本人の気持ちに対する「独断と偏見」もあるようだが、いずれにせよ「日本人が育み、今に伝える文化」を高く評価していることは間違いない。 中国人一般の日本文化に対する評価はかつて、決して高くなかった。 「中国から学んだ。 近代以降は欧米から輸入した。」程度にしか認識していない人も多かった。 若い世代を中心に、中国人の「対日本文化観」は現在、大きく変化しつつある。 (SearChina = 2-13-16)


日本の「匠の文化」は実は単純、しかし精神を骨の髄まで浸透させる必要がある = 中国メディア

中国メディアの新浪網は 2 日、「匠の文化 : 日本人の国宝」と題する文章を掲載した。 同文章は日本の「匠の文化」または「職人文化」はたった 2 つの原則で成立していると紹介。 しかし日本ではその原則が歴史を通じて人々の骨の髄まで浸透している点が特異との見方を示した。 新浪網は同文章を、「コレククション」のカテゴリーに掲載した。 日本の工芸品に関心を持つコレクターの増加を反映したものと理解できる。

文章は冒頭で、日本が自ら崇拝する「匠の文化」は、日本社会を反映に導くための大きな支えになったと紹介。 そして、「匠の文化」の背景には、「厚い歴史が存在」すると論じた。 「人間国宝」については 1955 年の制度設立と説明。 全国から随時、古典芸能の演者や技能保持者が随時選ばれるが、厳格な審査の上で得ればれると紹介し、「国家は人間国宝の制度のために大量の資金を投入し、技能の喪失を防いでいる」と論じた。

なお、中国にも日本の「人間国宝」に似た制度がある。 技能者に対する「1 級」、「2 級」、「3 級」の等級だ。 日本と異なるのは、伝統的技能だけでなく、クラシック音楽の演奏家、アナウンサーといった広い範囲で技能者の等級制度が設けられていることだ。 「1 級」の称号は、日本の「人間国宝」とほぼ同じと考えてよい。 ただし、中国の技能者の等級については、拝金主義の横行とともに、ジャンルによっては「コネとカネで取りやすくなった」と話す人もいる。 新浪網の文章は、日本の人間国宝について「審査が厳格」と強調した。

文章は続けて、日本の「匠の文化」について、「ポイントはたった 2 つ」と論じた。 「職業を敬うこと」と「真面目であること」という。 そして、この 2 つのポイントから成る「匠の文化」を、社会全体が承認していることが、特に重要と指摘した。 文章は、日本では「職業を敬うこと」と「真面目であること」が人々の骨の髄まで浸透して、もはや「常識になっている」ことが特異との見方を示した。

そして、「匠の文化」が根付いた日本では、自らの技にプライドを持つと指摘。 だから、自分の技に対する要求を厳しくしていき、面倒さを厭わず、努力を惜しまず、「すばらしいレベルに達しても、さらにその上を求める。」と紹介した。 さらに日本では、職人のプライドにより、自分の仕事に責任を持たなかったり、質の悪い品を世に出すことは「恥」と考えられるようになったと説明。 文章は、日本の工芸品は健全な美があるとして「美術品は理想に近づくほど美しくなる。 工芸品は現実に適応するほど美しくなる。」と論じた。 (SearChina = 2-5-16)


かつては熱烈歓迎も、今は冷淡 ・・・ 中国の学校支援続ける日本人が感じた変化

中国メディア・新浪は 25 日、日本の民間人による中国貧困地域の小学校への資金援助について、かつて「熱烈歓迎」していた中国側の態度に変化が生じていることについて紹介する記事を掲載した。 記事は、長きにわたり私財をなげうって中国の貧困地域の小学校に援助を施してきた日本人男性の話を紹介。 かつては自ら支援した中国の学校を訪れると、子どもたちの嬉しそうな表情を見ることができたほか、校長や教員から繰り返し「ありがとう」と言われたと語ったことを伝えた。

その一方で、「日中間の実力構図に変化が生じるとともに、このような民間支援が日増しに困難になっている」とし、支援した学校に手紙を何度送っても返事を寄越さない。 はるばる学校を訪問しても「学校側が子どもたちに会せようとしない」と中国側の対応に変化が出てきたことを説明したと紹介した。 そのうえで、この男性が「日中両国が政府レベル、政治レベルでいかに対立しようとも、民間の交流を途絶えさせてはならない」、「それぞれが自分の国を愛するのは当然。 しかし、視野をもっと広く持ち、相手のことを真面目に学び、理解しなければならない。」と語ったとした。

国が豊かになる傍らで、依然として多くの地域における貧困問題が解決できていないのが中国の現状だ。 かつては国も力不足であったため、日本を含む外国からの支援を素直に受け入れてきたが、現在では「こんなことは、他国に頼らずとも自国内で解決する」という考え方に変わってきているのかもしれない。 (SearChina = 1-27-16)


くまモン、にせモン許さないモン 中国当局が初摘発

そっくりだけど、にせモン - -。 熊本県は 22 日、県の許諾を得ずにゆるキャラ「くまモン」関連のグッズを製造した中国の業者が摘発され、現地当局から罰金命令を受けたと発表した。 くまモングッズの「偽物」に対する行政処分は国内外で初めてという。 県によると、摘発されたのは中国浙江省義烏(ぎう)市のおもちゃ会社「義烏衆吉玩具有限公司」。 昨年 6 月 28 日付で同市の市場監督管理局が違法所得約 4 万 3 千円や商品の没収、罰金約 13 万 5 千円の支払いを命じた。 工場からは約 2 万個のクリップや約 950 個のバッグ、人形やブランケットなどが押収されたという。

くまモンの著作権は県に帰属し、利用には許諾が必要。 海外で未許諾商品が増えたため、県は 2014 年 10 月からインターネットで調べはじめ、偽物の製造、販売業者に警告文を送ってきた。 警告した商品は約 120 点にのぼるという。 今回は昨年 3 月に発見。 数が多く悪質だとして、初めて現地当局に通報した。 当局に対し、業者側は「絵柄はオフィシャルサイトから取った」などと説明したという。 (籏智広太、asahi = 1-22-16)


日本で「鉄道」が愛される理由 中国メディアが考察

日本を訪れる中国人にとって奇妙に思える事柄の 1 つに、鉄道ファンの多さがあるかもしれない。 どうして日本には鉄道を熱愛する人がこんなにたくさんいるのか ・・・。 中国メディア・捜狐は 7 日、その謎を解くヒントとなるような紹介記事を掲載した。

記事は、北海道遠軽町にある石北本線の秘境駅・上白滝駅のエピソードを紹介。 現在同駅を利用しているのはある女子高校生 1 人のみで、この女子高生が卒業する今年 3 月に利用者の減少から廃駅となる予定であると伝えた。 また、北海道最古と言われる木造平屋の駅舎や、「お別れ」を知らせる張り紙の画像を掲載、そのノスタルジックな趣に感動する日本のネットユーザーの声も紹介した。

さらに、日本にはこのような古びた小さな駅が多く残っているとし、無人化した駅で理髪店が営業している福井県小浜市の小浜線加斗駅、古い民家を思わせる静岡県の大井川鉄道・川根温泉笹間渡駅、木造の旧駅事務室でラーメン屋が営業している北海道・釧網本線の止別駅の様子を写真付きで伝えた。 そして最後に、「日本に存在する多くの『鉄道オタク』が、鉄道の撮影や列車の音に夢中になるのを見て『何がそんなに面白いのか』と理解できない人は多い」としたうえで、「夢中にさせているのは実は、自由、自然、愛や人情味へと向かう心情なのではないかと思う」との考え方を示した。

鉄道の魅力に引き込まれる理由は決して 1 つだけではなく、それぞれに異なる動機や思い入れを持っているに違いない。 しかし、日本の発展を担い、生活に根付いてきた鉄道が見せるさまざまな姿に対して、人情的な思いを抱くというのも確かに魅力の 1 つとして存在するのではないだろうか。 (SearChina = 1-11-16)


ヨーカ堂、中国に大型店続々 日本では 40 店の閉鎖検討

日本では最大 40 店舗の閉鎖を検討する総合スーパー大手のイトーヨーカ堂が、中国内陸にある成都市で 2016 年以降、大型店を相次いでつくる。 成都には、日本と中国にある約 200 店すべてのなかで売り上げトップの双楠店があり、知名度と好調な販売戦略を生かしたい考えだ。

成都では現在 6 店を展開するが、16 年に商業施設内に、17 年には創業者の名前を冠した大型店「伊藤広場」を出す計画だ。 中国総代表の三枝富博さん (66) は「四川省だけでも、人口は約 8,600 万人。 まずはひとつの地域の圧倒的なシェアを握る戦略を進めたい。」と意気込む。 グループのセブン-イレブンも進出しており、自社ブランド商品の展開などを強化する。

イトーヨーカ堂は 1996 年に、中国の外資系小売りで初の全国展開の認可を受けた。 首都・北京市では苦戦が続き、反日デモで店を壊されたこともある。 だが、成都 6 店の今年の売上高は、前年より 3% ほど伸びる見込み。 有機農法の野菜や果物がよく売れるといい、肉の売れ筋も豚中心から牛も増えているという。  成都市民の食の安心・安全への意識は高く、スマートフォンをかざすと農産物の生産地情報が表示されるしくみも入れた。 三枝さんは「豊かになった消費者のニーズの変化に対応するのが小売りの使命」と話す。 (西尾邦明、asahi = 12-26-15)


拘束の日本人 2 人逮捕 中国当局、「スパイ行為」容疑

中国で「スパイ行為」の疑いで日本人 4 人が相次いで拘束された事件で、上海と北京で 6 月に拘束された日本語学校幹部の女性と元会社員の男性が、中国当局に逮捕されたことがわかった。 すでに逮捕されている男性 2 人と合わせ、拘束されたすべての日本人が今後起訴され、法廷でスパイ行為について追及される可能性が出てきた。

改善基調にある日中関係を背景に、男女 2 人は釈放されるのではないかとの観測もあったが、中国当局は 2 人の行為を重大視した模様だ。 国家の安全を脅かす「スパイ行為」に厳しく対応する当局の姿勢が改めて示された形だ。 日中関係筋によると、上海で拘束された女性は、中国の刑事手続きの一つで容疑が固まれば逮捕に至る「刑事拘留」となっていたが、先月逮捕された。 北京で拘束された男性は、ホテルなどで軟禁状態におかれて調べを受ける「居住監視」の状態にあったが、今月逮捕された。 (金順姫、asahi = 12-25-15)

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中国・上海で日本人が当局に拘束、拘束者は 4 人に

中国・上海で日本人の女性が中国当局に拘束されていたことが分かりました。 中国では今年に入って日本人 3 人がスパイ容疑で逮捕・拘束されていて、これで 4 人目となります。 日本政府関係者によりますと、今年 6 月、中国・上海で 50 代の日本人女性が中国当局に拘束されたということです。 詳しい容疑は分かっていませんが、スパイ活動を行ったとして拘束された可能性があります。 (TBS = 10-10-15)


ビックカメラと格安航空など中国企業グループが提携

日本を訪れる中国人が増加するなか、家電量販大手のビックカメラと格安航空会社などを傘下に持つ中国の企業グループが、資本・業務提携すると発表し、中国人旅行客の需要を取り込もうと日中の異なる業種どうしが提携する新たな動きとして注目されます。 これは家電量販大手のビックカメラと、中国の格安航空会社などを傘下に持つ春秋グループが 23 日、上海で記者会見して明らかにしたものです。

それによりますと、ビックカメラは春秋グループ傘下の春秋航空日本が行う増資に 10 億円を出資するとともに、店舗で春秋航空の宣伝を行い、日本での知名度向上を図るということです。 一方、春秋グループは空港のカウンターや春秋航空の機内でビックカメラのキャンペーン情報などを宣伝するほか、乗客や傘下の旅行会社の利用客に割引クーポン券を配布して来店を促すということです。

日本を訪れる中国人が増加するなか、家電量販店をはじめとする国内の小売業界はいわゆる爆買いと呼ばれる旺盛な消費を取り込もうと中国人向けの販売の強化を図っています。 日中の異なる業種どうしが手を組む今回の提携は中国人旅行客の需要を取り込むための新たな動きとして注目されます。 (NHK = 12-23-15)


政府、中国の緑化支援に 90 億円計上へ 今年度補正予算

政府は今年度補正予算案として、中国の緑化を支援する「日中植樹支援事業」に 90 億円を計上する方針を固めた。 中国への支援に対し、自民党内からは「形を変えた ODA (政府の途上国援助)だ」などの反対論もあったが、自民党の二階俊博総務会長らが推進してきた事業でもあり、認められることになった。

事業は、緑化に取り組む中国を支援するため、1999 年に小渕恵三首相が 100 億円の拠出を指示して始まった。 中国で植林・緑化に携わる日本の民間団体に助成しているが、今年度末の残高が 10 億円ほどになる。 補正で 90 億円が計上されれば、「満額」の 100 億円まで戻る。 (奈良部健、asahi = 12-17-15)


革命いまだならず … 爆買いされるほどの日本製品から学べ = 中国

年末恒例の「2015 ユーキャン新語・流行語大賞」が発表され、中国人観光客が大量に日本で消費するという意味の「爆買い」が選ばれた。 爆買いという言葉そのものは以前から存在したが、円安や日本政府による免税対象品目の拡大などを背景に、近年は中国人旅行客が大挙して日本を訪れるようになっている。 中国メディアの新浪は 7 日、「革命はまだ成功していない。 今後も企業努力を続けなければいけない。」と題する記事を掲載し、中国製品は飛躍的に品質を向上させているとしながらも、爆買いされるほどの日本製品から学び、企業に成長を続けるよう促した。

記事は中国人旅行客による爆買いについて、春節(旧正月)期間中に香港に代わるショッピング天国として日本を訪れた中国人が増えたことがきっかけだと紹介。 その後、連休期間中だけでなく、今では日常的に爆買いが見られるようになったとし、日本の小売業界は 1 年中、売り上げを心配することはなくなったと主張、日本での経済効果の大きさを指摘した。

中国のネット上では爆買いが批判される傾向にあるが、「批判を気にするどころか、彼らのレシートはどんどん長くなり、鉛筆のような小さなものから炊飯器のように大きなものまで、買い物の対象範囲も広がった」と紹介。 愛国精神に欠けると批判するより、わざわざ遠くの日本まで行っても買いたいと思うほど、日本製品が魅力的なのはなぜかを考えるべきだと主張した。

では、日本製品にはどのような魅力があるのだろうか? 記事は「細部にまで気遣いが見られること」を挙げた。 例えば、柔らかくて皮膚に優しい絆創膏や、柄の部分に名札がついた傘など、消費者の立場に立って設計してあるから日本製品は中国人にとって「見ただけで欲しくなる」ものなのだという。 これと比較して中国製品については、「もう少しの努力」と評している。 「なぜ日本のメーカーがここまで精密で丈夫な製品を作れるのか、なぜこんなにも細やかなデザインができるのかを考える」ことで、レベルの高い商品を造れるメーカーになるための答えはおのずと見えてくるはずだと結んでいる。 (SearChina = 12-13-15)


最優秀賞は張晨雨さん 中国人の日本語作文コンクール

第 11 回「中国人の日本語作文コンクール(主催・日本僑報社、メディアパートナー・朝日新聞社)」の表彰式と受賞者のスピーチ大会が 12 日、北京の日本大使館で開かれた。 日中関係が改善基調に入るなか、中国各地からの応募は過去最多の 4,749 本に上った。 最優秀賞(日本大使賞)には、大阪で働く叔母との日本語をめぐるやりとりを書いた山東政法学院の張晨雨(チャンチェンユイ)さん (20) の「好きやねん、大阪」が選ばれた。

表彰式で、木寺昌人大使は「日中両国の未来を担う若い人々に必要なのは感動の共有です」とあいさつ。 張さんは「日本でファッションの仕事をするため、これからも日本語の勉強を続けていきたい」と喜びを語った。 主な受賞者は以下(敬称略)。

【最優秀賞】 張晨雨(山東政法学院)

【一等賞】 雷雲恵(東北大学秦皇島分校)、莫泊因(華南理工大学)、張戈裕(嶺南師範学院)、翁暁暁(江西農業大学南昌商学院)、陳静●(= 王偏に路、常州大学)

【二等賞】 陳星竹(西安交通大学)、孟瑶(山東大学〈威海〉翻訳学院)、王林(武漢理工大学)、羅暁蘭(国際関係学院)、任静(山西大学)、王弘(楽山師範学院)、于潔(揚州大学)、郭可純(中国人民大学)、劉世欣(南京理工大学)、霍暁丹(黒竜江外国語学院)、馮楚●(女偏に亭、広東外語外貿大学)、周佳鳳(江西科技師範大学)、王c博(遼寧大学)、許芸瀟(同済大学)、鄒潔儀(吉林華僑外国語学院) (asahi = 12-12-15)


世界の工場、中国に陰り 「労働コスト」日本を逆転

「世界の工場」と呼ばれる製造業の拠点である中国の地位に陰りが見えている。 神戸製鋼所は米国で自動車部品の増産投資を決める一方、中国での投資を延期。 カジュアル衣料大手のアダストリアは生産の中国比率を 9 割から 7 割に引き下げる。 中国市場の成長鈍化が影響しているほか、人件費の上昇も影を落とす。 表面的な人件費に労働生産性も加味した「単位労働コスト」では日本との逆転現象も起き、日本企業の国内回帰も広がりつつある。

神戸製鋼は衝撃を吸収するサスペンションに使うアルミ鍛造部品の増産投資を延期する。 当初は今年秋に生産能力を 4 割高める計画だったのを 1 年程度延期しており、さらに先に延ばすという。 中国の新車市場の成長が鈍化傾向にあるためだ。 一方、新車市場が堅調な米国では、同じ部品で約 70 億円を投じて生産能力を 8 割高める。 2014 年まで中国市場が急拡大したスマートフォン(スマホ)も飽和感が強まり、関連企業に影響が出ている。 スマホ部品の精密加工などに使う小型旋盤大手のツガミは中国で月 1,500 台の生産能力を持ち、今春は月 800 台程度を生産していたが、足元は 300 - 400 台にとどまる。

人件費の上昇を受けて中国生産比率を引き下げる動きもある。 「グローバルワーク」などのブランドを持つアダストリアは、今後 5 年以内に 9 割から 7 割に下げる。 代わりにベトナムなど東南アジアを 1 割から 3 割に高める。 日本への輸送コストは膨らむが、人件費の抑制で全体のコストは 1 割下がるという。 衣料品国内最大手のファーストリテイリングはかつて 9 割以上だった中国比率がすでに 6 - 7 割に低下したとみられる。

日本国内に生産を切り替える動きも広がる。 ダイキン工業は家庭用エアコンの中国での生産を今年度は前年度比約 2 割、15 万台減らし、滋賀製作所(滋賀県草津市)の生産を同 20 万台増の 100 万台に引き上げる。 中国などアジア生産を拡大してきた TDK は、日本との人件費の差の縮小を受けて「新たに人件費が安い地域を探すよりも、国内生産で競争力を高める(上釜健宏社長)」という方針に転換。 本荘工場(秋田県由利本荘市)などに新しい製造棟を建設している。

中国の人件費は年 1 割程度の上昇が続き、日本貿易振興機構によると工員の平均月給は北京が 566 ドル(約 7 万円)、上海が 474 ドルとなった。 2 千ドル超の日本を大きく下回るが、生産性も加味した単位労働コストで比べると様相は変わる。 SMBC 日興証券の試算では、日中のドル建ての単位労働コストは 1995 年時点では日本が中国の 3 倍以上だった。 ところが、その差は次第に縮小し 13 年に中国が日本を逆転。 14 年は中国が日本を引き離している。

第 2 次安倍政権の発足後、人民元に対して約 4 割の円安が進んだことも背景にある。 同証券の渡辺浩志シニアエコノミストは「労働者の高い生産性が求められる高付加価値品ほど日本での生産が有利になる」と指摘する。 日中の労働コストは当面、再逆転しないとの見方が多い。 第一生命経済研究所の星野卓也エコノミストは「円高が日本の労働コストを押し上げても中国の賃金上昇の影響が上回る」とみている。 (nikkei = 12-6-15)