睡眠リズム整える LED 照明 愛知の企業などが共同開発
【鈴木彩子】 LED 照明に含まれる青い光の成分を、時刻に合わせて強めたり弱めたりすることで、夜自然に眠りにつけるように促す照明機器の開発に愛知県の企業や研究者が取り組んでいる。 このほど試作機が完成した。
青い光の成分は、近年普及している白色 LED に多く含まれている。 太陽でいえば、朝日に多く含まれる成分で、眠気に関連するメラトニンと呼ばれるホルモンの分泌を抑え、覚醒を促す働きがあるという。 北川邦行・名古屋大名誉教授と愛知県立大などの研究チームは、この青い光の成分に着目。 日の出とともに青色の成分を強め、日暮れに合わせて成分を弱める照明機器を作れば、睡眠のリズムを人工的に整える効果があるのではないかと考えた。 (asahi = 8-18-13)
100 年かかる計算を 1 秒で 夢の量子 CP 実用化に前進
【波多野陽】 従来のコンピューターだと 100 年はかかる計算を、わずか1 1 でできる夢の「量子コンピューター」。 そのカギとなる情報転送技術の効率を 100 倍に高めることに、東京大の古澤明教授らが成功した。 実用化に一歩近づく成果だ。 15 日付の英科学誌ネイチャーに発表する。
量子コンピューターの情報転送には「量子テレポーテーション」という技術が使われる。 1 と 0 の信号での情報処理を繰り返す普通のコンピューターと異なり、1 度の演算で大量の情報を処理できる。 情報転送には、ミクロの世界を支配する量子力学の原理を使う。 送信機に、転送したい情報を持った光の粒(光子)を入れると、受信機側の光子にその情報が復元される。 だが、これまでの実験では転送効率が悪く、実用化の壁になっていた。 (asahi = 8-16-13)
すばる望遠鏡、国産の技術結集 「網膜」は浜松製
【鳴沢大】 超高性能の新型カメラを搭載して観測を始めた国立天文台の「すばる望遠鏡(米ハワイ)」。 先月 31 日に「アンドロメダ銀河」の画像を公開し、子供たちを驚かせた。 撮影機器は浜松ホトニクス(静岡県浜松市)、キヤノン、三菱電機の先端技術を結集した国産で、地上から宇宙を捉える性能は世界一という。
新型カメラは、超広大な視野を持つ巨大なデジタルカメラ。 この目の「網膜」にあたる電荷結合素子 (CCD) が浜松ホトニクス製だ。 キヤノンは特殊なレンズ、三菱電機は髪の毛より細い単位で望遠鏡を動かせる制御装置を担当した。 従来のカメラに内蔵された CCD (縦 3 センチ、横 6 センチ)は計 10 個。 新型は一度に広い範囲を捉えられるように 116 個(9 億 7,200 万画素)まで増やした。
最高品質で 100 個を超える大量の注文。 「まず大量に作るのが困難。 すべてを真っ平らに置かないと撮影した画像もピンぼけになる。 非常に難しい仕事だった。」と浜松ホトニクスの担当者は言う。 (asahi = 8-14-13)
「絆」、「愛」したためる書道ロボット登場 北九州
北九州市の西日本総合展示場で開催中の書道展に、書をしたためるロボットが登場した。 筆を持ち、墨をつけて約 2 分で色紙に「愛」や「絆」と書く。 産業用ロボット大手の安川電機製。 普段は工場で部品の組み立てなどを担う型だが、中国の昔の書家の字体をお手本に、筆を運ぶ動きをプログラムした。 人の腕のような柔軟な動きで微妙な「とめ」「はね」も表現。 書を始めて 1 年半の主婦 (69) は「私よりはるかにうまいわ ・・・」と、ため息。 11 日まで。 (asahi = 8-10-13)
海自最大の「ヘリ空母」進水 護衛艦いずも全長 248m
【其山史晃】 海上自衛隊の艦艇で最大となるヘリコプター搭載型護衛艦(全長 248 メートル、基準排水量約 1 万 9,500 トン)の命名・進水式が 6 日、横浜市磯子区の「ジャパン マリンユナイテッド」の横浜工場であった。 島根県東部の旧国名にちなんで「いずも」と名付けられた。 就役は 2015 年 3 月ごろの予定だ。
いずもは艦橋を右端に寄せ、艦首から艦尾までの平らな甲板がヘリの飛行場になる。 計 9 機のヘリを運用できる「ヘリ空母」として、対潜水艦作戦などで艦隊の中心的な役割を担う。 ヘリを搭載しない状態では、格納庫に陸上自衛隊の 3.5 トントラック約 50 台を載せられ、災害支援や国際協力活動にも使える。 母港は決まっていない。
船体の長さでは、ミッドウェー海戦で沈んだ日本海軍の空母「加賀」とほぼ同じで、「飛龍 (全長 227 メートル)」よりも大きい。 海自は「いずもには垂直離着陸の戦闘機を搭載する構想はなく、攻撃型空母にはあたらない。 海上交通の保護や災害支援の任務を想定している」としている。 (asahi = 8-6-13)
ハイテクぎっしり、4 万円砂時計 長野・諏訪の技術結集
【三浦亘】 諏訪の精密加工技術の粋を集めた、超高精度の金属砂時計が完成した。 モノづくりの異業種が連携した「SUWA ±5μ(プラスマイナス 5 ミクロン)」チームが 2 年がかりで開発。 精密加工技術を内外にアピールする「SUWA ブランド商品」の第 1 号として限定 100 個で注文を受け付ける。 価格は 4 万 2,800 円。 すでに 60 を超す仮注文が入っている。
「諏訪にある技術やノウハウのプロを結びつけ、新商品の開発はできないか」との諏訪市産業連携推進室の呼びかけに、ガラス工房や精密機械部品メーカー、金属研磨会社、デザイン、土産品販売会社などから 5 人が集まった。 「通常では出会えないメンバーが化学反応的に面白い商品を生み出した」と同室。
自動車エンジンの燃料噴射装置の部品などを造る小松精機工作所の製造部長、小松隆史さん (42) は、プレス機でステンレス材に髪の毛ほどの細い穴を開けた際に押し出される直径 100 ミクロンの円柱の棒を細かく切断した金属粉体の利用法を探っていた。 メンバーらと話す中で「砂状なら砂時計だろう」となり、開発がスタートした。 (asahi = 8-4-13)
米マイクロンの完全子会社に = 坂本社長が退任 - エルピーダ
会社更生手続き中の半導体大手エルピーダメモリは 31 日、米マイクロン・テクノロジーによる出資手続きが完了し、同社の完全子会社になったと発表した。 昨年 2 月の経営破綻後も管財人に就いてエルピーダの経営トップにとどまり続けた坂本幸雄社長最高経営責任者 (CEO) は同日付で退任し、後任に木下嘉隆最高執行責任者 (COO) が就任した。
木下社長は、マイクロン・エルピーダ連合について「サムスン電子に対抗できるメモリー会社だ」と述べ、競争力に自信を見せた。 坂本氏は会社更生手続きを「厳しかったが、人生で一番楽しかった」と振り返った。 エルピーダは年内に社名を「マイクロン・メモリー・ジャパン」に変更する予定。 (jiji = 7-31-13)
電動 2 枚刃ナイフでスパッと 焼きたてパン、巻き寿司も
米電動工具大手のブラック・アンド・デッカーは、やわらかい焼きたてのパンや、巻きずし、ケーキなどもスパッと切れる「電動ブレッド & マルチナイフ」を 8 月中旬に売り出す。 ノコギリ状の 2 枚の刃が、高速で交互に前後して動き、食材に押し当てるだけでスムーズに切れる。 重さは 700g。 想定価格は 9,450 円。 (asahi = 7-30-13)
ルネサス、主力の鶴岡工場閉鎖へ 台湾企業への売却断念
【田幸香純】 半導体大手ルネサスエレクトロニクスが、主力工場の一つだった鶴岡工場(山形県鶴岡市)を閉鎖する方針を固めたことが 27 日わかった。 2 - 3 年以内の予定で、約 1 千人いる従業員は早期希望退職制度で削減したり、他工場に配置転換したりするとみられる。 鶴岡工場でつくるのは、一つのチップに多くの回路を集めて複雑な計算に使う「システム LSI」。 現在は主に、任天堂のゲーム機向けに生産する。 半導体の受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造 (TSMC) への売却を目指してきたが、雇用の維持など条件面で折り合わなかった。 (asahi = 7-27-13)
◇ ◇ ◇
ルネサス、携帯向け LSI から撤退 3 社統合断念で
【田幸香純】 ルネサスエレクトロニクスは 27 日、携帯電話向けシステム LSI 事業から撤退すると発表した。 赤字が続き、3 月に富士通やパナソニックとの事業統合を断念したことで、収益の回復は難しいと判断した。 今後は、収益性の高い自動車向けマイコンなどに投資を集中する。
開発は年内でやめ、生産は顧客からの注文が無くなり次第打ち切る。 ルネサスは、自動車向けで稼いだ利益をシステム LSI の赤字が食いつぶす構図が続いており、システム LSI の大半を占める携帯向け事業から撤退すれば、採算が大きく改善する見通しだ。 携帯向けシステム LSI 事業は、2010 年にフィンランドの携帯大手ノキアから買収した。 技術力は高く、富士通などから合流を求められていたが、条件面で折り合わなかった。 その後海外への売却を目指したものの、早期に撤退した方がコストがかからないと判断した。(asahi = 6-27-13)
頭にはめると、患者の体内が 3D 映像に ソニーが新装置
【細見るい】 ソニーは 23 日、内視鏡手術に使うゴーグル状の映像表示装置を公開した。 医師が頭にはめると、目の前に患者の体内の様子が 3D (立体映像)で映し出される。 これまでは手術室のモニター画面を見ていたが、手元をみる自然な姿勢で手術ができるようになる。
鮮やかな色彩をそのまま表示できる有機 EL パネルを使っており、体内の細かい血管や神経などもくっきり映る。 右目と左目にそれぞれ別の映像を映し出すことで、専用メガネをかけて画面を見る方式より奥行きなどを正確に表示することができるという。 まず 8 月 1 日に国内で売り出す。 映像制御装置とセットで想定価格は約 150 万円。 来年春以降に米国や欧州でも販売し、年間 1 千台の出荷をめざす。 (asahi = 7-23-13)
エアコン出荷台数、6 月は最高に 猛暑に加え買い替えも
日本電機工業会は 22 日、エアコンの 6 月の出荷台数が 160 万 1 千台で、1979 年の調査開始以来最高だったと発表した。 厳しい暑さに加え、節電意識の高まりで省エネ性能の高い機種への買い替えが進んだ。 冷蔵庫や洗濯機を加えた白物家電全体の 6 月の国内出荷額は 2,690 億円となり、過去 10 年間で最高だった。 (asahi = 7-22-13)
乳牛用「ストレスメーター」大ヒット 不快度を見える化
【大畑滋生】 暑さによる乳牛のストレスを指数で示す「ヒートストレスメーター」が、全国の酪農家に好評だ。 宮崎県畜産試験場(高原町)が温度計メーカーと開発したところ、発売から 2 年で約 3,100 個が売れた。 乳牛は人間より暑さに弱く、乳の出具合にも響く。 猛暑日が続く今夏、さらに注目を集めそうだ。
もともとは、およそ 300 の宮崎県の酪農家に無償で配るためにつくったが、2011 年 7 月の発売以降、注文は北海道や東北などからもくる。 メーターは、温度と湿度から牛の不快度合いを導き出した「温湿度指数 (THI)」を温度計のように針で示す。 湿度 50% なら、気温約 21 度で牛がストレスを感じる「レベル 67」に達するという。 (asahi = 7-21-13)
人工知能を搭載「しゃべる家電」続々発売へ シャープ
シャープは 9 日、人工知能を搭載し、言葉が話せるエアコンや冷蔵庫などを 8 月から順次発売すると発表した。 言葉でユーザーの気持ちをなごませたり、メンテナンスの時期を知らせたりできる。 シャープは昨年発売したロボット掃除機から人工知能の搭載を始めており、他の家電でも一定の需要があると判断した。
同日、東京都内で開いた会見には、試作品のオーブンレンジや空気清浄機が登場した。 オーブンレンジが「いつも大切に使ってくれてありがとう」と感謝したり、肉料理の調理ボタンを押した時に「キャベツやレタスの上に盛りつけると、野菜もとれていいですよ」とアドバイスしたりする様子を紹介した。
空気清浄機でも自動での運転を始める時に「空気の汚れを見つけました」と声を出すことで、急に風が出てユーザーが驚くことが防げると説明。 加湿に使う給水タンクの水が切れた時に「お水が欲しいな」などと知らせるほか、メンテナンスの時期を教えてくれる機能も考えているという。 (asahi = 7-11-13)
「電機屋のカメラ」汚名返上 ソニー小型 25 万円が新風
【上栗崇、細見るい】 ソニーが売り出した「25 万円の小型カメラ」が脚光を浴びている。 一眼レフとは違う高画質が売りで、電機メーカーでは初めて国内で最も権威のある「カメラグランプリ大賞」を 5 月に受賞した。 ソニーの小型カメラの足もとの平均単価は他社より 6 千円高くなり、「カメラのソニー」のブランドを高めている。
注目されているのは、ソニーの小型カメラで最上位機種の「サイバーショット RX1」。 想定価格は 25 万円。 最高級の一眼レフと同じサイズの画像センサーと「15 万円以上の価値(業界関係者)」とされる高性能レンズが特徴だ。 有効画素数は 2,430 万画素。 ただ、レンズ交換はできず、ズーム機能もない。 そのため昨年 11 月の発売前は「誰が買うのか」と否定的な見方も多かった。 (asahi = 7-9-13)
VFX 技術、ドラマ席巻 火の粉や黒煙、本物の迫力
【江戸川夏樹】 6 月 30 日から籠城(ろうじょう)編が始まった NHK の大河ドラマ「八重の桜」で映像の特殊技術 VFX (ビジュアルエフェクツ)が多用されている。 舞い上がる火の粉や黒い煙。 目をこらして見ても、本物にしか見えない。 映画「スターウォーズ」で一躍有名になった技術だが、コンピューター技術の進歩で、いまやハリウッドだけのものではなくなりつつある。
■ 俳優の前、巨大な緑の壁
「八重の桜」の撮影現場では、銃を持った兵士役の俳優の前に、巨大な緑の壁が作られていた。 目の前にあるのは大砲だけ。 どんな場面を撮影しているのかは、まったくわからない。 放送する映像を見せてもらった。 俳優の周辺には実際にはなかった黒い煙。 緑の壁の向こうには、壊れた城壁と落城寸前の鶴ケ城がそこにあるかのように立っていた。 加藤拓専任ディレクターは「今までにないリアリティーとスケール感」と自慢げに話す。
可能にしたのは、SF 映画などで使われてきた VFX 技術だ。 実際に撮影された映像にコンピューターで作成した映像を組み合わせる。 10 年前に比べコンピューターの処理能力が上がった。 コストも 10 分の 1 程度に下がり、テレビでも頻繁に使える技術になった。 (asahi = 7-7-13)
炭素繊維製の鉄道用台車 川重、世界で初開発
川崎重工業は 24 日、航空機などに使われる炭素繊維複合材をつかった、鉄道車両の台車を世界で初めて開発したと発表した。 軽くて強い複合材の採用で、車両1両あたり 900 キロの軽量化が可能。 走行燃費と二酸化炭素の排出量を減らせる技術として、自社車両への搭載をめざす。 (asahi = 6-25-13)
次世代 EV 電池で提携 ボッシュ、GS ユアサ、三菱商事
自動車部品大手の独ボッシュと、電池大手の GS ユアサ、三菱商事の 3 社が 20 日、自動車用の次世代リチウムイオン電池を共同開発すると発表した。 ハイブリッド車や電気自動車の普及に向け、電池の小型化や低コスト化が課題となっている。 3 社は材料調達から、開発、生産まで連携し、高性能電池の量産化に結び付ける狙いだ。
3 社は、独シュツットガルトに本社を置く合弁会社を設立し、来年初頭から研究開発を始める。 新会社への出資比率は、ボッシュ 50%、GS ユアサと三菱商事がそれぞれ 25%。 ボッシュは、電池を大量生産するための生産技術や品質管理などのノウハウを提供する。 GS ユアサは、新型電池の研究開発などを担う。 三菱商事は営業面や、リチウム資源などの材料調達を支える。 (asahi = 6-20-13)
スパコン世界一、中国が奪還 国産「京」は順位落とす
【冨岡史穂】 年に 2 回、スーパーコンピューターの計算速度を競う世界ランキング「TOP500」が 17 日発表され、中国の「天河 2 号」が世界 1 位になった。 中国のトップは 2010 年秋以来 2 回目だが、天河 2 号は技術水準、エネルギー効率とも高く、専門家の評価は高い。 日本の理化学研究所と富士通が開発した「京(けい)」は 4 位だった。
独ライプチヒで開催中のスパコン国際会議で発表された。 天河 2 号は 312 万個の中央演算処理装置 (CPU) を搭載し、1 秒間に 3 京 3,862 兆回の計算速度を記録。 10 年にトップをとった天河 1 号の 13 倍の速度だ。 東京工業大の松岡聡教授は「中国のスパコンは 3 年間で目覚ましく進歩した。 スパコン開発は本格的に、米日欧中の 4 強時代に入ったといえる」と話す。
2 位、3 位はそれぞれ米国のマシン。 11 年に世界一となった日本の「京」は前回(12 年秋)の 3 位から順位を一つ落とした。 理化学研究所計算科学研究機構の平尾公彦機構長は「京は汎用(はんよう)性や使いやすさにも重点を置いており、世界最高水準の成果を創出すべく、先導的な役割を果たしたい」とコメントした。
日本では、「京」の後継機として、1 秒間に 1 エクサ(100 京)回の計算能力をもつスパコンの開発が決まっている。 米欧各国も 2020 年ごろをめどにエクサ級スパコンの開発を進める。 (asahi = 6-17-13)
3D プリンタ−で「デジタルものづくり」革命 米が主導
【ミネソタ州 = 畑中徹】 自動車や航空機の部品、人工骨も簡単につくれる「3 次元 (3D) プリンター」が、ものづくりの姿を変えようとしている。 その新しい市場をリードするのは米国企業だ。 オバマ政権も、この「デジタル産業革命」を全面支援している。
■ 市場規模、8 年後 1 兆円へ
ミネソタ州にある 3D プリンター世界最大手「ストラタシス」本社には、自社のプリンターで製品をつくる自前の工場がある。 家電の部品やフィギュア(人形)、スマートフォンのケース、人工骨、楽器、おもちゃ。 どれも、ほとんど共通点がない。 「コンピューターにデータを入力すれば、簡単に製品ができますよ。」 同社幹部のジェフ・ハンソンさんが説明した。 デジタルデータをもとに、プラスチック樹脂を塗り重ね、立体物をつくる。 「客のニーズに合ったモノを少量でも自由につくれる強みがある」と、ハンソンさんは強調する。
ストラタシスはいずれ「デジタルものづくり」が広がるとみて、25 年以上も地道に事業をやってきた。 いまは自動車大手や航空機会社、医療向けの器具や歯の模型をつくる中小企業まで取引先を広げた。 米軍も大事な「顧客」だという。 創業者のスコット・クランプ氏は「ボタン一つで、つくりたいモノがイメージ通りの形で出てくるのは、製造業の革命だ」と話す。 昨年は、イスラエルの同業大手と合併し、シェアや特許をおさえている。
ストラタシスと世界シェアをほぼ二分するのが「3D システムズ(サウスカロライナ州)」。 キャシー・ルイス最高販売責任者は「自動車大手フォード・モーターは同じモノを大量生産する伝統的な製造業の象徴。 しかしいまは、それぞれの顧客が欲しいと思う、ただ一つのデザインをすぐに提供しなくてはならない。 大量生産方式では要望に応えられない。」と語る。
市場規模は急速にふくらんでいる。 米調査会社によると、2012 年は前年比 3 割増の 22 億ドル(約 2,100 億円)だが、21 年はその約 5 倍の 108 億ドル(約 1 兆円)になりそうだ。 これまで価格が高く、一部の企業しか使っていなかった。 だが、ストラタシスは 100 万円台のものを、3D システムズは約 10 万円の卓上タイプを発売した。 「小さい」、「安い」製品が出てきたことで中小企業が活用でき、家庭でも買えるようになった。 米国の中堅メーカーは、「一家に一台の時代がくる」とみる。
使える素材が樹脂だけでなく、金属やセラミックに広がった。 精度も格段によくなり、試作品に限らず、実際の部品として十分使えるものも出てきた。 ビジネスの好機とみた起業家の動きも盛んだ。 米国内では、3D プリンター関連の新興企業がどんどん誕生している。 05 年創業の「ExOne」は、その一つ。 1 千万円クラスの高級 3D プリンターを大企業に売って、急成長している。 デービッド・バーンズ最高執行責任者は「伝統的な製造業のカベを打ち破ろうと挑んでいる」と意気込む。
■ 官民で活用後押し
「製造業復活」を掲げるオバマ米政権は、3D プリンターがカギを握るとみて普及に本腰を入れる。 オバマ大統領は、今年 2 月の一般教書演説で 3D プリンターに言及し、「製造業の革命は米国から始まる」と宣言した。 昨夏、国家的なプロジェクトを推進する「全米積層造形技術革新機構 (NAMII) 」をオハイオ州に設立。 今後はこうした拠点を全米 15 カ所につくり、技術者を育てる。 全米約 1 千の小学校に 3D プリンターの設置を始め、若いうちから先端の技術に触れてもらう。
伝統ある製造業も 3D プリンターの導入に前のめりだ。 ゼネラル・エレクトリック (GE) は新型ジェットエンジンの燃料ノズルを製造するほか、昨年は 3D 関連の部品製造会社を買収した。 自動車のフォードはエンジン部品などを試作中で、航空機大手ボーイングも活用に取り組む。
米国が本気をみせる中、日本はどうか。 日本政府が今月まとめた「ものづくり白書」では、3D プリンターの普及が進めば、熟練した技術者の高い技術がいらなくなり、「ものづくりの方法が変わる可能性がある」と指摘。 日本経済を支えてきた製造業が揺らぐことへの懸念を示した。 日本での営業経験もあるストラタシスの幹部は、こう語る。 「日本は乗り遅れている。 日本企業には職人的な技術を大事にする風潮があり、それがデジタル化していく流れに抵抗があるのだろう。 ただ、新しい時代は動き始めている。」 (asahi = 6-16-13)
〈3D プリンター〉 紙への印刷と同じような感覚で、樹脂や金属を塗り重ね、立体的な製品をつくりだす装置。 樹脂を吹きつけ光で固めるインクジェット方式や、ノズルから樹脂を絞り出して層を重ねていく積層方式などがある。 これらの技法の特許では、米国メーカーが先行している。 数千万円の高級機種から、個人事業者向けの数十万 - 数百万円の機種まで価格は幅広い。 米誌編集長のクリス・アンダーソン氏が著書「メイカーズ」で紹介し、日本でも話題になった。
ソニー、4K 映画を国内配信へ テレビ購入者限定
【上栗崇】 ソニーの平井一夫社長は 14 日、朝日新聞のインタビューに答え、インターネットを使って 4K 画質の映画を配信するサービスを日本で導入する考えを明らかにした。 ソニーの 4K テレビ購入者限定になるという。 またスマートフォンの販売拡大のため、今年度中に米国市場に本格参入することも明らかにした。
4K 映画の配信は今年夏に米国で始める予定で、平井氏は「改善点を見て日本でも始めたい」と語った。 4K テレビ販売を増やす切り札にする考えだ。 配信はソニー・ピクチャーズの作品が中心で、専用の受信機が必要になる。 開始時期は「今すぐは言えない」と述べた。 ソニーはテレビ事業の赤字をなくすため、安売りを避けて販売をしぼり込んでいる。 販売台数は 2 年前の年間 2,200 万台から 2013 年 3 月期は 1,350 万台まで落ち込んだ。
平井氏は、テレビがかつて韓国サムスン電子に敗れた理由を「コスト面と機能・デザインを合わせた商品力」と分析した。 「コストが下がり、商品力は向上した。 今年度は 1,600 万台売り、ここからどんどん攻めに転じる。」とも語った。 (asahi = 6-15-13)
ソニー、PS4 お披露目 TV に代わる「主役」に期待
【ロサンゼルス = 細見るい、神澤和敬】 ソニー・コンピュータエンタテインメント (SCE) は 10 日(日本時間 11 日午前)、新型ゲーム機「プレイステーション 4 (PS4)」を初公開した。 年内に発売する。 ソニーはゲームをテレビに代わる新しい中核事業に位置づけており、新製品がソニーの浮沈を握る。
「PS4 は他に匹敵するものがないゲーム機だ。」 米ロサンゼルスで 11 日開幕する世界最大のゲーム見本市「E3」に合わせた SCE の発表会。 アンドリュー・ハウス社長が初公開の PS4 本体を手に舞台に上がると、歓声があがった。 価格は 399 ドル(約 3 万 9 千円)。 スマートフォンやタブレット端末との連携を強化したのが特徴だ。 ボタン一つでフェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) や動画サイトにゲームの画面を投稿でき、友人がスマホを操作することでプレーヤーを助けたり、邪魔をしたりもできる。 (asahi = 6-11-13)
いつまでも座っていたい 宮崎椅子は職人魂の結晶
【扇谷純】 座ったとたん、思わず「あっ」と声が出た。 適度な硬さのクッションと、腰を優しく包み込む絶妙なカーブの背もたれ。 丸でも角でもないアームの木肌の手触りも心地よい。 イタリア語でコショウを意味する「pepe」と名付けられた椅子には、いつまでも座っていたいと思わせる隠し味が仕込まれている。
徳島県鳴門市南部の静かな田園地帯にある宮崎椅子製作所は、スタッフ 25 人の小さな会社だ。 約 60 種類に及ぶ製品は、シンプルでさりげない。 完全受注生産で一脚 3 万円以上するが、全国から注文が舞い込み、納入まで数カ月待ちというほど人気が高い。
驚くことに、営業スタッフはゼロ。 最近までカタログもなかった。 優れたデザインと高い品質に裏打ちされたオリジナリティーが、口コミによる販路拡大につながった。 宮崎勝弘(まさひろ)社長 (58) は「気持ち良さを追求して、ものづくりに専念してきた結果」と穏やかな口調で話す。 だが、その道のりは平坦ではなかった。 中学の時、父が漁師をやめて同社を創業し、婚礼用鏡台の椅子を下請けで作り始めた。 作れば売れた高度成長時代。 自分も家族経営の小さな会社を手伝うために、工業高校を経て椅子職人となった。
1993 年、父の後を継いで社長に就任したが、婚礼家具の需要減や安い輸入品との競合、バブル経済の崩壊などが重なり、受注は大幅に減少。 「このままでは先がない」と、自社ブランドの立ち上げを決意した。
「商品力を高めるには都会の最先端の感覚が必要」と考え、徳島県立工業技術センターの紹介で首都圏のデザイナーを起用。 職人とデザイナーが意見を出し合い、納得するまで試作を繰り返す「ワークショップ形式」で、99 年から開発に乗り出す。 1 年後、オリジナル第 1 号が完成。 勇んで展示会に出品したものの、全く相手にされなかった。
それでも満足だった。 「取引先の図面で、いかに安く効率よく作るかに身を削る生活とは 180 度違う、他がまねのできない、作りにくいものに挑戦する日々には、職人としての喜びがあった。」 いつかは売れると信じて、新商品を年に数点ずつ生み出していった。 2002 年にはグッドデザイン賞を受賞。 04 年に発表した pepe が展示会で評判を呼んで取引先が増え、過去の商品も売れ始めた。 海外のバイヤーからも声がかかるようになり、昨年と今年は、夢だった世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ(イタリア)」への出展も果たした。
大量生産できないので、大手の会社とは取引しない。 主な販売ルートは、商品を気に入ってくれた各地のインテリアショップだ。 各店が宮崎椅子の「営業マン」として、顧客へ売り込んでくれる。 規模の拡大には興味がない。 スタッフを増やせば効率を追うようになり、「いいものができなくなる」という。 それでも海外へ挑むのは、「大舞台で評価されれば、若い職人の活躍の場が広がるし、地域社会にもいい影響が出る」と思うからだ。
目指すのは、日本製であることの意味と価値を持った椅子作り。 作り手と使う側の喜びの通い合いが、ものづくりの冥利だと確信している。 (asahi = 6-9-13)
■ メモ
1969 年創業。 資本金 1 千万円。 グッドデザイン賞は 10 年連続受賞。 2011 年にはドイツのデザイン賞も受けた。 日本貿易振興機構の輸出有望案件発掘支援事業や、経済産業省「元気なモノ作り中小企業 300 社」にも選ばれている。 鳴門市大麻町川崎中筋。
B787 内装に新潟のワザ キッチン・トイレ・操縦席も
【河野正一郎】 運航が見合わされていたボーイング 787 が、本格的に運航を再開した。 B787 は航続距離と速度もアップし、次世代旅客機とも呼ばれる。 その操縦室とキッチン、トイレの内装はすべて、新潟県村上市の工場で作られているのをご存じだろうか。 工場内に入り、世界で通用する秘密を探った。
訪ねた工場は、村上市郊外の工業団地にある新潟ジャムコ。 B787 を含めた世界の全航空機のトイレは 5 割、キッチンは 3 割がここで作られている。 工場内に入ると、キッチンの近くで、3 人の男女が指先に白い特殊な樹脂をつけて、カーボンパネルの細かい隙間を埋めていた。 水回りは少しの隙間が腐食などのトラブルにつながる。
入社以来、この作業を続けている太田紀枝さん (43) は「ロボットでやることも考えた時期がありますが、やっぱり人の指でないと細かいところの隙間は埋められませんから。」 指先を触らせてもらうと、とてもやわらかかった。 さらに進むと、キッチンがずらっと並んでいた。 手前は骨格だけなのに、奥は完成しているよう。 よく見ると、製造途中のキッチンは台車に載せられ、わずかに動いていた。
豊福俊雄工場長は「完成までに約千個の部品を取り付けます。 製造ラインを動かすことで、決められた部品を決められた時間で正確に取り付けられます。 最新鋭の B787 も結局は、手作業なしでは作れないんです。」と話す。 (asahi = 6-9-13)
サッカー W 杯ベンチはガラス製ルーフ 旭硝子が公開
国際サッカー連盟 (FIFA) の公式認定品メーカーになっている旭硝子は 6 日、2014 年のサッカー W 杯ブラジル大会で使われるガラス製ベンチルーフを公開した。 競技場で選手が待機するベンチの屋根(長さ 11.5 メートル、高さ 1.9 メートル、奥行き 1 メートル)に使う。
ガラス製は世界で初めてだという。 従来の樹脂製の屋根は時間がたつと変色・劣化するが、スマートフォンのカバーになる特殊ガラスを使い、ボールが当たっても割れにくい強度と、半永久的に続く透明度を実現したという。 ブラジル大会では 12 会場で計 60 面のガラス屋根が使われる。 (asahi = 6-8-13)
最新扇風機で高野山を涼しく ダイソン、約 30 台寄付
英国の家電メーカー、ダイソンが、高野山真言宗の総本山金剛峯寺(和歌山県高野町)に今夏、ヒット商品の羽根のない扇風機を約 30 台寄付する。 高野山を開いた弘法大師・空海は、遣唐使船で渡った中国から、土木などの最新技術を持ち帰った。 それにちなみ、「扇風機でも最新技術を採り入れませんか」と提案した。
ダイソンが寄付する「エアマルチプライアー」は、畳や床に座ることが多い日本向けに風が吹き出す位置を低くし、今春売り出した商品。 金剛峯寺は、この扇風機が寺の雰囲気にも合う上、「自然に近い風で一般客の瞑想(めいそう)体験の邪魔にならない(担当者)」と提案を受け入れたという。 年 100 万人超が訪れる寺内で、拝観コースとなる部屋や通路に置く予定だ。 (asahi = 6-8-13)
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羽根なし扇風機、秘密は気圧 ダイソンの開発者に聞く
【上栗崇】 羽根の無い扇風機を 2009 年に売り出して世界の消費者の心をつかんだ英ダイソン。 今年はパナソニック、シャープなどが同様の商品を売り出し、ダイソンも日本仕様の新機種で迎え撃つ。 「元祖」の開発に携わったダイソン・シニアデザインエンジニアのマーティン・ピーク氏 (37) が朝日新聞のインタビューで開発秘話を語った。
■ きっかけはドライヤー
- - 羽根無し扇風機「エアマルチプライアー」のアイデアはどうやって生まれたのですか。
「きっかけは、日本では発売していない我々のハンドドライヤー『エアブレード』でした。 手のひらの水を風でそぎ取るように乾かす機械なのですが、開発中、細い隙間から強い風を送り出すと周囲の空気を巻き込んで大きな空気の流れができることがわかったのです。 私を含む約 150 人のチームで 3 年をかけ、数百種類の試作機を作って製品化にこぎ着けました。」 (asahi = 3-31-13)
「IGZO」開発、シャープなひらめき 省エネ車が手本
【桜井林太郎】 スマートフォンやタブレット端末に搭載され、高精細で電池が長持ちすると人気を集める新型の「IGZO (イグゾー)」液晶は、シャープが世界で初めて商品化したものだ。 激しい競争の中で一歩先んじた陰には、液晶を熟知する技術者ならではのひらめきと気概があった。 IGZO は、シリコンのかわりに酸化物半導体という材料を使う新技術。 2004 年に細野秀雄・東京工業大教授らが原型を発明した。 電気が数十倍流れやすくなるため、世界の電機メーカーが注目。 実用化競争が始まった。
シャープは 07 年ごろから液晶技術開発一筋の松尾拓哉さん (47) 率いる十数人のチームで開発を本格化させた。 試作すると、高精細化はできたが、消費電力は数割ほどしか減らなかった。 従来と材料が違うので量産するのも難しい。 社内には「従来技術を改良した方がリスクも小さいのでは」との声も根強かった。 松尾さんの考えは違った。 「新しいものをやらなければだめだ。 技術で差別化できないと、海外企業とのコスト競争で負ける。」
奈良県天理市の研究所。 チームの一人がある日、試作品の電源を切っても液晶の画像がなかなか消えないことに気づいた。 何かのミスかと思ってコンセントも抜いたが、やはり消えない。 1 分、10 分 …、1 時間たってもぼんやりわかる。 回路から電気が漏れにくい性質のためだった。 「ひょっとしたら、車のアイドリングストップのようにして消費電力を減らせるかも。」
松尾さんのこのひらめきが突破口になった。 従来の液晶は、静止画の時も画質を保つために動画と同じく 1 秒間に 60 回電気を流している。 画像が消えにくければ、静止画の時は電気を一時的に止めることができる。 これまでは 1 秒間に 50 回や 40 回に減らすこともうまくいかなかったのが、IGZO で開発を進めていくと、無理と思っていた「1 秒間に 1 回」が可能になり、消費電力は 5 分の 1 以下に減らせた。
完成までの 1 年半はほぼ休みなし。 夜中のトラブル発生で三重県亀山市の工場まで車を飛ばしたこともある。 初めてスマホに搭載された時はうれしくて、発売初日に自分で店頭まで買いにいった。
5 月に発表した決算で過去最大の 5,453 億円の赤字となるなど、シャープの経営は厳しい。 松尾さんは「体力的にもきつかったが、会社の状況がよくないなか、チーム全員が『IGZO の製品を絶対出すぞ』という強い思いを分かち合えた」と振り返る。 「生みの親」の細野さんは、「日本発のアイデアを日本企業が初めて実用化したことに敬意を表したい。 日本が元気になるし、基礎研究の重要さも理解してもらえる。」と話す。
■ 販売はまだまだ
「液晶は間違いなく核にします。」 5 月 14 日の中期経営計画の発表会見で、シャープの高橋興三次期社長は力を込めた。 その戦略のカギを握るのが IGZO の技術だ。 注力している 60 型以上の大画面テレビは、北米などではすでに価格下落の兆しが出ている。 シャープはスマートフォン向けなどの付加価値が高い小型パネルに軸足を移す方針で、省電力かつ高精細の IGZO 液晶の普及に期待する。
ただ、まだ販売は順調とは言えない。 昨春から「ウルトラブック」と呼ばれる軽量・薄型のノートパソコンも含め、IGZO の搭載をメーカー各社に働きかけてきたが、採用は一部にとどまっている。 韓国・サムスン電子なども開発を進めており、技術ですぐに他社に追いつかれる懸念も指摘される。 高橋次期社長は「IGZO も次の世代に向けて色々やっている。 追いつかれても、違うところを走っているようにする。」という。 (asahi = 6-5-13)
洗剤不要、秘密は「三角」 サンコーのスポンジたわし
【平畑玄洋】 掃除や食器洗いに欠かせないスポンジたわし。 サンコー(和歌山県海南市)は、断面が丸いたわしのポリエステル繊維を三角形に加工することで、洗剤を使わず汚れを落とすことに成功した。 アイデア勝負で、1993 年の発売から作った種類は、浴室の天井用、靴洗い用など 100 を超えている。
サンコー社長の角谷太基(かくたに・ふとき)さん (48) がおもむろに油性フェルトペンを握り、左の手のひらに太い線をごしごしと 3、4 回重ね塗りした。 同社が開発したポリエステル製不織布「びっくりフレッシュ」を水に漬け、汚れた手のひらに 7、8 回こすりつけると、墨汁が水に溶け出すように黒い線は消えた。
家庭用品の一大産地・海南市にあるサンコー本社のショールーム。 角谷さんは、たわしに使われるポリエステル繊維の断面の写真を見せながら、「三角形にすることで、とがった繊維の角でくぼみに入り込んだ汚れをかき出すんです」と教えてくれた。 このアイデアは意外にも材料の過剰在庫から生まれた。 バブル全盛期の 1980 年代後半、サンコーは大規模小売店のプライベートブランド向けにマット類を受託生産し、材料のアクリル糸などの繊維の在庫を大量に抱えた。 (asahi = 6-2-13)
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