新車が深刻な品薄、納車半年待ちも 中古車平均額は初の 100 万円台

新年度に向け車が品薄になっている。 コロナ禍や半導体不足で生産が遅れ、納期に 3 カ月以上かかるものもある。 新車の代わりに中古車が人気で価格は過去最高の水準だ。 原材料の高騰で値上げする輸入車も相次ぐ。ロシアのウクライナ侵攻もあり、買いにくい状況が長引く恐れもある。 新車の品薄の大きな要因の一つは、自動車部品の供給の混乱だ。 コロナ禍によって世界各地の部品工場で、生産が落ち込んでいる。 「ワイヤハーネス」と呼ばれる電線の束などつくるのに人手がかかるものが、特に足りなくなっている。

コロナ禍では、半導体を使う電子機器の必要性が高まった。 半導体は工場をつくるには時間と費用がかかることもあって、すぐに増産することが難しい。 いまの自動車部品には多数の半導体が使われている。 十分に確保できないと、部品をめぐる混乱は続く。 部品不足を受けて国内の大手自動車メーカーでは、工場の操業の一時停止や、生産ラインの縮小などをした。 国内自動車大手 8 社の 1 月の世界生産は、前年比 9.8% 減の計 191 万 7 千台で、7 カ月連続の減少だった。

減産は販売の現場にも波及していく。 販売店では納車まで 3 - 6 カ月かかるものもめだつ。 トヨタ自動車がホームページで公表している「工場出荷時期目処(めど)」によると、注文してから 3 カ月以上かかるものが多い。 人気の小型車アクアは「5 - 6 カ月程度」としている。 ホンダも小型車フィットの出荷目処は 4 カ月程度となっており、ほかのメーカーでも生産は遅れ気味だ。

スポーツカーや SUV (スポーツ用多目的車)の一部では、納車まで 1 年以上かかるものもある。 車種によっては、買いたくても予約が受け付けられないケースもあるという。 メーカーは部品の調達先を分散するなど対応を急ぐが、混乱の解消には時間がかかりそうだ。 宮城県、福島県で最大震度 6 強を観測した 3 月 16 日の地震による影響もある。 複数の部品会社が被災し、トヨタ自動車やスバルなどの工場が一時止まった。 工場の生産は再開しているが、部品の調達難は一部で続いている。

新車と中古車が同じ値段の「異常事態」

新車が手に入りにくいなか、中古車は値上がりしている。 中古車オークション最大手ユー・エス・エスの平均成約金額は、2 月に前年同期比 20.1% 増の 100 万 6 千円となった。 2009 年 4 月の調査開始以降、初めて 100 万円を突破した。 中古車情報サイト「カーセンサー net」によると、サイトに掲載される約 50 万車の車両本体価格の平均は 22 年 2 月時点で 166 万 2 千円となり、2 年前に比べて 1 割上がった。 若者を中心に需要が高まっていたところに新車不足など、「価格の上昇をもたらす要因が重なった(西村泰宏・カーセンサー編集長)」という。

「新車と中古車が同じ値段なんて数年前にはなかった。 異常な事態ですね。」

広島市内で新車と中古車の販売店を営む経営者はこうつぶやく。 スズキの軽乗用車「スペーシア」の場合、新車で 180 万円ほどだが中古車も同価格だ。 ダイハツ工業の軽「タント」も同じ状況だという。 高すぎて車の購入をあきらめる人もいる。 新車の販売も伸び悩み、この店の売上高は減っているという。 経営者は「中古車の価格上昇の恩恵はない。 早く相場が落ち着いて欲しい。」と話す。

埼玉県の業者は、仕入れの上昇分を価格に転嫁しきれていないという。 中古車業界は中小企業が多く競争が激しい。 高くても仕入れなければ売るものがなくなる。 顧客をつなぎとめるには価格を抑えなければならず、利益を圧迫する。 新車の早期増産が見込めないなか、中古車の価格は高止まりしそうだ。 日本総研の程塚正史・シニアマネジャーは「新車の生産台数が減れば、さらに中古車価格に上昇圧力がかかる」と指摘する。

一方で、中古車の値段を変える要因としてロシアへの経済制裁がある。 中古車の輸出のうちロシアは全体の 1 割強を占める。 制裁で取引が全体的に止まれば、国内市況に影響を与えるとの指摘も出ている。 ある中古車輸出業の経営者は「ロシア向けの輸出が減れば、中古車の価格は下がりそうだ」とみている。

原材料高で EV に値上げの動き

世界的に値上がりしているのが電気自動車 (EV) だ。 ロイター通信によると EV 大手の米テスラは今月、米国で全ての車種について約 5 - 10% 上げた。 中国でも一部の車種を 5% 上げた。 最も安いセダン「モデル 3」は、米国で 4 万 4,990 ドル(約 530 万円)から 4 万 6,990 ドル(約 554 万円)になった。 イーロン・マスク最高経営責任者 (CEO) は 13 日、「原材料や物流で著しいインフレ圧力に直面している」とツイートした。

日本でも輸入車の値上げが続く。 仏ルノーは小型車ルーテシアを 4 月から 10 万 - 13 万円上げて、266 万 9 千 - 289 万 9 千円にする。 欧米系のステランティスも 4 月以降、フィアットやプジョーなど傘下 5 ブランドを、最大 7.1% 値上げする。 トヨタ自動車や日産自動車など国内大手メーカーも、今年は EV の新型車を発売する予定だ。 価格設定が高めになることも想定される。 従来のガソリン車の値上げも、検討されることが考えられる。

安全装置の充実もあって自動車の価格は近年、上がっていた。 総務省の小売物価統計調査によると、22 年 2 月時点での普通乗用車の小売価格は 375 万 449 円で、5 年前と比べて 2 割強上がった。 軽乗用車も 151 万 5,387 円で 1 割強上昇した。 EV などの値上げの背景にあるのが、原材料価格の動きだ。 金属やプラスチック、ガラスなど様々なものが高値となっている。

資源が豊富なロシアへの制裁もあって、足元では非鉄金属などの値上がりが加速している。 昨年 12 月からみると、車体に使うアルミニウムは 2 割以上、電池に使われるニッケルは倍近くまで上がった。 EV の値段の 4 - 5 割は電池が占めるとされ、ニッケルなどの上昇は影響が大きい。 円安も加速しており、国内メーカーにとって原材料の調達コストは重荷になりそうだ。 (福田直之、神山純一、五十嵐大介 = サンフランシスコ、千葉卓朗、asahi = 3-28-22)


1L = 150 円 それでもガソリンスタンドが消える

ガソリン価格が 5 週連続で値上がり、今週にも 1 リットル = 150 円を突破しそうだ。 通常なら起きるはずの安売り合戦が起きないのは、石油業界が「正常化」しているから。 ドライバーたちのイライラが募る一方で元売りや販売業者は胸をなで下ろす。 しかしこれはつかの間の平和でしかない。 ガソリンスタンドは年間 1,000 件ペースで減少、消滅の危機にある。

値下げ競争が起きない不思議

「高いなあ …。」 島根県に住む男性はガソリンスタンドの単価表示板をにらみつけながらつぶやいた。 仕事で県内を回ることが多く、月に 1,000 キロメートル以上走ることも多い。 1 回の給油量は 50 - 60 リットル。 7,500 - 9,000 円が財布から飛んでいく。 東京都内のガソリンスタンド経営者はホクホク顔だ。 利幅はレギュラーガソリンで 1 リットル 20 円弱。 安値競争に苦しめられた 3 年前に比べ 5 円も増えた。 「また、バイクだよ -。」 二輪の客が訪れると今度は苦虫をかみつぶしたような表情に。 利幅が十分に確保できている今では、「一度に数リットルしか給油しないバイクは面倒」なのだという。

1 リットル 149.1 円。 石油情報センターが 23 日に発表した全国のガソリンの平均価格は、3 年 5 カ月ぶりの高値となった。 次の発表は 30 日に予定されているが、150 円を突破するのは確実とみられている。 通常、ガソリン価格がここまで高騰すると、逆に安売りのメカニズムが働くのが業界の常識だ。 ドライバーは節約のために 1 回の給油量を減らす。 「限定給油」といって満タンにせず 2,000 円や 3,000 円など量を決めて給油するのだ。 スタンド側は販売量が減るため、値下げに走る。 だが今回は価格競争が盛り上がる気配はない。 なぜなのか。

目の前の豪華な料理

今年 1 月に開かれた JXTG エネルギーの賀詞交換会には、約 1,300 人の関係者が詰めかけた。 「エネオス」や「エッソ」などのブランドで知られる石油元売り最大手だ。 「おたくはどれくらい利益増えた?」 「久々に車を買い替えたよ。」 「ゴルフの回数が増えたね。」 熱気あふれる会場に社長の杉森務が登壇し「これまで以上に信頼の絆を深めてまいりたい」と語ると、会場は大きな拍手に包まれた。

同社系列の販売業者の 2017 年度のガソリン 1 リットルあたりの利益は前年度に比べ 2 - 4 円程度改善したという。 都内の販売業者は「以前は周辺のライバル店を見て回り、採算を度外視して価格を下げたこともあった。 今はその不安がなくなった。 こんなことは十数年ぶり。」と話す。 転機は 2017 年 4 月。石油業界の状況が大きく変化したのだ。 最大手の JX ホールディングスと東燃ゼネラル石油が経営統合し、JXTG ホールディングスが発足。 国内のガソリン販売シェアで 50% 超、系列約 1 万 3,500 店を擁する「巨人」が誕生した。

国も供給過剰による安売り競争を正そうと動いた。 17 年 3 月末を期限とした「第 2 次エネルギー供給構造高度化法」で、元売り各社は原油処理能力を日量約 40 万バレル削減した。 国内全体の供給量の約 1 割が減った計算だ。 プレーヤーを減らし、供給量を絞り込んだことでガソリン業界の収益環境は一気に良くなった。 JXTG の 18 年 3 月期の営業利益は前の期に比べて 80% 増となる 4,875 億円。 統合から 3 年後としていた 5,000 億円の目標を、初年度にほぼ達成できてしまう。 JXTG 幹部は「マイナス要素が何ひとつない 1 年だった」と語る。

相次ぐ廃業「消滅する危険」

好況を享受する石油業界だが、周辺は冷ややかに見ている。 「明日から食べるものがろくにないのに、目の前の食卓の上に並んだ豪華な食事を食べ尽くそうとしている」と指摘するのは、石油業界に詳しい東洋大学教授の小嶌正稔だ。 この環境が続くと思っている経営者はほとんどいない。 「売れるなら売れるうちに売って離脱したい、という人が少なからずいる。」 3 月中旬、小嶌は東北地方の特約店から相談を受けた。 「先生、元売りに何かいうように、話してよ。」 ガソリンに先がないのは確かだが、何をしたらいいのかわからない。 消費者よりも元売りや行政ばかりみている経営者も多いという。

実際、全国の給油所の数は、減少の一途だ。 1994 年には 6 万 421 カ所あったが、現在は約 3 万 1,000 カ所。 年 1,000 カ所ペースで減少しおり、2018 年度中に 3 万を切る可能性が高いのだ。  「さみしいような、ほっとしたような。」 東京都町田市の道路沿いにある店の前で、男性はつぶやいた。 1960 年創業だ。 兄弟で事業を広げ、90 年代の最盛期にはスタンドは 5 カ所まで増えた。

ところがガソリンなど国内の石油需要は 90 年代半ばに減少に転じた。 95 年に年 2 億 4,500 万キロリットルあった需要は、16 年に 1 億 7,600 万キロリットルと 3 割近く減少した。 「競争に敗れたスタンドが閉鎖に追い込まれるのは市場原理。」 男性はこう語り、数十年以上守り続けてきた店舗を今年 4 月、すべて閉鎖した。 今後は不動産やコンビニなどで稼いでいくという。

利益補填という麻薬

この 20 年間の悪循環が病巣を深くした。 元売りのガソリン供給はつねに需要を上回った。 系列スタンドへの販売だけでは生産分に追いつかない元売りは、大量購入してくれる商社に流した。 「製油所の稼働率を高く維持しなければコストがかさむだけ(元売り大手の幹部)」だからだ。 商社から安価な製品を購入した販売業者が、さらに価格競争をしかける負の連鎖が生まれた。 国道沿いなどの競争の激しい地域では、元売りが系列店を守るために、販売量に応じて利益を補填するしくみがあった。 茨城県の販売業者は「売ることに集中はできる。 でも結果として赤字体質の改善は先送りになってしまった。」と振り返る。

給油にポイントをつけたり、コンビニを併設したりなど様々な工夫はあったが、「給油所でしか受けられないサービスを作ることは簡単ではない。(元売り大手幹部)」 都内幹線道路沿いのガソリンスタンド店長は壁に貼った模造紙を指さした。 「OTB 目標達成率」と書かれた表には 1 月以降 X (バツ)が続いている。 OTB とはオイルやタイヤ、バッテリーなど石油以外の主要な商品を指す。 「市況改善と言われるけど、同時に数量も減っている。 さばける玉が減った分、元売りにも油外で頑張ってほしいと言われている。」と話す。 「うちはオートバックスじゃない」と反論したが、営業担当者には採算重視を徹底されたという。

トヨタ会長の要請

「東京都、脱ガソリン車へ。」 今年 1 月、読売新聞が「2040 年代にはガソリン車を購入しなくてよい環境を整えたい」という小池百合子知事の発言を報じた。 ガソリンスタンドの業界団体である東京石商理事長の矢野幹也は、都議連の幹部らとともに都の幹部を呼びつけた。 「大変に心が痛む。 もうガソリンスタンドはやめたほうがいいと感じた組合員も多い。」 都の担当者は「見出しはセンセーショナルです」と釈明に追われたという。 海外で急速に進む電気自動車 (EV) 化はガソリンスタンドの存在意義を揺さぶっている。 日本エネルギー経済研究所の予測では、2040 年に世界の新車販売に占めるガソリンとディーゼル車の割合は 6 割以下になる。

「水素ステーションの件、何とかよろしくお願いしますよ。」 昨年 5 月、トヨタ自動車会長の内山田竹志は JXTG の東京の本社を訪れ、会長の木村康に要請した。 JXTG はすでに全国で約 40 カ所の水素ステーションを整備しているが、内山田は燃料電池車 (FCV) の普及にはさらなるインフラ拡充が必要というのだ。 木村は「もう単独では無理ですよ」と答えるほかなかった。 今年 3 月には両社を含め 17 社が共同出資する「日本水素ステーションネットワーク」が発足。 今後 4 年間で全国に水素ステーションを 80 カ所整備するとぶちあげた。 だが実際には厳しい。

「何が水素だ。 その前に給油所を何とかしないといけないのに。」 都内の販売業者は、頭越しに進む動きに不満を隠さない。 給油所では地下に埋蔵されているタンクの定期的な改修や、新たな決済システムの導入など、1,000 万円以上の投資が定期的に必要になることもある。 仮に水素を供給できる設備を入れようとすれば数億円規模の投資が必要になる。 都内の販売業者は「うちみたいに小さな店は大型店に太刀打ちできない」と語る。

災害のライフライン

ガソリンスタンドが 3 カ所以下に減った自治体は全国で 300 カ所を超える。 鉄道やバスなど交通機関網が整備されている都市部とは違い、地方では車が生活に欠かせない「足」だ。 冬場の暖房に欠かせない灯油などの供給拠点でもある。 さらに災害時には石油の重要性はより高まる。 だが末端の経営者にそんな事を考える余裕はない。 全国石油商業組合連合会に加盟する販売業者のうち、ガソリンスタンドを 1 つしか持たない零細業者が全体の 7 割を占める。 都内のスタンド経営者は言う。 「スタンドは自分の代で終わりにしたい。 自分の代がいかに切り抜けるかということで頭がいっぱいだよ。」 = 敬称略 (指宿伸一郎、南畑竜太、nikkei = 5-28-18)


「他の車も止まらない」横並び意識 信号機ない横断歩道

大半の運転者がルールを守らないとき、どうすべきか。 警察の取り締まり強化を求める声が多く寄せられました。 取り締まりは、ここ 10 年で倍増しています。 それでも事故はなくなりません。 交通心理学の専門家は、背景にある日本人の振る舞いや、道路をめぐる欧米との意識の違いを指摘します。 寄せられた提言などとともに紹介します。

言い訳せず まず停止

アンケートには、道交法の原点に立って考えるべきだという意見が多く寄せられました。 その一部です。

  • 「道路交通法は我々の社会生活の安全を担保する社会ルールだと思っています。 横断歩道に歩行者、自転車がいるときは渡らせなければならない、という道交法第 38 条の他、交通弱者である歩行者の安全を守るという社会ルールは義務教育で教え、PTA で教え、自治会で教え、学ばなければならないと思っています。」(千葉県・60 代男性)

  • 「横断歩道に立っていてもほぼ止まらないため、手を挙げるようにしています。 歩行者も渡りたいのかの意思表示が必要ですね。」(愛知県・50 代男性)

  • 「警察が取り締まりを徹底すべきです。」(秋田県・70 代男性)

  • 「諸外国の郊外など、横断歩道に立っていれば渡りたいんだとすぐに判断が出来ると思いますが、狭い煩雑な日本の街中などただ単に立っているのか渡りたいのかが不明な場合が多々あります。 私が歩行者の場合には積極的に手を上げて渡りたいとの意思表示をしています。 そうすると左右両方の車両の運転手にも分かりやすく、すぐに止まってくれます。」(神奈川県・60 代男性)

  • 「自動車は一時停止できる構えで横断歩道に接近するべきなのに、そのように実行している運転手はほとんどいない。 『歩行者が横断する気か分からない』という言い訳があるけれども、分からないならばいったん停止してみてはどうか。 それが運転する上での安全配慮というものだろう。 『そんなことやってられない』というのがドライバーの本音だと思うが?」(東京都・50 代男性)

  • 「人と車が衝突したら 100% 人が負けるわけで、そういう力関係のもとで車の不法行為がまかり通ってしまっている。 もはやマナーに期待はできない。 どんどん取り締まって罰金を科すべきである。」(東京都・60 代男性)

  • 「『歩行者が待っていてくれるだろう』という運転手が多すぎる。 信号なし横断歩道では、横断しようとする人がいれば一時停止、いるかどうか分からない時は徐行ですから(道交法 38)、直進車と横断者の事故は本来、起こりえないはずなんです。 即効性のある解決策は、信号なし横断歩道の手前にバンプをつけることです。 そうすれば、どんな車も速度を落とさざるをえませんし、減速したのでそのまま止まって歩行者を優先するようになると思います。 あとは取り締まり強化しかありません。」(東京都・40 代女性)

「弱者に冷たい」背景に

日本人や日本の社会についての意見もありました。

  • 「やはりこれは『他の人も止まらないから』という日本人の横並び意識からきていると思う。 シートベルトや一時停止、酒気帯びなど、日本の交通ルールは警察が厳しい取り締まりをしだしてから守る人が増え始め、ある一定の割合以上になると急にほとんどの人が守るようになる傾向にあると思う。 明らかに歩行者優先の横断歩道で事故が頻発しない限りは警察も取り締まりを強化しないのかもしれない。」(京都府・50 代男性)

  • 「日本は車に限らずだいたい強者優先の社会で、弱者は我慢せよ、と冷たい。 それが車優先にも出ているのでは。横断歩道で渡ろうと、運転者の目をじっと見ていてもほとんど無視され止まってくれません。 ちなみに歩道を走る自転車も、歩行者を押しのけるように走っていくのが多いです。」(東京都・40 代女性)

  • 「車の流れに乗らない方が危険というのをよく聞くが、ただの言い訳に過ぎない。 『赤信号、みんなで渡れば怖くない』とほとんど変わらない。 それで法律違反が許されるならホントに警察はいらない。 歩行者優先を徹底しないと何よりも大切な命を守ることが出来ません。」(埼玉県・50 代男性)

  • 「日本人は、一律で皆が守る決まりやマナーはきちんと守る。 例えば、駅のホームで並んで電車を待つとか。 皆がやってるから自分も、という感じで。 でも、その都度臨機応変に自分で決めなければならず、かつ何かしらの損を伴うものは守らない。 電車内でお年寄りに席を譲るとか。横断歩道でも、皆止まってないし、急いでるし、自分だけ止まるのは損だと思っている。」(神奈川県・50 代女性)

  • 「仕事柄あちこちの国を旅して、車を運転しています。 欧州の国々では、さすが自動車発祥の文化を持つからか、自己責任で周囲をよく見て運転するドライバーが多いと思います。 そして何よりも印象的なのは、信号機が少なく一時停止の交差点が多いことです。 そうなると、横断歩道も含めて状況をよく注視しなければなりません。 それに引き換え、我が国では信号機の数のなんと多いこと。 信号機さえ守れば … の意識が生まれてしまうのも納得です。 自動車とはきわめて個人主義的な乗り物、乗り手の責任で走らせるもののはずなのですが、信号機や追い越し禁止区間の多さなど、"お上" にしたがっていれば良い文化ができてしまったのが根本原因です。」(東京都・70 代男性)

「歩行者妨害」違反、10 年前の 2 倍 警察庁は取り締まり強化

横断歩道では歩行者が安心して渡れるよう、ドライバーが確実に一時停止をすることが最も重要だ - - この認識のもと、警察庁は取り締まりの徹底とドライバーへの啓発を推進するよう全国の警察を指導しています。 横断歩道は、全国に 114 万 6,201 本あります(今年 3 月現在)。 うち、信号機のないものは半数以上の 60 万 6,201 本。 信号機を設けるには、事前に対象となる場所の交通量や交通事故の発生状況などを調査・分析。 信号機に代わる効果的な対策があるかどうかを考慮したうえ、必要性の高い場所を選んでいるといいます。

道路交通法は人が横断歩道を渡っていたり、渡ろうとしたりする時、ドライバーは一時停止しなければならないと規定しています。 警察は「横断歩行者妨害」違反として取り締まります。 違反すると、2 点となり、普通乗用車だと 9 千円の反則金が科されます。 道交法違反全体の取り締まり件数が減少傾向にあるなか、「横断歩行者妨害」違反の件数は増加傾向にあります。 昨年 1 年間の取り締まりは約 11 万 1 千件と 10 年前に比べて 2 倍近くになっています。

取り締まり強化の一方で、横断歩道での交通事故は後を絶ちません。 昨年 1 年間の歩行者と車両の交通事故は 5 万 ,551 件で、10 年前より約 30% 減りました。 このうち信号機のない横断歩道での人身事故は 4,694 件で、10 年前の 15% 減にとどまっています。 警察庁の担当者は「横断歩道で人が渡ろうとしているのに止まらないのはマナー違反ではなく法令違反。 厳しく取り締まるとともに、免許更新時の講習などで教育を行っていく」としています。(浦野直樹)

車優先の意識 変えよう

なぜ止まらないのか、どうしたら止まるのか。 交通心理学が専門の松浦常夫・実践女子大学教授に聞きました。

横断歩道を渡ろうとする歩行者がいるのに止まらないのは、明確な道路交通法違反です。 ルールを守るはずの日本人が法律を無視した運転をして平気なのは不思議です。 心理学では、守るべきルールを「命令的規範」、実際にみんながとっている行動を「記述的規範」といいます。 日本人は後者を大事にする傾向があります。 信号機のない横断歩道の場合、車は「止まらない」が記述的規範になっています。

背景に、道路は車優先という意識があります。 欧米には、車も歩行者も、自転車も交通参加者として同じ権利があるという意識が根付いています。 日本もこの意識に変えていかなければなりません。 一つには、街なかで車のスピードを抑えるようにすること。以前と比べればずいぶんスローになっていますが、より歩行者らに配慮するようにするのです。 スピードが出ていなければ、横断歩道で止まる心理的抵抗も低くなります。

デジタルアンケートの提案にあったように、横断歩道を目立たせることは、歩行者が使う道路という意味合いを強めます。 それには、標識をはっきりさせることも有効です。 内閣府が 2016 年 11 月に行った世論調査では、信号機のない横断歩道を何で判断するかを聞いています。 「横断歩道自体」が 69.5%、「待っている歩行者」が 50.8%、「道路標識」が 47.1%、「ひし形の道路標示」が 23.2% でした(複数回答可)。 歩行者がいるかで判断するのではなく、横断歩道がある場所では原則が基本です。

飲酒運転が減ったのは、厳罰化のほか社会的関心の高まりもあったからです。 横断歩道の場合、止まらない車をしらみつぶしに取り締まるのも、全ての横断歩道に信号機をつけるのも現実的ではありません。 止まる重要性を改めて知らしめることができれば、それが記述的規範に変わっていきます。 歩行者が巻き込まれた 5 万件余りの事故のうち、信号機のない横断歩道で起きたのは 1 割弱。 車が止まれば、この数は確実に、劇的に減ります。(聞き手・村上研志)

これほど多くの人が「横断歩道で止まらない車」にストレスを感じているとは。 ルールは明確、でも現実には守られていない。 ドライバーからは「止まらない言い訳」がいくつも挙がりました。 では、5 千件近い事故が起き続ける現実を変えるにはどうしたらいいのでしょうか。 やはり車本位の思考、運転席からの発想を改めるしかないと思います。 ドライバーも車を離れれば、「止まらない車」の犠牲になりかねない歩行者です。 横断歩道で戸惑う歩行者の気持ちになることはできるはずですから。 (中島鉄郎、asahi = 12-31-17)


信号機ない横断歩道 車が止まる英国、止まらない日本

英国出身で日本に長く住む人の指摘に、日ごろうやむやにしていたことを突きつけられた思いです。 今回は朝日新聞に載った投稿をもとに、みなさんと考えます。 日本では信号機のない横断歩道で歩行者が待っていても、車は止まってくれない。 これはみなさんの実感に近いですか? そして、解決すべき大きな問題なのでしょうか?

11 月 9 日掲載「私の視点(要旨)」

日本では、信号機のない横断歩道では歩行者がいても車は止まらない。 私の母国イギリスやオーストラリアでは車は必ず止まる。 それがルールだからだ。 日本の道路交通法でも歩行者優先で車の停止が定められているが、ルールが守られていない。 歩行者と車のあいだには日本人独特の「あうんの呼吸」があって、その中でいつ渡るかを決めているようだ。 ただ、外国人は「日本人は親切で礼儀正しい」と信じているので、車が止まると思い込み、事故にあう人が出かねない。 この問題に取り組んでほしい。

「あうんの呼吸」に疑問

「私の視点」に投稿した名城大学准教授のマーク・リバックさん (50) は、英国ロンドン生まれ。 日本人と結婚し、通算 20 年以上日本に暮らしますが、今も、日本では車が信号機のない横断歩道で止まらず、歩行者を優先させないことに戸惑っているといいます。

昨年秋、愛知県一宮市内の信号機のない横断歩道で、小学生がスマホのゲームに気を取られた運転手のトラックにはねられ、死亡する事故が起きました。 3 人の子どもがいるリバックさんはショックを受け、かねて疑問に感じていた「横断歩道問題」について、改めて道路交通法などを調べたうえで投稿したといいます。

リバックさんは投稿で「車が必ず止まる」国として、英国とオーストラリアを挙げましたが、掲載後、英国在住の日本研究者から「英国ほどドライバーのマナーが悪い国はほかに数少ない」というメールが届いたそうです。

リバックさんは言います。 「どこの国がいいとか悪いとか、比較して優劣をつけたいわけではありません。 イギリスではと言っても、ある時代のロンドンの一部しか私も知らないわけだから。 ただ、来日する外国人はたいてい『日本人は法律を守る意識が高い』と思い込んでいて、そんな人たちが大勢来る 2020 年の五輪の折など、重大な事故が起きないかと心配になります。 注意喚起をしたかったのです。」

何度か来日したリバックさんの母親は冗談半分で、日本の横断歩道を「Killer Zebra (人殺しシマウマ。 英語で zebra crossing は横断歩道。)」と呼んだことがあります。 初来日のとき、車が横断歩道で止まると思い込み、危うくひかれそうになったといいます。

一方、リバックさんの妻は、横断歩道で車が止まらない理由を次のように話します。 「日本人は人を待たせることを心苦しく感じるし、停車してあげるとあわてて渡ろうとして、反対車線の車にひかれてしまうかもしれない。 また、停車しようと急に減速すると後続車に追突される可能性もある。」 リバックさんは、妻の意見や、毎日のように観察する横断歩道での車と歩行者の様子から、日本では、車も歩行者も、お互いに迷惑をかけない「あうんの呼吸」で横断歩道と付き合っていると感じています。 ただ、「そんな事情は外国人には通じません」と主張します。

リバックさんの妻は、これまでの運転経験から「安全運転のためには『交通ルールを守る』ことだけでなく、『交通の流れを妨げない』必要もあると学んだ」と言います。 「信号のない横断歩道でいつも止まらないわけではないのです。 ただ、停車しなかったときは、『交通の流れを妨げず、流れに乗る』という、場を読んでの判断に基づいている気がします。」 一方で「守られない交通ルール」が存在することは危険だと感じます。 「こうした日本人の運転慣習が変えられないなら、大胆なルールの変更も必要かもしれないですね。」 たとえば、「車優先にしてしまう」ことも。

リバックさんは子どもたちにはこう教えています。 「横断歩道では車が止まったのを見てから、渡りなさい。 信号機のある横断歩道でも、青のときにも停車しない車があるかもしれないから。」 (中島鉄郎、asahi = 12-17-17)

運転 心の余裕ないのか

投稿の趣旨は自分の実感と「同じ・近い」、「少し・全く違う」という意見に分けて、アンケートに寄せられた声を紹介します。

  • 「横断歩道の手前で待ち、走ってくる車に目を合わせても止まってくれたことは全くありません。 横断歩道を歩き出してからきた車はさすがに止まりますが、子連れではなかなか勇気が出ません。 昔住んでいた海外のある国では車は必ず止まってくれて、止まらない車は暴言を吐かれていました。 その国の人が日本に来たらさぞ驚くでしょう。」(東京都・30 代女性)

  • 「幼児を連れて朝夕 20 分の道のりを歩きます。 信号のない横断歩道では止まる車はありません。 減速していない車が見えていても、あえて少し横断歩道に 2、3 歩踏み出して初めて止まる車がほとんどです。」(神奈川県・40 代女性)

  • 「渡ろうとしたらクラクションを長く鳴らされた。」(茨城県・30 代女性)

  • 「本当に同感です。 学校前で、子供たちが道を渡るために立ち止まっていても、止まる車はほぼ無いです。 タクシーや会社名の入った車でも。」(奈良県・40 代女性)

  • 「都会(東京)などでは、まず止まってもらえませんね。 地方だと止まってもらえることもある。 心の余裕がないのでしょうか。 以前、米国のロサンゼルスで街歩きをしていた時は、かなりの頻度で止まってもらえました。」(神奈川県・60 代男性)

  • 「全くこのご指摘の通りだと思います。 日本国内でも地域差があると感じます。 都市部の方が止まってくれるクルマが多いです。」(栃木県・40 代女性)

  • 「危険を感じるので、止まってくれるのを確認するまで渡りません。 たまに、丁寧な運転でスピードを緩めて止まってくれる車と出会うと、とてもうれしく気持ちよくなります。」(大阪府・50 代女性)

  • 「信号の無い横断歩道を歩いていたら車がクラクションを鳴らしながら走ってきたので立ちはだかって停車させたら怒鳴られたので説教した。」(千葉県・50 代男性)

  • 「私もいつも思っていたことでした。 横断歩道脇で立っていても、8 割方の車は当たり前のように前を通り過ぎます。 なので、よほど危険でない限り、車が近づいていても手を上げて渡るようにします。」(茨城県・40 代女性)

  • 「片側一車線の道路の半分近くまで進んでも、車は中央線を越えてそのままのスピードでよけていきます。 接触覚悟で横断歩道を突き進むしかないのでしょうか。」(福島県・60 代男性)

  • 「自分の車が横断歩道で止まって歩行者が歩いていたら対向車が目の前を通過していった。 警察官がスピード取り締まりをして歩道にいても、その前の横断歩道を渡ろうとしたら自動車は止まらず、警察官も何もしなかった。」(埼玉県・40 代男性)

  • 「最近は歩行者役ばかりですが、まず止まってくれる車はありません。 もう一つ気に入らないのが、横断歩道なのに歩行者が渡るときに何となく駆け足や早足になりがちです。 何も悪いことはしていないんですが。」(神奈川県・50 代男性)

  • 「通勤途中に横断歩道を渡ろうとしたら、トラックが突っ込んで来た。 横断歩道を歩いてるのに突っ込んでくるなんて信じられない。 ベビーカー押して歩いていて、家族連れの車が止まってくれないのも残念。」(神奈川県・40 代男性)

  • 「カナダの西海岸在住です。 法律で決められていますので、運転手が不注意な時以外、車が止まらないことはありません。 しかし歩行者も必ず車がスローダウン、停止したことを確かめてから横断歩道を歩き始めます。」(海外・30 代女性)

歩行者の方がワガママでは

  • 「歩行者として … 横断歩道で車が止まらない、止まってくれないという経験はないです。」(千葉県・70 代男性)

  • 「歩行者がいるときはほとんどの車は止まると思います。 逆に歩行者の立場になれば車は当然止まると油断せず注意して渡るのが当然だと思います。」(神奈川県・70 代女性)

  • 「運転手の目を見て、足早にお辞儀しながら渡れば、快く待ってくださる運転手さんの方が多いという実感です。」(東京都・10 代女性)

  • 「手を上げていれば車は止まります。 ただ立っているのであれば、運転手はわからない。 日本のドライバーはマナーが良い。 歩行者の方が、ワガママだと思います。」(東京都・60 代男性)

  • 「都心では、横断歩道では車は止まってくれるように思います。 つまり、交通ルールの文化度の違いではないでしょうか。」(東京都・70 代男性)

  • 「止まってもらえなくても、自分は待つし、実際止まってくれる人は必ずいる。 逆に、車が待ってるのに歩いて渡る人が多くて、見てるこっちが申し訳ない気持ちになる。 特に、スマホにイヤホンで、全く車に気づいてない人には、腹が立つ。」(佐賀県・10 代女性)

  • 「信号機のない横断歩道でも、手を上げて渡ろうとすれば、ライトをちかちかし、速度を緩めてくれて、だいたいいつも渡ることができます。 横断歩道で車が止まってくれないという経験はないです。」(山形県・40 代女性)

  • 「信号機のない横断歩道を渡るとき、車に向かって手を上げるとほとんどの運転手が手招きで通してくれるので、このような指摘はわかりません。 渡るときはお礼の一礼はします。」(東京都・70 代女性)

アンケート「横断歩道、止まらない?」をで実施中です。