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- 敗 走 -

とうとう、敵の戦車が入って来たのだ。 焼き捨てるはずの荷物もそのままに、銃、水筒、握り飯を引っ掴み、飛び出すやいなや自軍の流れの中に飛び込んだ。

小高い鉄道線路を横切ると、果てしない平原がはるか遠い山の彼方まで続いている。 戦車から身を隠すにはあの山まで走らなければならない ・・・・・・ と、思う間もなく今度は飛行機が飛んできた。 物凄い低空である。 乗っている敵の顔まで見えた。

一番恐い機銃掃射を逃れようにも、辺りは木一本無い果てしない平原である。 二機の敵機が我々の頭上を旋回しだした。 「万事休す !」、観念の目を閉じると、禿鷹に狙われた子鼠のようにぐったりと地面にうつ伏せて、飛んでくる弾丸を待ち受けた。

だが、彼等は我々に機銃掃射を浴びせなかった。 弾丸が無かったのか? 全く不思議である。

その日、山の麓まで逃げ延びると、我々三名は日没を待った。 一刻も早く、小隊本部にたどり着かなければならない。 真っ暗な夜空に星がいっぱい瞬いていた。 星の位置を頼りに南に向かって急ぎながら、遥か彼方の平原のあちこちに、打ち上げ花火のような砲弾の炸裂が夜空に舞うのを見ることができた。