コンビニ : ローソンとスリーエフが資本業務提携で基本合意 コンビニ大手のローソンと中堅のスリーエフ(横浜市)は 27 日、資本業務提携で基本合意したと発表した。 12 月下旬の本契約を目指す。 ローソンはスリーエフの発行済み株式総数の最大 5% を取得し、商品の共同開発や仕入れの共通化などにも取り組む。 「経営の独立性や固有の企業ブランド・文化を維持する」との姿勢も示している。 協業内容の詰めに時間がかかり、基本合意は当初の予定より約 2 カ月遅れた。 ローソンは中国地方が地盤のポプラ(広島市)にも約 5% 出資し、商品の共同仕入れや物流で連携している。 山陰では両社の看板を掲げた「ローソン・ポプラ」という新型店舗も出した。 コンビニ業界では、最大手のセブン-イレブン・ジャパンに対抗しようと、ローソンとファミリーマートがそれぞれ中堅コンビニを取り込み、再編の動きが続く。 ファミリーマートはココストア(名古屋市)を 12 月 1 日に吸収合併し、サークル K サンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスとは来年 9 月に経営統合することで合意している。 (kyodo = 11-27-15) 結婚式場でトラブル多発 契約急がせキャンセル料は高額 結婚式場の予約をキャンセルした時に、申込金が返金されなかったり高額なキャンセル料を請求されたりする例が相次いでいると国民生活センターが 5 日、発表した。 「きょう申し込めば 100 万円安い」、「あすになれば良い日取りは埋まってしまう」などと契約を急がされた例が目立つという。 センターは「キャンセル料の発生時期など契約内容をしっかり確認してほしい」と呼びかけている。 全国の消費生活センターなどに寄せられた結婚式をめぐるトラブル相談は、2014 年度までの過去 5 年間で約 8,200 件を数え、その約 9 割は契約・解約に関する相談だった。 「説明を 5 時間聞き、冷静な判断ができず内金 20 万円を支払った。 後悔して翌日キャンセルを伝えたが、返金できないと言われた。」 「1 年以上前にキャンセルしたのに、申込金 20 万円が全額キャンセル料とされた。」といった事例が多いという。 センターは「結婚式の契約は消費者にとって非日常的なことなので、せかされると冷静さを失いがちになる」と分析する。 「キャンセル料を巡る近年の裁判例を見ると、消費者側の主張が認められるのは難しい。 慎重に検討してほしい。」と話している。 (毛利光輝、asahi = 11-5-15) エスカレーター片側空け、追い越し危険 救急搬送が増加 エスカレーターで急ぐ歩行者のために片側を空けるマナーが定着しているが、追い越しの際に体や荷物があたって転倒するケースが目立っている。 東京消防庁の調べでは、搬送される人がここ数年で増加。 鉄道事業者は注意を呼びかけ、メーカーも対策に乗り出した。 国内最多の 1 日 75 万人が乗車する JR 新宿駅。 エスカレーターの右側を次々と急ぎ足のサラリーマンらが歩いて上っていく。 左側に立つ利用者は、しっかりと手すりをつかんでいた。 友人との会合で週 3 回ほど新宿駅を利用するという横浜市の須藤孝夫さん (78) は「できるだけ端に寄っている。 荷物があたって転んだことがあるので。」と話した。 東京消防庁によると、都内でエスカレーター事故で救急搬送されたけが人は増えている。 2012 年は前年より 93 人多い 1,289 人で、13 年は 1,380 人、14 年は 1,443 人にのぼった。 年齢別では 65 歳以上が 58% で、5 歳未満が 4% だった。 重傷は 16 人いた。 歩行中の事故では「後ろから来た男性と接触して転び、右手や右ひざに軽いけが(2 月、52 歳女性)」、「上りエスカレーターを飲酒後に上り、バランスを崩して後ろ向きに約 30 段転落して重傷(6 月、66 歳男性)」などがあった。 東京都身体障害者団体連合会(都身連)には、追い越しされた際に白杖(はくじょう)を蹴られたという視覚障害者の相談もある。 脳梗塞(こうそく)で左半身にまひが残る立川市の杉田陽子さん (68) は右側の手すりにつかまりたいが、慣習に従って左に並ぶ。 体の前で右手をクロスして手すりをつかむ。「右側に立って、じゃまと怒鳴られたことがあった。 バランスは取りにくいが仕方ない。」 (東郷隆、asahi = 11-3-15) 小学校のいじめ、過去最多 12 万件 再調査で大幅増 全国の小学校が 2014 年度に把握したいじめ件数が過去最多の 12 万 2,721 件だったことが、文部科学省の調査でわかった。 中学、高校などを合わせると 18 万 8,057 件で、前年度より 2,254 件増えた。 文科省が 27 日、全国の小中高校、特別支援学校を対象にした「問題行動調査」の結果を発表した。 中学校は 5 万 2,969 件で前年度より 2,279 件減った。 結果は 6 月までにいったんとりまとめられたが、7 月に岩手県矢巾町で自殺した中学 2 年の男子生徒が、いじめを受けたとアンケートに記入していたのに、学校が認めなかったことを問題視。 文科省は各地の教育委員会などにいじめの認知件数の再提出を求めた。 その結果、最初の提出時よりも全体で約 3 万件増えたという。 大きく増えたのは、4.3 倍になった福島県、2.7 倍の福岡県、2.1 倍の岩手県など。 (高浜行人、asahi = 10-27-15) ◇ ◇ ◇ 児童虐待、最多 8.9 万件 対象拡大で 2 割増 14 年度対応 全国の児童相談所(児相)が 2014 年度に対応した児童虐待は 8 万 8,931 件で、前年度から 1 万 5,129 件 (20.5%) 増えた。 統計を取り始めた 1990 年度から 24 年連続で過去最多を更新。 厚生労働省が 8 日に速報値を公表した。 検証を経て 13 年度中に虐待で死亡したと確認された事例も同時に公表され、対象の子どもは 69 人に上った。 厚労省が集計したのは、住民や警察などから通報や相談を受けた児相が、18 歳未満の子どもに対する虐待と判断して対応した件数。 12、13 年度は前年度より 1 割程度の増加だったが、昨年度は 2 割と急増した。 背景には、対応する対象が広がったこともある。 厚労省は 13 年夏、虐待された子どもだけでなく、目撃したきょうだいも心理的虐待を受けたとして対応するよう自治体に通知。 子どもの前で親が配偶者に暴行する「面前 DV」を心理的虐待として、警察から通告される事例も増えている。 都道府県別にみると、大阪、東京、埼玉、愛知の 4 都府県で前年度より 1 千件以上増えた。 13 年度中に虐待で亡くなったと確認された 69 人の子どものうち、無理心中以外は 36 人だった。 無理心中以外の死亡時の年齢は 0 歳が最多の 16 人で、2 歳までが 24 人と 3 3分の 2 を占めた。 加害者は実母が 16 人で最も多く、実父が 8 人。 実母と実父の両方も 5 人いた。 (asahi = 10-8-15) 倒壊恐れの空き家取り壊し 特措法に基づき全国初 神奈川県横須賀市は 26 日、今年 5 月に全面施行された空き家対策特別措置法に基づき、老朽化により倒壊の恐れがある所有者不明の空き家を行政代執行で取り壊す作業を始めた。 横須賀市によると、特措法に基づく取り壊しは全国初。 対象は同市東浦賀 1 丁目の木造住宅で、11 月末に除去作業を完了する予定。 費用は市が負担する。 市によると、2012 年 10 月、周辺住民から市に「屋根が落ちてきそうで危険だ」などの苦情が寄せられた。 外壁も含めて倒壊の恐れがあり、市は放置すれば著しく危険となる恐れがある「特定空き家」と判断した。 住民票や登記簿で所有者が特定できず、特措法に基づいて固定資産税の情報を取得したが、所有者を特定できなかった。 特措法によると、特定空き家に認定した場合、市は所有者に除去、修繕などの助言や指導、勧告、命令ができる。 措置が取られなかったり不十分だったりすれば、市が代執行することも可能となる。 (kyodo = 10-26-15) ハロウィーン商戦、過熱ぎみ 市場規模はバレンタイン級 お化けや魔女に仮装するハロウィーンの熱気が高まっている。 数万人規模のパレードが予定され、警察が混乱防止に力を入れる。 「仮装出勤」を勧める会社や「仮装登校」を認める学校も出てきた。 市場規模が近くバレンタインを上回るとの見方もあり、ハロウィーン商戦は過熱ぎみだ。 ■ 「人手、年末年始に匹敵」 週末の 24 日、東京・渋谷。スクランブル交差点には仮装した若者の姿がみられ、ハチ公像もドレスアップされた。 複合施設「渋谷ヒカリエ」では仮装コンテストが開かれた。 蝶を模した衣装で優勝した米国出身のネルソン・フランチェスカさん (29) は「米国では主に子ども向けのイベント。 日本のハロウィーンは大人も楽しめる。」と笑顔を見せた。 地元の事業者などが実行委員会をつくり、企画している。 東急電鉄の小島惇さんは「この時期の渋谷は、年末年始に匹敵する人出」と話す。 25 日も催しが相次ぐ。 JR 川崎駅周辺の仮装パレードは、参加枠 2,500 人が 5 日間で埋まった。 担当者は「商店街の一イベントが年々大規模になる」といい、19 回目の今年、10 万人以上の来場を見込む。 東京・六本木でも商店街振興組合主催のパレードに 13 万人が集まる見通しだ。 ハロウィーン本番の 31 日、渋谷ではクラブやライブハウス 20 カ所を貸し切りにするイベントがある。 池袋では動画投稿サイトと連動し、昨年は約 5 万人が来た「コスプレフェス」が開かれる。 札幌市では初開催の「大通ハロウィンカーニバル」、新潟市でも「にいつハロウィン仮装まつり」が予定される。 (藤原学思、岡林佐和、asahi = 10-25-15) ◇ ◇ ◇ ハロウィーン今年も活況 都市圏 4 人に 1 人「参加する」 首都圏・近畿・東海の 3 大都市圏に住む 4 人に 1 人が、今年はハロウィーンに参加する - -。 リクルートライフスタイルがそんな調査結果を公表した。 イベントやホームパーティーなどに「参加する」と答えた人は 23.9% で、昨年の 19.8% を大きく上回った。 20 - 60 代の男女にインターネットで 9 月に調査した。 1 万 424 人から回答があり、20 代では 3 割超の人が参加すると答えた。 ハロウィーンが国民的イベントとして定着しつつあるようだ。 ハロウィーンはもともと欧米の宗教行事で、米国では子ども中心の催し。 大人も仮装して街に繰り出す日本のやり方には「本来の意味と違っても日本風に楽しめばよい (47.7%)」、「はめを外す機会 (42.0%)」との回答が多かった。 独自の楽しみ方が広がっているようだ。 (奥田貫、asahi = 10-24-15) 福島の男性、結婚準備に日本一「まめ」? 民間調査結果 福島県の男性は結婚の準備に日本一「まめ」? 結婚情報誌「ゼクシィ」を発行するリクルートマーケティングパートナーズが、こんな調査結果を発表した。 県内の男性は指輪や式場選びに熱心で、披露宴で女性を喜ばせる「サプライズ演出」を仕掛ける傾向も突出して高いという。 「ゼクシィ結婚トレンド調査」は 2014 年 4 月から 1 年間に結婚式を挙げた全国の女性読者にアンケートし、福島県、首都圏、九州など 15 地域で比較した。 県内では 144 人が回答した。 婚約指輪を選ぶ際、「夫が積極的に情報収集をした」と答えた県内の女性は 16.0% (平均 11.4%)で、15 地域で最も高かった。 挙式や披露宴などの会場選びでも「夫が自ら望んで店や会場に足を運んだ」が 38.9% (同 33.8%)で 1 位だった。 新婦の衣装や引き出物選びでも、県内の男性はどの地域より熱心という。 県内の男性は、披露宴で女性の知らない趣向をこらし、相手を驚かせるのも好きらしい。 「新郎が新婦に対し、思いがけないプレゼントや手紙などのサプライズ演出をする」と答えたのは 23.7% (同 15.5%)で、ダントツのトップだった。 男性が結婚準備に協力的なせいか、披露宴やパーティーの会場選びにかける期間は 1.8 カ月(平均 1.5 カ月)で、「長野・山梨」と並んでこちらも首位。 結婚式当日の写真やビデオ撮影の構想を練る期間も、15 地域で一番長いという。 なぜ県内の男性は結婚の準備に熱心なのか。 同社の担当者は「福島は結婚式や披露宴の招待客が比較的多い。 地元のつながりを大切にし、招待客をもてなそうという気持ちが強いのではないか。」と分析する。 (asahi = 10-19-15) 元気な高齢者増える 75 歳以上の体力、過去最高に 健康志向の高まりを背景に、高齢者の体力や運動能力が過去最高レベルになったことがわかった。 10 月 12 日の「体育の日」を前にスポーツ庁が 11 日、「2014 年度 体力・運動能力調査」の結果を公表した。 65 - 79 歳は 6 分間の歩行距離や握力など6種目を測定。 総合成績は 1998 年の調査開始からほぼ右肩上がりで、2014 年は 5 歳刻みの平均で 65 - 69 歳の男性と 70 - 74 歳の女性、75 - 79 歳の男女で過去最高を更新した。 1998 年と比べると約 5 歳若い世代と同等になった種目もあった。 「ほぼ毎日(週 3 - 4 日)」運動する割合は、20 - 50 代が 1 割前後に対し、65 歳以上の全世代でいずれも 3 割を超えた。 65 - 79 歳は「休まず歩ける時間」や「立ったままズボンがはけるか」など日常動作についても調査。 1 時間以上歩ける割合は、ほぼ毎日運動する男性が 74%、女性 60% で、ほとんど運動しない人より約 30 ポイント高かった。 着替えも約 15 ポイントの差があり、運動習慣が生活に大切なこともわかった。 (J-cast = 10-12-15) 常駐の住職いない寺 1 万 2 千カ所 檀家減少や後継者不足 7 万を超す全国の寺院のうち、別の寺の僧侶が住職を兼ねていたり、住職がいなかったりして、常駐する住職のいない寺が、1 万 2 千カ所にのぼることが、朝日新聞の調べでわかった。 過疎・高齢化による檀家(だんか)の減少や住職の後継者不足などが要因で、今後「寺の消滅」が加速する可能性がある。 文化庁の宗教年鑑(2014 年版)によると、全国の仏教系宗教法人の寺院は 7 万 5,900。 今回、全国の寺の約 8 割を占める主要 10 宗派(曹洞宗、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、浄土宗、日蓮宗、高野山真言宗、臨済宗妙心寺派、天台宗、真言宗智山(ちさん)派、真言宗豊山(ぶざん)派)に今年 2 月時点でこの 10 年間の所属寺の状況を尋ね、日蓮宗以外の 9 宗派から回答を得た(高野山真言宗は 09 年以降)。 専従の住職がおらず、別の寺の僧侶が住職を兼ねる「兼務寺」は 1 万 496、住職がいない「無住寺」は 1,569 で計 1 万 2,065 カ所(全体の約 16%)。 10 年前の調査や記録がない真宗大谷派と高野山真言宗を除く 7 宗派では、10 年前の計 9,104 から 803 増えた。 宗派別では曹洞宗、浄土宗、真宗大谷派の順に多く、真言宗の智山(ちさん)・豊山(ぶざん)両派、臨済宗妙心寺派は所属寺の 3 分の 1 にのぼる。 (岡田匠、asahi = 10-11-15) ヒノキ風呂にちゃぶ台 半世紀前のレトロ団地復元 堺 ![]() 全国で団地を管理する都市再生機構 (UR) は 10 日、堺市東区の白鷺(しらさぎ)団地(1,781 戸)の 1 室を 52 年前の高度経済成長期に建設された当時の姿に復元し、公開した。 建て替え予定の棟では 2 年前、住人が 50 年間大切に使い続けたヒノキ風呂が見つかった。 別の部屋に当時からのキッチンや床、窓枠もあり 1 室に移設した。 耐用年数は 70 年。 改修を進め、復元部屋に似せたレトロ部屋を 5 万円前後で貸し出す。 「昔の生活に感激する人もいて反応は上々。 契約までこぎつけたい。」 (asahi = 10-11-15) 路線バスに宅配荷物も 路線維持と宅配効率化狙い 宮崎 乗客減に悩む宮崎県の山あいの路線バスに、宅配の荷物を載せる「客貨混載」の取り組みが今月、始まった。 乗車率が 10% を割る路線の維持と宅配会社の効率化をねらった協力で、西日本では初という。 「混載バス」で協力するのは宮崎交通(宮崎市)とヤマト運輸(東京都)。 対象は同県西都市と西米良村を結ぶ路線で、車両の中央部に荷台スペース(高さ 64 センチ、幅 197 センチ、奥行き 73 センチ)を設置した。 座席数は 30 から 22 に減ったが、乗客への影響はないという。 西米良村のバス停を出るバスに、ヤマトのドライバーが村内で集めた荷物を載せる。 ほかのバス停でも荷を積み、西都バスセンターでヤマト側が荷物を受け取る。 戻りのバスにも荷物を載せ、各バス停で受け取るドライバーが各家庭に配達する。 1 日 4 往復 8 便(休日 3 往復 6 便)のうち 3 便で実施。 ヤマトが宮交に配送料金を支払う。 (中村光、asahi = 10-7-15) ◇ ◇ ◇ 宅配便、留守で 2 割が再配達 排ガス増・人手不足に懸念 宅配便の取扱量が増えるなか、受取人の留守で 2 割が再配達となっている。 輸送トラックの排ガスが増えることや運転手不足への懸念が浮上し、国が対策に乗り出した。 宅配業者は新たな受け取り拠点をつくるなど、サービスを広げて効率的な配達を図っている。 「また間に合わなかったか …。」 東京都内に住む出版会社勤務の女性 (30) は 7 月、マンションの郵便受けに入っていた不在票を見て肩を落とした。 静岡県の母親から菓子が送られてきたが、仕事で不在だった。 再配達を依頼したが、帰宅が間に合わなかった。 宅配ボックスのないマンションに移って再配達の依頼が増えている。 (中田絢子、asahi = 10-3-15) 祭りや懇親会に支出 OK? マンション管理費めぐり激論 マンションの管理をめぐる国の指針で、住民のコミュニティー作りを進める項目を国が削除しようとしている。 管理費を地域の祭りや懇親会に支出することに住民の賛否が割れ、トラブルが生じているためだ。 管理組合の団体は「災害時などに向け、住民交流は欠かせない」と反発する。 ■ 「コミュニティー推進」 国が削除方針 「近隣住民の皆さんも奮ってご参加下さい。」 都内のマンションで 7 月、管理組合主催の夏祭りの案内が掲示された。 「なぜ、マンション以外の人の費用を負担する必要があるのか。」 住民の男性は不信を抱き、参加を見送った。 埼玉県のマンションでは、予算 10 万円で開いた夏祭りで酒が振る舞われ、理事の知人の政治家があいさつした。 参加者から「管理費の使い方としておかしい」との声があった。 管理組合の活動で、住民交流を進める催しへの支出にトラブルが目立っている。 公益財団法人「マンション管理センター」には、近隣自治会への香典の支出や住民の飲食費への支出などについて昨年度、378 件の相談が寄せられた。 有識者らでつくる国土交通省の「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」は、各地のマンション管理組合が規約をつくる際の指針「標準管理規約」について 3 年間、議論してきた。 (峯俊一平、asahi = 9-30-15) 11 月の電気・ガス料金、13 社値上げへ 原油など上昇 電力 10 社と都市ガス大手 4 社は 29 日、11 月の電気・ガス料金を発表した。 料金算定のもとになる 6 - 8 月の資源価格は、石炭がやや下がったものの、原油や液化天然ガス (LNG) が上昇したため、電力 9 社とガス 4 社がそろって値上げする。 LNG 火力がない北陸電力は横ばい。 輸入燃料費の変動を自動的に毎月の電気・ガス料金に反映させる制度によるもの。 11 月の電気料金に反映させる原油価格は、10 月に反映させた価格に比べ 0.7% 上昇。 LNG も 2.3% 上昇した。 北陸を除く電力 9 社が示す平均的な家庭で 5 - 42 円の値上げになる。 (asahi = 9-29-15) 通信契約めぐる相談 6 割増 「いつの間にか更新された」 電話やインターネットなどの通信サービスの契約をめぐり、総務省電気通信消費者相談センターに 2014 年度に寄せられた苦情・相談は 1,049 件で、前年度から 1.6 倍に増えた。 目立った苦情は「いつの間にか契約が更新されていた」、「契約先を変えた覚えはない」といったもの。 携帯電話大手の 2 年ごとに契約が自動更新される「2 年縛り」問題が騒がれたことで、関心が高まったようだ。 NTT 東日本・西日本が 2 月、圧倒的なシェアをもつ家庭向け光回線の卸売りを始めたが、これを使って家庭向けに参入する業者が相次ぎ、競争が激化したのも一因とみられる。 センターは「契約時は条件をよく確認し、渡された書類は保管しておくことが重要」と呼びかけている。 (asahi = 9-27-15) サンマ取れない … 台湾・中国で人気、公海で「先取り」 秋の味覚として親しまれているサンマ。 最近は台湾や中国でも人気だ。 日本に近づく前に大量に取られてしまうため、資源量が減ったという指摘もある。 大切なサンマを守ろうと、日本は他の国・地域とルールづくりに乗り出した。 今月上旬に東京都品川区であった恒例の「目黒のさんま祭り」。 20 回を迎えた今年は約 7 千匹のサンマが岩手県宮古市から直送され、旬の味を楽しもうと約 3 万人が訪れた。 無料で振る舞われた塩焼きは 3 時間待ちの人気ぶりだった。 漁業情報サービスセンターによると、今年のサンマの水揚げ量は 21 日現在で約 2 万 4 千トン。 昨年の同じ時期(約 4 万 4 千トン)に比べて半分ほどとふるわない。 9 月に台風の影響で漁に出られなかったことや、日本沿岸に寄ってくる群れが少なかったことが影響したとみられている。 札幌市中央卸売市場では、7 月の初競りで 1 キロ 7 万円と同市場での最高値を記録。 「ご祝儀相場」に水揚げ量の少なさが重なり、昨年の初競りの 2.4 倍に上った。 9 月も不漁のため高値が予想されたが、漁業情報サービスセンターの担当者は「平年並みか少し高い程度」と話す。 小ぶりなサンマが多く、高値が付きにくいという。 築地の鮮魚店「斉藤水産」の斉藤又雄さん (59) は「昔はでかいのが普通だったがこのところは寂しいよ」と嘆く。 ここ数年は 1 匹 200 グラムを超える大型サンマが品薄で、160 - 180 グラムが中心だという。 さんま祭りで、サンマを焼く手伝いをしていた東京宮古同郷会理事の伊藤隆吉さん (65) も「この時期にしては体長が短く、太さももう一つ。 大きいほうが脂がのるから小さくて物足りない。」と話す。 実は小さいだけではなく、サンマは大幅に減っているという。 水産総合研究センターの説明では、2014 年の北西太平洋のサンマの資源量は約 253 万トン。 03 年の約 502 万トンに比べて半減した。 近海でサンマ漁をする日本にとっても大きな影響があるという。 14 年の漁獲量は約 23 万トンで、過去 20 年間でピークだった 08 年の約 35 万トンの 3 分の 2 にとどまる。 ■ 資源管理の枠組みを協議 日本近海のサンマが減った理由には、海水温の変化など諸説あるが、最近は外国漁船による公海での「先取り」が注目されている。 北太平洋の公海に広く生息するサンマは、8 月以降、日本沿岸に回遊してくる。 鮮度を重視する日本では、沿岸の排他的経済水域内での漁が大半だ。 ところが、資源管理のルールがない公海で、台湾が大量にサンマを取っている。 14 年の漁獲量は約 23 万トン。 世界の国・地域別ではトップだ。 中国の漁獲量も急増しており、同年の約 7 万 6 千トンは公海でサンマ漁を始めた 12 年の約 38 倍に上る。 水産庁によると、ともに健康志向や魚食ブームで消費量が増えているという。 一方、日本の 13 年の漁獲量約 15 万 7 千トンのうち、公海で取ったのは約 8 千トンにとどまる。 岩手県の宮古水産物商業協同組合の島香尚組合長は「日本にサンマが近づく前に取られると、少なくなるのは当然だ」と心配する。 水産庁によると、200 トン未満の漁船で漁をする日本に対し、台湾や中国は 1 千トン規模の大きな漁船でサンマ漁をしているという。 今月 3 日、日本が主導して、資源管理の枠組みを話し合う北太平洋漁業委員会 (NPFC) の初会合を開いた。 日本、中国、韓国、ロシア、台湾、カナダの 6 カ国・地域が、17年に資源量を維持できる漁獲量を調べた上で、新たな資源管理ルールを作るまでは許可漁船を急激に増やさないことで合意した。 漁船への発信器の取り付けを義務化することや漁船の登録制度を導入することも盛り込んだ。 水産庁は「各国・地域が法的義務を負う保存管理措置ができた」との立場で、NPFC 後の記者会見では、林芳正農水相が「大事な海域なので、科学的根拠に基づいた調査で、適切な資源保護の主導的な立場を取りたい」と話した。(渡辺洋介、asahi = 9-23-15)
80 歳以上 1,000 万人超 65 歳以上 3,384 万人、最多更新 「敬老の日」国推計 21 日の「敬老の日」に合わせ、総務省は 65 歳以上の高齢者の人口推計(15 日現在)を公表した。 3,384 万人で総人口に占める割合は 26.7% と、いずれも過去最高になった。 80 歳以上は 1,002 万人(総人口の 7.9%)と初めて 1 千万人を超えた。 女性は 10 人に 1 人が 80 歳以上になる。 年齢別では、70 歳以上は 2,415 万人(総人口の 19.0%)、75 歳以上は 1,637 万人(同 12.9%)。 85 歳以上は 501 万人(同 3.9%)で、女性が 70% の 351 万人を占める。 男性高齢者は 1,462 万人(男性人口の 23.7%)、女性は 1,921 万人(女性人口の 29.5%)。 10 年前に比べて総人口は 94 万人減っているが、高齢者は 808 万人増えている。 一方、労働力調査によると、働く高齢者は昨年 681 万人に上り、11 年連続の増加で過去最多になった。 65 - 69 歳の男性 50.5%、女性 30.5% が働いている。 日本の高齢化は急速に進んでいる。 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、第 2 次ベビーブーム(1971 - 74 年生まれ)の世代が 65 歳以上になる 2040 年には、総人口の 36.1% が高齢者になる。 (asahi = 9-21-15) イトーヨーカ堂、最大 40 店閉鎖へ 5 年かけ全国の 2 割 セブン & アイ・ホールディングスは、傘下のイトーヨーカ堂がもつ総合スーパーなど最大 40 店を、今後 5 年をかけて閉める方針を固めた。 商品を画一的に扱う方式を改め、地域に合わせた品を充実させてきたが、採算性の低い店は閉める。 閉鎖対象となるのは、「イトーヨーカドー」や「アリオ」など、全国に 181 ある店の約 2 割。 来年 2 月までに数店、その後は年 10 店ほどを見込む。 社員はグループ内で配置転換し、パート従業員も近くの店で働けるよう配慮する。 ヨーカ堂は 2015 年 2 月期の売上高が 1 兆 2,800 億円あるが、営業利益は 18 億円と収益性が低い。 「ユニクロ」や家具の「ニトリ」、「ヤマダ電機」などの専門店に押され、衣料品や住居関連商品が不振だからだ。 生鮮以外の食料品を安く扱うドラッグストアや、スーパーに似た品ぞろえを増やしているコンビニとも競合している。 新しく出す店では、衣料品売り場の縮小や食品に特化するなどの改革を進めていく。 他社でも、ユニーグループ・ホールディングスがファミリーマートとの経営統合交渉のなかで、スーパー数十店を閉めることを検討している。 (asahi = 9-18-15) ◇ ◇ ◇ ユニー、スーパー数十店の閉鎖検討 ファミマとの統合で ユニーグループ・ホールディングスは、傘下のスーパーで不採算店の閉鎖を検討していることを明らかにした。 コンビニ大手ファミリーマートとの経営統合交渉で、不振のスーパー事業のたて直し策が焦点になっていた。 関係者によると、対象は今後詰めるが、数十店を閉める案が出ている。 スーパーはユニーグループの中核事業で、「アピタ」、「ピアゴ」などの名で約 230 店を展開。 地域は東海を中心に、東北から関西まで広がる。 ただ、近年は業績が低迷し、事業会社「ユニー」の 2015 年 2 月期の売上高は前年比 3.3% 減の 7,456 億円、営業利益は同 14.3% 減の 104 億円だった。 食品分野は比較的堅調だが、衣料品や生活用品は、ユニクロのような専門店に客を奪われ、苦戦が続いている。 ユニーグループは来年 9 月の経営統合をめざし、ファミリーマートと交渉中。 協議では両社のコンビニ店名の一本化などと並び、ユニーのスーパー事業の扱いも主な議題になっていた。 (asahi = 9-18-15) 高齢者の誤飲・誤食事故相次ぐ 消費者庁が注意喚起 高齢者による誤飲や誤食事故が相次いでいるとして、消費者庁は 16 日、注意喚起を行った。 認知症による判断力の低下などが原因とみられる。 薬を包装シートごとのみ込んだり、飲料と漂白剤を間違えてのんだりするなど、深刻なケースも目立つ。 消費者庁によると、医療機関などから 2009 年 9 月以降に寄せられた 65 歳以上の高齢者の誤飲・誤食事故は 165 件。 うち 25 件は入院にいたっていた。 内容別で最も多かったのは、内服薬などの包装の誤飲で 69 件。 そのうち 53 件はプラスチックにアルミなどを貼り合わせた PTP 包装シートで、食道や腸を傷つけるなどしていた。 ほかには洗剤・洗浄剤など 26 件、乾燥剤 11 件もあった。 消費者庁は、視覚や味覚などの衰えに加え、認知症による判断力低下が一因とみている。 「気がつくのが遅れれば重大な結果になりかねない。 高齢者がいる家庭は、食品や薬とそれ以外のものを分けて保管するなどの対策をしてほしい。」と呼びかけている。 (重政紀元、asahi = 9-16-15) 日照不足で野菜価格が高騰 キャベツやキュウリ、育ち悪く キャベツやキュウリなど野菜の価格が高騰している。 農林水産省が 15 日に公表した 7 - 11 日の「野菜小売価格緊急調査」によると、キャベツが平年に比べ 41% 高い 1 キロ 206 円、キュウリが 24% 高い同 736 円と高騰した。 日照不足など天候不順で育ちが悪く、出荷量が減っているためだ。 宮城、栃木、茨城をはじめ、豪雨による被害が各地の農作物に出ており、今後の出荷に影響し、価格高騰が長引く恐れもありそうだ。 キャベツの価格は 8 月 17 日の週(209 円)に迫り、キュウリは 4 月 20 日の週(770 円)に次ぐ水準となった。 (kyodo = 9-15-15) 年齢確認、トラブル多発 「タッチパネル無意味」の声も 少年にたばこを売ったコンビニ店の運営会社と店員の双方を無罪とした 15 日の高松高裁判決。 ならばどうすれば、未成年者へのたばこ販売は防げるのか。 年齢確認をめぐるトラブルは、全国で多発している。 ローソンも加盟する日本フランチャイズチェーン協会は今年 1 - 2 月、全国の約 5 万店を対象に、たばこや酒などを売る際の年齢確認時のトラブルについてアンケートを実施。 2014 年には約 1 万 7 千店で、たばこの販売時にトラブルがあったと回答していた。 年代別で多いのは高校生以上とみられる未成年者で約 1 万 1 千店。 中学生以下とみられる客とのトラブルも4 4 店余りに上った。 トラブルの内容は「文句を言う」が約 1 万 5 千店。 「大声で恫喝」が約 9 千店。 1 千以上の店で、店員が胸ぐらをつかまれるといった暴行を受けたり、物を壊されたりしていた。 こうしたトラブルを受け、約 3 万 4 千店が「身分証の提示を法律や条例で制度化する」ことを求めたという。 今回の事件で起訴罪名となった「未成年者喫煙禁止法」は、未成年者をたばこの害から守り、健やかに育てるとの趣旨で 1900 (明治 33)年に施行された。 たばこによる健康被害を防止する機運が国際的に高まるなか、2001 年の法改正で、たばこを買う客への年齢確認が販売者に義務づけられた。 08 年には成人識別カード「タスポ」が導入され、自販機で未成年者がたばこを買えなくなった。 こうした動きの中で、店頭販売における年齢確認に伴うトラブルが増えた。 そこで 11 年以降、大手コンビニが相次いでタッチパネル方式の導入を進めてきた経緯がある。 (渡辺翔太郎、asahi = 9-15-15) 「その 6 億円、税金ゼロで息子さんに …。」 節税ブーム 純金の小分けにタワーマンション、孫との養子縁組。 相続増税を機に富裕層などの間で「節税ブーム」が起きている。 格差の固定化にもつながりかねない。 ■ 純金を 100 グラムに小分け 東京の三越日本橋本店で 7 月、純金製品を展示即売する「大黄金展」が開かれた。 金の像や小判、仏具などがきらびやかに並び、品定めをする客でにぎわっていた。 会場の一角には、別の目的の人たちが集まっていた。 1 キロの純金の地金を、小さな 100 グラムのバー 10 本に分割加工するサービスを受け付けるブースだ。 期間中 60 人が計 100 キロの加工を申し込んだ。 加工には 4 週間ほどかかり、手数料は 1 キロ当たり税込み 21 万 6 千円。 1 キロの地金を何個か持参した都内の 80 代男性はこう語った。 「小さなバーにしておけば贈与の場合も売る場合も便利。 そりゃ(税金を)意識しています。 税務署とは仲良くしないといけませんから。」 金を小分けする人々の主な目的は、子や配偶者に資産を受け渡す際にかかる相続税や贈与税の節税だ。 例えば 1 キロの地金(時価 500 万円)を成人した子に贈与すると、年 110 万円の基礎控除(非課税分)を差し引いた 390 万円に対し、48 万 5 千円の贈与税が子にかかる。 これを 100 グラムのバー 10 本に小分けすれば、1 本の時価は 50 万円になり基礎控除額を下回る。 このバーを子 1 人につき年 1 - 2 本ずつ渡していけば、税金を払わずに資産の受け渡しができ、手数料以上の節税効果がある。 金を売るときの節税にも「小分け」は役立つ。 金を売って得たお金は「譲渡所得」として扱われ、年 50 万円の特別控除(非課税分)を超えると所得税がかかる。 ほかの所得と合算した課税所得が大きくなれば、累進課税で税率も高くなる。 ここでも、1 キロ単位で売るよりも、売却額が特別控除の枠内でおさまるよう、100 グラム単位で売った方が所得税の節税になる。 金価格は 2000 年ごろの 1 グラム 900 円台を底値にじわじわ上がり、今は 5 千円近い。 譲ってよし、売ってよしの小分けサービスの人気は高まっている。 (高谷秀男) ■ タワマン、時価と評価額の落差を「活用」 「その 6 億円、税金ゼロで息子さんに譲る方法がありますよ。」 関西の 60 代男性は 3 年前、税理士の一言に耳を疑った。 親の代から続く食品メーカーを同業者に売り、手元に 10 億円の現金があった。 そのうち 6 億円を 40 代の息子に譲ろうと考えた。 だが、現金で譲れば 3 億円以上の贈与税がかかると銀行から聞かされ、贈与をあきらめていた。 税理士のプランは、贈与したい 6 億円を元手に株式会社をつくり、その会社が人気の超高層タワーマンション(タワマン)物件をいくつか買うというものだ。 男性は 6 億円で株式会社をつくり、銀行から 4 億円借りて計 10 億円を用意。 そのお金で、東京の六本木や赤坂などのタワマン物件を 5 戸購入した。 息子には、その物件を所有する会社の株式を贈与した。 贈与税は「0 円」。 息子は時価 10 億円の不動産を持つ会社のオーナーになり、実質的に父の財産を受け継いだ。 父から息子へ、なぜ無税で財産を渡せたのか。 担当した税理士は「不動産は、贈与税や相続税を計算する際の評価額が時価を大きく下回る。 その仕組みを応用した。」と明かす。 現金 10 億円を贈与すれば贈与財産としての評価額も 10 億円だが、時価 10 億円の不動産では評価額が大きく下がる。 不動産は価格が変動しやすいことなどを踏まえた措置だ。 建物だと評価額は時価の 4 - 6 割、土地だと時価の 8 割になる。 そこでタワマンの「うまみ」が生じる。 マンションの底地を数百もの戸数で分け合うため、1 戸ごとの土地の持ち分はごくわずかになり、土地の評価額が小さくなる。 さらに人気の高層階ほど時価と評価額の差は大きくなる。 加えて物件を賃貸に回すと、評価額をさらに下げることができる。 この父子のケースでは、時価 10 億円の物件を、贈与財産の評価額としては 2 億円まで圧縮できた。 その 2 億円にも税金がかからないようにする仕掛けが、株式で資産を渡すやり方だ。 物件を持つ会社は銀行から 4 億円借りた。 評価額(2 億円)より借入金(4 億円)の方が多いと、その会社の株式は、贈与財産としての評価額ではゼロになる。 その株式が親から子に贈与されても、贈与税はかからないというわけだ。 息子はそのまま不動産オーナーでいてもいいし、時価の 10 億円で売れれば、銀行にお金を返しても 6 億円近い現金を手にできる。 物件価格が下がるリスクはあるものの、父親は「まるで錬金術。 親も子も救われました。」と振り返る。 ■ 孫を養子に 遺産をもらった家族らにかかる相続税を節税する動きも盛んだ。 都内の 30 代の男性は 3 年前、他界した祖父の遺産 5 億円を一人ですべて相続した。 通常ならば孫は法定相続人になれないが、祖父の強い意向で「養子」になっていたのだ。 祖父の法定相続人は配偶者の祖母と、実子の娘 2 人だったが、全員の同意のもとであえて孫に遺産を集中させた。 家を継げる男性が孫以外にいなかったこともあるが、相続税を減らす狙いもあった。 祖母や娘を経由して孫に遺産が相続されると、相続税も複数回納めなくてはならないが、祖父から養子への相続なら 1 回の納税で済む。 「孫養子」と呼ばれる手法で、この男性のケースでは約 1 億 3 千万円の節税が見込まれるという。 孫養子は土地長者が増えたバブル期に増えたとされるが、税理士らによると、今年の相続増税を機に再び広がっているという。 だが、このやり方にはリスクもある。 親族間の同意がないまま孫養子に遺産相続が集中すれば、別の遺族の遺産の取り分が減り、トラブルに発展しかねないからだ。 税理士の紹介会社ビスカスの八木美代子代表は「99% の相続が『争続』になる。 過去の負の記憶を持ち出したり、配偶者が横やりを入れたりして、感情のもつれが解消しないことが要因。」といい、時間をかけた対策を勧める。 ■ 格差固定化のおそれ 相続税が今年から増税された。 相続財産の基礎控除(非課税分)が減り、課税の対象者が増えた。 政府が消費税率を 8% に上げる増税を決めた際、併せて裕福な人への増税も必要だと判断したからだ。 相続税や贈与税には、一部のお金持ちに富が集中するのを抑え、「格差」が世代を超えて引き継がれていくのを防ぐ目的がある。 格差が固定化すると、親がお金持ちかどうかで子の人生が決まり、貧しい家に生まれたというだけで貧困から抜け出せなくなる不公平な世の中になってしまう。 相続増税は、こうした本来の目的とは裏腹に「節税ブーム」を巻き起こしている。 銀行や証券会社が開く相続税関連のセミナーには連日大勢の人が詰めかけている。 野村資本市場研究所の宮本佐知子・主任研究員の推計では全国の相続資産の規模は 2030 年にかけて年間 60 兆円に達し、総額 1 千兆円規模の資産が動き出すという。 金融機関などは「巨大な市場」とみて節税指南に力を入れる。 少しでも税金を減らし、より多くの財産を子に残したいというのは親としては自然な思いかもしれない。 だが、税制の裏をかくような行き過ぎた節税が広がれば、公平な社会に必要な「富の再分配」の機能が骨抜きになってしまう。 (本田靖明、asahi = 9-12-15) |