中間決算、全業種では 23% 増益 製造業は中国減速で伸び悩み

上場企業の 2015 年 9 月中間決算は、訪日外国人の急増などが業績の追い風となって非製造業が好調な一方、製造業の伸び悩みが鮮明となっていることが SMBC 日興証券の集計で 2 日、明らかになった。 特に中国の景気減速の影響を受けた鉄鋼や機械は減益となり、不振が目立つ。 ただ全業種(金融を除く)の経常利益は前年同期比 23.6% 増と大幅な増益基調が続く。 詳しくみると、非製造業が 45.5% 増で全体の業績を大きく引き上げたが、製造業は 9.3% 増だった。 特に、鉄鋼は中国需要の低迷で鋼材価格が下落したことなどが響き大幅減益。 機械は建設機械の販売が落ち込んだ。 (kyodo = 11-2-15)

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法人所得、バブル期を上回る過去最高 58 兆円 14 年度

2014 年度に法人が申告した所得は前年より 9.7% 増えて計 58 兆 4,433 億円となり、バブル期を上回って過去最高だった。 法人税も 2.1% 増の計 11 兆 1,694 億円で、5 年連続の増加となった。 国税庁のまとめでわかった。

国税庁は「企業業績の改善が数字に表れた」としている。 申告数は 279 万 4 千件で、バブル期の 1989 年度の 1.3 倍。 このうち黒字法人の割合は 1.5 ポイント増えて 30.6% となり、4 年連続で上昇した。 残り 69.4% は赤字法人で、赤字額は 13.2% 増えて計 14 兆 4,553 億円だった。 法人が源泉徴収した所得税(復興特別所得税を含む)は、12.6% 増の 16 兆 6,870 億円で 5 年連続の増加。 所得の種類別に税額をみると、給与所得で 4.7% 増の 9 兆 9,233 億円となったほか、軽減税率の廃止もあり、株式などの配当所得で 50.3% 増の 3 兆 9,408 億円となった。 (水沢健一、asahi = 10-6-15)


全国消費者物価、9 月は前年比 0.1% 下落 2 カ月連続マイナス

総務省が 30 日に発表した 9 月の全国消費者物価指数(CPI、2010 年 = 100)は、値動きの大きい生鮮食品を除く総合(コア CPI)が 103.4 となり、前年同月比で 0.1% 下落した。 2 年 4 カ月ぶりの下落に転じた 8 月(同 0.1% 下落)に続くマイナスとなった。 原油価格の下落を受け、電気代やガス代、灯油やガソリンなどエネルギー品目の価格が総じて下がった。

ただ、QUICK が事前にまとめた市場予想の中央値(0.2% 下落)よりマイナス幅は抑えられた。 品目別では上昇が 351、下落は 124、横ばいが 49 だった。 フライドチキンやチョコレート、ケーキといった食料(生鮮食品除く)を中心に価格が上昇。 新製品の投入効果でテレビなどの耐久消費財も値上がりし、コア CPI を下支えした。

食料・エネルギーを除く「コアコア CPI」は 101.6 と、0.9% 上昇した。 8 月(0.8% 上昇)より上げ幅がやや大きく、プラス幅の拡大傾向が続いている。 訪日客の増加による宿泊料の上昇などが背景。 総務省は「エネルギー関連を除くと上昇傾向は変わらない」としている。 生鮮食品を含む総合は前年比で横ばいとなり、13 年 5 月以来の低水準となった。

先行指標となる 10 月の東京都区部の CPI (中旬速報値、10 年 = 100)は、生鮮食品を除く総合が 102.0 と 0.2% 下がった。 原油安で物価の下押し圧力が続き、4 カ月連続でマイナスとなった。 下落率は 9 月 (0.2%) と同じだった。 コアコア CPI は 0.4% の上昇と、プラス幅は 9 月 (0.6%) に比べ縮小した。 (nikkei = 10-30-15)

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8 月の家計支出 2.9% 増 3 カ月ぶり 家計調査(速報)

8 月の家計調査(速報)で、2 人以上の世帯が使ったお金は 29 万 1,156 円だった。 物価の影響をのぞいた実質で、前年同月より 2.9% 増えた。 増加は 3 カ月ぶり。 食料や家電、通信など幅広い品目で支出が増えた。 総務省が 2 日発表した。 内訳をみると、国内パック旅行やエアコン、外食、飲料など、好天の影響を受けたとみられる品目への支出がとくに増えた。 自動車購入や住宅のリフォームといった高額の支出も、前年同月より 2 - 3 割増えた。 前年は消費税増税の影響で落ち込んでいたため、その反動で伸びたとみられるという。 (asahi = 10-2-15)


日本郵政株、投資家に人気 購入希望締め切る証券会社も

11 月 4 日の上場時に売り出される日本郵政株が、個人投資家に人気だ。 今月 27 日からの購入申し込みを控え、証券会社には購入希望が事前に多く寄せられたことから、すでに抽選などで購入者を絞り、申し込みを締め切ったところもある。

日本郵政の売り出し価格は 1 株 1,400 円で、100 株単位で買える。 この価格を決めるため、日本郵政は目安の価格の範囲内で、証券会社を通じて 10 月上旬から購入希望を募っていた。 郵政株は、高い知名度に加え、株主への配当を「純利益の 5 割以上」と手厚くする方針が示されたことで、人気が出たようだ。 28 日も購入申し込みを受けつける証券会社は「事前の応募者を優先したいので、いまからの申し込みで抽選に当たる可能性は高くない」としている。 郵政と同時に上場する子会社のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の売り出し株式は、ともに購入を締め切っている。 (asahi = 10-27-15)

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郵政 3 社、11 月 4 日上場が正式決定 東証が承認

日本郵政と、子会社 2 社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)の株式上場が 10 日、東京証券取引所に承認され、上場予定日が 11 月 4 日と正式に決まった。 郵政側は、投資ブームを生んだ 1987 年の NTT 上場のように、個人投資家に買ってもらえると期待している。

郵政の株主である政府は 1 株あたりの価格について、郵政 1,350 円、ゆうちょ 1,400 円、かんぽ 2,150 円と想定。 時価総額は郵政約 6.1 兆円、ゆうちょ約 5.2 兆円、かんぽ約 1.3 兆円となる計算だ。 投資家の意見を聞き、ゆうちょ株とかんぽ株は 10 月 19 日、郵政株は 10 月 26 日に売り出し時の価格を確定する。 上場先は、大企業中心の東証 1 部の見通し。 各社の株式は 11% ずつ計約 1.4 兆円分が売り出される。 この 8 割は国内の投資家に買ってもらいたいという。 初回の売り出し額は、NTT の約 2.2 兆円や、98 年に上場した NTT ドコモの約 2.1 兆円に次ぐ規模だ。 (内藤尚志、神山純一、asahi = 9-10-15)

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日本郵政 3 社上場、11 月 4 日にも 時価総額 7 兆円規模

日本郵政グループ 3 社の株式上場日について、11 月 4 日を軸に調整していることが 14 日、関係者への取材でわかった。 時価総額は 7 兆 - 8 兆円程度になるとみられ、政府が売り出す株式では、1987 年の NTT 以来の大型上場となる。 政府が株式の 100% をもつ日本郵政は、子会社のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険と同時に上場する計画だ。 3 社は 6 月 30 日に東京証券取引所に上場を申請し、東証は 9 月上旬にも上場承認する方向で検討している。 通常は承認から約 1 カ月で上場するが、規模が大きいことや海外投資家への売り出しを考慮する。

政府は、郵政株を 3 回にわけて売却し、東日本大震災の復興に 4 兆円を充てる方針。 初回の売り出し株数や株価については、さらに調整を続ける。 また、自民、公明両党はゆうちょ銀の貯金預け入れ限度額、かんぽ生命の契約限度額を引き上げるよう求めている。 政府は現在、郵政民営化委員会(増田寛也委員長)に検討を委ねており、上場前には方向性を示したい考えだ。 (asahi = 8-14-15)


軽減税率、17 年 4 月導入へ調整を指示 首相

安倍晋三首相は 14 日午前、自民党税制調査会会長の宮沢洋一・前経済産業相と首相官邸で会談した。 首相は 2017 年 4 月 1 日に消費税率を 10% に引き上げる際に何らかの形で軽減税率を導入できるよう、公明党との調整を指示。 首相が明言したことで、今年末にまとめる来年度税制改正大綱に軽減税率を盛り込む方向で議論が加速しそうだ。

宮沢氏は会談後、記者団に「軽減税率についてかなり話をした。 総理からは公明党と話をしてほしいということ、再来年の 4 月 1 日、消費税が 10% になる時点で何らかの形の軽減税率を導入する方向で検討してほしいと。 ただし、商工業者などに無用の負担になるようなことは避け、混乱しないような現実的な解決策を考えて欲しいということだった。」と述べた。 具体的な内容については「専門家に任せるから、よく考えて欲しい」と税調で議論するよう指示されたという。

軽減税率をめぐっては、食料品などの税率を低く抑える欧州型の軽減税率の導入を主張する公明党と、慎重な自民党との間で協議が難航。 首相が先週末、導入に慎重だった野田毅税調会長を事実上更迭し、後任に宮沢氏を充てる人事を決めた経緯がある。 首相の指示を受け、与党内では今後、軽減税率の対象品目の線引きや財源確保など、詳細な設計に向けた議論が本格化しそうだ。 (asahi = 10-14-15)

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消費税 10% 時、マイナンバー活用の税還付へ 飲食料品対象 = 政府筋

[東京] 政府が、消費税率を 10% に引き上げる際の軽減措置として、税と社会保障の共通番号(マイナンバー)の仕組みを活用し、税を還付する検討に入ったことがわかった。 対象は飲食料品の一部で、来週予定している与党協議に財務省案として示す方向だ。 複数の政府筋が 4 日、明らかにした。

政府はこれまで消費税率を 10% に引き上げるのに合わせて「精米」、「生鮮食品」、「酒を除くすべての飲食料品」のいずれかを対象に税負担を軽くする検討をしてきた。 財務省案は、消費税率を一律で 10% に引き上げたうえで、飲食料品の一部を対象に税を還付する仕組みとなっており、税率が複数になり、事業者の負担が増えるとの懸念に配慮したものだ。 (asahi = 9-5-15)


9 月の企業物価、6 年ぶりの大幅下落 前年比 3.9% 減

日本銀行が 14 日発表した 9 月の企業物価指数(速報)は、前年 9 月より 3.9% 下落した。 6 カ月連続の下落で、下落幅は 2009 年 11 月以来の大きさだった。 中国や新興国経済の減速に伴い、原油や鉄など資源価格が落ち込んだことなどが影響した。

企業物価指数は、企業間で取引されるモノの価格水準を示す。 品目別では、鉄くずなどのスクラップ類、石油・石炭製品がそれぞれ前年同月比 32.8% 減、26.9% 減と大幅に下落した。 輸出入別(円建て)では、輸入物価が前年同月比 15.5% 減と、09 年 10 月以来の落ち込み幅。 輸出物価は 1 年 4 カ月ぶりのマイナスで、同 1.2% の下落だった。 (asahi = 10-14-15)


機械受注、8 月 5.7% 減 外需落ち込む、基調判断 2 カ月連続下げ

内閣府が 8 日発表した 8 月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月比 5.7% 減の 7,594 億円だった。 減少は 3 カ月連続。 QUICK が事前にまとめた市場予想は 3.0% 増だった。 2 カ月連続で市場予想に反してマイナスとなり、7 月(3.6% 減)よりも減少幅が広がった。 3 カ月連続の受注減は 09 年 3 - 5 月以来となる。 7 - 9 月期でみても減少となることがほぼ確実な見通しだ。

受注額は 14 年 6 月以来、1 年 2 カ月ぶりの低水準にとどまった。 内閣府は機械受注の基調判断を「足踏みがみられる」とし、従来の「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から引き下げた。 7 月に続く下方修正となり、2 カ月連続の判断引き下げは 14 年 5 - 6 月以来となった。

主な機械メーカー 280 社の製造業からの受注額は前月比 3.2% 減の 3,479 億円と、3 カ月連続で減った。 業種別では、電気機械から半導体製造装置や運搬機械のほか、鉄鋼業や自動車・同付属品からの受注が減った。 非製造業は 6.1% 減の 4,221 億円で、マイナスは 2 カ月連続。 金融業・保険業や運輸業・郵便業などからの引き合いが減った。 外需は 26.1% 減の 8,723 億円と大きく落ち込み、4 カ月ぶりにマイナスとなった。 減少率は 14 年 7 月(36.8% 減)以来の大きさ。 内閣府は「中国の景気減速が一部民需や外需に影響した可能性がある」としている。

内閣府は 8 月、7 - 9 月期の受注額(船舶・電力除く民需)が前期比 0.3% 増えるとの見通しを示していた。 9 月が前月比 43.5% 増えなければ当初見込みは達成できない。 内閣府は「データをさかのぼれる 05 年度以降、これまで単月の最大の伸び率は前月比 15% (08 年 1 月)で、達成は現実的ではない」としている。 9 月が前月比横ばいだった場合、7 - 9 月期の受注額は前期比 12.2% 減にとどまるという。 (nikkei = 10-8-15)

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機械受注 3.6% 減 7 月、基調判断下げ「足踏みがみられる」

内閣府が 10 日発表した 7 月の機械受注統計(季節調整値)によると、民間設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」の受注額は、前月比 3.6% 減の 8,056 億円で、2 カ月連続のマイナスとなった。 基調判断は前月の「持ち直している」から「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に下方修正した。 基調判断の引き下げは 8 カ月ぶり。 生産や輸出の不振を背景に、企業の慎重姿勢が根強いことを示した。 (東京新聞 = 9-10-15)

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4 - 6 月期設備投資、前年比 5.6% 増 法人企業統計

財務省が 1 日発表した 2015 年 4 - 6 月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比 5.6% 増の 9 兆 0,385 億円と、9 四半期連続で増えた。 円安や原油安などを背景に企業業績が好調で、一定の資金を投資に振り向ける動きが続いた。 もっとも市場の事前予想では伸び率が 1 - 3 月期(7.3% 増)を上回るとの見方も多かった。 前四半期から勢いは鈍った。

産業別の設備投資の動向は、製造業が 11.6% 増と 4 四半期連続で伸びた。 非製造業は 2.6% 増で 9 四半期連続のプラスだった。 製造業では新型車向けの生産能力増強や研究開発 (R & D)、スマートフォン(スマホ)向け電子部品の増産投資などが伸びた。 非製造業では娯楽業や飲食サービス業の新規出店拡大に向けた投資も寄与した。

一方、国内総生産 (GDP) 改定値を算出する基礎となり、注目度の高い「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は季節調整済みの前期比で 2.7% 減った。 1 - 3 月期(6.0% 増)から一転マイナスとなり、12 年 4 - 6 月期(季節調整済みで 3.4% 減)以来、3 年ぶりの減少幅を記録した。 非製造業が 4.4% 減、製造業は 0.4% 増だった。 経常利益は前年同期と比べ 23.8% 増の 20 兆 2,881 億円と、比較可能な 1954 年 4 - 6 月期以降の最高額を記録した。 プラスは 14 四半期連続。 うち製造業は 29.6% 増、非製造業は 20.8% 増だった。 円安効果に加え、原油価格の下落に伴う原料コストの低減などが寄与した。

全産業の売上高は前年同期比 1.1% 増の 318 兆 5,957 億円と、2 四半期ぶりに増収となった。 製造業が 1.2% 増、非製造業は 1.1% 増だった。 併せて発表した 14 年度の法人企業統計では、金融機関を除く全産業の設備投資が前年比 7.8% 増の 39 兆 8,228 億円となった。 経常利益は 8.3% 増の 64 兆 5,861 億円で過去最高を更新。 売上高は 2.7% 増えた。 同統計は資本金 1,000 万円以上の企業の収益や投資動向を集計。 今回の 15 年 4 - 6 月期の結果は、内閣府が 8 日に発表する同期間の GDP 改定値に反映される。 (nikkei = 9-1-15)

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6 月の機械受注 7.9% 減、4 か月ぶり減少

内閣府が 13 日発表した 6 月の機械受注統計によると、企業の設備投資の先行きを示す「民間需要(船舶・電力を除く、季節調整値)」は前月比 7.9% 減の 8,359 億円で、4 か月ぶりに減少した。 鉄鋼業から大型受注があった前月の反動減とみられ、内閣府は「持ち直している」とする基調判断を据え置いた。 4 - 6 月期の民間需要(同)は、1 - 3 月期比 2.9% 増の 2 兆 6,460 億円で、4 四半期続けて増加した。 製造業の設備投資が好調で、リーマン・ショック前の 2008 年 4 - 6 月期(2 兆 8,635 億円)以来の水準だった。

ただ、中国を始めとする世界経済が減速すれば、企業の設備投資にも影響が出る。 7 - 9 月期の民間需要(同)の見通しは前期比 0.3% 増だが、製造業は 3.6% 減を見込んだ。 SMBC 日興証券の宮前耕也氏は「建機や電気機械など、中国向け輸出が多い業種の設備投資が停滞している可能性もある」と指摘する。 (yomiuri = 8-13-15)

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4 - 6 月の鉱工業生産、1.5% 低下 3 四半期ぶりマイナス

経済産業省が 30 日発表した 4 - 6 月期の鉱工業生産指数(2010 年 = 100、季節調整済み)速報値は 1 - 3 月に比べ 1.5% 低い 98.2 だった。 低下は 3 四半期ぶり。 国内の販売低迷で軽自動車を中心に自動車の生産が落ち込んだほか、1 - 3 月に好調だった設備投資用の一般機械や化学工業で反動が出た。 4 - 6 月の自動車生産は 2.3% 低い 98.3 となった。 国内の低迷に加え、5 月に北米向けの自動車が大きく減ったのが響いた。

中国など海外景気の減速も、生産が減った背景にあるとみられる。 特にアジア向けのスマートフォン(スマホ)部品が振るわず 4 - 6 月の電子部品・デバイスは 0.9% 低い 104.8 となった。 5 月は「大型連休で船便の数が減った(経産省)」影響も大きかった。 4 - 6 月期の実質国内総生産 (GDP) は「前期比年率で 1% 程度のマイナスになる。(SMBC 日興証券の牧野潤一チーフエコノミスト)」との見方が広がっている。 出荷指数は 2.5% 低下し、在庫指数は 0.9% 上昇した。

6 月単月で見ると自動車が若干持ち直し、生産は 98.0 と前月より 0.8%上昇し、2 カ月ぶりにプラスとなった。 15 業種中 9 業種がプラス。 ただ 5 月の落ち込みを補う強さはなく、経産省は生産の基調判断を前月と同じ「一進一退」に据え置いた。 6 月の出荷指数は前月より 0.3% 上昇の 96.33、在庫指数は 1.3% 上昇の 114.4 だった。 7 月の生産の予測値は 0.5% 上昇、8 月は 2.7% 上昇と、2 カ月連続のプラスを見込んでいる。 (nikkei = 7-30-15)


GDP 600 兆円目標「あり得ない」 経済同友会、小林喜光代表幹事

経済同友会の小林喜光代表幹事は 29 日の記者会見で、安倍晋三首相が「新 3 本の矢」で掲げた、名目国内総生産 (GDP) を 600 兆円に拡大する目標について、「あり得ない数値だ。 政治的メッセージとしか思えない。」と実現性に疑問を示した。

「新 3 本の矢」について、「安倍政権がまた経済をメインにやっていくというメッセージは大いに歓迎だ」と一定の理解は示しつつ、GDP を 490 兆円余(2014 年度)から 600 兆円に増やす目標は、名目で年 3% 超の経済成長が前提になるとして、「とてもコミットできる数値ではない」と突き放した。 「日本に投資をしても将来(性)があると、経営者が納得できる場をつくるのが政治の一番のポイントだ」と注文も付けた。 (小林豪、asahi = 9-30-15)

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「新 3 本の矢」から消えた金融政策、漂う不透明感

[東京] アベノミクスの金看板だった金融政策が、24 日公表の「第 2 ステージ」で示された新 3 本の矢から消えた。 消費の活性化や低所得者対策の進展を目指す政府・与党内からは、日銀が掲げる物価 2% 実現を急ぐべきではないとの声も漏れ、金融政策は優先順位のトップから「降板」したもようだ。 今後は、何がアベノミクスのエンジンになるのか、不透明感が漂っている。

安倍首相は 24 日に自民党本部で会見し「本日からアベノミクスは第 2 ステージに入る」と宣言し、新たな「3 本の矢」の政策で全ての人が活躍できる「1 億総活躍社会」を目指すと表明した。 経済最優先の姿勢を鮮明にし、具体的には名目国内総生産 (GDP) を 600 兆円に増やすことを掲げた。 新たな 3 本の矢は、希望を生み出す強い経済、夢を紡ぐ子育て支援、安心につながる社会保障 - -。 これまでの大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略から大きく転換し、軸足を構造改革に移す姿勢を鮮明にした。

中でも市場の一部で思惑が広がっているのが、「第 2 ステージ」における金融政策の役割。 新 3 本の矢から金融政策が抜け落ち、市場では「安倍政権の経済政策における優先順位が変化したことは間違いない(国内金融機関)」との見方が広がっており、今後の金融政策運営への影響に関心が高まっている。 麻生太郎財務相は 25 日の会見で「新たな 3 本の矢の 1 本目(強い経済)に、今までの 3 つが集約されている」と説明。 旧 3 本の矢は引き継がれていると強調した。

甘利明経済再生相も、物価 2% の目標は変わっていないとし、旧 3 本の矢は安倍内閣の至上命題であるデフレ脱却を目的としたものであり、新政策発表以降も位置づけは変わらないと語った。 主要閣僚が 25 日の会見で、そろってデフレ脱却に向けた金融政策の重要性を強調したが、現在の日銀による量的・質的金融緩和 (QQE) をさらに強化することについては、政府・与党内から慎重な見方も聞こえてくる。

安倍首相は 24 日の会見の冒頭、日本経済について「もはやデフレではない、という状態まで来た。 デフレ脱却は、もう目の前だ。」と語った。 政府関係者の 1 人は、この発言の真意について「旧 3 本の矢によって、デフレ脱却は事実上ほぼ実現したという認識だ」と述べ、金融政策などは一定の役割をすでに果たしたとの見解を示した。

目標に掲げる GDP 600 兆円の実現のカギを握るのは、約 6 割を占める個人消費。 11 日の経済財政諮問会議(議長・安倍首相)で民間議員は、GDP に占める個人消費の割合を現状の 6 割程度から、米国並みの 7 割程度に引き上げることを提言した。 政府・与党内では、消費税率引き上げに伴う反動減の影響一巡後も、個人消費が低迷を続けている背景として、食料品や日用品などの物価上昇を指摘する声も多い。 内閣府は諮問会議に提出した資料の中で「身近な食料品等の物価上昇が相次ぐ中、低所得者層等の消費活動に影響を与える可能性」を明記した。

個人消費の活性化に向け、政府・与党は低所得者対策などに力を入れていく方針。 ある政府筋は、さらなる円安・物価高を招きやすい追加金融緩和は「われわれの政策の方向性と整合的ではない。 日銀は物価 2% 達成を急ぐべきではない。」と言い切る。 また、政府部内には、日銀が追加緩和に踏み切って円安が進めば、原油安で利益を享受できる消費者にはマイナスとなり、現在の経済情勢における追加緩和は不要との見解を示す声も少なくない。

他方、これまでのアベノミクスの成果を積極的に評価し、今後も金融政策を政策の中心に据えることを志向している与党議員の一部やシンクタンク関係者の中には、金融政策の優先度を下げることで、デフレへの逆戻りを懸念する声も出ている。 また、市場の一部では「金融緩和に代わるエンジンが見当たらない。 本当に成長できるのか(国内金融機関の関係者)」との声も出ている。

中国経済の減速懸念などを背景に世界経済の不透明感が強まる中、原油安を背景に足元で日銀が目安とする生鮮食品を除いた消費者物価(コア CPI)の前年比上昇率は、マイナスに落ち込んだ。 10 月末に日銀が公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を控えて、市場では追加緩和観測も高まりつつある。

安倍首相がアベノミクス第 2 ステージ入りを宣言した翌日の 25 日昼、黒田総裁が官邸に呼ばれ、予定の 1 時間程度を超過して安倍・黒田会談が行われた。 その内容は明らかにされていないが、市場では金融緩和観測が高まって、日経平均は前日比 308 円 68 銭高の 1 万 7,880 円 51 銭に上昇して引けた。 アベノミクスにおける金融政策の位置づけの変化が、今後の金融政策運営にどのような影響を与えるのか、市場は注視している。 (伊藤純夫、竹本能文、梅川崇、Reuters = 9-25-15)


8 月の消費者物価、2 年 4 カ月ぶり下落 燃料代が影響

総務省が 25 日発表した 8 月の全国の消費者物価指数(2010 年 = 100)は、価格変動の大きい生鮮食品をのぞく指数が 103.4 となり、前年 8 月と比べて 0.1% 下落した。 下落は 2 年 4 カ月ぶり。 円安の影響で輸入に頼る食料などは上昇したが、ガソリンや電気代などのエネルギー価格の下落の影響が上回った。 (asahi = 9-25-15)

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7 月の消費者物価、前年比横ばい 食品上昇、燃料下落

総務省が 28 日発表した 7 月の全国の消費者物価指数(2010 年 = 100)は、価格変動の大きい生鮮食品をのぞく指数が 103.4 となり、前年 7 月と比べて横ばいだった。 横ばいは 2 年 2 カ月ぶり。 食料などは上昇したが、ガソリンや電気代は下落した。 (asahi = 8-28-15)

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7 月の家計調査 0.2% 減 2 人超世帯 28 万 0,471 円

総務省が 28 日発表した 7 月の家計調査(速報)で、2 人以上の世帯が使ったお金は 28 万 0.471 円だった。 物価の影響をのぞいた実質で、前年 7 月より 0.2% 減った。 減少は 2 カ月連続。 (asahi = 8-28-15)

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7 月の家計の消費意欲、2 カ月ぶり悪化 1.4 ポイント低下の 40.3

内閣府が 10 日発表した 7 月の消費動向調査によると、家計の消費意欲を示す「消費者態度指数」は、前月より 1.4 ポイント低下して 40.3 となり、2 カ月ぶりに前月を下回った。 基調判断も 2 カ月ぶりに下方修正し、「足踏みが見られる」とした。 今後半年間の暮らし向きなどの見通しを聞く調査。 調査時点の 7 月中旬は中国やギリシャ経済の先行きを懸念する報道が多く、消費者の意識も影響を受けた可能性がある。 (asahi = 8-10-15)


3 大都市圏で地価回復続く 地方都市は多くが値下がり

国土交通省は 16 日、土地売買の目安となる 7 月 1 日時点の基準地価を公表した。 東京、大阪、名古屋の3大都市圏の商業地は 3 年連続、住宅地は 2 年連続で値上がりするなど、景気回復と金融緩和を背景に、都市部で地価の上昇が続いている。 ただ、地方の中小都市の多くは値下がりが続き、格差が広がっている。

3 大都市圏の商業地は 2.3% 値上がりした。 業績がよい企業が広い事務所に移るなど、都心部ではオフィスが足りなくなってきている。 一方、住宅地は 0.4% 伸びたが、伸び幅は前年より縮んだ。 都心部の高級マンションは飛ぶように売れているが、郊外では「割高感が出ている(国交省)」といい、売れ行きが鈍っている。 全国平均では、商業地が 0.5%、住宅地は 1.0%、それぞれ値下がりした。 商業地のマイナスは 8 年連続で、住宅地は 24 年連続だ。 札幌、仙台、広島、福岡などで回復が加速しているものの、中小規模の都市では、地価の下落に歯止めがかかっていない。

都道府県別でみると、商業地は 11 都府県で値上がりした。 10 都府県で前年に続き上がり、原発事故後の除染などで作業員が集まる福島が 23 年ぶりにプラスに転じた。 3 月の北陸新幹線開業効果で石川は横ばいとなり、23 年ぶりにマイナスではなくなった。 青森、秋田、愛媛、鹿児島の 4 県は 3% 以上のマイナスだった。 住宅地は昨年と変わらず東京や愛知など 6 都県の上昇にとどまった。 基準地価の調査地点は、全国の 2 万 1,731 カ所。 毎年 7 月 1 日時点の値段を都道府県が調べ、国交省がまとめて公表している。 (下山祐治、asahi = 9-16-15)


GDP 上方修正、年率 1.2% 減 4 - 6 月期

内閣府が 8 日発表した 2015 年 4 - 6 月期の国内総生産 (GDP) の 2 次速報は、物価変動の影響をのぞいた実質成長率が前期(1 - 3 月期)より 0.3% 減った。 年率換算では 1.2% 減で、8 月発表の 1 次速報(年率 1.6% 減)から上方修正された。 ただ、修正の主な要因は在庫の増加によるもので、GDP の内容が改善したとはいえない。 マイナス成長は 3 四半期ぶり。

製品や原材料などの在庫の寄与度を、1 次速報後に発表された「法人企業統計」などをもとに計算し直した結果、1 次速報のプラス 0.1% からプラス 0.3% に上方修正された。 在庫の増加は GDP ではプラスに計算されるが、「企業が販売増を見込んで在庫を増やしているというより、個人消費がふるわずに在庫が積み上がっている可能性がある(SMBC 日興証券の牧野潤一チーフエコノミスト)」という。 (大内奏、asahi = 9-8-15)

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緩やかな景気回復小休止 4 - 6 月 GDP、消費が焦点 実質年率 1.6% 減

内閣府が 17 日発表した 2015 年 4 - 6 月期の国内総生産 (GDP) 速報値は、緩やかな回復を続けてきた景気が小休止状態にあることを示した。 個人消費と輸出が悪化したのは、食料品の値上げによる買い控えや海外景気の減速が背景にある。 海外の不透明感は続きそうで、7 - 9 月期は GDP の 6 割を占める個人消費の回復が焦点だ。

1 - 3 月期の GDP が発表された 5 月時点で、市場関係者は 1.8% 程度の増加を見込んでいた。 賃上げの波及やボーナスの支給で個人消費がけん引役になるはずだった。 ところが 4 月以降、食料品など生活必需品の値上げが相次ぎ、消費者の間で節約志向が高まってきた。 調味料や冷凍食品など値上げ品目のほか、パソコンや家庭用器具の消費が減った。 長雨などの天候不順が追い打ちをかけエアコンや夏物衣料品の消費も落ち込んだ。

家計の消費支出は 5 月に増税後初のプラスとなったが、6 月に前年同期比 2% 減となるなど、本格回復の動きが見えない。 4 - 6 月期の名目の雇用者報酬は前期比 0.2% 増となっても、値上がりの影響を勘案する実質は 0.2% 減で、所得環境の改善が遅れている。 もう一つの柱である輸出は円安という追い風があったにもかかわらず、中国など海外景気の減速が想定を超えていた。 中国などアジア、米国、欧州の各地域で数量が伸び悩んだ。

7 - 9 月期も輸出は不透明な情勢が続く。 中国は人民元の切り下げに踏み切り、日本企業の輸出が伸び悩む可能性があるためだ。 GDP では輸出に分類する訪日客消費も、元安で中国人の購買力が低下するため、落ちる可能性がある。

4 - 6 月期は企業業績は過去最高水準にあるのに、個人消費や設備投資など国内需要の弱さが目立った。 政府は、7 - 9 月期は賃上げやボーナス支給が浸透し、消費や設備投資などで景気が緩やかに回復することを見込む。 個人消費については、猛暑やプレミアム付き商品券による政策効果も期待する。 経済対策の必要性について、甘利明経済財政・再生相は「現時点は補正予算の編成は考えていない」と述べた。 (nikkei = 8-17-15)

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日銀、15 年度成長率 1.7% に下方修正 政策は現状維持

日銀は 14 - 15 日に開いた金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を賛成 8 反対 1 の賛成多数で決めた。 マネタリーベース(資金供給量)を年 80 兆円に相当するペースで増やす金融市場調節を続ける。 反対したのは木内登英審議委員。 木内委員はマネタリーベースと長期国債保有残高の増加ペースをともに年間 45 兆円ペースに引き下げるよう提案したが、反対多数で否決された。 木内委員は「資産買い入れ策と実質的なゼロ金利政策をそれぞれ適切と考えられる時点まで継続する」との議案も提出したが、木内委員を除く 8 人の反対で否決された。

金融政策運営では、2% の物価安定目標を「安定的に持続するために必要な時点まで」量的・質的金融緩和を続けると改めて強調した。 さらに「経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」と従来の表現を繰り返した。 日銀は併せて 4 月に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の中間評価をまとめた。 国内総生産 (GDP) の見通しは15 年度を 2.0% 増から 1.7% 増に引き下げた。 アジア経済の減速などで生産や輸出が伸び悩んだことを反映した。 一方、16 年度(1.5% 増)、17 年度(0.2% 増)の見通しは据え置いた。

生鮮食品を除く消費者物価指数 (CPI) 上昇率は、消費増税の影響を除き政策委員の大勢見通し中央値で 15 年度がプラス 0.7% と、4 月時点(プラス 0.8%)から下方修正した。 16 年度はプラス 1.9% と 4 月時点(プラス 2.0%)の見通しを下方修正した。 17 年度はプラス 1.8% と 4 月(プラス 1.9%)から下方修正した。 日銀は金融政策運営の公表文で成長率は「15 年度は幾分下振れる一方、16 年度、17 年度はおおむね不変」との認識を示した。 物価は 4 月見通しと比べ「おおむね見通しに沿って推移すると見込まれる」とした。 15 時 30 分から黒田東彦総裁が記者会見する予定。 (nikkei = 7-15-15)

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GDP、設備投資増え上方修正 年率換算 3.9% 増に

内閣府が 8 日発表した 2015 年 1 - 3 月期の国内総生産 (GDP) の 2 次速報は、物価の変動をのぞいた実質成長率が、前期(14 年 10 - 12 月)より 1.0% 増だった。 年率換算では 3.9% 増。 5 月 20 日発表の 1 次速報では年率 2.4% 増だったが、企業の設備投資がこのときの想定より大きく伸びたことから、大幅な上方修正となった。 プラス成長は 2 四半期連続。

上方修正の最大の要因は、設備投資が 1 次速報の前期比 0.4% 増から、2.7% 増へと大きく修正されたことだ。 1 次速報の後に発表された「法人企業統計」などをもとに推計し直した結果、自動車関連向けの生産能力を上げた電気機械や、物流センターの建設があった卸売業、訪日外国人の増加でホテルの改修があったサービス業などで投資が伸びていた。

企業が在庫を増やしたことも、成長率の押し上げに寄与した。 原油価格が下落し、ガソリンなど石油製品の在庫を仕入れる動きが広がっているとみられる。 一方で、公共投資と住宅投資はわずかに下方修正された。 GDP の約 6 割を占める個人消費は 0.4% 増で、変化がなかった。 (大内奏、asahi = 6-8-15)


日本株、過去最大規模の攻防戦 止まない海外勢の売り

[東京] 前週の日本株式市場で、過去最大規模の攻防戦が繰り広げられていた。 世界株安が連鎖する中で、海外勢が大量の売りを出す一方、国内の個人投資家や「公的資金」が買い支える対抗図だ。 ただ、相場の主導権を握っているのはやはり海外勢。 金融緩和効果や世界経済減速への疑念が強まるなか、リスクオフ再開の気配を見せている。

海外勢はアベノミクスに疑念も

2015 年の海外勢の日本株売買が売り越しに転じた。 年初から 8 月第 1 週までに現物株と先物合計で約 3.4 兆円買い越していたが、8 月第 2 - 4 週で計 3 兆 6,850 億円の売り越し。 特に第 4 週は 1 兆 8,830 億円と 2008 年 8 月からのデータで最大の売り越しとなった。 日本株だけが売られたわけではない。 米バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると、8 月 26 日までの 1 週間に、世界の株式ファンドから 02 年の調査開始以来、最大となる 295 億ドル(約 3.5 兆円)が流出した。

その過去最大規模の「大波」の中で、日本株のポジションも縮小されたわけだが、注目されるのは、売りの主体がヘッジファンドや CTA (商品投資顧問業者)など短期筋だけでなかったことだ。 長期資金の海外投資家も、日本株を売り始めている可能性が大きい。 ドルベースの日本株が今春以降、急上昇。 通常は為替ヘッジをしない海外の長期投資家にとっても利益が乗る水準になっていたことで「益出し売りをしやすかった(外資系投信)」という。 4 日終値でも、ドルベースの日経平均は、依然として前年比プラス圏だ。

だが、別の見方も浮上している。 「日本経済に対する疑念を持つ海外投資家が増えてきた」と、ある外資系証券エコノミストは指摘する。 消費、生産、設備投資、物価、いずれも停滞感が強まる中で、アベノミクスへの信頼感が低下してきたことも、日本株売りの背景にあるという。 「今の日本は、政治、経済とも、いい印象を受けない。 日銀が追加緩和しても輸入物価だけ上がってしまえば、マイナス効果が強く出てしまう。 政策にも手詰まり感が出ている。」と JP モルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏は話す。

「日の丸連合」が対抗

海外勢の売りに対抗したのは国内勢。 国内年金の売買を経由する信託銀行は、8 月第 4 週、現先合計で昨年 12 月第 3 週以来となる 5,155 億円を買い越した。 市場では公的年金や共済などを含めた「公的資金」の買いとの見方が多い。 日銀の ETF (上場投資信託)買いもハイペース。 8 月第 4 週は、24 日の 337 億円 1 回だけだったが、金融調節のデータでみた 8 月は 3,494 億円の買いとなり、月間最高となった。

「公的資金」以上に買いを入れたのが個人だ。 8 月第 4 週は現先合計で、2,674 億円の買い越しだったが、投資信託の 7,922 億円の買い越しと合わせると 1 兆円超のプラス。 海外勢が過去最大の売りを見せるなか、週間で 1.5% 程度の下げにとどめたのは、こうした個人と公的資金の買いだ。 しかし、海外勢の売りは止まらず、4 日の日経平均は一時 500 円以上の下落となり、26 日に付けた安値を割り込んだ。 「日本経済への自信というよりも、値ぼれで安くなったから買ったという個人投資家は、大きな損を抱えることになりかねない(松井証券・シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏)」と警戒されている。

芽生えた金融緩和への疑念

ショートはたまっており、反発のエネルギーは大きい。 空売り比率は 4 日まで 3 日連続で 40% を超え過去最高レベル。 裁定売り残は 8 月 28 日時点で 5,295 億円となり、統計開始の 1991 年 4 月以降、過去最高となった。 モルガン・スタンレーの 31 日付リポートでは、日本株をトップピックにしており、TOPIX の目標株価を 1,740 ポイントに据え置いた。 企業業績の拡大を引き続き予想している。 日本株に強気な見方がなくなったわけではない。

ただ、市場を取り巻く不安感は濃い。 「各国がこれだけ金融緩和しても経済は依然弱いままだ。 世界的な景気減速懸念の中で、政策に対する不安が強まっている。(シティグループ証券・チーフエコノミストの村嶋帰一氏)」という。 欧州中央銀行 (ECB) のドラギ総裁は 3 日の理事会後の会見で、状況次第で追加緩和も辞さない考えを示唆したが、市場のポジティブ反応はすぐに減衰。 欧州株は 1 - 2% 上昇したものの、米ダウは 23 ドル高で終了、日本など 4 日のアジア株は下落に転じている。

これまでなら、金融緩和環境が継続されるメッセージで市場センチメントが持ち直すパターンが多かった。 しかし、金融緩和「マジック」の効果も薄れ始めているとすれば、グローバル金融相場は、大きな転機を迎える。 海外勢の怒涛の売りを国内勢が吸収するのは容易ではないだろう。 (伊賀大記、Reuters = 9-4-15)

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株価急落、終値 1 万 8,540 円 = 世界的連鎖で一時 900 円超安 - 東京市場

週明け 24 日の東京株式市場は、中国経済への懸念に端を発した前週からの世界的な株安の連鎖が止まらず、全面安の展開となった。 日経平均株価は急落し、下げ幅は一時、前週末比 937 円 03 銭まで拡大した。 終値も 895 円 15 銭安の 1 万 8,540 円 68 銭と今年最大の下げ幅を記録、2 月 23 日以来半年ぶりの安値となった。

24 日は中国・上海市場でも、市場全体の動きを示す上海総合指数が最大で約 9% 低下と大幅に下落。 東京市場の関係者からは「上海株の急落で、投資家が恐怖心に駆られた(民間シンクタンク)」との声が聞かれた。 日経平均が終値で 1 万 9,000 円を割ったのは約 5 カ月半ぶり。 終値の下げ幅は 2013 年 5 月 23 日以来の大きさだった。 中国の景気減速で米国の利上げ時期が遅れるとの見方が強まったことも、世界経済全体への不透明感につながり、株式市場から大量の資金が引き揚げられた。

東証1部全銘柄の値動きを示す東証株価指数 (TOPIX) は 92.14 ポイント安の 1,480.87。 出来高は 39 億 4,933 万株。 売買代金は 4 兆 1,075 億円。 24 日の東京外国為替市場は、中国経済の減速懸念から、ドルを売って安全資産とされる円を買う動きが強まった。 午後 5 時現在は、1 ドル = 120 円 40 - 41 銭と前週末比 2 円 49 銭の大幅な円高・ドル安。 円は対ユーロでは午後 5 時現在、1 ユーロ = 138 円 27 - 28 銭と前週末と同じ水準。 (jiji = 8-24-15)