中国発の世界リセッション確率 55%、中国成長率は 2.5% にも - シティ

シティグループが世界経済に対する警告を発した。 8 日遅くに公表した分析リポートでチーフエコノミストのウィレム・ブイター氏は世界が今後 2、3 年に中国発のリセッション(景気後退)に陥る可能性を 55% と見積もった。 「世界経済がリセッション入りする実質的なリスクが増しているとみられる。 新興市場、特に中国が主因の景気後退だ」と同氏は書いている。

同氏が中国について懸念する理由は、同国の成長ペースが恐らく、既に 4% 近くまで減速しているとみていることだ。 中国政府は 7% 前後を今年の成長率目標に掲げている。 成長率が 2016 年半ばに 2.5% まで低下しその水準にとどまれば、中国が緩やかなリセッションに陥ると同氏は予想する。 ブラジルや南アフリカ共和国、ロシアといった中国以外の新興市場国も既に苦境にあり、先進国・地域の経済はまだ勢いに欠ける。 商品相場と貿易、インフレは弱く、企業利益は低迷しつつある。

中国についてブイター氏は「循環的なハードランディングのリスクは高く、急速に上昇しつつある」とし、主要分野での余剰生産能力と債務の大きさ、さらには株式と不動産の相場調整を理由に挙げた。 中国人民銀行(中央銀行)は政策金利と預金準備率を引き下げているが、債務が金融政策による支援の余地を狭めるため需要低下への対応が不十分になる恐れがあると説明。 また、8 月に実質切り下げた人民元の行き過ぎた値下がりを当局は望まず、財政出動を急ぐことにも慎重だと指摘した。

先進国・地域へは、中国の苦境は貿易の減少を通じて波及するだろうと分析。 また、米国債などで保有する 6 兆ドル規模の準備資産を中国が取り崩せば国際金融市場を揺るがしかねないほか、質への逃避でドルが急騰する可能性があるとも指摘した。 16 年のリセッションは金融緩和と財政出動によって回避できる可能性はあるが、先進国・地域の金利が下限に近いことや手段を温存したい政治家の意向によって、実施に移せる対応策は極めて限られるという。 「現在、金利は大半の先進市場で政策手段として役に立たず、財政はほぼ全ての国で 08 年当時より逼迫(ひっぱく)している」とブイター氏は指摘した。

08 年の金融危機の再発や恐慌のような世界の生産急減はないとみられるものの、公的債務の増大に投資家が突然のパニックに陥ったり政治家が保護主義や通貨切り下げ競争に走った場合は見通しが悪化すると警告した。 (Simon Kennedy = ロンドン、Bloomberg = 9-10-15)

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中国経済・株式市場不安、李首相解消に努める

[大連/上海] 中国の李克強首相は 9 日、国内経済の見通しは引き続き前向きで、金融システムへの主要リスクも回避したと強調、自国経済や株式市場への不安解消に努めた。 世界経済フォーラム夏季ダボス会議で演説した。 首相は、政府が市場を安定化し、リスク拡大を防ぐ施策を講じており、システミックリスクの可能性を無くした」と述べた。 首相は国内経済について、下振れ圧力に直面していると認めたうえで、ハードランディングに向かうという一部懸念の払しょくを図った。

首相は「中国の景気情勢は、一定程度緩やかに推移しつつも、全体的に安定している。 困難に直面しながら、全般に前向きなトレンドが存在する。」と指摘。 一段の景気支援を図るため、政策の「微調整」を行う用意にも言及した。 中国財政省はこの日、景気を下支えするため、インフラ向け支出を拡大し、税制改革を加速する方針を表明した。

人民元切り下げについて首相は、為替相場に市場メカニズムをより反映させることを狙う改革の一環だったと説明。 今後は安定的に推移するとの見通しを示した。 首相は「中国には多額の外貨準備があり、人民元の切り下げを続ける根拠はない」と指摘。 通貨戦争を望まない考えも示した。 首相は「通貨戦争が実際に起これば、中国に悪影響を及ぼすだけだ」と指摘。 「人民元の切り下げを続けるなら、通貨の国際化につながらない。 政策上好ましいことではない。」との認識を示した。

また、株式の投機的取引を抑制する一連の政策に伴い、資本市場開放の方針が後退したとの見方を否定。 「金融セクターに参入する民間金融機関や外資企業に、市場アクセスの緩和を続ける」とした。 (Reuters = 9-9-15)


G20、中国経済の減速議論 人民銀総裁「バブル」言及

主要 20 カ国・地域 (G20) 財務相・中央銀行総裁会議が 4 日夜(日本時間 5 日未明)、トルコのアンカラで開幕した。 初日の討議は、このところの世界の金融市場動揺の震源地とされる中国経済の減速への対応について時間が割かれた。 日本をはじめ多くの国から、中国に構造改革を求める声が相次いだ。 会議では、冒頭で中国側が経済の現状を説明。 出席者によると、中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁が中国の株式市場の混乱について、「バブルがはじけたような動きがあった」などと述べたという。

麻生太郎財務相は会議の中で、中国が取り組むべき構造改革の具体例を指摘。 過去の景気対策で積み上がった過剰な生産設備を減らすことのほか、当局の規制の網から漏れる「影の銀行」と呼ばれる不透明な金融システムへの対応、金融機関の不良債権処理の必要性などを挙げた。 他国からも同様の指摘があり、中国側も構造改革の必要性に理解を示したという。 (アンカラ = 内山修、五十嵐大介、asahi = 9-5-15)

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中国が人民元を切下げ タイとマレーシアに通貨危機が来る

中国が人民元を切下げました。 今日のフィックスは前日に比べて 1.9% 低い水準の 6.2298 でした。 Market Hack では 7 月以降、「中国は人民元を大幅に切り下げる」と予想してきました。 そのシナリオが、今、始まろうとしているわけです。 中国は過去に 4 回、大幅な人民元の切下げを行っていますが、今回は一日で大きな水準訂正をするのではなく、市場の価格発見能力に任せてしばらく自然な落ち着きどころを見極める方針に出ることが予想されます。

その理由は IMF の SDR 準備通貨見直しに際して、人民元のレートが人為的に決められている事に対する批判をかわすことによります。 今回の人民元の水準訂正が、今日のレベルで収まるかどうかはわかりません。 ただ IMF との文脈から考えると、数日間に渡るフリー・フォールを演出した方が心証が良くなると思います。 その場合、中国と競争関係にある周辺国の通貨は売り圧力を浴びると思います。 また新興国通貨全般も敬遠されることが予想されます。 特にタイとマレーシアは、最近、外貨準備が激減しているので、通貨急落のリスクがあります。 (MarketHack = 8-11-15)

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人民元切り下げ 日本企業 経常益 400 億円余減少も SMBC 日興証券が試算

SMBC 日興証券は 11 日、中国人民銀行による人民元の事実上の切り下げについて、中国に進出する日系企業の経常利益を 400 億円余り押し下げるとの試算をまとめた。 元建て収益を円換算した場合に目減りするため。 平成 25 年度の収益実績で試算した。 同証券によると、日本企業の中国向け輸出はほぼドル建てか円建てのため、元切り下げの影響はほとんどないという。

一方で、中国に進出する日系企業(現地法人)は現地で元建てで商売しており、人民元切り下げ分を単純に円換算すると、現地法人の年間売上高は 4,193 億円、経常利益は 444 億円目減りするとしている。 業種別の利益減少額は自動車など「輸送機械」が 146 億円、商社など「卸売業」が 92 億円、「電気機械」が 37 億円。 同証券株式調査部は「日本企業全体でみれば直接的な影響は利益が 0.14% 目減りする程度だが、中国の実体経済の悪化が深刻であれば対中輸出も落ち込みかねない」と分析している。 (sankei = 8-11-15)


海外の日本食店、2 年半で 6 割増 世界に 8 万 8,700 店

農林水産省は 28 日、海外の日本食レストランの数が今年 7 月時点で約 8 万 8,700 店となり、前回調査(2013 年 1 月時点)の約 5 万 5,500 店から 1.6 倍に増えたと発表した。

健康的なイメージで、すしや刺し身などが人気を集めている一方、近年は豚骨味など日本式のラーメン店なども広がっているという。 13 年に「和食」がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に選ばれたことも日本食ブームを後押ししたとみられる。 世界各地の在外公館が、現地の電話帳や飲食店サイトなどで「日本食」として載っている店を数えた。 06 年にも別の方式で調査をしているが、その際は推計で約 2 万 4 千店だった。 (大畑滋生、asahi = 8-29-15)


NY 株急落、終値 530 ドル安 世界経済懸念強まる

21 日のニューヨーク株式市場は、中国経済の先行きへの懸念から、大企業で構成するダウ工業株平均が 2 日連続で急落した。 終値は前日より 530.94 ドル (3.12%) 安い 1 万 6,459.75 ドルで、約 10 カ月ぶりの安値となった。 下げ幅は 2011 年 8 月以来約 4 年ぶりの大きさで、1 週間の下げ幅は 1 千ドルを超えた。

東京市場で日経平均が 2 万円を割った流れを受け、英国、フランス、ドイツなど欧州の主要株価指数が軒並み下落した。 米国市場では、朝方から売りが先行。 中国の製造業の指標が大幅に悪化したことで世界経済への懸念が強まり、中国を成長市場とするアップルなどの主要株を含め、全面安となった。 原油価格の下落が加速したことも警戒感を強め、ダウは終盤にかけて下げ幅を拡大した。

資産運用会社ウェルズ・ファーゴ・アセット・マネジメントのゲリー・シュロスバーグ氏は「米国の早期利上げの観測が弱まり、それが世界経済への懸念を強めている」と話した。 為替市場では、ドルを売って比較的安全とされる円を買う動きが進み、円相場は一時約 1 カ月ぶりとなる 1 ドル = 121 円台後半に上昇した。 ハイテク株が中心のナスダック市場の総合指数は、前日より 171.45 ポイント (3.52%) 低い 4,706.04 で取引を終えた。 (ワシントン = 五十嵐大介、asahi = 8-22-15)


デジタル関税撤廃、対中輸出に恩恵 201 品目正式合意

医療機器やビデオカメラなどデジタル製品 201 品目の関税が、日米や欧州連合 (EU) など約 50 カ国・地域の間で新たに撤廃される。 世界貿易機関 (WTO) の情報技術協定 (ITA) 交渉会合で 24 日、正式に合意した。 合意文書は 28 日に公表する。 デジタル製品の輸出が多い日本にとっては追い風だ。 関税撤廃の対象に新たに加わるのは「通信・AV 機器」や「複合機・印刷機」、「半導体製造装置」などの 201 品目。 新型半導体、MRI や CT スキャン装置といった医療機器、レンズなど光学製品の部品なども含まれる。

WTO によると、交渉参加国(54 カ国・地域)の間での 201 品目の年間貿易額は 1 兆 3 千億ドル(約 160 兆円)以上となり、世界全体の貿易額の約 7% にあたるという。 経済産業省によると、これらの日本の輸出額(2014 年)は約 9.1 兆円で、総輸出額の 1 割強を占める。 約 50 カ国・地域への輸出は約 8 割を占め、撤廃される関税は約 1,600 億円と見込まれる。

日本にとって最も恩恵が大きいのが中国向け輸出で、撤廃される関税のほぼ半額を占める。 とくに、液晶パネルなどに使う「偏光材料製シート・板」は輸出額が 1,263 億円で、8% の関税が撤廃されれば 101 億円のコスト削減に匹敵し、日本の輸出品の競争力がそれだけ高まると期待できる。 この製品は韓国も関税率が 8% で、104 億円の削減になる。 デジタルビデオカメラは、中国で 56 億円(関税率 5.7%)、EU で 47 億円(同 5.4%)、米国では 16 億円(同 1.7%)の関税削減が見込まれる。

海外に拠点を置く日系企業を含めると、DVD・BD プレーヤーは全ての輸出先で 200 億円規模、複合機は 100 億円規模の関税が撤廃される計算だ。 一方、対象品目に含まれる光学製品の部品などには、日本も数 % の関税を残しているものがある。 これらが撤廃されても「ほとんど影響はない。(経産省担当者)」と見られている。(小林豪)

14 日に始まった今回の交渉がまとまったのは、こじれていた中国と韓国の対立が解けたためだ。 サムスン電子や LG 電子などを抱える韓国は当初、液晶パネルなどを関税撤廃の対象に加えるよう主張したが、中国は受け入れなかった。 調査会社 IHS テクノロジーの田村喜男シニアディレクターは「中国が輸入するパネルに関税をかけることで、海外企業は中国に投資をして現地生産をしなければいけない。 撤廃となれば、中国にとっては海外企業からの投資が減るなどメリットが薄れる。」と言う。 そこで米国が仲裁に入り、韓国は液晶パネルの要求を取り下げたとされる。 交渉筋は「米国と(議長の) EU の貢献が大きかった」と話す。

24 日の会合は予定より大幅に遅れて始まった。 一部の国が慎重な姿勢を崩さなかったためだ。 交渉筋によると、交渉参加国のうち、総統選を控える台湾や、トルコなど 5 カ国・地域は 24 日時点で合意に加わらず、合意したのは 49 カ国だった。 会合では、台湾なども今後、国内での手続きを進める意向を示したという。 今後は、各品目の関税を何年かけて撤廃するか(最長 7 年)を国ごとに決めていく作業を進め、12 月の閣僚会合での決着を目指す。 発効は来年 7 月の予定だ。

WTO のアゼベド事務局長は「この規模の貿易において関税を撤廃することは巨大なインパクトがある。 (対象製品の)価格を低下させるほか、雇用や成長を生み出すだろう。」との声明を出した。 交渉に当たった小田部陽一・ジュネーブ国際機関代表部大使は声明で「(12 月にナイロビで開かれる WTO)閣僚会合の具体的成果とすべく、残された関税撤廃期間の交渉に取り組みたい」と述べた。

1997 年発効の ITA は 78 カ国・地域が加盟し、すでに携帯電話やパソコンなど 144 品目の関税を撤廃。 12 年には、ほかのデジタル製品にも関税撤廃を拡大する交渉が始まった。 当初は難航したが、昨年 11 月の米中首脳会談で対象品目の拡大で一致し、約 1 年ぶりに交渉を再開していた。 先進国と新興国の主要貿易国が参加する大型関税交渉としては 18 年ぶりの合意となる。(ジュネーブ = 寺西和男、松尾一郎、asahi = 7-25-15)


ギリシャ議会、金融支援条件の改革法案第 2 弾を可決

[アテネ] ギリシャ議会は 23 日、欧州連合 (EU) が金融支援再開の条件として求めていた第 2 弾の改革法案を賛成多数で可決した。 司法と銀行の改革に関する内容で、定数 300 のうち賛成は 230 票だった。 新 EU 派の野党が賛成に回った。 ただ、与党の急進左派連合 (SYRIZA) の議員は、149 人のうち 36 人が反対あるいは棄権にまわった。 先週可決された財政改革法案の採決では、造反は 39 人だった。 (Reuters = 7-23-15)

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ギリシャ国会、財政改革案を承認 財務相会合で協議へ

財政危機にあるギリシャの国会(定数 300)は 10 日、政府が金融支援の前提として欧州連合 (EU) 側に提出した財政改革案について審議を行い、11 日未明に同案に基づき政府が EU 側と交渉することを賛成多数で承認した。 同日のユーロ圏財務相会合での合意を目指し、一歩前進した形だ。 賛成は 251 票、反対は 32 票、白票にあたる「出席」は 8 票だった。 最大野党・新民主主義党(76 議席)など親 EU 派の野党 3 党が賛成に回り、EU 側との交渉妥結に向けて与野党が足並みをそろえた。

チプラス首相は採決に先立ち演説し、「我々は間違いを犯した」と述べ、新提案が反緊縮を唱えてきた政権の公約とは異なると認めた。 だが、ユーロ圏離脱を避け、国民に対する責任を果たすためにはやむを得ないことだとして、理解を求めた。

同案は付加価値税(消費税に相当)の増税や年金の削減など、与党・急進左翼進歩連合が反対してきた緊縮策を受け入れる内容。 選挙公約に違反することは明らかで、ラファザニス・エネルギー相らが異議を唱えるなど、議論は紛糾した。 反緊縮を主導してきたバルファキス前財務相は家庭の事情を理由に本会議を欠席した。 だが、ギリシャが置かれた危機的な状況から、反対の動きは広まらなかった。 急進左翼と連立を組む「独立ギリシャ人」も、同案に盛り込まれた離島向けの減税廃止などに懸念を示したが、最終的には賛成に回った。

一方、AFP 通信などによると、EU 側などの実務者チームは、税制や年金の改革で負担増を受け入れるギリシャの改革案について「肯定的な評価」を下したという。 ギリシャはユーロ圏の救済基金「欧州安定メカニズム (ESM)」に 3 年間の金融支援を要請。 改革案について、EU の欧州委員会や国際通貨基金 (IMF) などの実務者が内容を精査したうえ、11 日のユーロ圏財務相会合で支援に応じるかどうかを話し合う。 最大支援国のドイツが慎重姿勢なため、合意できるかどうかは予断を許さない。(アテネ = 山尾有紀恵、asahi = 7-11-15)

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「緊縮ノー」に厳しい現実 続く財政危機、EU の対応は

欧州連合 (EU) などが求める緊縮策を受け入れるか否か - -。 ギリシャで 5 日投開票された国民投票は、チプラス首相が呼びかけた「反対」の圧勝に終わった。 だが、財政危機が解消される道筋は見えない。 EU 側がどう出るか、対応に注目が集まる。 「オヒ、オヒ! (ノー、ノー)」 メディアが伝える開票速報で、「反対」の得票が 60% を超す圧勝と伝えられた 5 日夜、アテネの国会議事堂前のシンタグマ広場には市民数千人が集まり、気勢を上げた。 EU 側からは投票前、ノーならばギリシャがユーロ圏にとどまるのは困難と警告されてきた。 だが、それでも緊縮反対を表明した人々の表情は明るかった。

元画家で今は年金生活をしているエレニさん (76) は「祝福に来た。 脅迫に対し、尊厳を守り、ノーと言うのが正義だ。 緊縮は受け入れない。」と話した。 一方、「賛成」に一票を投じた人々の間に失望や不安が広がった。 靴店経営のソフィア・パパセオドルーさん (58) は「緊縮策には反対だが、(ユーロ導入の前の自国通貨)ドラクマに戻る可能性があるから賛成票を投じた。」 会社員、ペトロスさん (50) は「これは間違いだ。 EU とは合意できないだろう。 銀行は営業を再開せず、預金の一部は戻ってこないのではないか。」と語った。

ギリシャ政府は 6 月 29 日から銀行窓口を休業させ、ATM からの預金引き出し額も 1 日 60 ユーロに制限してきた。 6 日までの暫定措置としており、チプラス首相は投票結果を受けた 5 日夜の演説で、銀行業務の早期再開を最優先事項として挙げた。 だが、実際には銀行の資金はすでに底をつきかけているとみられ、再開すれば、すぐ資金不足に陥る可能性がある。

ギリシャ最大の支援国であり、EU の主導権を握るドイツの連立与党からは 5 日夜、チプラス政権を強く批判し、交渉が再開されても一切譲歩すべきでないという声が出始めている。 メルケル首相が率いるキリスト教民主同盟 (CDU) からは、ブリンクハウス連邦議会議員団長が独テレビに「『改革のための支援』が前提だ。 ギリシャ政府が改革をせず、それが国民に支持されているというならこれ以上の支援は難しい。」と述べた。

CDU の姉妹政党キリスト教社会同盟 (CSU) のショイアー幹事長は、チプラス氏を「左翼のゆすり屋、国民的うそつき」とこき下ろした。 CDU と連立を組む社会民主党 (SPD) 党首のガブリエル副首相兼経済エネルギー相も大勢判明後、「ギリシャがユーロ圏のルールを拒む以上、大規模な支援交渉は想像しがたい」との考えを表明した。 (アテネ = 梅原季哉、寺西和男、ベルリン = 喜田尚、asahi = 7-6-15)

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ギリシャ、資本規制導入 国内銀行 7 月 6 日まで休業

【アテネ = 竹内康雄】 ギリシャのチプラス首相は 28 日夜、銀行の営業を 29 日から停止し、資本移動規制を導入すると発表した。 ギリシャの財政破綻のリスクが拡大し、国内の金融システムへの不安が高まったため、資金の流出を防ぐ。 観光や小売りなど経済全般が打撃を受けるのは確実で、国民生活にも影響が出そうだ。 29 日の外国為替市場では、ユーロは幅広い通貨に対して売られて始まった。

首相は期間や具体的手法には触れなかった。 地元メディアによると、銀行休業は 7 月 6 日まで続く。 ATM は 30 日以降は利用可能だが、一日の引き出し上限額は 60 ユーロ(約 8,000 円)になるという。 現金の国外持ち出しや送金にも制限がかかる見通し。 銀行の休業には、国内からの資金流出に歯止めをかけ、金融機関の破綻を防ぐ狙いがある。 アテネ証券取引所は 29 日は休場となる。

欧州中央銀行 (ECB) は 28 日、ギリシャの銀行の資金繰りを支えるための緊急資金支援の上限額を現状維持と決定。 900 億ユーロとされる支援枠を引き上げなかった。 銀行の営業を続けても現金引き出しに殺到する顧客に対応できないことから、首相は資本規制に踏み切らざるを得なかった。 首相は「ギリシャ中銀が銀行を休業させ、預金の引き出しを制限するよう要請してきた」と説明した。

ギリシャ国会は 28 日、同国への支援の前提となる欧州連合 (EU) 側の財政改革案を受け入れるかどうかを問う国民投票を、7 月 5 日に実施する計画を承認した。 ギリシャは 6 月 30 日までに国際通貨基金 (IMF) に 15 億ユーロを返済しなければならず、首相は債権者側に返済を延長するよう改めて要請したことを明らかにした。 「私は民主主義に基づいた要求への(債権者側の)答えを待っている」と語った。

債権者側がこの要求に応じるかどうかは不明だが、国民投票で改革案を受け入れるとの結果が出た場合、支援を再開する方針だ。 地元紙の緊急世論調査によると、改革案を受け入れる声は 57% で、反対は 29% だった。 別のメディアでは賛成は 47%、反対は 33% だった。 提案を拒否すればギリシャの債務不履行(デフォルト)やユーロ圏離脱はさらに現実味を帯びる。

EU 側はなおギリシャの歩み寄りに期待を寄せる。 メルケル独首相とオバマ米大統領は 28 日に電話協議し、「ギリシャがユーロ圏内で、改革と成長の道に戻ることが重要」との考えで一致した。 欧州委員会は 28 日、財政改革案の内容を公表、ユンケル委員長は「ギリシャ国民の情報のため」と説明した。 モスコビシ欧州委員(経済・財務担当)は「対話の窓口は常に開かれている」と述べ、ギリシャに交渉のテーブルに戻るよう促した。

資本規制は 2013 年 3 月、資金繰りに行き詰まったキプロスが実施したことがある。 キプロス政府は 2 週間弱、銀行の営業を停止させた上で、その後は現金の引き出しを 1 日当たり 300 ユーロの上限を設定した。 国外への送金や現金の持ち出しも制限した。 すべての規制が終わるには 2 年を要した。

資本規制は日常生活に大きく影響するため、不便を強いられる国民のチプラス政権への不満が高まることは確実だ。 首相は「市民が銀行に預けているお金は保証される」と語り、国民に平静を保つよう呼びかけた。 首相の支持率はなお高水準を保っているものの、今回の措置で求心力を維持できなくなる可能性もある。(nikkei = 6-29-15)


世界経済のリスク … ギリシャ危機より中国経済成長の鈍化 = 中国メディア

中国メディアの人民日報は 16 日、中国経済が衰退しているとの論調が世界中で聞こえ始めたと伝え、一部では「ギリシャの債務危機よりも、中国経済の成長鈍化のほうが世界経済にとってリスク」との見方もあると伝える一方、「各国の中央銀行が金利を維持したことは世界経済に対する自信を示すものだ」と主張した。 記事は、英国や韓国、オーストラリアなどの中央銀行が金利維持を発表し、日本銀行も 15 日に金融政策決定会合を開き、金融政策の現状維持を決定したことは「各国の中央銀行が世界経済の先行きを楽観視していることを意味する」と論じた。

一方で、世界第 2 位の経済大国として、中国経済の動向が世界の注目を集めるのは当然のこととする一方、国際通貨基金 (IMF) の報告を引用し、「金融市場における動揺は、中国の新しい経済モデルへの転換が大きな困難に直面していることを示すもの」と報じた。 また記事は、中国を始めとする新興国の世界経済に対する貢献はますます拡大していると伝え、中国の 14 年における世界経済の成長率に対する貢献度合いは 38% に達し、10 年の 23% を大きく上回ったと指摘。 さらに中国は銅やアルミニウム、綿花の輸入大国であり、ブラジルや南アフリカにとって最大の貿易パートナーであると指摘。

さらに、米国の投資銀行モルガン・スタンレーの関係者の話として、「中国は靴やおもちゃといった製品の輸出のほかに、近い将来、世界に新しいものを提供するだろう」と伝え、それは「衰退」であると主張。 世界経済が衰退するとすれば、それは中国発となるとの見方を示し、中国経済の鈍化が続くことが世界経済の衰退の始まりになるとの見方を示した。 (Searchina = 7-17-15)

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「中国株式市場のバブルは崩壊した」 IMF が見解 世界経済見通しを下方修正

IMF (国際通貨基金)は 7 月 9 日、2015 年の経済見通しを発表し、今年の世界の成長率の予測を下方修正した。 また、大幅な株価の下落が続いた中国の株式市場について「バブルが崩壊した」と述べると共に、影響は「現段階では主要な問題とはならない」との見方を示した。 BBC などが報じた。 IMF は成長率の予測をこれまでより 0.2% 引き下げて 3.3% のプラスと予測した。

IMF のオリビエ・ブランシャール調査局長は記者会見で、1 カ月足らずで約 32% 下落した上海総合株価指数について、「(中国株式市場の)バブルは崩壊した」と述べ、中国の個人消費の落ち込みなどが予想される一方で、アメリカと比べると市場の規模が小さいことから世界経済への影響は限定的との見方を示した。 中国株式市場は大幅な株価の下落が続き、7 月上旬までの 3 週間で時価総額 3 兆 2,000 億ドル(約 392 兆円)が失われた。 これは本土の証券取引所で 1 分間に約 10 億ドル(約 1,213 億円)ずつ失われた計算だ。

中国本土の証券取引所で8日までに少なくとも 1,323 銘柄の売買が停止され、時価総額で 2 兆 6,000 億ドル(約 320 兆円)相当、市場全体で約 71% の株式が売買停止もしくはストップ安となる事態となった。 全上場企業の 6 割近い約 1,600 社が自社株の売買停止を申請したとみられる。

中国の証券監視当局は利下げや空売り規制、信用取引の拡大、証券会社による株価下支えなどの対策を講じたほか、大株主や経営幹部に 6 カ月間持ち株の売却を禁じる異例の措置をとった。 メディアに対しては「暴騰」や「崩壊」といった言葉を使わずに公式発表を適切に報道するよう通達し、引き締めを一段と強めている。 9 日の中国株式市場は反発し、当局の措置がひとまず効を奏した形だが、急落傾向に歯止めがかかったとは言えない状況が続く。 (Kazuhiko Kuze、The Huffington Post = 7-10-15)

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世界の 15 年成長率予想を 3.1% に下方修正、投資低迷を懸念 = OECD

[パリ] 経済協力開発機構 (OECD) は 3 日、世界の経済見通し(エコノミックアウトルック)を公表し、実質国内総生産 (GDP) 成長率予想を前年比 3.1% 増に下方修正した。 昨年 11 月時点の予想は 3.7% 増だった。 OECD は、投資の低迷が引き続き懸念材料だとしながらも、原油価格の下落により景気は徐々に回復するとの見方を示した。 16 年の成長率については 3.8% 増と予想した。 中国に関しては、15 年の予想を 6.8% 増とした。 16 年については 6.7% 増とし、当初の 7.4% から引き下げた。

米国に関しては、15 年はじめの成長率が「ドル高と悪天候で足踏みした」と指摘。 15 年の成長率を 2.0% 増と、前回の 2.2% 増から小幅ながら引き下げた。 16 年は 2.8% 増と予想した。 ユーロ圏経済は「原油安や、欧州中央銀行 (ECB) による資産買い入れ、ドル高により徐々に強まる」とし、15 年の成長率は 1.4% 増、16 年は 2.1% 増になるとの予想を示した。

投資の低迷に関して、OECD は「景気回復自体が鈍化していることや、大幅な回復に対し懐疑的な見方が出ていることが主因」と指摘。 「各国の成長率には個別要因もからんでいる。 欧州の一部における資金供給のひっ迫、北米における原油価格の下落、中国における過去の過剰投資による負担、そして加盟国の大半における住宅市場の調整などがその要因だ。」と述べた。 (Reuters = 6-3-15)


対ギリシャ支援、週内合意めざす ユーロ圏首脳会議

欧州連合 (EU) のユーロ圏首脳会議が 22 日夜(日本時間 23 日未明)、ブリュッセルで開かれ、財政危機にあるギリシャに対する金融支援について、週内の合意を目指す方針で一致した。 ギリシャが示した改革案を精査したうえで、24 日に財務相会合を再び開いて大筋で合意したい考えだ。

首脳会議をひかえた財務相会合を前に、ギリシャは早期退職に伴う年金受給を制限することや、付加価値税を部分的に引き上げることなどを柱としたとみられる改革案を提出。 ユンケル欧州委員長(EU の首相に相当)は首脳会議後の会見で「今週中に合意できると確信している」と述べた。 ギリシャへの現在の金融支援プログラムは 30 日で失効し、同日に国際通貨基金 (IMF) への約 15 億ユーロの返済期限も迫っている。 (ブリュッセル = 寺西和男、吉田美智子、asahi = 6-23-15)

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ユーロ離脱ならギリシャ国民生活に打撃、燃料や医薬品が最も深刻

[ロンドン] ギリシャ政府と国際債権団の交渉難航による警戒感が金融市場に広がる中、ギリシャ国民への必需品の供給をめぐる脅威が次第に意識されつつある。 同国がデフォルト(債務不履行)に陥り、ユーロ圏からの離脱が迫った場合、真っ先に入手困難となるのが輸入依存度の高いエネルギー資源や医薬品とみられるためだ。 ギリシャの 2014 年の輸入額は 620 億ドルで、世界全体の 18 兆 8,000 億ドルから見ると規模は小さいものの、日常生活に不可欠な燃料や人命にかかわる医薬品を確保できなければ、国民に深刻な影響を及ぼすことになる。

ユーロ圏離脱に備えるセーフティネット(安全網)はなく、旧通貨のドラクマに戻した場合の輸入品価格は、手の届かない水準に高騰する恐れがある。 ラッセル・インベストメンツのストラテジスト、ウーテル・ストゥルケンボーム氏は「簡単な話ではない。 ギリシャはエネルギーと医薬品を大量に輸入しているため、人道的支援が必要となる。 債権国はそれを考慮に入れざるを得ない。」と述べた。

ただ、エネルギー問題ではロシアとの連携を強める可能性がある。 ギリシャのチプラス首相は 19 日にロシアのサンクトペテルブルグでプーチン大統領と会談する予定だが、天然ガスの供給も話題となりそうだ。 トムソン・ロイターのデータによると、ギリシャの天然ガス輸入のうちロシアの国営天然ガス会社ガスプロムが 80% を占めている。 医薬品については、製薬メーカーが供給を止めることへの道義的な圧力があり、欧州連合 (EU) 当局と今後の方策を協議している。

スイスのロシュ・ホールディング、米ファイザー、仏サノフィなど世界の医薬品大手は、支払いが滞る中でも製品を供給し続ける手立てを考えたいとしている。 ギリシャがユーロ圏を離脱し、ドラクマを復活させた場合、各メーカーは主要な医薬品の価格を引き下げる必要があるだろう。 しかし、欧州製薬団体 EFPIA の代表は、ギリシャ向け価格の適用を他の国が求めることや、ギリシャの輸入品を他の EU 加盟国に再輸出することを阻止しなければならないと述べた。 同国は医薬品の世界売上高の 1% 弱を占めるにすぎないが、市場全体への影響力ははるかに大きくなりそうだ。 (Reuters = 6-17-15)


テロによる死者数、昨年は 8 割増 米国務省が年次報告書

米国務省は 19 日、2014 年のテロ年次報告書を発表した。 「イスラム国 (IS)」など過激派の台頭で、テロによる死者数は前年と比べ 8 割増の 3 万 2,727 人(前年 1 万 8,066 人)、人質の数は前年比 3 倍以上の 9,428 人(同 3,137 人)に上った。 95 カ国でテロが起き、死者数はシリア、イラク、ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタンの計 5 カ国で全体の 78% を占める。

シリアとイラクで勢力を伸ばす IS によるテロでの死者は 6,286 人で前年の 1,752 人を大きく上回った。 人質は 3,158 人で前年の 114 人から 30 倍近く増えた。報告書は IS を含め、内戦中のシリアでテロ組織の戦闘員となった外国人は 1 万 6 千人以上とし、過去 20 年で他地域でも例がない規模だという。

また、ナイジェリアのボコ・ハラムによって人質に取られた人々は 1,217 人で前年の 38 人から 32 倍を超える増加をみせた。 ボコ・ハラムは昨年 4 月に 200 人以上の女子生徒を誘拐し、「奴隷にして売り飛ばす」と宣言し、世界に衝撃を与えている。 一方、カナダやオーストラリアなどで起きた過激派思想を帯びた「単独犯型」のテロを「新しい時代の兆候」と報告。 「実際にテロ組織からの指令があったかどうか判別が難しい。 欧米の国境管理が厳しくなったことで、テロ組織が欧米在住者を頼り、触発するようになったとみられる」とした。(ワシントン = 杉山正、asahi = 6-20-15)


世界の難民、6 千万人に迫る 過去最悪に 国連

紛争や暴力から逃れて難民となった人の数が 2014 年の統計で世界全体で 6,000 万人に迫り、過去最悪となった。 その半数以上を子どもが占めているという。 国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR) が 18 日に発表した報告書で明らかにした。 世界の人口規模と比較すると、難民の数は世界で 24 番目の国に相当する。 世界の人口の 122 人に 1 人が難民または避難民となっている計算で、2014 年は過去最悪となる 1,390 万人の難民が新たに発生。 出身地に戻ることができたのは 12 万 6,800 人にとどまり、この 31 年で最も少なかった。

UNHCR のグテレス高等弁務官は先の記者会見で、「世界は戦争状態にあるという印象だ。 実際に世界の多くの地域は完全な混乱状態にある。」と語っていた。 地域別に見ると難民は中東の出身者が最も多く、受け入れ数では隣国シリアから 159 万人が流入したトルコが最多だった。 シリアでは内戦により 760 万人が国内で避難、388 万人が国外に逃れた。

サハラ以南のアフリカでは、中央アフリカ共和国や南スーダン、ソマリア、ナイジェリア、コンゴ(旧ザイール)などの難民が多数を占め、アジア地域ではミャンマーを脱出した難民が急増。 中米では犯罪組織から逃れようとする人が増え、米国への難民申請は前年より 44% 増えた。 (CNN = 6-19-15)


ADB、老舗の「強み」 AIIB 中国に環境配慮も助言

自ら主導してアジアインフラ投資銀行 (AIIB) の設立を急ぐ中国は、アジア開発銀行 (ADB) の大口の借り手でもある。 ADB も、そんな中国にお金を貸すメリットがあるという。 ライバルにもみえる両者を結ぶカギを探ると、1966 年設立の ADB が蓄えた「強み」が浮かんだ。 中国西部の甘粛省。 経済発展は遅れていたが、省都の蘭州は近年、急速な都市化を遂げつつある。 市中心部に、専用レーンをバスが渋滞なしで走る「バス高速輸送システム (BRT)」が 2012 年 12 月に開通、一日約 30 万人を運ぶ。

BRT は、ADB の融資も使いながら整備された。 渋滞や大気汚染が問題となるなか、道路網を拡大しようとする計画に対し ADB は「交通渋滞の解決にならない」と助言した。 同様の試みは、江西省や湖北省など他の省にも広がる。 中国が ADB に加盟したのは 86 年。 ADB からの融資などは累積 316 億ドル(約 3.9 兆円)に達し、加盟国全体でも 2 位の借り手だ。 昨年の融資額もインドに続き 2 位だった。 中国の国内総生産 (GDP) はこの間に 30 倍以上に伸び、日本も大きく引き離す世界 2 位に躍り出ている。 経済成長に向けたインフラ整備だけなら、もう中国が自力でできる。

ただ、環境問題など成長一辺倒では解決できない問題への対応が求められる。 日本の援助関係者は「中国はどう経済成長を実現するかよりも、成長の副産物に立ち向かう時代に入った」と話す。 中国政府も、政治問題がからむ日本など先進国との二国間の枠組みよりも、国際機関の ADB からの方が助言を受け入れやすい。 北京市と周辺で深刻化する大気汚染対策でも、世界銀行と ADB を巻き込み「青空を取り戻す」ための行動計画づくりが進む。

こうした課題は、アジアのほかの国々もいずれ直面すると予想される。 ADB にとっても「先進的な案件を試す場になる(小西歩・東アジア局長)」という。 22 日までシンガポールで開かれた AIIB 設立に向けた交渉に出席したある国の高官は「AIIB の臨時事務局は 4 カ月前から、ADB 関係者からの助言を受け入れている」と明かす。 中国側も、ADB からのノウハウ吸収に余念がない。(北京 = 斎藤徳彦)

ADB が中国への融資を続ける意義について、中尾武彦総裁に聞いた。

AIIB を設立する中国に対して貸し出しを続けるのは、双方にメリットがあるからだ。 中国も ADB から融資を受けたいという意向を示している。 中国に資金がないというよりも、ADB の知識や経験を活用したいと考えているからだ。 中国のような、かなりの所得水準になってきた国は国際機関からお金を借りず、自国の資金を融通すべきだ、という考え方も理解はできるが、ADB にとってもメリットがある。

ADB の中国への融資は、環境、気候変動などに集中している。 こうした問題に関与し、改善することは、中国のみならず、アジアや世界のためになる。 さらに、中国のような比較的信用力の高い国にお金を貸して得た利益は、もっと貧しい国に対してより低い利子で貸し出す財源にできる。 ADB の経営を安定させ、トリプル A という高い格付けの維持にもつながる。 今年 3 月に会談した李克強(リーコーチアン)首相との間でも協力の継続で合意した。

AIIB についても、バクーでの総会にあわせて、設立の準備事務局長を務める金立群(チンリーチュン)氏と会い、協力と協調融資を進めることで一致した。 我々は環境や社会的な配慮にかかわる組織や人員、経験を持っており、(協調融資によって) AIIB に同様に高い基準の融資を促せるし、ADB の資金補完にもなる。 ADB は、融資能力の拡大のほか、調達手続きの合理化や現地事務所への権限委譲などの改革も進めている。 新しい銀行ができることを刺激とし、地域により貢献し、信頼される組織になるように取り組みたい。(聞き手=吉岡桂子、asahi =5-31-15)


総理、550 億円以上の支援表明 太平洋・島サミット

福島県いわき市で開幕した「太平洋・島サミット」で、安倍総理大臣は、防災や地球温暖化対策を推進するため、今後 3 年間で総額 550 億円以上の支援をする考えを示しました。 (政治部・藤川みな代記者報告) 安倍総理は、震災の経験や教訓を分かち合い、助け合う考えを強調しました。 安倍総理大臣 : 「我が政府はお約束として、気候変動と災害に負けない強靱(きょうじん)な力を育むため、皆様方に向こう 3 年、PALM 8 の年までに 550 億円以上の支援を致します。」

そして、安倍総理は、日本と太平洋の島国との関係を「水平かつ双方向の力による威嚇や力の行使とは無縁の関係だ」と訴え、海洋進出を進める中国との違いを印象付けました。 これは、日本が常任理事国入りを目指している国連安全保障理事会の改革に向けて、これらの島国を取り込む狙いがあります。 23 日午後には、日本の支援策や人材育成のプログラムなどを盛り込んだ首脳宣言を採択することにしています。 (テレ朝 = 5-23-15)