ヤマトが 2 割も値上げして赤字転落した最大の理由

ネット通販事業者が戦略転換、読みを誤った経営陣

人手不足への対策から大幅な値上げを実施したにもかかわらず、ヤマトホールディングスが 2 四半期連続の赤字となっている。 人員の確保や体制の構築に予想以上のコストがかかったことが主な理由だが、それ以外の要因も無視できない。 大口顧客であるネット通販事業者の戦略転換という構造的な問題が関係している可能性がある。

従業員を大幅に増やしたことでコストが増加

ヤマトホールディングスが 2019 年 7 月 31 日に発表した 2019 年 4 - 6 月期の業績は、営業損失が 61 億円の赤字となった。 同社は人手不足対策から、宅配料金を大幅に値上げしており、本来なら十分な利益を確保できるはずだ。 利用者に対して一気に 2 割もの負担増を求めておきながら、それでもなお利益が出せないという現実に、市場からは経営陣の能力を疑問視する声が上がっている。

同社はアマゾンなどネット通販からの大口受注を増やした結果、増加する荷物の量に耐えられなくなり、現場の配送要員が疲弊するなどの混乱が生じた。 運送事業者にとって需要の見通しは経営の生命線であり、これを見誤るというのは、100% 経営者の責任である。 ところが、どういうわけか国内世論は、配送を依頼したネット通販事業者を批判するという意味不明の状況となり、こうした声を背景に、同社は配送料金の値上げを決断した。 2017 年 10 月に個人向けの配送料金を平均で 15% 値上げし、その後、法人向け料金についても段階的に値上げを実施。 最終的には全体で 2 割以上も単価を上げた。

運送事業者の場合、基本的に仕入れは発生しないので、配送料金の値上げ分は、そのまま利益になる。 同社は値上げによって大幅な増収増益を実現できるはずだった。 ところが値上げの効果が現れるはずの 2019 年 1 - 3 月期決算は 159 億円の営業赤字となり、今回の四半期決算でも赤字が続いている。

ネット通販事業者はヤマト依存から脱却しつつある

同社では働き方改革に伴う体制整備の費用が増加したことや、料金の過大請求問題が発覚した引っ越しサービスからの撤退費用など、コストが増加したことが原因と説明している。 確かに、過去 1 年間で配送業務に従事する従業員は 19 万 1,433 名から 20 万 3,141 名と約 1 万 2,000 名も増えたので、その分だけコストは確実に増加しているだろう。 だが、全体で 2 割、一部の顧客には 4 割もの値上げを提示しておきながら、それでも赤字というのは合理的な説明がつかない。 同社が赤字転落した最大の理由はコストの増大ではなく、以前と同様、安易な需要見通しが原因である可能性が高い。

同社は配送料金を値上げするだけなく、取り扱い総量の抑制を図ったことから、一部の顧客はヤマトに配送を依頼したくてもできないという状況に陥った。 同社は、状況が落ち着けば、こうした顧客が自社に戻ると考えていたようだが、現実は違っていた。 アマゾンをはじめとする大手の宅配事業者は、ヤマトの値上げをきっかけに、一斉に自社配送網の構築に乗り出し、運送事業者への依存度を低下させている。

最も顕著な動きを示したのはアマゾンである。 アマゾンは今年(2019 年)の 4 月から、個人に商品の配送を依託する「アマゾンフレックス」をスタートさせた。 荷物の配送を請け負いたい個人事業主は、アプリで申し込みを行い、条件に合致する荷物があればその荷物を配送することでアマゾンから配送料を受け取ることができる。

同社が自前の配送網構築を検討しているという話は、以前から知られていたが、大手運送事業者ですら十分な人員を確保できない状況なのに、アマゾンが自前の配送網を構築するのは不可能だという声が多かった。 筆者は、アマゾンの自前配送網確立によって大手宅配事業者の業績が悪化する可能性について何度か指摘したことがあるが、「現実を知らない空論だ」、「無知にも程がある」といった激しい批判を受けるのが常だった(なぜそこまで激高して批判するのか、いまだに筆者にはよく理解できないのだが …)。

だが、ネット通販事業者が自前の配送網を構築できないと結論付けてしまった人は、残念ながら物事を断片的にしか見ていない。 運送業界の旧態依然とした産業構造を考えれば、通販事業者が自前の配送網を構築することには、それなりのフィジビリティ(実現可能性)がある話なのだ。

アマゾンの自社配送網構築は十分な実現性がある

ヤマトをはじめとする大手の運送事業者は、すべての配送を自社社員で行っているわけではなく、多数の下請け運送事業者を使っている。 こうした下請け事業者は個人事業主も多く、一部では想像を絶する低価格で配送を請け負うなど、一種の搾取構造が存在していた。 確かにアマゾンは、大手運送事業者に安い価格で配送を依頼していたかもしれないが、同じ料金を個人の配送事業者に支払った場合、彼等にとっては、大手運送会社の下請けで荷物を運ぶよりも単価が高くなる可能性がある。

つまり、末端の個人の運送事業者にとってアマゾンから配送の委託を受けることはそれほど悪い話ではなく、そうであるがゆえに、アマゾンも勝算ありとして、自前配送網の構築を急いだ可能性が高い。 アマゾン以外にもヨドバシカメラが、ヨドバシエクストリームという自社配送サービスを本格化させているし、不完全ながらも楽天も自社配送網の強化に乗り出している。

大口顧客の動向についてもっと情報を開示すべき

ヤマトは、自社以外には配送できる事業者がいないと考え、一部の顧客からの依頼を断るという強気の営業を行ったが、荷物の配送個数が減ったまま回復しないという予想外の事態となった。 配送個数が戻ることを前提に、正社員を大幅増員したものの、肝心の荷物が増えていないため、一気に赤字に転落したという図式だ。

ヤマトが業績を回復させるためには、採算ラインまで配送個数を増やす必要があるが、価格を下げてしまっては、元の木阿弥である。 今年 10 月には消費増税が控えており、個人の依頼も低調に推移する可能性が高く、正社員を 2 万人も増やしてしまった以上、コスト削減にも限界がある。 市場では、業績の低迷が長期化するリスクも意識され始めている。

運送事業というのは、十分なインフラや人員がいないと機能しないビジネスなので、ある程度、先行投資が必要であることは言うまでもない。 だが、こうしたインフラはすぐには変更できないため、需要をどう予測するのか、あるいは人員をいかに柔軟に配置するのかが重要なカギを握る。 米 FedEx や米 UPS など、米国の大手運送事業者は、クリスマスなど需要が急増する時期には、臨時の配送要員に極めて高い賃金を払うことで、一時的に大量の人員を確保し、急増した需要に対処するといった取り組みを行っている。

ヤマトの経営陣は、人手不足からネット通販の配送が滞るといった事態が発生した時も、そして、値上げを実施した今回も、依託される荷物の個数について予測を誤っている。 これは運送事業者の経営者としては致命的な問題といってよい。 さらにいえば、同社は人手不足問題をきっかけに、大量の正社員を雇用するという形で体制の強化に乗りだしたが、これは固定費の増加を意味している。 一旦採用した正社員を減らすのは容易なことではなく、今後の需要動向によっては、高い人件費が同社経営の足かせとなる可能性がある。

二度も需要予測の失敗が続くということとなると、市場は経営陣の能力について疑問視せざるを得なくなる。 市場からの信頼を回復するためには、大口顧客の需要動向について、もっと詳細な情報を開示していく必要があるだろう。 (加谷珪一、JB Press = 8-12-19)



アマゾン、送料を最大で 5 割値上げ 運賃高騰分を転嫁

ネット通販最大手のアマゾンジャパンは、4 日の注文分から送料を最大で 5 割値上げした。 宅配大手に支払う運賃のアップを転嫁する。 宅配の人手不足を背景に、通販の送料値上げが広がりつつある。 アマゾンの商品には、同社が直接仕入れて売るものと、アマゾン以外の個人や法人が「マーケットプレイス」に出品・販売しているものがある。 今回の送料値上げの対象は、自身で売る商品。 アマゾンの送料値上げは 2 年ぶりとなる。

これまで、消費税込みで 2 千円未満の注文の送料は全国一律で 350 円だったが、本州と四国(離島を除く)向けは 400 円に、北海道と九州、沖縄、離島は 440 円に引き上げた。 最短で翌日に荷物を届ける場合の送料も、これまでの一律 360 円から最大 540 円(北海道・九州向け)に 5 割値上げした。 いずれも書籍や一部の電化製品は対象外。 2 千円以上や有料会員(年会費 3,900 円など)の注文の送料は今まで通り無料とする。

通販の普及に伴い、配送を実際に担う物流業界では人手不足が常態化し、人件費が膨らんでいる。 宅配便最大手ヤマトホールディングスの運賃値上げ要請を、アマゾンは今年 1 月に受け入れていた。 同社は、今回の送料値上げについて「ビジネス環境の変化を総合的に踏まえた結果(広報)」としているが、消費者にも一定の負担を求める必要があると判断したもようだ。 (上地兼太郎、牛尾梓、asahi = 4-5-18)


ヤマト、宅配ドライバー 3 千人を正社員に 人材確保狙い

宅配便最大手のヤマト運輸は 16 日、フルタイムの有期労働契約で働く宅配ドライバー全員を 5 月から正社員に登用すると発表した。 現在働く約 3 千人と新入社員に適用する。 ドライバー不足が深刻になる中、人材確保が狙いという。 ヤマト運輸には宅配ドライバーが約 6 万人おり、うち約 5 万人が正社員。残り約 1 万人は、契約期間の定められた有期労働契約で働き、このうち約 3 千人はフルタイムで働いている。 これまで、同社ではドライバーのほとんどを中途で有期契約社員として採用し、働きぶりなどを見極めて正社員に登用してきた。

宅配ドライバー以外のフルタイムの有期契約社員も、選考基準を満たせば正社員にし、基準に満たなくても 3 年働けば無期契約に転換できるようにする。 有期契約で 5 年を超えて働くと無期契約への転換を求めることができる労働契約法の「5 年ルール」よりも好条件となる。 また、パート(フルタイムではない有期契約社員)も基準を満たせば 5 年を待たずに無期転換できるようにする。 (asahi = 3-16-18)


配達の負担軽減へ ヤマトが駅ビルに試着スペース

宅配最大手のヤマトホールディングスは、商品の返品などによる配達の負担を減らそうと、東京都内の駅ビルに客が注文した衣料品を試着できるスペースを設け、その場で商品を受け取ってもらう取り組みを 4 日から始めました。 この取り組みは、ヤマトホールディングスがアパレル企業と提携し、東京 大田区の JR 大森駅に隣接するビルで試験的に始めました。 ビルに設けた専用のスペースでは、客がネット通販で注文した衣料品を試着できるほか、その場で商品を受け取ることもできます。

ヤマトによりますと、ネット通販では再配達の負担が増加しているうえ、注文した衣料品のサイズが合わないなどの理由で、商品が返品されるケースが増えているということです。 会社では、客がふだん利用する駅ビルに試着できるスペースを設けることで返品を減らせるほか、配達の負担も削減できると見込んでいます。

ヤマトホールディングス事業戦略担当の鈴木修マネージャーは「返品が増えると社会的なロスも増えてしまう。 駅ビルなど生活動線上に試着スペースを設けることで返品を減らしたい」と話していました。 ヤマトでは試験的な取り組みを行ったうえで、今後、数年かけて、全国の駅ビルなどおよそ 150 か所に試着スペースを設けていくことにしています。 (NHK = 1-4-18)


ヤマト、衣料通販に新手法 駅ビルで試着 配送・返品の負担軽く

ヤマトホールディングス (HD) は 2018 年から、インターネット通販で選んだ衣料雑貨を駅ビルで試着できるサービスを始める。 駅ビルに試着室を設け、自社の配送網で商品を届ける。 衣料雑貨のネット通販は、購入前に試着できないという不便さがある。 仕事帰りなどに手軽に試着できるようにすることで、衣料雑貨のネット通販市場の拡大を後押しする。

18 年 1 月から JR 大森駅(東京・大田)に直結する駅ビル「アトレ」で実証実験を始める。 ヤマトが売り場の一部を借りて、無料の試着室を設ける。 アパレル大手の三陽商会や靴専門店のかねまつ(東京・中央)など数社が参加する。 18 年度中にアパレルなど約 40 社に増やし、複数の駅ビルで展開する考えだ。

各社の通販サイトで購入したい商品の配達先として、駅ビルを指定できるようにする。 仕事帰りなどに駅ビルに立ち寄って試着し、気に入ったものだけを購入できる。 消費者にとって自宅で何度も商品を受け取ったり、返品したりする手間を省ける利点がある。 アパレル側にとって、ヤマトの試着室を疑似店舗として使える利点がある。 ヤマトは商品の運賃収入に加えて、売り上げの一部を手数料として受け取ることも検討する。

実証実験では購入時に決済し、試着しても購入しない場合は返金される。 実用化の際は、試着室で気に入ったら、接客する従業員に代金を支払う方法を検討する。 ネット通販は届け先が不在時の再配達が運送員の負担を重くしている。 さらに衣料雑貨のネット通販ではサイズが合わないなどの理由で、企業によっては 3 割の返品が発生している。 ヤマトの新サービスは倉庫から駅ビルへの輸送で済むため、宅配便の 2 割で発生する再配達を減らせる。 (nikkei = 12-8-17)


ヤマト、数百社と契約終了 荷物量は 4 千万個少なく

宅配便最大手のヤマトホールディングス (HD) は 31 日、2017 年 9 月中間決算会見で、9 月末を目標に進めた法人顧客との運賃値上げ交渉の結果、数百社との契約を終えると明らかにした。 17 年度に運ぶ荷物量は、16 年度より 4,100 万個少ない 18 億 2,600 万個に減る見通しという。 ヤマトではネット通販の急増を受け、ドライバーらの違法な長時間労働が常態化。 荷物量削減を狙って法人顧客約 1,100 社と値上げ交渉を進め、9 割の企業と交渉を終えた。 このうち、「値上げを受け入れていただいた企業は半数以上だが、8 割とかまではいかない(芝崎健一専務)」といい、数百社は契約更改の際に契約終了となる。

その結果、17 年度の荷物量については目標の 18 億 3,100 万個よりさらに 500 万個多く減らせそうだという。 また、10 月からは個人向けの基本運賃を平均 15% 程度値上げしており、法人分とあわせ、宅配便の単価は 16 年度より 31 円高い 590 円に上がる見込みだ。 ヤマトの 17 年 9 月中間決算は、未払い残業代 52 億円を計上したことや配送の外部委託の費用がかさんだことで各損益とも赤字に転落。 10 月以降は値上げなどの効果が出て、通期では 250 億円の営業黒字になる見通しだ。

この日、陸運大手 3 社の中間決算が出そろい、日本通運は電子部品などのアジア向け航空貨物が好調で、売上高、各利益とも中間決算として過去最高を更新。 佐川急便を傘下に持つ SGHD は宅配便の単価上昇と個数増を受け、売上高は前年同期より 5.0% 増の 4,814 億円、純利益は 33.2% 増の 166 億円と、増収増益だった。 (石山英明、asahi = 11-1-17)


Amazon vs ヤマトに終止符! 配達運賃 40% 値上げでユーザーへの影響は?

こんにちは、yumi です。

かみあぷでは以前からお伝えしてきた Amazon とヤマト運輸の動向。 今年 4 月にはヤマトが Amazon の「当日配送」から撤退し、宅配便の基本料金値上げを発表したのは記憶に新しいところですよね。 その後も水面下では Amazon とヤマトの運賃交渉が続いていましたが、この度 Amazon がヤマトに支払う運賃を 4 割値上げするということで大筋合意したとのこと。 果たしてユーザーへの影響はあるのでしょうか …?

4 割の値上げで決着か

日本経済新聞によるとヤマトと Amazon は、運賃交渉において値上げすることで大筋合意したことが 27 日にわかったそうです。 なんとその値上げ幅は 4 割超え! これまでヤマトの Amazon 向けの運賃は 280 円前後とされていましたが、今後は 400 円台以上となるようですよ。 ちなみに Amazon はヤマトの最大の取引先で、年間に取り扱う荷物のうち 1 - 2 割が Amazon とのこと。 しかし Amazon の他にも大口顧客は 1,000 社ほどいるとのことで、こちらも同様に運賃の値上げ交渉をすすめており、すでに 7 - 8 割の顧客と合意したそうです。 ヤマトによると値上げで得た原資は、従業員の負担を減らすため「宅配ロッカー」の設置拡大などに回すとのこと。 ドライバーのみなさんが少しでも楽になるといいですよね …!

さて、一方で気になるのが自分への影響。 例えば送料無料の特典がある Amazon プライム会員費は年間 3,900 円と破格の安さで、アメリカでは年間 99 ドル(約 1 万 1,300 円)と日本の倍以上です。 これはいろんな理由があっての価格設定でしょうが、配送費も関係していると考えられます。 現に以前計算してみたところ、プライム会員費と配送費は連動しているような側面もありました。

もしも 4 割の値上げがそのままプライム会員費に影響するとしたら、年間費は 5,460 円となります。 これまでが安すぎたんだし … と思っても、5,000 円を超えるとなるとちょっと抵抗がある方も多いかもしれませんね …。 また、考えられるユーザーへの影響は Amazon のプライム会員費だけではなく、上述した通り他の大口顧客とも交渉を進めているため、Amazon 以外のネットショッピングサイトにも影響することは容易に考えられます。 現時点ではあくまでも大筋合意で決定ではないため、Amazon をはじめ正式な発表はありませんが、ネットショッピングの配達料に関してある程度の値上げは覚悟しておいた方がいいかもしれませんね …! (カミアプ = 9-28-17)


ヤマト、荷物 8 千万個削減の計画撤回 値上げでも減らず

宅配便最大手のヤマト運輸が、2017 年度に扱う荷物量を前年度より約 8 千万個減らす計画を撤回したことが分かった。 大口の法人客などと荷物量の抑制を交渉し、疲弊する宅配現場の労働環境の改善につなげる方針だったが、当初計画を見直して削減幅を 3,600 万個に下方修正した。 想定以上に法人客が値上げを受け入れて取引を継続するためとしている。

当初計画では、荷物量を 16 年度の 18 億 6,700 万個から 17 億 8,500 万個に減らす目標を掲げたが、この目標を 18 億 3,100 万個に修正した。 値上げを嫌って他社に流れる顧客が思ったほど出ず、計画の修正を余儀なくされた形だ。 ヤマトが 6 日発表した 8 月の荷物量は 1 億 5,027 万個。 前年同月を 2.6% 上回り、8 月として過去最多だった。 前年同月を上回るのは 2 年 5 カ月連続で、インターネット通販の荷物量の増加が続いている。 17 年度に入ってからの累計の荷物量も 4.2% 増となっている。

ヤマトは 4 月、荷物量の抑制やサービスの見直し、基本運賃の改定などを柱とする「働き方改革の基本骨子」を発表。 9 月末までを目標に低運賃の荷物が増えて採算が悪化している大口の法人客約 1 千社と値上げ交渉を進め、交渉の成果を荷物量の抑制につなげることをもくろんでいた。 法人客との交渉が想定通りに進んでいない結果、「働き方改革」の前提が揺らぎかねない事態となっている。 (石山英明、asahi = 9-6-17)


宅配荷物、ローカル線の救世主に? ヤマトなど実証実験

岐阜県などが出資する第三セクター「長良川鉄道(本社・関市)」は、宅配最大手のヤマト運輸と提携し、宅配荷物の一部を旅客用の車両に載せて運ぶ「貨客混載輸送」の実証実験を 9 月に行う。 過重労働が問題になっている宅配ドライバーの負担軽減と、経営が厳しいローカル鉄道の増収が期待されている。

実証実験では、関駅(関市)から美並苅安(みなみかりやす)駅(郡上市)までの約 20 キロを 1 日 1 回、列車に荷物を積んで運ぶ。 荷物は専用の輸送ボックス(高さ 170 センチ、横 107 センチ、奥行き 78 センチ)に入れ、車内の乗降口付近のスペースに置く。 美並苅安駅で荷物を車に積み替え、ヤマト運輸のドライバーが郡上市南部の美並地区に配達する。 美並地区は面積が広く、担当ドライバーは郡上市中心部の支店まで、日に何度か往復約 1 時間かけて荷物を取りに戻る必要があった。鉄道輸送で労働時間の短縮や利用者へのサービス向上が期待できるという。 (asahi = 8-12-17)


トラック輸送、他社と連結 … ヤマトが実証実験へ

年内にも、東名高速道路などで実証実験を行い、早期の導入を目指す。 企業の枠を超えた連携によって、インターネット通販の拡大で取扱量が急増している物流インフラ(社会基盤)の維持を図る。

共同輸送は、先頭の大型トラックに他社のトレーラーを連結して高速道路を走る方式を検討している。 先頭車両のドライバー 1 人でトラック 2 台分の荷物を運べるようになる。 高速道路の外では各社、自社のトラックで運ぶ。 実験には現行の規制で最大の全長 21 メートルの連結トラックを使うが、ドライバー不足対策を後押しする国土交通省は全長 25 メートルの連結トラックの解禁を検討しており、将来的な活用も視野に入れている。 (asahi = 7-14-17)


ヤマト残業代未払い、新たに 1.2 万人 40 億円支給へ

宅配便最大手のヤマトホールディングスは 21 日、宅配などを担うセールスドライバーら約 1 万 2 千人の社員で新たに残業代の未払いが見つかったと発表した。 判明済みの約 4 万 7 千人の一部で、さらに未払いが見つかったことも明らかにした。 新たに判明した未払い分の総額は約 40 億円。 7 月以降に順次、一時金として支給するとしている。

ヤマトは全社的に広がる違法なサービス残業の実態をつかもうと、2 月からグループの社員約 8 万 2 千人を対象に勤務実態の調査に着手。 4 月中旬に結果をまとめ、社員に支払う未払い残業代約 190 億円を 2017 年 3 月期決算に計上した。 だが、「調査の時間が短い」、「上司に気をつかって真実を明かせない」などと社員から不満が続出。 パート勤務の社員も調査対象外だった。 「確認のため(広報)」に再調査した結果、新たな未払いが次々に発覚したと説明している。

申請があったパート社員も調べたところ、一部で残業代の未払いが見つかったという。 これで未払い分の総額は約 230 億円になった。 ヤマトは「調査は区切りがついた(同)」として、今後は申請があった場合だけ調べるとしている。 追加で判明した未払い残業代約 40 億円は、17 年度上期を中心に、18 年 3 月期決算に計上する方針。 16 日に提出を延期した有価証券報告書は、22 日に関東財務局に提出するという。 (石山英明、asahi = 6-21-17)


宅配便業界のピンチ 労働生産性の向上チャンス

「宅配便ショック」の波紋が広がっています。 国内シェア約 5 割を握るヤマトホールディングスでは、2017 年 3 月期の宅配便は 18 億 6,700 万個(前期比 7.9% 増)と過去最高を記録しました。 アマゾンなどのネット通販向けが伸びているからです。 即日配送や送料無料など、ネット通販業者のサービスが過剰になる一方、急増する荷物に人員が追いつかず、年末年始には遅配も懸念されたほど。 共働きや一人暮らし世帯は配達に訪れても不在ということも多く、再配達は全体の 2 割に上るとされます。

ヤマトは荷物の取り扱いが増えたのに、人件費増などが原因で 49% もの営業減益となりました。 このような「豊作貧乏」や「利益なき繁忙」といった状況から脱するため、料金値上げや総量抑制などの対策を検討し、構造改革に手をつけ始めています。

もっとも、宅配便は、世界に誇る日本発の高品質なサービス産業。 単なる値上げやサービス水準切り下げでは、競争力は衰え、消費者からも反発されかねません。 ここは未来への投資で困難の解決に乗り出すべきではないでしょうか。 駅やコンビニへの宅配ボックス設置はもとより、長期的には AI (人工知能)やロボットの活用も考えられます。 ヤマトは DeNA と提携、将来は自動運転車による無人配送なども視野に入れているようです。 (asahi = 5-13-17)


ヤマト、従業員 9,200 人増へ 長時間労働問題に対応

ヤマトホールディングスは宅配ドライバーらの長時間労働問題に対応するため、2017 年度にグループの従業員を約 9,200 人 (4.5%) 増やす計画だ。 前年度も約 5,200 人増やしたが、荷物量の増加ペースに追いつかず、違法な労働が常態化していた。 荷物量の抑制とともに人員増にも取り組み、労働環境の正常化をめざす。 (asahi = 5-3-17)


ヤマト契約打ち切り「とりつく島がない」 通販業者悲鳴

宅配便最大手のヤマト運輸が一部の法人客との配送契約を打ち切る方針を打ち出したことで、通信販売業界に波紋が広がっている。 「交渉しようにも、とりつく島がない。」 ヤマトから契約の打ち切りを打診されたある大手通販会社の社員は嘆く。 打ち切りをほのめかされたのは 3 月末。 3 年ほど前に値上げを持ちかけられたが、当時は「荷物量を増やす」と持ちかけて値上げ幅を抑えるなど交渉の余地があったという。

だが、今回の交渉は違った。 ヤマトの担当者は「会社として決めたことですから」の一点張り。 荷物量の削減や値上げ幅などで交渉の余地を探ったが、今月に入って正式に打ち切りを通告された。 打ち切りの対象になった理由も示されないままだ。 (贄川俊、土屋亮、牛尾梓 伊藤舞虹、asahi = 4-27-17)


ヤマト値上げ、最大 200 円程度で調整 今秋にも

宅配便最大手のヤマト運輸は、今秋にも実施する個人客向けの基本運賃の値上げについて、値上げ幅を最大 200 円程度とする方針を固めた。 荷物のサイズが大きいほど、値上げ額も大きくする方向で検討している。 値上げ率は 5 - 20% 程度になりそうだ。 28 日にも発表する。 ヤマトが宅配便の基本運賃を値上げするのは、消費増税時の上乗せを除けば、1990 年に平均約 8% (100 - 110 円)上げて以来 27 年ぶり。 違法な長時間労働が常態化している宅配現場の労働環境を改善するため、増収分を社員の待遇改善などに充てる。 今月 13 日に値上げを正式発表し、上げ幅を検討してきた。

ヤマトの基本運賃は、荷物の大きさと、発送・配達地域ごとに定められている。 例えば、縦・横・高さの 3 辺合計が 60 センチ以内の荷物を関東から関西に送る場合、税込み 864 円。 平均の値上げ額は 90 年より大きくなる可能性がある。 一方で、再配達の増加が宅配ドライバーの長時間労働を招いていることから、再配達を利用しない場合などの割引の導入も検討している。 ただ、基本運賃が適用される荷物は全体の 1 割ほどで、ネット通販などの法人客には荷物量に応じた割引をしている。 割引の縮小に向けた交渉も本格化させ、今秋までに合意したい考えだ。 (asahi = 4-25-17)


ヤマトを苦しめる "当日配送" にアマゾンがこだわる「本当の理由」

ヤマト運輸がアマゾンの当日配送から撤退すると報じられているが、その真相は …?

宅配便最大手のヤマト運輸がアマゾンの当日配送から撤退するという。 4 月 7 日、日経新聞が朝刊 1 面で報じたものだが、食料品や日用品など定期的に当日配送で注文しているアマゾンの会員にとってはギョッとしたことだろう。 しかし、この記事を見るとヤマト側のコメントが一切ない。 "当日配送撤退" は本当か? ヤマト運輸広報に聞いた。 「現在、アマゾンを含む大口法人の荷主様と交渉中ではありますが、『当日配送撤退』というのはまだ弊社の中でも決まっていないこと。 日経の報道は憶測記事といいますか、正式にこちらから発表したものではありません。」

だが今後、ヤマトがアマゾンの当日配送から撤退する可能性は十分にある。 ドライバーに長時間労働を強いる元凶になっているためだ。 ヤマトのドライバー(30 代・社員)がこう説明する。 「当日配送の仕組みは、ユーザーが午前中に注文すると即時に受注処理し、物流センターに出荷指示を発令。 センター内で同日正午までに梱包を終えて運び出し、15 時までにヤマトの配送センターに荷物が到着。 そこで方面別に仕分けた荷物を 2 トン車、 4 トン車が末端の営業所に運び、夜 9 時までにユーザー宅に届けるわけです。

営業所には毎日 18 時頃にアマゾンの荷物が集荷されます。 朝から配達を始め、クタクタになって営業所に戻ると、目の前にアマゾンの荷物が山積みに …。 これがキツイんです。 その時間は他の時間指定の荷物と再配達の荷物が重なるタイミングでもありますから …。」 注文したその日に商品が届く当日配送は、妊婦や身障者、足腰が弱い高齢者にとっては非常に便利なものだ。 しかし、それ以外の一般消費者にとって本当に望まれているサービスなのだろうか?

少し古いデータになるが 2013 年 6 月、日本通信販売協会は会員社のうち 12 社の通販会社を対象に『配送満足度調査』を実施している。 その中の質問項目、『配送サービスで顧客が大切だと思っている項目は? (複数回答可)』の結果は予想外のものだった。

配達時間帯の指定 68% / 配達日指定 62% / 配送会社によるお届け通知サービス 20% / 翌日配送 9% / 当日配送 4%

当日配送を希望している人は、わずか 4%。 この結果を見ても、特に望まれていないサービスであることがわかる。 では、なぜアマゾンは当日配送にこだわるのか? 「会社の自己都合だと思います。」 そう指摘するのは物流ジャーナリストの森田富士夫氏だ。

「アマゾンの物流センターは、言ってしまえば実質的な店舗ですから、そこに大量に置いてある商品を掃き出せば掃き出すほど売上げは伸びていく。 つまり、在庫の回転率を高めることが経営上の重要な課題になっているわけですね。 在庫の回転率を高めるということは、商品が物流センターに滞留する時間を短くするということ。 そのためには物流センターを 24 時間フル稼働させ、商品をコンスタントにデリバリーできるようにしなければならない。 行き着く先が、当日配送というわけです。(前出・森田氏)」

さらに、即日配送にこだわる理由がもうひとつ。 「キャンセル率を低くすることです。 例えば、アマゾンで服を注文したあと、『あ、家に似たような服があるからやっぱりやめよ』となることがあるでしょう。 これ、ネット通販会社からすると見込んでいた売上げがなくなるばかりか、物流センター内での作業の途中でキャンセルされた商品だけ抜き取るのは大変で、それだけコストも掛かる。 これを避けたいから、"キャンセルが入る前に届けてしまえ" というわけです。 そうした状況を作るためには、発送から納品までのリードタイムをできるだけ短くしなければならない。 やはり行き着く先は、当日配送というわけです。(前出・森田氏)」

当日配送が無料になるアマゾンのプライム会員は日本で約 600 万人ともいわれる。 1 日あたりの件数は不明だが、前出のヤマトのドライバーは「うちで扱う荷物のうち、アマゾンの荷物は 3 割程度で、即日配達の荷物は半分以上を占める」という。 前出のアンケート結果によれば、即日配達を望んでいる人はたった 4%。 なのに、ヤマトの集荷センターにアマゾンの即日配達品が山積みになってしまうのはなぜか? 都内に在住するプライム会員の男性(30 代)がこう話す。

「アマゾンで商品を注文すると、画面に『今から○時間○分以内に注文を確定すると当日にお届け』といった内容の表示が出ます。 こちらとしては、別に届けてくれるのは 1 週間後でも構わないんですけど、そうやって表示されると、まぁ早いに越したことはないし、料金も変わらないんで、つい、当日お届け便のボタンをポチっと押しちゃうんです。」 アマゾンの自己都合で、さらにユーザーからそれほど望まれてもいない即日配送にヤマトのドライバーが苦しめられている、ということだろうか …。 (週プレ = 4-17-17)


アマゾンの当日配送撤退 ヤマトが方針 ネット通販転機に

宅配最大手のヤマト運輸は最大の取引先であるインターネット通販大手アマゾン・ドット・コムの当日配送サービスの受託から撤退する方針を固めた。 夜に配達しなければならない荷物が増え、人手不足の中、従業員の負担が増しているため取引を見直す。 アマゾンは日本郵便などへの委託を増やす考えだが、ヤマトの撤退でサービス縮小を余儀なくされる可能性がある。

日本のネット通販は宅配会社のきめ細かな配送網を利用して、海外では珍しい当日配送などのサービスを提供してきた。 だが、人手不足で配送網の維持が難しくなりつつある。 世界でも最高水準の便利さを武器に日本市場で成長してきたネット通販は事業モデルの見直しを迫られそうだ。 ヤマトは人手不足で配送網維持が困難と判断し、アマゾンに当日配送の受託の縮小を要請。 アマゾンも一定の理解を示しており、既に一部地域の当日配送で日本郵便の利用を増やし始めた。 ヤマトは当日配送の受託を徐々に減らし、将来はなくす方向だ。 アマゾンの利用者の注文の多くは翌日以降の配送とみられる。

日本郵便はヤマトに比べると、現状の配送能力には比較的、余裕があるとされる。 だが、日本郵便の輸送能力はヤマトの 3 分の 1 程度であるため、アマゾンの当日配送が可能な荷物量や地域が縮小する可能性がある。 アマゾンの当日配送は年 3,900 円の有料会員になれば何度でも追加料金なしで利用できる。 米国の年会費の半額以下の水準だ。 関東や中部、関西などで利用でき、日本の人口の 8 割をカバーする。 消費者から昼までに注文を受け付け、数時間内に商品を発送する。

これまで大半の配送を担っていたヤマトの配送拠点には午後 6 - 7 時ごろに到着し、それから配達員が同 9 時までに各家庭に届ける。 気軽に当日配送を利用する人も多く、夜間配達が増加。 配達員の長時間労働の原因となっていた。 ヤマトが 6 日発表した 16 年度の宅配便取扱数は前年度比 8% 増の約 18 億 7,000 万個となり 2 年連続で過去最高を更新した。 このうち 1 - 2 割をアマゾンの荷物が占めるとされる。

ヤマトがアマゾンから受け取る運賃には大口割引を適用しており、採算が悪い。 宅配便の平均単価は 15 年度に 578 円だったが、アマゾンはこの半分程度ともいわれる。 ヤマトは当日配送の縮小だけでなく、運賃の引き上げも要求している。 値上げに応じなければ取引停止も辞さない構えで、アマゾンは日本市場の戦略転換を迫られる可能性もある。 ヤマトは 3 月の春季労使交渉で労働組合と配達員の負担を軽減する働き方改革で合意。 宅配便の総量抑制や時間帯指定サービスの一部廃止を決めた。 営業終了も午後 8 時に 1 時間早めることを検討している。 (nikkei = 4-7-17)


ヤマト運輸が配達時間等を変更 その決断の背景とは

ヤマト運輸は、4 月 24 日(月)より再配達受付の締め切り時刻を変更することを明らかにした。 また合わせて、6 月中に宅急便の配達時間帯の指定枠を変更することも発表している。

ヤマト運輸が働き方改革を推進

なぜヤマト運輸は、再配達締め切り時刻の変更、そして配達時間帯の指定枠の変更を決定したのだろうか。 やはり、EC 市場の拡大による物量の増加が影響しており、労働人口の減少などによって労働需給が逼迫(ひっぱく)し、厳しい経営環境が続いていることが原因となっているようだ。 こうした状況の中、ヤマト運輸は労働力確保に向けて職場環境を改善するべく、社員の新しい働き方を創造するために、2 月 1 日に「働き方改革室」を本社内に新設し、全社をあげて働き方改革を推進している。

ヤマト運輸がサービス内容の変更を決断した背景には、この「働き方改革」が関係しており、社員の法定休憩時間の適切な取得や、勤務終了から翌日の始業までの間に一定時間のインターバルを設ける制度の確立など、社員が働きやすい環境を構築していくためであるとのことだ。 具体的に、サービス内容はどのように変わるのだろうか。

当日の再配達締め切り時刻の変更

4 月 24 日(月)から実施される、「当日の再配達締め切り時刻の変更」については、最大で 1 時間 20 分短くなっている。 この 1 時間 - 1 時間 20 分の時間短縮というのは、再配達が発生した場合の往復の手間などを考えるとドライバーにとってかなりの負担軽減になるはずだ。

配達時間帯の指定枠の変更

そして、6 月中に実施予定の「配達時間帯の指定枠の変更」については、「12 時から 14 時」の時間帯指定の廃止、「20 時から 21 時」の時間帯指定が「19 時から 21 時」の時間帯指定へ変更といった 2 点だ。 この変更により、ドライバーは 12 時 - 14 時の間で空き時間を設けることができる。 また、「20 時から 21 時」の時間帯指定が「19 時から 21 時」の時間帯指定へ変更になったことも、「1 時間の内に何件配達しなければならない」というように、時間に追われる圧迫感がなくなるため、ドライバーは心理的に余裕がでるのではないだろうか。

物流の変化によって今後更に注目されるもの

EC 市場の拡大に伴って、今、物流業界も変革期を迎えている。 時間指定配送、即日配送が当たり前となってしまった中で、EC の心臓ともいえる物流業界の負担は相当になっているということが、連日のように報道されるニュースからも伺い知れるのではないかと思う。 特に、ヤマト運輸に関しては、「宅配便の荷受量抑制」、「宅配運賃の値上げ」を検討しているというニュースが各メディアで報道されている。 国内の宅配便取扱量の半分近くを占めるヤマト運輸が大きく舵をきろうとしているということは、同時に、良し悪しは別として、今後の EC 業界にも大きな影響がもたらされるはずだ。

また、今回のヤマト運輸の決断によって、今まで以上に宅配ロッカーやコンビニでの荷物受取にスポットライトが当てられることになるだろう。 今後更に、宅配ロッカーやコンビニでの荷物受取を促していくためにも、消費者が利用しやすいように早急なサービスの整備が求められる。 (だて まいこ、EC のみかた = 3-17-17)


ヤマト、宅配運賃値上げへ ネット通販「無料」見直しも

ヤマト運輸は 7 日、宅配便の運送料金を値上げする方針を明らかにした。 同社は宅配ドライバーの過重労働が問題になっており、値上げで収入が増えた分を処遇改善などに活用する考えだ。 個人の利用者にとっては、消費増税時を除いて 1990 年以来、27 年ぶりの値上げとなる。 宅配最大手のヤマトが運賃値上げに踏み切ることで、同業他社も値上げに動いたり、インターネット通販業者が「送料無料」などのサービスを見直したりする可能性がある。

ヤマトの運賃は、荷物のサイズと運ぶ距離に応じて変わる。 最も小型の荷物を関東から中部地域に運ぶ場合は、税込みで 756 円。 どの程度値上げするかは検討中で、今秋にも実施したい考えだ。 大口の法人客には割引運賃を適用しており、ここ数年で割引幅を縮小してきた。 ただ、宅配業界の競争が激しく、個人も含めた運賃全体の値上げは見合わせていた。 大口顧客であるネット通販大手アマゾンなどとは、すでに実質値上げ交渉に入っている。

宅配をめぐっては、ネット通販の急拡大に伴って配達する荷物が急増し、人手不足と長時間労働が常態化していた。 最大手のヤマトも、ドライバーへの残業代の未払いがあるとして昨夏に横浜北労働基準監督署から是正勧告を受け、全社的な未払い分の調査に乗り出している。 ヤマトは春闘で、労働組合から荷物量の抑制を要求されている。 運賃を値上げすれば、利用者が減る可能性もあるが、荷物 1 個あたりのもうけは増える。 ヤマト運輸の 2017 年 3 月期の荷物量は、前年比 8% 増の 18 億 7 千万個で過去最多となる見通しだ。 (asahi = 3-7-17)


ヤマト、巨額の未払い残業代 7.6 万人調べ支給へ

宅配便最大手ヤマトホールディングス (HD) が、約 7 万 6 千人の社員を対象に未払いの残業代の有無を調べ、支給すべき未払い分をすべて支払う方針を固めた。 必要な原資は数百億円規模にのぼる可能性がある。 サービス残業が広がる宅配現場の改善に向け、まずは未払い分の精算をしたうえで、労使が協力してドライバーの労働環境の正常化を進める。

サービス残業が社内で常態化していることを大手企業が事実上認め、全社的に未払い残業代を精算して支払うのは極めて異例。 サービス残業や長時間労働が常態化している企業の労務管理に一石を投じる動きだ。 宅急便を手がける事業会社、ヤマト運輸で働くフルタイムのセールスドライバー(SD、約 5 万 4 千人)と営業所の事務職員(約 4 千人)、ヤマト HD 傘下のグループ会社で働く社員(約 1 万 8 千人)が対象。 フルタイムのドライバーは全員が対象になる。

ヤマト運輸は昨年 8 月、SD だった 30 代の男性 2 人に残業代の一部を払わず、休憩時間を適切にとらせていなかったとして、2 人が勤めていた横浜市の支店が、横浜北労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けた。 インターネット通販の普及と人手不足を背景に、この頃からドライバーの労働環境の悪化が深刻になってきたという。 是正勧告を機に、全社的に未払い残業代の調査に乗り出すことを決めた。 遅くとも今夏までに、全社で支給を終える方針だ。

関係者によると、川崎市全域と横浜市の一部の営業エリアではすでに調査に着手しており、3 月下旬の給料日にあわせて支給する予定。 最大で過去 2 年分について調べ、1 人あたりの支給額が 100 万円を超えるケースもあるという。 SD の勤務時間は出退勤の時間を記録するタイムカードと、配送の時に使う携帯端末のオン・オフの二つで管理している。 原則として、給与は携帯端末で記録された勤務時間から、自己申告の休憩時間を除いた時間をもとに計算しているが、▽ 携帯端末がオフになっているときに作業する、▽ 忙しくて休憩時間が取れないのに取ったと申告する - - といったサービス残業が増えているという。

ヤマト HD の 2017 年 3 月期の営業利益は約 580 億円の見通しで、未払い残業代の支給が経営に及ぼす影響は小さくない。 「当然ダメージはあるが、まだ体力はある(首脳)」として、労働環境の改善に優先的に取り組む構えだ。(贄川俊、堀内京子、asahi = 3-4-17)

未払い残業代〉 労働基準法 37 条は、法定労働時間(1 日 8 時間、週 40 時間)を超えて労働者を働かせた場合、一定以上の割増率を上乗せした残業代を支払うよう定めている。 支払わない場合、労働基準監督署が是正勧告を出すことができる。 懲役 6 カ月以下または罰金 30 万円以下の罰則を科せられることもある。 ただし 2 年の時効があり、過去 2 年より前の未払い残業代は支払わなくてよい。


ヤマト、サービス残業常態化 パンク寸前、疲弊する現場

宅配便最大手のヤマトホールディングス (HD) が、全社規模で未払い残業代の支給を進める方針を決めた。 異例の経営判断によって、ネット通販を支える宅配の現場がサービス残業で支えられている実態が改めて浮き彫りになった。 「1 日に配達できる荷物の量を超えていると思っても、ドライバーが減らすことはできない。 長時間労働が日常的になっている。」

ヤマトの 30 代の現役ドライバーは打ち明ける。 配送時に携帯する端末の電源のオン・オフの時間などをもとに給与が計算されているが、電源を入れる前の仕分け作業や、電源を切った後の夜間の伝票作業などが常態化し、サービス残業が増えているという。 別の 30 代のドライバーは「1 日 17 時間ぐらい働いても、申請しているのは 13 時間。昼休憩も 60 分取ったことになっているが、配達の合間に妻が作ってくれた弁当を急いで食べて、また配達をしている」と明かす。 端末で実際の休憩時間を記録すれば、サービス残業は防げるが、端末を触る余裕がないときもあるという。

ヤマトの配送拠点は全国約 4 千カ所。 宅配業界で群を抜く規模だ。 自社で多くのドライバーを雇い、荷物が集中する地域に人手を移すなどして、他社に頼らず家庭に配り切るノウハウを蓄積。 業界 2 位の佐川急便が 2013 年に手放したネット通販大手アマゾンの荷物も多く引き受けてきた。 「サービスが先、利益は後。 宅急便の生みの親、故小倉昌男氏が掲げた理念を社是として、通販業者が求める顧客サービスの充実に協力もしてきた。 しかし、現場の疲弊はもはや覆い隠せなくなっている。 (堀内京子、内藤尚志、贄川俊、asahi = 3-4-17)


ヤマト運輸、荷物の抑制検討へ 人手不足で労働環境悪化

宅配最大手のヤマト運輸が、荷物の扱い量の抑制を検討する見通しになった。 今春闘で労働組合から初めて要求があったためで、インターネット通販の普及と人手不足でドライバーなどの労働環境が厳しくなっていることから、労使で改善を模索する。 配達時間帯指定サービスなどの見直しにつながる可能性もある。

ヤマト運輸労組には約 6 万人が加入。 今月上旬にまとめた今春闘の要求に、来年度の宅配便取り扱い個数は今年度を超えない水準にすることを盛り込んだ。 今年度の個数は前年度比 8% 増の 18 億 7 千万個になる見通し。 あわせて要求する賃上げは、定期昇給相当分とベースアップの合計で前年と同じ組合員平均月額 1 万 1 千円とした。 ヤマト運輸は「労働環境の改善策は検討したい(広報)」としており、来月中旬に回答する方向だ。 ドライバーの労働環境の悪化は業界共通の課題。 同様の動きが他社に広がる可能性もある。 (asahi = 2-23-17)