米 FRB、量的緩和の終了決定 次の焦点は利上げ判断に

米連邦準備制度理事会 (FRB) の金融政策を決める連邦公開市場委員会 (FOMC) は 29 日、米国債などの資産を買って市場にお金を流す「量的緩和」の終了を決めた。 2008 年の金融危機以降、3 度にわたり続けた未曽有の金融緩和の終了で、米国の金融政策は転換点を迎えた。

FRB は 2012 年 9 月、「量的緩和第 3 弾 (QE3)」を開始。 一時は米国債などを月 850 億ドル分(約 9.3 兆円)買い上げ、市場にお金を流していた。 雇用などの経済環境が改善していることから、今年 1 月以降は購入額を月 150 億ドルにまで段階的に縮小。 今月で購入をやめることを決めた。 買い上げた資産の規模は当面維持する方針を示している。

FRB は声明で、米国景気は「緩やかに拡大している」と指摘。 雇用環境は「労働力の余剰が徐々に減っている」と前回 9 月の表現より改善させた。 「年 2%」を目標とする物価上昇率については、「短期的には燃料価格の下落などで押し下げられる」との見通しを示しつつも、「目標を下回り続ける可能性はいくぶん減った」とした。 (ワシントン = 五十嵐大介、asahi = 10-30-14)


G20 で為替発言相次ぐ、米が通貨安競争けん制し日欧はメリット強調

[東京] ワシントンで開かれた 20 カ国・地域 (G20) 財務相・中央銀行総裁会議では、世界経済、とりわけデフレに直面しているユーロ圏経済が大きなテーマのひとつとなった。 ユーロ圏からユーロ安を求める声が高まるなか、当初議題予定になかった為替に関する発言が相次ぎ、米財務長官は通貨安競争をけん制。 これに対し日銀総裁や欧州勢は自国通貨安による経済へのプラス面を強調するなど、認識にややずれが見られた。

前回 9 月のオーストラリア・ケアンズでの G20 の声明文に、為替に関する言及はなかった。 今回は声明文は発表されなかったものの、各国から発言が相次いだ。 ルー米財務長官は当初、G20 への出席予定が公表されていなかった。 しかし実際には会合に出席し、通貨安競争回避と需要の押し上げを要請。 同長官は「主要国は競争的な通貨切り下げを回避するという(G7 声明などの)合意を順守する必要がある」と発言した。

ただ、ルー長官の欧州と日本への評価は異なる。 ユーロ圏については、つい数日前の米国内での講演で、ユーロ安を求める欧州を念頭に「通貨安競争は誤り」と基本的な G7 合意を踏襲しながらも、同時に「強いドルは米国にとって良いこと」とドル高容認姿勢を示していた。 今回の G20 でも事前の見通しでは、ユーロ圏がデフレ状況に近づく中、財政・金融政策ともに限界があるならユーロ安を容認するのではないか、との観測も取りざたされていた。

しかし、ルー長官はあらためて通貨安競争をけん制。ユーロ圏に対しては成長率引き上げによる対応を強く求めた。 「長期に及ぶ低インフレなどマクロ経済と金融面で強い逆風が続いている。 短期的には弱い需要に対応し、中長期的には潜在成長率を引き上げるよう欧州の首脳は政策を調整すべきだ。 より力強い成長を実現するために需要と供給面の改革を同時に進める必要がある。」と指摘。 とりわけ、ドイツを念頭に財政による成長支援を求めた。

一方で日本に対しては、日銀がデフレサイクルを食い止めているとして、一定の評価を示した。 ただ、成長は依然弱い見通しだと懸念を示し、「慎重に財政健全化のペースを調整する必要がある」と成長に配慮した対応を求めた。 これに対し、日本の麻生太郎財務相が為替への発言を控えたのに対して、黒田東彦日銀総裁が積極的に発言。 「ファンダメンタルズを反映した円安は日本経済にプラス」との従来の認識を繰り返した。 もっとも、金融市場で懸念されている政府と日銀のメッセージの食い違いについては、黒田総裁が円安の影響について政府と温度差がないことを強調した。

欧州勢からは、引き続きユーロ安を是認する発言が相次いだ。 ノボトニー・オーストリア中央銀行総裁が「通貨安は輸出にプラスで、現在目標を大きく下回っているインフレ率の押し上げにも効果的だ」としたほか、ダイセルブルーム・ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)議長も「米国と欧州は景気回復の度合いが異なる」として、ファンダメンタルズの違いがある以上、ドル高・ユーロ安について議論する意味はない、とした。

他方、ドラギ欧州中央銀行 (ECB) 総裁は為替への言及よりも、むしろユーロ圏経済の弱さを指摘、「成長を阻害せずに財政健全化を着実に実行し、強い意思を持って構造改革に臨むことが、将来に対する消費者や企業の信頼感を後押しすることにつながる」として構造改革の必要性を訴えた。 (中川泉、Reuters = 10-11-14)

◇ ◇ ◇

ユーロ加盟国、構造改革実施する必要 = ECB 総裁

[ローマ] 欧州中央銀行 (ECB) のドラギ総裁は 1 日、金融政策だけでは信頼感を回復し投資を促進することはできないとし、ユーロ圏各国政府は構造改革の実施を通して経済成長を押し上げる努力をする必要があるとの考えを示した。 ECB は 2 日にイタリアのナポリで理事会を開催。 これを前にドラギ総裁は「金融政策のみでは信頼と成長を回復することはできない」とし、「財政政策、および構造的な政策が役割を果たす必要がある」との考えを示した。 また、今回の理事会で ECB はでインフレ率を 2% に近付けるための方策を検討するとした。 (Reuters = 10-2-14)

◇ ◇ ◇

欧州・中国の製造業 8 月は失速、ウクライナ情勢などで受注低迷

[バンガロール/シドニー] 8 月の中国・欧州の製造業の業況は、好調だった前月から失速した。 ウクライナ情勢やまだら模様の中国経済が、新規受注に影を落とした。 8 月の製造業購買担当者景気指数 (PMI) は中国、ユーロ圏、英国とも景況の改善・悪化の節目となる 50 は上回ったものの、軒並み前月から低下。 中国は、外需・内需の低迷を背景に国家統計局発表の PMI が 6 カ月ぶりに低下し、中国政府がさらなる景気刺激措置を講じる必要があるとの見方がでている。

ユーロ圏は、速報値からも下方改定され 1 年超ぶりの低水準。 欧州で経済が好調な英国も、市場予想を下回り 2013 年 6 月以来の低水準となった。 G プラス・エコノミクス(ロンドン)のチーフエコノミスト、レナ・コミレバ氏は「中国、ユーロ圏、英国の PMI がそろって低下したことは、世界需要の状況に関する警鐘だ。 米国や英国などが金利上昇の影響を克服できるか、ユーロ圏は追加の景気対策なしにデフレ圧力を払しょくできるのか、という問題を突き付けている。」と述べた。

ユーロ圏の製造業に打撃となったのは、ウクライナ情勢。 米欧とロシアで「制裁合戦」となる中、新規受注が低迷した。 欧州連合 (EU) のなかでロシアの最大の貿易相手であるドイツの PMI が 11 カ月ぶりの低水準を記録したほか、フランスは景況が一段と縮小した。 物価上昇率が 5 年ぶりの低水準となりデフレリスクが高まり、企業は価格を引き上げられない状況にある。

4 日には欧州中央銀行 (ECB) の理事会が開催される。 インベステックのエコノミスト、フィリップ・ショウ氏は、PMI は ECB が金融緩和を継続する根拠を強固にしたと指摘。 「4 日の理事会は、政策金利の変更などはないだろうが、資産買い入れプログラムの実施計画について具体的な説明があると予想している」と語った。 英国は経済が堅調で、米国よりも早い利上げが予想されている。 だが弱い PMI を受け「製造業の回復の勢いが鈍っている兆候がみられる(キャピタル・エコノミクスの英エコノミスト、ポール・ホリングスワース氏)」との声がでている。

アジアはまちまち

中国国家統計局が発表した 8 月の中国製造業 PMI は 51.1 となり、2 年 3 カ月ぶりの高水準だった 7 月の 51.7 から低下した。 指数を構成する生産、雇用、新規受注、入荷遅延、原材料在庫の各指数が軒並み低下し、特に雇用の低迷が顕著だった。 中国人民銀は今のところ利下げはせずに、与信規制の一部緩和などで乗り切ろうとしている。 しかし、経済の 15% を占める住宅市場が冷え込む兆候が出始め、経済の先行きに対する懸念が高まっている。

このほかアジアでは、インドが小幅低下したものの節目の 50 は上回った。 台湾は、大半が輸出向けの新規受注が 3 年半ぶりの高水準となり PMI は 56.1 となった。 反面、韓国の PMI は 50 を上回ったものの、中国向け輸出の低迷を背景に輸出受注が悪化。 インドネシアの PMI は 18 カ月ぶりの高水準だった前月から低下し 3 カ月ぶりの低水準となった。 (Reuters = 9-2-14)

◇ ◇ ◇

ウクライナ発の世界景気懸念、円金利にも波及

[東京] 10 年最長期国債利回り(長期金利)が一時、1 年 4 カ月ぶりに 0.5% を割り込んだ。 混乱が長期化するウクライナ情勢をめぐり、ロシアと欧米が対立しているのを基点に世界景気に不透明感が浮上。 金融緩和圧力を意識した相場展開が続くとの見方が出ている。 (Reuters = 8-15-14)


G20 「機動的な財政政策」で合意、日本は財政再建の意思示す

[ケアンズ] オーストラリア・ケアンズで行われた 20 カ国・地域 (G20) 財務相・中央銀行総裁会議では、世界経済の成長はばらつきがあり、雇用創出に必要なペースを下回っているとの認識で一致。 成長と雇用を促すため財政政策を機動的に実行することで合意した。 麻生太郎財務相は 10% への消費増税は経済状況を勘案して今年中に判断すると説明。 2020 年度の基礎的財政収支 (PB) 黒字化目標へ新たな計画を準備すると表明した。

各国の事情に応じて財政出動、思惑にずれ

G20 は会合後の声明で、米国などを念頭に「いくつかの主要国の力強い経済状況を歓迎する」としたが、「世界経済の成長にはばらつきがある」と指摘。 「地政学的緊張を含め、下方リスクが残っている」との認識を踏まえ、「短期的な経済状況を勘案し、機動的に財政戦略を実施する」と明記した。 特に欧州ではデフレ懸念も台頭しており、財政収支がバランスしているドイツには財政出動の余地があるとみられている。 麻生財務相も財政戦略の議論に関して「国によって事情は違う」としながらも、「たとえばドイツは財政収支が完全にバランスしている」と説明。 対応の余地があるとの認識を示した。

ただ、ドイツのショイブレ財務相は、持続的成長には持続的な財政・構造改革・投資が必要だと指摘。 需要拡大に向け、追加措置をとる余地は小さいとの認識が G20 で共有されているとの見方を示した。 一方、米国のルー財務長官は、G20 では「欧州の景気回復には一段の措置が必要との認識を強めた」と強調した。

5 年間で 2% の成長引き上げへ、追加策必要

今年 2 月、シドニーでの G20 で合意した、今後 5 年で 2% の成長を引き上げる目標については、国際通貨基金 (IMF) と経済協力開発機構 (OECD) が各国の施策をレビューした結果、現時点では 1.8% の追加成長が可能と評価された。 声明では、さらに 2% の目標実現へ「追加的な施策の特定を引き続き進める」こととした。 また、G20 声明では、金融市場の動向に関して、低金利などの環境下で金融市場が過度なリスクに向かう可能性に留意するとした。 また、米国が利上げ局面に入っていることを念頭に、金融政策を変更する際には、世界経済への影響に留意するとの表現も盛り込んだ。

日本は財政再建を約束

麻生財務相は G20 で日本経済や成長戦略について説明、消費増税の影響はあったが均してみれば成長は続いていると述べた。 さらに財政再建に関連して、2015 年度の PB 赤字半減に向けて取り組む必要があること、さらに 10% への消費増税について「経済状況を総合的に勘案して、今年中に適切に判断する」と伝えた。 また、2015 年度予算策定後には 2020 年度の PB 黒字化目標達成のため新たな計画を準備する必要があると表明、財政再建への意欲をコミットした。

また、G20 として合意した成長促進に関する日本の対応については「今年第 3 四半期の GDP など経済指標を見極めたうえでどうするか決めたい」と述べるにとどめた。 日銀の黒田東彦総裁は 2% の物価安定目標に向けた量的質的金融緩和 (QQE) について説明、「国際的理解が十分得られていると感じた」との認識を示した。

為替で特段の議論なし、黒田総裁「問題あるとは思っていない」

最近の為替市場では、米国と日・欧の金融政策の方向性の違いからドルが買われ、1 ドル 109 円台まで上昇しているが、今回の G20 では為替相場について「特段の議論はなかった(麻生財務相)」という。 G20 声明も、「G20 における為替相場のコミットメントの順守を続ける」とし、金融政策によって為替水準を誘導しないとの取り決めを守ることを再確認する内容にとどまった。

麻生財務相自身、現在の為替動向はファンダメンタルズに沿った動きか、などといった記者団の質問にはコメントせず、「リーマン・ショックが起きたときは 108 円で今と同じ価格だった」と述べた。 一方、黒田東彦日銀総裁はケアンズに到着した際、記者団に対し、「今の(円相場の)動き自体について何か問題があるとは思っていない」と発言。 足元の円安を容認する姿勢を示している。 (木原麗花、石田仁志、山川薫、Reuters = 9-21-14)

◇ ◇ ◇

米高官、世界経済減速に懸念 G20 で景気対策協議へ

主要 20 カ国・地域 (G20) 財務相・中央銀行総裁会議が豪州で 20 - 21 日に開かれるのを前に、米財務省の高官は 12 日、電話会見した。 世界経済が減速するおそれもあることから、経済成長を続けるための対策について G20 会議で話し合う考えを明らかにした。 これまで協議してきた長期的な成長戦略に加え、景気の悪化を避けるための短期的な対策について検討するという。

同高官は会見で、世界経済について「(予想よりも)下ぶれする危険(リスク)がある」と指摘した。 とくに欧州で「インフレ率が危険なぐらい低い」とし、ドイツを念頭に「黒字国がインフラ投資などで内需を拡大すべきだ」との見方を示した。 日本についても「需要と実質賃金の伸びが引き続き弱く、新たな懸念が生まれている」と言及した。 最近の円安ドル高が米国経済に与える影響については「コメントしない」とした。 (五十嵐大介 = ワシントン、細見るい、asahi = 9-13-14)


アジア高速鉄道 1 万キロ計画始動 日中、売り込みに熱

アジアで高速鉄道計画が実現へ動き始めた。 マレーシアとシンガポールを結ぶ路線は来年にも入札を予定。 インドやタイなど、構想段階も含めると計画の総延長は約 1 万キロに上る。 成長するアジアを舞台に、日本や中国などからの売り込み合戦が熱を帯びている。 「日本の新幹線は安全なだけではない。 時間に忠実に運行していることがすべての強みの原点にある。」 マレーシアの首都クアラルンプールで先週開かれた鉄道展示会。 講演した JR 東日本の小県方樹副会長は、同国の鉄道当局幹部らを前に、こう訴えた。

「絶対に落札したい。」 小県氏が公言してはばからない、2020 年の開業を目指すクアラルンプールとシンガポール間の高速鉄道計画が念頭にあった。 約 350 キロを 1 時間半で結び、総事業費は 400 億リンギ(約 1 兆 3 千億円)と見込まれている。 マレーシア陸上公共交通委員会のカマル最高経営責任者は「来年 10 - 12 月には入札ができるだろう」と話す。

計画には、中国やフランス、スペインなども関心を寄せる。 日本勢は JR 東日本、住友商事、三菱重工業などが連携。 8 月中旬にトップセールスでマレーシアを訪れた太田昭宏国土交通相に各社幹部も同行した。 (クアラルンプール = 都留悦史、バンコク = 大野良祐、ハノイ = 佐々木学、asahi = 9-15-14)


操縦士派遣、海外 7 社申告漏れ 消費税 6 年間で 2 億円

日本の航空会社にパイロットを派遣、紹介する海外企業7社が東京国税局の税務調査を受け、消費税を申告しなかったとして 2012 年までの 6 年間に、少なくとも計約 2 億円の申告漏れを指摘されたことが 8 日、分かった。

日本に拠点がない海外企業には原則として法人税は課税されないが、消費税は日本で提供したサービスの売り上げに応じて納める必要がある。 自社でパイロットを養成する大手と異なり、格安会社 (LCC) など規制緩和で新規参入した会社を中心にパイロット需要が拡大している。 関係者によると、指摘を受けたのはクルー・リソーシズ・ワールドワイド(米国)など五つの国・地域の 7 社。 (kyodo = 9-8-14)


日本の世界競争力、6 位に上昇 1 位スイス WEF

ダボス会議で知られる世界経済フォーラム (WEF) は 3 日、世界競争力ランキングを発表し、日本は 144 カ国・地域中 6 位につけた。 1 位はスイスで、以下シンガポール、米国、フィンランド、ドイツの順。

日本は昨年の 9 位から上昇。 高い評価につながったのが企業活動やビジネス環境のよさだ。 企業の研究開発費への支出が多いことや、優秀な人材がそろい、世界に通用する研究機関があることなどが強みとされた。 また、日本の 1 人あたりの特許出願数が世界で 2 番目に多いことや、企業が利益を出しやすい製品やサービスを扱っている点も評価されている。 (ジュネーブ = 松尾一郎、asahi = 9-3-14)


金融政策決定、雇用回復が鍵 世界の中銀首脳「利上げには不十分」

米連邦準備制度理事会 (FRB) のイエレン議長をはじめとする世界の中央銀行の首脳らは、日米欧など各国・地域の経済がより高めの金利に耐えられるようになるには、労働市場はまだ十分に回復していないとの見解を示した。 米ワイオミング州ジャクソンホールで 23 日まで開かれたカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムに出席した中銀首脳らは、景気回復局面の違いが顕著になるのに伴い、各国・地域の金融政策の相違も鮮明になるとの見方を示唆した。 しかし、需要押し上げには依然、雇用や賃金の力強い伸びが必要だと述べ、雇用情勢を政策決定の中心課題に据えた。

米英両国の経済には力強さを増している兆候が見られ、両国金融当局が重点を置く雇用面から判断すると、FRB とイングランド銀行(英中銀)は 1 年以内に金融政策の引き締めに動くことになりそうだ。 それとは対照的に、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁と欧州中央銀行 (ECB) のドラギ総裁は新たな刺激策を講じざるを得なくなる可能性を認めた。

議長就任後、初の同シンポジウムでの講演に臨んだイエレン議長は、米国の雇用は改善し、連邦準備制度での議論はいつ「異例の緩和策を解除し始めるべき」かに移行しつつあると言明。 だが、労働力の活用はなお極端に低い状態にあり、労働市場は大恐慌以来最悪のリセッション(景気後退)からまだ完全には回復していないと指摘した。 同議長は、労働市場の実情を検証するには、失業率だけでなく複数の指標に頼る必要があるとの議論を展開。 労働参加率やフルタイム雇用を望むのにパートタイムの職しか見つけられない労働者の数など計 19 の指標で構成される FRB の労働市場情勢指数 (LMCI) に言及した。

一方、英中銀のブロードベント副総裁は、金融危機が経済の展望を変化させ、各国中央銀行は今や経済の物価圧力を評価するために労働市場のデータを参考にせざるを得ないと語った。 同副総裁は「インフレ圧力を測る統計として生産データだけではもはや十分でない。 数字を見極めるためにしばらく待たなければならないとしても、失業の動向も重要な鍵になる。」と述べた。

ウェルズ・ファーゴ・アドバンテージ・ファンズ(ウィスコンシン州メノモニーフォールズ)のチーフ・ポートフォリオストラテジスト、ブライアン・ヤコブセン氏は「先進国・地域には一様に、労働市場は理想的な状態からは程遠いとの認識がある。 金利は相当な期間にわたり低位にとどまるだろうというのが共通点だ。」と指摘した。 (Jeff Kearns、Simon Kennedy、Bloomberg = 8-26-14)


地政学リスク高まり、円が上昇率首位(世界通貨番付)

日経通貨インデックスを構成する 25 通貨のうち、8 日までの 1 週間で日本円が最も上昇した。 ウクライナ情勢の緊迫化に加え、7 日には米国がイラクでイスラム過激派に対する限定的な空爆を実施すると表明。 地政学リスクから世界でリスクオフムードが強まるなか、安全資産の円が買われる動きが強まった。 一方、最も下落したのはインドネシアルピア。 同国が 5 日発表した 4 - 6 月期の実質国内総生産 (GDP) は伸び率が 4 年半ぶりの低水準。 経済の先行きへ懸念から売られたようだ。 リスク回避の動きも影響し、ブラジルなど他の新興国通貨も大きく下げた。(押切智義、nikkei = 8-9-14)


米 GDP 4.0% 増 4 - 6 月期、市場の予想上回る

米商務省が 30 日発表した今年 4 - 6 月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)は年率で前期比 4.0% 増で、2 期ぶりのプラス成長となった。 市場予想(3% 前後の増加)を大きく上回り、歴史的な寒波の影響を受けた今年初めの落ち込みから回復した。 今回は年次改訂がおこなわれ、過去の数値も修正された。 今年 1 - 3 月期の成長率は、2.9% 減から 2.1% 減に上方修正された。 4 - 6 月期は、米国経済の約 7 割を占める個人消費は 2.5% 増となった。 (ワシントン = 五十嵐大介、ニューヨーク = 畑中徹、asahi = 7-31-14)

◇ ◇ ◇

NYダウ終値、初の 1 万 7 千ドル台 米雇用改善で

3 日のニューヨーク株式市場は、米国の景気が着実に回復しているという見方が広がり、大企業で構成するダウ工業株平均が上昇した。 終値は前日比 92.02 ドル (0.54%) 高い 1 万 7,068.26 ドルと、1 万 7,000 ドルの大台を初めて突破し、終値の史上最高値を 3 日続けて更新した。

この日朝方に発表された 6 月の米雇用統計では、市場の注目度が高い非農業分野の就業者数が市場の予想を上回った。 失業率も前月より下がり、米国の雇用情勢が順調に回復しているという見方が強まった。 ダウ平均は取引開始直後から上昇し、1 万 7,000 ドルの節目を突破した。 米連邦準備制度理事会 (FRB) が緩和的な金融政策をしばらく続けると示唆していることも、相場を下支えしている。 (ニューヨーク = 畑中徹、asahi = 7-4-14)

◇ ◇ ◇

米 FRB 景況感「全地区で拡大」 4 月報告より改善

米連邦準備制度理事会 (FRB) は 4 日、全米 12 の地区連銀の景況感報告(ベージュブック)を発表した。 4 月から 5 月下旬までの米経済について「すべての地区で経済活動が拡大した」とした。 「大半の地区で拡大」としていた前回 4 月の報告より改善した。

拡大のペースは、ニューヨークなど 7 地区で「緩やか」、残り 5 地区はやや抑えた表現の「穏やか」とした。 米経済の牽引役である個人消費は、ほぼ全ての地区で拡大。 新車販売も半分以上の地区で加速したという。 一方、住宅市場は一部の地区で在庫が不足し、「まちまち」だとした。 今回の報告は、今月 17、18 日に開かれる米連邦公開市場委員会 (FOMC) の検討資料となる。(ワシントン = 五十嵐大介、asahi = 6-5-14)

◇ ◇ ◇

米新車販売、3 カ月連続プラス 5 月、完全に復調

米調査会社オートデータは 3 日、5 月の米国の新車販売台数が 160 万 8,693 台だったと発表した。 営業日数は昨年 5 月の方が 1 日少ないため、1 営業日あたりの販売台数に換算すると、前年同月に比べ 7.2% 増と 3 カ月連続の前年同月比プラスとなった。 このペースのまま 1 年間売れたと想定した年換算(季節変動要因を調整)は約 1,677 万台。 米自動車業界で販売好調の目安とされる 1,600 万台の大台を上回った。 米新車市場は、1 - 2 月は東部や中西部を襲った記録的寒波の影響で落ち込んだが、完全に復調した。

米自動車最大手ゼネラル・モーターズ (GM) の販売は前年同月より 8.4% 増の約 28 万台でメーカー別首位を守った。 同社は大規模リコール(回収・無償修理)問題を抱え、販売が大幅に落ち込むことも懸念されたが、これまで影響は出ていない。 (デトロイト = 畑中徹、asahi = 6-4-14)

◇ ◇ ◇

NY ダウ、終値の最高値更新 2 営業日連続

2 日のニューヨーク株式市場は、米国景気の回復が続いているとの観測が広がり、大企業で構成するダウ工業株平均は上昇した。 終値は、前週末より 26.46 ドル (0.16%) 高い 1 万 6,743.63 ドルと、終値の最高値を 2 営業日連続で更新した。

米サプライ管理協会 (ISM) が午前中に発表した 5 月の製造業景況指数が予想を下回り、ダウ平均は一時値を下げた。 だがその後、指数が誤りだったとして当初の数字より上方修正されたことから、買い戻しが入った。 一方、ハイテク株が中心のナスダック市場の総合指数は、前週末より 5.42 ポイント (0.13%) 低い 4,237.20 で取引を終えた。 (ワシントン = 五十嵐大介、asahi = 6-3-14)


世界消費者信頼感指数は 7 年ぶり高水準、インドが首位に

[ロンドン] 調査会社ニールセンが 22 日発表した第 2 ・四半期の世界消費者信頼感指数は前期比 1 ポイント上昇の 97 となり、2007 年第 1・四半期以来の高水準を更新した。 雇用見通しの改善が指数を押し上げた。 調査は 5 月 12 - 30 日に実施された。 指数が 100 を下回る場合、消費者は先行きに悲観的なことを示す。

指数はインドが最も高く、5 四半期連続で世界首位だったインドネシアを抜いた。 米国は 8 位だった。 一方、最も低かったのはポルトガルとスロベニア。 前期比での指数の落ち込みが最大だったのは日本と香港だった。

ニールセン傘下ケンブリッジ・グループのチーフエコノミスト、ベンカティッシュ・ バラ氏は「(米国の)一部セクターで雇用改善がみられることも前向きな材料だ」と指摘。 「ただ幅広いセクターで個人消費が増加するためには、労働市場の改善に加えて実質賃金が大幅に上昇する必要がある」との見方を示した。 (Reuters = 7-22-14)


ASEAN 日中韓の通貨融通枠を倍増 2,400 億ドルに

財務省は 17 日、日本、中国、韓国と東南アジア諸国連合 (ASEAN) 10 カ国が、通貨危機などが起きた場合に各国がお金を融通しあう「チェンマイ・イニシアチブ (CMI)」の融資枠を 1,200 億ドルから 2,400 億ドル(約 24 兆円)に倍増させたと発表した。

CMI は、1997 年の「アジア通貨危機」の再発を防ぐためにつくられた仕組み。 どこかの国で外貨が足りずに経済が混乱しそうになった時にドルを借りられる。 欧州の政府債務(借金)危機を受け、2012 年 5 月の ASEAN と日中韓の財務相・中央銀行総裁会議で CMI の融資枠倍増が決まったが、合意後の手続きに 2 年以上かかった。

2,400 億ドルのうち日本の負担は 768 億ドル(約 7.8 兆円)で、負担割合は中国と並んで最大だ。 また、危機に陥る前の段階で、予防的に CMI から借りられる資金枠を、各国の引き出し限度額の 20% から 30% に引き上げた。 (asahi = 7-17-14)


IMF 専務理事、世界経済見通しの下方修正示唆

[エクサンプロバンス(フランス)] 国際通貨基金 (IMF) のラガルド専務理事は 6 日、世界の経済活動は今年下半期に力強さを増し、2015 年に加速する見通しだが、その勢いは当初予想よりも弱いかもしれないとの見方を示し、IMF が成長率予想を引き下げる可能性を示唆した。 同専務理事は経済関連の会合で、各国中央銀行の緩和策による需要底上げ効果は限定的と指摘。 債務を持続可能な水準に維持することを前提に、各国は成長支援に向けインフラや教育、医療などの分野に投資するべきとの考えを示した。

今月中に発表される IMF の世界経済見通しは、4 月に公表された内容とはわずかだが若干異なる、と指摘。 IMF は 4 月に、世界の成長率予想を 2014 年は 3.6%、2015 年は 3.9% と発表した。 「潜在的成長が予想よりも弱く投資が引き続き低迷しているため、世界の経済活動は上向いているものの、その勢いは予想ほど強くない可能性がある」と語った。

一方、中国経済が急激に減速する可能性は低いとの見方を示した。 「アジアの新興国、とりわけ中国に関しては安心している。 急激な減速はなく、より持続可能な水準に成長が若干減速し、今年の成長率は 7 - 7.5% になると見込んでいる。」と述べた。 (Reuters = 7-7-14)


軍関連にも ODA を 有識者懇提言、民生支援限定を転換

政府の途上国援助 (ODA) の見直しについて、外務省が設けた有識者懇談会(座長 = 薬師寺泰蔵・慶大名誉教授)が 26 日、報告書を出した。 災害救助などの軍事でない分野であれば、これまで禁じてきた外国軍への支援を認める内容だ。 安倍内閣は報告書を踏まえ、年内に新しい大綱を閣議決定するが、実現すれば、途上国への民生支援に限って 60 年近く続けてきた日本の ODA 政策の大きな転換になる。

政府は、軍隊に関係する支援を ODA で行うことを一切禁じてきた。 2003 年に改定された今の ODA 大綱には「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する」と書かれており、この規定に基づいている。 今回の報告書は、この規定の維持は「当然」とした。 ただ、現状は ODA を通じて支援国の軍隊に武器ではない物資を送ったり、軍人に救援など軍事と関係のない技術指導をしたりすることも禁止されている。 (asahi = 6-26-14)


2013 年、世界の直接投資額 9% 増 日本は 1,360 憶ドル

国連貿易開発会議 (UNCTAD) は 24 日、2014 年版の「世界投資報告」を発表、各国が 13 年に受け入れた海外からの直接投資額は 1 兆 4,520 億ドル(約 148 兆円)で、前年比 9% 増だった。 先進国、途上国、旧ソ連や東欧などの市場経済移行国それぞれへの投資が増加したという。 UNCTAD は、14 年の直接投資額を 1 兆 6,000 億ドル、15 年を 1 兆 7,500 億ドル、16 年を 1 兆 8,500 億ドルと予測。 主に先進国が牽引役となって今後 3 年連続で順調に増加すると見込んでいる。

ただ、悪化するウクライナやイラク情勢を念頭に「地域紛争などに関連したリスク」によって、投資の上昇予測が実現しない恐れが依然として残っていると警告している。 13 年の日本からの直接投資額は 1,360 億ドルで、前年と比べ約 10% 増加した。 (ジュネーブ、kyodo = 6-25-14)


日本人留学生を確保せよ 倍増計画で豪・仏など争奪戦

海外への留学生倍増計画など、世界で活躍できるグローバル人材育成に力を入れる日本に、各国が熱い視線を送る。 「ビジネスチャンス」とみて、留学や社員研修の受け入れ先に選ばれようと、競って名乗りを上げている。 「アプローチできる企業が見つかった。」 5 月下旬、東京・三田のオーストラリア大使館。 シンガポールオフィスと福岡総領事館を結ぶテレビ会議で、政府貿易促進庁の教育担当が報告した。 シンガポール在駐の日本企業約 40 社に、豪州への留学を呼びかけるセミナーの準備を進めていた。

豪州にとって教育は、鉄鉱石、石炭に次ぐ「第 3 の輸出産業」だ。 2013 年に学生と社会人計約 52 万人の留学生を迎えた。 市場規模は 15 億豪ドル(約 1,500 億円)。 学費、食事、観光にお金を使う留学生は「お得意様」という。 留学市場をさらに拡大するため、10 年 7 月に留学促進業務を教育担当の省庁から貿易促進庁に移した。 各国に担当を置き、貿易や投資とともに教育を企業に売り込む。 東京事務所は「マーケティング事務所」とも呼ばれ、企業の海外研修受け入れにも力を入れる。

研修は「完全オーダーメード」が売りで、政府職員が企業に訪問して一緒に内容を考える。 西日本シティ銀行(福岡市)は 2 月にシドニーで、「外国人部下の注意の仕方」、「無断欠席する海外コールセンター職員への対応」などの研修を受けた。 教育担当のジョージ・マネタキス商務官は「政府が、ここまでやる国はないのでは」と話す。 (千葉卓朗、asahi = 6-22-14)


世界経済は 3% 成長、米緩和縮小や中国金融市場などリスク = 内閣府

[東京] 内閣府は 7 日、世界経済の現状や見通しを分析した報告書「世界の潮流」をまとめ、今年の世界経済は米国の回復や欧州の持ち直しで 3% 程度成長するとの見通しを示した。 一方で、米国の金融緩和縮小や欧州のデフレ懸念、一部の新興国経済やウクライナ情勢がリスクとなると指摘。 中国の金融リスクが経済活動を下押しする可能性があるとした。

今年の世界経済に関しては、中国や新興国など一部で弱さが見られるものの、米国の緩やかな回復や欧州の持ち直しなど、全体として緩やかに回復すると指摘。 米国では雇用・所得環境の改善や住宅価格、株価上昇などを背景に消費が増加し、景気は緩やかに回復するとみている。 欧州も英国が回復しているほか、ユーロ圏ではドイツがけん引し、持ち直しの動きが続くと分析している。

一方で、アジアは中国の景気拡大テンポが緩やかになっているほか、東南アジア諸国連合 (ASEAN) 加盟国の景気は足踏み状態だとし、先行きも低めの成長率が続くとみている。

リスク要因としては、米国の金融緩和縮小による影響、ユーロ圏の低インフレの長期化、中国の金融市場をめぐる動向、新興国の金融市場の不安定化、地政学リスクを挙げ、中国に関してはシャドーバンキング(影の銀行)による過剰な信用拡大とそれを抑制する取り組みにより不動産価格や金融市場で不安定な動きが見られると指摘。 シャドーバンキング部門からの資金への依存度が高いとみられる中小製造業、不動産業を中心にリスクプレミアムの上昇や融資の縮小が大きければ経済活動を下押しする可能性があるとしている。

報告書ではさらに、新興国の成長鈍化の背景も分析。 08 年のリーマン・ショックを受けた世界金融危機以降、グローバル化のテンポ鈍化や中国経済の減速、13 年以降の金融市場の混乱で資源国を中心に経済は減速傾向にあるとしている。 また、国際サプライチェーンでの活動度合いについて、輸出における部品輸入依存度を見たところ、中国は低下し、インドが拡大傾向にあると分析。 中国は最終財を組み立て輸出する役割から中間財を輸出する役割に変化していると指摘している。 (石田仁志、Reuters = 6-7-14)


米雇用者数、5 月は 21.7 万人増 4 カ月連続で 20 万人超の強い伸び

[ワシントン] 米労働省が 6 日発表した 5 月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比 21 万 7,000 人増となった。 4 月の強い伸びからは鈍化したものの、4 カ月連続で景気回復の節目とされる 20 万人増を維持し、米経済が年初の寒波の影響から脱していることを示した。 また、リセッション(景気後退)期に喪失した 870 万人の雇用を取り戻した。

市場予想は 21 万 8,000 人増だった。 3、4 月分は計 6,000 人下方修正された。 失業率は 6.3% で、前月から横ばい。 労働市場の緩み解消にどの程度の時間がかかるかを示す手がかりとされる時間当たり賃金は 0.05 ドル増加した。 平均週間労働時間は横ばいの 34.5 時間。 5 月の雇用は幅広い分野で増加した。 製造業は 1 万人増。 増加は 10 カ月連続。 建設も 6,000 人増で、5 カ月連続で増加した。

レジャー・接客、専門職、人材派遣、小売などでも力強い増加がみられた。 政府部門も 4 カ月連続で増加し、5 月は 1,000 人増。 家計調査の結果によると、労働人口は 19 万 2,000 人増と、前月の大幅減から増加に転じた。 労働参加率は前月から横ばいの 62.8% だった。 (Reuters = 6-6-14)

◇ ◇ ◇

米中小企業、景気回復の「大いなる」功労者 = FRB 議長

【ワシントン】 米連邦準備制度理事会 (FRB) のイエレン議長は 15 日、中小企業が景気回復の促進に貢献してきたとして評価する姿勢を示した。 イエレン議長は中小企業庁 (SBA) が主催した中小企業週間の会合で講演し、「米国は金融危機下で暗黒の日々を過ごして以降、大きな成長を遂げてきた。 こうした進歩を可能にした投資や雇用をもたらした大いなる功労者は中小企業だ」と語った。

議長は労働省の統計を引き合いに、雇用拡大が再開した 2010 年以降の雇用創出分のうち、半分超が従業員数 250 人未満の中小企業の人員採用によるものだと指摘した。 しかも、そのほとんどが従業員数 50 人未満の企業だと言う。 また、現在の景気回復期では「これまでを通してみても雇用創出にとって(企業全体の)重要性が通常よりもはるかに大きい」と述べた。 これは、今回の回復期では公的部門が雇用を削減したため、雇用者数の純増数を全て民間部門が創出してきたことが理由だ。

議長はリセッション(景気後退)以来の景気回復を評価しつつも、経済が完全に復調するまでの道のりは依然として長いとの見方を示した。

一方、金融政策についてはあまり言及せず、FRB の債券買い入れ措置の目的は、支出や投資、雇用の拡大支援のために長期借り入れ金利を押し下げることだという一般論を述べるにとどまった。 FRB は昨年 12 月に同措置の縮小を開始して以降、連邦公開市場委員会 (FOMC) ごとに買い入れを 100 億ドルずつ減額している。 議長は先週の議会証言で、買い入れが今年秋に終了するとの見通しを示した。 (Victoria McGrane、The Wall Street Journal = 5-16-14)

◇ ◇ ◇

米就業者数、予想上回る 28.8 万人増 4 月の雇用統計

米労働省は 2 日、4 月の雇用統計を発表した。 景気を反映する「非農業部門の就業者数(季節調整済み)」は、前月比 28 万 8 千人増となり、2012 年 1 月以来の高い伸びとなった。 専門家の予想(約 21万人の増加)を大きく上回り、雇用環境の着実な改善ぶりを示した。 失業率は 6.3% となり、2008 年 9 月以来、5 年 7 カ月ぶりの低い水準となった。 失業率は事前の予想 (6.6%) を下回り、3 月より 0.4% 幅改善した。

4 月の就業者数は、小売業、建設業、医療関係などで増加。 製造業や交通関係などは、前月とほぼ変わらなかった。 2、3 月の就業者数の増加も上方修正され、ともに失業率が着実に下がる目安とされる 20 万人の大台を超えた。 就業者の増加数は、歴史的な寒波で昨年 12 月に 10 万人を割り込んだが、今年に入って着実な改善をみせている。 (ワシントン = 五十嵐大介、asahi = 5-2-14)

◇ ◇ ◇

米就業者数、予想下回る 1 月雇用統計、11 万人増でも

米労働省は 7 日、1 月の雇用統計を発表した。 景気動向を敏感に反映する「非農業部門の就業者数」は前月比 11 万 3 千人の増加となったが、市場予想(約 19 万人の増加)を大きく下回った。 記録的な米寒波の影響もあるとみられている。 失業率は 0.1% 幅下がり、ほぼ市場予想通りの 6.6% となった。

昨年 12 月の雇用統計は、非農業部門の就業者数の増加が 7 万 4 千人(今回 7 万 5 千人増に修正)と大幅に落ち込んだ。 一方、失業率は 6.7% とほぼ 5 年ぶりに 6% 台まで改善した。

米連邦準備制度理事会 (FRB) の金融政策を決める連邦公開市場委員会 (FOMC) は 1 月、「労働市場の指標はまちまちだが、全体では改善している」などとして、昨年 12 月に次ぐ 2 度目の量的緩和縮小を決めていた。 1 月の FOMC の直前には、緩和縮小で新興国に流れ込んでいた資金が引き揚げられるとの観測が広がり、新興国の通貨が急落。 日本など先進国の株価も下落した。

1 月の FOMC の声明では、新興国などの市場の混乱について一切言及はなく、今のところ緩和を縮小する方針は変えていない。 だが、市場では新興国に与える影響を懸念する声もあり、今後の米経済の指標次第では 3 月の FOMC で議論される可能性もある。 (ワシントン = 五十嵐大介、asahi = 2-8-14)