南太平洋・タロ島、住民まるごと移住へ 水没危機を回避

ロイター通信によると、南太平洋ソロモン諸島のタロ島で、海面上昇による水没を避けるため、住民をまるごと別の島に移すことになった。 地球温暖化の影響で、水没の危機に直面している島国は多いが、実際に島ごと移住を決めたのは太平洋で初めてとみられる。

移住するのは、チョイスル州の州都があるタロ島。 南北 1 キロ未満のサンゴ環礁の島に約 1 千人が住む。 海抜は 2 メートルに満たない。 海面上昇による洪水や津波への懸念が年々高まっており、地元当局がオーストラリア政府の支援を受けて専門家チームを立ち上げ、対策を検討してきた。 その結果、集落を存続させるには、浸水に備えて予防策を取ると同時に、長期的に対岸のチョイスル島に新しい州都を造り、住民を段階的に移住させるしかないと判断した。 (ワシントン = 小林哲、asahi = 8-19-14)


PM2.5 : 衛星観測遮る? 二酸化窒素濃度を過小評価

人工衛星から観測した大気中の汚染物質「二酸化窒素 (NO2)」の濃度は、地上から観測した場合と比べ最大で半分程度に低く見積もられているとの研究成果を、海洋研究開発機構などの国際研究チームが発表した。 微小粒子状物質「PM2.5」などに遮られ、観測しにくくなっている可能性が高いという。 欧州地球科学連合の専門誌に掲載された。

チームは 2007 - 12 年、日本など 4 カ国 6 カ所の月平均の NO2 濃度について、地上からと、米航空宇宙局 (NASA) の衛星に搭載されたセンサーによる観測結果を比較。 大気汚染物質の少ない沖縄・辺戸岬などでは両方のデータはほぼ一致していたが、神奈川県横須賀市や韓国・光州、中国・合肥といった都市部では、衛星データの方が地上より 3 - 5 割低かった。

PM2.5 を含む大気中の微粒子「エアロゾル」が多いときや、NO2 が地表 1 キロ以内に偏ってとどまっているときほど、衛星データの方が低くなる傾向があった。 エアロゾルによって地表付近の NO2 が覆い隠されてしまう「シールド効果」の影響とみられ、大気汚染が激しい地域ほど、衛星観測の結果が過小評価される恐れがあるという。 同機構の金谷有剛・地球表層物質循環研究分野長代理は「エアロゾルの影響を適切に考慮した分析方法を開発して、衛星観測の精度を高める必要がある」と指摘する。 (大場あい、mainichi = 8-12-14)


北極海、海氷の減少で 5M の高波 温暖化の新たな徴候

北極海の最近まで常に海氷に覆われてい海域で、約 5 メートルの高波が観察された。 科学者は、これを地球温暖化の新たな徴候だと見ている。 波は海氷を砕き、より多くの太陽光が海水に吸収されて水温が上がる。 そしてさらに氷が溶け、風が発生し、波が高くなる。 アラスカ北部のボーフォート海では、最近まで波の観測が行われていなかった。 この地域は常に海氷に覆われていたため、波が形成されなかったためだ。 しかし現在、ボーフォート海の大部分が 9 月まで氷のない状態となっており、2012 年に同海域の中央に、波の高さを計測するためのセンサーが設置された。

「波の頻繁な形成は正のフィードバック作用を持ち、夏には北極海に海氷がまったく見られなくなる可能性がある。」 シアトルに本拠を置くワシントン大学のジム・トムソン氏とミシシッピ州にある米国海軍研究所 (NRL) のエリック・ロジャース氏は「Geophysical Research Letters」誌に発表した論文の中で述べている。 風が外洋上で長い距離を移動すると、それにつれて波の高さが高くなる。 海氷の存在は風の移動距離を制限し、波の形成を抑えている。 「今後、北極海の季節的海氷域は縮小すると予想されるため、高い波が形成されるだろう」と著者らは指摘する。

北極海で研究に携わる物理海洋学者ダレク・ボグッキ氏は、今後、高い波の形成は北極海でよく見られる現象になるかもしれないと述べている。 同氏は今回の研究には参加していない。 ボグッキ氏によると、高い波が頻繁に形成されるようになると、海岸は高さを増す波に打たれて激しく浸食され、海岸線が変化する可能性があるという。 大気と海との間で交換される二酸化炭素の量も変化し、北極海が大気中に放出する温室ガスの量も増加するおそれがある。

ボーフォート海の開水域は年ごと 0 に変化するが、海氷域が最大となる 4 月には開水域はほとんどなくなり、海氷域が最小となる 9 月には 1,000 キロメートル以上となる。 1970 年代の終わり以来、北極海の海氷域は縮小し続けているが、この傾向は 2002 年からさらに加速している。 2012 年 9 月 18 日、強風を伴う暴風雨が発生した際に 5 メートルの波が観測された。 (National Geographic = 8-1-14)


「潮流」読んで、サンゴ礁再生 大成建設、技術を応用

地球温暖化で減っているサンゴ礁の再生支援に、大手ゼネコンの大成建設が乗り出す。 海外の海底工事で培った「潮の流れを読む」技術を応用する。 開発だけでなく、環境を再生する視点が欠かせなくなった公共事業の「潮流」を意識した取り組みだ。

サンゴは、適度な潮流と水温、水質がなければ大きく育たないため、海の環境の「バロメーター」とされる。 卵からかえったサンゴの幼生は潮流を漂って海底の岩などに付着し、高さ数センチの稚サンゴに成長する。 付着先が砂地などだと死んでしまうこともある。 サンゴ礁の大きさまで育てるには潮流をうまく読み、多くのサンゴの幼生を効率よく根付かせる必要がある。 (山下龍一、asahi = 7-25-14)


再生エネルギー、自治体 8 割推進 朝日新聞・一橋大調査

地域振興にも活用

朝日新聞社と一橋大学は、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入状況について、全国 1,741 の市区町村を対象にアンケートした。 回答した自治体の 8 割が推進に意欲的で、電力や売却益だけでなく、再生エネを利用した地域振興にも期待を寄せている実態がわかった。 一方で、電力会社に送電線への接続を断られるなど、機運をしぼませかねない障壁も浮かび上がった。

送電の容量課題

再生エネをめぐっては、経済産業省が、認定した都道府県別の発電施設数や設備容量などを公表している。 だが、市区町村レベルの導入状況や地域の思いなどの実態は、明らかになっていなかった。 (編集委員・石井徹、菅沼栄一郎、asahi = 7-22-14)



エコな涼を演出 打ち水イベントに 1,500 人

大阪・梅田で 19 日、買い物客や周辺で働く約 1,500 人が参加し、打ち水などをするイベントがあった。 環境への意識を高めるきっかけにしてもらおうと、電鉄会社やグランフロント大阪などが開き、梅田の 4 カ所で同時に行った。 19 日の大阪の最高気温は 32.4 度。 涼しげな浴衣姿の参加者は、JR 大阪駅の屋根で集めた雨水の処理水をひしゃくでまき、涼を演出した。 20 日も開かれる。(高橋一徳、asahi = 7-20-14)

◇ ◇ ◇

冷やそう東京都心 今年も「打ち水プロジェクト」

太陽が熱した道や広場に水をまいて気温を下げる「打ち水プロジェクト」が、大手町・丸の内・有楽町エリアである。 打ち水に使うのは、エリア内の飲食店から出た廃水を飲めるほどに浄化したもの。 おけとひしゃくを使って水をまく。

開催日は 25 日(東京駅前の行幸通り)、8 月 1 日(有楽町駅前の広場)、4 日(大手町の川端緑道)、8 日(東京サンケイビル前の広場)、14 4日(東京国際フォーラムの地上広場)。 誰でも参加できる。 詳しくは打ち水プロジェクト事務局 (http://www.ecozzeria.jp/project/uchimizu.html)。 (asahi = 7-17-14)


関西最大級メガソーラー稼働開始 甲子園球場 6 個分

関西最大級となる大阪府泉大津市の大規模太陽光発電所(メガソーラー)の「ソフトバンク泉大津ソーラーパーク」が 17 日から全面稼働した。 甲子園球場約 6 個分の 25 ヘクタールに約 8 万枚の太陽光パネルが並ぶ。 年間発電量は一般家庭 5,700 世帯分にあたる 2,068 万キロワット時になる。

メガソーラーが設置されたのは、大阪府が所有する廃棄物処分場「泉大津フェニックス処分場」の一角。 ソフトバンクのグループ会社や三井物産などが出資した運営会社が、府から年間約 9 千万円で土地を借りている。 発電した電気は全量を関西電力に売却する。 (asahi = 7-18-14)


サントリー、4 年連続首位 日経 BP 「環境ブランド調査」

日経 BP 社が企業(一部はブランド名)の環境活動に対するイメージを調査する「環境ブランド調査 2014」によると、サントリーホールディングスの「サントリー」が 4 年連続で首位になった。 2 位も 4 年連続でトヨタ自動車だった。 属性別でサントリーが女性層から支持を集めた。

女性部門では 1 位のサントリーが 2 位のトヨタに20ポイントの差をつけた。 専業主婦に限ると 2 位(アサヒビール)との差は 35 ポイントに広がる。 サントリーは生き物や森、水資源の保護に関する広告に注力し支持を広げたようだ。 過去 3 回の調査で順位を大きく上げた企業はローソン、カゴメ、ダイキン工業など。 調査は主要企業 560 社(ブランド名を含む)が対象で 15 回目の今年は 3 月 21 日から 4 月 25 日までインターネットを通じ 1 万 8,196 人から有効回答を得た。 (nikkei = 7-7-14)


PM2.5、連日の基準超え予測 福岡市、注意呼びかけ

福岡市は 2 日、健康への悪影響が心配される微小粒子状物質 (PM2.5) の 1 日の平均値が国の環境基準(1 立方メートルあたり 35 マイクログラム以下)を超え、同 40.7 マイクログラムになるとの予測を発表した。 環境基準の超過予測は 2 日連続。 市では、呼吸器系疾患やアレルギーがある人に外出時のマスクの着用やうがい、目を洗うことなどを呼びかけている。 (asahi = 7-2-14)


中電・東電の石炭火力で環境相が意見 「業界で CO2 削減を」

環境省は 1 日、中部電力と東京電力が東電の常陸那珂火力発電所(茨城県東海村)に共同で建設する石炭火力発電所の計画について、電力業界に対して二酸化炭素 (CO2) の排出削減に向けた枠組みづくりを促す環境相の意見を経済産業相に提出したと発表した。 経産相は環境相の意見を踏まえ、22 日までに意見をまとめる。

電力 2 社が出資する常陸那珂ジェネレーション(東京・台東)が 4 月 23 日に経産相に提出した石炭火力の環境影響評価(アセスメント)の配慮書に対して環境相が意見を出した。 業界での CO2 排出削減への枠組みができるまでは、石炭火力によって天然ガス火力を上回ってしまう分の CO2 を東電が海外で削減するよう求めた。 CO2 の回収・貯留 (CCS) 設備も検討すべきだと指摘した。 (nikkei = 7-1-14)


アジア新興国で環境技術普及へ基金 環境省とアジア開銀

環境省とアジア開発銀行 (ADB) は、アジアの新興国で環境に配慮した開発を促すため基金設立を柱とした包括的な協力関係を結ぶ。 ADB がアジア各国で最先端の環境技術を利用する案件に融資する際に、上乗せする形で基金から資金を援助する。 石原伸晃環境相と中尾武彦 ADB 総裁が 25 日夜に会談し、協力の覚書に署名する。

地球温暖化対策をはじめ、大気や水の汚染防止、生物多様性の保全などが対象となる。 新興国では経済発展に伴い、温暖化ガスの排出が急増し、環境汚染も深刻な社会問題になっている。 日本が提唱する「2 国間クレジット制度」の浸透につなげたい考えだ。 まず環境省が今年度予算で ADB に 18 億円を拠出して基金を新設する。 同省は来年度予算でも同規模の拠出を見込んでいる。 日本は工場の省エネルギーのほか、再生可能エネルギーといった技術を提供する。

来春には、東京で新興・途上国の政策担当者に向けた会議を開き、日本が公害問題で得た対策技術や経験を伝えることで、各国の問題解決につなげる。 温暖化や大気汚染などに関するアジア各国の研究者が参加する組織にも支援する。 日本は技術を提供する見返りに温暖化ガスの排出枠を得る 2 国間クレジット制度を提案しており、アジアではインドネシアやベトナムなど 8 カ国と合意している。 ADB との協力により、同制度の活用を進めるとともに、新興国の環境ビジネスを支援する。 (nikkei = 6-25-14)


日本の植物 300 種絶滅? 九州大など 100 年後予測

日本の種子植物やシダ植物はこのままのペースで減少傾向が続くと、100 年後には 300 種以上が絶滅する可能性があるとする予測を、国立環境研究所や九州大などの研究チームがまとめた。 角谷拓・同研究所主任研究員は「絶滅に向かうスピードは予想以上に速く、日本の植物は危機的な状況だ」と話している。

研究チームは、日本植物分類学会と環境省が全国を 10 キロ四方の網目状に区切って調査したデータを利用。 環境省レッドリストで絶滅危惧種や準絶滅危惧種となっている計 1,618 種について、1994 - 95 年と 2003 - 04 年のデータを比べ、10 年あたりの減少率などを解析した。

その結果、現在のペースで減少が続くと、100 年後には希少種の野草ハナシノブやアマミエビネ、ヤクシマタニイヌワラビなど維管束植物が計 370 - 561 種絶滅すると予測。 日本の維管束植物は亜種などを含め約 7 千種とされるが、その 5 - 8% が 100 年間で失われる計算だ。

これらの植物を減らす最大の要因は開発行為によるもので、珍しい植物を狙った盗掘などの影響も大きいという。 研究チームは「絶滅を避けるには、国定・国立公園などの保護区を拡充し、盗掘防止のための対策も強化する必要がある」と指摘している。 (山本智之、asahi = 6-20-14)


日本海のスルメイカに異変 本州激減、韓国は豊漁

地球温暖化による海水温の上昇が激しい日本海で、スルメイカに異変が起きている。 春から夏の北上のペースがはやまって漁期が短くなり、本州沿岸で取れる量は激減。 秋の南下ルートも大陸側に移ったことから、韓国側が豊漁に沸く事態となっている。

スルメイカは、国内のイカ漁獲の 8 割を占める重要な水産資源。 日本海では、秋から年末、山陰から九州西部沖の海域で産卵する。 子は夏までに日本海北部まで北上し、その後、産卵場所に戻る習性を持つ。 かつては、北上中に道草したり居残ったりするイカも多く、本州沿岸では長い期間取れた。

水産総合研究センター日本海区水産研究所(新潟市)の木所英昭・資源管理グループ長の調べでは 1980 年代、秋田 - 山口県沖で 1 カ月の合計で 2 千トン以上とれたのは、5 - 12 月の 8 カ月間だった。 それが 2000 年代は 5 - 7 月の 3 カ月間に減った。 この原因を、木所さんは 1988 年を境に急上昇した春から秋の海水温とみる。 本州沿いに流れる対馬暖流域では、温度が最も上がる秋で、それまで 19 度前後だったのが 20 度前後に。 居残りに適さなくなり、素通りするようになったらしい。 (長野剛、asahi = 6-17-14)


温暖化対策の次期枠組み、公式協議スタート 日本出遅れ

2020 年以降の地球温暖化対策の新しい枠組みづくりの公式協議が始まった。 ドイツ・ボンで開かれている国連気候変動枠組み条約の関連会合では、この時期では初めてとなる閣僚級会合があり、温室効果ガスの削減量などの約束について、欧米や中国などが早期に出す意欲を示した。 日本は国内議論も始まっておらず、出遅れが目立っている。

「科学は気温上昇を 2 度以内に抑えるため直ちに行動を取るように迫っている。 私たちも実質的な作業を始めなければならない。」 4 日に始まった作業部会で、共同議長のクマルシン氏(トリニダード・トバゴ)は強調した。 京都議定書に変わる新しい枠組みの中心となるのが、各国が自主的に決める削減量などの約束だ。 出来るだけ来年 3 月までに示すよう申し合わされているが、主要排出国が期限を守れるかが当面の焦点になっている。 内容を吟味する時間を確保し、スムーズな合意につなげるのが狙いだ。 (ボン = 須藤大輔、asahi = 6-11-14)


今夏、エルニーニョ発生か 長梅雨や冷夏の恐れ

気象庁は 10 日、世界的に異常気象を引き起こすとされる「エルニーニョ現象」が今夏、5 年ぶりに発生する可能性が高いと発表した。 長梅雨や冷夏をもたらすおそれがあり、同庁は「農作物への影響も考えられる。 今後の予報に注意を。」と呼びかけた。

エルニーニョは、東太平洋の赤道付近の海面水温が平年より 0.5 度以上高い状態が半年続く状態。 気象庁によると、4 月の水温は平年より 0.3 度、5 月は 0.6 度高かった。 同庁は「このまま高い値で推移するとみられ、発生まで近い」と説明している。 同庁は、エルニーニョの影響で今夏は太平洋高気圧の北への張りだしが弱く、北日本は冷夏で多雨になると予想している。 全国的に梅雨明けも遅くなりそうだという。 (asahi = 6-10-14)


北限のブナ、さらに北へ 12 キロ先に、温暖化と関係か

北海道南部の黒松内低地帯とされてきたブナ自生地の北限が、さらに 12 キロ北にあることが、森林総合研究所北海道支所の田中信行地域研究監(森林生態)らの調査でわかった。 新たに見つかったのは直径約 70 センチのブナを中心とした約 40 本の小さな個体群。 田中研究監は「北限のブナが分布拡大の途上にあることがはっきりした」として、温暖化との関係にも注目する。

新たな個体群が見つかったのは、ニセコ山系に連なる日本海に近い雷電山の中腹(蘭越町と岩内町境の標高約 625 メートル付近)の北斜面。 林と呼ぶにはまだ小さな群だが、約 1 ヘクタールの範囲にブナがばらばらに生え、大きさもまちまちであることなどから、自然に生えたものと判断した。 田中研究監は「カケスなどの野鳥が種子を運び、育ったブナが実を結んだ後、その実から育ったブナたちが個体群を形成した」と推測する。

田中研究監は昨年 10 月、地表を覆うササをかき分けて林の中に分け入り、約 10 本のブナを発見。 今年 4 月の残雪期には、黒松内町ブナセンターの斎藤均学芸員らと 2 日かけて再調査し、ブナ 41 本(直径約 3 - 70 センチ)を確認した。 ブナが芽吹く 5 月中旬には小型飛行機に乗り、若葉の色の違いから小集団の存在を再確認した。 (深沢博、asahi = 6-4-14)


アユ、温暖化で小型に? 産卵遅くなり海で成長しきれず

全国の河川で漁期を迎えているアユ。 近年は釣り人や漁師から「小さくなった」との声が相次いでいる。 秋に産卵する一年魚だが、温暖化による川の水温上昇で産卵期が遅れ、海で成長しきれないまま遡上(そじょう)するアユが増えているようだ。

6 月にアユ釣り解禁を迎える富山県の庄川で県水産研究所が調べたところ、アユの体長は 1990 年代に 15 - 18 センチあったのが、2000 年代はそれより 2 - 3 センチ小さかった。 那珂川(栃木県)、神通川(富山県)、四万十川(高知県)など全国を訪れる岐阜県郡上市のアユ釣り名人・白滝治郎さん (56) も「海から遡上するアユが、昔より小さくなった感じがする」と話す。

同じような声は全国の釣り人からも聞かれ、25 都県の水産研究機関が集まる全国湖沼河川養殖研究会の部会は、遡上と海へ下る「降下」の時期を調べ、今年 3 月に中間報告を出した。 遡上の時期は河川や年によって早まったり遅くなったりしていたが、降下は 90 年ごろから全国的に年々遅れる傾向が見られた。 長良川(岐阜県)では、降下のピークが 95 - 96 年は 10 月中旬 - 11 月上旬だったが、昨年はそれより 1 カ月遅かった。 (中山由美、asahi = 6-1-14)


太陽光発電、助っ人は草食系で癒やし系 除草費を節約

太陽光パネルを並べたメガソーラーの稼働で、動物たちが思わぬ活躍をしている。 周辺の雑草を駆除する役目で、働きぶりが注目されている。 JR 九州グループは、宮崎県都城市の JR 都城駅に設けた「都城太陽光発電所」で、ヤギに雑草を食べさせている。 8,050 枚のパネルを配して昨年に稼働を始めた設備の年間発電量は約 215 万キロワット時(約 530 世帯分)。 パネルの表面を草が覆い、発電効率が落ちるのを避けるには除草が必要だ。

そこで、牧場の閉鎖で行き場を失いかけていたトカラヤギ 5 頭の出番となった。 ヤギの「仕事場」は、ネットで囲われた線路沿いの一角。 これにより、年間約 300 万円の除草費の節約につながっている。 (寺師祥一、金子淳、asahi = 5-26-14)


巨大防潮堤、見直しを = シンポジウムで安倍首相夫人 - 仙台

安倍晋三首相夫人の昭恵さんを発起人代表に、東日本大震災の被災地で建設が進む巨大な防潮堤について考えるシンポジウムが 24 日、仙台市内で開かれた。 昭恵さんは「防潮堤は高いところで 14.7 メートル。 海が見えなくなり、環境も破壊されるかもしれない。」と建設計画を疑問視し、見直しの必要性を訴えた。

昭恵さんは「高い防潮堤を 8,000 億円以上の予算をかけて造り、若い人が『海の見えないところは嫌だ』と思って出て行ってしまって、防潮堤だけが残ることがないように(しないといけない)。 世界中が 2020 年の(東京)五輪を前に注目すると思う。」と語った。 (jiji = 5-24-14)


大気汚染、世界最悪はニューデリー

これでは北京も真っ青である。 専門家たちが世界中の大気汚染の程度を調査した結果、インド首都圏のデリーが最悪であることが、このほど判明した。 北東部のパトナなどインドの他の地域も汚染が進んでいる。

大気汚染の問題で、国際的な関心はこのところずっと北京に集中してきた。 ところが、実際には南アジアの方がもっとひどいことが WHO (世界保健機関)などの調べで確認された。 「インドの汚染がこれほど深刻とは、ショックです」と、インド西部のマハラシュトラ州プネーにある「チェスト研究財団 (CRF)」理事のサンディープ・サルビ博士。 「信じられないほどの劣悪さです。 政治家も、一般の人たちも、まったく気づいていませんでした。」と博士は言う。 (ニューヨーク・タイムズ・ニュースサービス = 5-24-14)


海外資本、メガソーラーに熱視線 買い取り制度が追い風

外国資本が相次いで、国内にメガソーラー(大規模太陽光発電所)をつくっている。 政府の固定価格買い取り制度を背景に、安定してもうけられる投資事業とみなされているからだ。 自然エネルギーの拡大につながる一方で、地元とトラブルが起きるケースもある。

荒れ地のままだった大阪湾岸の咲洲(さきしま = 大阪市)で 17 日、約 6 千枚の太陽光パネルが発電を始めた。 中国の電力会社・上海電力が、大阪市の設備工事業者、伸和工業と合弁会社を作り、共同運営する。 発電規模は 2 千キロワット。 上海電力は中国政府系 5 大電力の一つ「中国電力投資集団」の子会社。 石炭火力を中心に中国国内で約 800 万キロワットの発電設備を持ち、日本で言えば北陸電力に匹敵する規模だ。 (高木真也、阿部治樹、asahi = 5-20-14)


ロハスな 80 点を展示 自然素材のバスケットなど

健康で持続可能なライフスタイル「ロハス」を楽しむ「ロハスデザイン大賞 2014 新宿御苑展」が 16 - 18 日の午前 9 時 - 午後 4 時、新宿御苑(東京都新宿区)である。 低炭素住宅や自然素材で作ったバスケットなど、ロハスな人やモノ約 80 点が展示され、6 月の大賞発表に向けて投票できる。 伝統的な木のおもちゃを集めたコーナーなども。 入園料大人 200 円、小中学生 50 円。 (asahi = 5-14-14)


オバマ氏「太陽光で世界のリーダーに」 5 万人雇用創出

オバマ米大統領は 9 日、訪問先のカリフォルニア州で演説し、太陽光発電や省エネ対策などを強化する新たな取り組みを発表した。 今後 3 年間に 20 億ドル(約 2,030 億円)を投じて連邦政府ビルの省エネ効率を高めるほか、300 以上の企業・団体の協力で 2020 年までに 5 万人の雇用創出につなげる、という。

オバマ政権が力を入れる温暖化対策の一環。 新たな取り組みでは、13 万世帯分の電力をまかなえる 85 万キロワットの太陽光発電設備を増設し、二酸化炭素 (CO2) 排出量を米国全体の約 7% にあたる 3 億 8 千万トン減らすことができると見積もっている。 取り組みの一環として、ホワイトハウスの屋上にも太陽光パネルを設置した。

オバマ氏は、太陽光発電の導入に積極的な大手スーパー「ウォルマート」で演説し、「我々は太陽光で世界のリーダーになろうとしている」などと述べた。 フランスのシンクタンク「REN21」の集計によると、米国の太陽光発電の導入量(12 年末時点)は、世界全体の約 7% を占め、ドイツ 32%、イタリア 16% に次ぐ 3 位。 日本は 5 位だった。 (ワシントン = 小林哲、asahi = 5-10-14)

◇ ◇ ◇

「今世紀中に海面 1.2 メートル上昇も」 米政権が報告

米オバマ政権は 6 日、気候変動の国内への影響をまとめた報告書を公表した。気候変動の影響による干ばつや集中豪雨、海水面の上昇などの被害が広がっており、対策強化を呼びかけた。 オバマ氏は、NBC のインタビューで「遠い将来の問題ではない。 今、米国人に影響を与えている問題だ」と語った。

報告書によると、米国では、1980 年代以降に巨大ハリケーンが増加。 集中豪雨による洪水に見舞われる地域も増えた。 海面上昇は今世紀中に最大 1.2 メートルに達する可能性があり、人口の半数が海面より低い土地に住むルイジアナ州ニューオーリンズなどで特に被害拡大の恐れが高まっている。 農産物への悪影響もこの 40 年間で増加。 カリフォルニア州などでは、大規模な森林火災の被害も深刻化している。

報告書は、2000 年に初版が作成され、今回が 3 回目。 科学者 300 人以上が最新の知見をまとめ、対応策の強化が必要だと指摘した。 しかし、米議会は、温暖化対策に慎重な野党共和党などが一定の勢力を占め、オバマ政権は、温暖化対策を 2 期目の重点課題に掲げるが、火力発電所からの二酸化炭素 (CO2) の排出規制などに苦心している。 (ワシントン = 小林哲、asahi = 5-8-14)


住商、米で風力発電所建設 菓子メーカーに売電

住友商事は米テキサス州で風力発電所を建設する。 来年夏に稼働する予定で、米国菓子メーカーのマース社へ売電する 20 年契約を結んだ。 住商が海外で開発から運営までを手がける初の風力発電となる。 総事業費は約 350 億円。発電容量は 6 万 1 千世帯分にあたる 200 メガワット。 (asahi = 5-2-14)


日中韓環境相が共同声明 … PM2.5 で連携強化

【大邱(韓国) = 井上亜希子】 日中韓の環境相会合が 28、29 の両日、韓国の大邱で開かれ、懸案になっている微小粒子状物質 PM2.5 などの大気汚染問題について、「早急に 3 か国の協力が必要」との認識で一致した。 3 か国の実務者による政策対話を今後も定期的に開催するなどして、改善に向けた連携協力の強化を確認した共同声明を発表した。

会合には、日本から石原環境相、韓国からユンソンギュ長官が出席。 中国は周生賢・環境保護相が欠席し、李幹傑次官が出席した。 声明では、2019 年までの 5 年間に 3 か国が協力して取り組む優先分野として、大気環境改善など 9 分野を採択した。

PM2.5 に関しては、政策対話の枠組みの中で、生成メカニズムに関する共同研究などを視野に取り組むほか、企業間や都市間の連携強化も確認した。 一方、28 日に行われた日韓環境相会談では、両国で観測技術や予測精度の向上に向けた協力や、観測データを共有することで一致。 日本での予測や越境汚染の動きの把握に役立つ事が期待される。 (yomiuri = 4-29-14)


太陽光パネル 34 万枚 国内最大メガソーラー大分で稼働

国内最大となる出力量 8 万 2 千キロワットの太陽光発電所が 23 日、大分市の別府湾に面した臨海工業地帯の埋め立て地で本格運転を始めた。 大手商社の丸紅が建設し、年間の発電量は 8,700 万キロワット時を想定。 一般的な家庭の 2 万 4 千世帯分に相当する。 発電した全量を 20 年間、九州電力へ売る。

東京ドーム 22.5 個分にあたる 105 ヘクタールの敷地に、太陽光パネル約 34 万枚を敷き詰めた。 パネルを 1 列に並べると長さは 500 キロに達する。 空から見下ろすと、巨大なプールのようなパネルが海と同じ青色をして、太陽の光を反射してキラキラと光を放っていた。 23 日午前には、丸紅の国分文也社長ら約 200 人が出席して完成式があった。

総事業費は 222 億円。 運転は無人で行われ、事業を一括受注した日立製作所が神奈川県のデータセンターで 24 時間遠隔監視する。 丸紅は年間 35 億円の売電収入を見込む。 (角田要、村上晃一、asahi = 4-23-14)


「原発抜きでも温室ガス削減可能」 IPCC が文書公表

温室効果ガスの削減策に関する報告書を公表した国連の気候変動に関する政府間パネル (IPCC) は 20 日までに、その根拠などを示した文書を公開した。 太陽光や原子力など温室効果ガスの排出が少ない低炭素エネルギーを急増させれば、温暖化の悪影響を抑えられるとしていたが、それは原子力抜きでも可能だと指摘している。 13 日の報告書公表後、原発を推進する立場から「温暖化対策として必要」との声が大きくなるなか、原子力なしの選択肢が成り立つことを示す内容だ。

報告書は、温室効果ガスの排出量を 2050 年に 10 年比 40 - 70% 削減できれば、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて 2 度以内に抑えられる可能性が残っていると記述。 そのため、電力に占める低炭素エネルギーの割合を 80% に増やすことを条件の一つに挙げていた。 (須藤大輔、asahi = 4-21-14)


メタンハイドレートからガス、仕組みを解明 岡山大

「海底の燃える氷」と呼ばれるメタンハイドレートからメタンガスが発生する仕組みを、岡山大学の研究グループがスーパーコンピューターを使って解明した。 同大学は「世界初の成果」としており、関係者は採掘技術の開発に役立つと期待している。

メタンハイドレートは、分解すると元の約 170 倍の体積のメタンガスが発生。 次世代の有望な資源と目されているが、安定的にメタンガスを取り出す技術が確立されていない。 同大学理学部の矢ケ崎琢磨特任助教、田中秀樹教授(理論化学)らは理化学研究所のスパコン「京(神戸市)」を使い、メタンハイドレートが水圧の高い海底から常圧下に取り出された際の変化をシミュレーションした。 (編集委員・永井靖二、asahi = 4-16-14)


温室ガス、08 - 12 年は日本 8.4% 減 義務値を達成

環境省は 15 日、日本の 2008 - 12 年の温室効果ガスの総排出量の平均が、1990 年比で 8.4% 減になった、と発表した。 京都議定書で日本に義務づけられた 6% 減の目標を達成した。 ドイツにある国連の気候変動枠組み条約の事務局に提出する。

実際の総排出量は 12 億 7,800 万トンで 90 年比で 1.4% 増加。 森林による吸収や排出量取引などの京都メカニズムを使って達成した。 昨年 11 月に発表した速報値は 90 年比 8.2% 減だったが、その後、家畜の排泄(はいせつ)物から出る温室効果ガスの試算方法が変わり、都市緑化での吸収量が増加したため、0.2 ポイント減った。 (asahi = 4-15-14)


今世紀末の温室ガス排出量ゼロに IPCC 新報告に盛り込み

【ベルリン】 国連の気候変動に関する政府間パネル (IPCC) が、地球温暖化による気温上昇を国際目標の範囲内に抑えるには、今世紀末に温室効果ガスの排出量をほぼゼロか、大気中から回収してマイナスにする必要があると新報告書に盛り込むことが関係者の話で 12 日、分かった。

実現するには、今世紀半ばまでに再生可能エネルギーなど温室効果ガス排出の少ない低炭素エネルギーの比率向上や、森林伐採の抑制といった大規模な変革を要すると指摘。 温室効果ガスの大幅削減対策に伴う経済の成長率低下は極めて限定的であることも示し、早急な対策強化の重要性を浮き彫りにする。 (kyodo = 4-12-14)

◇ ◇ ◇

気温 4 度上昇で安全保障に影響 IPCC が新報告書

国連の気候変動に関する政府間パネル (IPCC) は 31 日、温暖化で居住地を追われる人が増えたり、貧困が悪化して紛争の危険性が高まるなど、人間の安全保障に影響が及ぶことを初めて指摘した新報告書を横浜市で発表した。

報告書は産業革命前と比べて気温上昇が 4 度を超えた場合、国際目標である 2 度未満と比べて食料や気象などさまざまな分野で被害が深刻化することを例示し、目標達成の意義を客観的に示した。 IPCC は昨年発表した第 1 作業部会の報告書で、今のペースで温室効果ガス排出量が増えると平均気温が最大 5.4 度(20 世紀末比 4.8 度)上がると予測している。 (kyodo = 3-31-14)

◇ ◇ ◇

IPCC 横浜総会開幕 温暖化被害を検証

国連の「気候変動に関する政府間パネル (IPCC)」総会が 25 日、横浜市で開幕した。 地球温暖化による影響予測や被害を軽減するための対策を担当する第 2 作業部会が 5 日間にわたって最新の報告書を作成する。 報告書は 7 年ぶりの改定で 31 日に公表する。

日本での開催は初めてで、世界の科学者や政府代表ら約 500 人が参加。 開会式で、ラジェンドラ・パチャウリ IPCC 議長は「報告書に盛り込まれる温暖化影響や被害軽減策は、国家レベルだけでなく、地域レベルの政策決定に役立つ」と強調。 石原伸晃環境相は「従来の対策を続けるだけでは限界があり、変革の必要がある」とあいさつした。

IPCC には三つの作業部会があり、今年 10 月に公表する総括的な第 5 次報告書に向け、担当分野ごとに報告書を作成している。 第 1 作業部会は昨年 9 月、このまま温室効果ガス排出の増加が続けば、今世紀末の気温は現在より最大 4.8 度上昇すると予測。 大雨の頻度が増える可能性が非常に高いと指摘した。

これらを踏まえ、第 2 作業部会では、温暖化被害と原因、「適応」と呼ばれる被害軽減策などを世界の地域ごとに分析する。 草案では無策のままでは今世紀末には、数億人が洪水で被害を受けたり、海面上昇で移住を強いられたりすると指摘している。 総会では草案をもとに、科学者と政府代表者が 1 文ずつ協議していく。

サンゴの白化や氷河の縮小など温暖化の影響と見られる現象は世界各地で観測され、気象災害への懸念も高まっている。 報告書は、温暖化を巡る国際交渉や各国の対策に影響を与えそうだ。 (大場あい、mainichi = 3-25-14)

◇ ◇ ◇

温室ガス、50 年までに 4 - 7 割減を IPCC 報告書案

地球温暖化による環境の激変を避けるには、2050 年までに世界の温室効果ガス排出量を 10 年に比べて 40 - 70% 減らさなければならないとする気候変動に関する政府間パネル (IPCC) の最終報告書案を朝日新聞が入手した。 達成には、二酸化炭素 (CO2) 排出の少ないエネルギーの割合を大幅に増やす必要があるとしつつ、東京電力福島第一原発事故などを踏まえ、原発の位置づけは後退させた。

内容がわかったのは、温室効果ガスの削減策について最新の研究成果をまとめる第 3 作業部会の報告書案。 3 月末に横浜市で開かれる温暖化影響などについて検討する第 2 作業部会に続き、4 月にドイツである会合で承認される。 内容は変わる可能性がある。 報告書案によると、世界の温室効果ガス排出量は人口増と経済成長を背景に 00 年以降加速。 10 年に CO2 換算で 495 億トンとなった。 大気中の濃度は過去 80 万年で最も高い約 400ppm まで上昇している。 (須藤大輔、編集委員・石井徹、asahi = 3-18-14)


下水汚泥から水素、エコカー燃料に 福岡市で実証事業

下水処理場で汚泥から水素を作って販売する実証事業が、福岡市で始まる。 やっかいものだった汚泥を「都市に集まる貴重な資源」ととらえ、エネルギーとして生かそうという取り組み。 燃料電池車に水素を提供する拠点も整備する。 実際の下水処理場を使った実証事業は全国初という。

福岡市と九州大、民間 2 社による共同体が取り組む「水素リーダー都市プロジェクト」。 3 月 28 日、国土交通省の下水道革新的技術実証事業に採択された。 舞台は同市中央区の中部水処理センター。 毎日 35 万人分、約 20 万トンの下水を処理。 1 日約 130 トン発生する汚泥の約 4 割をタンクで発酵させて、発生したバイオガスを発電などに活用しているが、残りは焼却処分している。

今回、タンクの発酵能力を 2 倍にし、残りの汚泥を発酵させて、1 日最大 8 千立方メートル、平均約 4,500 立方メートルのバイオガスを新たに作り出す。 一角にはプラントを造り、バイオガスに含まれるメタンガスから水素を取り出す。 交通量の多い道路に面した水素ステーションも建設。 燃料電池車が一般発売される来年の春にも、提供を始める計画だ。

プラントなどの建設費はほぼ全額、国が負担する。 提供できる水素は日量約 7 千立方メートル。 車 140 台を満タンにでき、水素ステーションとして採算がとれるレベルという。 汚泥から水素を作る例は実験施設規模ではあるが、下水処理場で実証するのは全国初といい、「うまくいけば全国に広げていきたい」と国交省の担当者は話す。

燃料電池車は排ガスの代わりに水蒸気しか出さず「究極のエコカー」と呼ばれ、満タンにすれば 500 キロ以上走る。 九大などの試算では汚泥を原料にした水素の製造コストは 1 立方メートル当たり 86.7 円。 都市ガスから作るより約 2 円安い。 九州大大学院工学研究院水素製造システム研究室の田島正喜教授は「下水汚泥は都市に大量に集まってくるエネルギー源。 そこで水素をつくり出して提供すれば、燃料電池車の普及にもつながる。」と話している。

汚泥、ガス供給や発電活用も

国交省によると、全国で発生する下水汚泥は固形物に換算して年間約 230 万トン。 30 年ほど前まで 8 割が埋め立てられていたが、処分場が確保しにくくなり、海洋投棄も禁止された。 肥料にしたり、発酵で生じるバイオガスで発電したり、燃やしてセメントの材料にしたりと活用は進みつつあるが、リサイクル率は 55% (2011 年度)にとどまる。

先進的な取り組みとして神戸市は 08 年度から、下水汚泥からできたバイオガスの一般供給を始めた。 天然ガスを燃料とする市営バスや民間の宅配車など、1 日約 40 台が利用。 10 年度からは精製したガスを都市ガスの配管にも流している。

新潟県長岡市は取り出したメタンガスを都市ガス会社に販売。 年間約 55 万立方メートルのメタンガスを提供し、1 千万円ほどの収入になっている。 佐賀市は、下水浄化センターの汚泥に残飯などを加えたバイオガス発電でセンターの電力を自給する構想を持っている。 (渡辺純子、asahi = 4-7-14)