「俺が軽? なんで?」 ホンダ軽復活、F1 の DNA

【豊岡亮、木村裕明】 ホンダの創業者、本田宗一郎が夢をかけたフォーミュラ 1 (F1) が開かれる鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)。 そこから北に約 2 キロ離れたホンダ主力工場のひとつ、鈴鹿製作所は大きく変わろうとしている。 流線形の F1 車とは対極にあるような、荷台をたっぷりとって角張った外観の軽自動車 NBOX (エヌボックス)が、生産ラインを流れていく。 2011 年末の発売直後から大ヒットし、販売台数は 12 年度 23 万台を超え、ホンダの看板車種に成長した。

フィットなどもつくる生産ライン 2 本のうち 1 本は、すでに NBOX で埋まった。 「いずれ鈴鹿を軽で埋め尽くしたい。」 NBOX の生みの親、浅木泰昭 (55) は、そのカラフルなボディーに目をやった。 4 年前、ホンダの新車開発を担う栃木県芳賀町の本田技術研究所にいた浅木は、設計室の片隅で、上司の竹村宏 (54) から突然頼まれた。 「競争力のある軽をつくってくれ。」 竹村の手には、軽の首位を走るライバル・ダイハツ工業の「タント」に似たラフスケッチがあった。 浅木は、すぐに答えた。 「あまりやりたくない。」

80 年代、浅木は、「音速の貴公子」アイルトン・セナらが活躍した黄金期のホンダ F1 のエンジンチームにいた。 その後、レジェンドやアコードも手がけた浅木は「俺が軽? なんで?」という気持ちだった。 ホンダは 67 年、大ヒットとなった N360 で軽事業に本格進出したが、シビックやアコードといった普通車が売れると、軽事業は右肩下がりが続く。 08 年のリーマン・ショック後の業績不振とも重なり、10 年以上連続で赤字だった。 だが、「いいけど、ほかに仕事はないぞ」と竹村はたたみかけた。 一晩考えた浅木は次の日、竹村に告げた。 「しょうがない。 やります。」

浅木が目をつけたのは、軽のユーザーの中心が女性であることだった。 全国のモニターを通じ主婦層の意見を集めた。 日々の暮らしでの何げない悩みに注目した。 「部活や塾で子供の帰りが遅くて。」 「翌朝も通学に使おうと、娘が自転車で夜道を帰ってきてしまう。」 浅木は考えた。 「自転車を荷台に載せられる軽があれば。」 もともとホンダの車は、燃料タンクを中央に置く独自の構造で室内の高さは十分にとれる。

問題は、室内の奥行きだった。 軽の規格のなかで、室内を伸ばそうとするなら、エンジンルームを縮めればいい。 だが、衝突時に乗員の命を守るクッションの役目を果たすため難しい。 浅木は、エンジンの隙間にエアコンの部品などが入り込み、衝突時の衝撃を和らげる構造を開発し、長さを「9 センチ」縮めることに成功した。 「決められた規格で勝負するのは、F1 も軽も同じだ。」

実は、竹村が浅木に白羽の矢を立てたのは理由がある。 20 年ほど前、米国でミニバンのエンジンを開発していた浅木は連日、ディズニーランドの駐車場でミニバンを観察し、竹村に提案してきた。 「エンジンにこれ以上カネをかけるなら、カップホルダーの一つも追加した方がいい。」 竹村はそれを覚えていた。 「技術者には珍しいバランス感覚を持っていた。」

今年 5 月、ホンダは 7 年ぶりに F1 レースに復帰すると宣言した。 社長の伊東孝紳 (59) は語る。 「量産車の開発に加わった F1 元技術者たちがホンダの競争力を高めてくれた。」 ホンダが 4 度目の F1 挑戦にいたる軌跡は、撤退も一時ささやかれた軽の復活と幾重にも重なり合っていた。 = 敬称略 (asahi = 8-28-13)


近畿車両、米ロスから LRT 受注 初の海外生産へ

近畿車両(大阪府東大阪市)は 23 日、米ロサンゼルス郡から次世代型路面電車 (LRT) 97 編成を受注したと発表した。 2017 - 19 年の納入に向けて、初めて海外で生産する予定だ。 世界的に LRT の人気が高まるなかで攻勢をかける。 1 編成 2 両で、受注額は 3 億 6 千万ドル(約 354 億円)。 15 年夏にもロサンゼルス近郊に完成する自社工場でつくる。 近畿車両にとっては、通常の鉄道車両も含めて初の海外生産となる。 (asahi = 8-24-13)


中部空港路線はいったん撤退へ エアアジア J 名称変更

【木村聡史、稲田清英】 ANA グループの格安航空会社 (LCC) エアアジア・ジャパンは 20 日、11 月からブランド名を「バニラ・エア」に変えると発表した。 石井知祥社長は同日、朝日新聞のインタビューに応じ、成田空港を拠点に国際線に力を入れ、中部空港発着の路線はいったん撤退する方針を明らかにした。

マレーシアの LCC エアアジアとの合弁は 6 月で解消しており、エアアジア・ジャパン名での運航は 10 月 26 日で打ち切る。 準備期間が必要なため、新ブランドでの運航は 12 月下旬からになる。 路線などは 9 月下旬に発表する。 運賃は「少なくとも大手の半額」にするという。 運航につかう飛行機は、当面は 2 機でまかない、2015 年中に 10 機に増やす計画だ。 (asahi = 8-21-13)

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エアアジア・ジャパン、600 便欠航へ 9 月と 10 月

ANA ホールディングス傘下の格安航空会社 (LCC) エアアジア・ジャパンは 26 日、9 月 1 日から 10 月 26 日までに計 604 便を欠航すると発表した。 「エアアジア(マレーシア)」との提携解消で、エアアジアから借りている 2 機を 9 月末までに返すよう求められ、飛行機が足りなくなるという。 欠航するのは、愛知県の中部空港発着の新千歳(札幌)、福岡、ソウル便。 10 月以降は、成田 - 新千歳(札幌)の一部と成田 - 那覇線も欠航する。 欠航便を予約済みの乗客は 1 万 4 千人おり、他社便への振り替えなどで対応するという。 (asahi = 7-26-13)


秋田新幹線が運転再開 一部で徐行、遅れの見込み

JR 東日本は 12 日、秋田・岩手両県の豪雨の影響で 9 日から運休していた秋田新幹線(盛岡 - 秋田間)の運転を再開した。 上りは午前 7 時 1 分秋田発東京行き「こまち 24 号」、下りは同 6 時 40 分仙台発秋田行きの「こまち 95 号」から再開、東京駅発の下りは同 6 時発秋田行き「こまち 71 号」から再開した。 一部区間で徐行運転するため、5 - 30 分ほど遅れる見込みという。 一方、土砂崩れで通行できなくなっていた岩手・秋田両県を結ぶ国道 46 号は、同日午前 7 時に通行止めが解除された。 (asahi = 8-12-13)

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秋田新幹線、11 日も再開見通し立たず 盛り土の崩壊で

JR 東日本は、9 日の豪雨の影響で運休している秋田新幹線(盛岡 - 秋田間)について、11 日朝も運転を見合わせると発表した。 いったんは「11 日始発から通常通り運転する」としていたが、新たに盛り土の崩壊を確認したという。 再開の見通しは立っていない。 (asahi = 8-10-13)


幻の戦闘機「震電」を思う 「平和考えるきっかけに」

1945 年 8 月、1 機の試作機が福岡の空を舞った。 「空の要塞(ようさい)」と呼ばれた米軍の B29 爆撃機に対抗するため、秘密裏に開発された局地戦闘機「震電(しんでん)」。 だが実戦配備に至らぬまま終戦を迎えた。 68 年たった今も、「幻の翼」への様々な思いが交錯する。

45 年 8 月 3 日、福岡市の席田(むしろだ)飛行場(現在の福岡空港)。 海軍との関係が深い「九州飛行機」でつくられた震電が試験飛行に成功した。 見守る技術者たちから歓声が上がった。 震電は、機体の後部にプロペラを配置し、前の翼よりも後ろの方が長い。 ふつうの戦闘機の前と後ろを逆にしたような構造だ。 (asahi = 8-4-13)


運転中、ハッキングされ急加速! 米ハッカー祭典で実演

【ラスベガス = 藤えりか】 車載システムがハッキングされ、運転中にハンドルやブレーキが利かなくなる - -。 こんな事態が現実味を帯びてきた。 米ラスベガスで開催中のハッカーの祭典「デフコン」で、トヨタ自動車のプリウスなどを例に専門家が手法を披露。 IT 化が進む車のセキュリティー強化に向け、注意を呼びかけた。

米国防高等研究計画局 (DARPA) の助成を受けた米ツイッター社の研究者チャーリー・ミラー氏らが、プリウスと米フォードのエスケープを例に発表した。 ミラー氏らは車載ソフトの解析で接続に成功。 運転手の意思に反して急加速やブレーキを利かせたり、ハンドルを動かしたりしたほか、エンジンを切り、残り少なかった燃料計を満タンとして表示させる様子などを映像とともに披露した。 (asahi = 8-4-13)


自転車保険、高まる関心 9,500 万円賠償判決きっかけ

自転車事故に備えた保険への関心が高まっている。 大きなきっかけは、女性をはねて重い障害を負わせた子どもの親に計 9,500 万円の高額賠償を命じた神戸地裁判決だ。 気軽に乗れる一方で、歩行者に対しては「凶器」になりかねない自転車。 深刻な事態を招かないためには、どうすればよいのか - -。

子どもに購入の親「怖い」

「事故を起こしてしまったときの賠償のことを考えると怖い。」 7 月中旬の大阪市都島区の自転車販売店「あさひ」。 小学 3 年の長女 (8) が夏休みに入ったばかりという 40 代の主婦はこう言い、水色の自転車を買った。

不安に思うようになった理由は、今月 4 日に神戸地裁であった民事訴訟の判決だ。 自転車で女性 (67) をはねて寝たきり状態にさせた少年 (15) = 当時小学 5 年 = の親に 9,500 万円の賠償を命じる内容だった。 親側は「日頃から危険な走行をしないよう指導していた」と主張したが、判決は監督義務を果たしていなかったと判断した。 (asahi = 8-3-13)


トヨタ営業利益 1.9 倍 4 - 6 月期、リーマン前水準に

【吉原宏樹】 トヨタ自動車の業績が、2008 年のリーマン・ショック前の水準にほぼ回復する。 2 日に発表した 13 年 4 - 6 月期決算で、本業のもうけを示す営業利益が過去 2 番目となり、14 年 3 月期の通期の予想を引き上げた。 13 年暦年のグループ世界生産台数も 1,012 万台に増やし、世界初の 1 千万台超えの実現を目指す。 4 - 6 月期の営業利益は 6,633 億円、純利益は過去最高の 5,621 億円と、いずれも前年の約 1.9 倍になった。 「アベノミクス」による円安の効果が大きく、営業利益を 2,600 億円押し上げた。

これを受けて通期の業績予想も引き上げ、営業利益を 5 月時点の予想より 1,400 億円多い 1 兆 9,400 億円とした。 リーマン前の過去最高益は 08 年 3 月期の 2 兆 2,703 億円。 今回の予想では、7 月以降の為替レートの想定を 1 ドル = 90 円の円高水準に据え置いているため、足元の 100 円前後の円安水準が続けば、利益はリーマン前に迫る。

グループ(ダイハツ工業、日野自動車を含む)の世界生産台数は、世界で初めて 1 千万台を超える計画を昨年に立てたが、尖閣諸島問題による中国販売の落ち込みで果たせなかった。 再挑戦になる今年は、当初計画から 18 万台上積みし、1,012 万台を掲げた。

トヨタ以外の国内メーカーでも、円安を追い風に好決算が相次いでいる。 営業利益は、乗用車メーカー 8 社のすべてで前年を上回った。 円安を受けて、国内で生産した車を輸出に回す割合が高いメーカーの改善が目立つ。 マツダの営業利益は前年と比べて 20 倍、富士重工業も 4 倍になった。 ただ、先行きにはリスクもはらむ。 インドなど新興国で景気が減速しており、海外販売が当初の見通しより振るわないためだ。 トヨタは今年の生産計画の見直しでも、消費が持ち直している国内は 27 万台増やしたが、海外は 9 万台減らした。

一方、トヨタは 2 日、14 年暦年の単体(トヨタ・レクサスブランドの合計)の世界生産台数を 940 万台とする方針を、主な部品メーカーに伝えた。 13 年の計画より 50 万台多い。 国内を 25 万台減の 310 万台、海外を 75 万台増の 630 万台とする。 トヨタは 15 年に単体でも 1 千万台超えを視野に入れるが、ものづくりの基盤を守るために必要という「国内生産 300 万台」の維持は危うくなっている。 (asahi = 8-3-13)


ご当地ナンバー「世田谷」など 10 地域追加 飛鳥は落選

【工藤隆治】地域ゆかりの地名を冠した自動車の「ご当地ナンバー」について、国土交通省は 2 日、「世田谷」、「平泉」など新たに 10 地域を追加すると発表した。 2014 年度中に導入する。

8 都県の 11 地域が国交省に申請していたが、対象地域内の自動車台数が 10 万台の基準に達しなかった「飛鳥ナンバー(奈良県)」は見送られた。 記者会見した太田昭宏国交相は「地域の特色を生かした活性化に期待している」と話した。 導入後、対象地域内で新たに自動車を登録すると、すべてご当地ナンバーをつけることになる。 今の車についているナンバーをご当地ナンバーに変えることもできる。 (asahi = 8-2-13)


JR のお盆ピーク、下り 10 日、上りは 17・18 日

JR 旅客 6 社は 26 日、お盆期間(8 月 9 日 - 18 日)の新幹線と在来線の指定席予約状況を発表した。 25 日までの予約数は計 301 万席と前年同期(8 月 10 日 - 19 日)比で 5% 増加。 混雑のピークは下りが 8 月 10 日、上りが同 17、18 両日になる見通し。

JR によると、今年は長期休暇が取りやすい曜日配列で、帰省や旅行客が増える見込み。 前年同期比で、東北、秋田、山形、上越、長野の各新幹線は 3 - 9% の増。 東海道、山陽の各新幹線も 5% の増。 九州新幹線は前年並み。 在来線では、中央線特急が 19% 増。 世界文化遺産になった富士山周辺や避暑地へ向かう人が多いという。 JR 北海道は、特急のエンジンから発火するなどトラブルが相次いだ影響で一部が運休、予約可能席数が前年同期比で 15.7% 減って混みやすい状態という。 (asahi = 7-26-13)


国産初ジェット旅客機、初飛行が延期に 部品調達に遅れ

三菱航空機(名古屋市)が開発中の国産初の小型ジェット旅客機「MRJ (ミツビシ・リージョナル・ジェット)」の初飛行が延期される見通しとなった。 海外製部品の調達の遅れなどが原因で、今年 10 - 12 月としていた飛行時期は来春以降にずれ込む。 2015 年後半の納入時期も遅れる可能性があり、今後の受注にも影を落としそうだ。

スケジュールの延期は 08 年に MRJ の事業化を決めて以降、今回で 3 度目。 当初は 11 年に初飛行、13 年の納入を目指していたが、主翼の素材変更や親会社である三菱重工業の工場の検査体制不備などで、これまでに 2 回、時期を延期している。 (asahi = 7-25-13)


新幹線の脱線対策に新型車両 ガード敷設簡単に JR 西

JR 西日本は 22 日、地震の際、新幹線が線路から大きく外れるのを防ぐ「逸脱防止ガード」の敷設をほぼ自動的にできる新型車両を開発し、導入したと発表した。 ガード設置はこれまで一晩当たり 120 メートルの区間だったが、自動化によって 500 メートルに上がったという。 開発費は約 4 億 3 千万円。 ガードははしごを寝かせたような形で、レール中央に設置。 JR 西によると、万が一脱線しても車輪がガードに引っかかり、飛び出すのを防ぐ。 (asahi = 7-23-13)


ホンダ、世界最高燃費の HV 「新型フィット」発表

ホンダは 19 日、燃費性能がガソリン 1 リットル当たり 36.4 キロと世界最高水準を達成したハイブリッド車 (HV) の新型「フィット」を 9 月上旬に発売すると発表した。 競合車種となるトヨタ自動車の HV 「アクア」の燃費を 1 キロ上回る。 排気量は 1,300cc と 1,500cc で構成し、ガソリン車も用意するが、主力はアクアと同じ 1,500cc の HV とする。 価格は最終調整中だが、HV は競合するアクア(169 万円から)並みに抑える見込み。 2 代目の現行車種は初代のデザインを踏襲したが、3 代目となる新型フィットは外装、内装とも大幅刷新した。

ホンダは 1999 年に HV 「インサイト」を発売以来、HV の販売を続けてきたが、今年 3 月末時点の世界販売累計台数は 108 万台と、トヨタの 512 万 5 千台に大きく水をあけられている。 ホンダは、今回のフィット HV の発売で、6 月に販売を開始した燃費性能 30 キロの「アコード HV (排気量 2,000cc)」と合わせ、HV 市場で独走状態だったトヨタを追撃する。

ホンダの開発担当者は、新型フィットについて、「形を変えるなどすれば、燃費 40 キロは達成できたが、バランスを考えた」と話している。 ホンダ独自のハイブリッドシステムを刷新。 「燃費も走行性能も大幅に進化させた(ホンダ)」自信作で "打倒トヨタ" を目指す。 バッテリーには高性能リチウムイオン電池を採用し、モーターの出力も高めるなど、現フィットの一部車種に採用している HV システムとは抜本的に刷新。 燃費は現行車種比で 38% 向上させた。 (sankei = 7-19-13)

新型ハイブリッドカーの発売相次ぐ ホンダは自信作「アコード」、プリウスより EV に接近

ホンダとスバル(富士重工業)からハイブリッドカー (HV) のニューモデルが相次ぎ登場した。 このうち、2013 年 6 月 21 日にホンダが発売したアコードハイブリッドはリッター当たり 30 キロ(JC08 モード)と、国内クラス最高はもちろん、車格を考慮すれば世界トップレベルの低燃費を実現した。

「近未来の HV はこうなる」という自信作

「ホンダが満を持して投入した。 それは CM の力の入れようからもわかる。(自動車メーカー関係者)」というアコードは、単なる HV モデルの追加ではない。 先行するトヨタ自動車のプリウスやアクアがガソリンエンジン主体の HV なのに対して、アコードは電気モーターが駆動力の中心で、エンジンは発電と高速クルージングといった限られた領域で補助的な役割を果たすに過ぎないのだ。

つまり、アコードはプリウスよりも電気自動車 (EV) に近く、航続距離は EV の日産リーフより格段に長い。 その意味でアコードは限りなく本物の EV に近づきながら、EV の現時点の弱点を克服した進化形モデルだ。 「近未来の HV はこうなる」という自信作をホンダが具現化したことで、日本の HV 開発競争は新局面に入ったと言ってよい。

東京都内の一般道でテストしたアコードは異次元の走りを見せた。 スタート時はもちろんエンジン停止状態で、アクセルぺダルを踏むと電気モーターが前輪を駆動する。 ここまではプリウスやアクアなどトヨタの HV と同じだ。 ところがアコードは、流れの速い幹線に出て、アクセルを踏み込み、加速してもモーター駆動のままだ。 トヨタの HV の EV モードが低速域に限られ、通常はエンジンとモーターの動力を組み合わせてタイヤを駆動するのに対し、アコードは時速 100 キロ程度の高速巡航とならない限り、ガソリンエンジンがタイヤを駆動することはない。

電気モーター駆動の自動車に共通の「近未来のテイスト」

正確に言うと、街中でアクセルを踏んで加速すると、アコードのエンジンは始動する。 しかし、エンジンは駆動モーターに電力を供給する発電機(発電モーター)を動かすためのもので、アクセルを放すとエンジンは即座に停止。 減速状態では回生ブレーキとなり、減速エネルギーを電力に変換してリチウムイオンバッテリーに蓄える。

アコードのエンジンが稼動しているか停止しているかは、ドライバーには全くといってよいほどわからない。 唯一、アクセルを踏むと、インストルメントパネルにエンジン稼動の表示が出るので、それと気づくにすぎない。 同様にアクセルを放すと表示が消えるので、エンジン停止と気づく。 インパネの表示がなければ、ドライバーはエンジンの存在にすら気づかないだろう。 もちろん、ドライバーはエンジンの存在を気にする必要がないから、インパネにはエンジン回転を示すタコメーターすら存在しない。

時速 100 キロ程度の高速巡航とならない限り、アコードは EV 走行なので、ドライバビリティー(運転性能)はプリウスよりも日産リーフに近い。 アクセルをわずかに踏むと、クルマが前輪から引っ張られるように力強く発進、加速するのは、低速域から高トルクを発生する電気モーターならではだ。 このトルクフルな動きは EV や燃料電池車といった電気モーター駆動の自動車に共通の「近未来のテイスト」に他ならない。 これだけの高トルクは、ガソリンエンジンでは大排気量車かターボ車でなければ味わえない。

事実、ホンダはアコードの駆動モーターのパフォーマンスを「3.0 リッターの V6 エンジンに匹敵する」と説明しているが、その瞬発力はガソリンエンジンを凌駕している。

アコードの燃費(リッター 30 キロ)はプリウスの 32.6 キロ、アクアの 35.4 キロには及ばないが、全長が 4.915 メートル、車重 1,620 キロという堂々たる車格を考えれば、HV として世界トップレベルといってよい。 ホンダ関係者によると「実用レベルでもリッター 24 キロは走る」とされ、容量 60 リットルのガソリンタンクを満タンにすれば 1,400 キロ以上走る計算になる。 航続距離が 228 キロ(JC08 モード)の日産リーフとは比較にならない。

スバルはトヨタからの技術供与ではなく、独自開発にこだわる

一方、スバルは富士重工初のハイブリット「スバル XV ハイブリッド」を発売したが、こちらはプリウスなどと同じ従来型の HV で、基本的にはエンジンの動力を電気モーターがアシストする。 このため燃費もリッター当たり 20 キロと、AWD (4 輪駆動)の SUV としてはクラストップレベルを誇るが、電気モーター主導のアコードには及ばない。

スバルはトヨタからの技術供与ではなく、独自開発にこだわり、「スバルらしい走行性能と燃費性能を実現した」という。 エンジンを停止させたまま、EV モードでも AWD 走行できるのは、いかにも「走り重視」のスバルらしい。 だが、駆動モーターのパフォーマンスは「軽自動車 1 台分(富士重工)」にとどまっており、ホンダとの哲学の違いは明らかだ。

このほか、マツダは年内にも同社初の HV を発売する。 マツダはトヨタからの技術供与で HV を開発するという。 ホンダらしくスポーティーで、パフォーマンスに優れたアコードの評価が高まれば、近未来の HV はガソリンエンジンの存在が薄れ、ますます EV に近づいていくのかもしれない。 (Jcast = 7-14-13)


政府機後継、B777 型機が軸 = 19 年度導入で調整

政府は 19 日、政府専用機ボーイング 747-400 型機 2 機を 2018 年度で退役させ、19 年度から後継機に切り替える方向で調整に入った。 後継機は、747 と同じ大型機ながら燃費の良いボーイング 777 型機が軸となっており、8 月末の 14 年度概算要求に向け、機種や機数の検討を急ぐ方針だ。

政府専用機は 1991 年に導入され、皇室や首相の海外訪問に使用されている。 緊急事態の際の在外邦人の輸送も目的の一つで、今年 1 月のアルジェリア人質事件の際は犠牲者の遺体の搬送にも使われた。 防衛省が運用を担当し、機体整備は日本航空に委託してきた。 しかし、日航が燃費の悪い 747 の運航を 10 年度で打ち切り、機体整備からも撤退する方針を決めたため、政府は機種の変更を迫られていた。

菅義偉官房長官は 19 日の記者会見で「関係省庁と鋭意検討している。 もっと機動的なものがいいという意見もある。」と述べ、大型機 2 機の態勢を継続するかどうかも含めて検討を進めていると説明した。 別の政府高官は「777 が有力だ」と語った。 (jiji = 7-19-13)


屋根以外フィルムですっぽり 「ななつ星」客車運び込み

【土屋亮】 システムトラブルで在来線の運休や遅れが相次いだ JR 九州は 18 日朝、10 月から走る豪華寝台列車「ななつ星」の客車 7 両のうち 4 両を、製造した山口県下松(くだまつ)市の日立製作所笠戸事業所で報道陣に公開した。 3 泊 4 日の 2 人利用で 1 人あたり 56 万 6 千円の最高級客室「デラックススイート A」が入る 7 号車などの車体は、傷がつかないよう、屋根をのぞいて黒いフィルムにすっぽりと覆われている。 「古代漆」をイメージしたという深い赤色の外装は見えない。 ガラス窓も中からフィルムで覆われ、内装もうかがえない。

午前 10 時、機関車に引っ張られて、内装の仕上げや最終チェックをする小倉総合車両センター(北九州市)に向けて出発した。 ラウンジカーやダイニングカーなど残り 3 両は、小倉の車両センターでつくられており、今後は 7 両で走行試験などをする。 ななつ星の機関車はひと足早く川崎重工業兵庫工場(神戸市)で完成し、3 日に九州に運びこまれた。 (asahi = 7-19-13)

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「ななつ星」専用機関車、大分到着 漆の外観はまだ内緒

【土屋亮】 JR 九州が 10 月から走らせる九州一周の豪華寝台列車「ななつ星」の機関車が完成し、3 日昼、大分駅に到着した。 傷がつかないように黒いフィルムで覆われているため、「古代漆」をイメージした赤い外観は、見えずじまい。 JR 九州は「別の機会にお披露目する」という。 機関車は、川崎重工業兵庫工場(神戸市)でつくられた。 別の機関車にひっぱられて 2 日に神戸を発ち、九州に向かっていた。 客室への振動や騒音を抑える特別仕様になっている。 大分車両センター(大分市)などで走行試験をして、10 月 15 日のデビューにそなえる。 (asahi = 7-3-13)


カローラ HV はリッター 33 キロ プリウス超える燃費

トヨタ自動車が 8 月に投入する「カローラ」のハイブリッド車 (HV) の燃費性能が、ガソリン 1 リットル当たり 33.0 キロになることが分かった。 小型 HV 「アクア」の 35.4 キロには及ばないものの、「プリウス」の 32.6 キロを上回る。 トヨタは価格設定も含め、プリウスとアクアの中間と位置づけて、国内販売テコ入れの柱にする。 関係者によると、8 月 6 日にセダンの「カローラ アクシオ」とワゴンの「カローラ フィールダー」の 2 車種の HV を発売する。 価格はアクシオが 190 万円程度、フィールダーが 210 万円弱となる見通しで、217 万円からのプリウスよりは安くなる。

カローラは、国内新車販売で 2001 年まで 33 年連続 1 位に輝いた大衆車の代名詞的存在。 カローラに HV が加わることで、HV の普及が加速しそうだ。 当初は昨年 5 月の全面改良に合わせて HV モデルの導入を検討していたが、アクアが予想以上の売れ行きだったため、基幹部品の余裕がなくなり、導入を延期していた。 (asahi = 7-14-13)


電池容量 1.4 倍、電動アシスト自転車発売へ

ヤマハ発動機は、電動アシスト自転車「PAS (パス) ナチュラ XL」を 30 日発売する。 搭載するリチウムイオン電池の容量をこれまでのシリーズ最大モデルの 1.4 倍に増やし、ペダルをこぐ力を補助する距離も、最大約 45km から同約 66km に伸ばした。 フル充電にかかる時間も従来より 3 時間少ない約 3.5 時間に短縮した。 税込み 12 万 5,000 円。 (asahi = 7-14-13)


次世代タクシーはロンドン風? 背高タイプにトヨタ一新

街行くタクシーの姿が大きく変わりそうだ。 タクシー車では圧倒的な最大手のトヨタ自動車が、代表格「コンフォート」などのセダンの生産をやめ、高齢者や障害者も乗りやすい背高の「ユニバーサルデザイン (UD) 車」に切り替える見通しになった。 ロンドンのタクシーのような外観を検討中とみられる。

トヨタは、タクシー向けセダンとして、LP ガス車の「コンフォート」、「クラウンコンフォート」、「クラウンセダン」を販売。 法人・個人のタクシーやハイヤー 24 万 5 千台(昨年 3 月末)のうち 20 万 4 千台は燃料費が安い LP ガス車で、大半をトヨタ車が占める。 関係者によると、トヨタは最近、全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)に、2018 年初めまでに LP ガス車の生産をやめ、それより前に次世代車の販売を始める方針を伝えた。 (asahi = 7-11-13)


iPhone で電池残量表示 電動バイクが年末発売へ

電動バイクなどを手がけるベンチャー企業のテラモーターズ(東京都渋谷区)は、米アップルのスマートフォン「iPhone (アイフォーン)」をメーターのそばにつなぎ、電池の残量などを表示できる電動バイク「A4000i」を年末に売り出す。 10 日、発表した。

リチウムイオン電池を使い、約 4 時間半のフル充電で約 65km 走行できる。 税込み 45 万円。 家庭用の電源で充電でき、災害時などには蓄電池としても使える。 ベトナムで 2 千台を限定生産し、排ガス対策が課題となっている東南アジアなどにも売り込む。 スマホと連動しないモデルも来春発売する。 (asahi = 7-11-13)


国内最後の乗用車工場? ホンダ、埼玉で生産開始

【豊岡亮、木村裕明】 ホンダが建設を進めてきた埼玉製作所寄居工場(埼玉県寄居町)が 9 日、生産を始めた。 自動車業界では、日本の自動車メーカーが国内につくる最後の乗用車工場ともいわれる。 各社が海外に生産をシフトする動きは変わりそうにない。

新工場は 9 月に発売予定の主力の新型フィットやミニバンのフリードをつくる小型車の専用工場になる。 エンジンを生産する小川工場(同県小川町)から約 2 キロの場所に立地し、年産能力は 25 万台で、省エネにも配慮した最新鋭工場だ。 ホンダが、国内に小型車の専用工場をつくるのは、国内市場が小型車中心になっているためだ。 (asahi = 7-10-13)


アシアナ機事故で韓国キャスター失言 中国で反発広がる

【ソウル = 中野晃、上海 = 金順姫】 米サンフランシスコ国際空港でアシアナ航空機が着陸に失敗した事故で中国人 2 人が死亡したことに関し、韓国の放送キャスターが「韓国人でなくてよかった」と発言。 中国のソーシャルメディアで反発が広がり、韓国政府が事態収拾に躍起になっている。 事故当日の 7 日、東亜日報系の放送局「チャンネル A」の報道特番で、男性キャスターが「韓国人でなくて中国人 2 人が死者と確認されたとの情報が入った。 我々からすれば幸運だったとも言える。」と述べた。

韓国のネット上で「ひどい」、「キャスター失格」と反発を浴び、同社はその日のうちに報道資料で釈明した。 騒動は中国にも伝わり、中国版ツイッター・微博では「命の重さに国は関係ない。 誰の死にも心を痛めるのが人の道だろう。」 「不幸にも亡くなった中国人学生 2 人に謝れ。 全中国人に謝れ。」といった非難が相次いだ。 同社社長が 8 日、微博を通じて「軽率な発言だった」と謝罪したが、反発は膨らむばかり。

中韓関係への影響を懸念してか、韓国外交省の報道官が 9 日の定例会見で言及。 「すべての人の命は尊く、国籍も人種も関係ない。 (問題発言で)当該の報道機関も謝罪しており、中国の国民のみなさんは謝罪を受けとめて欲しい。」と訴えた。 (asahi = 7-9-13)

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なぜアシアナ航空事故機乗客の半数は中国人だったのか?

米国やカナダの都市に向かう多くの中国人旅行者にとって、ソウルは重要な中継地となっている。 その理由には、魅力的な航空運賃と中国発の太平洋横断直行便の不足がある。 米サンフランシスコ空港で着陸に失敗した韓国・アシアナ航空ソウル発の便の乗客291人のうち、約半数に当たる 141 人が中国人だったのもそのためだ。 韓国外務省によると、6 日の事故で死亡した乗客 2 人はいずれも中国人の女性だった。

韓国の首都ソウルは過去数十年、アジアと北米を行き来する乗客にとって重要な役割を果たしてきた。 韓国航空最大手の大韓航空は長年、アジアの航空会社の中で最も多くの北米の都市行きの便を提供しており、それは今も変わらない。 一方 1990 年代初めまでは、2010 年に米デルタ航空と合併した米ノースウエスト航空がソウルを主要なハブ空港として運航していた。

しかし、アジア地域の航空会社の多くが太平洋横断便を拡充するにつれ、乗客の獲得競争は激化した。 だが、北米便の需要の急増にもかかわらず、主に国営の中国の国内航空会社による路線拡充は遅れており、それが慢性的な航空運賃の値上がりを招いている。 また米国 - 中国便は二国間条約によって厳しく規制されており、航空会社が必要に応じてサービスを向上させるのを難しくしている。

さらに、中国からの太平洋横断直行便のほとんどは北京か上海発だ。 中国南部・広州発の便もあるが、本数は限られている。 そのため、その他の地域の中国人客が北米に行くには、いずれかの都市を経由するしかない。

中国からの乗り継ぎ客の需要増加などに対応するため、韓国と日本の航空会社は過去数年、中国便を大幅に増加してきた。 大韓航空は現在ソウルのハブ空港から中国本土の 22 都市に、アシアナ航空は 21 都市にそれぞれ運航しており、中国国内で運営する最大手の航空会社に数えられている。 一方、日本航空は中国本土 15 都市に運航している。 (The Wall Street Journal = 7-8-13)


悪路もスイスイ新型三輪車 ヤマハ発動機、前輪が二輪

【鳴澤大】 ヤマハ発動機は、新型三輪車「LMW」を来年発売する。 東京都内で 3 日開いた事業説明会で発表した。 悪路用四輪バギーなども手がける同社が最新技術を投入した。 11 月の東京モーターショーでお披露目する。

開発したのは前輪が二輪、後輪が一輪のタイプ。 価格や詳しい性能は非公表だが、二輪車のような一体感、機動性を持ちつつ、砂利道やぬれた路面でも安定して走れる。 発売国は未定。 価格は 100 万円以下で、二輪免許で運転できるようになる見通しだという。 さらに「マイクロ四輪車」も開発中で、東京モーターショーに出展する予定を明らかにした。 柳弘之社長は「いずれも売れそうな市場であればどこ(の国)でも投入する」と意気込む。 (asahi = 7-8-13)


VW、世界首位狙い「設計革命」 多様性と量産を両立

【独ウォルフスブルク = 木村裕明】 欧州の自動車最大手、独フォルクスワーゲン (VW) が 2018 年に販売台数で世界首位に立つ目標に向けて攻勢を強めている。 世界各地のニーズを満たす多様な車を開発しながら、量産によるコスト削減も同時に進める。 快進撃の原動力は、この二兎を追う車の「設計革命」にあった。

自由度残して共通化

ドイツ中部のウォルフスブルク市。 5 万 2 千人の従業員が働く世界最大級の本社工場を訪ねると、看板車種「ゴルフ」の新型モデルの生産が本格化していた。 連日 3 交代の勤務で、フル操業が続く。 6 月下旬に日本で発売された車も、この工場から輸出する。

新型ゴルフは、4 年ぶりに全面改良した 7 代目。 世界で売る主力の小型車だ。 昨年 9 月にドイツで発売してから、欧州ではその後の半年で 15 万台強を受注するヒットとなった。 「欧州カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたゴルフは我々のシンボル。 大変大きな意味を持つ車だ。」 VW のビンターコルン会長は力を込める。

かつて伊アルファロメオのデザインで名声を博したイタリア人、ワルター・マリア・デ・シルバ氏の手によるデザインも注目を集めるが、業界の関心はむしろ、外から見えない部分の車の進化にある。 7 代目ゴルフを皮切りに、VW が新型車の開発・生産のプロセスの大刷新に踏み出したからだ。 まずは、今後数年間に投入する小型から中型の乗用車を対象に、アクセルペダルと前輪の車軸との距離、エンジンを積む位置や角度を共通化する。 開発・生産コストの 6 割がかかるこの部分の設計の共通化で、開発効率の大幅アップをねらう。

一方、前後・左右の車輪の間の距離などは、ある程度自由に変えられるようにしてある。 共通にする部分でコストを抑えつつ、小型車からミニバン、スポーツ用多目的車まで多様な車をつくり分けられる自由度を残しておくためだ。 VW はこうした設計手法を「モジュラー・トランスバース・マトリックス(独語略で MQB)」と呼ぶ。 日本語に訳せば「モジュール型横置き用積み木箱」。 複数の部品を一体化した「モジュール」という部品の固まりを、積み木を組み合わせるように組み立てて車をつくる新しい手法だ。

今後は、エンジンを横向きに置く前輪駆動車の大半をこの手法で生産する。 18 年に世界販売 1 千万台を目指す中、16 年には MQB で 400 万台をつくる。 VW ブランドの小型車ポロから中型車パサートまで幅広いサイズの車を統一したルールでつくれるだけでなく、グループの独アウディの小型車 A3、シュコダ社(チェコ)やセアト社(スペイン)の新興国向けの新型車にも展開する。 エンジンの載せ方の種類が激減し、エンジン周りの部品の種類も大幅に減るという。

競合他社も改革着手

世界の自動車各社は 1990 年代以降、車の土台である車台を集約し、複数の車種で共通化することでコスト削減を進めてきた。 しかし、新興国市場の拡大で高級車から低価格車まで幅広い品ぞろえが求められるようになり、原価低減と製品の多様性を両立できる、より高度な設計手法が必要になってきた。

VW はこの難題を MQB で解決し、国際競争をリードしようと狙う。 一方、日本勢はこれまで市場ごとのニーズに応じて車をつくり分け、その度に部品を設計することが多かった。 個別最適に陥りがちだが、膨らむコストは現場のカイゼンで抑えてきた。 だが、今後は「規模の経済」を追う VW の設計思想にどう対抗していくかが問われる。

VW は傘下に 12 ブランド、280 車種を抱える。 クリスチャン・クリングラー取締役は「こういう企業構造だからこそ MQB には意味がある」と話す。 ブランドごとのデザインの多様性を守りつつ、客から見えない部分で相乗効果を上げようとする。 MQB の車種をつくる工場では、生産工程や設備、ロボットも世界的に共通化するので、生産コストも大幅に下がる。 一つのラインでサイズの違う複数の車種をつくれるようにするため、需要の変動にも対応しやすい。 VW は中国やブラジル、インドなどにも順次、MQB 対応の工場を広げていく計画だ。

VW の 2012 年 12 月期の純利益は前年比 38.5% 増の 218 億ユーロ(約 2 兆 8 千億円)。 欧州市場の低迷が続く中、過去最高を塗り替えた。 販売台数もトヨタ自動車、米ゼネラル・モーターズ (GM) に次ぐ 3 位。 MQB を武器に成長を続け、欧州勢でひとり気を吐く。 利益水準ではすでに世界の自動車メーカーのトップを走り、日本勢にとっても手ごわい存在になりつつある。

トヨタや日産自動車などライバルにも設計改革の取り組みが広がる。 トヨタの林南八技監は「多様な好みに応えながら、ロスを減らしたい。 取り組みはまだ緒についたばかり。 馬力をあげてやっていきたい。」と話す。 (asahi = 7-7-13)


ホンダ、GM と提携へ エコカーなどの環境分野で

【ニューヨーク = 畑中徹】 ホンダと米ゼネラル・モーターズ (GM) は、燃料電池車など次世代の環境技術で提携する方針を固めた。 両社が 2 日午前 9 時(日本時間同日午後 10 時)に、ニューヨーク市内で記者会見して内容を発表する。 次世代エコカーなどの環境技術を中心に、自動車業界の国際的な提携関係が一段と深まりそうだ。

今年 1 月には、排ガスを出さない燃料電池車の普及に向けて、トヨタ自動車が独 BMW とモーターやバッテリーの基本システムなどで共同開発を進めると発表した。 世界の自動車メーカーは、燃料電池車など環境分野を中心に技術の協力を進めている。 こうした中、ホンダは次世代エコカー開発で、他社と提携せずに独自路線を貫いてきたが、今回の GM との提携で、これまでの戦略を転換することになりそうだ。 (asahi = 7-2-13)