水資源の外資買収広がる警戒 13 道県条例制定や検討

【田内康介】 外国資本の森林買収に危機感が高まる中、水資源保護を目的に土地買収の監視を強める条例を 4 道県が制定し、9 県が検討していることが分かった。 ただ、実際に水資源目的の買収を確認した自治体は一つもない。

日本の企業や不動産が中国資本に次々買収され、国内で中国の経済力への不安が強まる中、森林の地下水も奪われて枯渇するのではないかという危機感が政界やメディアで広がったのは約 3 年前のことだ。  「中国、日本の水源地物色?」、「北海道の森林が香港に買われた」などの報道が相次ぎ、2010 年には林野庁が外資による森林買収を約 30 件確認したと発表した。

北海道が今年 3 月に全国で初めて条例を成立させ、埼玉、群馬、茨城 3 県が続いた。 いずれも水源地域の土地売買の事前届け出を国内外問わず義務づけ、違反して是正勧告に従わなければ企業や個人名を公表する内容。 上田清司・埼玉県知事は「外資による取得に制限がかかる」としている。 (asahi = 1-2-13)


有田焼、デジタルの技で新風 おせち器、設計ミリ単位

【末崎毅】 正月には欠かせないおせちの器を、400 年の歴史がある有田焼の窯元が、最先端のデジタルデザイン技術を駆使してつくり上げた。 手づくりでは難しい精緻なデザインが人気を呼び、有田焼の伝統に新たな風を吹き込んでいる。

5 段の手まり形も

黒豆やアワビの煮物といった約 60 種類の具材の彩りが映える、7 段重ねの真っ白な有田焼の重箱。 最先端ファッションに定評がある百貨店・伊勢丹の「2013 年おせちカタログ」の巻頭を飾った。 李荘窯業所(佐賀県有田町)の重箱がカタログの巻頭に採用されたのは、12 年に続いて 2 度目。 いずれも高級日本料理店「六雁(むつかり)」の特製おせちが入る伊勢丹限定の逸品だ。 9 万円前後と高価だが、80 セットは 2 年ともすぐに売り切れた。

だが、器を手がけた李荘窯業所の寺内信二さん (50) は「こういう器はなるべく避けたいんです。 同業者にはよくやるね、と言われます。」と打ち明ける。 白い磁器の重箱は、22 センチ四方の 6 段目が 4 列 x 4 列の 16 マスに仕切られる。 神棚への供えものをイメージした洗練されたデザインに仕切りがあるのは、「隣り合う料理に味が移らないように」という、六雁からの強い求めだった。

寺内さんが渋ったのは、この仕切りが器を割れやすくするためだ。 焼き物は陶土に水をまぜたものを石膏(せっこう)型に流してつくるが、土は乾くと縮む。 型から抜くとき、仕切りの交差部分が型に引っかかりやすく、割れてしまうおそれがある。 人の手で、ミリ単位まで精度よくつくるのは難しい。 型や生地をつくる担当者との間で試作を繰り返せば、やりとりだけで時間がかかってしまう。

この難題を解決したのがコンピューターだ。 焼き上がりの変形を予測して、焼き上がった時に仕切りの上部の厚さが 3 ミリ、底に接する下部は 5 ミリになるように設計した。 ミリ単位の傾斜をつけることで、生地を型から外れやすくした。 このデータをもとに、機械で石膏の型を削りだす。 手作業だと試作の繰り返しで完成まで 1 カ月ほどかかるが、約 1 週間でできあがる早さも魅力の一つだ。

寺内さんが手がけた 12 年のおせちの器は、手まりのような球状の 5 段重ねの重箱だった。 手作業だと型を削るだけでも難しいが、デジタルデザインの一歩進んだ技で、焼き上がりにゆがんでしまいがちな丸みを滑らかにすることができた。

国内不振、脱却狙う

デジタルデータがあれば取引先からの細かい要望にすぐ対応でき、同じデザインでもう一度つくるのも簡単だ。 型を保管する倉庫もいらない。 効率よく、新たな作品をつくり出せるため、デジタルデザインは自動車部品などのものづくり現場では早くから採り入れられてきた。 しかし、有田焼で研究が始まったのは 10 年ほど前。 一ノ瀬弘道・佐賀県窯業技術センター副所長は「工業製品でありながら美術工芸品でもある。 手づくりが売りのため、なかなか導入されなかった。」と振り返る。

伝統ある有田焼の窯元の背中を押した一因は、国内市場の不振だ。 料亭やホテル向けの業務用が伸びず、強化ガラスやシリコーン製との競争も激しい。 財務省佐賀財務事務所によると、一部の大手会社をのぞく主要 3 組合の 11 年の売上高は 20 億円で、ピークの 1990 年の 13% に落ちこんだ。 寺内さんは新年にも、スペインの有名レストランと組み、新たな食器づくりに挑む。 「欧州のシェフの感性と、有田焼の伝統技術をあわせたものを形にしたい。」 現代技術とコラボし、海外に活路を探る。

挑戦が伝統磨く

〈記者の視点〉 デジタルと言えば「0 と 1 の世界」、「大量複製」のイメージが強く、味気ないかと思っていた。 しかし、デジタルデザイン技術でつくった手まり形の器は、思わず見とれてしまうほどの美しさがあった。 有田焼の挑戦が受け入れられたことは、おせちの売れ行きが示していると思う。

100 円ショップで安い器が手に入る時代だが、春の大型連休に毎年ある「有田陶器市」には、100 万人の人出がある。 器が人をひきつける力は弱まっていないはずだ。 新しい挑戦で、産地のにぎわいを取り戻して欲しい。 (asahi = 12-31-12)


県民手帳、隠れたベストセラー 40 県で計 80 万部発行

【山下奈緒子】歳末のこの時期、売れ続けている手帳がある。 全国 40 県で発行されている「県民手帳」。 毎年の合計発行数が約 80 万冊に上る、ひそかなベストセラーだ。

県民手帳は各県の統計協会や県などが発行。 スケジュール欄に加え、地元の地図や統計、公共施設の連絡先のほか、特産品や過去 10 年間の天気まで載せているものもある。 300 - 900 円で北海道、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫、三重を除く 40 県で出している。 各発行元によると、長野の 5 万 5 千冊が最多で、茨城、新潟、群馬も 4 万冊規模だ。 合計は約 80 万冊になる。 (asahi = 12-29-12)


合掌集落、観光客のマイカー乗り入れ規制へ

世界文化遺産の合掌集落がある岐阜・白川郷(岐阜県白川村)の住民らは 23 日、合掌家屋が集中する白川村荻町地区へ、マイカーを乗り入れないよう、観光客に呼びかけることを決めた。 合掌家屋が集中する約 1 キロの村道を対象に 2014 年 4 月から実施の予定で、のどかな田園の景観を保つのが目的。 村は全面的に協力する考えだ。

荻町地区には、100 を超える合掌家屋があり、4 月から 11 月の観光シーズンには多くのマイカーが集中する。 こうした観光客目当てに、地区内には3 か所の民間有料駐車場ができ、行き交う車が景観を損なうとの指摘が住民の間から上がっていた。

同地区では、すでに2007 年度から観光客の車両の自主規制に取り組んでおり、今年度はシーズン中の第 3 金、土曜日の計約 20 回、午前 9 時から午後 4 時にかけて通行止めにしている。 新年度は土日やゴールデンウイークなどを中心に通行止めの回数を年間 80 日程度に増やす予定という。 白川村の成原茂村長は「住民の大英断に感謝する。 今後、いろいろな審議会などとの調整が出てくるが、全面的に協力する。」と話している。 (yomiuri = 12-24-12)


小さな明かり、大きな思い出 福岡でキャンドルナイト

かわいらしい天使が、クリスマスツリーをはさんで向かい合う。 1 万本のろうそくで夜を彩る「うみなかクリスマス・キャンドルナイト」が 22 日、福岡市東区の海の中道海浜公園で始まった。 24 日まで。

今年は初めて図柄を公募し、福岡市西区の九州大 3 年、山口美波さん (22) の作品が選ばれた。 ろうそくは赤、緑、黄色など 8 色の薄い紙に覆われている。日暮れにあわせて、約 100 人のボランティアが 100 メートル四方に広がるろうそくに火をともすと、幻想的な絵が浮かび上がった。 訪れたカップルや家族連れたちが、写真を撮って楽しんでいた。 (asahi = 12-23-12)


ご当地うどん勢ぞろい 京都に「うどん博物館」オープン

【籏智広太】 京都・祇園で 22 日、「うどんミュージアム(博物館)」がオープンした。 讃岐(香川)や稲庭(秋田)など全国のご当地うどん 26 種を食べ比べできる「味覚で楽しむ博物館」で、高級料亭だった京町家を改築した。

館内には 100 席あり、うどんのレプリカを見て注文。 食べると魔よけになるとされる「耳うどん(栃木)」や、もずくたっぷりの「もずくうどん(沖縄)」、ホルモンが入った「かすうどん(大阪)」なども用意。 来春までに「水沢うどん(群馬)」を含む 45 種類をそろえるという。 価格は 1 杯 400 - 1,200 円。 いろんなうどんを楽しめるよう、小さめのサイズで販売する。 有名うどん店が軒をそろえるわけではないが、現地から提供された麺や具材を調理しているという。 うどんのだしに使う昆布やかつお節なども展示している。 (asahi = 12-22-12)


11 月の来日外国人、震災前より 2% 増 5 カ月ぶり増加

【木村聡史】 11 月に観光や仕事で来日した外国人は 64 万 9 千人(推計値)で東日本大震災前の 2010 年 11 月より 2.2% 増えた。 日本政府観光局が 21 日発表した。 震災前を上回るのは 6 月以来。 中国は引き続き減っているが、台湾や東南アジアが伸びた。

中国(香港のぞく)は 5 万 2 千人と、10 年 11 月より 24% 減った。 9 月半ば以降、尖閣諸島問題の影響で減った団体ツアー客が戻らず、3 カ月連続で震災前を大きく下回っている。 一方、台湾は 12 万 3,300 人と同 37.9% 増え、11 月では過去最高だった。 格安航空会社 (LCC) など新規就航が増えて日本に来やすくなったため。 タイやマレーシア、ベトナムも 11 月の過去最高を更新した。 (asahi = 12-21-12)


東京タワー・出雲日御碕など登録文化財に 文化審答申

文化審議会は 14 日、アールデコ風の意匠が見られる酒造家の旧岡田家住宅(北海道旭川市)、建設当時、自立式鉄塔として世界一の高さになった東京タワー(東京都港区)、知多半島で最大級の浄土真宗寺院本堂をもつ蓮慶寺(れんけいじ、愛知県阿久比町)、日本一高い現役灯台の出雲日御碕(ひのみさき)灯台(島根県出雲市)、昭和初期の面影を伝える瀟洒な医院建築である高木医院(熊本県菊池市)など 126 件の建造物を登録有形文化財にするよう、文部科学相に答申した。

岡田家住宅は、軍都として栄えた旭川の市街地に 1933 年に建てられた。 玄関のステンドグラスや階段まわりの縦長窓に意匠をこらし、瀟洒な内観になっている。 東京タワーは、テレビ各局の電波塔を集約するため、通天閣建設などにもかかわった建築構造家の内藤多仲(たちゅう)の設計指導で、1958 年に建設された。 高さ 333 メートルで、エッフェル塔をしのいだ。 (asahi = 12-14-12)


岩国錦帯橋空港、13 日開港 米軍共用、国内 2 カ所目

米軍岩国基地(山口県岩国市)の滑走路を利用した岩国錦帯橋空港が 13 日開港する。 米軍との軍民共用空港は、国内では三沢(青森県)に次いで 2 番目。 岩国での民間定期便の離着陸は 48 年ぶりだ。 「悲願達成」との声がある一方、米軍再編のなかで進んだ開港に、冷めた見方もある。 (asahi = 12-12-12)


北朝鮮ミサイル情報、数分で伝達 政府、全国の自治体に

北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射予告を踏まえ、野田政権は米軍の早期警戒衛星 (SEW) による発射情報を得て数分以内に、全国の自治体に情報を伝える方針を決めた。 4 月の発射の際、自治体への情報伝達が遅れたため、伝達方式を改める。 内閣官房は 5 日、都道府県の危機管理担当者らを集めて説明した。

前回のミサイル発射では、日本政府は SEW 情報に加え、日本のレーダーで確認できない限り自治体には知らせないことにしていた。 このため、防衛省が SEW 情報を確認してから約 40 分間、日本のレーダーで確認できなかったために首相官邸の対策室や自治体に情報が伝わらず、韓国政府が発射を発表後、日本政府が「発射を確認していない」と一報を流し、自治体が混乱した。

今回は日本のレーダーで探知できなくても、官邸には SEW 情報が即座に伝わるような運用に改めた。 自治体や放送局にも内閣官房の緊急情報システム「エムネット」を通じ、数分以内に「飛翔体が発射されたが我が国に向かうものはなく詳細は確認中」などと配信することにした。 (asahi = 12-5-12)

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北ミサイル上空通過の恐れ、沖縄困惑と怒り

北朝鮮が 1 日発表した突然の「人工衛星打ち上げ」。 事実上の弾道ミサイルとみられ、上空を通過する恐れがある沖縄県では発射予告に戸惑いの声が広がった。 北朝鮮側が示した発射期間は 10 - 22 日で、防衛省・自衛隊は情報収集などに追われた。

沖縄では今年 4 月のミサイル発射で、飛行コース下の地域はミサイルからの落下物の心配があるとして自衛隊の迎撃態勢が敷かれた。 石垣市の小底嗣洋市議は、「北朝鮮の示威行為だろうが、巻き込まれてはかなわない」と憤った。 与那国町議の崎原孫吉さんは、「驚いた。 状況がよく分からず心配している。」と語った。

北朝鮮が 2009 年と今年 4 月にミサイルを発射した際には、発射情報を巡って発表の誤りや遅れなどで混乱した自衛隊では、「今度こそ失敗は許されない」と幹部が表情を引き締めた。 ただ、北朝鮮がこのタイミングでミサイルを発射する意図が分からないとして、幹部は「軍の動きについて分析を急ぐ必要がある」と語った。 (yomiuri = 12-2-12)


京都の高級町家、海外から続々 アラブの王族も宿泊

【竹田真志夫】 伝統的な京都の町家を改装した宿泊施設が海外の富裕層の観光客に人気だ。 行楽シーズン中は 1 人 1 泊 2 万円以上が相場で、1 棟で 10 万円以上するものもあるが、にぎわっている。 景気回復が遅れる中、旅行業界は海外の富裕層を新たなターゲットに定めている。

八坂神社や知恩院にほど近い京都市東山区の新門前通。 古都の情緒が漂う祇園の一角に町家がたたずむ。 のべ 137 平方メートルの 2 階建て。 和室 3 室に高級な槙(まき)風呂、日本庭園を備える。 9 月末から 10 月初めに米メリーランド州から京都観光に来て宿泊した建築家エイミー・ガードナーさん (53) は、「無駄なところがまったくない住宅だ」と感動した様子。

米国防総省勤務の夫 (50) が「日本の伝統建築に触れたい」とインターネットで見つけ、パリの友人夫妻を誘って 4 人で 1 週間借りた。 値段は、4 人で 1 泊計 6 万 7 千円。 食事は付かないが、周辺の老舗料理店の仕出しも頼める。 桜と紅葉の時期は 1 泊 11 万 7 千円に上がるが、ガードナーさんは「高くても気にならない。」

この町家を仲介している会社「庵(いおり)」は現在、市内で 12 棟を家主から借り受ける。 最も高い町家は鴨川沿いの川床付きの物件で、観光シーズンは 8 人で1泊計 19 万 5 千円。 それでも客足が途絶えないという。 梶浦秀樹社長 (56) は旧国鉄職員などを経て 2003 年に町家の提供を始めた。 客の約半数は海外の富裕層で、アラブの王族やヨーロッパの貴族も泊まりに来たことがある。 家主の側には、住みにくくなったためマンションなどに住んでいるものの、「愛着があって売りたくない」などの事情があるという。 (asahi = 11-25-12)


夜の校舎、笑顔で照らす 「博多千年煌夜」始まる

博多のまちの神社仏閣や小学校をライトアップする、博多ライトアップウォーク 2012 「博多千年煌夜」が 21 日、福岡市博多区で始まった。 ライトアップされたのは櫛田神社など計 8 会場。 博多小では竹灯籠が展示されたほか、校舎の壁面には映像が映し出され、多くの人を魅了した。 普段とは違う表情を見せる校舎に、博多小 4 年村山日菜乃さん (10) は「いろいろな色になっていてすごいと思った。 きれいだった。」 25 日まで。 (asahi = 11-23-12)



太陽光発電への屋根貸し、10 都県が参入・仲介

【中川透】 太陽光発電のために屋根を企業に貸す「屋根貸し」を、東京や福岡などの 10 都県が始めたことがわかった。 学校や住宅など公共施設の屋根を貸し出したり、自治体が民間施設の屋根を発電会社に仲介したりしている。 7 月に再生可能エネルギーの固定価格全量買い取り制度がスタートしたのを機に、自治体も発電への関与を強め始めた。

自治体の公表資料や取材をもとに朝日新聞が集計した。 県立高校や県営住宅などの屋根を太陽光パネル設置のために貸すのは、栃木、埼玉、神奈川、長野、岐阜、兵庫、福岡、佐賀の 8 県。 屋根を借りたい企業と貸したい施設を仲介する「マッチング」は群馬、東京、神奈川、佐賀の 4 都県が始めた。 佐賀と神奈川の 2 県は両方を進める。 原発事故後、自治体は発電への関心を高め、温暖化対策にもなるため広がっている。

公共施設の屋根を貸す 8 県分の面積を集計すると計 84 施設で約 16 万平方メートル。 過去の設置例から推計すると 2 千 - 3 千世帯の家庭の年間使用量を生む計算だ。 (asahi = 11-18-12)


うまいコメ、列島激戦 北海道・九州産からトップ 3

コメの勢力図が変わりつつある。 業界団体の食味検定で北海道産や九州産が上位に食い込む一方、米どころ・新潟や東北勢は苦戦。 消費者に受け入れてもらう「うまいコメ」をめざし、熱い闘いが繰り広げられている。 「ゆめぴりか」、「元気つくし」。 2011 年産のコメの食味検定で審査員たちをうならせたのは、「厄介道米」と揶揄されてきた北海道産と、09 年に登場した福岡産だった。

審査したのは一般財団法人・日本穀物検定協会(東京)の職員 20 人。 1971 年産から毎年実施しているコメの格付け検定「食味ランキング」で 129 銘柄がエントリーし、5 段階評価で 26 銘柄が最高の「特 A」とされた。 このうち、トップ 3 (順位は非公表)に入ったのが、ゆめぴりかと元気つくし。 木野信秋・業務部長 (65) は「美しさや粘り、味がずば抜けていた」と絶賛する。 (asahi = 11-12-12)


現役 101 年のレトロ路面電車、愛誓う舞台に 長崎

長崎市内を走る路面電車、長崎電気軌道にあるレトロな車両を使って 11 日、同市の永野孝さん (30) と松尾裕子さん (32) が結婚式をした。 製造から 101 年という車両。 いまでも年に 3 回ほどは走るが、結婚式は初めて。 鉄道ファンの新郎が提案し、開通記念日のイベントにあわせて実現した。 「この電車のように末永くお幸せに」と祝福された 2 人は、飾り付けがされた電車に乗って披露宴会場へ「出発進行!」。 二人三脚の旅をスタートさせた。 (asahi = 11-12-12)


石巻中心街に「絆の駅」 石巻日日新聞社、壁新聞も展示

【川端俊一】 津波で被災した宮城県石巻市中央 2 丁目の中心商店街にある空き店舗に、人々が交流する施設「絆の駅」がオープンした。 地元紙、石巻日日新聞社の創刊 100 周年を記念する事業。 同社が震災直後に作り、高く評価された手書きの「壁新聞」も展示されている。

1 階は新聞博物館「石巻ニューゼ」と名付け、同社の創刊から石巻の歴史をたどるパネルや写真、また震災時の報道写真が展示してある。 輪転機が使えず、被災者に情報を伝えるために作った「壁新聞」には、「日本最大級の地震・大津波」、「正確な情報で行動を!」など手書きの文字があふれ、当時の惨状を物語る。 2 階の「レジリエンス・バー」は、昼間は講演や研究会などの会場に、夜は酒を酌み交わしながら語り合う場になり、ライブなども計画している。 (asahi = 11-11-12)


思い込められた 2 万ピース 金子みすゞのモザイク画完成

山口県長門市仙崎出身の童謡詩人金子みすゞをアピールしようと、地元住民らが 8 日、みすゞの巨大モザイク画(縦 5 メートル、横 10 メートル)を完成させた。 約 2 万ピースの三角柱の木片を組み合わせ、左右正面の 3 方向から三つの異なる絵が見える珍しい立体アートだ。 向かって左から見ると地元の青海島の夕景を背にした女学生時代、右からは仙崎の町並みと 20 歳のみすゞ、正面からは両方が向き合うように見える。

長門商工会議所青年部を中心に半年かけ、金子みすゞ記念館近くのホテル壁面に張り付けた。 全国のみすゞファンらが木片一つずつにメッセージを書いた。 東北の被災者 300 人以上も「心は一つ」などと書いて寄せた。 (asahi = 11-11-12)


3 大学新設、田中文科相が「認可」 自民は問責決議検討

来春の開学を予定していた 3 大学の新設認可をめぐり、田中真紀子文部科学相は 7 日、「認可する」と表明した。 正式決定の時期は明言しなかったが、文科省幹部は「一両日中」との見方を示した。 突然の「認可しない」発言から 5 日。 3 大学が求める「今週中の認可」が実現する見通しになった。

田中文科相は 7 日午後、衆院文部科学委員会の終了直前に「現行の制度にのっとり、適切に対応する」と述べた。 委員会終了後、記者団に「(認可の仕組みの見直しは)鋭意、一番速くやっているが、3 校については認可する」と話した。 札幌保健医療大、秋田公立美術大、岡崎女子大(愛知県)の 3 大学の認可をめぐり、田中文科相は 2 日に「不認可」を表明し、6 日に「新基準で再審査する」と方針転換。 さらに 7 日、「現行制度で審査」に転じた。 (asahi = 11-7-12)

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田中文科相 : 美術大不認可 「あまりに突然」怒りと困惑の声 秋田

田中真紀子文部科学相の突然の方針転換で設立が不認可とされた秋田公立美術大。 来年 4 月の開学を前提に準備を進め、4 日にはオープンキャンパスを開催する予定だったが、職員らは構内の垂れ幕を急きょ撤去するなど中止の対応に追われた。 穂積志市長は大学設置を引き続き目指す考えだが、開学までの準備が長引けば税金で賄う費用も膨らむ。 市や大学、高校など関係者からは「あまりにも突然だ」と怒りと困惑の声が上がった。

秋田公立美工短大に通う 2 年の女子学生 (19) は「驚いた。 開校の準備が整いつつあったのに。 理由の詳細が知りたい。 編入や入学を希望している生徒への対応はどうなるのか。」と話した。 同短大付属高等学院 2 年の女子生徒は「大学になると聞き、学習面で頑張らなければと意欲が高まっていた。 残念というよりも、驚きが大きい。」と話した。

高校生の進路にも不安を与えている。 市大学設置準備室は「設置認可申請中」と注記した大学概要を県内の各高校に配布。 県内各校は来年 4 月の開校は既定路線として進路指導していた。 市大学設置準備室によると、昨年 11 月に東北、北海道の高校 2 年生 6,665 人を対象に実施したアンケートでは、同大受験を考えていたのは 907 人と約 14% に上る。

仁賀保高の藤田悟教頭によると、同高コンピューター・グラフィックスデザインコースの生徒 2 人が進学を考えていたという。 藤田教頭は「生徒の意欲がそがれる。 進路の選択肢がいきなり減らされるのは大きな損失だ。」と驚いた様子だった。 大学設置のための費用は、昨年度と今年度当初予算ベースの費用を合計すると約 7 億 7,062 万円。 開学が遅れれば、さらに膨らむ可能性がある。 着任予定だった教職員などの処遇も決めなければならず、穂積市長は「問題はこれから出てくる」と述べた。

市に 4 年制化を答申した有識者委員会の委員を務め、大学設置委員の経験もある県立近代美術館長の河野(こうの)元昭・尚美学園大大学院教授は田中文科相の不認可表明について「就任したばかりなのに急な路線変更」と憤る。

少子化時代に大学が増えすぎ、財政が悪化しているなどの指摘にも「正論だがそれはこれからやるべきこと。 前の大臣のままだったら認可されていたのでは。」とおさまらない。 「一番迷惑を被ったのは進学しようと準備していた高校生と短大から編入しようと思っていた学生では」と話した。 (仲田力行、坂本太郎、mainichi = 11-3-12)


農水相、諫早湾の堤防開門通知 長崎知事に行程表も示す

【貞国聖子】 長崎県の国営諫早湾干拓事業の開門調査をめぐり、農林水産省は 4 日、堤防の排水門を開門すると県側に伝えた。 1997 年に閉め切られたままの堤防の修復など、開門に必要な工事の日程を記した工程表も示した。 農水省は開門を命じた 2010 年 12 月の福岡高裁判決(確定)に沿い、来年 12 月までの開門を目指す。

郡司彰・農林水産相が 4 日午後 3 時から中村法道知事らと諫早市で面会し、開門を通知した。 「開門で生じる防災機能や農作物への影響が少ない」として、海水の流出入量を年 10 億トンに制限する開門方法をとる、と伝えた。

「開門による塩害や泥の巻き上げで農業や漁業に被害が出る」と訴えてきた県側は、強く反発するとみられる。 これに対し、農水省は、(1) 地盤沈下を懸念する地元住民に配慮し、農業用水は地下水をくみ上げる方式ではなく、海水を淡水化する施設を設ける、(2) 農家や漁業者を対象とした補償を検討する - - などの対策を示し、開門に理解を得ていきたい方針だ。 (asahi = 11-4-12)


JR 大阪駅に新しい駅ナカ 「エキマルシェ」オープン

JR 大阪駅高架下の商業施設「エキマルシェ大阪」が 31 日、オープンした。 持ち帰りできる総菜やスイーツの店をはじめ、衣料品店、飲食店など計 82 店が入り、午前 10 時の開業後は早速多くの客でにぎわった。

JR 西日本が進める一連の大阪駅の再開発で、商業施設としては最後の開業となる。 「大人のみちくさ」をテーマに、通勤客らが気軽に立ち寄れる空間を目指した。 駅に直結する 300 台分の駐輪場もオープンした。 開業に先立つセレモニーで、運営するジェイアール西日本デイリーサービスネットの井上浩一社長は「エキマルシェという最後のピースで、新しい大阪駅が完成した」とあいさつした。 (asahi = 10-31-12)

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USJ 入場者、1 億人達成 開園から 11 年 7 カ月

大阪市此花区のテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン (USJ) の開園からの累計入場者数が 29 日午前、1 億人を超えた。 2001 年 3 月の開園以来、11 年 7 カ月で達成した。

1 億人目の入場者は、東京都世田谷区の会社員、山下裕美子さん (41)。 スヌーピーやハローキティなどのキャラクターや従業員らに囲まれ、祝福された。 1 年間何度でも入場でき、優先的にアトラクションが利用できる特別なパスが贈られた。 夫の英信さん (40) と娘の澄夏さん (6) と一緒に訪れた山下さんは「すごいですね〜 1 億人」と笑顔で話した。 (asahi = 10-30-12)

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関西ミシュラン、三つ星減少 13 年版は 12 店に

フランスのタイヤメーカーのミシュランは 16 日、レストランや宿泊施設を格付けする「ミシュランガイド京都・大阪・神戸・奈良 2013」の掲載店を発表した。 関西分の発行は 4 年連続。 最高評価の三つ星は、昨年より 3 店減って 12 店となった。

三つ星は京都 5 店、大阪 4 店、神戸 2 店、奈良 1 店。 京都と大阪の計 3 店が二つ星になったり、移転により評価できなかったりした。 同社は「あくまで(素材の質など)世界同一の五つの基準で評価した結果」と説明。 4 年連続三つ星の「菊乃井本店(京都市東山区)」の主人、村田吉弘さんは「ミシュランガイドは関西エリアの観光にも貢献が大きい。 料理人は毎年これ以上できないところまで頑張っており、何とか星を維持したい。」と話した。

二つ星は旅館を含め 52 店(昨年 61 店)。 一つ星は同じく 213 店(同 224 店)で、うち 15 店が初登場だった。 掲載店の府県別では、京都の 139 店が最多。 大阪 117 店、神戸 68 店、奈良 38 店だった。 (asahi = 10-17-12)

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関西空港、お出迎えはコスプレ ご当地アイドルイベント

世界中から関西を訪れる観光客を、日本のポップカルチャーでおもてなし - -。 関西空港で 13 日、コスプレやアニメのオブジェを集めたイベントがあった。

「オタロード」で有名な大阪・日本橋のメードカフェが出店し、おにぎりなどを販売。 関西のご当地アイドル 9 組が特設ステージで歌やダンスを披露した。 仕事で来日した米国人デレン・テメルさん (23) は一緒に踊るファンの迫力に戸惑い気味。 「『郷に入れば郷に従え』と言うけど、今日は見てるだけでいいかな。」 (asahi = 10-14-12)


B-1 ゴールドグランプリに「八戸せんべい汁研究所」

北九州市小倉北区で開かれた B 級ご当地グルメの祭典「B-1 グランプリ」は 21 日、1 位のゴールドグランプリに青森県八戸市の「八戸せんべい汁研究所(八戸せんべい汁)」を選んで 2 日間の日程を終えた。 2006 年から毎年開催されており、今回が 7 回目。 昨年の兵庫県・姫路大会と同じ 63 団体が出展し、過去最多となる約 61 万人(主催者発表)が訪れた。

来場した人が料理のおいしさや町の魅力の PR の印象をもとに、使った割りばしを投票箱に入れて、各団体に投票。 投票箱の重さで順位を決めた。 「八戸せんべい汁」は煮崩れしない鍋用の特製南部せんべいを、鶏肉やゴボウ、長ネギなどと煮込んだしょうゆベースの鍋料理。 同研究所は地元八戸市で開かれた第 1 回大会から参加し、2 回大会以降は 2 位か 3 位に入る人気だった。

木村聡事務局長は「おもてなしだけはどこにも負けないようにと頑張ってきた。 それが評価された結果だと思う。 ゴールドグランプリに満足せず、また明日から新しい町おこしの第一歩を踏み出したい。」と喜びを語った。 次回は来年 11 月 9、10 日に愛知県豊川市で開催される。 (asahi = 10-21-12)

B-1 グランプリ in 北九州の順位

1 位 八戸せんべい汁研究所 (八戸せんべい汁) 青森県八戸市
2 位 対馬とんちゃん部隊 (上対馬とんちゃん) 長崎県対馬市
3 位 今治焼豚玉子飯世界普及委員会 (今治焼豚玉子飯) 愛媛県今治市
4 位 浪江焼麺太国 (なみえ焼そば) 福島県浪江町
5 位 日生カキオコまちづくりの会 (日生カキオコ) 岡山県備前市
6 位 田川ホルモン喰楽歩 (田川ホルモン鍋) 福岡県田川市
7 位 津山ホルモンうどん研究会 (津山ホルモンうどん) 岡山県津山市
8 位 熱血!! 勝浦タンタンメン船団 (勝浦タンタンメン) 千葉県勝浦市
9 位 あかし玉子焼ひろめ隊 (あかし玉子焼) 兵庫県明石市
10 位 十和田バラ焼きゼミナール (十和田バラ焼き) 青森県十和田市
(カッコ内は料理名)

◇ ◇ ◇

迫る B-1、はやる小倉 50 万人期待、事故防止に細心

【小浦雅和】 B 級ご当地グルメの祭典「B-1 グランプリ」が 20、21 の両日、北九州市小倉北区の中心街である。 2 日間で市の人口の約半分にあたる 50 万人の訪問を期待する人気イベントだ。 経済効果 40 億円とそろばんをはじき、熱気は高まる。 実行委員会は来場者の誘導など準備に余念がない。

焼きそば、から揚げ、ラーメン、おでん ・・・。 地域おこしなどに取り組む全国 63 団体が、ご当地グルメとともに出展する。 北九州市などでつくる実行委事務局によると、兵庫県姫路市であった昨年の大会は過去最高の 51 万 5 千人が来場。 宿泊・交通費などの経済効果は 41 億円に上った。 北九州大会も同じくらいの効果を期待している。 「市がかつて経験したことのないにぎわい」と北九州市の北橋健治市長が言うように、実行委は来場者の誘導や警備員の配置などにも細心の注意を払う。 (asahi = 10-19-12)


ひこにゃん大活躍 彦根でゆるキャラまつり開幕

全国のゆるキャラが大集合する「ゆるキャラまつり in 彦根」が20 日、滋賀県彦根市中心部の商店街で始まった。 38 都道府県とサイパンから昨年より 34 体多い過去最多の 244 体(初参加 81 体)が集まり、秋晴れのもと、会場は大勢の観光客でにぎわった。 21 日まで。

まつりは今年で 5 回目。 開幕式では「ひこにゃん」など彦根の 8 キャラがステージに上がり、歓迎のあいさつ。 今回はひこにゃんの登場回数を増やし、ほぼ 1 時間に 1 度、ファンの前に出る。 東日本大震災で被災した宮城県の「むすび丸」など 4 県 6 体のキャラにはブース使用料が免除され、激励金が贈られる。 新設の「まつりを応援する会」のボランティア約 50 人が案内役などを務めた。 (asahi = 10-20-12)


列島、進まぬ耐震化 海岸線 8 百キロ不十分 検査院指摘

【金子元希】 東海、東南海、南海地震で被害が想定される 15 都道府県で会計検査院が土木施設の地震や津波対策を調べたところ、不十分な点が相次いで見つかった。 海岸線では 800 キロ余りの堤防や護岸が各都道府県が想定する津波の高さより低く、必要な耐震性の点検をしていない箇所も 2 千キロ以上あった。 (asahi = 10-18-12)


食料確保は、観光客誘導は … 帰宅困難、地方都市も直面

東日本大震災時、首都圏だけで 500 万人を超えたとされる帰宅困難者。 巨大地震が起きると、地方都市や観光都市でもたくさんの人たちが行き場を失うおそれがある。 水や食料、一時滞在施設をどのように確保していくのか。向き合うべき課題は多い。

東日本大震災が起きた昨年 3 月 11 日午後。 仙台市宮城野区にある市立榴岡(つつじがおか)小学校の久能和夫校長は、校庭を埋め尽くす人の数に言葉を失った。 徒歩約 10 分の距離にある JR 仙台駅や、近隣の企業から押し寄せた人たちだった。 駅では全路線が運休になっていた。

榴岡小は市の避難所に指定されていた。 避難対象は地元住民の約 600 人。 駅の利用客は想定していなかったが、JR 東日本などが次々と榴岡小をはじめとする避難所に誘導したため、対象数を大幅に上回る人たちが校庭にあふれた。 久能校長は体育館を開放したが、入りきれない人が相次いだ。 水・食料は 600 人に 2 回行き渡る分しか備蓄しておらず、町内会の協力を得て翌朝までに約 3 千食分を集めたが、それでも 300 人分が不足した。

「(食べ物は)これっぽっちか」、「なんで電気がつかないんだ」。 避難者が怒鳴り、パトカーが呼ばれることも。 体育館で 3 日間過ごした大学生の渋谷祐人(ゆうじん)さん (22) は「不安でいっぱいだった」と振り返る。 久能校長は言う。 「帰宅困難者の問題は大都市だけではなく、地方都市でも起きると痛感した。」

当時の仙台市の防災計画では、地震で帰宅困難者がどれくらい生じるのかの想定は盛り込まれていなかった。 市は今年 9 月、帰宅困難者を受け入れる「一時滞在施設」としての役割を引き受ける企業を確保する方針を決めた。 しかし、現時点での協力企業は 1 社にとどまっているという。

年に 5 千万人の観光客が訪れる京都市。 先月初め、観光客が帰宅困難者になった場合の対策を検討する協議会をつくると発表した。 京都市はマグニチュード (M) 7.5 の直下型地震が起きると、13 万人の観光客が行き場を失うと想定。 ゴールデンウイークや秋の行楽シーズンは、さらに増える可能性が高い。

市は「京都の観光客は街中を周遊している。 一部の観光スポットで情報提供や避難先への誘導をするだけでは済まない。」と判断。 ▽ 2 千以上ある寺や神社にどこまで受け入れ先になってもらえるのか、▽ いろんな場所にいる観光客に情報をどう伝えるのか、▽ 観光客が地元住民の避難所に押し寄せないよう、観光事業者や商店街の関係者はどう誘導するのか - - などが検討課題となるが、いずれも議論はこれからだ。

市の担当者は話す。 「土地勘が薄いうえ、様々な方向に帰ろうとするのが観光客。 役所や地元の人も被災して混乱していることが予想される震災時に、帰宅困難者対策をどれくらい実行できるか見えない。」

企業「協力迷う」

地方都市や観光都市が模索する中、対策を具体的に示した指針が先月上旬に発表された。 「企業は従業員を社屋にとどまらせる」、「従業員 1 人あたり 9 リットルの水、9 食分を備蓄する」、「一時滞在施設での収容スペースは 2 人で 3.3 平方メートル(1坪)」。 東日本大震災で、515 万人の帰宅困難者が生じた首都圏での対策を検討する国や東京都などの協議会がまとめた。 想定するのは東京湾北部を震源とする M7.3 の地震。 都が 4 月にまとめた被害想定では、都内だけで 517 万人の帰宅困難者が出るとされている。

協議会は都心部の企業や商業施設に対策の一翼を担ってもらう必要があると判断。 企業には、外部の人のために水と食料を 1 割余計に備蓄するよう求め、商業施設や駅には体が弱った人らを受け入れる場所を確保してほしいとした。 これに対し、都内の不動産会社は「備蓄には資金がかかる。 テナントとして貸せるスペースを保管場所にするほど余裕のある企業はあるのか。」 商業施設を開放した場合、商品が傷つけられる可能性があるとも指摘する。

指針のとりまとめの際、協議会メンバーの一般社団法人・不動産協会の木村恵司理事長も「なんでもかんでも民間で責任を持つのでは(協力を)逡巡する」と懸念を表明。 備蓄の維持費用や事故の賠償などに企業側がどこまで責任を持ち、どこから行政が引き受けるのかの線引きが指針に明示されていなかったからだ。

都幹部は「判例もなく、責任のあり方を全て挙げるのは困難」と説明するが、千代田区は「企業にリスクを背負わせると協力が得られない」と独自に判断。 一時滞在施設での事故は原則として区が責任を持つと決めた。 担当者は「それでも区だけでできる対応には限界がある。 各都市・自治体が共通して使えるルールを作ってほしい」と話している。 (赤井陽介、asahi = 10-8-12)