マウス派も納得、最新ウィンドウズ 慣れた操作で 米マイクロソフトは 4 月 9 日、ウィンドウズ 8.1 の機能を強化する「ウィンドウズ 8.1 アップデート」の配布を開始した。 パソコンでウィンドウズ 8.1 を使っているユーザー向けに、キーボードやマウスでの使いやすさを向上したことが主な特徴となる。 今回はこの最新アップデートの強化ポイントを紹介していこう。 ■ ウィンドウズ 8 の改善、矢継ぎ早に ウィンドウズ 8.1 アップデートは、ウィンドウズ 8.1 向けの最新アップデートファイルだ。 ウィンドウズアップデート経由で提供され、ウィンドウズ 8.1 のユーザーなら無料で利用できる。 2012 年 10 月に発売したウィンドウズ 8 では、タッチで操作するタブレットやスマートフォンの普及を前提に、フルスクリーン画面に大きめなボタンを配置したスタート画面などを搭載した。 しかしキーボードとマウスを接続した一般的なパソコンのユーザーにとって、こうしたユーザーインターフェースの大幅な変更は受け入れにくかったのも事実である。 こうした批判に応えるために、スタートボタンの導入などデスクトップ中心で使うユーザー向けの改善を盛り込んだのが、13 年 10 月に発売されたウィンドウズ 8.1 だ。 今回のウィンドウズ 8.1 アップデートは、このウィンドウズ 8.1 をさらに従来型のパソコンユーザー向けに改良したものと言ってよい。 具体的な内容は後述するが、スタート画面のタイルから呼び出せるコンテクストメニュー、ストアアプリに対するタイトルバーの導入、タスクバーでのアプリ管理の強化など、よりウィンドウズ 7 に近い(同じではない)使い勝手に戻りつつあることを感じるアップデートだ。 開発期間の短さも注目に値する。 Vista や 7、8 は、数年かけてじっくりと開発していた。 しかし 8 から 8.1 へは 1 年、8.1 から 8.1 アップデートは半年と非常に短い。 しかも無料だ。 以前はマイクロソフトの独壇場だった家庭用デジタルデバイス市場の主導権は、モバイル市場で大きなシェアを確保するアップルやグーグルに取って代わられた。 先行する強力なライバルに追いつくためには、ユーザーニーズのキャッチアップと開発ペースの高速化は避けられない、ということだろう。 ■ スタート画面からシャットダウンや再起動も可能 導入はウィンドウズアップデートから通常通りダウンロードし、自動でインストールするだけでよい。 ユーザーは何もする必要がない。 再起動すると見慣れたスタート画面が表示されるが、右上のアカウント名のそばには、見慣れない 2 つのボタンが追加されていることがわかる。 左にある電源ボタンは、シャットダウンや再起動、スリープ状態への移行を行うためのボタンだ。 7 まではスタートメニューからすぐにアクセスできたボタンだが、8/8.1 になってアプリ共通のメニューを集約した「チャーム」から呼び出さなければならなくなった。 今までとは段違いに操作のプロセスが増え、わかりにくいという批判が多かった部分の一つだ。 これをスタート画面からすぐに呼び出せるボタンに変更したわけだ。 右にあるのは検索ボタン。 これをクリックすると、チャームの検索機能が呼び出せる。 これもよく使う機能だけに、独立したボタンとして備えたのだろう。 さらに、天気やウィンドウズストアなど「ストアアプリ」のタイルを右クリックしてみる。 するとタイルのサイズや、更新情報をタイル内に表示する「ライブタイル」機能を利用するかしないかの設定、そして「タスクバーにピン留めする」というコンテクストメニューを表示する。 8/8.1 では、画面下に表示される「アプリバー」という場所に用意されていたメニュー内容だが、手をちょっと動かすだけでよいタッチ操作と違い、マウス操作ではマウスカーソルを移動する距離が長くなり、煩わしさを感じさせる要素となっていた。 8.1 アップデートではこれを解消し、右クリックから最小の移動で設定を変更できるようにした。 またタスクバーへのピン留めも、8.1 アップデートの新機能だ。 ストアアプリは、従来はスタート画面かアプリビューからしか起動できなかった。 そのためデスクトップを利用中にストアアプリを使う場合、いったんはそうした画面に戻ってから起動する必要があった。 8.1 アップデートなら、タスクバーにピン留めしておけばデスクトップから直接ストアアプリを起動できる。 デスクトップを中心に使うユーザーにとって、種類が少なく、デスクトップアプリに比べて機能が見劣りするストアアプリを積極的に利用する機会は少ないのかもしれない。 しかしデスクトップ環境との融合と使い勝手の向上という意味では、歓迎すべき改良点と言える。 ■ ストアアプリにもタイトルバー、最小化するとタスクバーに ストアアプリには、デスクトップアプリと同じような「タイトルバー」が付いた。 ここから「アプリの最小化」や「アプリの終了」が行える。 タイトルバーを最小化すると、なんとデスクトップに戻り、タスクバーにアイコンが表示される。 起動中のストアアプリは、8/8.1 までは画面左端にサムネイルのリストで表示され、そこから切り替えを行っていた。 スタート画面のアプリバーと同様、マウス操作だとそのサムネイルのリストを表示する操作が煩雑で、しかもカーソル移動の距離が長いために不評を買っていた。 8.1 アップデートでは、従来のデスクトップアプリと同様の操作で起動中のストアアプリの変更が行えるようになった。 今までよりもはるかにデスクトップやタスクバーの機能や役割が重視されるようになったことが分かる。 このほかにも標準搭載のウェブブラウザー「インターネットエクスプローラ (IE)」の最新版である「IE11」に、「IE8」の互換モードを追加している。 これは、今まで XP を使ってきた企業向けの機能だ。 企業のイントラネットや業務アプリは、XP 向けの最終バージョンである IE8 でしか動作しないことも多い。 こうしたサイトやアプリを IE11 でも動作できるようにするための救済措置と言える。 同じく 4 月 9 日には XP のサポート期間が終了したこともあり、8.1 アップデートに移行する企業ユーザーにとってはうれしい機能だ。 配布直後で駆け足でのレビューとなったが、8.1 アップデートを使って感じるのは、デスクトップユーザーへの強い配慮である。 8/8.1 まではタブレット機器への対応を急ぐあまり、タッチ操作への過剰な配慮と従来型のパソコンを切り捨てた感が強かった。 ■ 操作の起点、スタート画面からデスクトップに しかし 8.1 アップデートでは、マウスやキーボード操作への最適化もさることながら、ストアアプリを最小化するとデスクトップに戻り、タスクバーに収納されることなど、操作の主体がデスクトップに戻ったという印象がある。 8/8.1 で「取り残された」印象を受けたユーザーなら、ぜひとも試してほしい機能ばかりだ。 マイクロソフトは、今後もデスクトップ環境の改善を続けていくという。 4 月 2 日より米サンフランシスコで行われた開発者向けイベント「Build 2014」では、7 までは利用できたスタートメニューやプログラムメニューの復活も示唆している。 タッチ型のインターフェース自体はそのまま継続するにせよ、従来型パソコンの市場やユーザーの期待度の大きさは無視できない、ということだろう。 ただ、タッチ対応のタブレットに 8.1 アップデートを適用し、従来の右クリックと同等の「長押し」という操作をしても、8.1 と同じアプリバーや、長押しで表示されるタッチ対応のメニューが表示されるだけだった。 「同じ操作なら同じ作業が行える」ことを最善とする立場から考えるならば、現状はなかなか違和感のあるインターフェース構成ではある。 とはいえタッチ操作が可能なら、コンテクストメニューがなくても問題なく利用できるわけで、必要性がないということでもある。 要するに過渡期の問題であり、今後はこなれていくだろう。 (竹内亮介、nikkei = 4-12-14)
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