蓄電池を併設する 35MW 級の風力発電所、青森県で年間 2.4 万世帯分を発電

日立キャピタルのグループ会社である津軽風力発電は 2019 年 7 月 31 日、青森県五所川原市相内および北津軽郡中泊町に建設した「十三湖風力発電所」の竣工式を行ったと発表した。 定格出力 2,300kW の風車を 15 基導入しており、総発電能力は 34.5MW である。

十三湖風力発電所は、日立パワーソリューションズが EPC (設計、調達、建設)や保守などを担当し、津軽風力発電が事業者として建設を行った。 年間予想発電量は、一般家庭約 2 万 4,000 世帯分の電力に相当し、約 5 万 4,000 トンの CO2 排出抑制を実現する見込みである。 既に同年 7 月 1 日から運転を開始している。 同設備は出力変動緩和型と呼ばれる、風力発電の出力変動を蓄電池で緩和することで系統への影響が少ない電力を供給するシステムである。

発電した電力は「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」で東北電力に売電する。 売電収入の一部は「農山漁村再生可能エネルギー法」に基づいた協定により、土地改良区の維持管理に資する取り組みに利用される。 津軽地方の強い季節風を利用した風力発電事業を通じて、周辺地域の農林水産業の発展に貢献するとしている。 (スマートジャパン = 8-16-19)


北海道で洋上風力検討、J パワー

J パワーが北海道で洋上風力発電所の建設を検討していることが 1 日、分かった。 道内のせたな町や上ノ国町などの沖合に、最大出力約 72 万キロワットの風力発電設備の建設を目指す。 地元住民への説明会や海域の風況調査などを進め、実現が可能かを判断する。 J パワーは現在、国内で合計約 45 万キロワットの陸上風力設備を保有。 洋上風力では英国沖での開発案件に参画している。 国内でも北九州市の響灘や長崎県西海市沖で海域の地盤調査などを実施している。 同社は 25 年度までに 100 万キロワット規模の再生可能エネルギーを新規開発する目標を掲げており、国内外で普及が進む洋上風力に力を入れている。 (nikkei = 8-1-19)


原発の代替なるか? 大規模な洋上風力発電が、ついに米国で本格稼働する

米国で大規模な洋上風力発電の計画が進められている。 住民の理解といった課題こそ残るものの、テクノロジーの進化に伴いコストが下がるといった導入環境での追い風を受け、ついに始動する日がやってくるというのだ。 閉鎖される原子力発電所の代替としての役割も期待されるなか、ことは思惑通りに進むのだろうか。

マサチューセッツ州にあるピルグリム原子力発電所が、2019 年 6 月 1 日に閉鎖される。 米国内の経済が悪化するなか、稼働コストが上昇していることが理由だ。 しかし、老朽化した原子力発電所で発電されていた電力は、まもなく二酸化炭素を発生させない別の方法に取って代わられるだろう。 その方法とは、洋上風力発電だ。 海面からの高さが 650 フィート(約 198 メートル)の風力タービン 84 基が設置されている。 このプロジェクトを進めているのは、マサチューセッツ州ニューベッドフォードの風力発電会社 Vineyard Wind だ。

同社のプロジェクトを請け負う開発業者によると、タービンは 22 年中に稼働を始め、800 メガワットを発電するという。 これは、大規模な石炭火力発電所の出力に相当する発電規模で、ピルグリム原発の 640 メガワットを上回ることになる。 設置場所は、マサチューセッツ州にあるマーサズ・ヴィニヤード島の 14 マイル(約 22.5km)南方の沖合いだ。 「ついに洋上風力発電がやってきました」と、Vineyard Wind の最高開発責任者 (CDO) であるエリック・スティーヴンズは話す。 同社は、デンマークとスペインの風力発電会社から支援を受けている。

スティーヴンズの説明によると、風力発電所の運用コストは、開発業者に取り合ってもらえるほどには抑えられるようになってきたという。 「風力発電のコストが低くなっただけではなく、海中のこれまでよりも深い位置にタービンを設置できるようになったことから、設置コストが下がったのです。」

原子力発電の代替エネルギーになる得るか

マサチューセッツ州の公益事業部 (DPU) は、Vineyard Wind との間で 20 年間にわたり 1 キロワット/時あたり 8.9 セント(約 10 円)で電力を供給する契約を 19 年 4 月に締結した。 これはカナダの水力発電など、ほかの再生可能エネルギーにかかるコストのおよそ 3 分の 1 にすぎない。 電気料金を支払っている人全体で見ると、20 年間で 13 億ドル(約 1,438 億円)を節約できるという。

しかしながら洋上風力発電は、ピルグリム原発やほかの原発の穴を埋めることができるのだろうか? 風力発電の賛成派はできると思っている。 ただ、それは陸地にある既存の送電線とうまく接続できると同時に、漁業や海洋生物に与えるかもしれない悪影響にまつわる懸念に対応できることが前提だろう。 風力発電は米国において目新しいものではない。 41 州とグアム、プエルトリコに 56,000 基の風力タービンがあり、全米で 96,433 メガワットを出力している。 しかし、洋上にある大規模な風力発電所はまだ稼働していない。 そこでは、ビルや山にさえぎられることなく、安定的に強い風が吹く特徴があるのだ。

風力タービンは、ここ数年で大きくなり、塔も高くなっている。 このため、5 年前と比較して発電量は 3 倍になった。 併せて、遠洋にタービンを導入するために必要な技術も改良されたほか、海辺のコミュニティから以前よりも受け入れられるようになっている。 「風力タービンは大きければ大きいほどいいでしょうね」と、風力発電に関係するメーカーと開発事業者の代理を務める法律事務所 K & L Gates で、電力グループのコーディネーターを務めるデイヴィッド・ハッテリーは語る。 海上の強風を生かして力を生み出すには、タービンと羽根は大きいほうがよりよく機能するからだ。

「気流が激しいため、ベアリングとギアボックスは摩耗してしまいます。 沖合にあるタービンの故障は避けたいところです。 修理にはとてもお金がかかりますから。」と、ハッテリーは言う。

巨大化するタービン事情

タービンの巨大化で競争が激化するなか、Vineyard Wind は直径 174m のローターを擁する出力 9.5 メガワットのタービンを使用する予定だ。 これは多くの標準的な風力発電機と比べても非常に大きい。 しかし、ゼネラル・エレクトリック (GE) は、もっと大きなタービン「Haliade-X」を 18 年に発表した。 これは 21 年に完成予定で、12 メガワットを出力する。各タービンの翼幅は 220m に達し、ヨーロッパで 16,000 戸に供給するのに十分な電力を生み出すことが可能だ。

GE は洋上風力発電用として、この "怪物" をヨーロッパで建設している。 ヨーロッパでは、大陸全体の電力のうち 14 パーセント(米国では 6.5 パーセント)を風力でまかなう。 「われわれはいま、まさにふさわしいマシンを保有していると感じています。」 GE リニューアブルエナジーの洋上風力発電事業における最高経営責任者 (CEO) ジョン・ラヴェルはこう語る。

洋上風力発電のポテンシャル

米当局は、洋上風力発電に利用できる場所が米国近海には多く存在すると考えている。 米国エネルギー省 (DOE) によると、潜在的に 2,000 ギガワット以上の容量、あるいは年に 7,200 テラワット/時の発電量があるという。 これは米国が現在使用している電力量の倍近くに当たる。 このうちたった 1 パーセントでも実用化できれば、650 万戸近くに洋上風力発電による電力を供給できるだろう。

当然ながら、このようなタービンを建設して稼働させるには、何年にもわたる計画期間に加えて連邦や州による数々の許可が必要だ。 ただ、連邦政府がタービンの設置場所を管理する新しい規則をここ 5 年で導入したことで、状況は若干よくなった。 また、内務省の海洋エネルギー管理局 (BOEM) は洋上リースのための区域を設け、風力発電所を開発する企業からの入札を受け付けている。

初の洋上風力発電プロジェクトは、タービン 5 基を擁する 30 メガワット出力の風力発電所だ。 16 年の終わりごろから稼働しており、ロードアイランド州にあるリゾート地のブロック島で稼働していたディーゼル発電に代わって導入された。 洋上風力発電業者の Deepwater Wind が開発を担当しており、東海岸沿いに風力発電所を建設する 15 の有効な計画がある。 ほかにも、カリフォルニア、ハワイ、サウスカロライナ、ニューヨークで計画が進行している。

"届かない延長コード" のような失敗も

連邦政府のプランナーにタービンの設置場所を決めてもらうことで、開発者はかつて「ケープ・ウィンド・プロジェクト」で起きたような大失敗を避けたいと考えている。 このプロジェクトは、ナンタケット島とマーサズ・ヴィニヤード島、ケープコッドに挟まれた浅瀬の海域であるナンタケット海峡沖で計画されていた。 開発業者は大きな望みをもって 2001 年に開発を始めた。 しかし、地域住民、漁業従事者、そして家からタービンが見える米国の名家ケネディ家と大富豪であるコーク兄弟との数年に及ぶ訴訟を経て、17 年に事業を停止した。

それはあたかも、リビングルームまで届かない延長コードのようだった - -。 既存の海底ケーブルの長さが限られていたことから、ケープ・ウィンドの開発事業はナンタケット海峡で立ち往生してしまったのである。 しかし、新たな海底送電機能を使えば、浜辺に建つ家々や商用海路、クジラの移動経路から離れて、タービンをもっと遠洋に設置することは可能になる。

電力を陸地に送るコストは誰が負担するのか?

「ケーブルを遠くまで伸ばせても、電力を陸地まで送り返すことに誰かが依然としてお金を払わなければなりません。」 米国電力研究所 (EPRI) で統合送電分野のヴァイスプレジデントを務めるマーク・マクグラナハンはこう話す。 マクグラナハンによると、デンマークとドイツでは、タービンから出力される交流 (AC) を直流 (DC) に変換する洋上の変電所と、そのような長距離送電に対して政府が支払いをしているという。 しかし、ここ米国では、そのようなコストを公共料金や税金から支払わなければならないだろうとマクグラナハンは予想している。

「洋上風力発電は完全に現実のものとなり、われわれはそれをどうやって動かしていくのかを知っています。 そこで浮上する問題のひとつが、電力を陸地に送るインフラの費用を誰が負担するのかということです。」

問題はコストだけではない。 陸地の家の近くをケーブルが通るのを嫌う近隣住民や、漁場がなくなるのを危惧する漁業従事者、洋上の発電所の建設がクジラやイルカなどの音に敏感な海洋哺乳類に悪影響を与えると懸念する環境保護の推進派にも、洋上風力発電の開発業者は敏感にならなければならないのだ。 それでも、放射性廃棄物を捨てる安全な場所を探すよりは簡単だろう。 放射性廃棄物は、ピルグリム原発およびほかの原発 97 カ所の周辺に、いまも積み上げられ続けているのである。 (Eric Niiler、Wired = 5-24-19)


風力発電の開発拡大 … 原発再稼働が遅れる中、電気料金値下げにつながるか

大手電力が再生可能エネルギー事業を積極化させている。 収益の柱だった原子力発電の再稼働が遅れる中、有力な収益源となり、電気料金の値下げにつながるのか、現状と課題を探った。

東北電力の陸上風力発電設備 原発 2 基分の再生エネ、導入目指す

東北電力は、3 月に再生エネ事業を統括する取締役による会議体を作った。 7 月には専門の部署を作り、本格的に再エネ事業に乗り出す。 手始めは、秋田県に大手商社の丸紅が計画している洋上風力発電事業への出資だ。 国内の再エネ事業者が主導する秋田沖の事業にも参加する。 10 - 20 年間で、原発 2 基分にあたる 200 万キロ・ワットの再生エネ導入を目指し、実現すれば、再生エネの構成比率は 6 ポイント増えて 20% に上昇するという。

東京電力も、銚子沖に洋上風力発電事業を展開するほか、再生エネで発電した電力販売にも乗り出す。 2012 年に、再生エネの電力を一定価格で大手電力が買い取る固定価格買い取り制度 (FIT) が導入され、日本の再生エネ比率は 10 年の 10% から 16% まで高まった。 再生エネで発電した電力を高値で買い取ってもらえるので、新規参入企業が急増したためだ。

こうした中、大手電力が自社で再エネ事業に乗り出してきた背景には、原発の再稼働の遅れがある。 東電、東北電の原発は再稼働しておらず、再稼働している九州電力などの原発についても、原子力規制委員会は今月、テロ対策施設が期限内に完成しなければ運転停止を命じる方針を決めた。 二酸化炭素の排出量が多い石炭火力発電に逆風が強まっていることも、背中を押している。

一方で、電気を送るための送電網の能力不足が原因で、再生エネ事業者の発電設備を大手電力の送電線に十分につなぐことができない問題が解決していない。 大手電力は、送電網の増設や運用方法の見直しなど、再生エネ事業者の受け入れを増やす対策を強いられ、現場は疲弊している。 このため、「FIT を追い風に再生エネ事業者に市場を侵食されるなら、自前で乗り出したほうがいい(大手電力幹部)」との考えもある。

人材、ノウハウの蓄積が不十分 … 海外頼みに

だが、大手電力の再生エネ事業が順調に拡大するかは不透明な点も多い。 これまで、原発と火力発電に注力してきたため、開発や運営面で風力発電について人材やノウハウの蓄積があまりない。 東電はデンマークの世界最大の洋上風力発電事業者のアーステッド社と提携した。 設備や料金面でも課題がある。 現状でも日本の風力発電設備容量の約 65% は海外製だが、日立製作所が風力発電設備の生産から撤退を決めており、今後、海外比率は高まることが確実だ。 風力発電の拡大が、国内の関連産業の活性化につながるのか分からない。

FIT によって高値で買い取られた再生エネの価格は、消費者に転嫁される。 特に、太陽光の急増が料金高止まりの原因となっている。 一方、風力発電の買い取り価格は事業用の太陽光よりも高い。 また、建設に時間がかかり、設備を海外から調達するため、事業コストが海外に比べて 1.5 倍高い。 今後、風力発電の拡大が値下げにつながるかどうかは見通せない。

4 - 5 月に晴天に恵まれると、需給バランス崩れ … 技術的問題も

再生エネには技術的な問題もある。 冷房や暖房の使用が急減し、電力使用量が減る 4 - 5 月は、晴天に恵まれると、太陽光の発電量が急激に増え、需要と供給のバランスを維持しにくくなる。 放置すれば、停電の恐れがあるため、九州電力は、太陽光の再生エネ事業者に発電量の抑制を求めている。

再生エネの変動をならすには、大型の蓄電池に余った電力をためることで対応できるが、現状では、決定打とはなり得ない。 北海道電力が持つ大規模蓄電池の建屋は、約 5,000 平方メートルと一般的な小中学校の体育館の 4 倍程度にあたる広大な敷地に建設されているが、10 万キロ・ワット程度の風力発電の出力変動にしか対応できず、コストも高い。 無論、蓄電池などに急速な技術革新が起こり、再生エネの出力変動を容易にならすことができるようになる可能性もある。 原発と火力発電に頼ってきた大手電力の経営陣は、将来を見据えて、どこに重点投資すべきか、難しい判断を迫られている。

専門的な人材集めたい … 東北電力 岡信副社長

東北電力の岡信慎一副社長に再生エネ事業の見通しを聞いた。

- - 再生エネ戦略の概要は。 「東北には再生エネの潜在力が豊富にある。 陸上、洋上風力を中心に 10 年間ぐらいの時間軸で再生エネの増強に取り組みたい。」

- - 風力発電の建設から運営まで自社で行うのか。 「発電設備の開発、運営、建て替えのすべてに関わりたい。 自社開発の計画以外にも大規模な風力発電事業を手がけている企業との提携も進めたい。」

- - 丸紅の洋上風力事業計画に参加を決めた。 「事業化に向けた調査段階だが、(建設が容易な)港湾の中につくるので、短期間での操業開始を目指している。 福島の阿武隈地域での陸上風力も、事業化調査を始めた。」 「風力を中心に 200 万キロ・ワットを開発すると、全体の電源に占める再生エネ比率は 20% ぐらいになる。 固定価格買い取り制度の期限が切れる 30 年頃、風力や太陽光 の設備を取得し、建て替えにも取り組み、自社の設備にしたい。」

- - 人材の確保は。 「直接、風力発電に関係していなくても当社の技術陣も知見はある。 中途採用を含めて、専門的なノウハウを持っている人を加え、新しい組織を作りたい。」

- - 再生エネを増やすと、発電コストの安い石炭火力発電所の稼働率が落ちる。 「東北外のエリアでも、電力販売を 30 年度までに 15 年度比で約 20% 伸ばし、石炭火力も価格競争力のある設備として生かしたい。」 (倉貫浩一、yomiuri = 5-6-19)