長生きの秘訣 3 要素は運動・栄養・そして … 静岡県調査

「適切な運動」、「栄養」、「社会活動への参加」。 この 3 要素を満たした人は、1 要素も満たさない人に比べて死亡率が半減するとした推計を静岡県が出した。 中でも社会活動への参加が「かぎ」となることが分かったという。 静岡県は 1999 年、計 1 万 363 人の高齢者(65 - 84 歳)を対象に飲酒や喫煙、運動、体格指数 (BMI) など 30 - 40 項目を調べていた。

今回はこの結果と、2010 年までに亡くなった 1,117 人の当時の回答内容を統計処理して算出した。 その結果、▽ 週 5 日以上歩く(運動)、▽ 肉、魚、大豆、卵を含むおかずを 1 日 3 回以上食べる(栄養)、▽ 町内の作業やボランティア活動に週 2 回以上取り組む(社会活動) - - の 3 要素を満たした人は、何も満たさない人より死亡率が 51% 減少した。 (asahi = 6-18-12)


免疫不全ブタ開発に成功 体内で人間の肝臓作れる可能性

免疫に関わる重要な遺伝子を持たない「免疫不全ブタ」をつくることに、農業生物資源研究所(茨城県つくば市)などの研究チームが成功した。 この技術を応用して、免疫が働かず拒絶反応が起きないブタができれば、ブタの体内で人間の肝臓などをつくる技術の開発につながるという。 13 日付の米科学誌「セル・ステムセル」に発表する。

免疫不全の実験動物はこれまで小動物のマウスやラットでつくられた例があるが、大型動物のブタでは初めて。 ブタは生理学的により人間に近く、医学への応用が期待できるという。 研究チームは遺伝子組み換え技術や体細胞クローン技術を使って、「IL2rg」という遺伝子が欠損し、免疫不全になったブタ 14 頭をつくることに成功した。 これらのブタは免疫にかかわる T 細胞や NK 細胞がつくられなくなった。 (asahi = 6-16-12)


6 歳未満脳死:富山大病院 臓器提供の経緯などを説明

改正臓器移植法に基づき初めて 6 歳未満で脳死と判定された男児からの臓器摘出手術が 15 日、富山大病院(富山市)で行われた。 臓器の移植手術は計 3 病院で実施。 このうち心臓は大阪大病院(大阪府吹田市)で拡張型心筋症の 10 歳未満の女児に移植され、手術は無事終了した。 富山大病院は記者会見で今回の脳死臓器提供の経緯などを説明、「慎重の上に慎重を重ねた」などと説明した。

男児からの臓器摘出手術は午後 0 時 6 分に始まり、約 3 時間半かけて終了した。 会見した富山大病院の井上博病院長によると、男児は今月初旬、事故で心肺停止に陥った後、低酸素性脳症となった。 高度な対応が必要として地元の病院から転送されてきたという。

今月 7 日、病院側が「重篤な脳障害があり、回復を見込んだ治療は難しい」と伝えた際、家族から臓器提供の申し出があったという。 虐待の有無については、院内の児童安全保護委員会で疑いがないことを判断したうえで、マニュアルに沿い警察と児童相談所にも確認したという。 井上病院長は「(救命は)できる限りのことはした。 虐待の所見は何もなかった。」と話した。 (mainichi = 6-15-12)


糖尿病治療、糖質制限食なら続けられる カロリー不問

糖尿病患者向けに、食事の糖分量を抑えた「糖質制限食」が注目されている。 日本糖尿病学会も 5 月、糖質制限食を治療法の一つとして初めて認めた。 従来のカロリー制限食に比べ取り組みやすいと、病院やレストラン、食品メーカーなどで糖質制限食を採り入れる動きが広がってきた。

血糖値が改善・体重も減

糖質は炭水化物や芋類などに多く含まれる。 例えば、ご飯 1 膳の糖質量は約 55 グラム、6 枚切りパンは 1 枚あたり約 40 グラムに上る。 和食で使う砂糖やみりんなどの調味料にも注意が必要だ。 一方、カロリー制限食では控える肉類や乳製品にはあまり含まれていない。 (asahi = 6-14-12)


ディーゼル排ガス「発がん性ある」 WHO の研究機関

世界保健機関 (WHO) の国際がん研究機関 (IARC) は 12 日、ディーゼルエンジンの排出ガスについて「発がん性がある」と認定したと発表した。 これまでの「おそらくある」から 1 段階引き上げ、明確な関連性が認められる最も危険な分類とした。

フランス・リヨンで 12 日まで開いた作業部会で、専門家が全会一致で決めた。 アスベストやヒ素と同じ分類になる。 部会のクリストフ・ポルティエ委員長は声明で「説得力のある科学的根拠がある。 ディーゼルの排ガスは人間に肺がんを引き起こすと結論づけた。」と述べた。

ディーゼルの排ガスに含まれるすす成分は、粒子状物質 (PM) と呼ばれ、発がん性が指摘されてきたものだ。 そこで欧州諸国ではディーゼル車の排ガス基準を強化し、自動車メーカーもPM排出の少ない新型エンジンを開発。 「クリーンディーゼル」として定着している。

だが、IARC は「(PM の減少が)直ちに健康にどう影響するのかはさらなる研究が必要」と強調。 旧型のエンジンに取って代わるには時間もかかり、途上国ではそうした技術入手も難しいとした上で、「世界中で、こうした排ガスを減らすべきだ」と警告した。 (アテネ = 前川浩之、asahi = 6-13-12)


痛風、40 年ぶり治療薬 帝人が開発、武田も事業の柱に

痛風治療薬に国内の製薬会社が力を入れ始めた。 原因となる尿酸ができるのを防ぐ薬は長く新薬が出ていなかったが、帝人ファーマが約 40 年ぶりに新開発。 国内最大手の武田薬品工業と手を結び、年 1 千億円を売り上げる大型薬に育てようとしている。 武田は米企業も買収し、痛風分野を事業の柱の一つにする考えだ。

国内患者 96 万人

痛風患者は、国内で約 96 万人(2010 年)にのぼる。 25 年前の 4 倍だ。 予備軍である高尿酸血症の患者は 1,600 万人いて、30 歳以上では約 3 割が患っているという推計もある。 患者は世界的に増える傾向にあり、痛風治療薬は成長市場といえる。 治療薬には痛みを抑える薬や、尿酸を体外に排出するのを促す薬などがある。 ただ、そもそも尿酸が体内でつくられるのを防ぐタイプの薬は、英グラクソ・スミスクラインの「ザイロリック」しかなく、日本では 1969 年に発売された。 (asahi = 6-8-12)


C 型肝炎新薬「重大な副作用」追記へ 急性腎不全など

重い腎機能障害が相次いで報告されている C 型肝炎の新薬テラビック(一般名テラプレビル)について、厚生労働省は 5 日、医師向け説明書の「重大な副作用」欄に急性腎不全などを追加するよう、製造元の田辺三菱製薬に指示した。 テラビックは昨年 11 月に発売された。 重い腎機能障害の副作用は、承認のための臨床試験(治験)ではわからず、説明書に書かれていなかった。 使用開始から 1 週間以内に腎機能検査を少なくとも 2 度実施することも記載するよう求めた。 (asahi = 6-6-12)


80 歳で自分の歯 20 本以上、38% 過去最高に

80 歳で自分の歯が 20 本以上ある人は、2011 年で 3 人に 1 人になったとする調査結果を厚生労働省が発表した。 調査は 6 年に 1 度で、1987 年の 8% から毎回増え続け、今回は過去最高の 38% となった。 厚労省は 22 年に 50% をめざす方針。 厚労省は「歯を失う原因の歯周病を予防する意識が高まってきたためではないか」とみている。 4 - 10 日は歯の衛生週間。

調査は、国民生活基礎調査のデータから無作為に選んだ 1 歳以上の男女 4,253 人分について分析した。 75 歳以上 85 歳未満のデータから推計した 80 歳で 20 本以上の歯がある人の割合は 38% で、前回 05 年の 24% より 14 ポイント増えた。 永久歯の数は通常上下合わせて 28 本で、このうち 20 本残っていれば、高齢者でも硬い物を食べられるとされる。 (asahi = 6-4-12)


コーヒー愛飲家「死亡リスク低い」 米で追跡調査

コーヒーを 1 日 2 杯以上飲む人は、飲まない人に比べて死亡するリスクが 10% 以上低いことが、米国立保健研究所 (NIH) の大規模追跡調査でわかった。 ただし、がんによる死亡リスクは減らなかった。 米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表された。

NIH は 1995 年から 2008 年まで 14 年間にわたり、米国内に住む 50 - 71 歳の男性約 23 万人、女性約 17 万人を追跡した。 コーヒーをよく飲む人ほど、喫煙や飲酒、肉食を好むなどの習慣があったため、これらの要因を補正した。 コーヒーを全く飲まない人に比べ、1 日 1 杯飲む男性は 6%、2 - 3 杯は 10%、4 - 5 杯は 12%、女性はそれぞれ 5%、13%、16% 死亡リスクが低かった。 1 杯以下ではほとんどリスクは変わらず、6 杯以上飲むと、4 - 5 杯飲む人よりリスクはやや高かった。 (asahi = 5-31-12)


ネックレス、ピアス … 金属アレルギーの原因、厚労省調査

ネックレスやピアスに使われる特定の金属に気をつけて - -。 皮膚炎になった患者が身につけていた装飾品を調べたところ、ニッケルやコバルトなど 3 種類の金属がアレルギーの主な原因になっていたことが、厚生労働省研究班の調査でわかった。 専門家は改めて注意を呼びかけている。

研究班が全国 77 カ所の病院で 2010 年度に皮膚炎を起こした約 900 人を対象に調査。 このうち、身につけていた装飾品が原因で皮膚炎を起こした約 30 人について調べたところ、ネックレス (16%)、ベルトのバックル (9%)、ピアス (8%) の順に多かった。 これらの製品では、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会が日本人が反応しやすい物質として指定する「硫酸ニッケル」、「塩化コバルト」、「重クロム酸カリウム」を含んだものが大半を占めた。 (asahi = 5-30-12)


トマトでアルコール濃度低下 お酒と一緒にどうぞ

カゴメとアサヒグループホールディングスは 25 日、お酒を飲む時に一緒にトマトを食べると、血液中のアルコール濃度が低下することを、共同研究で確認したと発表した。 酔いの回りが緩やかになり、酔いがさめるのも早くなる効果が期待できるという。

研究では、20 - 40 代の男性 12 人を被験者とし、アルコール(焼酎約 100 ミリリットル)とトマトジュース(160 ミリリットル缶 3 本)を一緒に飲んだ場合と、トマトジュースの代わりに同量の水を一緒に飲んだ場合の、それぞれの血液中のアルコール濃度を測定した。 その結果、トマトジュースと一緒に飲んだ場合は、同量の水を一緒に飲んだ場合と比べて、アルコール濃度が平均で 3 割低かった。 体内からアルコールが完全に分解される時間も、約 50 分早かった。 (asahi = 5-25-12)


緊急避妊薬処方 5 万件 承認から 1 年 徐々に普及

避妊に失敗した、性犯罪にあったといった緊急事態に、望まない妊娠を避ける最後の手段となる緊急避妊薬が、日本で承認・処方されて 24 日で 1 年たち、これまでの処方数が約 5 万件にのぼることがわかった。 有効な緊急避妊法が広がれば、人工妊娠中絶の減少につながるとみられているが、すべての産婦人科にあるわけではないなど、課題もある。

「ノルレボ錠」は昨年 2 月、緊急避妊薬として国内で初めて承認され、昨年 5 月 24 日から処方が始まった。 販売元のあすか製薬(東京)によると、排卵を抑制したり遅らせたりさせ、性交の 72 時間以内に服用することで、女性の体内に入った精子が排卵の前に受精能力を失い、妊娠する可能性を低める効果がある。 服用しても妊娠することもあり、国内の治験での「妊娠阻止率」は 81%、海外では 84% だった。 不正出血、頭痛などの副作用が報告されている。

日本家族計画協会家族計画研究センター所長の北村邦夫医師によると、これまでに全国で約 5 万件処方された。 健康保険はきかず、医療機関によって 1 万 5 千円程度かかるという。 (asahi = 5-24-12)


公的予防接種に 3 種追加 子宮頸がん・ヒブ・肺炎球菌

厚生労働省は 23 日、子宮頸(けい)がんと、乳幼児の細菌性髄膜炎の原因になるインフルエンザ菌b型(ヒブ)、小児用肺炎球菌の 3 ワクチンについて、予防接種法に基づく公的な予防接種に加える方針を決めた。 来年度から制度化する。 ただ、実施主体の市町村にとっては負担増になるため、財源の手当てが課題になる。

同日開いた専門家らによる予防接種部会が、この 3 ワクチンと、水痘(水ぼうそう)、おたふくかぜ、B 型肝炎、成人用肺炎球菌の計 7 ワクチンについて、法律に基づく「定期接種」に追加することを求めた。 3 ワクチンには 2010 年度から暫定的に公費助成が実施されている。 今年度末に期限を迎えるため、厚労省は 3 ワクチンを優先した。 今国会への予防接種法改正案の提出をめざす。 (asahi = 5-23-12)


禁煙推進へ数値目標「喫煙率 12%」に 近く閣議決定

たばこの喫煙率を 2022 年に 12% に削減する数値目標を盛り込んだ計画が近く閣議決定される見通しになった。 23 日、民主党の厚生労働部門会議が削減目標を盛り込んだ「がん対策推進基本計画」の改定案で認めた。 喫煙率の数値目標をめぐっては、厚生労働省が掲げようとしてはたばこ業界や自民党農林族の反発を受けて取り下げてきた。 10 年越しで目標の数値化が実現する。

国内の喫煙率は 10 年の調査で 19.5% (男性 32.2%、女性 8.4%)。 計画はこれを 22 年までに 12% に下げる。 同じ調査で禁煙を希望する喫煙者が 37.6% いた。 この人たちにニコチンパッチによる治療などの禁煙支援をし、全員が禁煙する想定で削減目標を設定した。 5 年ぶりに見直すがん対策の計画案に盛り込んだ。

喫煙率の目標は 1999 年、旧厚生省が健康づくり運動の数値目標で半減を掲げようとしたものの、たばこ業界や自民党農林族の反発を受け頓挫。 06 年の見直しや 07 年のがん対策の計画策定時も見送られた。 今回も日本たばこ産業 (JT) などが「喫煙は個々人が判断すべきもの」、「財政、販売店、葉タバコ農家に影響する」と反発していた。 (asahi = 5-23-12)


ニラと思ったらスイセン … 食べた一家 5 人、中毒症状

旭川市内の自営業者の一家 5 人が 20 日、ニラと間違えて庭のスイセンの葉を誤って食べ、中毒症状を起こして病院で治療を受けた。 症状は軽いという。

旭川東署によると、同日午前 8 時前、朝食用に家庭菜園へニラを採りに行った家族の一人が、開花前のスイセンの葉をニラと見間違って持ち帰り、卵とじにして食べたところ、吐き気などの症状が出て救急車で病院に運ばれた。 スイセンには有毒成分があり、葉がニラやノビルに似ているため、開花前の時期に誤食事故が起きることがある。 (asahi = 5-20-12)


ハーブ薬物 4 種、麻薬指定へ 使用や所持も取り締まり

厚生労働省は、ハーブなどとして売られ、吸引すると幻覚作用がある 4 種類の薬物を麻薬に指定する方針を決めた。 現在、薬事法で譲渡を禁じているが、指定されると、麻薬取締法で使用や所持も取り締まることができるようになる。 指定は 8 月上旬の予定。

法規制の対象とならない「脱法ハーブ」が横行している問題で、厚労省が実施する規制強化策の一つ。 指定するのは「JWH-018」、「カンナビシクロヘキサノール」、「MDPV」、「4-メチルメトカチノン」。 厚労省の検討会が、依存性や作用から麻薬として扱うことを認めた。 (asahi = 5-19-12)


世界の 3 人に 1 人高血圧、死因の 6 割成人病 WHO 報告

世界保健機関 (WHO) は 16 日、世界のほぼ 3 人に 1 人が高血圧で、死因の 63% が生活習慣病だとする報告書を発表した。 人口が増えて寿命も延び、生活が豊かになった新興国や途上国でも生活習慣病が増えた。

加盟する 194 カ国の指標を集めた「世界保健統計 2012」で、今回初めて、高血圧と糖尿の人の割合を調べた。 世界平均では、血圧が 140 以上の人の割合は男性 29.2%、女性 24.8%。 世界で一般的に高血糖とされる人の割合は、男性 9.8%、女性 9.2% だった。 寿命は 1990 年の 64 歳から 09 年は 68 歳に延びた。

08 年の推定死者 5,700 万人のうち、6 割強の 3,600 万人が、生活習慣病である「伝染しない病気」だった。 最も多いのは 48% の心臓血管疾患で、がん 21%、慢性呼吸器疾患 12% と続く。 それらの原因別では、高血圧が 13% で最多。 喫煙が 9%、高血糖が 6%、運動不足が 6%、肥満が 5% だった。 (asahi = 5-16-12)


京大、米で iPS 細胞 3 件目の特許 製薬にも権利

人工多能性幹細胞(iPS 細胞)に関わる京都大の米国での 3 件目の特許が、3 月に成立していたことがわかった。 今回は iPS 細胞からできた心臓や神経といった細胞で薬を開発することなどにも権利が及ぶ。 米国ではこれまで、皮膚などの細胞から山中伸弥教授らの方法で iPS 細胞をつくる特許が認められていた。 今回は、その iPS 細胞をもとに心臓や神経の細胞に変化させる方法が対象。 京大の権利はできた細胞を企業などが買って研究に使う場合にも及ぶ。

iPS からつくった細胞を使って治療薬の候補を探したり、副作用がないか調べたりする研究が世界の製薬企業で盛んだ。 こうした活動にも京大の許可が必要になる。 ただし、iPS 細胞をつくった機関と、それをほかの細胞に変えた機関が違う場合、その細胞を使う研究に権利は及ばない。 (asahi = 5-12-12)


膝の軟骨再生、治験開始へ 神戸大など

神戸大と先端医療センター(神戸市)は、スポーツや事故などで傷ついた膝(ひざ)の軟骨を自分の細胞を使って再生させる治療について、国の承認を得るのに必要な臨床試験(治験)を今月内に始める。 同種の取り組みでは、国内で最も早く保険がきく治療になると期待されている。

この治療は、自分の膝に残っている軟骨から、数ミリリットルの細胞を注射で取り出して培養し、約 10 日後に欠損部に移植する。 今月内に始める治験は 20 - 50 歳の 10 人を予定。 1 年間経過を観察する。 残った軟骨の一部を切り出して、そのまま移し替えるなどの治療法はすでにあるが、対応できるのは 4 平方センチ程度の傷。 新方式なら、約 9 平方センチまで治療できるようになるという。

軟骨の再生治療は欧米では 2,500 例以上の実施例があるが、国内では取り組みが遅れている。 責任者の神戸大・黒田良祐准教授(整形外科)は「今後、靱帯(じんたい)損傷を伴う膝のけがや高齢者に多い変形性膝関節症にも広げたい」と話している。 (権敬淑、asahi = 5-10-12)


のんびりジョギングで 5、6 年長生き デンマークで調査

ゆっくりしたペースでジョギングをほどほどにする習慣がある人は、長生きできそうだ - - そんな調査結果が 5 日、アイルランド・ダブリンで開かれた欧州心臓学会の関連学会で発表された。 発表したのはデンマークの研究チーム。 循環器病の予防のため、首都コペンハーゲンの市民約 2 万人を対象に 1976 年に始まった疫学調査の参加者のうち、ジョギングの習慣がある 1,878 人に着目し、死亡率を調べた。 (asahi = 5-9-12)


カドミウム摂取量「がんと無関係」 がんセンター調査

発がん性があるとされてきたカドミウムを食事から多くとっても、少量しか食べない人と比べてがんになるリスクは増えないことが国立がん研究センターの研究班の調査でわかった。

秋田や沖縄など、カドミウムに汚染されていない 9 府県の 45 - 74 歳の男女約 9 万人を約 9 年にわたり調査した。うち、5,849 人が何らかのがんになった。 米や小麦、野菜など 34 食品について、どれだけ食べたかを報告してもらい、体内に入ったカドミウムの量を推計。 量によって四つのグループに分け、がんの発生リスクを比べた。

その結果、すべてのがんリスクと、カドミウム摂取量の関連は見られなかった。 研究班は「米を主食とする日本人は、カドミウムの摂取量が欧米人より多いが、ふつうに食べる範囲では問題がないことがわかった」としている。 (asahi = 5-3-12)


鳥インフル「4 カ所変異で空気感染」 英誌論文公表

人に感染すると致死率が 5 割以上の高病原性鳥インフルエンザウイルスは、一つの遺伝子が 4 カ所変異するだけで哺乳類の間で空気感染するようになることがわかった。 河岡義裕東京大医科学研究所教授らが 3 日付の英科学誌ネイチャー電子版で発表した。 1 カ所だけ変異したウイルスは国内でも見つかっている。

論文は、バイオテロに悪用されかねないとの理由で、米政府の委員会から昨年 12 月に内容の一部削除を求められ、公表が先延ばしになっていた。 高病原性鳥インフルエンザが哺乳類の間で空気感染するようになれば、世界的大流行につながる恐れがある。

河岡さんらは、感染に重要なウイルスの遺伝子を操作して 210 万種類の変異を作り、人の気道や肺の組織に感染させるなどして、人に感染して増えやすくなる変異を探した。 イタチの一種フェレットでの実験で、遺伝子に 4 カ所の変異が起きるだけで、空気感染して増えるようになることがわかった。 (asahi = 5-3-12)

◇ ◇ ◇

鳥インフル論文、一転して公開 OK テロ直結せずと判断

高病原性鳥インフルエンザ (H5N1) が哺乳類でも空気感染することを示した日本とオランダの論文に対し、バイオテロに関する米政府の委員会が内容の一部削除を求めていた問題で、委員会は 30 日、一転して論文の全文公表を認める声明を発表した。 2 論文が投稿された英米の科学誌ネイチャーとサイエンスの編集長は、委員会の声明を歓迎するコメントを発表。 論文は全文掲載される見通しとなった。

委員会は昨年末、「テロに悪用されかねない」として実験の詳細を論文から削除する勧告を出した。 しかし、著者らから提示された追加データなどを検討した結果、公表してもテロには直結しないと判断。 河岡義裕・東京大学医科学研究所教授らの日本の論文については全会一致で、オランダの論文については賛成多数で、全文公表を認めた。 (asahi = 4-1-12)


新生児の体重、減少の一途 30 年で 250 グラム軽く

生まれたばかりの赤ちゃんの体重が 30 年以上、減り続けている。 厚生労働省研究班の分析で、若い女性のスリム化や、少子化で初産の割合が増えたことが背景にあることがわかった。 生まれた時の体重が少ないと、将来、生活習慣病になりやすいという研究が相次いでおり、厚労省は赤ちゃんの体重と将来の健康影響について調査を始める。

厚労省の乳幼児身体発育調査の最新結果(2010 年)によると、男児の出生時体重は平均 2,980 グラムで 10 年前より 61 グラム少なく、女児は平均 2,910 グラムで 45 グラム少なかった。 最も体重が多かった 1980 年より、男女とも 250 グラム減った。 国立保健医療科学院の加藤則子統括研究官によると、これだけ長期間、新生児の体重が減り続けている国は先進国でも珍しいという。 (asahi = 4-30-12)


子の甲状腺「安心できる」 福島、問題なしが 99.5%

福島県は 26 日、東京電力福島第一原発事故に伴う放射線の健康影響を見守る県民健康調査で、子ども約 3 万 8 千人の甲状腺検査の結果を発表した。 しこりがないなど問題ないとされた子どもが 99.5% を占め、残りも良性の可能性が高いと判定。 県の検討委員会は「通常と変わりない状況で安心できる」としている。

避難区域を含む 13 市町村に当時いた 18 歳以下の約 4 万 7 千人が対象で、約 8 割の 3 万 8,114 人の検査を終えた。 約 0.5% の 186 人に良性の可能性が高いしこりなどが見つかり、念のため再度の超音波検査や血液検査が必要としている。 県は、すべての子ども約 36 万人を対象に、生涯にわたって甲状腺に影響が出ないか追跡していく。 (asahi = 4-30-12)


カリフォルニア州で BSE 感染牛確認 米で 4 例目

米農務省は 24 日、米カリフォルニア州の乳牛 1 頭で BSE (牛海綿状脳症)の感染が確認されたと発表した。 米国での BSE 確認は 2006 年以来で、4 例目。 感染牛は処分され、食用として流通することはないとしている。 (asahi = 4-22-12)


骨作るたんぱく質発見 骨粗鬆症治療に期待 東京医歯大

骨の中が空洞化する「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」など骨量が減る病気について、その減少をくい止めるたんぱく質を、東京医科歯科大の高柳広教授(骨免疫学)らが見つけた。 国内に患者が 1,300 万人いるとされる骨粗鬆症や関節リウマチなど骨の病気への治療の応用が期待される。

骨は、破壊(吸収)と新たな形成のバランスが保たれることで、健康な状態を保っている。 このバランスが崩れ、吸収が多くなると骨が空洞化して骨粗鬆症になったり、逆の場合は骨が密になる「大理石骨病」などを引き起こす。 現在の骨粗鬆症の治療は、吸収を抑えることが中心で、形成を促す薬はほとんどないという。

高柳教授らは、もともと神経や免疫をコントロールする作用があることが知られていた「セマフォリン 3A (セマ 3A)」というたんぱく質に、骨の破壊を抑える効果があることを確認した。 このたんぱく質を、マウスに静脈注射したところ、吸収の細胞を抑え、形成の細胞が促進され、骨量が適切に増えた。 (asahi = 4-22-12)


不活化ポリオワクチン承認へ 秋に公費接種可能の見込み

厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の部会は 19 日、ウイルスの病原性をなくした不活化ポリオワクチンの製造販売を承認することを了承した。 生ワクチンのように副作用で手足のまひを起こす危険はない。 夏前には国内で初めて承認され、秋には公費による接種が受けられる見込みだ。

承認されるのはサノフィパスツール社のポリオ単独の不活化ワクチン。 注射で計 4 回受ける。 承認申請は今年 2 月で、異例の早さで承認の方針が認められた。 ただ世界では 86 カ国で承認されている。 厚労省は今後、予防接種法の省令を改正し、公費で受けられる予防接種に不活化ポリオワクチンを追加する。 国内で実施された臨床試験(治験)では、重い副作用は確認されていないという。 (ashi = 4-20-12)


日本の中絶、母体に重い負担 WHO が勧める方法、1 割

日本で行われている人工妊娠中絶では、世界保健機関 (WHO) が安全と勧めている「吸引法」は 1 割に過ぎず、事故が比較的起きやすい方法が 8 割を占めていた。 神奈川県立保健福祉大などの調査でわかった。 中絶に関連した深刻な事故は、この 5 年で 72 件あった。 WHO が勧める中絶薬も認可されておらず、日本の女性は体への負担が軽い手法を選びにくい実態が浮かんだ。

妊娠初期の中絶法には、器具で胎児をかき出す「掻爬(そうは)法」や、金属棒で吸い取る「吸引法」がある。 掻爬法は医師の技量が必要で、子宮に穴があいたり、腸を傷つけたりする事故が起きることがある。 日本学術振興会の研究で同大の杵淵(きねふち)恵美子教授(看護学)らが 2010 年、中絶手術ができる医師がいる 932 の医療機関を対象に行い、343 施設から回答を得た。 この結果、吸引法は 11% だけで、掻爬法が 35%、掻爬法と吸引法の組み合わせが 48% を占めた。 (asahi = 4-19-12)


発毛の元つくり移植、マウスで成功 新しい増毛法に期待

毛穴の奥にあり、毛を生み出す「毛包(もうほう)」の元をつくって移植し、毛髪を再生する方法を辻孝・東京理科大教授らのチームがマウスの実験で見つけた。 再生された毛は神経とつながり、抜けても生え替わることが確認された。 大量に再生する技術などに課題はあるが、新しい増毛法につながると期待される。 17 日付の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズで発表した。

チームは、マウスのヒゲの毛包にある「上皮性幹細胞」と「毛乳頭細胞」の 2 種類の細胞をとり出して培養し、毛包の元をつくった。 別のマウスの背中に移植した結果、約 3 週間後に 74% の確率で背中から毛が生え始めた。 さらに 10 日前後で天然のヒゲと同様に 1 センチくらいまで伸び、その後生え替わった。 刺激への反応やたんぱく質などを調べたところ、周りの神経や筋肉ともつながっていた。 (asahi = 4-18-12)


「海藻を毎日」甲状腺がんリスクの一因? 閉経後の女性

海藻を毎日食べる閉経後の女性は、甲状腺がんになるリスクが週 2 日以下の約 2.4 倍になることが、国立がん研究センターと国立環境研究所の研究班の調査でわかった。 研究班は「海藻に含まれるヨウ素ががんのリスクを上げる原因の可能性がある」と分析している。

大阪や沖縄など 9 府県の 40 - 69 歳の女性約 5 万人を10 年以上追跡調査した。 このうち甲状腺がんになった女性 134 人を、海藻を食べる頻度で「ほとんど毎日」、「週 3、4 日」、「週 2 日以下」の 3 グループにわけて、調べた。 閉経前の女性では、有意差がなかった。 一方、日本人の甲状腺がんの約 9 割を占める乳頭がんの 113 人を解析すると、全女性でも毎日食べると週 2 日以下の 1.7 倍。 閉経後女性が毎日食べると、週 2 日以下の 3.8 倍も高かった。 (asahi = 4-11-12)


トリカブトの食中毒か 男性死亡、父親も重体 函館

北海道函館市の漁業男性 (42) が有毒なトリカブトを食べたとみられる食中毒症状で死亡したと 8 日、函館中央署が発表した。 同じ症状で父親 (71) が意識不明の重体、弟 (41) も病院で治療を受けている。 同署は、トリカブトと葉の形などが似ている山菜のニリンソウと間違って食べたとみている。

同署によると、男性は 7 日、山菜採りに出かけて持ち帰った野草を「ニリンソウだ」と言って母親 (65) に渡し、同日午後 5 時半ごろ、家族でおひたしにして食べた。 その後、男性らが嘔吐などの食中毒症状を訴えた。 5 人家族で、母親は歯の調子が悪く食べず、姉 (44) は外出中だった。 (asahi = 4-8-12)

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アオブダイ食べた男性中毒死 漁で取り自宅で調理 長崎

長崎県は 7 日、漁で取ったアオブダイを自宅で調理して食べた同県新上五島町の男性 (78) が中毒死したと発表した。 アオブダイの内臓には、筋肉痛や呼吸困難を起こす猛毒パリトキシンがあり、中毒死は 1986 年に愛知県で 1 人が死亡して以来という。

男性は 3 月 20 日夜、アオブダイを刺し身と煮付けにし、妻 (70) と息子 (39) の家族 3 人で食べた。 約 3 時間半後、男性は背中から足にかけて痛みを訴えて病院で受診したが、意識不明となり、翌 21 日に死亡。 妻も同様の症状で入院し、息子にも軽い症状が表れたという。 県によると、アオブダイは、パリトキシンを持つスナギンチャクを餌にするため、内臓に毒がたまる。 国などが出荷自粛を要請しており、一般の流通ルートに乗ることはないという。 (asahi = 4-7-12)


牛の生レバー提供禁止 加熱を義務化 厚労省が方針決定

厚生労働省は 30 日、生食用の牛レバー(肝臓)の提供を食品衛生法で禁止する方針を決めた。 この日、同省の薬事・食品衛生審議会の部会が、肝臓の内部全体への加熱を義務づけることを了承した。 牛の肝臓内部に、重い食中毒を起こす O157 など腸管出血性大腸菌がいることがわかったためだ。 厚労省は罰則付きの規制の手続きに入る。

厚労省が 16 自治体の食肉衛生研究所などに依頼した昨年 8 月から 11 月までの調査で、腸管出血性大腸菌が肝臓内部で確認された。 昨年 4 月に発覚した焼き肉チェーンの集団食中毒事件を受け、厚労省はユッケなど生食用の牛肉の取り扱い基準を見直した。 生食用牛肉よりも食中毒が多い生レバーについても対応を検討していた。 (asahi = 3-30-12)


がん細胞事典、米英で作成中 患者の抗がん剤効果予測へ

「この抗がん剤は、この患者のこのがんに効くのか」を予測することは難しいが、がん細胞の性質を詳しく調べてデータベース化すると、患者ごとに効果が期待できる抗がん剤選びに役立つ可能性がある。 そんな狙いの「がん細胞百科事典」の編集が始まり、29 日付英科学誌ネイチャーに詳細が発表された。

編集は、米ブロード研究所や英サンガー研究所などの二つの研究チームがそれぞれ別途、進めている。 両チームで合計 1,500 種類以上の培養がん細胞を分析。 未承認のものも含む合計 150 種類以上の抗がん剤を作用させ、細胞の増殖が抑えられるかどうかや遺伝子の働きがどう変わるかなども分析し、登録している。

抗がん剤の効果は少数の遺伝子の働きだけでは説明できないことが多いが、「百科事典」は、大量の遺伝子を網羅的に分析しており、より正確に予測できる可能性がある。 実際、小児がんの一種では、遺伝子の特別な変異があると、予想外の薬が増殖を抑えることが、今回わかった。 (asahi = 3-29-12)


がん罹患率 4% 増加 男性は胃、女性は乳がんが最多

国立がん研究センターは 21 日、全国 33 府県の地域がん登録の集計・分析結果(2007 年度版)を発表した。 人口 10 万人当たり、新たにがんと診断された人数を示す罹患(りかん)率は 323.6 で、前年より約 4% 増えた。 年齢構成のばらつきを調整した統計では、男性で胃、女性では乳がんがもっとも多かったが、男女ともに肺がんが増える傾向にあるという。

発表によると、07 年に全国でがんと診断された人は約 70 万人。 部位別罹患率の順位は男女とも前年と変わらないが、男性でもっとも多い胃がんは減る傾向で、肺がんは増加傾向だった。 年齢構成を調整する前の実数では 2 位の大腸がんよりも多く「喫煙者の多い世代が高齢化しており、今後しばらくは肺がんが増える傾向は続くとみられる」と松田智大・がんセンター地域がん登録室長は分析する。 (asahi = 3-23-12)


心筋梗塞「注意報」出せるかも 米チーム、血液検査で

死亡率が高い心臓発作(急性心筋梗塞)が起きる数週間前に、血液検査で「注意報」を出せるかもしれない。 心臓病患者の救命につながるそんな研究結果を、米スクリプス研究所などのチームが 22 日付の米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシンに発表した。

チームは、米サンディエゴにある四つの病院に運ばれた心臓発作の 50 人の血液を調べた。 血液を流れる内皮細胞の数が、健康な人の 5 倍近く多い傾向があった。 形も異常で、2 倍以上の大きさで核が三つ以上ある細胞が多く確認された。 チームは「研究が進めば、救急搬送された患者がすぐに心臓発作を起こしそうなのか、数週間後なのか、血液検査で見極められるようになるかもしれない」とし、2 年以内の実用化も視野に入れている。 (asahi = 3-22-12)


薬が効かない慢性痛、関与のたんぱく質発見 京大

鎮痛薬がほとんど効かない慢性の痛みに関わるたんぱく質を、京都大のグループが突き止めた。 これを手がかりに、新しい痛み止めを開発できる可能性がある。 16 日、発表した。 がんなどの病気や、けがに伴って神経に異常が起きた場合、アスピリンやモルヒネといった通常の鎮痛剤がほとんど効かず、けがが治っても痛みが長期間続くことがある。

京大の中川貴之准教授(薬理学)らは、神経が障害を受けたときに働く免疫細胞に注目し、この細胞にたくさんあるたんぱく質「TRPM2」をもたないマウスをつくった。 すると、このマウスは通常の痛みにはほかのマウスと同様に反応したが、神経に異常があるときに起きる痛みには平気だった。 (asahi = 3-18-12)


昨年の風疹患者最多に 08 年以来、今年も昨年の倍近く

国立感染症研究所は 16 日、昨年の風疹患者の報告数が 371 人と、全患者数を把握できるようになった 2008 年以降最多だったと発表した。 今年も昨年同期の 2 倍近い勢い。 妊娠初期の女性が、感染すれば胎児に影響を与えかねず、厚生労働省は注意を促している。

これまでの報告数は 08 年が 292 人、09 年 147 人、10 年 87 人で、昨年は大幅に多かった。 人口 100 万人当たりの都道府県別の報告数では、福岡県が 17 人、神奈川県 7 人、大阪府 6 人と多かった。 年代・性別では、20 代と 30 代の男性で 43% を占めた。 一方、はしか(麻疹)は 08 年以降、減り続け、08 年は 1 万 1,012 人で、昨年は 434 人だった。 (asahi = 3-16-12)


自閉症、カギの物質発見 米研究所、マウスで症状再現

自閉症の主な三つの症状「社会性の低下」、「コミュニケーションの欠如」、「強いこだわり」をすべて発症するマウスを、米サンフォード・バーナム医学研究所が作った。 カギは神経の伝達にかかわる物質「ヘパラン硫酸」。 自閉症に関係する物質や遺伝子は複数見つかっているが、すべての症状を併せ持つようなマウスができたのは珍しい。 自閉症の原因解明につながると期待される。

ヘパラン硫酸は、情報伝達をする脳の器官の発達を促す物質。 研究所の入江史敏研究員らが遺伝子を操作して、この物質を作れなくしたマウスは、脳の構造は正常だが、仲間には無関心で、知らないマウスを見ると何もせずに逃げ出した。 複数の穴があるのに、一つだけに執着していた。

ヘパラン硫酸は、自閉症の原因と考えられている複数の分子とくっついて、その働きを制御していると考えられている。 そのため、これがないと複数の症状が出るらしい。 (asahi = 3-15-12)


ナノ材料、多剤耐性菌増やす恐れ 中国研究チームが発表

化粧品や薬品など日用品にも利用が広まっているナノ材料が、多くの抗生物質が効かない多剤耐性菌を増やす可能性があることがわかった。 中国のチームが今週の米科学アカデミー紀要電子版に実験結果を発表した。 細菌は、通常の DNA とは別のプラスミドと呼ばれる DNA を持つ。 これが別の細菌に移ることがあり、薬剤耐性が広がると考えられている。

酸化アルミニウムや二酸化ケイ素などのナノ材料を水に加え、大腸菌からサルモネラ属菌へプラスミドの中の多剤耐性遺伝子が移る効率を調べたところ、ナノ材料なしの場合に比べて数十〜数百倍になっていた。 ナノ材料が細菌の細胞膜を傷つけ、耐性遺伝子が細胞間で移りやすくなったらしい。 (asahi = 3-14-12)


幹細胞で大腸の潰瘍治す 医科歯科大などマウスで成功

大腸から取り出した、たった一つの幹細胞を体外で増やし、大腸に移植して潰瘍(かいよう)を治すことに、東京医科歯科大の渡辺守教授や中村哲也講師らがマウスの実験で成功した。 人で応用できれば、自分の細胞を使った再生医療につながる可能性がある。 12 日付の米医学誌ネイチャーメディシン(電子版)で発表した。

渡辺さんらは、大腸の表面にある細胞から幹細胞を一つだけ分離。 実験装置のなかで幹細胞に送る栄養を工夫して、大腸の細胞では難しいとされる体外での培養に成功した。 増やした細胞を、潰瘍のあるマウスに移植したところ、1 カ月後、潰瘍でできた凹凸が平らになって健康な大腸の表面と同化していることを確認した。 (asahi = 3-12-12)