未承認薬、条件つき容認へ 重病患者を対象、厚労省方針

厚生労働省は、ほかに治療法がない重い病気の患者に対し、国内では承認されていない薬を一定の条件で使えるように制度化する方針を固めた。 26 日夜、薬事行政の見直しを検討している厚労省の審議会で大筋了承された。 同様の制度は欧米にあり、がん患者らが要望していた。

日本は欧米に比べて薬の承認時期が遅れるため、欧米で受けられる最新の治療を受けられないことがある。 医師や患者が海外の薬を個人輸入して使っている例もあるが、偽造薬を買わされる危険性や、副作用が起きたときに対応ができるのか、などの問題がある。

創設する制度では、欧米で承認済みで、国内で承認を得るための臨床試験(治験)が始まっている薬を対象とする。 医療機関が厚労省に必要な届け出をすれば、複数の病気を抱えているなど治験に参加できない患者に、この薬を使えるようにする。 患者にとっては治療の選択肢が広がることになる。 (asahi = 12-27-11)


インフルエンザ、全国的な流行期入り 主流は A 香港型

厚生労働省は 16 日、インフルエンザの全国的な流行期に入ったと発表した。 平年並みの時期という。 厚労省によると、今月 5 日から 11 日までの 1 週間に全国約 5 千カ所の医療機関でインフルエンザと診断された患者は 5,447 人。 1 施設あたり 1.11 人となり、流行開始の目安としている 1.00 人を超えた。

都道府県別では、宮城が 10.33 人で最多だった。 続いて愛知と三重が 5.33 人、岡山 4.04 人、山口 2.91 人、沖縄 2.57 人となっている。 これまでに確認されたウイルスの 88% が A 香港型という。 (asahi = 12-16-11)


牛レバー内部に O157 を初確認 生食禁止の可能性

牛の肝臓(レバー)の内部に食中毒の原因となる腸管出血性大腸菌がいることが、厚生労働省の調査でわかった。 初めての確認となる。 O(オー)157 など腸管出血性大腸菌は毒性が強く、死亡する危険もあり、生レバーの提供は禁止となる可能性が高まった。

厚労省は 20 日に開かれる審議会に結果を報告する。 委員の意見がまとまり次第、生レバーの提供を禁止するかどうか決める。 禁止になれば、食品衛生法で罰則つきの規制をすることになる。 牛の肝臓内には食中毒を起こす細菌のカンピロバクターがいることはわかっていたが、より重症化のおそれのある腸管出血性大腸菌は確認されていなかった。 (asahi = 12-15-11)


ひざの半月板、再生治療法を開発 東京医科歯科大

一度傷つくと再生が難しいひざの半月板を、自分のひざの滑膜(かつまく)という組織からとった幹細胞で再生させる治療法を、東京医科歯科大の関矢一郎教授(軟骨再生学)が開発し、来年 4 月にも臨床研究を始める。 半月板の損傷は、全国に2,500 万人という変形性膝(しつ)関節症につながる。 歩きづらいひざの痛みに苦しむ患者には朗報になりそうだ。

半月板は関節軟骨に挟まれた軟骨組織で、クッションの役目をする。 加齢などですり切れると、手術で縫い合わせて補強したりするが、手術できない場合も多い。 症状が進めば、痛みをとるためにすねの骨を切って向きを変えたり人工関節を入れたりする。

新しい治療法では、患者のひざの状態を内視鏡で確認するとき、半月板の近くにある滑膜の一部を採取。 2 週間培養して増やした幹細胞を、注射器で半月板の損傷部に移植して再生させる。 同大で 3 年間で 20 人ほどの患者を対象に臨床研究を行ったあと、他の病院にも広げて臨床試験(治験)を行う。 (asahi = 12-12-11)


被曝予防に花粉マスク有効 セシウム通さず 東大実験

花粉用マスクをつければ、浮遊しているセシウムをほとんど吸い込まずにすみ、内部被曝量を減らせるとの実験結果を、東大アイソトープ総合センターなどがまとめた。 30 日に横浜市で開かれた日本放射線安全管理学会学術大会で発表された。 同大の桧垣正吾助教は、福島第一原発事故直後の 3 月 15 日午後 3 時から翌日午前 9 時までの 18 時間、東大本郷キャンパスで、市販されている不織布の立体型マスクを着用した。

花粉やほこりに付いて、空中を浮遊している放射性物質と、マスクに付着した放射性物質の量などを調べた。 この結果、花粉用マスクで、セシウムのほぼ全てを吸い込まずにすむことが確認された。 マスクに付着した放射性物質の量から換算すると、仮にマスクをせずに体内に吸い込んでいれば、内部被曝は 9.3 マイクロシーベルトに相当していた。

来春、スギ花粉からセシウムが検出される可能性も指摘されており、林野庁は今秋から実態を調べている。 桧垣さんは「除染の際も、放射性物質が舞い上がる可能性がある。 気になる人は、マスクを着用すれば防げる。」と話している。 (岡崎明子、asahi = 12-2-11)


マイコプラズマ肺炎、過去最多の患者数 全国的に流行

マイコプラズマ肺炎の患者数が調査を始めた 1999 年以降で過去最多となったことが 29 日、国立感染症研究所(感染研)の定点調査でわかった。 有効なワクチンはなく、感染研はせきエチケットやマスク、手洗いでの予防を呼びかけている。

感染研によると、最新の 1 週間(11 月 14 - 20 日)に、全国 500 カ所の医療機関を受診した患者は、1 カ所当たり 1.26 人(前週 1.25 人)だった。 今年 6 月下旬から過去に例のない高水準で流行が続いていた。 都道府県別では、埼玉の 4.33 が最多で、青森 3.00、沖縄 2.71、大阪 2.67、岐阜 2.60 が続いた。 21 カ所で前週より患者数が増えており、全国的な流行がみられる。 (asahi = 11-29-11)


多剤耐性菌の「耐性」ナゾ解明 阪大、治療薬開発へ一歩

多くの抗生物質が効かない「多剤耐性菌」は、何種類もの薬をどのように認識してはねつけるのか。 そのしくみを大阪大産業科学研究所の山口明人教授らのグループが解明した。 細菌の耐性化を防ぐ治療薬の開発につながると期待される。 28 日付の英科学誌ネイチャーに掲載された。

グループは、細菌の表面にある細胞膜に、薬を異物と認めて外にはき出す働きをするたんぱく質があるのを見つけ、その構造を研究してきた。 今回、このたんぱく質には、薬がくっつく部位が 2 種類あることを新たに確かめた。 それぞれに複数の「鍵穴」があり、その組み合わせによって、多様な薬を異物として見極めているという。 山口さんは「細菌が異物を排出するしくみの全容が見えた。 耐性菌ができないような、分子標的タイプの抗生物質を開発したい」と話す。 (権敬淑、asahi = 11-29-11)


肉食女子、がんリスク 1.5 倍 8 万人を 10 年調査

肉類を食べる量が多いと、結腸がんになるリスクが約 1.5 倍高いことが、国立がん研究センターの研究班の調査でわかった。 大阪や岩手、茨城、秋田、新潟、長野、高知、長崎、沖縄など 9 府県の 45 - 74 歳の男女約 8 万人を 10 年以上追跡した。 欧米より肉を食べる量が少ない日本では、これまで結腸がんと肉食の因果関係が不明だった。

研究班は、調査追跡期間中に結腸・直腸がんになった男性 714 人、女性 431 人について肉類を食べる量で 5 グループにわけ、がんの発生率を比べた。 すると、男性は、ハムやソーセージも含めた肉類全体の摂取量が 1 日約 130 グラムのグループは、20 グラムのグループの約 1.4 倍、結腸がんのリスクが高かった。 女性は、牛肉や豚肉を 1 日約 90 グラム食べるグループは、約 10 グラムのグループの約 1.5 倍、結腸がんリスクが高かった。 (asahi = 11-28-11)


新種豚インフル 3 人感染確認 米、人から人への感染疑い

米中西部アイオワ州で子ども 3 人が新種の豚インフルエンザウイルス(H3N2 型)に感染していたことがわかった。 いずれも豚と直接接触していないことから、米疾病対策センター (CDC) では、人から人に感染した疑いがあるとみている。 3 人はいずれも軽症で、すでに回復している。 見つかったウイルスは、2009 年に新型インフルエンザとして世界的に流行し、現在は季節性インフルエンザになった H1N1 型の遺伝子の一部を含んでいた。 (asahi = 11-26-11)


東大など、がん細胞光る試薬開発 1 ミリでも発見可能

スプレーして 1 分ほどでがん細胞を光らせて場所を把握できる試薬を、東京大学の浦野泰照教授と米国立保健研究所 (NIH) の小林久隆主任研究員らが開発した。 1 ミリほどの微小ながんでも見分けることができるため、外科手術や内視鏡手術でがんの取り残しを減らし、再発防止につながると期待されている。

浦野さんらは、肺がんや肝臓がん、乳がんなどのがん細胞の表面にある酵素と反応して光る分子に変わる試薬を開発した。 この分子ががん細胞内に取り込まれて蓄積し緑色に光る。 人のがんを移植したマウスの腹部を開け、試薬を吹き付けると、正常の細胞の約 20 倍明るくなり、人の目で十分確認できたという。

がんの診断には、陽電子放射断層撮影 (PET) や磁気共鳴断層撮影 (MRI) などが利用されているが、1 センチ以下の小さながんを見つけるのは難しい。 小さながんを見つける方法が課題になっていた。 (asahi = 11-25-11)


イレッサ控訴審、企業と国の責任認めず 原告逆転敗訴

肺がん治療薬イレッサをめぐり、副作用で死に至る危険性を十分に説明していなかったとして、死亡した患者 3 人の遺族が販売元のアストラゼネカ(大阪市)と国に計 7,700 万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が 15 日、東京高裁であった。 園尾隆司裁判長は、ア社と国の双方の責任を認めた一審・東京地裁判決を取り消し、遺族側の請求を全面的に退けた。

高裁判決は、副作用の危険性は説明書に書かれており、医師も危険性を認識していたことから、製造物責任法の「指示・警告上の欠陥」はなかったと判断してア社の責任を否定した。 さらに、ア社の責任を認めない以上、国の責任も認められないとした。

イレッサの副作用をめぐっては、東京、大阪両地裁で遺族らが提訴。 大阪地裁では 2 月にア社の責任だけを認める判決が出て大阪高裁で控訴審が続いており、高裁段階の判断は初めて。 製薬会社、国双方の責任が認められなかったことは、国が検討している抗がん剤の副作用被害救済策の議論にも影響を与えそうだ。

イレッサは 2002 年 7 月に輸入が承認され、販売が始まった。 当初の説明書では、動脈に酸素が取り込みにくくなる間質性肺炎が「重大な副作用」の 4 番目に書かれ、死に至る可能性は明記されなかった。 しかし、発売直後から間質性肺炎による死亡例が相次ぎ、厚生労働省の行政指導を受けたア社はこの年の 10 月、説明書に「警告」を追加して注意を呼びかけた。

今年 3 月の東京地裁判決は、警告を出すまでの国とア社の対応を違法と認め、それまでに服用した患者 2 人について計 1,760 万円を支払うよう命じていた。 国の責任は「臨床試験の結果から副作用で人が死ぬ可能性があると認識していたのに、ア社に十分な説明をするよう行政指導をしなかった」と判断。 ア社には「指示・警告上の欠陥」があったと指摘した。 これに対し、ア社と国がいずれも控訴していた。

肺がんはがんの中で死者数が最も多く、09 年には約 6 万 8 千人が死亡した。 イレッサの年間使用患者数は推計で約 1 万 6 千人(09 年)に上る。 二つの訴訟では、東京、大阪両地裁が今年 1 月に和解を勧告し、遺族側は応じる姿勢を見せたが、国とア社が拒否して和解が成立せず、判決に至っていた。 (根岸拓朗、asahi = 11-15-11)


ES 細胞から脳下垂体 理研・名大、マウスで成功

さまざまな組織の細胞になることができる胚性幹細胞(ES 細胞)から、成長ホルモンなどを分泌する臓器「脳下垂体」をつくることに理化学研究所と名古屋大がマウスで成功した。 下垂体を取り除いたマウスに移植すると、ホルモンが正常に出ることも確認した。 10 日付の英科学誌「ネイチャー」電子版に掲載される。

理研はこれまでに、マウスの ES 細胞から大脳皮質や網膜を立体的につくることに成功している。 今回、複雑な機能を持つ人工臓器をつくり、それを移植して確認できたことは、再生医療に向けた人工臓器づくりの大きな前進といえる。 下垂体は脳にぶら下がるように伸びている臓器で、人間では長さ 1 センチほど。 副腎皮質刺激ホルモンや成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモンなどを出す。 (asahi = 11-11-11)


ES 細胞で初の治療へ 肝臓病の 0 歳児 国立成育医療研

重症の肝臓病で治療法がなく、肝移植も難しい 0 歳児に、ヒト胚(はい)性幹細胞(ES 細胞)からつくった肝細胞を移植する治療を、国立成育医療研究センター(東京都)が計画している。 ES 細胞による治療は国内では例がなく、肝臓病への応用は世界初とみられる。 研究センターは 3 年後をめどに、倫理委員会の承認を受けて臨床試験に臨む。

受精卵からつくられる ES 細胞には、生命の萌芽(ほうが)を壊すことになるという倫理面の問題やがん化の危険性があり、研究レベルに制限され、一部の認められた研究機関でしか扱えない。 しかし、研究が進んで海外では臨床試験も始まっていることなどから、ほかに治療法がない難病患者に限って臨床研究の対象として、厚生労働省は先月、指針づくりを始めたところだった。

治療するのは先天性代謝異常症で、肝臓が有毒なアンモニアを分解できない新生児。 血中の濃度が高くなると脳に障害が出る。 10 万人に 1 人程度の割合で発症し、生存率は 10 - 20%。 (asahi = 11-8-11)


血液 1 滴からの病気発見に道 田中耕一さんら抗体開発

ノーベル化学賞を受賞した島津製作所の田中耕一フェローのグループは 8 日、病原体(抗原)と結合する強さを 100 倍以上高めた抗体の開発に成功したと発表した。 わずか 1 滴の血液からでも限られた抗原を漏らすことなく捕まえることができる技術で、がんや生活習慣病などの早期診断法につながるという。

抗体は、抗原と結合して免疫反応を起こす生体内のアンテナのような役割。 従来の抗体は、ほぼ固定された腕に抗原が結合するのを待つような仕組み。 田中さんらはこの腕の部分にバネ状の人工物(ポリエチレングリコール)を組み込み、前後左右に腕が伸びて抗原を幅広く捕まえるよう設計することに成功した。 バネによって結合する力も強くなったという。

アルツハイマー病の発症にかかわるたんぱく質(ベータアミロイド)を捕まえる抗体にこのバネを組み込むと、従来より 100 倍以上の結合力だった。 (asahi = 11-8-11)


赤外線でのがん治療法開発 マウス 8 割完治、副作用なし

体に無害な赤外線を使った新しいがんの治療法を米国立保健研究所 (NIH) の小林久隆チーフサイエンティストらが開発した。 マウスの実験では 8 割で完治、副作用もなかった。 6 日付の米医学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に発表した。

小林さんらのチームは、光を受けると熱を出す特殊な化学物質に着目。 この化学物質と、がん細胞のたんぱく質(抗原)に結びつく抗体を結合させた薬を作った。 この薬を注射して、翌日、がん細胞の表面に付いたところで体を透過しやすい近赤外線を当て、熱を出してがん細胞を破壊する。 赤外線は無害で、熱を出す化学物質も体の中ですぐに代謝され、「安全性は高い」という。

実験では、2 週間で死んでしまう悪性がんのマウスに、この薬を注射して翌日に近赤外線を 1 日 15 分照射する治療を 2 日間実施。 これを 1 週間おきに 4 回繰り返すと、8 割でがんが完治した。 (asahi = 11-7-11)


被災地患者の血圧、栃木で分析 医師不足をバックアップ

東日本大震災の津波で大きな被害を受けた宮城県南三陸町の診療所で、患者の血圧データを栃木県の大学病院の医師に送信し、体調管理を支援してもらう試みが進んでいる。 医師不足で患者へのきめ細かいケアが難しい被災地を遠くからバックアップする仕組みだ。

公立南三陸診療所にかかった漁師 (49) は、仮設住宅で不眠に悩んでいた。 震災後に血圧が上がり、一時は 200 を超えた。 診療所で血圧を測ると、結果は 300 キロ離れた栃木県下野市の自治医大病院のパソコンに即座に送られた。

データを受け取ったのは、苅尾七臣(かずおみ)教授(循環器内科)のグループ。 数値の変化が気になると、南三陸診療所の西沢匡史医師に連絡する。 診療所の常勤医は西沢さんだけで、患者の対応に追われて個人のデータをじっくり見る余裕がないためだ。 (asahi = 11-6-11)


まひ患者、思い通り義手操作 脳波読み取りに阪大成功

人が手や腕を動かそうとイメージするときの脳波を、脳の表面に置いた電極で読み取り、義手のロボットを思う通りに動かすことに、大阪大学の吉峰俊樹教授(脳神経外科)らのチームが成功した。 実際に事故などで運動まひが残る患者らを対象にした実験だ。 今後は、患者の対象を広げ、実用化に向けて取り組むという。

チームは、治療のために脳表面に電極をつけている患者 12 人に協力してもらい、手を握る、ひじを曲げるなどの動作をするときの脳波のパターンを読み取り、コンピューターで解析した。

12 人は運動まひがない患者が 5 人、部分的なまひ(軽度)が 4 人、完全なまひ(重度)が 3 人とそれぞれ症状が異なるが、どのような動きをしようとしたかが脳波から 60 - 90% の精度で推定できたという。 事故による後遺症で 5 年間腕が動かない男性患者は、運動をイメージするのが難しいが、それでも 90% の精度が得られた。 (asahi = 11-3-11)


イレッサ副作用、胃薬で抑えられる可能性 慶大など実験

肺がん治療薬イレッサが引き起こす副作用の間質性肺炎が、一般に広く使われている胃薬のセルベックスで抑えられる可能性があることが慶応大学薬学部の水島徹教授らの研究チームの実験でわかった。 米科学誌プロスワンに掲載される。

イレッサの投与で起こる副作用の間質性肺炎は、肺が繊維化して硬くなり、呼吸ができなくなる病気。 研究チームが副作用が起こる仕組みを調べたところ、イレッサの投与により、ストレスに対して細胞を守る働きをしているたんぱく質「HSP70」が減ることを発見。 さらに、HSP70 の減少により、副作用の原因である肺の繊維化が起こることを明らかにした。

一方、胃炎や胃潰瘍(かいよう)の治療薬として使われているセルベックスは、HSP70 を増やすことがすでに分かっていたが、イレッサを事前に与えたマウスにセルベックスを投与すると、間質性肺炎を抑えることができた。 水島教授は「胃薬を使った治療の有効性が確認できればイレッサが使いやすくなり、より多くの肺がん患者を救うことになるだろう」と話している。 (asahi = 10-30-11)


心筋梗塞で心停止、冬は夏の 5 割増 屋内外の気温差注意

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)は 27 日、冬場の心筋梗塞による心停止の発生件数は夏場に比べ 5 割増えるとの調査結果を発表した。 冬場は屋内外の温度差が大きく心臓への負担が増すため、防寒対策を呼びかけている。

2005 年から 4 年間に国内で起きた救急車搬送による心停止の症例約 19 万 6 千件分を解析した。 12 月から翌 2 月までの 3 カ月間の件数は年間の 31% だったが、6 月からの 3 カ月間では 21%。 心筋梗塞のなかで最も症状が重い心停止は、冬場に多いことが裏付けられた。 11 月の米国心臓病学会で発表する。

同センターは心筋梗塞による突然死を防ぐための 10 カ条を作成。 脱衣場を暖めたり、熱い湯に入ったりしないなど特に入浴の前後で注意するよう促している。 被災地の仮設住宅でも警戒が必要だとして、早めの対策を呼びかけている。 (須藤大輔、asahi = 10-27-11)


禁煙薬服用後に失神、注意喚起後も事故 6 件

厚生労働省は 26 日、禁煙治療の飲み薬「チャンピックス(成分名・バレニクリン)」について、意識障害の副作用に注意するよう呼びかけた 7 月以降、飲んだ後に自動車を運転した 6 人が意識を失うなどして事故を起こしたと発表した。 他人を巻き込んだ事故はないという。 厚労省は、服用期間中は運転しないよう、指導の徹底を医療機関に求めている。

厚労省によると、6 人は 30 代 - 80 代の男性。 車が側溝に落ちて 1 人が軽傷を負ったという。 チャンピックスは意識障害の副作用が出ることがあるとして、厚労省が 7 月、医師向けの説明書を改めるよう販売元に指示。 服用期間中は運転をしないよう注意喚起していた。 厚労省は「仕事などで運転する人は、ほかの薬を使うなど、医師と相談してほしい」としている。 (asahi = 10-27-11)


「インフル予防」トローチ発売中止 医薬品と誤解の恐れ

「インフルエンザ予防に役立つ」として、ミヤリサン製薬(東京)とバイオベンチャーのファーマフーズ(京都市)が共同開発したトローチが発売中止になった。 健康食品として今月中にも売り出す予定だったが、予防に期待する消費者からの問い合わせが殺到。 製造販売元のミヤリサン製薬は「医薬品と誤解される恐れがある」と判断した。

トローチは、インフルエンザ感染を抑える抗体を成分に配合し、売り出す予定だった。 だが今月中旬以降、学会発表や報道で伝えられると、消費者から連日、企業側に問い合わせが寄せられたという。

ミヤリサン製薬の開発担当者は「健康食品なので、人への臨床試験はしていない。 しっかり効果を調べる必要が出てきた。」と話す。 厚生労働省医薬食品局の担当者は「効能をうたっていなくても、成分の説明などで誤解を招きかねない場合もある」と注視している。 (堀田浩一、asahi = 10-21-11)


iPS 細胞、遺伝病治療にも有効か 英などの研究チーム

iPS 細胞(人工多能性幹細胞)を使った遺伝病治療に道を開く成果を、英国などのチームが 13 日付の英科学誌ネイチャー(電子版)で発表する。 遺伝病の患者自身の細胞から作られる iPS 細胞には通常、病気の原因遺伝子が含まれているため、培養して患者に戻しても治療できないが、今回チームは遺伝子改変技術を使い、原因遺伝子を正常な遺伝子に変えることができたという。

チームは「α1 アンチトリプシン欠損症」という肝臓病の患者 3 人の皮膚細胞から、iPS 細胞を作った。 この病気は遺伝子の変異で起き、北欧では 2 千人に 1 人の割合で見つかる。 肝硬変に至れば肝移植しか治療法がない。

この iPS 細胞に含まれる遺伝子の変異部分を、最新の技術で修復したうえ、培養して肝細胞に変化させて増やし、同じ病気のマウス 7 匹に移植したところ、2 週間後には肝臓に定着した。 肝細胞が正常に機能していることを示すたんぱく質の分泌も確認できたという。 (下司佳代子、asahi = 10-13-11)

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iPS 細胞で難病研究 全国 5 拠点整備へ

さまざまな組織になりうる iPS 細胞(人工多能性幹細胞)を使って、難病発症の解明や治療薬の開発をめざそうと、文部科学省は来年度から全国で五つの拠点を整備する。 研究機関と病院を連携させて、基礎研究の成果を速やかに治療につなげようという狙いだ。

神経や心臓の病気ごとに、文科省所管の大学などの研究機関と、厚生労働省が所管する医療機関が連携した拠点をつくる。 アルツハイマー病や拡張型心筋症などが考えられる。 公募で全国に 5 拠点ほど選び、5 年計画で 1 拠点につき年間約 2 億円の予算を計上する予定だ。

iPS 細胞は皮膚などの細胞からつくることができる。 このため事故や病気で失った組織や臓器を患者の皮膚細胞などからつくって再生させる研究が進められている。 また、難病患者からつくった iPS 細胞を使って、病気のしくみを解明したり、薬の成分への反応を見て治療薬の開発に生かしたりする研究も盛んだ。 (asahi = 9-27-11)

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アルツハイマー発症の仕組み、iPS 細胞で確認 慶応大

慶応大の研究チームが iPS 細胞(人工多能性幹細胞)技術を使い、アルツハイマー病が発症する仕組みの確認に成功した。 生きたヒトの細胞による薬の効果の確認につながり、新薬開発に役立ちそうだ。 論文が 7 日付英医学誌ヒューマン・モレキュラー・ジェネティクス(電子版)に掲載された。

アルツハイマー病は、ベータアミロイドという毒性の高いたんぱく質が脳にたまり、神経細胞を傷つけて起きるとする「アミロイド仮説」が提唱されている。 チームは、遺伝性アルツハイマー病の患者 2 人の皮膚の細胞から iPS 細胞を作って、さらに神経細胞に変化させた。 すると、いずれの患者由来の神経細胞でもベータアミロイドが通常の約 2 倍作られており、病気の一部を再現できた。

またベータアミロイドができるのに必要な酵素の働きを止める新薬の候補を使ったところ、ベータアミロイドのできる量が抑えられるのも確認した。 (asahi =9-9-11)


臍帯血移植 1,074 件に 昨年度、10 年間で 6 倍超に

赤ちゃんのへその緒や胎盤にある臍帯血(さいたいけつ)を白血病患者らに移植した件数が、昨年度は 1,074 件に伸び、骨髄移植の 1,191 件に肩を並べていることがわかった。 厚生労働省が 13 日、審議会に報告した。

臍帯血は赤血球や白血球になる細胞が豊富で血液がんの白血病治療などに使われている。 厚労省によると、臍帯血移植は、2000 年度に年間 169 件と骨髄移植(716 件)の 4 分の 1 以下だったが、昨年度までに 6 倍以上に増えた。 腰に針を刺して骨髄を採取する骨髄移植と比べ、提供者の負担が少ないことなどが要因という。 (asahi = 10-13-11)


大腸がん有無、おならで検査 名古屋大院准教授ら開発

おならのガスの成分から大腸がんの有無を調べる手法を、名古屋大大学院工学研究科の八木伸也准教授(量子工学)らの研究チームが開発した。 大腸がん患者のおならには硫黄分が多く含まれていて、原理を応用して息から肺がんも調べられるという。

研究の概要は、英科学誌ネイチャーの関連誌 10 月号で紹介された。 八木准教授は 2005 - 07 年、歯科医師の山岸一枝さんが代表を務める美白歯科研究会(東京都目黒区)と共同で、大腸がんの手術前の患者 22 人のおならの成分を調べた。

採取する袋の内側に、金属の微粒子をつけた 1 センチ角の基板を取り付けてガス成分を吸着させ、広島大の放射光科学研究センターで成分を分析した。 大腸がん患者のおならと、健康な学生ら 38 人のおならを比べたところ、大腸がん患者には硫黄原子を持つメチルメルカプタンが平均して 10 倍程度多く含まれていた。 がんの進行が進んだ患者の方が、メチルメルカプタンは多かった。 (asahi = 10-12-11)


子どもの体力格差広がる 運動習慣の差を反映

スポーツをする子としない子の体力格差が広がっている。 体育の日に合わせて文部科学省が発表した昨年度の体力・運動能力調査の結果でわかった。 25 年前と比べ、50 メートル走や握力など複数の種目で、「する子」と「しない子」の成績の差が大きくなっている。

調査は昨年 5 - 10 月に全国の 6 - 79 歳の約 7 万 4 千人を対象に行われた。 このうち小中高生の総合成績は、今の形式で調査が始まった 1998 年度以降ゆるやかな回復傾向が続いてきたが、今回は 13 年間で最高を記録した。 特に中高生男子の 50 メートル走は、子どもの体力がピークだった旧調査時代の 85 年度を上回った。

ただ運動をする子としない子の成績差が大きく、かつ以前より広がっている。 運動習慣を「ほとんど毎日」から「しない」までの 4 階層にわけて分析すると、小学生男子の 50 メートル走は「ほとんど毎日」の子と「しない」子の差が、85 年度の 0.32 秒から昨年度は 0.74 秒に拡大した。 女子も差がほぼ倍に広がった。 (asahi - 10-10-11)


一日の歩数、男性 1 千歩減 健康課題 9 項目悪化 厚労省

厚生労働省の作業チームは 7 日、2000 年度から進めている国民の健康づくり運動「健康日本 21」の最終評価をまとめた。 59 項目の課題のうち、日常生活での歩数が減るなど 9 項目で悪化していた。 健康日本 21 は、生活習慣病の発生を減らすことなどを目的に始まった。 食生活や運動などの数値目標を掲げ、来年度に終了する。 13 年度からの新たな国民健康運動の計画づくりのため、今回を最終評価とした。

1997 年と 09 年の国民健康・栄養調査などの結果を比較すると、日常生活での歩数の 1 日平均(15 歳以上)が、男性は 8,202 歩から 7,243 歩に、女性は 7,282 歩から 6,431 歩に減った。 背景には、エレベーターやエスカレーターなどが増えたことがあるとみている。 (asahi = 10-8-11)


鼻粘膜からインスリン分泌細胞 糖尿病治療に活用も

鼻の粘膜の細胞から、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)のベータ細胞と同じ働きをする細胞を作ることに、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)などのチームがラットで成功した。 この細胞を膵臓に移植したラットで、血糖値が下がることも確認した。 将来、自分の鼻の細胞を使った新たな糖尿病の治療法につながる可能性があるという。 7 日、英科学誌「EMBO 分子医学(電子版)」に論文が掲載された。

チームは、神経細胞には膵臓のベータ細胞のようにインスリンを分泌する能力があることを突き止めた。 神経細胞のもとになる神経幹細胞をラットの鼻から採取。 インスリンの分泌を活性化させる特殊な溶液の中で培養し、2 型糖尿病のラットに移植したところ、インスリンが分泌され、血糖値がほぼ正常値に下がることが確認できた。

産総研の桑原知子主任研究員は「臨床応用が可能になれば、自分の細胞を使うため、現在の膵臓移植のようなドナー不足や拒絶反応の問題を解決できるだろう」と話している。 (石倉徹也、asahi = 10-8-11)


第 3 の万能細胞「作製成功」 米チーム、ヒト卵子を使用

ヒトの卵子と皮膚細胞を使って、様々な組織の細胞に育つ万能細胞を作ることに、米国の研究チームが成功し、英科学誌ネイチャーに 6 日発表する。 できた細胞は形態が通常の細胞と大きく異なるため、すぐに臨床応用にはつながらないが、人工多能性幹細胞(iPS 細胞)や胚(はい)性幹細胞(ES 細胞)など他の万能細胞の性質を詳しく知る材料になり、臨床応用に向けた安全性や効率の向上などに貢献しそうだ。

米ニューヨーク幹細胞財団研究所などのチームは、ヒトの卵子に、別の成人の皮膚細胞(体細胞)の核を入れて培養した。 すると 63 個中 13 個が、分割してできる「胚盤胞(はいばんほう)」という状態にまで育った。 胚盤胞の細胞は、万能細胞に特徴的な遺伝子が活発に働いており、盛んに分裂して増えた。 マウスに移植すると骨のもとや粘膜のもとになる細胞に育った。 チームは「卵子を使えば体細胞を初期化できる可能性を証明した」としている。 (asahi = 10-6-11)


福島原発 : 周辺の子ども 10 人の甲状腺機能に変化

長野県の信州大学付属病院と民間非営利団体 (NPO) の日本チェルノブイリ連帯基金が、福島県の子ども 130 人を検査した結果、10 人の甲状腺機能に変化が見られたことが、4 日までに分かった。

調査は 7 月末から 8 月末にかけて実施。 3 月 11 日の東日本巨大地震で事故が発生した福島第 1 原子力発電所周辺から長野県に避難した、生後 6 カ月から 16 歳の子どもが医師の問診や血液・尿検査を受けた。 その結果、10 人のうち 1 人は甲状腺ホルモンが基準値以下、7 人は基準値以上だった。 また、2 人(3 歳と 8 歳)は甲状腺の組織が壊れたときなどに濃度が高くなるタンパク質「サイログロブリン」の血中濃度が、基準値を上回った。

大学病院側は「過去の検査値がなく、原発事故との関連は分からない。 ホルモン数値に変化が出る可能性があるため、時間を置いて再検査する必要がある。」と話した。 子どもは放射性ヨウ素を蓄積しやすく、大人よりも甲状腺がんにつながる可能性が高い。 1986 年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故では、被災地で小児甲状腺がんが急増したとされる。 - 東京 = 車学峰(チャ・ハクポン)特派員 (韓国・朝鮮日報 = 10-5-11)


メロンで食中毒か 米で 15 人死亡 リステリア菌に感染

米疾病対策センター (CDC) は 30 日、メロンが原因とみられるリステリア菌による食中毒で 7 月下旬以降、中西部コロラド州を中心に 84 人が感染、15 人が死亡したと発表した。

米食品医薬品局 (FDA) によると、感染源とみられるメロンはコロラド州の農場から 17 州に出荷された。 9 月中旬以降、農場が自主回収しているが、感染者は 19 州にまたがっている。 また、30 日にはカリフォルニア州で生産されたレタスの一部からリステリア菌が検出された。 自主回収が始まったが、関連はわかっていない。

CDC によると、リステリア菌は水や土壌などに広く存在する。 人に感染すると発熱や頭痛などの症状があり、重症化すると敗血症や髄膜炎を起こす。 欧米では牛乳やチーズ、野菜、食肉などを原因とした集団発生が報告されている。 (ワシントン = 行方史郎、asahi = 10-1-11)


乳がん再発すると 3 分の 1 はタイプが変化

乳がん患者の 3 人に 1 人は、最初に診断された時と再発後では、がんのタイプが変化していることがわかった。 がん組織を調べる検査は通常、診断時にしか行われず、再発後に「効かない」治療を受けている患者が相当数いる可能性が出てきた。 同様の変化は、他のがんでも起きる可能性があるという。

スウェーデンのカロリンスカ研究所が 26 日、欧州集学的がん学会で発表した。 乳がんには、女性ホルモン陽性でホルモン療法が効くタイプと、女性ホルモン陰性で抗がん剤のハーセプチンが効くタイプ、いずれも効かないタイプがある。 (asahi = 9-27-11)


骨再生の「司令塔」細胞を特定 東京医科歯科大など

古くなった骨を壊す細胞を増やし、骨の新生サイクルを促すたんぱく質が「骨細胞」という細胞から作られていることを、東京医科歯科大学の高柳広教授らのチームがマウスの実験で特定した。 古い骨がたまってもろくなる骨疾患の新たな治療法開発につながる可能性がある。

骨が作り替えられる時、表面にある破骨細胞が一度古い骨を壊し、骨芽細胞が新しい骨をつくる。 骨の深部に埋まっている骨細胞はこうした仕組みを調節すると考えられてきたが、取り出すのが難しいため、詳しく分析されていなかった。

高柳教授らは、遺伝子操作で骨細胞だけが光るマウスをつくり、光を目印にして骨細胞だけを取り出すことに成功。 骨細胞が、破骨細胞を増やすたんぱく質をたくさん作っていることを確認した。 骨細胞がこのたんぱく質を作れないようにした遺伝子改変マウスは、古い骨がたまりもろくなる「大理石骨病」になった。

骨は破壊と新生のバランスが大切。 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)やがんの骨転移などは破骨細胞の働きが強すぎ、大理石骨病では弱すぎる。 現在は骨を壊す働きを抑える治療薬が開発されているが、今回の発見は骨の破壊を促して大理石骨病などに効く薬の開発に役立つ可能性がある。 (asahi = 9-15-11)


高血圧リスクの 28 種の遺伝子特定 愛媛大など

愛媛大学プロテオ医学研究センターの田原康玄(やすはる)講師(遺伝学)らの研究グループは、高血圧のリスクを高める 28 種類の遺伝子を特定したと発表した。 新薬の開発のほか、遺伝子の違いに合わせた予防や治療法の開発につながるという。 英科学誌ネイチャー(電子版)に掲載された。

欧米など海外の研究機関と共同で、国内外の約 26 万人を対象とした遺伝子解析を実施。 患者とそうでない人との違いを調べた。 日本人を含む東アジア人では、28 種類のうち 9 種類の遺伝子が関係していた。 このうち 4 種が高リスク型だった場合、そうでない人に比べて、高血圧にかかるリスクが最大で 2 倍ほどあるという。 (asahi = 9-14-11)


網膜の「加齢黄斑変性」関係遺伝子を発見 九大グループ

目の網膜の黄斑(おうはん)と呼ばれる部分の異常で視力が低下する中高年の病気「加齢黄斑変性」の発症に関係する遺伝子を、九州大の研究グループが発見した。 この遺伝子が特定のタイプだと、発症のリスクが約 1.4 倍高まるという。 研究グループは「見つかった遺伝子を調べれば事前に発症のリスクが高いかどうかを判断でき、早期の発見、予防につながる」と話す。 11 日付で米科学誌ネイチャー・ジェネティクス(電子版)に公開された。

この病気は網膜の中心の黄斑の障害で、視野の中心が暗く見えたり、ゆがんで見えたりする。 厚生労働省によると、50 代以上で発症し、日本では成人の失明原因の 4 位で推定患者数は約 35 万人。

研究グループは、日本人患者約 1,500 人と正常な約 1 万 8 千人の遺伝子のわずかな個人差を調べ、「TNFRSF10A」と呼ばれる遺伝子の塩基配列の違いが影響していると判明。 患者に多く見られるタイプでは、遺伝子が特定のたんぱく質と結合し、網膜の炎症などを引き起こしやすくしているとの結果が出た。 (河村能宏、asahi = 9-13-11)


内部被曝、生涯で最高 2 ミリシーベルト 福島県住民検査

福島県は 12 日、東京電力福島第一原発事故による放射線量が高い地域で 6 月から続けていた住民の内部被曝検査の結果を発表した。 8 月末までに検査した 3,373 人のうち、生涯に浴びる内部被曝量が 1 ミリシーベルトを超えると推計されたのは 7 人。 最高は 2 ミリシーベルトだった。 県が進める内部被曝検査の全容が明らかになるのは初めて。

日本原子力研究開発機構と放射線医学総合研究所で、ホールボディーカウンターで検査し、セシウムによる被曝量を評価した。 対象は浪江町 2,483 人、飯舘村 625 人、川俣町山木屋地区 213 人など。 4 - 19 歳が約 2,600 人と大半を占めた。

評価結果は、浪江町の 7 歳男児と 5 歳女児が 2 ミリシーベルト、浪江町の 5 - 7 歳児 5 人が 1 ミリシーベルトで、ほかは 1 ミリシーベルト未満だった。 県によると、家族には専門家の判断で「健康に影響が及ぶ数値ではない」と説明しているという。

国際放射線防護委員会 (ICRP) 専門委員を務める甲斐倫明・大分県立看護科学大教授は「2 ミリシーベルトなら将来のがん発症など健康への影響は心配ない。 3 千人を超える調査で最大 2 ミリというのは大きな安心材料。 さらなる住民の安心のため、なぜ高めの数値が出た人がいるのか、詳しく調べて説明していく必要がある。」としている。 (asahi = 9-12-11)