病院外でも電子カルテ閲覧 島根の浜田医療センター

島根県西部地区の主力医療機関、国立病院機構の浜田医療センター(島根県浜田市)は、医師が病院外で入院患者の電子カルテを閲覧できるシステムを導入した。 患者が急変した場合でも、専門医が自宅や外出先から適切な処置を助言する。 手厚い医療サービスを提供すると同時に、医師の長時間労働の緩和も狙う。 同システムは全国的にも珍しいという。

富士通のグループ会社がシステムを構築した。 院長を含む 40 人余りの医師に 1 台ずつ専用端末を配った。 この端末から約 330 人の入院患者の情報が参照できる。 他の通信回線の影響を受けにくい NTT などの通信網と無線で接続する。 用意した端末は 50 台。 3 年 4 カ月間で合計 2,990 万円のリース契約で調達した。

患者の個人情報防止などセキュリティー対策として、専用端末の立ち上げには指紋認証を採用した。 電子カルテのデータは常に病院内のサーバーに保管してあるものをその都度、呼び出す。 端末内にデータは蓄積しないようにするなど厳重な対策を施した。

当直医が患者の容体の急変などに対応して、帰宅した専門医に助言を求める際などの利用を想定している。 電子カルテを自宅でも閲覧できれば、患者の処置もより迅速にできる。 専門医が必要以上に病院内に待機する必要がなくなり、医師の長時間労働を防ぐことにも役立つという。

同センターでは 2009 年に電子カルテを導入した。 IT (情報技術)を活用し、医師不足で疲弊する職場環境の改善へ向けた体制整備を進めている。 電子カルテの病院外閲覧システムの導入もその一環だ。

島根県内では医師の長時間・過密労働も問題となっている。 浜田市をはじめとする西部地区は、とりわけ医師不足が深刻だ。 隣の益田市の益田赤十字病院では出産受け入れ制限を実施。 浜田医療センターへ益田赤十字病院などから患者の受け入れ要請も増えている。 (nikkei = 9-14-11)


西日本 5 港、クルーズ船誘致で連携

大阪港や鳥取県の境港など西日本の 5 港は 13 日、連携して国内外のクルーズ客船を誘致する協議会「五港物語」を発足した。 年内にも新航路を旅行会社などに提案するほか、外国人旅行客の入国手続き緩和を国に働きかける。 東日本大震災の影響で海外からの客船の寄港が減っており、共同で観光地としての魅力を訴える。

大阪、高松、大分県の別府、境、高知の 5 港が参加する。 大震災の影響で、大阪港は今年度に寄港する予定だった 36 の旅客船のうち 16 がキャンセルとなった。 別府港でもキャンセルが出たという。 大阪港を管理する大阪市の呼びかけに 4 港が応じた。 年内にもセミナーを開催し、海運各社や旅行各社に、5 港や周辺地域の観光地としての可能性や新たな航路を提案する。

新たな情報発信ツールとしてソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) も活用する。 フェイスブックやユーチューブに「五港物語」として登録し、各地の観光情報などを配信する。 海外のクルーズ客船を誘致する際、外国人の入国手続きに時間がかかることがネックになっている。 このため国に手続きの迅速化を働きかける。 (nikkei = 9-14-11)


秋たわわ おいしさ色づく 輝きを増す稲穂

益田市美都町宇津川の牛尾義美さん (76)、澄江さん (74) 夫婦は山の棚田で昔ながらの米づくりを守っている。 刈り終えた稲は天日干しされ、日光と谷を渡る風で乾かす。 「稲架(はさ)かけ」と呼ばれ、くいの列に竹を渡した稲架は、3 段組みで長さは 20 メートル近い。 最上段にははしごをかけてのぼる。 黄金色の稲穂の波がのび、秋の光に輝きを増している。

飯南町下赤名の「赤来高原観光りんご園」では、今月からリンゴ狩りが始まった。 標高約 450 メートルにある同園は昼夜の温度差の大きい気候がリンゴの栽培に適しており、約 2 ヘクタールの敷地には 800 本ほどの木がある。 今は早生の「さんさ」や「つがる」が食べ頃を迎えている。 11 月 13 日までの期間中は無休で、午前 9 時 - 午後 4 時。 中学生以上 500 円、3歳以上 300 円。 1 キロ 500 円で持ち帰りできる。 問い合わせは (0854・76・3344)。

安来市穂日島町の中海干拓地では、名産のブドウの収穫が最盛期を迎えている。 「岩崎観光ぶどう園」の岩崎三保子さん (59) が、ビニールハウスで黒光りした「ピオーネ」を収穫していた。

今年は年始の大雪で、ハウスの屋根の骨が折れ、直すのに 3 カ月ほどかかった。 幸い木に影響はなく、収穫は例年並みという。 糖度 18 度以上のものを、県内外に販売している。 収穫は 10 月末まで続く。 岩崎さんは「みずみずしい実になりました。」と喜んでいた。 宅配の注文は同園 (0854・22・6627) へ。 (広川始、小林一茂、藤家秀一、asahi = 9-12-11)


「国宝級の出来栄え」松江城のプラモデル、お目見え

築城 400 年に合わせて松江城(松江市)がプラモデルとなり、設計者の土産物会社役員、西尾貴延さん (41) が 6 日、市長に贈呈した。 市教委の古い図面をもとに半年がかりで設計。 現存しないやぐらなど築城時の姿を 500 分の 1 で再現した。 先月下旬から島根県の観光施設の店頭に並ぶ。

国宝化を求めて 13 万人の署名を集めながら、なかなか実現しない松江城。 「プラモデルの出来栄えは国宝級。 ぜひ本物も。」と西尾さん。 (asahi = 9-7-11)


世界ジオパーク候補に隠岐 多様な岩石や希少植物評価

日本ジオパーク委員会は 5 日、国際的に貴重な地形や地質を認定する「世界ジオパーク」の候補地に隠岐(島根県)を選んだ。 多様な岩石や氷期の生き残りの植物など独自の自然や地元ガイドの活躍などを評価した。

世界ジオパークネットワーク(事務局・パリ)に申請し、来秋にも結果が公表される。 世界ジオパークには、山陰海岸など日本の 4 地域を含む 77 地域が認定されている。 また日本委員会が選ぶ「日本ジオパーク」には、▽ 男鹿半島・大潟(秋田県)、▽ 磐梯山(福島県)、▽ 茨城県北、▽ 下仁田(群馬県)、▽ 秩父(埼玉県)、▽ 白山手取川(石川県)の 6 地域が決まった。 日本ジオパークは 200地域になった。 (asahi = 9-6-11)


サンエス、鳥取・江府町にミネラル水自社工場

電子機器製造やミネラルウオーターの販売などを手掛けるサンエス(広島県福山市、佐藤卓己社長)は、鳥取県江府町にミネラルウオーターの製造工場を建設する。 同社はこれまで江府町の第三セクター、「江府町地域振興」にミネラル水の生産を委託。 新工場は 2012 年 6 月の稼働を見込んでおり、委託分と合わせて増加する水需要に対応する。

新工場は約 2 億 5,000 万円を投じ、江府町地域振興の水工場隣接地 7,445 平方メートルを取得して建設。 床面積は 624 平方メートルで既設の水工場が利用している水源から配管を分岐させて大型ボトルなどに詰めて出荷する。

同社は大型ボトルのほか、バッグインボックス (BIB) と呼ぶ段ボールとビニールパックを組み合わせた容器(10 リットルと 20 リットル入り)でミネラルウオーターを販売している。 3ガロン(約 12 リットル)入りボトルと BIB は新工場で生産し、5 ガロン入りボトルなどは三セクの工場を「第 1 工場(同社)」と位置付け、製造委託を継続する。

新工場の稼働により BIB の生産能力を年間 20 万個、3 ガロン入りボトルで 42 万本へと引き上げる。 初年度の売上高は 1 億円を見込み、14 年度をめどに BIB と 3 ガロン入りボトルでそれぞれ 15 万個・本の生産を目指す。 (nikkei = 9-6-11)


島根県、医療ネットを全県規模で 患者情報やり取り

島根県は離島や中山間地、県西部などの医師不足対策として、全県規模の医療情報システムを今年度内に導入する。 県内の病院や診療所を VPN (仮想私設網)で結び、インターネットによる患者の紹介状や電子カルテ、処方箋などのやりとりを可能にする。 医療体制が整っている県東部の大病院への救急患者搬送などで迅速な治療に役立てる。

県は国が交付する地域医療再生基金を活用し、約 9 億円を投じて、情報ネットワークの基盤整備や遠隔画像診断システムの導入を進める。 10 月にも運営主体となる NPO 法人「島根医療情報ネットワーク協会」を設立。 県内 54 の病院、約 700 の診療所に参加を呼びかける。

まず松江、雲南、出雲、隠岐、大田、浜田、益田の県内 7 地区の中核病院の間で、公衆回線を専用回線のように使える VPN で結ぶ。 その後、規模の小さい病院や診療所との接続を進める。 県内では既に、島根県立中央病院(出雲市)が隠岐諸島の医療機関との間で VPN による遠隔診断を実施。 紹介状や電子カルテをやりとりするシステムを構築している。 島根県は今回、都道府県では初めてになるという、全県規模での医療機関のネットワーク化に取り組む。

中山間地や県西部の医療機関では産婦人科をはじめ、放射線科、麻酔科などの医師不足が深刻で、県立中央病院など県東部の大病院に患者の搬送要請が増加している。

このため救急患者の搬送などの際には、画像や書類など患者情報の詳細かつ迅速な伝送が課題となっている。 VPN の構築で、コンピューター断層撮影装置 (CT) 画像などを添付した紹介状をネット上で瞬時に送れるようになり、受け入れ側の病院で迅速な診断や処置が可能になるなどメリットが大きい。 (nikkei = 9-2-11)


システム開発「ルビー」技術者を倍増 テクノプロジェクト

システム開発のテクノプロジェクト(松江市、吉岡宏社長)は、和製プログラミング言語 Ruby (ルビー)でシステムを開発できる技術者を 2 年間で倍増する。 2010 年度時点で 21 人だったのを 11 年度中に 30 人に、12 年度に 40 人に増やす。 医療機関や自治体向けにルビーを使ったシステムの需要拡大が見込まれることに対応する。

今年 4 月に 5 人の技術者を新規採用し、今年度内に 2 - 3 人の中途採用を予定で、ルビー習得へ向けた教育に力を入れる。 他のプログラミング言語が専門の既存の技術者のルビー習得も促す。 来春の新規採用でも 6 人の採用を内定している。 同社の 11 年 3 月期の売上高約 32 億円のうちルビー関連は約 2 億 5,000 万円と 10 年 3 月期の約 6,000 万円から 4 倍に急拡大した。

今年度は約 3 億円を見込む。 ルビー関連の売上高全体に占める比率は 11 年 3 月期の 8% から 3 年後をメドに 4 割まで高める方針だ。 ルビーは複雑な処理を簡潔に記述できる点が評価され、更新を頻繁に繰り返すウェブシステム開発のほか、業務システムや組み込みソフト向けに利用が広がっている。

同社は島根県向けに 10 年度に「母子寡婦福祉資金システム」の再開発業務などルビー関連で 5 案件を受注した。 今年度も県内自治体向けシステムや医療機関向け各種システムの受注が相次いでいる。

人員の拡充と並行し開発体制も刷新する。 従来、受注案件ごとに独立した開発体制だったのを統一して効率化する。 08 年度にルビー関連のシステム受注拡大へ向けて立ち上げた社内組織「ルビービジネス推進室」が顧客対応と並行し、社内体制の統一・整備にもあたる。 このため教育や開発環境整備のために今年度約 2,000 万円の研究開発費を投入する。

吉岡社長はルビーの普及を目指して設立された Ruby アソシエーション(まつもとゆきひろ理事長)の評議員を務める。 利用者の立場から開発現場のニーズを反映した提案などを積極化する。 (nikkei = 8-26-11)

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プログラミング言語「ルビー」普及へ財団 楽天など 12 社が支援

世界の IT (情報技術)企業が注目する国産プログラミング言語「Ruby (ルビー)」の普及を狙って、27 日、一般財団法人 Ruby アソシエーション(松江市)が誕生した。 開発者のまつもとゆきひろ = 本名・松本行弘 = 氏が理事長に就任した。 新たに楽天などの IT 企業が活動を支援する。 IT 分野の交流を通じ、松江周辺のソフト産業の集積にも期待がかかりそうだ。

まつもと氏らが 2007 年に設立し、ルビーの普及活動を手掛ける合同会社 Ruby アソシエーションが財団をつくった。 12 年 10 月までに財団へ業務を移し、12 年中に公益財団法人とする方針だ。 財団の活動を支援するのは楽天のほか、富士通、日本ユニシス、インターネットイニシアティブ、日立ソリューションズ(東京・品川)など 12 社。

各社は評議員を出して活動を助言するほか、支援金を出すことも検討する。 ルビーの活用方法などの情報が財団に集まれば、地元 IT 企業のソフト改良や新ビジネスを後押しできる。 ルビー普及の取り組みは、まつもと氏の呼び掛けに応じ、国内外のボランティアによるネット上でのメールなどを通じた無償協力で成り立ってきた。 だが、企業や自治体での採用が広がり、きめ細かい情報発信が課題となっていた。

財団は必要に応じて、技術者をフルタイムで雇用することなどを検討する。 今回の財団の設立は、自由意思による同志ネットワークから組織化したことになり、活動が新たな段階へ一歩踏み出した格好だ。

ただ、営利目的の活動は行わない方針で、公益性を重視した事業展開を軸に据える。 今後、ルビーの普及拡大に賛同を得られる企業や個人などから広く協賛金を集める。 島根県と松江市もそれぞれ今年度 2,000 万円の予算を計上し、情報発信などを支援する。 (nikkei = 7-28-11)


環日本海拠点都市、物流確立へ協力強化 鳥取市で会議

日本海沿岸の日本、韓国、中国、ロシアの都市で構成する環日本海拠点都市会議が 25 日、鳥取市内で開かれた。 「環日本海地域における経済交流の新たな飛躍」をテーマに意見を交換し、物流の確立や環日本海経済圏の構築に向けて協力関係を強化していくことなどで合意した。

物流を確立するため、積極的に活用すべき交通ネットワークとして、航空路線の米子 - ソウル便や、境港と韓国・トンヘ市、ロシア・ウラジオストク市とを結ぶ環日本海定期貨客船航路、韓中ロ間で運航している白頭山航路を指摘。 「都市間連携の一層の強化と充実を図る」とした。

鳥取市が 7 月に実施した環日本海学生交流クルーズ事業について、同会議の開催都市を会場に継続開催し環日本海交流を推進する人材を育成していくことで合意した。 一方で、常設事務局の設置や、チャーター便などを使って同会議の会員都市間を周遊する観光モデルコースの設定などについては継続して検討していくこととした。

会議は 1994 年から開催。 今回は鳥取市が主催し、中国から図們、韓国からはポハン、トンヘ、ソクチョの各市。 日本からは鳥取市のほか、米子、境港の鳥取県内 3 市が参加した。 次回はソクチョ市で開く予定。 (nikkei = 8-26-11)


福島から牛購入の農家 2 戸、堆肥からセシウム 島根

島根県は 19 日、福島県内の牛を 5 - 6 月に購入した農家 15 戸のうち 2 戸の堆肥(たいひ)から放射性セシウムを検出、1 戸は国の暫定基準値(1 キロあたり 400 ベクレル)を超えていたと発表した。 これらの牛と排泄(はいせつ)物について農林水産省は、福島県への調査などを踏まえ、牛の移動と出荷を認める通知を島根県に出していた。

島根県内では 5 月以降、一部の肥育施設で宮城県産の汚染稲わらが納入され、堆肥の一部から放射性セシウムが検出されたが、これらの牛とは別という。

島根県によると、15 戸は福島県の臨時家畜市場から福島第一原発周辺の農家が肥育していた牛を含む計 77 頭を購入した。 農林水産省は 7 月 21 日、牛と排泄物を農場内に保管するよう通知。 このうち 64 頭について今月 11 日、汚染わらは与えられていなかったとして県に出荷を認める通知をしていたという。

島根県の独自検査で、64 頭中、2 頭を購入した 1 戸から 2,700 ベクレル、3 頭を購入した別の農家で 100 ベクレルを検出した。 県は今後、77 頭のふんと尿を採取し検査するという。 (asahi = 8-20-11)

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島根県知事「肉牛全頭検査、全国統一で」 農水省に

島根県の溝口善兵衛知事は 18 日、県庁を訪れた農林水産省の今井敏生産局長に、国としての全国統一の肉牛全頭検査体制の確立などを求める要請書を渡した。 島根県では、県内で処理される肉牛(年間約 5,000 頭)の全頭検査を実施しているが、生きたまま県外へ出荷される肉牛が年約 7,000 頭に上る。 「しまね和牛」ブランドに対する全国の消費者の不安を払拭するためにも国による検査体制が必要としている。

このほか、(1) 県内農家が震災後に福島から買い付けた牛に関して風評被害が広がっているため、国が全頭買い上げる、(2) 放射性物質が検出された稲わらや堆肥などを国が全量買い上げる、(3) 牛肉価格下落や取引減少などにより生産者や流通業者が被る損失を補填する - - ことなどを求めた。 (nikkei = 8-19-11)


鳥取のシセイ堂デザイン、公共施設駐車場に広告舗装

広告制作などを手掛けるシセイ堂デザイン(鳥取市、植木誠社長)は、公共施設の駐車場などを広告スペースとして活用する「地上絵プロジェクト」を始めた。 「地上絵」と呼ぶ広告入りのカラー舗装を駐車場に施し、土地使用料などを自治体に支払う内容。 県内企業が連携して開発したロボットで下書きすることで細密な絵柄も描けるのが特徴。 財政難の自治体の財源確保の一助とするとともに、県内産業の活性化につなげる。

「地上絵プロジェクト」は同社がスポンサーを募り、許可を得た自治体の駐車場に、カラー舗装でスポンサーの広告を施工。 スポンサーから施工料を含めて広告費を受け取り、駐車場を管理する自治体に土地の使用料などを支払う仕組み。 植木社長は「自治体の駐車場は閉庁日にはイベントの会場などとして使われて人が集まる場所になるケースも多く、広告効果は高い。 自治体側も収益を生まない駐車場からの収入により維持管理コストの軽減につながる」と説明する。

「地上絵」は環境にやさしい水性塗料をアスファルト路面に塗ってカラー化する「ストリートプリント」と呼ばれる工法を採用。 カナダの企業が特許を持つ技術で、石畳やレンガ敷き風などの形状にも対応できるほか、施工後 5 - 7 年持つ耐久性も備える。

下書きは道路標示を手掛ける技工社(鳥取市)を中心に県内企業計 16 社が連携して開発した自走式ロボット「ヒューナビ」を使用。 企業ロゴ以外の細密な絵柄でも熟練工なしで短時間で作業でき、「現場で関連業者に性能を確かめてもらうことでヒューナビの販売を促進し、県内産業の活性化にも一役買いたい(植木社長)」という。

広告料は駐車場そばの通行量などに基づき、シセイ堂デザインが特許出願中の計算方法を用いて施工費を含めて算出。 1 台分を丸ごと使用する 4.6 メートル x 2.1 メートルの大きさから 50 センチメートル x 120 センチメートルまで 4 種類のサイズごとに設定する。

すでに鳥取市がサッカー J リーグ 2 部 (J2) の地元チーム「ガイナーレ鳥取」の応援メッセージを入れることを条件に本庁舎の駐車場などで導入。 本庁舎駐車場の場合、広告料は丸ごと 1 台分で年間 22 万円、1 台分につき約 2 万円の土地使用料を市に支払っており、仮に収容台数の約 80 台分が地上絵で埋まった場合、市の収入は年間 160 万円程度となる。

今後、同社は全国の自治体を中心に公共的な施設の管理者に導入を働き掛ける方針。 5 年後をめどに売上高 1 億円を目指す。 (nikkei = 8-19-11)


「神々の国しまね 古事記 1,300 年」博 7 月 21 日開幕

公式ソング 谷村新司さん作詞・作曲

古事記の完成から 1,300 年を迎えるのを記念して県などが進めている観光事業「神々の国しまね 古事記 1,300 年」のメーン企画となる「神話博しまね」の日程が、来年 7 月 21 日から 11 月 11 日までの 114 日間に決まった。 県立古代出雲歴史博物館(出雲市大社町)を主会場に、神話の魅力を大画面で紹介する映像館や県内の伝統芸能を上演する特設舞台が設けられる。

映像館や舞台は、歴史博物館の駐車場につくられる。 映像館(272 席)では、特設の大画面(縦 3 メートル、横 15 メートル)を使い、最先端の映像技術でつくられた出雲神話の世界(20 分程度)が上映される。 客席 250 席程度の舞台では、毎日 2 - 4 回、石見神楽や隠岐の伝統芸能が上演される。 博物館では、神話を題材にした特別展や講座も開かれる。

また実行委は、公式ソングの作詞・作曲を歌手の谷村新司さんが手掛けると発表した。 県庁で記者会見した谷村さんは「日本中の人が島根に旅をしたくなるような、すてきな出会いが予感できるような曲をつくりたい」と話した。 年明けには完成する予定だという。 (藤家秀一、asahi = 8-19-11)


鳥取砂丘のボンネットバス、ジオパークの潮風受け快走

奇岩とエメラルドグリーンの海のコントラストが美しい浦富海岸と広大な砂地の鳥取砂丘。 山陰海岸ジオパークの一部でもある鳥取県東部の名所を、昭和レトロムード満点のボンネットバスが独特のエンジン音を響かせて走っていく。

バスは 1965 年式のいすゞ自動車製。 クーラーはないが、窓を開けて潮風を受けながら絶景を楽しめる。 女性車掌が乗務し、途中の停留所で沖合に続く菜種五島の成り立ちを乗客に説明するなどガイド役もこなす。 島根県に帰省した後で立ち寄った大阪府の 20 代の OL は「海の色が沖縄と変わらないくらいきれいなので驚いた」と話す。

岩美町などの委託でバス会社が 2006 年夏から運行している。 山陰海岸が昨年秋に世界ジオパークに認定されたことを機に利用客が増加。 15 日までに 1 便平均で 22 人と、昨年の約 4 割増になっている。 28 日までの土、日、祝日に運行し、料金は JR 鳥取駅から JR 岩美駅までの場合で大人 700 円。 1 日乗り放題券(1,000 円)などもある。 (nikkei = 8-16-11)


「妖怪レーベル」の復興支援ソング 境港市観光協会

境港市観光協会(鳥取県境港市)が運営する「境港妖怪レーベル」は、東日本大震災の復興支援ソングの CD を制作、発売した。 同協会は「妖怪観光のにぎわいで元気な境港から被災地に元気を届けたい」としている。 CD は「笑顔の花」と「笑顔のふるさと」の 2 曲入り。 作詞・作曲は同レーベル専属作曲家で鳥取県米子市在住の石田光輝さんと知人の作詞家が担当し、「花」はフォークソング調、「ふるさと」は演歌調に仕上げた。

「被災者が重荷に感じることがある『頑張れ』という言葉を使わず、聴いたり歌ったりしてもらうことで元気が出るような曲ができた(同協会)」という。 1 枚 1,200 円で、1,000 枚制作。 売り上げ 1 枚につき 100 円を義援金として被災地に送る。 同協会のほか、水木しげる記念館などで扱っているほか、同協会のホームページで通信販売も行っている。 (nikkei = 8-16-11)


最古級の電車で GO 島根・出雲で体験運転人気

島根を舞台にした映画「レイルウェイズ」で使われた日本最古級の電車を実際に運転できるイベントが子供たちや家族連れの間で人気を呼んでいる。 島根県の宍道湖岸を走る一畑電車が、出雲市の雲州平田駅構内に延長 150 メートルの専用線を設け、所有する「デハニ 50 形」を使って体験運転を実施している。

参加者は電車の仕組みや運転方法などを学んだ後、本物の運転士さんと一緒に電車に乗り込み、「前方よし、出発進行」のかけ声で全長約 16 メートル・重さ約 34 トンの車両を動かす。 愛読書は鉄道雑誌という東京都府中市から親子で参加した狩野寛知くん(小 6)は「思っていたより止まるのが難しかったけど、また挑戦したい」と興奮気味に話していた。

体験運転は来年 3 月 31 日までの金・土・日曜日に開催。 問い合わせは一畑トラベル (0853・72・3200)。 (asahi = 8-13-11)

動画 (YouTube)


次世代バーコード使いデータ通信量増大 島根大とテクノプロ

島根大学と、システム開発を手掛けるテクノプロジェクト(松江市、吉岡宏社長)は新技術の「3 次元カラーバーコード」を使ってインターネットを通じたデータ通信量を増大させるシステムを開発した。 データ圧縮率が従来より 3 割程度高く、セキュリティー機能を併せ持つ点が特徴。 診断データのやりとりなど遠隔医療への活用を検討している。

島根大総合理工学部数理・情報システム学科の六井淳・情報科学博士が開発した 3 次元カラーバーコード技術を活用して、テクノプロジェクトが医療機関向けなどにシステム化の研究を進めてきた。

3 次元カラーバーコードは、通常のバーコードや QR コードが平面(2 次元)上の白黒のイメージパターンに情報を読み込ませる仕組みであるのに対し、それぞれ違う色の平面を何層も重ね合わせて、データを立体的に格納するのが特徴。 上から見た際の色の重なり方からデータを読み込む方式。 理論的には、層の数を増やすほど格納できるデータ量が無限に増すことになる。

テクノプロジェクトはこの仕組みを電子化したうえで、ネット上での通信の際のデータ圧縮技術に応用した。 例えば、レントゲン写真などの画像を遠隔地の診療所から都市部の大病院に送る場合、一度にたくさんの画像を送れるようになり、患者搬送などの判断が正確かつ迅速に行えるようになる。 3 次元カラーバーコードで立体的に情報を格納することで高度な暗号化にもなり、誤送信などによる個人情報流出の防止にもつながるとしている。

テクノプロジェクトが実際に医療機関が検査用に使っている磁気共鳴画像装置 (MRI) の画像 20 枚(ファイルサイズはすべて 52 万 6,530 バイト)を圧縮したところ、現在主流の圧縮技術「ZIP」では圧縮後のサイズが 15 万 6,201 - 26 万 1,998 バイト。 一方、3 次元カラーバーコード技術を使った圧縮では、10 万 8,725 - 19 万 396 バイトとなり、圧縮率は 3 割前後向上した。 (nikkei = 8-10-11)


島根・雲南の卵かけご飯専門店、14 日に食べ放題イベント

卵かけご飯ブームの火付け役となった専用しょうゆ「おたまはん」を製造する島根県雲南市の第三セクター、吉田ふるさと村(藤原俊男社長)は 14 日、卵かけご飯専門店「飯匠(はんじょう)お玉はん」の開店 1 周年を記念する食べ放題イベントを開催する。

地元産のコシヒカリと、同市吉田町の養鶏場で生産している「田部のたまご」を使った卵かけご飯を無料で提供する。 卵は 500 個用意。 午前 11 時から午後 2 時までを予定しているが、食材がなくなった時点で終了となる。 食堂内の 34 席のほか、隣接する駐車場に露店を出し 20 人分の簡易席も用意する。

卵かけご飯の専用しょうゆ「おたまはん」は 2002 年に発売。 イベントの開催で、再び注目度を高め販売てこ入れを図る。 (nikkei = 8-9-11)


木炭で節電効果実証 出雲土建と島根大、住宅建材に活用

土木・建設業の出雲土建(島根県出雲市、石飛裕司社長)と島根大学産学連携センターは、木炭を住宅建材に活用することでエアコンの消費電力を約 24% 節約できることをこのほど実証した。 断熱・除湿効果のある木炭を詰めた袋を天井裏や床下に設置すると、室内の冷房効率を高めることができるという。

実証実験は松江・出雲両市内の計 3 棟の賃貸マンションで実施。 出雲土建の子会社の出雲カーボン(同、同)が 2002 年から製造・販売している湿度調整効果を高めた「炭八」を使用した。 賃貸マンションなどは天井裏の空間が断熱されていないことが多いといい、調湿木炭を断熱材として設置することで室内の冷房効率が高まるという。

島根大とは 01 年から調湿木炭の効果についての共同研究を続けてきた。 節電に加え、防音の効果も確認できたという。 出雲土建は「炭八」を活用した工法の特許をすでに取得しており、同工法で住宅建設を行う認定会社を全国から募集している。 出雲カーボンの「炭八」の売上高は 11 年 5 月期で 1 億 1,000 万円。 今期は 1 億 3,500 万円を見込んでいる。 (nikkei = 8-5-11)


尾池工業が鳥取・倉吉事業所を増設 - 微細粉末生産、幅広く応用

薄膜加工の尾池工業(京都市、尾池均社長)は、蒸着技術を活用して開発した鱗片状の微細粉末「リーフパウダー」を増産する。 倉吉事業所(鳥取県倉吉市)に量産プラントを建設し、2012 年 6 月に稼働する予定で、ナノサイズの薄さで金属などを粉末化したのが特徴。 印刷から電子部品まで幅広く応用できることから中核事業の一つと位置付け、将来は売上比率 10% を目指す。

量産プラントは、倉吉事業所の既設棟と道路を 1 つ隔てた用地に今月末に着工する予定。 床面積は約 500 平方メートルで、投資額は約 5 億 7,000 万円を見込み、新たに 5 人を雇用する。 現在京都事業場(京都市)で生産しており、11 年度は 130 キログラムの生産を予定しているが、プラントが稼働する 12 年度は生産量を 1 トンに引き上げる。

リーフパウダーは応用範囲が幅広く、例えば、菓子のパッケージなどを鏡面調に印刷する場合、いったん通常の印刷をした後で薄い金属はくを貼り付けて鏡面部分を作っている。 一方、インクにリーフパウダーを混ぜると金属光沢を持つため、尾池社長は「金属はくを圧着する工程が不要になり、鏡面調の印刷も 1 回の工程で済ませられ、コスト削減につながる」と説明する。

このほか、化粧品や衣料品、包装材に混ぜれば、ラメ状の光沢を持つ産業素材の作成が可能。 金属粉末で導電性を持つため、電子回路のパターン作成やリチウムイオン電池などの導電・電子材料にも応用できるといい、12 年度に売上高 6 億円を目指す。 (nikkei = 8-5-11)


三洋再編、鳥取で官民対策会議 「雇用の受け皿確保を」

パナソニックグループの事業再編に伴い、三洋電機の家電子会社、三洋電機コンシューマエレクトロニクス(三洋 CE、鳥取市)で離職者の発生が懸念されていることを受け、鳥取労働局や商工団体など官民で構成する緊急雇用対策会議が 3 日、鳥取市内で初会合を開いた。 出席者からは新会社設立を含めて雇用の受け皿を確保する必要があるとの意見が相次ぎ、三洋電機側に近く要望することで合意した。

この日の会合では、三洋 CE 社員のうち、パナソニックへの出向者を含め鳥取市の本社などに籍を置く 80 人が配置転換の対象であることを報告。 鳥取の家電部門は「GOPAN」の製造関連は引き続き残るものの、10 人程度が県外への異動を打診されていることが明らかになった。

ただ、三洋 CE にはカーナビを手掛ける車載部門もあり、パナソニックと三洋電機の統合が進むなかで、今後、さらに離職者が増加する懸念がある。 このため、出席者からはセイコーエプソンが鳥取の液晶事業を撤退する際にプリンター修理会社を設立した例を念頭に、三洋電機に雇用の受け皿を確保するよう求める意見が相次いだ。

緊急雇用対策会議は鳥取労働局の森田啓司局長が座長を務め、県や市、県経営者協会や鳥取商工会議所の担当者らで構成。三洋再編の動きにあわせて今後も対策会議を随時開き、対策を探る。 (nikkei = 8-4-11)

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鳥取県、三洋再編に備え雇用対策チーム

パナソニックと傘下の三洋電機の家電部門の統合が進んでいることを受け、鳥取県は今月から来月にかけて庁内に対策チームを設置する。 鳥取市内にある三洋の家電子会社、三洋電機コンシューマエレクトロニクス(三洋 CE)の事業縮小が見込まれるため。 情報収集を急ぐとともに、離職者が発生した場合の雇用確保策などを探る。

三洋 CE は家電部門の従業員について、グループ内の配置転換や早期退職で数百人を削減する方向で検討しており、労働組合と協議を始めている。 会社側は主に配置転換で対応する方針だが、転勤できずに離職者が発生するケースも想定され、「神経戦的な展開になっている(平井伸治知事)」という。

このため県は今夏がヤマ場になるとみて、商工労働部長が三洋 CE 側とのホットライン体制を設け、情報収集を開始。 今月から来月にかけて庁内に 10 人程度の対策チームを設置し、雇用確保策を探るほか、鳥取での新事業実施を促すための支援策を検討する。 大量の離職者の発生が見込まれる場合は鳥取市や鳥取労働局とも連携する考えだ。 (nikkei = 7-16-11)


日水グループ、ギンザケ養殖で鳥取県などと協定 境港で実験

鳥取県内でギンザケの養殖実験を計画している日本水産グループは 2 日、鳥取県や境港市などと進出協定を結んだ。 来年 6 月末までに 200 トンの水揚げを見込んでおり、魚の疾病や冬場に荒れる海の状況、生産性について検証。 問題がなければ将来的に 1,500 - 2,000 トンまで生産規模を拡大する方針だ。

養殖実験は 4,500 万円を投じ、日本水産の 100% 子会社、臨海研究(大分県佐伯市)が実施。 7 月からすでに倉吉市内で稚魚の養殖を始めており、11 月をめどに美保湾の境港市沖に設置する 5 基のいけすに移転する。 1 匹 1.3 - 2.3 キログラムの大きさまで成長する 3 月上旬から 6 月末にかけて出荷する。

同社グループは東日本大震災の被災地、宮城県女川町でもギンザケを養殖していたが、復旧のめどが立っていない。 ただ、国内産の養殖ギンザケに対するニーズは根強く、まず境港の養殖実験を通じて供給再開を急ぐ。 (nikkei = 8-3-11)

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日本水産、鳥取でギンザケ養殖実験 宮城の委託業者被災で

日本水産グループは鳥取県でギンザケの養殖実験に乗り出す。 宮城県女川町で養殖を委託する業者が東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けており、リスクを分散する。 実験に取り組むのは、過去にギンザケの養殖が行われていた海域で、県水産課は「養殖事業が拡大し、加工業者の集積など地域の活性化につながれば」と期待している。

養殖実験は、倉吉市関金町の養魚場にギンザケの幼魚 15 万匹を今月持ち込み、体長 20 センチメートル程度になるまで育成。 海水温がセ氏 20 度を下回る 11 月ごろをめどに日水のグループ企業が境港市の沖合約 3 キロメートルに設置するいけすに移し、翌年 4 - 5 月に約 200 トンの水揚げを計画している。

鳥取県などによると、養殖を予定している美保湾は冬場でも比較的波が静かな海域。 1986 年から 95 年にかけて同市内の業者がギンザケを養殖し、92 年にピークの 334 トンを水揚げした。 対馬暖流が流れるため、寒流の親潮が流れる宮城県沿岸よりも海水温が高く、魚の成長が早まる効果も期待できるという。 ただ、天候が荒れると波の高さが 2 - 3 メートルになることもあるため、荒天時にいけすが流されないかなど、実験で影響を調べ、事業の本格展開を検討する。

同県の平井伸治知事は「受け入れに当たって最大限の支援をしていきたい」と語った。 (nikkei = 7-8-11)


鳥取県、1 万人の雇用創出へ 産学と連携、推進会議発足

鳥取県は 1 日、産学官連携による「県雇用創造 1 万人推進会議」を設立し、鳥取市内で初会合を開いた。 若者の定住促進に向け、4 年間で 1 万人の雇用創出を目指す。 県が部局横断的に設けたプロジェクトチームが策定する計画案に助言するほか、県が各部局に設置する検討会議に参加、雇用創出を後押しする。

初会合では、県の担当部局のほか、県内の商工団体や農水産団体、鳥取大学など高等教育機関、鳥取労働局など労働関係者が参加。 県内企業も 5 社出席した。

意見交換では日本セラミックの谷口義晴社長が「ワールドワイドに太刀打ちできる人材の育成を」と指摘。 県経営者協会会長を務める鳥取銀行の宮崎正彦頭取は「県内出身者向けの U ターンイベントを県内企業とセットで実施したり、県内出身者の親向けに県内企業を PR したりする取り組みが必要」と発言した。

推進会議の意見を踏まえ、県はプロジェクトチームを通じて 10 月をめどに雇用創出に向けた計画案を策定。 12 月をめどに本計画としてまとめ、随時予算化して施策を実行していく方針だ。 (nikkei = 8-2-11)


新型風車で鳥取企業連携 弱風から強風まで発電、騒音少なく

鳥取市南部の工業団地に立地する企業などで組織する「鳥取テクノヒルズ」は、名古屋市の環境技術関連のベンチャーと新型の風力発電機を開発した。 上下 1 組の風車がそれぞれ反対方向に回転する独自構造で、風の強さや向きにかかわらず効率よく発電できるのが特徴。 自然エネルギーへの関心が高まるなか、国内外の工場などの補助電源としての需要を見込む。 今後、生産体制を構築し、3 年後をめどに量産を目指す。

風上に本体を向けなくても発電できる「垂直軸型」を採用。 上下1組の風車で構成し、それぞれ反対方向に回転させる「トルネード型」と呼ぶ独自構造で、上下の風車の間に発電機を配置する。 通常、発電機はコイルを固定して磁石を回転させるのに対し、トルネード型はコイルも磁石と反対方向に回転させるのが特徴。 このため弱い風でゆっくり回っていても、磁石の回転数を上げたのと同様の効果が生じ、発電量を稼げるという。

風力発電機などの研究開発を手掛けるエコ・テクノロジー(加藤政春社長)が設計を担当。 テクノヒルズに参加する産業機械製造の鳥取メカシステム(鳥取市、林正人社長)など 4 社が協力、製作費約 750 万円をかけて高さ約 7 メートル、最大出力 2 キロワットの小型機を試作した。 製造工程の見直しや量産化でコスト削減を進め、1 基 300 万円程度での販売を目指す。

同社は回転部の軸受けなどの心臓部分を手掛け、試作機を本社屋上に設置した。 積雪など山陰の厳しい気象条件での発電状況などを検証する。 工場内の照明などに安定して利用できるように、年内をめどに、蓄電池と組み合わせた電流安定化システムも開発する。

林社長は「風力発電で主流のプロペラ式は風速 20 メートル程度になると羽根を含めた機器の損傷を防ぐために回転を止めるが、トルネード型はその必要がない。 風速 3 メートル程度の弱風で稼働を始め、強風になっても発電を続けられる。」と説明する。 上下の風車の反対方向の回転が騒音や振動を打ち消し合うことで、強風時に大きく揺れない。 このため「既存建築物の屋上に設置する場合でも最小限の補強で済む」という。

福島第 1 原子力発電所の事故を契機に、中山間地の集落などでも自然エネルギーを利用した補助電源の需要が高まると判断。 鳥取メカシステムが中心となって製造工程の見直しなどを進め、3 年後をめどに数百基を生産し、売上高 20 億円台を目指す。 (nikkei = 7-23-11)