B 型肝炎感染者、がん・リウマチ治療でウイルス再増殖

過去に B 型肝炎ウイルスに感染した人ががんやリウマチなどの治療で免疫力が落ちると、ウイルスが再び増える「再活性化」が起きることが厚生労働省研究班(研究代表者 = 持田智・埼玉医大教授)の全国調査でわかった。 再活性化に気づかず放置すれば、重い肝炎を発症する恐れがある。

研究班は 2009 年度から抗がん剤やステロイド、リウマチ治療に使われる生物学的製剤による治療で免疫力が落ちた患者で、過去に B 型肝炎ウイルスに感染した 235 人について調査。

うち 11 人 (4.7%) で再活性化が起きていた。 再活性化が起きると劇症肝炎を発症しやすい。 04 - 09 年に全国で 18 人が死亡。 17 人ががん、1 人がリウマチの患者だった。 今回の調査で再活性化が起きた 11 人のうち、5 人はウイルス量が基準を超えていた。 抗ウイルス薬による治療を受け、いずれも肝炎を発症しなかった。 (asahi = 9-9-11)

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B 型肝炎の新治療薬を助成へ 厚労省方針

厚生労働省は 8 日、B 型慢性肝炎の新治療薬「ペグインターフェロン」を公費助成する方針を決めた。 現在、B 型肝炎患者の治療薬としては核酸アナログ製剤やインターフェロンが公費助成されており、治療の選択肢が増えることになる。

ペグインターフェロンは注射薬で免疫を活発にする効果がある。 助成は 1 回で、期間は 1 年以内(最大 48 週間に週 1 回投与)、過去にインターフェロンで公費助成を受けた患者も対象とする予定。 厚労省の「肝炎治療戦略会議」が提言していた。 (asahi = 9-8-11)


温度変化で増殖する人工細胞 東大のチームが作製に成功

「自ら増殖する人工細胞」の作製に、菅原正東京大名誉教授らのチームが成功した。 使った原料は、簡単な有機化合物。 地球に生命が誕生した謎に迫る手がかりになりそうだ。 成果は 5 日の英科学誌ネイチャー・ケミストリー(電子版)に掲載される。

研究チームは、脂肪酸に似た有機化合物を使って、水溶液の中で自然に球状になる器を作製。 ここに、DNA や DNA 合成酵素などを入れ、液の温度を 95 度に上げ、65 度に下げるという作業を繰り返した。 温度の上げ下げと合成酵素の働きで、DNA の複製ができ、20 回繰り返すと約 100 万倍に増えた。

DNA が増えた段階で膜の材料の有機化合物を加えると、DNA の一部が内壁にくっつき、そこが活性化されて球状に膨れた。 膨れた膜は、細胞分裂するようにちぎれ、DNA も入った新しい「人工細胞」ができた。 DNA はマイナスの電気を帯びており、そこにプラスの電気を帯びた膜の材料が集まり、DNA を中心に自然に増えたと考えられた。 今回は大腸菌由来の DNA を使ったが、人工的に合成したものでも同様の増殖は可能だという。 (asahi = 9-5-11)


感染症拡大防止に期待 住友化学が殺菌フィルム発売へ

有害なウイルスや菌を殺す効果のあるフィルムを、住友化学が年内に発売する。 明かりに反応する「光触媒」を活用したフィルムで、壁や手すり、エレベーターのボタンなどに貼る。 新型インフルエンザや手足口病などの感染症に神経をとがらせる病院や学校での利用を見込んでいる。

光触媒は、光に反応してたんぱく質などの有機物を分解したり、汚れを付きにくくしたりする性質がある。 従来は太陽光の紫外線に反応するタイプが主流で、用途は外壁やガラスの汚れ対策が中心だった。 住友化学は光触媒の殺菌力に着目。 蛍光灯や LED (発光ダイオード)照明でも高い反応を示す光触媒の開発に世界で初めて成功し、室内で使えるめどをつけた。 (asahi = 9-3-11)


長寿世界一の日本に警鐘 英医学誌、喫煙・自殺増加懸念

世界的に権威ある英医学誌ランセットが 9 月 1 日、日本の保健医療に関する論文特集号を発行する。 長寿世界一を達成した医療の貢献を評価した一方で、男性の喫煙率の高さや自殺の増加などから長寿国の地位を危ぶむ指摘も掲載している。

同誌は日本の教訓を世界各国の保健医療政策に生かす狙いで特集を作った。 渋谷健司東京大教授、武見敬三日本国際交流センターシニアフェローら日米欧などの専門家 66 人が協力した。 長寿世界一になった理由について 1950 年以降、病気別の死亡率の国際比較などで分析した。 50 - 60 年代前半には感染症対策、60 年代後半からは減塩や降圧薬の普及による脳卒中死亡率低下が貢献した。

今の日本で死亡の危険因子は喫煙と高血圧と指摘。 全成人が禁煙すれば平均寿命は男性が 1.8 年、女性は 0.6 年延び、血圧を下げれば男女とも 0.9 年延びると推定する。 だが、現状は対策が不十分という。 日本の自殺率は 10 万人あたり 24.4 人(2009 年)で米国の 11.0 人(05 年)などに比べて高い。

同誌のコメント欄でクリストファー・マレー米ワシントン大教授は日本の経済停滞、政治の混乱、高齢化、たばこ規制の不十分さを指摘し「対策をとらなければ世界での平均寿命の順位が落ちていくかもしれない」と警鐘を鳴らしている。 (asahi = 8-31-11)

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日本女性平均寿命 86.39 歳 やや低下、世界一は維持

日本人女性の 2010 年の平均寿命は 86.39 歳で、5 年ぶりに前年を下回ったものの、26 年連続で長寿世界一を維持した。 男性は 79.64 歳と 5 年連続で過去最高を更新。 順位は前年より一つ上げ、世界 4 位だった。 男性より高齢化が進む女性は、夏場の死者数が前年より特に増えており、猛暑の影響とみられる。

厚生労働省が 27 日に発表した「簡易生命表」でわかった。 男性は前年より 0.05 歳延びた一方、女性は 0.05 歳短くなった。 女性の死者数を月別で見ると、7、8 月は前年同月比で 1 割ほど増加。 熱中症による死者数は 798 人で前年の 8 倍以上となった。 男性も熱中症の死者は大きく増えたが、がんの死亡率が若い世代で減ったことなどが平均寿命を延ばした。 (asahi = 7-27-11)


原発周辺住民は「ヨウ素剤飲むべきだった」 識者が指摘

東京電力福島第一原発の事故で周辺住民が飛散した放射性ヨウ素を空中や食品から体内に取り込むことによる甲状腺の被曝は、健康被害を予防する安定ヨウ素剤を飲むべきレベルだった可能性があることが、27 日、埼玉県で開かれた放射線事故医療研究会で指摘された。

今回、政府は原発周辺住民にヨウ素剤の服用を指示しなかった。 しかし研究会では、原子力安全委員会の助言組織メンバー、鈴木元・国際医療福祉大クリニック院長が「当時の周辺住民の外部被曝の検査結果などを振り返ると、安定ヨウ素剤を最低 1 回は飲むべきだった」と指摘した。 3 月 17、18 日に福島県で実施された住民の外部被曝検査の数値から内部被曝による甲状腺への影響を計算すると、少なくとも 4 割が安定ヨウ素剤を飲む基準を超えていた恐れがあるという。

放射性ヨウ素は甲状腺に集まりやすく、甲状腺被曝では放射性ヨウ素の中では比較的、寿命が長い放射性ヨウ素 131 (半減期約 8 日)だけが考慮されていたが、広島大原爆放射線医科学研究所の細井義夫教授は「半減期が 2 時間と短いヨウ素 132 も考慮が必要」と指摘。

理化学研究所などが 3 月 16 日に原発 30 キロ圏外の大気を分析した結果、放射性物質の 7 割以上が放射性ヨウ素 132 や、約 3 日で放射性ヨウ素 132 に変わる放射性物質だったという。 (大岩ゆり、asahi = 8-27-11)


福島県民一人ずつの被曝線量測定など要望 がん対策協

国のがん対策を話し合う厚生労働省のがん対策推進協議会は 25 日、東京電力福島第一原子力発電所の事故による福島県民の健康影響を調べるために、県民一人ずつの被曝(ひばく)線量を測定するための費用を来年度予算に盛り込むよう国に要望することを決めた。 小児がん拠点病院(仮称)など小児がん治療態勢整備の費用も求めていく。

低線量被曝の影響は科学的によくわかっていない。 同協議会は、福島の住民個人個人の被曝線量を測定し、測定結果を個人に通知すると同時に、長期間にわたって低線量被曝した場合の健康影響を調べるために必要な医学的な情報収集の予算措置を求めていく。

一方、現行の政府のがん対策基本計画には小児がん対策が盛り込まれていない。 協議会は、小児がん対策の強化が必要だとして、治療の質の向上と同時に、治療中の子どもを支援することなどを目的とする、小児がん拠点病院(仮称)の設置や、小児がん登録など小児がん関連情報を一元的に統括し、総合的な対策を立てる小児がんセンター(仮称)の創設も要望していく。 (大岩ゆり、asahi = 8-25-11)


排卵誘発剤の自己注射、通院と同様の効果 日産婦が調査

不妊治療で使う排卵誘発剤は、患者が自分で注射しても通院治療と同じか、それ以上の効果があることが、日本産科婦人科学会の調査で分かった。 卵巣が腫れたり、双子以上の妊娠になったりするリスクが減るケースもあった。 自分で薬剤を少しずつ注射して、ゆっくり卵子を育てることができるのが理由のようだ。 毎日の通院が難しい女性にも安心できる結果だ。

体外受精や排卵障害で使う排卵誘発剤は 2008 年から患者自身が自宅などで注射できるようになった。 以前は、月経の開始から 10 日間前後、毎日、不妊クリニックや産婦人科に通院する必要があった。 しかし、通院の回数を減らそうと、一度の投与量を多くすることもあり、卵巣の腫れや多胎妊娠のリスクを高めることもあったという。

同学会の生殖・内分泌委員会小委員会は 09、10 年の 2 回、約 600 の不妊治療施設で排卵誘発剤の使用状況を調べた。 09 年は回答施設の 53% にあたる 186 施設で、10 年は 65% の 242 施設で、患者の自己注射を取り入れていた。

10 年の調査では、自己注射の治療成績について、回答施設の 9 割以上が、通院治療と比べて「変わらない」、「よい」と答えた。 自己注射で多胎が「減少した」は 11%、「変わらない」は 89% で「増加した」はゼロだった。 卵巣が腫れる副作用も、23% が「減少した」、77% が「変わらない」と回答した。 (asahi = 8-25-11)


ビフィズス菌で寿命 3 割延びる 京大などマウスで成功

マウスにビフィズス菌を定期的に与えたら寿命が約 3 割延びたと、京都大や協同乳業などのグループが 17 日、発表した。 菌によって腸内で増える物質が、老化を抑えた可能性があるという。 米科学誌プロスワンに同日掲載された。

これまでの動物実験で、摂取カロリーを減らすことで寿命が延びるという報告が知られているが、それ以外の方法で成功した例は極めて珍しいという。 協同乳業の松本光晴主任研究員らは、人間で 30 代前半にあたる生後 10 カ月のマウス 20 匹に「LKM512」というビフィズス菌を週 3 回飲ませた。 1 回の量は 1 匹につき菌約 2 千万個で、人間がビフィズス菌入りヨーグルト 150cc を食べたぐらいになる。 (asahi = 8-18-11)


熱中症搬送者、2 年連続で 3 万人超 高齢者が 5 割弱

今年の夏、熱中症で救急搬送された人の数が全国で 3 万 5,436 人(5 月 30 日 - 8 月 14 日、速報値)に上り、2 年連続で 3 万人を突破したことが、総務省消防庁のまとめでわかった。 消防庁のまとめによると期間中に搬送された人のうち、65 歳以上の高齢者が 46.5% を占めた。

初診で死亡と診断されたのは 61 人。 3 週間以上の入院が必要な重症は 890 人、中等症が 1 万 1,838 人だった。 東京都、埼玉県、愛知県では、搬送された人の数が 2,500 人を超えた。 猛暑だった 8 月 8 日 - 14 日の 1 週間に搬送された人は 7,071 人で、死者 15 人、重症者 178 人に上った。 記録的猛暑だった昨夏は、7 月 - 9 月で 5 万 3,843 人が救急搬送された。 (asahi = 8-16-11)


慢性アレルギーの仕組み解明 東京理科大教授ら

体内に異物が入った後、時間が経ってから炎症が起きる慢性アレルギー反応の仕組みを、東京理科大の久保允人教授らがマウスの実験で見つけた。 15 日の英科学誌「ネイチャー」で発表した。

花粉症のように、原因物質が体内に入るとすぐに目がかゆくなったり皮膚が赤くなったりするアレルギー反応は、主に肥満細胞の働きで起きることが知られている。 一方、長い間炎症が続く慢性アレルギー反応では、白血球の一種「好塩基球」が関わっているが、どのように活発化するかはなぞだった。

久保教授らは、気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎などの患者の患部でよく確認される「TSLP」というたんぱく質に注目。 TSLP が好塩基球の働きを引き出すことをマウスを使った実験で確かめた。 (asahi = 8-16-11)


光化学スモッグ原因物質、増え続けるナゾ 環境省が調査

光化学スモッグの原因となる光化学オキシダントが、全国でじわりと増えている。 オキシダントを生み出す原因の揮発性有機化合物 (VOC) は国の規制で大幅に減ったのに、オキシダントは各地で環境基準を超えたままだ。 環境省は 10 日に検討会を立ち上げ、ナゾの解明に乗り出した。

全国に 1 千カ所以上ある測定局(一般局)で測った光化学オキシダント濃度(1 日の最高値の年平均値)は、1980 年代から微増を続け、ほぼすべての測定局で国の環境基準を超えている。 このままでは、光化学スモッグが社会問題になった 70 年代の水準に逆戻りしかねない状況だ。

環境省は 2006 年、化学工場やクリーニング業者などに VOC の排出削減を義務付けた。 その結果、全国の排出量は 00 年に約 142 万トンあったのが、09 年は約 82 万トンまで減った。 しかし、2 - 3 割減ると期待されたオキシダントは、逆に微増を続けた。 (asahi = 8-14-11)


太る → 血圧上昇、たんぱく質がカギ やせ薬開発に期待も

肥満になると血圧が上がる傾向があるが、その仕組みのカギを握るたんぱく質を、東北大の片桐秀樹教授(代謝学)らのグループが見つけ、9 日付の欧州循環器学会誌(電子版)に発表した。 肥満を治す薬の開発も期待できる成果という。

グループは、いわゆる内臓肥満で脂肪がたまった人の肝臓に見られる PPARγ(ガンマ)というたんぱく質に着目し、マウスの肝臓にこのたんぱく質を作る遺伝子を入れてスイッチを入れてみた。 するとやせたマウスでも、肝臓から「肥満している」という情報が脳に伝わり、脳からの指令で血圧が上昇して体内の脂肪の分解が進んでいた。

肥満になると血圧が上昇するのは、基礎代謝を上げて太りすぎを防ぐ反応と考えられている。 しかし、それを上回るペースで栄養を取ると、高血圧が続いて動脈硬化につながる。 (asahi = 8-12-11)


京大、米で iPS 細胞特許 欧州並み広範囲の権利取得

京都大学は 11 日、iPS 細胞(人工多能性幹細胞)をつくるのに必要な遺伝子の特許が米国で成立したと発表した。 国内のほか、海外で欧州など 4 カ国 2 地域ですでに成立しているが、研究が盛んで市場がもっとも大きい米国で認められた意義は大きい。 5 日付で通知された。 権利期間は 2027 年 6 月ごろまでとみられる。

米国の特許は、特定の遺伝子だけでなく、類似の遺伝子であれば今後見つかるものも含めてすべて権利が及ぶ。 欧州とほぼ同様に広い範囲の権利が認められた。 (asahi = 8-11-11)

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京大の iPS 細胞作製技術、欧州で特許 米国審査も終盤

京都大学は 11 日、iPS 細胞(人工多能性幹細胞)をつくる技術の特許が欧州で成立したと発表した。 国内での特許はすでに成立し、国外では 4 番目。 iPS 細胞作製に使う遺伝子の種類が、国内特許よりも広い範囲で認められた。

山中伸弥・京都大教授が開発した iPS 細胞の特許をめぐり、激しい国際競争になっている。 最大の市場である米国では 1 月、特許争いをしていた企業から京都大が譲渡を受けた。 審査は終盤に入り、年内にも成立の見通しという。 「本家」の京都大が国際的な主導権を確保しつつある。

権利期間は国際出願した 2006 年 12 月 6 日から 20 年間。 今年 5 月 30 日に認められ、8 月に欧州特許庁に登録され、英独仏など主要 17 カ国で登録する予定。 (asahi = 7-11-11)


腎臓の炎症、がん関連遺伝子が関係 東大チームが解明

がんの増殖に関わる遺伝子の働きで、腎臓の炎症が進む場合があることを、東京大の永井良三教授や真鍋一郎特任准教授らのチームが、マウスの実験で確かめた。 この遺伝子の働きを抑える薬ができれば、慢性腎臓病の新しい治療になることが期待される。

この遺伝子は「KLF5」といい、永井教授らが 2002 年に発見。 動脈硬化やがんの増殖に関わることが分かっている。 慢性腎臓病の炎症が血管の炎症とも似ており、マウスの腎臓での働きを調べた。 マウスの尿管を縛ると、腎臓では尿を濃縮する集合管という場所で KLF5 が盛んに働き、炎症が起きる仕組みを活性化していた。 一方、遺伝子操作で KLF5 を働きにくくしたマウスでは、尿管を縛っても炎症は起きなかった。 (asahi = 8-9-11)


新たな「骨延長術」、高度医療に承認 名大病院が開発

名古屋大学病院(名古屋市昭和区)は、病気で身長が伸びない患者の骨髄細胞を取り出して培養し、骨に移植する新しい「骨延長術」が、厚生労働省の高度医療評価会議で承認されたと発表した。 承認された方法は、足の骨を約 9 センチ伸ばすのにこれまで 1 年弱かかったのを 9 カ月程度に短くできる。 患者ごとの治療期間のばらつきも少なかった。 治療期間や費用負担が軽くなることが期待されている。

骨延長術は、国内に約 1 万人いる軟骨無形成症で身長が伸びない患者や、外傷などで足の長さが違う患者への治療で使う。 同病院は 2002 年から臨床研究を続け、足の骨を手術で切って徐々に引き伸ばすこれまでの方法(35 人)と、培養した骨髄細胞の移植を組み合わせる新しい方法(41 人)を比べ、細胞移植で骨形成がより進むことを確認した。

また、足の骨を伸ばす間、医療用の釘を外から骨に打ち込んだままになるが、治療期間が短いため、感染症などのリスクを減らせるという。 (asahi = 8-8-11)


中枢神経の再生に役立つたんぱく質を特定 横浜市立大

脳や脊髄など、一度傷つくと元に戻すのが難しいとされる中枢神経の再生に役立つたんぱく質を、横浜市立大の竹居光太郎准教授らがマウスを使った実験で特定した。 米科学誌サイエンス(電子版)で発表した。

竹居准教授らは、中枢神経の中では比較的再生しやすい嗅覚に注目。 胎児のマウスから取り出した脳の嗅覚の神経は、特定のたんぱく質の役割が抑えられると、神経回路がうまく束にならないことがわかった。 このたんぱく質を「LOTUS (ロータス)」と名付けた。

脳には神経の形成を妨げる仕組みがあるが、LOTUS はこの仕組みを阻害し、結果として神経の形成を促していた。 竹居准教授は「もともと体内にある物質なので、副作用の少ない創薬につながる」と話す。 (下司佳代子、asahi = 8-6-11)


小児の腸の病気 早期発見へ診療指針

乳幼児に多く、腸がふさがり重症化すると死亡することもある腸の病気の診療指針を、日本小児救急医学会がまとめた。 国内では毎年 3 千 - 4 千人の患者が出ている可能性があるが、早く見つければ手術が不要なケースが多い。 指針では、家庭でも気づくような病気の兆候などをまとめた。

この病気は、腸の口側の部分がお尻側の部分の中に入り込むことで起こる小児腸重積症。 多くは原因不明だが、乳幼児での代表的なおなかの急性疾患の一つ。 病理解剖統計の分析によると、過去 20 年間で少なくとも 50 人が死亡している。 早く発見すれば、空気を使って腸の内側から、はまり込んだ部分を押し戻すなどして治せる。 しかし、発見が遅れて病気が進むと、腸が壊死し、腹膜炎やショックで、死ぬこともある。

病気は広く知られていたが、病院により治療法にばらつきがあり、小児救急医学会の委員会が 2004 年から指針作りを検討。 診断基準や重症度の評価方法、症状に応じた指針を作った。 (asahi = 8-6-11)


iPS 細胞から精子、出産 京大、マウス実験 孫も誕生

マウスの iPS 細胞(人工多能性幹細胞)、ES 細胞(胚〈はい〉性幹細胞)それぞれの万能細胞から精子をつくり出すことに、京都大のチームが成功した。 その精子を使って受精、出産にも成功。 万能細胞からつくった精子について、生殖細胞としての働きを確認することができたのは初めてという。 5 日、米科学誌セル電子版に掲載された。

体外で大量につくれるため、精子ができる仕組みを調べることが容易になり、不妊の原因解明にも役立てることができそうだ。 ただ、ヒトの生殖細胞をつくることをめぐっては、技術的な問題や倫理的課題もあるため、さらに時間が必要という。 斎藤通紀教授と林克彦講師らのチームは、精子や卵子の元になる「始原生殖細胞」がマウスの体内でつくられる仕組みやその際に働く物質を調べ、体内で起きている状態の再現を目指した。

始原生殖細胞は、受精卵の状態から分化が進むと現れる「エピブラスト(胚体外胚葉)」からつくられる。 チームはそれぞれの段階で必要な物質を特定。 万能細胞からエピブラスト、さらに始原生殖細胞へと、体内で起きているのと同じ順序で変化させることで、始原生殖細胞をつくり出すことに成功した。

この細胞を先天的に精子をつくれないマウスの精巣に入れたところ、精子ができ、さらにその精子を体外受精させてマウスが生まれた。 そのマウスは順調に育ち、孫も生まれたという。 iPS 細胞はオスのマウスの皮膚の細胞からつくったものを使った。 (asahi = 8-5-11)


脳卒中や心筋梗塞 … 食物繊維でリスク減 厚労省研究

野菜などに含まれる食物繊維を多く食べる女性ほど脳卒中や狭心症、心筋梗塞などの循環器病のリスクが低くなることが、厚生労働省研究班(主任研究者 = 津金昌一郎・国立がん研究センター予防研究部長)の調査でわかった。 男性でも、非喫煙者には同じ傾向がみられた。

研究班は岩手県などの 45 歳以上の男女約 8 万 7 千人を約 10 年間、追跡調査。 男女別に食物繊維の摂取量の少ない順に同人数ずつ 5 グループにわけ、脳卒中などの発生頻度を比較した。

女性では、1 日の食物繊維摂取量の推計が平均 8 グラムと一番少ないグループに比べ、摂取量の一番多いグループ(同 22 グラム)は循環器病の発症リスクが 35 ポイント低かった。 海藻類に含まれるような水溶性の食物繊維より、ゴボウなどに含まれる水に溶けない食物繊維の方が、脳卒中のリスクを下げる効果が高いこともわかった。 (asahi = 8-4-11)


脳血栓、夏こそ注意 節電、怖いのは熱中症だけじゃない

脳梗塞(こうそく)のひとつで、脳内の血管が動脈硬化などで詰まって起こる脳血栓の患者は、夏場にも多い。 約 4 万 6 千人分のデータを分析すると、こんな結果が出た。 脳の血管の病気は一般的に冬に多いというイメージだが、専門医らは「夏場も十分な水分補給で予防を」と注意を呼びかけている。

中国労災病院(広島県呉市)の豊田章宏リハビリテーション科部長が、2002 - 08 年度に 32 の労災病院に脳卒中で入院した 4 万 6,031 人のデータを分析したところ、脳血栓の患者は春 2,541 人、夏 2,798 人、秋 2,637 人、冬 2,687 人で、夏が最も多かった。 月別では 7 月が最も多く、1、8 月の順だった。 豊田さんは「節電のこの夏は熱中症に加え脳血栓にも注意が必要。 こまめに水分をとってほしい。」と話す。

脳卒中は全体の約 7 割を占める脳梗塞、血管が破れる脳出血、くも膜下出血の三つに大別される。 さらに脳梗塞は、脳血栓と、不整脈などが原因で血液や脂肪の塊が運ばれ脳血管が詰まる脳塞栓(そくせん)にわかれる。 今回の調査で脳塞栓や脳出血、くも膜下出血は夏に少なく冬に多かった。 結果は京都で開かれた日本脳卒中学会で発表した。 (辻外記子、asahi = 8-3-11)

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節電の夏、脳梗塞の危険高まる 体重減は危険信号

電力不足から節電が求められている今夏。 エアコン使用を無理に控えたり、設定温度を高くし過ぎたりすると、脱水症状から脳梗塞(こうそく)になる危険性が高まる。 専門家は「特に高齢者は、こまめな水分補給を心がけて」と呼びかけている。 脳卒中の中でも、高血圧が原因の脳出血は冬に増えるが、血管が詰まって起こる脳梗塞は夏場に多い。 血液中の水分が減り、どろどろになりやすいためだ。

国立循環器病研究センターによると、過去 3 年間で脳血管内科に入院した患者は 288 人。 このうち 8 月は 57 人で、ふだんの月の約 2 倍だった。 脱水を防ぐため、水を多めに飲み、酒は控えめにする。 ろれつが回らなかったり、体にしびれを感じたりしたら、すぐ検査を受けたほうがいい。 横田千晶医長は「体重が 1 週間で 3 キロも減ったら危険信号。 体力が弱る夏風邪にも注意して。」と話す。 (東山正宜、asahi = 6-25-11)


「がん抑制遺伝子」増える仕組み解明 九州大グループ

がんを抑える遺伝子を増やす仕組みを、九州大生体防御医学研究所の鈴木聡教授らのグループが突き止めた。 この遺伝子を邪魔する特定の分子がわかった。 この分子が少ないがん患者は 5 年生存率が高かった。 これを応用すれば、新たな抗がん剤開発などが期待できるという。

31 日付の米科学誌ネイチャーメディシン電子版に掲載された。 この分子は「PICT1」。 がん細胞の中で PICT1 の発現が抑えられていると、がんを抑える遺伝子として知られる「p53」がよく増える仕組みがわかったという。

大阪大の森正樹教授らのグループと共同で患者から摘出したがん組織の PICT1 の発現量と、5 年後の生存率を調べた。 食道がん患者で発現量が高かったグループは生存率が 25%。 一方で低かったグループは 42% だった。 大腸がん患者ではそれぞれ 62%、81% となり、PICT1 の発現量が低いと生存率が高かった。 (asahi = 8-1-11)


ぜんそくの目印遺伝子発見 筑波大など日韓で調査

日本や韓国のぜんそくの子どもに特徴的な遺伝子を筑波大学や国立成育医療研究センターなどの研究チームが突き止めた。 アジアの子どもから、大規模調査でぜんそくの目印になる遺伝子を見つけたのは初めて。 発症の予測や治療方針の決定に役立つ可能性がある。

チームは日本の小児ぜんそく患者 938 人と、ぜんそくのない大人 2,376 人について、約 45 万カ所の遺伝子の配列を比較。 ぜんそくの子どもに多い配列を 3 カ所特定した。 さらに、別の日本の子どもや韓国の子どもでも調べたところ、ぜんそくのある子どもでは、特定の二つの遺伝子型を持つ人が多かった。 (asahi = 7-30-11)


アルツハイマー型認知症、新薬続々 体に貼るタイプも

アルツハイマー型認知症の治療薬の発売が今年に入って相次いでいる。 国内ではこれまでエーザイの「アリセプト」だけだった。 各社は「高齢化が進み、確実に伸びる市場」と期待する。

小野薬品工業は 19 日から「リバスタッチパッチ」の販売を始めた。 現在発売中の認知症治療薬としては唯一、体に貼るタイプ。 患者が指示通りに薬を使っているかどうかを一目で確認でき、介護者の負担軽減につながると期待する。 共同開発したノバルティスファーマも同じ薬を「イクセロンパッチ」として売り出す。

「他の薬との併用」をうたうのは第一三共。 6 月に発売した飲み薬「メマリー」は「アリセプト」とシェアを奪い合うのではなく、併用することで認知症の進行をさらに遅らせる効果があると PR する。 中堅のヤンセンファーマ(東京)は 3 月に飲み薬「レミニール」を発売、武田薬品工業と共同販売契約を結んだ。

3 種類の薬はいずれもすでに世界 70 カ国以上で販売されている実績があり、各社は「日本での市場も急速に伸びる」とみて投入を決めた。 いずれも今後 10 年で年間の売上高が 300 億 - 400 億円(薬価ベース)に膨らむと見込む。

一方、1999 年から飲み薬「アリセプト」で国内市場を独占してきたエーザイ。 2011 年 3 月期には国内で計 1,055 億円を売り上げ、12 年 3 月期でも 1,140 億円と予想する。 軽度、中等度、高度と 3 段階に分類される認知症の症状すべてを対象に処方できる唯一の薬と PE。 内藤晴夫社長は「薬による治療の中核を『アリセプト』が担うという重要性は変わらない」と話す。 (asahi = 7-28-11)


放射性物質使うがん検査薬 5 年めどに国産化めざす

がん検査に使われる検査薬の原料になる放射性物質「モリブデン 99」について、5 年をめどに国産化することを国や製薬企業でつくる検討会が決め、26 日に内閣府原子力委員会に報告した。 日本は世界で 2 番目の消費国で、現在は全量を輸入しているが、日本原子力研究開発機構の試験炉や、電力会社の原子力発電所での生産を検討する。

モリブデン 99 は乳がんの骨転移の検査など、国内で年間 90 万件の検査で使われている「テクネチウム製剤」の原料。 注射で体に入れて外に出てくる放射線をカメラで写して体内の様子を調べるのに使う。 半減期が 66 時間と短いため、週 1 - 2 回の頻度で空輸しており、火山噴火などで空輸が止まると検査に影響が出るのが悩みだった。 さらに、海外の主な炉が 5 年後に廃炉になる予定で、生産停止による供給不足が心配されている。 (asahi = 7-27-11)


手足口病が西日本中心に大流行 手洗い徹底呼びかけ

夏場に流行し、主に乳幼児の手足や口内などに発疹ができるウイルス性の感染症「手足口病」が西日本を中心に激増している。 1 医療機関あたりの患者数は、1982 年の調査開始以降、過去最多。 国立感染症研究所は、手洗いを徹底するなど感染の拡大防止に注意を呼びかけている。

同研究所の速報値によると、10 日までの 1 週間に全国約 3 千の医療機関で診断された患者数は約 3 万人で 1 機関あたり 9.7 人。 これまで最多だった 95 年の 7.7 人を上回った。

都道府県別では佐賀県が 42.26 人と最も多く、次いで福岡県 40.96 人、熊本県 32.65 人、愛媛県 30.97 人、山口県 26.77 人、兵庫県 24.72 人と続く。 大阪府も 14.3 人などと西日本で顕著だ。 特に近畿や中部地方ではさらに患者数が増える可能性が大きいという。 (asahi = 7-24-11)


日本製の新抗がん剤、転移した大腸がんにも効果

日本で開発された新しい抗がん剤が、がんの転移があり、手術や既存の抗がん剤などが効かなくなった大腸がんの患者に延命効果をもたらす可能性のあることが、全国約 20 病院が参加する臨床試験(治験)で確認された。 近く大規模な治験に入る。 22 日、横浜市で開かれた日本臨床腫瘍(しゅよう)学会で発表された。

抗がん剤は大鵬薬品工業(本社・東京)が開発した「TAS-102」。 錠剤で 1 日 2 回のむ。 2009 年から今春にかけ、転移のある大腸がん患者約 170 人を対象に第 2 段階の治験を実施。 患者をこの薬をのむグループと、偽薬をのむグループに分け、生存期間などを比較した。 薬をのむグループの生存期間の方が平均で 2.4 カ月長かった。 死亡リスクも 4 割ほど減った。

転移のある大腸がん患者に現在使われている薬は 4 割程度の患者には効果がない。 特定の遺伝子に変異が無い人にしか効かないためだ。 今回の薬は遺伝子の変異に関係なく効くと予測されている。 (大岩ゆり、asahi = 7-23-11)


塩分と高血圧、カギは腎臓のたんぱく質 東大教授ら解明

塩分を取りすぎると高血圧になるといわれるが、血圧が上がりにくい人もいる。 その違いは腎臓でのたんぱく質の働きの差で起こることが、東京大の藤田敏郎教授(腎臓内分泌内科)らによるネズミの実験でわかった。 治療薬の開発に役立ちそうだ。

藤田さんらは、ネズミに塩分過多の食事(塩分 8%)を与えて 3 週間観察。 ネズミは最高血圧(収縮期血圧)が 160 に達した高血圧グループと正常値の 120 にとどまったグループに分かれ、前者では腎臓の細胞の形の維持などに必要なたんぱく質「Rac1」が活性化していた。 このたんぱく質の働きを妨げる薬を高血圧ネズミに与えたところ、塩分過多の食事でも高血圧にならなかった。

藤田さんは「Rac1 の阻害薬は高血圧治療に使える可能性がある。 どの程度の投与なら副作用が出ないかなどを調べたい。」と話した。 結果は 18 日付の米医学誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」に掲載された。 (大岩ゆり、asahi = 7-20-11)


人工的に歯を作製、正常に機能 マウス使い実証

歯のタネから成熟した歯を作り出し、移植した口の中でも正常に機能させることに、東京理科大の辻孝教授と大島正充助教らのチームがマウスを使って成功した。 13 日の米科学誌プロスワン(電子版)に発表した。

辻教授らは、東京医科歯科大や東北大などとの共同研究で、上皮細胞と間葉細胞という 2 種類の細胞を組みあわせて歯のタネになる歯胚(しはい)を作製。 プラスチック製の 2.5 ミリの小さな枠に入れてマウスの体内に埋め込んで培養し、歯周組織をともなった歯にまで成熟させた。

その後、マウスの歯茎に移植したところ、移植後 40 日程度で周囲の組織になじみ、神経や血管もつながって定着。 モノをしっかりかめて、かんだ時の刺激や痛みも感じることができるなど、正常に機能することが分かった。 (asahi = 7-14-11)


生殖細胞の性別決める遺伝子を発見 基礎生物学研

次世代に遺伝情報を伝える生殖細胞の性別を決める遺伝子を、基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)の小林悟教授 (50) = 発生学 = らのグループが発見した。 8 日付の米科学誌サイエンス電子版で発表する。

生殖細胞は、個体を構成する体細胞とは違い、卵子や精子となる細胞。 卵巣や精巣に移ってから卵子や精子に分化するため、体細胞で作られる卵巣や精巣が生殖細胞の性別を決めると、従来は考えられていた。 ところが、小林教授らはショウジョウバエを使った研究で、卵巣などに移る前の始原生殖細胞に、すでに性差があるのを発見。 メスの始原生殖細胞でのみ、Sxl (sex lethal) 遺伝子と呼ばれる特定の遺伝子が活性化していることがわかった。

研究では、メスの始原生殖細胞で Sxl 遺伝子の働きを抑制すると、卵子に分化せずオス化の性質がみられた。 逆に、オスの始原生殖細胞で Sxl 遺伝子を強制的に活性化して卵巣に移すと、メス化して卵子に分化し、正常に受精した。 小林教授は「生殖細胞自身が性別を決定することが初めて証明された。 将来は生殖細胞の性別操作ができるかもしれない。」と話す。 (本井宏人、asahi = 7-8-11)


iPS 細胞の作製効率 50 倍に 仕組み解明も期待 米大

ヒトやマウスの iPS (人工多能性幹)細胞を作る効率を 50 倍以上、高めることに、米ミネソタ大の桔梗(ききょう)伸明准教授らが成功した。 筋肉の細胞を作る遺伝子の一部を使った。 米専門誌ステムセルズに 6 日発表した。

桔梗さんらは、iPS 細胞作製に必要な遺伝子 (Oct3/4) の配列に、筋肉の細胞を作る時に働く「MyoD」という遺伝子の一部をくっつけて、皮膚の細胞に組みこんだ。 従来、約 2 週間かかった作製日数が 5 日に短縮されたほか、ヒトの iPS 細胞の作製効率が約 0.3% と、従来法の 50 倍にアップした。 MyoD は、皮膚の細胞を筋肉の細胞に変化させることもできる。 多数の遺伝子を働かせる強力な「親玉」のような遺伝子だ。 (asahi = 7-6-11)


欧州 O104 原因、マメ科植物の種か エジプトから輸入

欧州全域で多数の死者・感染者を出した腸管出血性大腸菌 (O104) について、欧州連合 (EU) の欧州食品安全機関 (EFSA) は 5 日、エジプトから輸入されたマメ科の植物フェヌグリーク(コロハ)の種子が原因になった可能性が高いと発表した。 フェヌグリークは、もやしのように新芽を食べるほか、種子は香辛料として、葉はハーブとして使われる。

今回疑われている特定の業者が扱った種子以外にも汚染が広がっている可能性があるため、EU の欧州委員会は同日、2009 年から今年にかけてエジプトから輸入された野菜や果物などの種子を廃棄し、10 月末まで輸入禁止とするよう加盟国に求めた。 (asahi = 7-6-11)

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O104 感染源「新芽野菜の可能性高い」 ドイツ当局

ドイツ北部を中心に感染が広がった腸管出血性大腸菌 O (オー) 104 について、ドイツの連邦保健省など衛生当局は 10 日、スプラウト(新芽野菜)が感染源である可能性が高いと発表した。 一方、これまで食用を控えるよう呼びかけていた生のキュウリ、トマトやサラダ用の葉物野菜については「制限なく味わって」と「安全宣言」を出した。

連邦の衛生研究所などが、患者が食事をとったレストランなどを追跡調査したところ、スプラウトを食べた人の発症例は、食べなかった人の約 9 倍にのぼった。 スプラウトから菌が実際に検出されていないため確定でないが、感染源として明言したのに近く、食べないように国民に求めた。 (asahi = 6-10-11)

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輸入生鮮食品の O104 検査、全国の検疫所で近く実施

ドイツを中心に発生している腸管出血性大腸菌 O (オー) 104 の感染問題で、厚生労働省は 7 日、輸入生鮮食品について O104 の検査を近く実施すると発表した。 厚労省によると、全国 31 カ所の検疫所で、輸入された肉や野菜などを調べる。 すでに行っている腸管出血性大腸菌 O157 や O26 の検査に O104 を加える。

欧州からの生鮮食品の輸入は年間約 1 万 4 千件。 そのうち 100 件程度を抜き出して、O157 や 26 のサンプリング検査を実施している。 O104 も同じ程度で行う予定という。 (asahi = 6-7-11)

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欧州大腸菌感染、原因はモヤシか 独の州農業省が発表

ドイツ北部を中心に感染が拡大している腸管出血性大腸菌 O104 について、ドイツのニーダーザクセン州農業省は 5 日、同州内で栽培されたモヤシが原因の可能性が高いと発表した。 ただ、公共放送 ARD によると、連邦保健省などは「現時点では早急な判断をしない」と慎重な態度をとっている。

報道によると、同州農業省が感染経路などを調べたところ、州内の農場からのモヤシにつながった。 この農場の従業員 1 人が感染しているという。 同省は、「決定的な証拠はまだないが、間接的な証拠は明白」として、モヤシの消費を控えるよう呼びかけた。 (ベルリン = 松井健、asahi = 6-6-11)

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18 人死亡の大腸菌 O104、多くの抗生物質に耐性

ドイツで 18 人が死亡するなど被害が広がっている新種の腸管出血性大腸菌 O (オー) 104 は、幅広い抗生物質が効きにくい多剤耐性の遺伝子も持っていることがわかった。 北京ゲノム研究所 (BGI) が 2 日、解析結果を発表した。 今回の菌は強毒性に加え、薬剤が効きにくいことで、治療が難しくなっている。

ドイツ北部の患者の多くが入院しているハンブルク・エッペンドルフ大学病院の依頼で、BGI が菌の遺伝子を調べたところ、ストレプトマイシン系やペニシリン系など多くの抗生物質に耐性を示す遺伝子を持っていた。 実際の治療でも、抗生物質による治療が難しいことがわかっている。 多剤耐性の遺伝子は、別の型の大腸菌からこの菌に乗り移った可能性があり、BGI はこの菌が発生した理由などを調べる。 (asahi = 6-3-11)