地デジ化「テレビ聴けなくなる」 視覚障害者に不安の声

地上波テレビのデジタル放送完全移行(被災地3県を除く)まで 1 週間。 地デジ化されるとテレビの音声が FM ラジオで聴けなくなるため、音が頼りの視覚障害者から「テレビから遠ざけられてしまう」と不安の声が出ている。 FM 放送とテレビのアナログ放送はともに VHF 帯の電波を使うため、多くの視覚障害者が、値段が安く 1 台で両方聴ける FM ラジオでテレビも楽しんできた。 だが、地デジは UHF 帯なので、ラジオでは受信できなくなる。

東京都豊島区に住む全盲の織田洋さん (57) は小型 FM ラジオを持ち歩き、移動中もイヤホンでテレビ番組を聴くのが日課だ。 「画面がいらないからこれで十分。 どこでも聴けて便利だったのに。」

厚生労働省が 2006 年に実施した身体障害児・者実態調査によると、視覚障害者の情報入手方法(複数回答)はテレビが 66% で 1 位。 2 位の家族・友人 (56%)、3 位のラジオ (49%) を上回る。 全日本視覚障害者協議会の山城完治総務局長は「テレビはラジオより番組が豊富。 ニュースも原稿を読むだけのラジオに比べ、臨場感がある。」

携帯電話のワンセグ機能を使えば地デジが聴けるが、「音が途切れがち。 電池を消耗するので、いざというとき通話できないと困る。」と織田さん。 家族が見る自宅の地デジ対応テレビはリモコン操作が複雑で使いづらいという。 テレビの機能拡大につながると期待される地デジ化も、視覚障害者にとっては情報弱者化のきっかけになりかねない。 「国策で我々を置き去りにしないでほしい」と山城さんは訴える。 (星野学、asahi = 7-17-11)


サラリーマンの小遣い月 3 万 6,500 円 バブル後最低に

サラリーマンの小遣いがバブル後の最低水準に - -。 新生銀行系の消費者金融会社「新生フィナンシャル」が今年春に調べたところ、小遣いの平均額は月 3 万 6,500 円で、昨年より 4,100 円減った。 その分、昼食費や飲み代を削ってしのいでいるようだ。 減るのは 4 年連続。 7 年ぶりに 4 万円を下回り、29 年前(1982 2年)以来の低水準に落ち込んだ。 これまでの最高額だったバブル期(90 年)の 7 万 6 千円の半分に満たない。

仕事帰りの外食の回数は月 2.9 回で前年と同じだったが、1 回の飲み代は 3,540 円と昨年より 650 円減った。 昼食代も昨年より 10 円減り、490 円に。 自宅から弁当を持参する人も増えている。 「景気回復の実感に乏しく、将来不安も根強いため、財布のひもを緩められないのではないか」と新生はみている。 (asahi = 7-2-11)


ご飯の原産国、表示を義務化 米トレサ法施行

2008 年に発覚した事故米の不正転売事件をきっかけに作られた米トレーサビリティー法が 1 日施行された。 米を使ったメニューや加工商品を提供する飲食店や小売店に、米の原産国の表示が義務づけられた。

1 日以降に生産者から出荷、または輸入された米が対象。 飲食店は、メニューに使う米の産地が客に伝わるように店内にわかりやすく掲示する必要がある。 「○○国産を使用」とメニューに書いたり、看板を出したりする。 「産地情報は店員にお尋ねください」といった掲示でもよい。

小売店で売るせんべいや団子、清酒などの米加工品にも原産国表示が必要になる。 3 カ国以上になる場合は、使用量が多い 2 カ国を示す。 産地情報を載せたホームページや電話番号などの案内でもよい。 違反した場合は 50 万円以下の罰金と定められている。 (asahi = 7-2-11)


6 月下旬、半世紀で一番猛暑 東日本は平年比 3.8 度高

気象庁は 1 日、東日本、西日本の 6 月下旬の平均気温は、旬ごとの統計を取り始めた 1961 年以降、最も高かったと発表した。 気象庁によると、日本の上空を流れる偏西風が北側に蛇行。 さらに、フィリピン付近の活発な雨雲が太平洋高気圧を北に押し上げた。 これにより太平洋高気圧が広く日本付近を覆い、猛暑となったという。

6 月下旬の平均気温は東日本(関東甲信、北陸、東海)で平年より 3.8 度、西日本(近畿、中国、四国、九州)で同 3.3 度高く、いずれも史上最高。 これまでの 1 位は、いずれも 05 年だった。 (asahi = 7-1-11)


消費税 10% まで段階的引き上げ 政府・与党案を決定

政府・与党の社会保障改革検討本部は 30 日、税と社会保障の一体改革について、経済状況の好転を条件に、「2010 年代半ばまでに段階的に消費税率を 10% まで引き上げる」とする政府・与党案を決定した。 民主党の反発を受け、増税時期を「2015 年度までに」としていた政府原案を修正した。

政府・与党案では、15 年度に社会保障費の追加財源として約 2.7 兆円が必要と試算。 保育の拡大など子育て・少子化対策に重点配分したうえで、医療機関の受診者全員に新たな負担を求めるなどの効率化施策も掲げた。 これらをまかなうため、消費税率を段階的に 5% 幅引き上げて 10% とし、「社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成」を進めるとしている。 (asahi = 6-30-11)

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与謝野氏「増税時期と税率、堅持を」 野田氏も同調

与謝野馨経済財政相は 28 日の閣議後の記者会見で、税と社会保障の一体改革を巡り、民主党の調査会が消費税の増税時期や引き上げる税率に幅を持たせるべきだと修正を求めていることについて、受け入れられないという考えを明らかにした。

与謝野氏は「財政健全化目標は半ば国際公約。 (増税時期の) 2015 年度と、(税率) 5% アップという数字は堅持すべきだ」と強調した。 野田佳彦財務相も同日の会見で「具体的な時期や率を明示するのが筋だ」と同調する考えを示した。 一方で、党政調会長を兼ねる玄葉光一郎国家戦略相は「一定の幅を持たせる表現がよいと思う」と党側の見解を主張。 与謝野、玄葉氏らは 28 日中に会談し、月内をめざす政府・与党案の決定に向け、協議する。 (asahi = 6-28-11)


扇風機と飲料水の輸入量、過去最大 5 月、東京税関

東京税関は 29 日、扇風機と飲料水の輸入量が 5 月に過去最高を記録したと発表した。東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故で、夏の電力不足が見込まれることや、水道水から放射性物質が検出されたことが影響したという。

東京税関によると、扇風機の 5 月の輸入台数は全国で 321 万台と、前年同月比 6 割増。 これまで最高だった 2006 年 5 月の 286 万台を上回り、金額でも過去最高となった。 輸入元の 98% は中国で、残りがタイと台湾。 卓上型など小型のものも含まれる。

飲料水の輸入量は 4 月、5 月と過去最高を更新し、5 月は前年同月の 4 倍に達した。 韓国、台湾、カナダ、米国などからの輸入が拡大している。 東京税関は「水道水の放射性物質を心配したり、災害時の非常用に備えたりで、需要が急増した」と分析している。 (asahi = 6-29-11)


放射性物質の除去、浄水器で軽減、洗濯も効果

放射性物質の影響を心配する人が家庭でできる対策について、日本放射線安全管理学会が 24 日発表した。 水や野菜、土壌が放射能で汚染された場合、どんな方法なら効率よく除去できるのか。 科学的根拠に基づく「工夫あれこれ」が紹介された。 放射能への対策では、科学的根拠のない情報もネット上などで広がっている。 同学会は「水」、「被服」など七つの作業班を設け、対策の効果を調べている。

水については、ヨウ素 131 やセシウム 137 などに汚染された雨水をポット型浄水器で除去できるか、複数のメーカーで調べた。 その結果、1 回の濾過(ろか)でもヨウ素は 70 - 98%、セシウムは 84 - 93% 除去できた。 一方、電気ポットのカルキ抜きでは、ヨウ素が 17% 濃縮されてしまった。 セシウム 137 が高濃度(1 グラムあたり 68 ベクレル)に付着した原発作業員の靴下は 1 回の洗濯で 75%、3 回で 85% 除去できた。 洗濯後、洗濯槽内やすすぎ水から放射線は確認されなかった。

庭や家庭菜園などの土壌の放射線量は、厚さ 2 センチの土をかぶせると、地表 1 センチの線量を 68%、10 センチの土なら 93% 下げることができた。 一方、ホウレンソウは水洗いでは半分程度しか除去できず、塩ゆでしても変わらなかった。 アスコルビン酸(ビタミン C)などの還元剤に浸すと除去率は上がったが、鮮度や味は落ちた。 (asahi = 6-25-11)


地デジ未対応なお 51 万世帯 完全移行まで 1 カ月

7 月 24 日の地上デジタル放送への完全移行まで、あと 1 カ月に迫った。 総務省の推計では、移行を最大 1 年延期する東日本大震災の被災 3 県(岩手、宮城、福島)を除き、5 月末時点で全世帯の 1% 強にあたる 51 万世帯でアンテナなどの対応ができていない。 「地デジ難民」の発生は避けられそうにない。

被災 3 県を除き、この日正午を境に、アナログ機器のままではテレビを見られなくなる。 総務省によると、地デジ未対応の 51 万世帯の内訳は、地デジ視聴に必要な UHF アンテナの未設置世帯が戸建てと集合住宅をあわせて 42 万世帯、大きなビルの陰にあり、受信障害対策が必要な世帯が 5 万 1 千世帯、山間部などでデジタル電波が届かない世帯が 1 万 7 千世帯など。

ただ、この推計は、集合住宅で共同アンテナを設置すれば、全入居者を「対応済み」にカウント。 入居者の中には、地デジ対応のテレビやチューナーといった受信機がなく、視聴できない世帯もあり、実際の未対応世帯はもっと多いとみられる。 (asahi = 6-23-11)

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地デジ対応録画機に「買い替えた」 5 割 首都圏で調査

地上デジタル放送(地デジ)への完全移行を 7 月 24 日に控え、対応するビデオレコーダー(録画機)に買い替えた世帯の割合が約 5 割にとどまっていることが、パナソニックの調査で分かった。 世帯普及率が 9 割を超える対応テレビに比べ、切り替えが遅れているようだ。 調査は 5 月上旬、録画機を持つ首都圏の 520 人を対象にインターネットで実施した。

地デジ移行で「録画機を買い替えた」と答えたのは 52.7% だった。 ただ、まだ買い替えていない人でみると、74.7% が「これから買い替えたい」と回答したという。 一方、録画機の買い替えを望む人に重視する点を複数回答で聞くと、「録画できる時間 (76.9%)」がトップで、「操作が簡単」と「画質」を挙げた人がそれぞれ約 6 割だった。 約 4 人に 1 人が「省エネ対応」を重視すると答えた。 (asahi = 6-5-11)


夏のボーナス、使途上位に節電家電 1 位は国内旅行

2 位に LED 電球、7 位に扇風機 - -。 夏のボーナスの使い道について、電通総研が調べたところ、節電関連の家電が上位に食い込んだ。 昨年 1 位のブルーレイディスクレコーダーが 4 位に落ちるなど、東日本大震災で様変わりした消費スタイルを映し出している。

6 月 4、5 日、20 - 69 歳の男女計 1,200 人にインターネットで調査した。 ボーナスを支給される予定があると答えた 686 人に、44 項目から複数回答で選んでもらったところ、最も多かったのは国内旅行 (22.2%)。 夏季休暇に実家へ帰省する人も多く、震災後、家族を大事にする傾向が強まっているという。

これに続いたのが省エネ効果のある LED 電球 (9.6%)。 扇風機は据え置き型だけで 7 位 (4.7%) に入り、卓上型も 2.0% と注目されている。 ほかの「節電・節水家電」も 3.9% で 9 位だった。 電通総研の四元正弘研究主幹は「社会貢献につながる商品に人気が集まっている」と分析する。 (asahi = 6-22-11)


5 月のコンビニ売上高、前年比 5.7% 増

日本フランチャイズチェーン協会が 20 日発表した 5 月のコンビニエンスストアの既存店売上高は、前年同月比 5.7% 増だった。 前年を上回るのは 7 カ月連続。 震災による外出自粛や天候不順の影響を感じさせない好調が続いている。

来店客数は同 1.1% 増で 2 カ月連続、客 1 人当たりの売り上げの平均は同 4.5% 増で 6 カ月連続のプラス。 商品別で目立つのは非食品の 22.9% 増で、昨秋のたばこ値上げ後も購入者が大きく減っていないことが売り上げを押し上げている。 弁当などの「日配食品」も 1.4% 増だった。 (asahi = 6-20-11)


障害者への虐待、見つけたら通報義務 法案成立見通し

障害者に対する虐待を発見した人に通報を義務づける障害者虐待防止法案が、今国会で成立する見通しになった。 14 日の衆院本会議で、厚生労働委員長が出した法案が全会一致で可決され、衆院を通過した。 来年 10 月に施行される予定。

児童や高齢者を対象にした虐待防止法はあるが、障害者向けはない。 同法案では、障害者への暴行や正当な理由のない拘束、財産の不当処分などを禁じ、家庭や福祉施設、職場で虐待行為を見つけた人には通報を義務づける。 国には、早期発見に努める責任を明記。 各市町村には、通報先として障害者虐待防止センターの設置を求めている。

虐待が疑われる家庭には、市町村が立ち入り調査できることも認める。 家庭側が立ち入りを拒んだら、罰則を科す規定も設けた。 施設や職場への立ち入り調査権は、すでに別の法律で認められている。 (asahi = 6-14-11)


人工光で野菜生産 大阪府立大に国内最大級の植物工場

人工の光だけで野菜を栽培する植物工場研究センターが大阪府立大(堺市中区)に完成し、本格的な生産を始めた。 総面積約 2 千平方メートル。 人工光だけで栽培する研究施設としては国内最大規模という。 植物工場は 4 月に稼働。 LED や蛍光灯で照らして野菜を栽培している。 レタスの棚は 15 段。 成長に応じて 1 段ずつ下ろし、下まで来たら収穫する。 苗の時期を含め約 40 日で成長し、露地物の半分に短縮できる。

栽培する棚を積み上げることで面積あたりの収量を上げ、品質や大きさがそろった野菜を作りやすい一方、コストが露地物より 3 割ほど高いのが課題だ。 今年度中に露地物と同じコストで栽培できる手法を確立する方針。 LED や蛍光灯の改良で、2015 年ごろには大規模な工場で商業ベースに乗ると見ている。 (asahi = 6-11-11)


熱中症の注意喚起に「高温注意情報」 気象庁、7 月から

今夏、東京電力福島第一原発の事故などによる節電のため冷房が控えられると、熱中症の危険性が高まるとして、気象庁は 10 日、予防の目安となる「高温注意情報」を新設すると発表した。 7 月中旬から、気温が 35 度以上の猛暑日になると見込まれる都道府県単位で発表する。

同庁によると、翌日、または当日の気温が 35 度以上になると予測される地点があると、「高温注意情報」を発表。 「熱中症など健康管理に注意してください」と呼びかける。 気温の推移を予想したグラフとともに、気象庁のホームページで見られるようにする。 ただし、猛暑日になりにくい北海道と、電力不足が見込まれていない沖縄県は対象から外す。 (asahi = 6-10-11)

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「節電で熱中症」ご注意 専門家、注意呼びかけ

東日本大震災の影響で電力不足が懸念される今年の夏。 エアコンの使用を控えたり、設定温度を引き上げたりするなど職場や学校、家庭でも節電が求められるが、心配なのが熱中症だ。 暑さに弱い高齢者や持病のある人はもちろんだが、「従来は発症しなかった人もリスクが高まる可能性がある」と専門家は注意を呼びかけている。

気象庁の 6 - 8 月の予報によると、記録的猛暑だった昨夏ほどではないが、東日本から西の地域は平年より暑くなりそうだという。  医師やスポーツ生理学研究者、建築士らでつくる日本生気象学会は、ウェブサイト で、この夏の熱中症対策の公表を始めた。 健康な人は 6 月中に暑さに強い体をつくることを勧める。 やや暑いと感じる環境で、1 日 30 分ほどの汗をかく運動を週 3 回、1 カ月ぐらい続けると効果的だという。 (asahi = 6-9-11)


電力 7 社で供給不足 今夏のピーク時の各社見通し

この夏は東京、東北電力管内だけでなく、関西電力管内などでも電力不足になる可能性が高いことが電力各社(沖縄電力除く)への取材でわかった。 北海道、中国電力を除く 7 社でピーク時の電力が足りないか、余裕がなく、ほぼ全国で一層の節電が必要になる。 電力の安定供給には、ピーク時の電力需要を 8 - 10% 上回る余力が必要とされる。 朝日新聞が調べた電力各社などの今夏の見通しでは、7 社がその「最低ライン」を下回る。

なかでも、東電と東北電は昨年のピーク時の需要で計算すると、それぞれ 10.3%、7.4% の供給不足になる。 関電も今夏の需要予測で計算して 3.3% の不足になる。 中部、北陸、四国、九州各電力も今夏の需要予測で計算した結果、供給に余裕がなくなる。 経済産業省の予測はさらに厳しく、関電は 6.4% 不足、九州電力の余力も同社予測の 3.5% より低い 1.6% とみている。 (asahi = 6-9-11)

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究極の節電ハウス、太陽電池・直流家電 シャープが実験

シャープは 8 日、太陽電池などの新エネルギーと直流電力 (DC) で動く新たな家電を組み合わせ、従来の電力消費を限りなくゼロに近づける省エネ住宅の実証実験を大阪・堺で始めたと発表した。 消費電力を自動制御する近未来の住宅を想定し、「究極の節電」を目指す。

省エネ住宅は、木造 2 階建てで、延べ床面積 271 平方メートル。 太陽光発電や蓄電池の電力を、直流のまま家庭内で利用するのが大きな特徴だ。 家庭の消費電力量をシステムで制御し、同程度の住宅で従来消費していた電力量に比べ、大幅に削減できるという。 家庭内はすべて LED 照明を採用し、センサーで人を感知した時だけ点灯。 電気自動車用の蓄電池を家庭用に使う技術も導入し、検証する。

従来の交流 (AC) を使う家電のほか、新たに開発した直流対応のエアコンやテレビ、冷蔵庫、給湯器などを備え、直流から交流の変換時に生じるムダな電力を削減する。 直流の家電の普及は、安全性や規格の標準化などの課題もあり、10 年単位の時間がかかるという。 (asahi = 6-9-11)

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首もと・頭・シャツまで … 冷却グッズ生産、はやフル稼働

小林製薬は、額に貼る「熱さまシート」など体を冷やす商品の売り込みを強化する。 東日本大震災や福島第一原発事故の影響で電力不足が心配される今夏は、冷房の使用を抑えるためこうした商品の需要が高まるとみる。 4 月中旬からフル生産状態という。

同社の商品には首に巻く「熱さまひんやり首もとベルト」、シャツにスプレーして涼感を感じられる「シャツクール」などもある。 大阪市内で 6 日開いた 3 月期の連結決算発表の記者会見で、小林豊社長は「節電に備えて新しい消費形態が出てくる。 個人のお客様からも『品切れしないようにして』と要望があった。 夏に向け販売促進に力を入れる。」と語った。

ただ、2012 年 3 月期は「消費動向全体は不透明」とみており、冷やす商品の需要があっても売上高は前年同期比 0.1% 増の 1,310 億円と、ほぼ横ばいを見込む。 (田幸香純、asahi = 5-7-11)

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LED 電球・冷蔵庫用保冷剤も人気 … 家庭の節電対策

家庭での節電も重要だ。 環境省によると 2009 年度の総電力使用量のうち 22% が家庭。 政府は 15 - 20% の節電を求めている。

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「企業が過度に節電すると雇用や所得に影響する。 家庭での積極的な節電が重要だ。」と指摘。 家庭の消費電力の 25% を占めるエアコンの設定温度を引き上げるほか、冷蔵庫や照明器具の省エネ型への切り替え、トイレの便座ヒーターやビデオなどの AV 機器のコンセントを抜いて待機電力を減らすなどの対策を提案する。

節電グッズの売れ行きも好調だ。 家電量販大手のビックカメラでは、消費電力が少ない LED 電球や、スイッチを押せば複数の機器の待機電力を切れる電源タップが人気だ。 冷蔵庫用の保冷剤や遮熱効果のある窓も販売を伸ばしている。

節電対策に悩む客も多いため、同社は有楽町店(東京)に相談カウンターを設けた。 専門の相談員がエアコンや掃除機のフィルター掃除、エアコンと一緒に扇風機を使うなどの簡単な節電法を紹介しており、4 月中に全国の店舗に広げる。 (asahi = 4-15-11)

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家庭の節電促す「電気予報」放送 今夏、経産省が検討

東京電力管内で電力不足が予想される今夏、経済産業省が、テレビやラジオで天気予報ならぬ「電気予報」の放送を検討していることが 6 日、明らかになった。 近く放送局と調整に入る。 計画停電を避けるため、電力需要の 3 割を占める家庭の節電意識を徹底するよう促す。

電気予報はニュース番組などで放送される天気予報に続いて、当日や翌日の電力の需要と供給の予測を時間帯別に伝える方法を検討している。 猛暑で日中に需要が高まりそうな場合、「冷房の設定温度を上げて」、「使わない家電製品の電源を抜いて」といったコメントも添え、視聴者に節電をするよう注意を促す。

需要が急に跳ね上がって供給を上回り、予期せぬ大停電が起こりそうになれば、「ニュース速報」で電力使用をただちに控えるよう求めるテロップを流す案もあがっている。 新聞やインターネットでも、電気予報ができないか検討する。 さらに、自治体による啓発活動や学校現場での「節電教育」推進を通じて、市民レベルで節電意識の浸透を図る。 経産省はこれらの節電策を、4 月末にまとめる総合的な電力需給対策に盛り込む方針だ。

家庭の電力需要は、冷房などの家電製品の普及で年々高まっている。 政府は電気事業法に基づく「使用制限令」を大口需要者の工場やオフィスビルなどに発動するとともに、企業に自主的な節電を求める方針。 だが、計画停電の回避を確実にするには、家庭への節電対策も不可欠とみている。 (小暮哲夫 = 4-7-11)


10 年の出生率 1.39 前年を 0.02 ポイント上回る

女性 1 人が生涯に産む子どもの平均数を示す合計特殊出生率が、2010 年は 1.39 で前年を 0.02 ポイント上回った。 05 年の 1.26 を底に、上昇傾向が続いている。 厚生労働省が 1 日に公表した人口動態統計で分かった。 出生数も 107 万 1,306 人と、前年より 1,271 人増えた。

最初の子を産んだ時の平均年齢は 29.9 歳で、前年の 29.7 歳より上昇。 30 代後半から 40 代の出産が増えたのが目立ち、晩産化が進んでいる。 昨年中に結婚したのは 70 万 213 組で、前年より 7,521 組減った。 初婚年齢の平均は、夫が 30.5 歳で前年より 0.1 歳上昇、妻が 28.8 歳で前年より 0.2 歳上がった。 離婚は 1,970 組減少し、25 万 1,383 組だった。 (asahi = 6-1-11)


震災で転園・転校 2 万人超 福島から他県へ 1 万人

東日本大震災の影響で転園・転校した全国の幼稚園児や児童生徒が、5 月 1 日時点で 2 万 1,769 人に上ったことが文部科学省の集計で分かった。 被災地から県境を越えて転出した子どもも 1 万人を超えており、文科省は受け入れ先などへ教員やスクールカウンセラーを追加で配置、派遣する方針だ。

集計によると、福島県内の幼小中高などから他の都道府県に移った子どもは 9,998 人に上った。 同県内での転出入も 5,473 人に上る。 大半が東京電力福島第一原子力発電所周辺から避難したとみられ、計 1 万 5,471 人が震災前の学校に通えず、避難先の学校などへの通学を余儀なくされている格好だ。 津波で沿岸部の学校が被災した岩手、宮城県でも、県内外での転出入はそれぞれ 969 人、3,980 人に上った。

被災地からの受け入れは埼玉県が最多で 1,311 人。 新潟県 1,205 人、東京都 1,199 人と続く。 原発周辺の住民を集団で受け入れているほか、親戚などを頼って引っ越してきたとみられている。 (asahi = 6-1-11)

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放射能から守りたい 小中学生の県外避難広がる 福島

東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い、原発から約 60 キロ離れた福島市や福島県郡山市で、子どもを県外へ避難させる動きが続いている。

福島市教育委員会によると、住民票を残したまま市外に転校する「区域外就学」をした小中学生は 4 月から 5 月 27 日までに 216 人。 このうち 206 人は海外 2 人を含む県外だ。 郡山市でも、市内の小中学校から県外への転校が、同市教委の調べで同 13 日までに 403 人にのぼった。 両市教委とも「放射能への不安から避難したケースが多い」とみる。 (asahi = 5-30-11)


4 月外食売上高 2.8% 減 居酒屋は 1 割減、戻らぬ客足

東日本大震災が奪った飲食店のにぎわいが、なかなか戻らない。 日本フードサービス協会が 25 日発表した 4 月の外食産業の売上高は前年同月比で 2.8% 減だった。 過去最大の 10.3% 減だった 3 月より小幅だが、パブ・居酒屋はなお 11% 減。 客足は乏しく、食材の高騰ものしかかる。

落ち込みが際立つのは夜が勝負の居酒屋・パブ。 3 月の売上高は 19% 減で、2 カ月続けて 1 割以上の前年割れはリーマン・ショック後の不況時にもなかった。 業界のかき入れ時の歓送迎会シーズンに「自粛ムード」が広がった。 節電のために看板照明を消したり、計画停電があったりしたことも一因という。 (asahi = 5-26-11)


学校耐震化、2015 年度までに完了 文科省が方針発表

文部科学省は 24 日、全国の公立学校施設の耐震化を 2015 年度までに完了させる方針を発表した。 地域の避難所としての学校の役割も重視し、貯水槽や自家発電装置の整備も進めるという。 方針は耐震化完了の目標を「15 年度までのできるだけ早い時期」と明記し、学校耐震化の達成目標時期を初めて示した。

全国の公立小中学校の耐震化率は、10 年 4 月の時点で 73.3%。 都道府県により 50 - 90% 台と開きがあることなどが課題だった。 今年度の第 1 次補正予算に盛り込まれた耐震化事業が実施されれば率は約 86% に向上する見通しだが、全校の耐震化を急ぐよう都道府県に促すことにした。 都道府県側にも東日本大震災を受けて耐震化を前倒しで実施する動きが出ているという。 費用は最大で 3 分の 2 を国が助成する。 (asahi = 5-24-11)

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耐震性不足の住宅約 1 千万戸、全体の 2 割 10 年 3 月で

国土交通省によると、耐震性が不足する住宅は 2010 年 3 月で全体の約 20% に当たる約 1,050 万戸に上る。 国は 15 年までに 10% まで引き下げるとしていたが、昨年 6 月には 20 年までに 5% と決めた。 国交省市街地住宅整備室は「地方財政の厳しさはわかるが、新たに補助率を上げるのは難しい」と言う。

これに対し、地方財政に詳しい森裕之・立命館大教授は「国民の安全は国が守るという姿勢で、国は耐震化を進めねばならない。 自治体の財政力に応じて補助率を変える制度も検討されるべきだ。」と語る。 (asahi = 5-22-11)


小麦粉・パスタなど値上げ 日清フーズ、7 月から

製粉最大手、日清製粉グループの日清フーズは、家庭用小麦粉やパスタなどを 7 月 1 日の出荷分から値上げする。 輸入小麦の政府売り渡し価格が 4 月から 18% 引き上げられ、パスタの原料のデュラム小麦も高騰しているためだ。

値上げ幅は家庭用小麦粉が 3 - 5%、天ぷら粉などの加工品が 2 - 12%、パスタが 5 - 7%。 主力の薄力粉「フラワー(1 キロ)」の実勢店頭価格は約 15 円上がって 250 円程度になる見込み。 業務用の天ぷら粉などの加工品も 5 - 12%、パスタも 8 - 12% 値上げする。 (asahi = 5-24-11)

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穀物高騰、家計を直撃 パンにコーヒー、油も値上げ

穀物など世界的な商品相場の上昇が食卓に相次いで及び始めた。 パン最大手の山崎製パンが 17 日、小麦の高騰を理由に 3 年ぶりの値上げを発表、ライバルも続く。 食品やコーヒーなど小売りも外食も価格転嫁に動き、家計にのしかかる。

山崎製パンの値上げは計 227 品目。 小麦の使用比率が高い食パンは 7% (1 斤で 10 円程度)、菓子パンと和洋菓子は 5% 引き上げる。 敷島製パンやフジパングループ本社なども追随する方針だ。 食材に幅広く使われる小麦の国際価格は 1 年で 6 割超上昇。 食品メーカーではニチレイ(冷凍食品)や昭和産業(パスタ)も朝日新聞の取材に値上げを検討していると明らかにした。

食用油では日清オイリオグループが 4 月、この 1 年で 4 回目となる出荷価格の引き上げを実施。 スーパーの特売品は 1 キロで 50 - 100 円程度高くなったという。 UCC 上島珈琲は家庭用コーヒー豆の価格を 3 月から実質 20% 程度上げた。 日本マクドナルドは売れ筋の小さいサイズのコーヒーを値上げ。 いずれも原料となる大豆やコーヒー豆などの高騰が理由だ。 (asahi = 5-18-11)

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山崎パン値上げへ 食パン 7%・菓子パン 5% … 7 月から

パン製造最大手の山崎製パンは 17 日、食パンなど主力製品 227 品目の出荷価格を 7 月 1 日から平均 5% 値上げすると発表した。 小麦などの原料価格が高騰しているためだという。 今後、業界各社に広がる可能性がある。 値上げ対象は全製品約 1 千品目の 2 割強にあたる。 小麦の使用比率が高い食パンは 7% 引き上げる予定で、「ダブルソフト」や「超芳醇」など大半が対象になるとみられる。 菓子パンと和洋菓子も一部製品の価格を 5% 引き上げる。

小麦価格は 4 月、政府から製粉各社への輸入小麦の引き渡し価格が 18% 値上がりし、日清製粉など大手各社は 6 月下旬以降、メーカーへの卸価格を 10% 強引き上げることを表明している。 卵や油脂類などの価格も上昇傾向にあるため、今のパンの価格を維持するのは難しいと判断した。

山崎製パンは小麦価格が高騰した 2007 年にも食パンや菓子パン類を平均 8% 値上げし、敷島製パンなど他の大手が追随した。 08 年にも再値上げをした後、小麦価格の下落に伴い一部商品を値下げした。 (asahi = 5-17-11)


震災後、増える結婚相談 指輪売れ行きも増

東日本大震災をきっかけに、生涯のパートナーを得ようとする人が増えている。 都市部の女性を中心に結婚相談所への照会が相次ぎ、会員同士で成婚して退会するケースが急増。 婚約指輪の売れ行きも伸びた。 未曽有の災害に直面して孤独感にさいなまれ、人との絆を持ちたいとの思いが広がった、との見方もある。

結婚情報紹介サービス大手のオーネット(本社・東京)では、今年 4 月の資料請求件数が前年同月比で約 12% 増。 関東の女性でみると 24% 増えた。 会員同士の結婚による退会も続き、3 月は 423 人で前年同月比 19.5% の増。 4 月も 333 人と 18.1% 伸びた。 同社大阪北支社の古沢広美・支社長代理は「地震直後から問い合わせが増え、入会者も例年の 2 - 3 割増」と話す。 サンマリエ(同)でも関東甲信越地方で入会者の伸びが目立つ。

東北 6 県で約 3 千人の会員を抱える結婚情報紹介業「あんしん友の会(本部・盛岡市)」では、震災後に女性からの問い合わせが震災前より 3 割ほど増加。 「地震が一歩踏み出す契機になった」と打ち明ける人もいた。 「ノッツェ」で知られる結婚情報センター(本社・東京)の郡山支店(福島県郡山市)は、震災前と比べて入会者が 1.5 倍以上増えたとしている。

東京都内に住む一人暮らしの会社員女性 (30) は、大型連休中に結婚相談所に登録した。 震災当日に帰宅困難となり、6 時間歩いてマンションにたどり着いた。 その後も余震に敏感になり、寝つけない夜も増えた。 「将来への不安が膨らみ、家族を作ることの大切さを痛感した。 人と絆を結ぶ努力をしたい。」

新宿高島屋(東京都渋谷区)のアクセサリー売り場では、4 月 1 - 19 日の婚約指輪の売り上げが前年同期比で約 4 割増加。 「婚約指輪を買うつもりはなかったが、自分たちの出会いや気持ちを形にして残したい」と訪れるカップルもいた。 (沼田千賀子、山内深紗子、asahi = 5-15-11)


地震が影響? 温泉に異変 各地で湯量の増減や濁り

東日本大震災の直後から、各地の温泉の様子が変だ。 湯が突然増えたり、出なくなったり。 四国では泉質が変わったところもある。 専門家は「地震で大きな地殻変動が起きて温泉にも影響が出た」と話している。

岐阜県飛騨市神岡町の割石温泉。 震度 2 を観測した 3 月 11 日の地震直後、数秒湯が止まり、その後、毎分 45 リットルだった湧出量が 60 リットルに増えた。 大震災前の 2 月 27 日に震度 4 を観測した時も、同 28 リットルから 45 リットルに増えた。 温度も約 38 度から 4 度近く上がった。 温泉の担当者は「熱くなったので燃料代を節約できるが、被災者を思うと喜べない。」

割石温泉を 1998 年から調査している岐阜大学総合情報メディアセンターの田阪茂樹教授(放射線物理学)によると、この温泉は飛越地震(1858 年)を引き起こした跡津川断層上にあり、地震のたびにこうした現象が繰り返されるという。 能登半島地震(2007 年)の直後も湧出量が倍増し、温度も上昇した。 田阪教授は「地殻変動の影響で温泉が流れ込みやすくなったのでは。 温泉の変化の大きさで地震の大きさも分かる。」と話す。

一方、突然、湯が出なくなった温泉もある。 年間約 9 万人が訪れる山形県大江町の柳川温泉では、同 300 リットルの湯が出なくなり、3 月下旬から日帰り入浴を休止した。 町によると、震度 4 を観測した 3 月 11 日に自噴が止まり、ポンプで吸い上げると黒ずんだ湯が出てきた。 4 月上旬、深さ 700 メートルの井戸に機械を下ろすと、地下 291 メートルで障害物にぶつかった。 「井戸自体がずれたのかもしれない。 貴重な観光地なので掘削したいが、費用が高い。」と困惑する。

震度 4 だった新潟県弥彦村では観音寺温泉の源泉が突然枯れ、老舗旅館が 3 月末に閉館に追い込まれた。 香川県まんのう町の山あいにある美霞洞(みかど)温泉は、震災から約 1 週間後に白濁が濃くなった。 ぬめりも強くなり、硫黄が増えたという。 阪神大震災(95 年)後も同じ現象が起きたという。 大震災の震源とは約 800 キロ離れているが、同温泉支配人の石村英二さん (59) は「巨大地震で地殻変動があったのではないか」と話す。

地下水の変化を調べている産業技術総合研究所(茨城県つくば市)によると、東海や近畿などに約 50 カ所ある観測点の多くで地下水位が下がった。 数メートル変化した地点もある。 担当者は「地下水は地震の揺れと地殻変動によって変化する。 水位が大幅に下がれば温泉が出なくなることも考えられる。」と話している。

全国の約 1,500 団体が加盟する日本温泉協会(東京)には大震災後、こうした湯量の急な増減や濁りなどの報告が寄せられた。 協会は今後、温泉地での影響について全国調査する方針だ。 (船越紘、asahi = 5-5-11)


行楽地盛況・高速大渋滞 GW 後半初日は例年並み人出

首都圏の行楽地には 3 日、多くの観光客らが繰り出した。 震災による自粛ムードで大幅な客足の落ち込みが心配されたが、蓋を開けてみればほぼ例年並みの人出。 高速道路では大渋滞が発生し新幹線も終日混雑した。

JR 東京駅近くの「はとバス」乗り場は早朝から都内の日帰りバスツアーに参加する人でごった返した。 「前日にホームページで空きを見つけて急きょ申し込んだ」と、友人ら 3 人と参加した茨城県つくば市の主婦、石川豊子さん (44)。 震災で旅行は見送るつもりだったが「近場だし、空いていることは少ないので参加した」と話す。

同社は当初、前年の 5 割程度の客足と見込んでいたが、大型連休直前になって申し込みの電話が殺到。 急きょ運転手やバスガイドのスケジュールを組み替え、増便するなど対応に追われている。 4 月にジャイアントパンダが一般公開された上野動物園(東京・台東)も入園者が詰めかけ、パンダ舎には最長で 2 時間半待ちの行列ができるほどの盛況。 一時入場制限がかけられた。

7 歳の娘と並んでいた同文京区の会社員、八尾武丸さん (45) は「震災で遠出をやめたので、代わりに娘を喜ばせたかった」と話す一方、「ここまで人が多いとは」と疲れた様子だった。 鉄道や道路も混雑が目立った。 JR 各社によると、東海道新幹線下りの自由席乗車率は始発からのぞみを中心に 100% を超える列車が多く、東北・山形新幹線や上越新幹線でも一部の列車が 100% を超えた。

日本道路交通情報センターによると、東名高速下り富士川サービスエリア(静岡)付近で一時 49 キロの渋滞となったほか、東北道や関越道の下りで 67 - 78 キロの渋滞が発生した。 (nikkei = 5-3-11)

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GW の旅行者数 27.6% 減 JTB 予測、震災が影響

JTB は 18 日、ゴールデンウイーク(GW、24 日 - 5 月 4 日)の旅行者数が前年同期比 27.6% 減の 1,609 万人で 3 年ぶりに前年水準を下回る見通しだと発表した。 震災後に様々なイベントが中止され、比較できる 1990 年以降で最大の下落率となった。

航空会社の予約状況などから JTB が推計した。 GW に国内旅行に出かける人は 27.8% 減の 1,565 万 9 千人、海外旅行者は 16.6% 減の 43 万 1 千人。 今年の GW は日並びが良いものの、震災の影響でキャンセルが多発し、新規予約も伸び悩んだ。 ただ、海外旅行は人気のある欧州や北米方面のキャンセルが少なく、下落率が国内旅行より小幅にとどまった。

1 人あたりの平均費用は、国内が昨年より 1,100 円安い 3 万 5 千円。 海外は原油高で航空料金に燃油特別付加運賃が加算されるため、1 万 1,600 円高い 23 万 6 千円。 JTB によると、予約キャンセルは一巡し、国内では関西や九州などの西日本への予約が回復傾向にある。 海外はアジア向けの安い旅行が堅調で「間際予約」も増えつつある。 出発日のピークは国内が 5 月 3、4 日、海外が 28 日 - 5 月 1 日を見込んでいる。 (asahi = 4-18-11)

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宿泊キャンセル 39 万人分 東北・関東、旅行自粛ムード

観光庁の溝畑宏長官は 12 日、東日本大震災の影響で東北・関東地方のホテル・旅館で約 39 万人分の宿泊キャンセルが生じたことを明らかにした。 旅行の自粛ムードが広がり、被災地だけではなく、各地で旅行客が激減している。

この日の参院国土交通委員会で、長沢広明議員(公明)の質問に答えた。 溝畑氏は「東北・関東以外の地域でも約 17 万人分の宿泊がキャンセルされている」と述べ、「極めて深刻な影響だ」との認識を示した。 原発事故による放射性物質の拡散への心配が旅行者に広がっているほか、全国的にも各種のイベントが中止され、旅行需要が急減。 諸外国が日本への渡航自粛を打ち出していることも響いているとみられる。

キャンセル数は、業界団体の調査に基づいて算出した。 対象は震災翌日の 3 月 12 日から 4 月 8 日までで、データが集まらなかった岩手と千葉を除く東北 5 県と関東の 1 都 5 県。 業界団体によると、キャンセル数が宿泊予定者の 3 - 4 割にのぼった地域も複数あるという。 国内旅行の契約件数について、業界団体が加盟社に聞いたところ、震災 1 週間前と 3 月末で比べると、20 - 40% 減った。 4 - 5 月分も前年同期より 20 - 45% 落ち込むという。

こうした事態が続けば、ホテルや旅館などが経営難に陥る心配もある。 このため、観光庁と中小企業庁は事業主への運転資金、設備資金などの支援策を検討する。 さらに、観光庁は 12 日付で自治体や旅行業界などに対し、「被災を免れた地域から観光面で積極的に発信することは被災地の応援につながる」とする異例の通知を出し、観光に積極的に取り組むよう求めた。 (橋田正城、asahi = 4-12-11)