世界的金融機関に自己資本上乗せを要請 バーゼル委

主要国の金融監督当局でつくるバーゼル銀行監督委員会は 25 日、国際的に事業展開する大手金融機関に対し、「中核的自己資本(コアティア 1)」の比率を 1.0 - 2.5% 上乗せするよう求めることで合意したと発表した。 日本では三菱 UFJ フィナンシャル・グループなどが対象になる可能性がある。

厚い自己資本を持たせるのは、金融危機の再発を防ぐのが狙い。 すでに、普通株や過去の利益を中心にした質の高い資本であるコアティア 1 が最低でも 7% に達するよう求めることを決めている。

今回の合意は、破綻すると世界の金融システムに大きな影響を与える巨大金融機関に限って上乗せするもので、上乗せ幅は個々の金融機関の重要性に応じて決める。 2016 年から段階的に導入し、19 年 1 月からは強制適用される。 (ロンドン = 有田哲文、asahi = 6-26-11)


IMF 総会、東京で来年 10 月開催 日本側、復興強調へ

国際通貨基金 (IMF) は 6 日、2012 年秋の IMF と世界銀行の総会を同年 10 月に東京で開くと発表した。 日本開催は 1964 年以来 48 年ぶり 2 度目。 加盟 187 カ国の財務相と中央銀行総裁が参加し、訪れる関係者は 2 万 - 3 万人規模に上る見込みだという。

日本は総会開催で、東日本大震災からの復興をアピールする考え。 エジプトで開く予定だったが、民主化をめぐる混乱を受けて同国から開催先延ばしの要請があったため、野田佳彦財務相が 5 月、日本開催を求める意向を表明していた。 (ワシントン = 尾形聡彦、asahi = 6-7-11)

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東京で IMF・世銀総会開催を希望 12 年秋、財務相

野田佳彦財務相は 20 日の閣議後の記者会見で、2012 年 10 月の国際通貨基金 (IMF) と世界銀行の年次総会を東京で開催したいとの意向を表明した。 東京開催が決まれば、1964 年以来 48 年ぶりで、2 度目。 東日本大震災の被災地でも関連会議を開き、復興をアピールすることも検討している。 開催を予定していたエジプトが政情不安などから 13 年開催への延期を要請し、空白になっていた。

開催国は IMF や世銀の理事会で議論され、6 月初旬に決まる。 野田氏は「(各国に)内々にはご理解頂いている。」と話した。 総会には加盟 187 カ国の財務相・中央銀行総裁らが参加する。 国際通貨金融委員会 (IMFC) などの関連会議もある。 併せて主要 7 カ国 (G7) 財務相・中銀総裁会議が開かれる可能性も高く、参加者は 1 万人規模になりそうだ。 (asahi = 5-20-11)


中国ネット通販最大手、無断で事業分離 株主の株価急落

中国のネット通販最大手アリババ・グループが、同社の大株主である米ネットサービス大手ヤフーと日本のソフトバンクの承認をとらずに、ネット決済サービスを他社に移していたことが分かった。 米ヤフーやソフトバンクの株価が急落するなど波紋を呼んでいる。

米ヤフーが今月 10 日に米証券取引委員会に提出した資料などによると、アリババは昨年 8 月、傘下の決済サービス「アリペイ」の株式を、アリババの最高経営責任者が所有する中国企業に移し始め、今年 3 月までに全株式の移転を終えた。 米ヤフーによると、株式の移転はアリババの取締役会や株主の承認を得ていなかった。同社やソフトバンクが移転を知ったのは今年 3 月 31 日。 アリババは 5 月 13 日、中国における決済サービスの外資規制に従った結果だ、と発表した。

米国や日本のネット企業が中国で単独で営業するのは難しく、両社にとってアリババへの出資は中国戦略の核になっている。 決済事業の移転により、アリババの収益力が下がるとの連想から、米ヤフー株は米株式市場で 10 日以降の 3 日間で 11% 下落。 ソフトバンク株も東京市場で同期間に 3% 下落した。

米ヤフーの発表がアリババからの通知から 1 カ月以上たっていたため、米市場では同社の情報開示姿勢への不信感も高まっている。 (ニューヨーク = 山川一基、asahi = 5-14-11)


世界人口、10 月末に 70 億人到達 国連が予測

国連は世界の人口が今年 10 月末に 70 億人に達し、2050 年までに 93 億人、2100 年までには 101 億人を超えると予測する「世界人口推計 2010 年改訂版」を公表した。 人口増が見込まれるのはサハラ砂漠以南のアフリカ 39 カ国や、パキスタンなどアジア 9 カ国、ボリビアなど中南米 4 カ国。 現在は 13 億人の中国は 30 年ごろに 14 億人近くに、12 億人のインドは 60 年ごろに 17 億人に達し、それぞれピークを迎えると予想されている。

米国も移民の受け入れとヒスパニック(中南米系)の出生率の高さなどから人口増が続き、現在の 3 億 1,038 万人が 2100 年には 4 億 7,802 万人になる見通しだ。 一方、日本は 70 年までに 1 億人を割り込み、2100 年には 9,133 万人になるものの、平均寿命は男性が 89 歳、女性は 95.7 歳まで延びると予測している。 (ニューヨーク = 春日芳晃、asahi = 5-7-11)


ASEAN + 3、経済危機の予防策強化で一致

東南アジア諸国連合と日中韓 (ASEAN +3) の財務相会議が 4 日、ベトナムの首都ハノイで開かれた。 経済危機への対応で、応急処置から予防に踏み込むことに合意。 平時から融資枠を設定できる制度の検討に入る。 投機筋を牽制する狙いだ。

域内では、アジア通貨危機後の 2000 年から、自国通貨が急落した時に買い支える外貨を融通しあう「チェンマイ・イニシアチブ (CMI)」を整備、強化してきた。 共同議長を務めた野田佳彦財務相は記者会見で「金融のグローバル化が進み、危機は世界規模で起こり短期間に広がる。 予防策が重要だ。」と説明。 世界経済に深い傷を与えたリーマン・ショックを踏まえて予防を重んじる。

検討するのは、危機発生前からの資金手当て。 CMI で総額 1,200 億ドル(約 9 兆 7 千億円)の貸出枠があるが、活用に動けるのは危機発生後だった。 資金の準備を打ち出して、通貨を暴落させかねない投機筋に先手を打つことを目指す。 国際通貨基金 (IMF) もリーマン後の 09 年 3 月、同様の「弾力的融資制度」を設けている。 CMI の貸出枠の大幅増額も検討する。

域内各国の経済を監視する「AMRO」を近く稼働させることも確認。 経済状況の改善を促す役割も担わせ、融資枠の早期設定とともに危機予防につなげる。 12 年からは中央銀行総裁も加えて「財務相・中央銀行総裁会議」とし、議論の幅を広げることも決めた。 また、地域限定の CMI と世界全体をカバーする IMF の連携を強めることにも合意した。 CMI を使って支援に踏み切る場合の手続きも定め、IMF との連携もそこに含めた。

ASEAN + 3 が域内独自に CMI の枠組みを推進してきた背景には、IMF への反発がある。 97 年からのアジア通貨危機で支援のかわりに厳しい緊縮財政などを迫られためだ。 今回の会議では、CMI を充実させる一方で、世界規模の危機への対処を念頭に、IMF との連携強化にも道をつけた。 (ハノイ = 庄司将晃、asahi = 5-4-11)


米 GDP 1.8% 増 7 期連続プラス、伸びは鈍化

米商務省が 28 日発表した 2011 年 1 - 3 月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は、年率換算で前期比 1.8% 増だった。 7 期連続のプラス成長となったものの、伸び率は 10 年 10 - 12 月期(3.1% 増)より大きく減速した。 米経済は 09 年 7 - 9 月期からプラス成長に転じている。 ただ、同年 10 - 12 月期に 5.0% 増を記録して以降は、2 - 3% 程度の緩やかな成長が続いていた。

1 - 3 月期の成長率は事前の市場予測(2.0% 増程度)を下回った。 個人消費が前期比 2.7% 増と、10 年 10 - 12 月期(4.0% 増)より鈍化したことが響いた。 住宅投資も 4.1% 減と不振を脱せなかった。 また、09 年から 2 年間続いた史上最大の景気対策の効果が薄れ、連邦政府支出が 7.9% 減と落ち込んだ。

米連邦準備制度理事会 (FRB) のバーナンキ議長は、GDP 発表前の 27 日の会見で、「比較的弱い数字を見込んでいる。 1 - 3 月期は国防支出が予想より少なく、輸出が弱かった。」との見方を示していた。 (ワシントン = 尾形聡彦、asahi = 4-29-11)

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米 GDP、3.1% 増に上方修正 10 - 12 月期

【ワシントン = 尾形聡彦】 米商務省が 25 日発表した 2010 年 10 - 12 月期の実質国内総生産 (GDP) の確定値は、年率換算で前期比 3.1% 増となり、2 月末の改定値(2.8% 増)から上方修正された。 米経済は 6 期連続のプラス成長になっているものの、緩慢な成長が続いている。 ただ、個人消費の伸びを背景に、改定値段階に比べ、成長率は上方修正された。 (asahi = 3-25-11)

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米景気判断を上方修正 FOMC、量的緩和は維持

【ワシントン = 御調昌邦】米連邦準備理事会 (FRB) は 15 日開いた米連邦公開市場委員会 (FOMC) で、事実上のゼロ金利政策と量的緩和策の維持を全会一致で決めた。 会合後の声明は米景気について「回復はよりしっかりとした足取りになっている」として総括判断を上方修正。 一方、原油価格の上昇に言及し、先行きの物価上昇リスクを警戒する姿勢も示した。

最重要の政策金利であるフェデラルファンド (FF) 金利の誘導目標は現行の年 0 - 0.25% で据え置いた。 長期国債の買い入れ計画も従来方針を維持した。 FRB は景気判断を上方修正したが、依然として力強さに欠けるうえ、原油高などのリスクも浮上。 国債買い入れの早期終了をせずに予定通り 6 月末まで実施することが濃厚となった。

声明は 2 月の失業率が 8.9% と 1 年 10 カ月ぶりの水準まで下がったことを受け「雇用市場の全般的な情勢は徐々に改善してきている」と評価した。 ただ、失業率は依然として非常に高いとも指摘し、FRB が考える雇用の最大化からは程遠いとも認識を示した。

原油価格については中東情勢など供給要因からここ数週間で急上昇したが、物価動向は基本的に安定していると説明した。 しかし原油高が長期化するといった可能性もあり、FRB として物価上昇の予想が広がることなどについて「細心の注意を払っていく」との考えを明らかにした。 FRB はこれまで物価上昇率の低下に懸念を示しており、物価動向の認識は変化した形だ。 (nikkei = 3-16-11)

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米景気「緩やかな拡大続いている」 FRB 景況感報告

【ワシントン = 尾形聡彦】 米連邦準備制度理事会 (FRB) は 2 日、全米 12 の地区連銀の景況感報告(ベージュブック)を発表した。 1 月から 2 月半ばまでの米経済について「概して経済活動は緩やかな拡大が続いている」とした。

報告では、全体的に景気回復が続いているとの認識を示したが、シカゴ地区は「経済活動は拡大しているものの、(回復)ペースは前回報告時ほど強くはない」とし、地区によって回復ペースがまちまちになっていることをうかがわせている。 FRB が金融政策を決める 15 日の連邦公開市場委員会 (FOMC) での検討資料になる。 (asahi = 3-3-11)


不均衡是正へ新 G7 構想 日米など先進 5 カ国と中印

世界経済のあり方を議論する「新 G7 (主要 7 カ国)」構想が浮上していることが 18 日、分かった。 20 カ国・地域 (G20) のなかで、世界経済の不均衡是正に取り組む 7 カ国を新たな枠組みに発展させていくものだ。 G20 関係者が朝日新聞の取材に明らかにした。

7 カ国は米国、日本、ドイツ、英国、フランスの先進 5 カ国と、中国、インドの新興 2 カ国。 7 カ国は、借金依存や輸出への偏りで生じた世界経済のゆがみを是正するため、各国の経済政策を相互に検証することになっている。

昨年 11 月にソウルで開いた G20 首脳会議(サミット)では、世界経済のゆがみがどの程度あるかを測り、改善策を打ち出す方向で合意。 ワシントンで先週開かれた G20 財務相・中央銀行総裁会議では、相互検証の対象国に経済規模も加味して 7 カ国を選んだ。

G20 の高官によると、「各国内ではすでにこの枠組みが、新たな G7 に発展していく可能性が意識されている」という。 G20 議長国のラガルド仏財務相は 15 日の記者会見で「フランスが(世界経済の)システム上で重要なグループ・オブ・セブン (G7) の一部となったことをうれしく思う」と述べていた。

G20 を巡っては、「参加国が多すぎ、物事が決まらない(参加国高官)」との批判が出ており、少数の国によるグループ結成の必要性を指摘する声が出ていた。 新たな枠組みは今後 1 - 2 年かけて議論が進むとみられる。 新 G7 構想は現行の G8 の枠組みからイタリア、カナダ、ロシアが外れる格好だが、経済力を増しているブラジル、ロシアなどを加えた枠組みになる可能性もありそうだ。 (ワシントン = 尾形聡彦、asahi = 4-20-11)


世界経済「課題は雇用創出」 IMF の委員会が共同声明

国際通貨基金 (IMF) の国際通貨金融委員会 (IMFC) は 16 日、「中期的に成長を続けるためには雇用創出が重要」との共同声明を採択した。 世界経済全体は回復しつつあるが各国で失業率が高止まりしているためだ。 東日本大震災も取り上げられ、各国が一致して復興を支援する姿勢を示した。

日本からは白川方明日本銀行総裁が参加した。 2008 年秋のリーマン・ショックで大きく落ち込んだ世界経済は回復が続いている。 だが直近の失業率は、米国は 8.9% (08 年は 5.8%)、日本は 4.6% (同 4.0%)、フランスは 9.6% (同 7.8%)と多くの国で不況前の水準を上回る。 IMF のストロスカーン専務理事は記者会見で「成長を仕事の増加にどうつなげるのか考えていく必要がある」と述べた。

失業率高止まりの原因として指摘されているのが、企業が採用に慎重になったり、人件費の安い中国などに工場を移したりしていることだ。 15 日に閉幕した主要 20 カ国 (G20) 財務大臣・中央銀行総裁会議もこの問題を重視しており、IMF と G20 は今後、雇用が増えない原因を分析し、対策を検討する見通しだ。

一方、新興国では先進国からの資金の過剰流入で景気が過熱するリスクが問題になっている。 IMFC では、新興国はどういう時に海外からの資本流入を規制しても良いのか、についてのルールも議論された。 だが、すでに規制を実施しているブラジルなどが反発し大きな進展は無かった。

大震災について声明では、世界経済にマイナスの影響を及ぼす可能性があることを指摘し、「自然災害の影響に立ち向かう日本政府と日本国民に哀悼と支援の意を表明する」とした。 (ワシントン = 大日向寛文、asahi = 4-17-11)


米、政府閉鎖を回避 大幅な歳出削減で合意

米国で、4 月 9 日午前 0 時(日本時間同日午後 1 時)に予算措置の期限が切れて「政府閉鎖」となるのを前に、大詰めの攻防が続いた。 与野党は、大幅な歳出削減で合意し、歳出削減法案をまとめあげる数日間はつなぎの予算措置を講じることで合意。 オバマ大統領も合意を歓迎した。

米オバマ政権・民主党と野党・共和党の間では、期限切れを数時間後に控えた 8 日夜、大詰めの折衝が続いた。 米ホワイトハウス高官は 8 日夜、朝日新聞に対し、「(政府閉鎖を回避するための)合意ができることに希望を持っている。 合意は近いがまだそこに至っていない。」と語っていた。

オバマ米大統領は当初、2011 会計年度の政策経費として 1 兆 1,283 億ドルを提案。 米議会は昨年末、それより約410 億ドル少ない水準で暫定予算を設定した。 この暫定予算の水準から、さらにどこまで歳出を削減するかが与野党間で攻防になっていた。

与野党は 7 日夜から 8 日早朝にかけての交渉で、さらなる削減幅を 380 億ドルとすることで合意しかけたが、女性のがん検診向け助成 3 億ドルの扱いを巡って意見が対立し、合意に至らなかった。 共和党側は助成費の一部が中絶費用にも転用されているとして、予算自体の削減を要求。 民主党側は「がん検診を巡って政府閉鎖に陥れば、脆弱(ぜいじゃく)な米経済は勢いを失うことになる」と批判していた。

仮に政府閉鎖の事態となれば、米国の国立公園やスミソニアン博物館は閉鎖される。 連邦職員は、緊急対応など一部の機能を除いて勤務できなくなる。 ただ、米原子力規制委員会 (NRC) 職員による日本の原発問題対処への支援や、米軍による復興支援は継続する予定。 一方、日本での米国大使館によるビザ発給は緊急対応のものに限られ、通常のパスポートやビザ発給の手続きは行われない。 (asahi = 4-9-11)

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米国 : 政府、機能停止の恐れ 暫定予算、期限切れ直前

【ワシントン古本陽荘】 米国で 11 会計年度(10 年 10 月 - 11 年 9 月)の予算案のとりまとめ協議が難航し、現在の暫定予算の期限が切れる 8 日の後、予算が執行できないことにより連邦政府の一部業務が停止する恐れが出てきた。 同様の事態が起きたクリントン政権時代には入国ビザ(査証)発給などの業務が止まっており、今回も混乱が懸念される。

オバマ大統領は 5 日、共和党のベイナー下院議長、民主党のリード上院院内総務らをホワイトハウスに招いて調整に乗り出し、共和党に協力を求めたが、議論は平行線をたどった。 会談後、オバマ大統領はカーニー報道官の定例会見に予告なしに現れ、「結果が出るまで何度でも会談する用意がある」と語った。 バイデン副大統領に議会対策を任せていた姿勢を改め、自ら指導力を発揮することに意欲を示したものだ。

米国の会計年度は 10 月 1 日から始まり、9 月末までの予算成立が理想だが、12 月のクリスマス休暇ごろまで長引くことが恒例化している。 予算成立までは、暫定的な「つなぎ予算」でしのぐが、今回は新会計年度に入ってからすでに半年経過しているうえ、つなぎ予算も 6 回目という異常事態に陥った。

昨年 11 月の中間選挙では、連邦政府の役割縮小を求める保守系の草の根運動「ティーパーティー(茶会運動)」の支援を受け共和党議員が多数当選。 多くは新人議員で、予算審議で安易に妥協したと受け止められれば、地元の茶会運動に突き上げられ、再選がおぼつかなくなるという事情を抱えている。 実際に「妥協するよりは連邦政府閉鎖を」と訴える議員もおり、調整役のベイナー議長に対する茶会運動の批判も出ている。

クリントン政権時の 95 - 96 年にも、中間選挙で勝利した共和党との対立で予算案協議が難航。 国立公園やスミソニアン博物館も閉鎖されるなど観光業界にも大打撃を与え、世論が共和党非難に向かった経緯がある。

だが、今回は共和党下院のライアン予算委員長が 5 日、12 会計年度の予算案を発表。 これに関連し、高齢者や低所得者向けの医療保険制度の改革などで 10 年間で 6 兆ドル(約 510 兆円)近い削減を目指す方針を提示。 予算削減をめぐる攻防はさらに続く見通しだ。 (mainichi = 4-6-11)


G20、不均衡是正へ複数指標 食料取引の透明化も合意

【パリ = 志村亮、尾形聡彦】 20 カ国・地域 (G20) 財務相・中央銀行総裁会議は 19 日、食料など 1 次産品の価格高騰を防ぐため、市場の透明化を図ることで一致し、閉幕した。 共同声明では、新興国に過度な資本が流入し、インフレなど景気過熱の危険が強まっていることに懸念を示した。 資本流入の規制のあり方を検討する作業部会をつくり、世界経済のリスク減らしを図ることでも合意した。

世界経済の不均衡(ゆがみ)是正のため、各国のゆがみ度合いを測る「指標」選びをめぐっては、「政府の債務残高や毎年の財政赤字」、「民間の貯蓄率と債務」、「貿易収支などの対外収支」など複数の指標を使うことで合意した。 ただ、中国などの新興国の反対を反映して、外貨準備高は削除した。

共同声明では「世界経済の回復は強固になりつつあるが、先進国の成長は緩やかな一方、新興国ではより力強い成長が続いている」と指摘した。 こうしたゆがみの影響で、新興国に過度の資本が流れ込んでいることを、国際通貨体制の脆弱性だと指摘。 食料価格の過度な変動など、今後の世界経済を不安定にしかねない要素に懸念を表明した。

食料など 1 次産品価格の高騰では、価格の急騰がどのような要因で起こっているのかを調べるため、研究グループを設置することになった。 日本銀行の中曽宏理事が議長役になり、商品先物取引などが価格決定にどんな影響を与えているかを調べる。

食料など 1 次産品の取引では、在庫データが素早く示されないことが投資家の思惑を呼び、投機的な動きが強まることも少なくない。 研究グループでは、こうしたデータを整備するなどして市場の透明性向上に取り組む。 また、投資家の取引動向も調べ、投機的な行動を抑える。

ただ調査には正確なデータや、1 次産品の市場ごとの専門的な知識が不可欠になる。 G20 はこのため、国連食糧農業機関 (FAO) などにデータの提供を求めるほか、6 月にパリで G20 として初めて開く農業大臣会議と連携する。

また、資本の行き過ぎた移動を抑えるために、国際通貨体制の改革論議も深めていく。 関係者によると、問題を「新興国などへの過度な資本流入への対策」と、「市場での資金の流動性の安定的な確保」の二つに分け、それぞれ小委員会をつくって、議論を進める。

過度な資本流入を抑えるため、どのような状況下でどういった規制が認められるのかの枠組み作りにも乗り出す。 国際通貨基金 (IMF) の特別引き出し権 (SDR) の役割拡大などの通貨体制の今後のあり方もこの中で議論していくことにする。

2008 年秋の金融危機をめぐっては、米国などが経常赤字を拡大させる一方、中国などの経常黒字が増える、世界経済のゆがみが背景になったとの見方が強い。 こうしたゆがみを是正するため、昨年 11 月のソウルでの G20 サミットでは、11 年前半に、不均衡の度合いを測る具体的な指標を複数選び、その指標をどう使うかを決めることで合意していた。

今回の G20 財務相会議では指標を何にするかで、ぎりぎりまで調整が続いた。 議長国のフランスを中心とする先進国は「経常収支」、「政府の財政赤字」、「民間の貯蓄」の 3 指標に加え、「外貨準備高と実効為替レート」を盛り込もうとした。 だが、世界最大のドル建ての外貨準備を保有する中国をはじめとした新興国が強く反発。 結局、複数の指標で合意する妥協案が採用された。

今後はこれらの複数の指標を参考にし、4 月に再び開く財務相会議で、世界経済への影響力などをみながら、G20 で監視する国を加盟国の中から複数選ぶ。 選ばれた国は自らの評価を実施。 その結果を 11 月の G20 首脳会議に持ち寄り、対策の必要性などを話し合う。 (asahi = 2-20-11)


NY とドイツの証取所、合併合意を正式発表 世界最大級

【ニューヨーク = 山川一基】 ニューヨーク証券取引所などを運営する NYSE ユーロネクストとドイツ取引所は 15 日、両社が合併に合意したと正式発表した。 年内の手続き終了を目指す。 欧米の規制当局と両社の株主の承認が得られれば、圧倒的な世界一の規模の取引所が誕生する。

新会社はニューヨーク、フランクフルト、パリ、アムステルダムなどの証取を傘下に置き、売買代金を合計すると 2 位の米ナスダック OMX の約 1.7 倍の規模となる。 ドイツ取引所は有力デリバティブ(金融派生商品)取引所も保有しており、需要が高まるこの分野でも世界最大級のグループになる見通しだ。

新会社の株式はドイツ側の株主が 6 割、NYSE 側の株主が 4 割を握る。 法的な本社はオランダに置き、実際の本社機能はニューヨークとフランクフルトに設置。 ドイツのレート・フランチオーニ最高経営責任者 (CEO) が新会長に、NYSE のダンカン・ニーダーアウアー CEO が新 CEO に就く。 取締役は 17 人で、2 人のほか、9 人がドイツから、6 人が NYSE から選ばれる。

世界の取引所は、新興国や証取を通さない「私設電子取引所」などとの競争が激化し、運営の効率化を目指して再編の動きを活発化させている。 今月 9 日にはロンドン証券取引所と、カナダのトロント証券取引所を傘下に持つ TMX グループも合併の方針を発表している。 (asahi = 2-16-11)


11 年度の米財政赤字、過去最悪 1.65 兆ドル見通し

【ワシントン = 尾形聡彦、望月洋嗣】 オバマ米大統領は 14 日、2012 会計年度(11 年 10 月 - 12 年 9 月)の予算教書を発表した。 11 年度の財政赤字は、ブッシュ政権時代の所得減税を延長するなどの大規模な追加経済対策を決めた影響で、過去最悪の 1 兆 6,451 億ドル(約 137 兆円)に上る見通しだ。

米財政赤字は、金融危機後の 09 年 2 月に史上最大の景気刺激策(7,870 億ドル)を導入した影響で、09 会計年度に過去最悪の 1 兆 4,127 億ドルに達した。 10 会計年度には景気回復もあって、財政赤字は 1 兆 2,935 億ドルまで縮小。 しかし、11 会計年度は減税延長や給与税引き下げなどの新たな経済対策を打ち出す影響で、財政赤字額が史上最悪を更新する見通しになった。

11 会計年度の財政赤字は、対国内総生産 (GDP) 比で 10.9% に達する見込みだ。 経済規模比でも、10.0% だった 09 年の水準を超える見通しになった。 オバマ大統領はこうした赤字体質を改善するため、抜本的な財政再建に着手する方針だ。

オバマ大統領は今年 1 月の一般教書演説で、国防費などを除く裁量的経費の総額を、5 年間は現状水準で据え置く方針を示している。 この 5 年凍結により、今後 10 年で 4 千億ドルの歳出を削減する。 さらに、大規模空港への補助金削減や、石油会社などへの減税打ち切りなど、無駄な予算を削ることで、今後 10 年での歳出削減の総額は 1.1 兆ドル(約 92 兆円)に上る見通しとなった。

国防予算は、アフガニスタンとイラクの「二つの戦争」からの米軍撤退が進むことを受けて、戦争関連の支出が 11 会計年度比で約 25% 減少。 国防総省予算の総額も 6,705 億ドルと前年度の当初予算を 370 億ドル下回った。 国防総省は今後 5 年間で戦費を除く支出を計 780 億ドル削減する方針を示している。

こうした削減で、12 会計年度の財政赤字額は 1 兆 1,012 億ドル(対 GDP 比で、7.0%)まで縮小する見通しだ。 予算の前提となる成長率は、11 年は 2.7%、12 年は 3.6% と予測。 失業率(年平均)は 11 年に 9.3%、12 年に 8.6% とした。 (asahi = 2-15-11)


米の非農業就業者、3 万 6 千人増どまり 失業率は改善

【ワシントン = 尾形聡彦】 米労働省が 4 日発表した 1 月の米雇用統計で、米市場の関心が高い非農業部門の就業者数は前月より 3 万 6 千人増え、4 カ月連続の増加になった。 ただ、事前の市場予測(14 万 5 千人の増加)を大きく下回っており、市場で失望感が広がる可能性がある。 失業率は前月より 0.4 ポイント低い 9.0% で、2009 年 4 月以来の低水準になった。

1 月の非農業部門の就業者数について、市場では、昨年 10 月以降の増加幅と同様、少なくとも 10 万人前後の伸びを事前に予想する声が多かった。 しかし、実際の伸びは 4 万人弱。 雇用創出力の弱さが浮き彫りになった。 米エコノミストの間では、1 月の悪天候が影響したとの見方が出ている。

一方で、失業率は、事前の市場予測(9.5% 程度)以上に大きく改善した。 雇用者数はほとんど変化しなかったなかで、昨年 12 月には約 1,449 万人だった失業者数が、1 月には約 1,386 万人まで減ったのが主因だ。 職探しをしている人の数が減ったことも影響しているものとみられる。

米国では、金融危機後の景気の落ち込みで、08、09 の両年の雇用減は計 800 万人超に達した。 10 年は 100 万人弱の雇用増を記録したが、その前の雇用の減少を埋め合わせるには力不足で、オバマ政権にとって、雇用創出は最大の課題になっている。 (asahi = 2-5-11)

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米失業率 9.4% に改善 就業者数は予測下回る 12 月

【ワシントン = 尾形聡彦】 米労働省が 7 日発表した 12 月の米雇用統計で、失業率は前月より 0.4 ポイント低い 9.4% に下落した。 2009 年 5 月以来約 1 年半ぶりの低水準になった。 一方、米市場の関心が高い非農業部門の就業者数は前月より 10 万 3 千人増え、3 カ月連続の増加になった。 ただ、事前の市場予測(17 万 5 千人の増加)は下回った。

失業率が低下したのは、12 月の失業者数が前月比 55 万 6 千人減の約 1,449 万人まで落ちたことが大きい。 雇用増の一方で、同時に職探しをやめた人も多く、統計上の失業者数が減ったものとみられる。

12 月の非農業部門の就業者数は、前月よりも増加幅を拡大したものの、事前の市場予測は下回った。 米国では最近民間企業の調査で 12 月の雇用が大きく伸びたとの統計が出たため、7 日発表の政府の雇用統計は大きく改善するものとして期待が膨らんでいた。 事前の市場予測は、就業数の増加を前月比 17 万超程度とみていたが、この期待は裏切る結果になった。

就業者数は、米国勢調査に伴う一時雇用が終わった影響で、今年 6 月以降 4 カ月連続で減少した。 しかし、10 月以降は増加に転じている。 (asahi = 1-7-11)


米 GDP、3.2% 成長 10 年末、6 期連続のプラス

【ワシントン = 尾形聡彦】 米商務省が 28 日発表した 2010 年 10 - 12 月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は、年率換算で前期比 3.2% 増だった。 6 期連続のプラス成長となったが、米経済は 4 - 6 月期以降は緩やかな成長が続いている。 10 年通年の GDP は前年比 2.9% 増となり、プラス成長に転じた。 09 年はマイナス 2.6% だった。

10 年 10 - 12 月期の成長率は、事前の市場予測(3.5% 程度)を小幅ながら下回った。 7 - 9 月期 (2.6%) と同様に、緩慢な成長が継続していることが確認された。 米 GDP 成長率は、09 年 10 - 12 月期 (5.0%)、10 年 1 - 3 月期 (3.7%)、4 - 6 月期 (1.7%) と成長が緩やかになる傾向が強まっている。

GDP の 7 割を占める個人消費は 10 - 12 月期に、前期比 4.4% 増。 7 - 9 月期に 2.4% 増だったのと比べると大きく増加し、GDP を押し上げた。 また、10 - 12 月期の住宅投資は同 3.4% 増と、プラスに転じた。

米連邦準備制度理事会 (FRB) は 26 日の連邦公開市場委員会 (FOMC) 後の声明で「経済回復は続いているものの、労働市場の状況を大きく改善させるには不十分なペースだ」として緩慢な成長に警戒感を示した。 今回、緩やかな成長が再び確認されたことで、FRB は昨年 11 月に導入した大規模な追加緩和を継続することになりそうだ。

米経済は、08 年秋のリーマン・ショック以後 4 四半期連続でマイナス成長に陥った後、09 年 7 - 9 月期以降は 6 四半期連続でプラス成長している。 ただ、失業率は現在も 9.4% にとどまり、依然として高水準が続いている。 12 年の大統領選を控えるオバマ大統領は雇用創出の加速に全力をあげる姿勢で、現在は毎月 10 万人前後にとどまっている雇用の伸びが、今後どこまで加速するかが焦点になりそうだ。 (asahi = 1-29-11)


中国、対米輸入額倍増へ 商務相「5 年で年 2 千億ドル」

【シカゴ = 尾形聡彦、峯村健司】 中国の陳徳銘(チェン・トーミン)商務相は 21 日、米国からの輸入額を、今後 5 年で現在の倍の年 2 千億ドル(約 16.5 兆円)に拡大させると表明した。 中国が対米貿易の輸入額で具体的な目標数字をあげたのは初めて。 オバマ政権が掲げる「雇用創出」、「貿易赤字の削減」に協力する姿勢を示すことで、米国との協調関係を強める狙いがあるとみられる。

陳商務相は、胡錦濤(フー・チンタオ)中国国家主席の訪米に同行しており、シカゴで経済界向けに演説した。 輸入額について「商務相として、5 年後には少なくとも 2 千億ドルになることを希望している」と述べた。 これまで中国は米国からの輸入を増やす考えは示してきたが、事実上、その規模を表明したことになる。

オバマ政権は、国内雇用を創出するために、5 年で輸出を倍増させる「国家輸出計画」を掲げている。 とくに中国の対米貿易黒字の拡大を問題視しており、今回、中国側もオバマ政権の政策に応える考えを示した形だ。 米国から見ると中国への輸出額は、2011 年に 1 千億ドルを超える見通しになっている。 09 年の中国へのモノの輸出は約 690 億ドルだったのに対し、輸入は約 2,960 億ドルに上り、貿易赤字は約 2,270 億ドルに達している。

国賓として米国を公式訪問していた胡主席ら中国代表団は 21 日正午、4 日間の日程を終え、シカゴから帰国の途についた。 (asahi = 1-22-11)

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ドル基軸の体制「過去の産物」 中国の胡主席、米紙に

【ワシントン = 尾形聡彦、村山祐介】 胡錦濤(フー・チンタオ)中国国家主席は 18 日からの訪米を前に、米ウォールストリート・ジャーナル紙とワシントン・ポスト紙の書面インタビューに応じた。 胡主席は、ドルを基軸通貨とする現在の国際通貨体制を「過去の産物」とし、新たな通貨体制を構築する必要性を示唆した。 北朝鮮問題については、南北朝鮮の対話を呼びかけた。

胡主席は米国の金融政策について、「世界の流動性や資本の流れに大きな影響を与える。 米ドルの流動性は、合理的かつ安定的な水準に保たれるべきだ」と述べ、米連邦準備制度理事会 (FRB) が昨年 11 月に実施した大規模な追加緩和に不満を示した。 一方、中国・人民元の将来については、「人民元を国際的な通貨にするのは、かなり長い過程になる」とした。

人民元の切り上げが、中国のインフレ対策になると米国側が主張していることに対し、中国は金利引き上げなどでインフレ対策をとっているとしたうえで、「インフレは為替相場政策を決める主要な要因にはほとんどなりえない」と否定した。

周辺国・地域との関係をめぐっては「主権と領土の一体性、開発利益は守らなければならない」と述べ、台湾や南シナ海問題への米国の介入を牽制した。 朝鮮半島情勢については「緊張緩和の兆候が出ている」との認識を示し、南北朝鮮の対話を促すとともに、核問題の解決に向けて関係国が「6 者協議再開に向けて積極的に行動し、再開の条件を整えるよう望む」と述べた。

インタビューは両紙が送った質問から 7 問を選んで書面で答えた。 ただ、民主化活動家でノーベル平和賞受賞者の劉暁波(リウ・シアオポー)氏や海軍力の増強、サイバー攻撃についての回答はなかったという。 (asahi = 1-17-11)


米 GDP 確定値 2.6% 増 7 - 9 月期 低成長続く

【ワシントン = 尾形聡彦】 米商務省が 22 日発表した 7 - 9 月期の実質国内総生産 (GDP) の確定値は、年率換算で前期比 2.6% 増だった。 11 月下旬の改定値より、0.1 ポイント上方修正された。 ただ、事前の市場予測(2.8% 程度の増)は下回った。 米経済は 5 四半期連続のプラス成長だが、緩慢な成長が続いている。

米 GDP は、2009 年 10 - 12 月期に同 5.0% 増を記録したものの、10 年 1 - 3 月期には同3.7% 増、4 - 6 月期には 1.7% 増と期を追うごとに伸び率が縮小し、景気の回復ペースが減速していた。 7 - 9 月期はやや持ち直したものの、依然として低成長から抜け出せないでいる。 (asahi = 12-23-10)


米の経済対策、想定外 上乗せ分だけで 2 千億ドル規模

【ワシントン = 尾形聡彦】 オバマ米大統領が打ち出した給与税減税など向こう 2 年間の経済対策は、オバマ政権が上乗せする分が約 2,200 億ドル(約 18 兆 5 千億円)に上り、「ブッシュ減税」を継続する分も合わせると 1 兆ドル(約 84 兆円)規模になることが 7 日分かった。 当初見込まれていたものより大規模で、米金融界は、経済成長を押し上げると期待を高めている。

「自信を持って言えるのは、この対策が米経済を強化し、景気回復を強める手助けになるということだ。」 オバマ米大統領は 7 日、ホワイトハウスでの記者会見でこう強調した。 大統領は前日 6 日夜に、米共和党側と超党派で合意したとして、ブッシュ前政権時に導入された所得税減税をすべての所得層で 2 年間延長すると発表したが、この時点では上乗せ部分の予算規模など詳細には焦点が当たっていなかった。 それが一夜明けた 7 日に次第に判明し、米金融界を驚かせた。

米ホワイトハウスによると、オバマ政権は (1) 来年実施する給与税の 2% 分の減税(1,200 億ドル)、(2) 失業保険の 13 カ月の延長(560 億ドル)、(3) 子育て世帯向けなどの税控除の 2 年延長(400 億ドル)などを上乗せした。 追加分の総額は 2,200 億ドルになるという。

米国では、2009 年初めからオバマ政権が続けてきた史上最大の 7,870 億ドル(約 66 兆円)の景気対策の効果が 11 年初めにも切れるとして、景気後退懸念が高まっていた。 オバマ政権は今年 9 月に公共事業の拡大を中心とする景気対策を提案したが、共和党側の反発で実現困難と、弱気な見方も強まっていた。

こうしたなかで、米金融大手ゴールドマン・サックスは、今回の経済対策について「非常に重要だ。 つい 2、3 カ月前まで、財政政策(の乏しさ)は、11 年の経済見通しにとって、主要な下振れリスクの一つだったが、今回の対策は前向きだ。」とさっそく評価。 11 年の米実質国内総生産 (GDP) 成長率を 0.5 - 1.0% 幅押し上げる可能性があるとの見通しを示した。 JP モルガンチェースも今回の対策を「第 2 次景気対策」と位置づけ、11 年上半期の経済見通しが改善するとリポート。

BNP パリバのエコノミストのブリクリン・ドワイヤー氏は 7 日、「(ブッシュ減税分も合わせると)計 1 兆ドルに上る」と今後 2 年の経済対策の大規模さを指摘。 11 年の GDP 成長率を 0.3% 幅押し上げると予測した。 ただ、大規模対策の実施は、財政赤字の拡大をもたらす恐れがある。 JP モルガンは、11 会計年度の財政赤字は、従来見通しの 1.2 兆ドルから過去最大規模に当たる「1.5 兆ドル」に膨れあがる、と予測している。 (asahi = 12-9-10)


アメリカ年末商戦、出足好調 ネット主導、店はいまいち

米個人消費の回復具合を占う年末商戦が米国で始まった。 商戦の始まりに当たる感謝祭(11 月 25 日)から同週末にかけての売り上げは比較的好調だった模様だ。 ただ、ネット通販が大きく伸びた一方で、小売り店舗での売り上げは力強さに欠け、「米消費者の財布のひもはまだ固い」との見方は消えていない。

感謝祭の翌日の金曜日は、各社が収支を黒字にする大セールを実施するため「ブラックフライデー(黒い金曜日)」と呼ばれ、特に売り上げが注目される。 大手百貨店 JC ペニーでは今年のブラックフライデーの売り上げが過去 2 年を上回り、マイク・ウルマン会長は「今年は買い物客の消費欲がより強いようだ」とコメントした。 全米小売業協会 (NRF) によると、感謝祭からの 4 日間の米消費支出推計額は計 450 億ドル(約 3 兆 8 千億円)と前年から 9.2% 増えた。

1 人当たりの消費額をみると、6% 増の 365 ドル(約 3 万 1 千円)。 そのうちネット経由での販売は前年より 17% 増の 122 ドル(約 1 万円)で、増加分の多くはネット経由だった計算になる。 米通販アマゾンなどは、この期間限定のセールを実施し、消費者の購買意欲を刺激した。

一方で実際の店舗での販売はまだまだら模様のようだ。 調査会社ショッパートラックによると、ブラックフライデーからの 3 日間の全米の小売店での客足は前年比で 2.8% 増えたが、売上高はほぼ横ばいだった。 同社幹部は「この結果は、米消費者が安売りを利用して経済的に買い物をしたことを示している」とみる。 (山川一基、asahi = 12-1-10)