国と地方、49 兆円の債務超過 国債増発で初 09 年度

国と地方自治体が抱える借金総額が、保有する道路や土地などの資産総額を 2009 年末で約 49 兆円上回っていたことが 31 日、内閣府の統計で分かった。 すべての資産を売り払っても借金が返せない債務超過の状態で、同種の統計がある 1969 年以来初めてとなる深刻な財政状況だ。

内閣府が同日公表した 09 年度国民経済計算確報によると、国と地方自治体をあわせた一般政府部門の 09 年末の借金総額は、08 年末より 35.3 兆円多い 1,018.9 兆円。 税収不足を埋めるため、国が借金にあたる国債を大量に発行していることが主因で、初めて 1 千兆円を超えた。

一方、政府が保有する道路やダムなどの社会資本を中心にした資産総額は、08 年末より 19.6 兆円も減り、970.0 兆円だった。 物価下落が続くデフレの影響で所有地などの評価額が下がったほか、特別会計の積立金など、いわゆる「埋蔵金」を取り崩したことも原因だ。 この結果、資産総額から借金総額を引いた正味資産は、マイナス 48.8 兆円に落ち込んだ。

財政状態が深刻なのは、政府部門だけ。 家計部門の正味資産は 09 年末で 2,039.0 兆円。 金融機関を除く民間企業も 604.7 兆円の資産超過だ。 各部門ともデフレの影響で資産額は減っており、全部門をあわせた日本全体の正味資産(国富)は前年末比 3.4% 減の 2,712.4 兆円と、2 年連続で減った。

今のところ、こうした国富の大きさから、日本全体としては国際的な信用が保たれており、国債の金利が急騰するような混乱は起きていない。 だが、国の国債発行額は 10 年度も税収を上回る約 44 兆円に達し、11 年度も同水準が見込まれている。 格付け会社が日本国債の格付けを引き下げるなど、市場の目も厳しさを増しており、政府が着手した税と社会保障の一体改革の確実な実行が求められている。 (asahi = 2-1-11)


日本国債の格付け、1 段階引き下げ 米 S & P

米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ (S & P) は 27 日、日本の国債格付けを「AA」から「AA マイナス」に 1 段階引き下げたと発表した。 「民主党政権には債務問題に対する一貫した戦略が欠けている」とし、大規模な財政再建策がとられない限り、日本の財政赤字が今後も悪化していくことを理由に挙げた。

S & P が日本国債の格付けを下げるのは 2002 年 4 月以来、8 年 9 カ月ぶり。 格付けは、借金の返済能力について専門機関が判断したもの。 AA マイナスは、21 段階ある S & P の格付けのうち上から 4 番目。 世界の主要 7 カ国の中ではイタリアに次いで悪く、中国や台湾、クウェート、サウジアラビアなどと同じ水準だ。 S & P は、急速な少子高齢化が日本の財政・経済見通しを悪化させているとし、2020 年代半ばまで財政再建が進まないと予測した。

菅政権は消費増税と社会保障の一体改革を掲げ、自民党などの野党に協議を呼びかけているが、見通しは立っていない。 S & P はこうした国内の政治状況を踏まえ、「政府の支払い能力が大幅に改善する可能性は低い」と指摘。 参議院で与党が議席の過半数をもっていない「ねじれ国会」のなかで、来年度の国債発行を認める予算関連法案を含めて、「11 年度予算案と関連法案が国会の承認を得られない可能性さえある」とも言及した。

その一方で、S & P は、日本の国や企業などがもつ対外資産は世界最大で、経常黒字が続いていることから、当面は格付けをこのまま維持する考えだ。 政府が財政再建と経済成長に向けた施策を実行できれば、「格上げを検討する」としている。 S & P は、07 年 4 月に「財政再建の取り組みが進んでいる」として日本国債の格付けを 1 段階上げたが、昨年 1 月には、財政悪化や長引くデフレを理由に「格下げ方向で見直す」としていた。

菅政権は、財政再建が待ったなしに迫られているとして、自民党など野党に対して改革協議への参加要請をさらに強めるとみられる。 東京市場では、円が売られ、1 ドル = 82 円 20 銭台から 83 円 20 銭台へと円相場は一時急落したが、その後は 83 円前後で推移。 27 日のニューヨーク市場は 82 円台後半で推移している。

長期金利の目安となる新発 10 年物の日本国債は売られ、価格は下落(金利は上昇)したが、小幅にとどまった。 日本国債のおもな買い手である大手生保の運用担当者は「格下げの可能性は以前から指摘されており、大きな驚きはない。 日本国債への投資姿勢は変わらない。」と、冷静に受け止めている。 (野島淳、asahi = 1-27-11)


全国の景気判断、7 期ぶり下方修正 10 - 12 月期

財務省は 26 日の全国財務局長会議でまとめた 2010 年 10 - 12 月期の経済情勢報告で、全国の総括判断を「足踏み状態となっているが、先行きについては持ち直していくことが期待される」と下方修正した。 全国の下方修正は 09 年 1 - 3 月期以来、7 期ぶり。 自動車生産の落ち込みが響いた。 都道府県別でも上方修正した地域はなかった。

地域別での下方修正は、全 11 地域のうち関東、東海、近畿、九州、福岡の 5 地域。 残る北海道、四国など 6 地域は据え置いた。 生産活動では、自動車と自動車関連の電子部品、鉄鋼などの減少が目立ち、「国内向け販売は減少だが、東南アジア向けは大幅に増(東海地方の自動車関連メーカー)」との声があった。 個人消費は百貨店の秋冬もの衣料やエコポイント制度変更前の薄型テレビはよく売れたが、全地域で判断は据え置きだった。 (asahi = 1-26-11)

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街角景気「持ち直しの動き」 9 カ月ぶりに上方修正

内閣府は 12 日、全国の商店主やタクシー運転手らに街角の景況感を尋ねた 2010 年 12 月の景気ウオッチャー調査を発表した。 足もとの景気実感を示す現状判断指数は前月比 1.5 ポイント上昇の 45.1 となり、2 カ月連続で改善した。 年末商戦で個人消費に下げ止まり感がみられたことなどが要因だ。

数カ月先の先行き判断指数も 2.5 ポイント上昇の 43.9 となり、2 カ月連続で改善した。 内閣府は基調判断を前月の「このところ弱い動きがみられる」から「このところ持ち直しの動きがみられる」へ 9 カ月ぶりに上方修正した。

エコカー補助金の終了や家電エコポイントの対象縮小といった政策変更に伴う消費の減少がみられるものの、「クリスマス向けの高額品に動きがあり、アクセサリーなどが好調(東海地方の百貨店)」といった年末商戦の好調を指摘する声が多かった。 また、製造業の一部で海外からの受注が増えたとの声もあった。 (鯨岡仁、asahi = 1-13-11)

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7 四半期ぶり景況感悪化 日銀短観、大企業・製造業

日本銀行が 15 日発表した 12 月の企業短期経済観測調査(短観)で、大企業・製造業の景況感を表す業況判断指数 (DI) が、2009 年 3 月調査以来 7 四半期ぶりに悪化した。 エコカー補助金の打ち切りや米景気の減速などで、リーマン・ショック後の景気回復の足取りにブレーキがかかった。

大企業・製造業の DI は、前回 9 月調査から 3 ポイント下回るプラス 5。 大企業・非製造業は同 1 ポイント悪化のプラス 1 だった。 先行き(11 年 3 月)の見通しも、大企業・製造業がマイナス 2、同・非製造業がマイナス 1 となり、ともに悪化した。 (asahi = 12-15-10)

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11 月の街角景気、4 カ月ぶりに改善 家電売り上げ好調

内閣府は 8 日、11 月の「景気ウオッチャー調査」を発表した。 この調査は毎月、全国の商店主やタクシー運転手らに街角の景況感を尋ねている。 足もとの景気実感を示す「現状判断指数」は前月比 3.4 ポイント上昇の 43.6 となり、4 カ月ぶりに改善した。

指数を構成している家計、企業、雇用の 3 大項目の数値が上昇した。 家電エコポイント制度が変更される前の駆け込み購入で、大型店がある郊外などで家電の売り上げ好調を伝える声が多かった。 10 月のたばこ増税後の売り上げの減少も落ち着いた。

ただ、基調判断は前月と同じ「景気は、これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」に据え置いた。 2 - 3 カ月先の「先行き判断指数」は 0.3 ポイント上昇の 41.4 で、2 カ月ぶりの改善になった。 (asahi = 12-8-10)

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「景気足踏み」急増 67 社 朝日新聞の主要 100 社調査

朝日新聞が全国の主要 100 社に行った景気アンケートで、「景気は足踏み(踊り場)状態にある」と答えた企業が 67 社に上り、前回の 6 月調査の 12 社から急増した。 急激な円高や世界経済の先行きへの不安が拡大。 景気対策の期限切れで個人消費が低迷するとの見方も強まり、企業の景況感は大幅に悪化した。 調査は春と秋の 2 回で、今回は 8 - 19 日に実施。 原則として経営トップに面談した。

景気の現状判断は「足踏み状態」が最も多く、前回最多だった「緩やかに回復」は 58 社から 6 社に減少。 逆に、前回は 1 社だけだった「緩やかに下降」は 16 社に上った。 アサヒビールの泉谷直木社長は「円高の影響や猛暑効果の反動減などで、景気は厳しくなっている。」 東京電力の清水正孝社長も「回復が本格軌道に乗る前に、円高に見舞われ、国の経済対策も打ち止め感がある。 回復の足取りが弱くなってきた印象がぬぐえない」と語った。

先行きへの見方も厳しい。 90 社が今年度中は足踏み状態が続くと回答。 今後の懸念材料には、71 社が「円高の進行」を選び、圧倒的に多かった。 東レの日覚昭広社長は「円高がどんどん進行すれば、国内生産に耐えきれない企業が出る可能性がある」と心配する。

個人消費について、ヤマトホールディングスの瀬戸薫社長は「政府のカンフル剤でいい循環に持っていくはずが、つくられた需要だけで終わってしまった。 これから厳しくなる。」と予想する。 (asahi = 11-28-10)

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10 月の街角景況感、3 カ月連続で悪化 円高など響く

内閣府は 9 日、全国の商店主やタクシー運転手らに街角の景況感を尋ねた 10 月の景気ウオッチャー調査を発表した。 足もとの景気実感を示す現状判断指数は前月より 1.0 ポイント低下して 40.2 となり、3 カ月連続で悪化した。 エコカー補助金終了やたばこ増税などによる個人消費の落ち込みや、円高などが響いた。

内閣府は基調判断を前月の「景気は、これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」に据え置いた。 10 月は指数を構成している家計、企業、雇用の 3 大項目のすべての数値が低下した。 特にエコカー補助金終了による自動車販売台数の激減や、自動車メーカーの生産調整に伴う関連企業の受注減といった現状を伝える声が多く寄せられた。

2 - 3 カ月先の先行き判断指数は前月より 0.3 ポイント低下して 41.1 となり、2 カ月ぶりに悪化。 円高で輸出環境の改善が見込めない、などと懸念する声が多かった。 (asahi = 11-9-10)


家電エコポイント特需で貿易黒字半減 11 月国際収支

財務省が 12 日発表した 2010 年 11 月の国際収支(速報)によると、海外とモノやサービスの取引や投資がどれだけあったかを示す経常収支の黒字額は前年同月比 15.7% 減の 9,262 億円だった。 黒字額が前年同月よりも減少したのは 3 カ月ぶり。

経常収支の内訳では、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支が同 46.6% 減の 2,597 億円の黒字にとどまった。 昨年末に家電エコポイント制度が縮小されたため、その前に駆け込み購入が増え、中国などから薄型テレビの輸入が増えた。 また、所得収支は同 13.0% 増の 8,229 億円の黒字だった。 日本企業の海外子会社が現地で利益を蓄える内部留保が増えたという。

同時に発表した昨年の対外証券投資では、年間の中長期債の買い越し額が統計開始以来最高の 21 兆 9,428 億円となった。 日本の銀行による米国債購入が増えたためだ。 (asahi = 1-12-11)

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10 月の貿易黒字、2 カ月連続増加 輸出入額伸び率鈍化

財務省が 25 日発表した 10 月の貿易統計(通関ベース、速報)によると、輸出額から輸入額を引いた貿易収支の黒字額は前年同月比 2.7% 増の 8,219 億円で、2 カ月連続の増加となった。

輸出額は 7.8% 増の 5 兆 7,236 億円と 11 カ月連続の増加となった。 ロシアやメキシコ向けが好調で輸出額が 10.2% 伸びた自動車などが貢献した。 輸入額は 8.7% 増の 4 兆 9,017 億円と 10 カ月連続の増加となった。 伸び率は輸出入とも前月より鈍化し 1 ケタ台にとどまった。 中国からの輸入額は 9.8% 増、中国への輸出も 17.5% 増だった。 尖閣諸島沖の漁船衝突事件について財務省は「影響ははっきり見えない(関税局調査課)」という。 (asahi = 11-25-10)


国内 3 市場、2 年連続の買い越し 外国人の回帰鮮明

2010 年の国内主要 3 市場(東京、大阪、名古屋)の株式売買で、外国人投資家の「買い」は「売り」を 3 兆 2,104 億円上回り、2 年連続の買い越しとなった。 買い越し金額は前年と比べ 8 割増えた。 08 年秋のリーマン・ショックで避難した外国人の日本市場回帰が鮮明となった。

東京証券取引所が投資部門別(法人、個人、外国人、証券会社)の国内株式の売買状況を集計した。 外国人の買い越し金額は、リーマン・ショック前年(07 年)の 6 割程度まで回復している。 一方、個人は 2 兆 2,771 億円の売り越し。 外国人が個人の売りを吸収した形だ。

「売り」と「買い」を合計した売買金額を見ると、外国人は 319 兆 7,162 億円で前年比で 2 割増えた。 外国人は、売買金額全体の 62.3% を占め、個人 (23.3%) や法人 (11.8%) を大きく上回っている。 (asahi = 1-8-11)


経営者たちの景況感、意外と前向き 新興国の需要に期待

経済 3 団体が共催する新年祝賀パーティーが 5 日、約 2,200 人が出席して都内のホテルで開かれた。 各企業のトップからは今年の景気について前向きな声が目立ち、菅直人首相は改めて国内の雇用や投資の拡大を呼びかけた。 日本経済の再生につながる年になるのだろうか。 各業界の今年の景気などについて、企業や団体のトップに天気予報の形で占ってもらったところ、年後半には回復基調が強まるとの見方が多かった。

目立つのは、成長を続ける新興国の旺盛な需要への高い期待だ。 中国への積極出店を続けるローソンの新浪剛史社長は「アジア市場の果実を日本も享受する時代になった。」 昭和電工の高橋恭平会長(石油化学工業協会長)も「日本は高い付加価値のある商品の(新興国への)輸出や現地生産で対応していける」と語る。

証券界からは「日本株は割安感があり、外国人投資家も買い越している(大和証券グループ本社の鈴木茂晴社長)」など株価上昇に期待を寄せる声が目立った。

不安材料もある。 家電エコポイント制度が 3 月で終了する家電関連の業界からは「4 月以降は業況が悪化する(通販大手ジャパネットたかたの高田明社長)」などの意見が出た。 財政危機に揺れるアイルランドなど欧州各国の金融情勢も、火種を抱えたままだ。 三菱電機の下村節宏会長は「金融発の経済収縮が、もう 1 回起きるかがよくわからない」と金融リスクを危ぶむ。

パーティーでは菅直人首相もあいさつ。 「稼いだお金をため込むのでなく、思い切って国内に投資し有能な人材をどんどん雇用して、優秀な人には給料を増やしていく。 そういう攻めの経営を心からお願いしたい。」と呼びかけた。 昨年 12 月に決めた法人税率の実効税率の引き下げを念頭においた発言とみられる。

法人税率の引き下げに会場では、「雇用問題を解決する糸口ができた」、「日本の中で還元しなければならない」などの声が聞かれた。 ただ、景気回復を確実にするにはさらなる政府の後押しが欠かせないとの意見も出た。 貿易自由化を進める環太平洋パートナーシップ協定 (TPP) への参加問題について富士電機ホールディングスの北沢通宏社長(日本電機工業会長)は「このタイミングを逸すると世界の中で生きていけなくなる可能性がある。」

「勇気(岡村正・日本商工会議所会頭)」、「決断(桜井正光・経済同友会代表幹事)」、「(国を)開く(米倉弘昌・日本経団連会長)」 - -。 パーティーの後に開いた年頭の記者会見。 3 団体のトップはこう今年のキーワードを掲げたうえで、政府は TPP への参加や、消費税を含む税制全般と社会保障制度の一体改革などを実現するべきだと主張した。

法人税の減税分を国内雇用などに還元するよう企業側が確約すべきだとの意見があることについて米倉会長は、「現金としてため込むような経営者があれば教えてほしい」と確約の必要性を否定した。 (asahi = 1-6-11)


国際協力銀行に 2 千億円出資へ 政府、インフラ輸出支援

菅政権は 21 日、日本政策金融公庫から分離・独立する国際協力銀行 (JBIC) に対し、インフラ輸出拡大をめざす日本企業の支援目的で約 2 千億円出資する方針を固めた。 高速鉄道や原発など大規模プロジェクトへの投融資を円滑化するため、自己資本を増強するのが狙いだ。 政府の出資額は 2010 年度の 355 億円から 6 倍近くに拡大する。

11 年度の特別会計予算に計上する。 政府は 11 月、JBIC が途上国だけでなく、先進国でインフラ事業を手がける日本企業に投融資できる範囲を拡大。 資金支援を素早く決められるように、日本政策金融公庫から独立させる法案を来年の通常国会に提出する方針を決めている。

JBIC の資本金は 10 年 3 月末時点で約 1 兆円。 来年度に約 2 千億円を追加出資することで、巨額のインフラ輸出に投融資できる原資を備える。 JBIC 発行の外債にも政府保証を与える方針だ。

追加出資の財源は、政府が保有する NTT 株の売却益と、独立行政法人や公益法人から返納される剰余金などを充てる。 政府は NTT の発行済み株式の 3 分の 1 を保有することが義務づけられているが、3 分の 1 を超えた株式を売ることで約 1,800 億円の売却益が見込めるという。

菅政権はまた、JBIC に対し、沖縄の米海兵隊のグアム移転に伴い、水道などを整備するための出融資に向け、11 年度一般会計予算に別途約 370 億円を計上する方針。 ただ、インフラ輸出は事業規模が大きいだけに、巨額の投融資が焦げ付く可能性がつきまとう。 国民の負担が生じるおそれがあるだけに、JBIC は日本企業への積極支援と慎重な投資判断という難しいかじ取りが求められる。 (福田直之、asahi = 12-22-10)


11 年度の成長率 1.5%、前年度比半減 政府見通し

政府は 2011 年度の経済見通しについて、物価の影響を取り除いた実質国内総生産 (GDP) 成長率を 1.5% にすることが分かった。 今年度の実質成長率は 3.1% とし、それに比べると 11 年度は成長率は半減する。 名目成長率は 1.0%、消費者物価指数の伸び率はゼロにする。

政府は新成長戦略で「11 年度中に消費者物価指数を前年同月比プラスにする」としており、この目標は達成できる見通し。 だが、名目成長率が実質成長率を下回る「名実逆転」は 11 年度も続き、物価動向を示す GDP デフレーターも引き続きマイナスとなる。 一方、政府が重視している雇用面では、5% 台で推移している完全失業率が 11 年度には 4.7% まで改善するとしており、政府の雇用対策が効果をあげると見込んでいる。 (asahi = 12-21-10)


実質 GDP、年 4.5% 増 7 - 9 月期 2 次速報

内閣府が 9 日発表した 2010 年 7 - 9 月期の国内総生産 (GDP) の 2 次速報は、物価変動の影響を除いた実質 GDP (季節調整値)が前期比 1.1% 増、年率に換算すると 4.5% 増だった。 11 月に発表した 1 次速報の同 0.9% 増(年率換算 3.9% 増)から上方修正となった。 (asahi = 12-9-10)

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7 - 9 月期実質 GDP は 0.9% 増 年率 3.9% 増

内閣府は 15 日、2010 年 7 - 9 月期の国内総生産 (GDP) の 1 次速報値を発表した。 物価変動の影響を除いた実質 GDP (季節調整済み)は前期比 0.9% 増、年率換算で 3.9% 増となった。 猛暑効果やエコカー補助金終了前の駆け込み需要が個人消費を押し上げ、4 四半期連続のプラス成長となった。 (asahi = 11-15-10)


一等地の地価、下げ止まりの傾向強まる 国交省動向調査

国土交通省は 26 日、全国の一等地 150 地区の四半期ごとの地価動向(10 月 1 日時点)を発表した。 住宅地や三大都市圏を中心に下げ止まりの傾向が強まり、下落したのは前回の 105 地区から 87 地区に減った。 ただ、上昇に転じる動きは弱い。 一等地の住宅地や商業地の地価の動きは、主要都市の地価の先行指標とされる。 国交省は「マンション価格に値頃感がでてきたほか、オフィス・店舗の賃料も調整されてきた」とみている。

前回 7 月 1 日時点の調査では「3% 以上 6% 未満の下落」が 13 地区あったが、今回は 5 地区。 「横ばい」は 41 地区から 61 地区に増えたものの、「上昇」は 4 地区から 2 地区に半減した。 地方圏をみると、「下落」は 25 地区から 24 地区に減ったにとどまり、「横ばい」も 6 地区から 8 地区に増えただけだった。

用途別にみると、住宅地は 42 地区のうち上昇が東京都中央区佃・月島の 1 地区、横ばいは 32 地区。 下落は 9 地区にとどまった。 東京都文京区本郷・湯島や横浜市青葉区美しが丘、京都市中京区二条、大阪市天王寺区天王寺などが下落から横ばいに転じた。 (asahi = 11-26-10)


消費者物価指数、20 カ月連続下落

総務省が 26 日発表した 10 月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除いた総合指数(2005 年 = 100)が 99.5 となり、前年同月より 0.6% 下がった。 前年同月水準割れは 20 カ月連続で、モノやサービスの価格が下落するデフレが続いている。 (asahi = 11-26-10)


APEC 首脳会議開幕 宣言案に三つの「共同体像」

アジア太平洋経済協力会議 (APEC) 首脳会議が 13 日午後、横浜市で始まった。 朝日新聞が入手した首脳宣言「横浜ビジョン」案によると、地域の将来の形を「(貿易障壁のない)継ぎ目のない共同体」と表現するなど三つの共同体像を提示。 環太平洋パートナーシップ協定 (TPP) といった広域連携などを軸にその実現を図ることを明記する。 規制緩和など域内の成長戦略も「2015 年までの行動計画」として盛り込む方向だ。

議長を務める菅直人首相は 13 日午前、日本経団連主催の関連行事で、「日本の繁栄はアジア太平洋とともに歩むことを抜きには考えられない」とあいさつ。 TPP への参加に向けて関係国と協議を始める考えも表明した。

会議は最終日の 14 日に「横浜ビジョン」を採択する。 今回の APEC は、1994 年にインドネシアでの首脳会議で合意した「先進国は 2010 年までに貿易・投資の自由化を達成する」としたボゴール目標の達成状況を評価する年に当たる。 宣言では、これまでの取り組みを「アジア太平洋地域の貿易・投資の流れを加速させ、持続した経済成長に導いた」と評価する。

そのうえでAPECが目指す将来の姿として、(1) 経済統合をさらに進める継ぎ目のない共同体、(2) 質の高い成長をする強い共同体、(3) 安定した経済と社会環境をもたらす安全な共同体、の将来像を示す。 「継ぎ目のない共同体」は関税や投資規制など人・モノ・カネの流れを妨げる障壁を取り除くことを意味する。

APEC がまとまって関税引き下げなどを進めるアジア太平洋自由貿易圏 (FTAAP) の実現に向け「具体的な歩みを始める」とも言及。 その戦略として、9 カ国が交渉中の TPP や、東南アジア諸国連合 (ASEAN) プラス 3 カ国(日本、中国、韓国)、ASEAN プラス 6 カ国(日中韓とオーストラリア、ニュージーランド、インド)といった既存の広域連携の推進を掲げる。

「強い共同体」の実現では、APEC として今回初めて、持続可能な経済発展を遂げるための成長戦略をつくる。 規制緩和など構造改革や、女性の雇用機会拡大などを進める行動計画を策定。 貿易収支の不均衡や、国・地域によって気候変動に取り組む姿勢がばらばらな点なども指摘し、改善を促す。 (小暮哲夫、asahi = 11-13-10)

APEC 首脳宣言「横浜ビジョン」案の骨子

(1) ボゴール目標の評価

貿易・投資の自由化の取り組みを評価。 アジア太平洋地域が「世界経済のエンジン」になったことを確認。

(2) APEC の将来像と道筋

【継ぎ目のない共同体】 アジア太平洋自由貿易圏 (FTAAP) の実現に向けて、環太平洋パートナーシップ協定 (TPP) などの広域連携を推進

【強い共同体】 持続可能な成長戦略「2015 年までの行動計画」を策定。 規制緩和や女性の雇用機会の拡大に努力することを確認。

【安全な共同体】 貧困の削減、テロや災害対策、食料確保などでの協力を強める

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「保護主義抑制」共同声明に APEC 閣僚会議

横浜市で開かれているアジア太平洋経済協力会議 (APEC) の閣僚会議は 11 日、アジア太平洋自由貿易圏 (FTAAP) を実現するため、貿易や投資を制限する保護主義の抑制や、国境を超えた物流の円滑化などを盛り込んだ共同声明を採択して閉幕する。 横浜 APEC の最大テーマである自由貿易圏実現のための具体的な枠組みは、13 日から始まる首脳会議の議論に委ねることで一致した。

参加国・地域の外相や通商担当相らが集まった閣僚会議の共同声明案によると、世界貿易機関 (WTO) の多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の停滞によって、保護主義が広がる恐れがあるとの懸念を表明。 ドーハ・ラウンドの早期妥結に向けて、参加国・地域に政治レベルの関与を促す重要性を強調する。

中国のレアアース(希土類)輸出制限など個別の通商問題には言及しないものの、2008 年に APEC 首脳が合意した「投資や物品・サービスの貿易への障壁や輸出制限などの新たな保護主義的な対応をしない」との措置を、13 年末まで延長することをうたう。

自由貿易圏の実現に向けては、国際物流を円滑化し、実質的に国境の壁を取り除く行動計画を承認する。 ただ、貿易圏の土台として、環太平洋パートナーシップ協定 (TPP) や東南アジア諸国連合 (ASEAN) プラス 3 カ国(日中韓)など、既存のどの枠組みを利用するかの議論は首脳会議に持ち越した。

「アジア太平洋の成長戦略」では、各国間の貿易不均衡の是正、環境との両立などの基本原則を確認する。 食料の確保やテロ、災害対策といった「人間の安全保障」分野での協力強化も盛り込む。 (asahi = 11-11-10)

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APEC 域内、物流費用 5 - 10% 削減 行動計画策定へ

アジア太平洋経済協力会議 (APEC) は横浜市で開かれる 10、11 日の閣僚会議で、域内 21 カ国・地域の国際物流にかかるコストや時間を 2015 年までに 5 - 10% 削減する行動計画をつくる。 首脳宣言「横浜ビジョン」にも盛り込む。 関税引き下げと同時に物品の流れを円滑にして、域内経済を緊密にする狙いだ。

横浜 APEC は 7 日からの事務レベル会合で最終調整が始まり、経済産業相、外相による閣僚会議を経て、13、14 日の首脳会議で宣言を出す。 物流コストの削減は、今回の主要テーマである「アジア太平洋地域の自由貿易圏構想」に向けた具体策の位置づけで、行動計画の柱になる。 各国・地域は「構想実現には国境を越えた企業活動の障害を取り除くことが欠かせない」との認識で一致、日本がまとめた計画原案を了承する見通しだ。

原案によると、荷物検査などの通関手続きや検疫にかかる時間、輸出入の手続き費用などを、15 年を目標に減らす。 削減率として 5、8、10% の 3 案が挙がっており、閣僚会議で決める。 計画を実現するための手段として、(1) 域内に、関税や港湾関連の申請手続きをネット上で一括してできるシステムを導入する、(2) 物品がある場所を把握するため、無線発信する「電子タグ」規格を共通化する、(3) 港湾、道路など輸送インフラの整備を進め、安全情報を共有する - - ことも明記する。

域内の経済統合の実現に向けては、環太平洋パートナーシップ協定 (TPP) や東南アジア諸国連合 (ASEAN) プラス 3 カ国(日本、中国、韓国)など広域連携の推進も確認する。 (小暮哲夫、asahi = 11-8-10)


法人税、来年度 5% 幅引き下げで最終調整 政府税調

政府税制調査会は 11 日、来年度税制改正で法人税の税率を 5% 幅引き下げる方向で最終調整に入った。 国と地方を合わせた実効税率は 40.69% だが、そのうち国税の基本税率 (30%) を引き下げる。 現在検討している企業向けの減税措置の縮小などによる財源の確保策では引き下げ分を穴埋めできないが、企業の投資拡大を促す効果もあるとして、減税が先行することを容認する。

法人税率引き下げは、1999 年に基本税率 34.5% を 30% にして以来 12 年ぶり。 中国や韓国は実効税率を 20% 台まで下げたほか、ドイツも先進国で最低水準の 29.41% にするなど、各国では「引き下げ競争」が進んでいる。 日本企業が国際競争をするうえで不利な状況になっており、菅直人首相は成長戦略の柱として、年内に結論を出すよう指示していた。

政府税調は、6 月に閣議決定した「新たな減税を実施する場合はそれに見合う財源を確保する」との方針を踏まえ財源案の検討を進めてきた。

5% 幅引き下げると、1 兆円を超える減収になる。 政府税調は、赤字を翌期以降の黒字と相殺できる「繰り越し欠損金」を見直す。 これにより過去に不良債権処理で巨額赤字を計上し、税金を払ってこなかった大手銀行などに負担を課す。 また、資産の目減り分を経費として損金算入できる「減価償却」の見直しや「証券優遇税制」の廃止による増収策もとる。 ただ、これでも法人税率引き下げに見合う金額には達しない見通し。

産業界が縮小に反対している研究開発税制は小幅な見直しにとどめ、石油化学製品の原材料となるナフサへの課税は見送る方針だ。 (伊藤裕香子、asahi = 11-12-10)

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法人減税の財源1兆円確保 欠損金・減価償却見直しで

財務省は 2 日、来年度税制改正で法人税率を 5% 引き下げる場合の財源案をまとめた。 赤字を翌年以降の黒字と相殺できる「繰り越し欠損金」と、資産の目減り分を経費として損金算入できる「減価償却」を見直し、最大 1 兆円程度の財源を確保。 研究開発減税なども縮小し、合計で 2 兆円規模を目指す。 4 日の政府税制調査会に示す。

繰り越し欠損金は、決算で出した赤字を翌年から最長 7 年間、黒字(課税所得)と相殺できる仕組み。 全産業が対象で、国内企業の欠損金総額は 2008 年度で 90 兆円に達した。 このうち 7.4 兆円分が黒字と相殺され、法人税の対象となる課税所得は 2 割程度少ない 35.2 兆円となった。

財務省は、黒字と相殺できる欠損金の額に上限を設けることを検討。 半額を上限にすると、法人税収は 5 千億円程度増えるとみている。 実現すると、過去に巨額赤字を計上した大手銀行や自動車、電機メーカーなどの税負担が増えることになる。

生産設備などの資産価値が年々目減りする分を経費として損金算入できる減価償却も、償却期間の見直しを進めることで、最大 5 千億円の増収につなげる。 日本企業の競争力を高めるため、法人税率の引き下げを求める経済産業省はこれらの見直しに理解を示しており、政府税調は具体案の検討に入る。

財務省は、税の減免を特例で認める租税特別措置(租特)のうち、石油化学製品の原材料となるナフサの免税措置も見直したい意向だ。 一部を課税対象とすることで、数千億円規模の財源を確保できるが、ナフサ課税は化学業界が強く反発している。

2 日の政府税調の会合では、日本経団連などの経済団体が法人税率の引き下げを改めて要望。 経団連は、企業向けの税優遇の見直しで財源を確保することには反対で、「実質的な税負担軽減が、設備投資や雇用につながる(渡辺捷昭・経団連税制委員長)」と強調した。 だが、五十嵐文彦財務副大臣は税調後の会見で、「効果の薄い租特をやめて、税率をあまねく引き下げたほうが、より高い効果になる」と反論している。

法人税率の引き下げは、菅直人首相が成長戦略の柱として年内に結論を出すよう指示。 だが、財源案をめぐって調整が難航している。 (伊藤裕香子、吉田博紀、asahi = 11-3-10)


TPP 参加、打ち出さず 政府方針決定、協議は開始

菅内閣は 6 日、包括的経済連携に関する閣僚委員会を首相官邸で開き、環太平洋パートナーシップ協定 (TPP) について「情報収集を進めながら対応し、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始する」と明記した基本方針を決めた。 参加に前向きな姿勢は示したが、民主党内などの慎重派に配慮して「参加表明」までは打ち出さない内容になった。 9 日に閣議決定する。

TPP は、菅直人首相が 10 月の所信表明演説で「交渉への参加を検討」と表明。 民主党のプロジェクトチームが今月 4 日にまとめた提言は「情報収集のための協議を行い、参加・不参加を判断する」としていた。 これに対し、基本方針は「情報収集」と「協議」という言葉を切り離し、「情報収集のための協議」ではなく、「参加をめぐる協議」という意味合いをにじませた。

ただ、13 日から横浜市で開かれるアジア太平洋経済協力会議 (APEC) 首脳会議の前に「交渉入り」まで踏み込めず、参加の可否の結論は先送りとなった。 TPP 交渉は来年 11 月の米国での APEC で合意する見通しだが、平野達男内閣府副大臣は閣僚委後の記者会見で、TPP 参加の判断時期について「今の段階で『いつまで』ということをコメントできる状況にはない」とした。

菅首相は 6 日の閣僚委で「農業再生を念頭に『国を開く』という重大な基本方針をとりまとめることができた。 日本の新たな繁栄を築くための大戦略のスタートだ。 『平成の開国』は必ずプラスになる。」と強調。 APEC 域内の貿易自由化について「道筋をつけるため議長として強いリーダーシップを発揮する覚悟だ」と述べ、APEC 首脳会議で今回の基本方針を説明する考えを示した。 基本方針は「すべての品目を自由化交渉対象とし、高いレベルの経済連携を目指す」と明記。

一方で、原則 10 年以内に輸入品に対する関税をゼロにする TPP に参加すれば、安い農作物が大量に輸入されて国内農業に打撃となることが予想される。 そのため、基本方針では「競争力向上や海外での需要拡大など農業の潜在力を引き出す大胆な政策対応が不可欠」と指摘。 首相を議長とする「農業構造改革推進本部」を設置し、来年 6 月をめどに農業対策の「基本方針を決定する」と打ち出した。

TPP は農業分野だけでなく、金融や医療分野など「非関税障壁」の撤廃も求められる。 このため、規制制度改革に関する政府の方針を来年春までに決めることも基本方針に盛り込んだ。 また、2 国間で貿易やサービスの自由化を進める経済連携協定 (EPA) について、基本方針は「積極的に推進する」と表明。 現在交渉中のペルーや豪州との交渉妥結や、韓国との交渉再開、モンゴルとの交渉開始、欧州連合 (EU) と交渉に入るための調整を「加速する」とした。

基本方針をめぐっては、6 日の閣僚委に先立ち、菅首相は玄葉光一郎国家戦略相らと会談。 仙谷由人官房長官は同日午前、TPP 参加に慎重な国民新党の亀井静香代表と電話で協議し、国民新党の同意を取りつけた。 (asahi = 11-7-10)

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関税撤廃などの TPP で「GDP 3 兆円増」 内閣府試算

内閣府は 22 日、日本が農業分野を含む関税撤廃や投資の自由化を進める「環太平洋パートナーシップ協定 (TPP)」に加わると、実質国内総生産 (GDP) が現状より年 2.5 兆 - 3.4 兆円増えるとの試算をまとめた。 域内の関税撤廃などで貿易や国内生産が増えるためで、成長率を年 0.48 - 0.65% 幅押し上げる。 TPP で経済効果の政府試算がまとまるのは初めて。

2009 年の実質 GDP (525 兆円)をベースに試算した。 国内の農業分野へのマイナス分も考慮している。 試算によると、日本が参加せず、他国に輸出を奪われるなどした場合、20 年時点で日本の輸出額が 8.6 兆円、生産額が 20.7 兆円減り、GDP を 1.53% 幅押し下げることになるという。 韓国に参加を先行されると、GDP をさらに年 0.1% 幅押し下げる。

TPP はシンガポールなど 4 カ国が 06 年に結んだ自由貿易協定を土台に、現在は米国、豪州、ベトナムなど 9 カ国が交渉を進めている。 菅直人首相も参加に意欲を示し、11 月中旬に横浜で開くアジア太平洋経済協力会議 (APEC) 首脳会議で、参加を表明するかが焦点になっている。 (鯨岡仁、asahi = 10-22-10)

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日本が TPP 参加表明、中国をけん制か

日本政府は自国の農業団体による強い反対にもかかわらず、米国などアジア・太平洋沿岸 9 カ国が推進している貿易自由化協定(環太平洋パートナーシップ協定 = TPP)に参加する意向を固めたようだ。 前原誠司外相は 19 日、日本経済新聞と米戦略国際問題研究所 (CSIS) の共同主催により東京で開催されたシンポジウムに出席し、「経済外交の柱は国を開放することだ」と述べ、「わたしは TPP に参加すべきと考えている」と発言した。

前原外相は、「日本は 1 次産業が GDP (国内総生産)に占める割合がわずか 1.5% だが、それを保護するために 98.5% が犠牲となっている。 開放に対して正面から向き合わなければ、日本の経済力は間違いなく低下する。」とも述べた。

菅直人首相も 1 日に行われた国会での演説で、初めて TPP への参加の意向を明らかにした。 また、来月 13 - 14 日に横浜で開催されるアジア太平洋経済協力会議 (APEC) 首脳会議の際にも、関係国に正式に提案する方針だ。 首相直属の国家戦略局はこれを推進するために最近検討チームを立ち上げたほか、経済産業省などでも検討チームが立ち上げられた。

TPP はシンガポール、ニュージーランド、ブルネイなど 4 カ国からスタートし、米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの 5 カ国が新たに参加の意向を表明した。 中心となっているのは米国だ。 2015 年までに、原則としてすべての関税を撤廃することを目指しており、来年末までに交渉を終えたい方針だ。

日本が TPP に参加する意向を固めているのは、韓国や中国による FTA の動きに刺激を受けたという側面が非常に大きい。 とりわけ中国と取引を行っている国々が多数含まれる TPP の性格を考えたとき、「参加国の間には、経済安全保障を通じて中国をけん制するという目的もある」と日本経済新聞は報じている。

しかし、与党・民主党内部でも、地方選出の議員などを中心に反対の意見が根強く、実際に加入するまでには多くの困難が予想されている。 全国農業協同組合中央会は 19 日に東京都内で集会を開き、「反対決議文」を採択した。 決議文で同中央会は、「TPP に参加すると、日本の農業は壊滅的な打撃を受ける」と主張している。 - 東京 = 辛貞録(シン・ジョンロク)特派員 (韓国・朝鮮日報 = 10-21-10)