STAP 細胞、現時点で再現できず 理研、検証は継続

理化学研究所は 27 日、STAP 細胞の存在を確かめる検証実験について「現時点では STAP 細胞はできない」とする途中経過の結果を発表した。 ただ、「最終判断はまだできない」として今後も実験は続ける。 検証実験は、STAP 細胞論文の著者の一人で理研の丹羽仁史プロジェクトリーダーらのチームが 4 月から実施してきた。 論文で STAP 細胞の作製法として記載されたのと同じように、マウスの脾臓から取り出した白血球の一種のリンパ球を弱酸性の液に浸した後に培養したが、万能細胞に特有の遺伝子の働きが確認できなかったという。

ただ、実験に使うマウスの種類や臓器、細胞を刺激する方法などの条件を変えてさらに検証するため、実験は継続するという。 丹羽氏らのチームとは別に、論文の筆頭著者である小保方晴子ユニットリーダーは 7 月から別の建物で検証実験を始めている。 今回の発表に小保方氏の実験内容は含まれていない。 (asahi = 8-27-14)


小保方氏、STAP 主論文の撤回に同意

STAP 細胞の論文をめぐり、主要著者の一人である理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子・ユニットリーダーが、不正を認定された主論文の撤回に同意したことがわかった。 理研広報室が 4 日、明らかにした。 理研から論文撤回を勧告されていたが、小保方氏はこれまで拒んでいた。 主論文が撤回されれば STAP 細胞の研究成果は白紙に戻ることになる。

STAP 細胞の論文は 2 本からなる。 主論文とは別の論文でも画像の誤りが見つかり、別の論文については小保方氏も撤回に同意していた。 理研広報室によると、小保方氏は 3 日、主論文の撤回に同意することを共著者の一人に伝えたという。 (asahi = 6-4-14)


STAP 論文問題、共同著者が謝罪 1 年かけ検証実験

STAP 細胞の論文問題で、理化学研究所は 7 日、存在の有無を検証する実験計画の詳細を発表した。 共著者の一人で、検証の実施責任者である理研発生・再生科学総合研究センター (CDB) の丹羽仁史(にわひとし)プロジェクトリーダーは都内で記者会見し、「このような事態になったことを深くおわびしたい」と謝罪した。

丹羽氏は万能細胞研究の第一人者。 英科学誌ネイチャーに発表した STAP 細胞論文に専門的助言をした。 訂正論文を出した 3 月 9 日の時点では正しいと判断していたが、その後新たな疑義が出たため撤回に同意したという。 STAP 細胞の存在については「更地に戻った」と説明。 「あるかどうか知りたい」と検証への意欲を語った。

理研によると、検証実験のスケジュールは約 1 年で、4 カ月をめどに中間報告を出す予定。 実験の費用は 1,300 万円かかるという。 丹羽氏や CDB の相沢慎一特別顧問ら 6 人が担当し、筆頭著者の小保方晴子ユニットリーダーは加わらない。 相沢氏は「小保方さんから情報を得られる状況ではない」と説明した。 (野中良祐、asahi = 4-7-14)


STAP 細胞、存在は謎のまま 不正「小保方氏ひとり」

「生物学の常識を覆す画期的な成果」として世界を驚かせた発表から 2 カ月。 新たな万能細胞・STAP 細胞の論文について、理化学研究所の調査委員会が 1 日、改ざんと捏造の「研究不正行為があった」と断じた。 ただ、STAP 細胞が存在するかどうかははっきりしないままで、真相究明には遠い。

調査委員会の記者会見は東京・両国で午前 10 時半から始まった。 会場には約 300 人の報道陣が集まった。 論文の著者である理研発生・再生科学総合研究センター (CDB) の小保方(おぼかた)晴子ユニットリーダーらは姿を見せなかった。 報告書の内容を説明した石井俊輔委員長は「不正行為は(小保方氏)本人ひとり。 不正行為はあってはならないのが研究者の世界の常識。」と話した。

記者からは「STAP 細胞が存在するのか」との質問が繰り返されたが、石井委員長は「科学的な研究探索が必要で、この調査委員会の目的ではない」と述べるにとどまった。 研究の核心となる万能性を示す画像を「捏造」と認定したことについて、小保方氏は「間違えて使用した」と説明したというが、岩間厚志委員(千葉大学教授)は「根幹の証明が第三者には難しく、非常に問題」と指摘。 石井委員長は「通常の研究者ではまずない」と述べた。

調査委は、小保方氏が 3 年間で実験ノートを 2 冊しか作っていないことも明らかにした。 石井委員長は「私自身学生とかポストドクターを担当したが、内容が断片的で(実験を)フォローできないというのは経験がない」と話した。 午後 1 時からは、野依良治理事長や竹市雅俊・CDB センター長らが同じ場所で会見。 野依氏は「外部機関の研究者による(STAP 細胞の)再現実験に積極的に協力し、必要な情報を提供する。 私が先頭に立って、全力を挙げて取り組む」と述べた。 (asahi = 4-1-14)


STAP 細胞「再現結果には 3 - 4 カ月」 理研見通し

STAP 細胞論文問題で理化学研究所は 18 日、細胞の万能性を調べる再現実験を理研内で実施し、結果が出るまでには少なくとも 3、4 カ月かかる見通しを明らかにした。 自民党の調査会で理研が説明した。 論文の筆頭筆者の小保方晴子ユニットリーダーが所属する理研は 14 日に中間報告を発表。 STAP 細胞の存在が完全には証明できていないとし、第三者の検証にゆだねたいとしていた。 (asahi = 3-18-14)


STAP 論文「極めてずさん」 理研が謝罪、調査は継続

新しい万能細胞「STAP (スタップ)細胞」の論文をめぐり、理化学研究所は 14 日、画像の二重使用や、他人の論文のコピーなど不適切な点があったと認めた。 野依良治・理研理事長は「論文の疑義についておわび申し上げたい」と謝罪。 STAP 細胞の真偽については具体的な根拠を示せず、証明できないと説明した。 これまで「成果は揺るがない」としていた理研の姿勢は大きく後退した。

英科学誌ネイチャーに載った論文に問題点があるとの指摘を受け、理研が調査委員会を設置。 著者の理研発生・再生科学総合研究センターの小保方(おぼかた)晴子ユニットリーダーらに聴取するなどして、六つの項目を調べ、中間報告をまとめた。 うち 4 項目は、疑わしい部分が残るなどとして調査を継続する。 残る 2 項目については「不適切な点はあったが、研究不正にはあたらない」と判断した。

調査項目のうち、不正かどうか調査を継続するとしたのは、@ 博士論文と同じ画像の使用、A 遺伝子を解析した画像の切り張り、B 実験手法のコピー、C 実際の手順と異なる実験手法の記載 - - の 4 点。 不適切としたのは、▽ 細胞の画像の不自然なゆがみ、▽ マウスの胎盤を撮った 2 種類の画像の類似 - - の 2 点。 (野中良祐 編集委員・田村建二、asahi = 3-24-14)


STAP 細胞論文「3 つの疑問」 理研、調査結果公表へ

理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーらが発表した新しい万能細胞「STAP 細胞」の論文をめぐり、専門家から「図表や文章などに不適切な点がある」と指摘する声があがっている。 論文の何が問題なのか。 理研は近く、調査結果を公表する。 論文は 1 月 29 日、小保方さんらが英科学誌ネイチャーに発表した。 専門家からインターネット上などで「論文に不自然な点がある」との指摘が出て、2 月中旬から理研や同誌が調査を開始した。

最初に指摘されたのが画像の「使い回し」についてだ。 マウスの胎盤をとらえた 2 枚の画像が、別の状況で撮影されたはずなのに似すぎている、との指摘があった。 小保方さんと共同で論文を書いた若山照彦・山梨大教授は「単純ミス」による画像の取り違えだと説明した。 遺伝子を解析した別の画像に、加工した跡にも見える不自然な線が入っているとの指摘もある。

2 番目の指摘が、他人の論文によく似た点があるというものだ。 実験手法について説明した計 18 行にわたる 1 段落分の記述が 2005 年に専門誌に掲載された別の論文に書かれたものとほぼ同一だった。 参考文献の項目にも元の論文についての記載はないことから専門家から不適切だと指摘されている。 日本分子生物学会は 3 日、こうした指摘について「憂慮している」とし、理研に対し、迅速な調査結果を公表するよう求めた。 これらは主に研究者としての倫理が問われる問題だ。

一方、理研が 5 日に STAP 細胞の詳しい作製手順を公開した後、研究成果そのものへの疑問も、一部の専門家から出ている。 「手順書と論文の記述には違う点があり、本当に STAP 細胞ができたと言えるのか裏付けが不十分だ」との指摘だ。 論文では、STAP 細胞が人為的につくれたことを示す証拠が見つかったと記載されていた。 しかし、手順書には、STAP 細胞を改変した細胞には、この証拠が見つからなかったと書かれていた。

理研広報室は、いずれの指摘についても「今の段階ではコメントできない。 調査が終われば公表する。」としている。 (asahi = 3-9-14)

〈STAP 細胞の論文〉 ごく若いマウスから採ったリンパ球を弱い酸性の液体に 25 分間浸すだけで、どんな組織にでもなれる STAP 細胞に変化する、とする内容。 リンパ球から STAP 細胞ができた証拠として、リンパ球でしかみられない遺伝子の特徴が STAP 細胞にも残っていることを確かめた、と書かれていた。


新しい万能細胞作製に成功 iPS 細胞より簡易 理研

理化学研究所などが、まったく新しい「万能細胞」の作製に成功した。 マウスの体の細胞を、弱酸性の液体で刺激するだけで初期化が起き、どんな細胞にもなれる万能細胞にかわる。 いったん役割が定まった体の細胞が、この程度の刺激で初期化することはありえないとされていた。 生命科学の常識を覆す画期的な成果だ。 29 日、英科学誌ネイチャー電子版のトップ記事として掲載された。

理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の小保方晴子(おぼかたはるこ)ユニットリーダー (30) らは、新たな万能細胞を STAP (スタップ)細胞と名付けた。 STAP とは「刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得」という正式名を英語で表記した頭文字だ。 iPS 細胞(人工多能性幹細胞)よりも簡単に効率よく作ることができ、受精卵を元にする ES 細胞(胚〈はい〉性幹細胞)と同じぐらい遺伝子を傷つけにくいため、がん化の恐れも少ないと考えられる。

作り方は簡単だ。小保方さんらは、マウスの脾臓(ひぞう)から取り出した白血球の一種のリンパ球を紅茶程度の弱酸性液に 25 分間浸し、その後に培養。 すると数日後には万能細胞に特有のたんぱく質を持った細胞ができた。 この細胞をマウスの皮下に移植すると、神経や筋肉、腸の細胞になった。 成長途中の受精卵に入れて子宮に戻すと、全身が元はリンパ球だった細胞だけでできた胎児に育った。 これらの結果から STAP 細胞は、どんな組織にでもなれる万能細胞であることが立証された。

酸による刺激だけではなく、細い管に無理やり通したり、毒素を加えたりといった他の刺激でも、頻度は低いが同様の初期化が起きることも分かった。 細胞を取り巻くさまざまなストレス環境が、初期化を引き起こすと見られる。 さらに、脳や皮膚、筋肉など様々な組織から採った細胞でも STAP 細胞が作れることも確かめた。

STAP 細胞は iPS 細胞や ES 細胞より、万能性が高い。 さまざまな病気の原因を解き明かす医学研究への活用をはじめ、切断した指が再び生えてくるような究極の再生医療への応用にまでつながる可能性がある。 ただ、成功したのは生後 1 週間というごく若いマウスの細胞だけ。 大人のマウスではうまくいっておらず、その理由はわかっていない。 人間の細胞からもまだ作られていない。 医療応用に向けて乗り越えるべきハードルは少なくない。

万能細胞に詳しい中辻憲夫・京大教授は「基礎研究としては非常に驚きと興味がある。 体細胞を初期化する方法はまだまだ奥が深く、新しい発見があり、発展中の研究分野なのだということを改めて感じる。」と話す。 (小宮山亮磨、asahi = 1-29-14)

■ 山中伸弥教授「重要な研究成果、誇りに思う」

京都大 iPS 細胞研究所長の山中伸弥教授は「重要な研究成果が、日本人研究者によって発信されたことを誇りに思う。 今後、人間の細胞からも同様の手法で多能性幹細胞(万能細胞)が作られることを期待している」とのコメントを発表した。

〈万能細胞〉 筋肉や内臓、脳など体を作る全ての種類の細胞に変化できる細胞。 通常の細胞は筋肉なら筋肉、肝臓なら肝臓の細胞にしかなれない。 1 個の細胞から全身の細胞を作り出す受精卵のほか、少し成長した受精卵を壊して取り出した ES 細胞(胚(はい)性幹細胞)、山中伸弥・京都大教授が作り出した iPS 細胞(人工多能性幹細胞)がある。 万能細胞で様々な組織や臓器を作れるようになれば、今は治せない病気の治療ができると期待されている。