ソニーグループ、KADOKAWA の買収検討 エンタメ事業強化狙う

ソニーグループが、出版大手 KADOKAWA の買収を検討していることが 19 日、わかった。 ソニーは家電などの製造業からエンターテインメント事業に軸足を移し、積極的な企業合併・買収 (M & A) などによって IP (知的財産)の強化を進めている。 関係者によると、両社による協議は、まだ初期の段階だとみられる。 KADOKAWA は出版事業以外にも映画やアニメなど、エンタメ事業を総合的に手がけ、ヒット作も多数保有している。

ソニーは 2021 年に KADOKAWA に第三者割当で出資し、現在 2.1% の株式を保有する。 KADOKAWA が持つ IP とソニーのグローバル展開力の組み合わせをめざし、関係の強化を進めていた。 さらに、KADOKAWA のゲーム子会社で、全世界でヒットした「エルデンリング」の開発元の「フロム・ソフトウェア」にも 22 年に出資した。 ソニーは、25 年 3 月期からの 3 年間で、M & A などに使うとして 1 兆 8,000 億円の成長投資枠を設定していた。 ソニーは傘下にアニメ会社「アニプレックス」や米アニメ配信サービス「クランチロール」の運営会社を抱えている。 (田中奏子、asahi = 11-19-24)


ソニー、売上高 13 兆円超で過去最高 PS5 は計画未達も前年超え

ソニーグループが 14 日発表した 2024 年 3 月期決算(国際会計基準)は、売上高が前年比 18.6% 増の 13 兆 207 億円で、4 年連続で過去最高だった。 主要 5 事業のうち、ゲーム、音楽、映画、半導体の 4 事業で売上高が過去最高だった。 主力のエンターテインメント事業が好調だったほか、円安も収益を押し上げた。 金融事業の減益が響き、営業利益は前年比 7.2% 減の 1 兆 2,088 億円、純利益は 3.5% 減の 9,705 億円だった。 円安が営業利益を1400億円押し上げた。

プレイステーション (PS) 5 の 23 年度の販売台数は、当初計画の 2,500 万台に届かなかったものの、前年を 170 万台上回る 2,080 万台だった。 PS5 向けのソフトウェア販売が好調で、ゲーム事業の売上高は 4 兆 2,677 億円と、初めて 4 兆円を超えた。 音楽事業は、手がけた楽曲がインターネット配信サービスで上位にランクインするなどし、営業利益が 4 年連続で過去最高だった。 映画事業は「スパイダーマン」シリーズのヒットや、公開作品の増加が収益を上積みした。

映画事業を巡っては、傘下の米映画会社「ソニー・ピクチャーズエンタテインメント」が、米メディア大手「パラマウント・グローバル」に買収提案したと米メディアが報じた。 十時裕樹社長はこの日の決算会見で「特定の案件にコメントは控えたい」と明言は避けつつ、ゲーム、音楽、映画の 3 事業は IP (知的財産)を軸に相乗効果を生むことが戦略の中核にあるとし、「ソニー・ピクチャーズはその重要な位置を占め、この領域で優良な機会があれば検討するのは自然な行為」と述べた。

一方で、報道で 4 兆円規模とされる買収金額については、24 年度からの 3 年間では、グループ全体で予定している投資額は 1.8 兆円だと説明。 「この範囲内で、特定のセグメントに極端に偏ることなく戦略投資などを行うことが基本的な考え方だ」との見方を示した。 (田中奏子、aahi = 5-14-24)


ソニーの半導体の新工場棟が拡張を終え竣工式

ソニーグループが半導体事業として 16 年ぶりに長崎県諫早市に建設していた新工場棟の拡張が完了した。 スマートフォン向けのイメージセンサーの生産力に伸びしろをつくり、市場拡大に乗り遅れないようにする。 拡張が完了したのは、ソニーグループで半導体製造を担う「ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング」の長崎テクノロジーセンター(同市津久葉町、従業員 3,800 人)。2021 年 4 月から稼働している「Fab5」という新工場棟で工事が続けられていた。 今回、延べ床面積 5 万 3 千平方メートルが加わり、計 15 万 5,300 平方メートルになった。

同工場でつくっているのはスマホカメラでレンズから入ってきた光を認識する「CMOS イメージセンサー」。 スマホのカメラは高機能を競って複数のレンズを搭載するようになってきており、今後も市場の拡大が期待されている。 「Fab5」の操業と拡張の同時進行という難工事は市場の期待に早期に応えるために実施された。 半導体を製造しながらの工事は振動対策に気を配った。 エアホバーという装置で機械と床との間に空気だまりをつくり、浮いた状態で移動させるなど苦心が続いたという。

Fab5 で重要なのは、高度 10 - 50 キロの成層圏なみに空気を浄化したクリーンルームという作業用の部屋。 拡張によって製造設備がない部分が多くできる。 フリースペースを確保することで、市場動向に応じて柔軟な設備投資が可能になるという。 先月 22 日に行われた竣工式には企業や行政関係者ら 160 人が参加。 ソニーグループの十時裕樹社長は「長崎テクノロジーセンターは環境に応じて製造する製品を変化させることで成長してきた。今後も製造ファーストで取り組み、市場でリードし続けたい」とあいさつ。大石賢吾知事も「県にとって重要な半導体産業の弾みになる」と期待感を示した。 (天野光一、asahi = 1-26-24)



ソニー過去最高の売上高 11 兆円超、勝因は「半導体への集中投資」だ

ソニーの収益力アップが顕著だ。 2023 年 3 月期決算は売上高が過去最高の 11 兆円を超えた。 快進撃の勝因は、直近 10 年間でリストラを断行し、世界トップシェアを誇る画像処理半導体(イメージセンサ)の研究開発や製造に集中したからだ。 対してパナソニックやシャープ、東芝は構造改革の遅れが業績にも響いている。 ソニーは今後 3 年間で半導体分野での設備投資が 1 兆円を超える見通し。 「ウォークマン」で世界を変えた往年のソニーの真の実力が戻ってきたようだ。 (多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

過去最高の売上高 11 兆円超のソニー

2023 年 3 月期のソニーグループの連結業績は、売上高が 11 兆 5,398 億円(前期比 1 兆 6,183 億円増)と過去最高だった。 営業利益は 1 兆 2,082 億円(前期比 59 億円増)、経常利益は 1 兆 1,803 億円(前期比 628 億円増)、純利益は 9,371 億円(前期比 549 億円増)。 前期比で大幅な増収増益が目立った。 今回の決算を見ると、半導体などのハードウエア、ゲームや音楽などのソフトウエア(コンテンツ)の両面で、ソニーの収益力が高まっていることが分かる。

ソニーはハード面のモノづくりの力を磨き、それをソフト面にコンテンツの領域に持ち込むことで、世界市場への影響力を強化している。 同社の事業運営は、他の国内家電メーカーと対照的だ。 多くの家電メーカーは、23 年 3 月期の第 3 四半期の決算発表時点で、業績の下振れ警戒感を示した。 対して、ソニーはその強さを示すことに成功しつつある。

今後、ソニーは画像処理などに用いられる半導体の製造技術をさらに高め、新しい最終製品の創造を成し遂げるかもしれない。 目下、世界全体でスマートホンの需要減少が鮮明だ。 それは裏を返せば、ソニーがかつてのウォークマンなどのようなヒット商品を実現するチャンスともいえる。 これからのソニーは、過去 30 年以上にわたって低成長に陥ったわが国の家電メーカーにとって、大きな刺激となることを期待したいものだ。

ソニー快進撃の勝因

世界経済の先行き懸念高まる中、ソニーは過去最高の売上高を更新した。家電業界の中でソニーの収益力の向上は顕著だ。23年3月期決算のセグメント別業績を確認すると、ゲーム関連事業の売上高は3兆円を超えた。音楽、映画、半導体など、金融を除いた分野も1兆円を上回った。かつて「ウォークマン」のヒットによって、世界のミュージックライフを一変し高い成長を実現した、あのソニーが段々と戻ってきたようにも思える。

その "勝因" を端的に言うと、ソニーは強みを発揮できる分野にヒト・モノ・カネをダイナミックに再配分したからだ。 直近 10 年間で、資産売却などのリストラで資金を捻出し、得た資金を、世界トップシェアを誇る画像処理半導体(イメージセンサ)の研究開発や製造に再配分した。 24 年 - 26 年に半導体分野での設備投資は 1 兆円を超える見通しだ。 半導体の製造技術の向上は、画像、音響などの処理技術ニーズを支え、デジタルカメラ、音響機器などの分野でもソニーの競争力は高まった。

そうした要素技術を、ソニーはソフトウエアの分野と新たに結合した。 アニメや映画、音楽、「プレイステーション (PS) 5」などのゲーム分野で新しい機器やコンテンツの提供体制を徹底して強化している。 22 年に完了した米ゲーム大手バンジーの買収は、コンテンツ創出体制の強化に向けた一つの取り組みだ。

ソニーは、画像処理センサである CMOS イメージセンサーの世界市場で 40% 超のシェアを握っている。 その多くを、長崎県、大分県、熊本県の工場で生産している。 ソニーにとってわが国のモノづくりの実力は、競合他社との差別化を徹底する重要な要素といえる。 モノづくりの力を引き上げることによって新しいコンテンツを生み出し、収益が得られる分野を広げている。

パナ、シャープ、東芝 … 停滞気味の家電業界

一方、わが国の家電業界は停滞気味だ。 単純に比較はできないが、23 年 3 月期の第 3 四半期の時点で、ソニー以外の主要家電メーカーは、業績の下振れ警戒感を示していた。 23 年 3 月期のパナソニックホールディングスの連結業績は、売上高が 8 兆 3,789 億円(前期比 9,901 億円増)、営業利益は 2,886 億円(前期比 690 億円減)、経常利益は 3,164 億円(前期比 440 億円減)、純利益は 2,655 億円(前期比 102 億円増)。 ソニーの収益力に比べると見劣りする。

一時、パナソニックは世界の車載用バッテリー市場においてトップのシェアを獲得した。 しかし 17 年、中国の寧徳時代新能源科技 (CATL) が、パナソニックを追い抜き世界トップの車載用バッテリーメーカーに成長した。 CATL 経営陣の成長志向は高い。 成長性の高さに着目し、中国共産党政権が産業補助金政策などを強化したことも大きい。 対照的に、パナソニックは自社の優位性が維持できる分野での競争力引き上げ = 製造技術の向上が遅れた。

わが国にはセパレーターなどバッテリー部材などで高い技術力を持つ企業は多い。 そうした企業との連携強化や海外企業の買収で、パナソニックが世界最大のバッテリーメーカーとしての地位を築くのは可能だったはずだ。 しかし今現在、パナソニックは白物家電などの既存分野、人工知能 (AI) などを用いた産業用の IoT ビジネス体制の強化、さらにはバッテリーと、総花的な事業ポートフォリオのままだ。

シャープも、成長分野での事業運営体制の確立が遅れた。 大阪府堺市のディスプレー工場への過剰投資が重荷となり、シャープは自力での事業運営に行き詰まった結果、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収された。 それによって、一時は徹底したコストの削減と米アップルへのディスプレー供給増加によって業績は回復した。 しかし、シャープの 23 年 3 月期決算は、2,608 億円の最終赤字となった。 テレビ向け液晶パネルの不振などが要因だ。 最終赤字に沈んだのは、経営危機に陥った 17 年 3 月期以来となった。 その他、東芝は、本邦主要企業および金融機関連合による買収によって経営再建を余儀なくされているのは周知の通りだ。

いっそう強化すべきソニーの半導体事業

今後より注目すべきなのは、ソニーの半導体事業だ。 決算説明の場で十時裕樹社長は、「24 年 3 月期、画像センサーの新製品量産によるコスト増から、半導体事業の収益性は一時的に悪化する」と述べた。 ソニーは中長期的な目線で画像処理などに用いられる半導体の製造技術を強化し、より多くの新しい需要を創出する決意を強くしている。 半導体業界は重要な変革期にある。 巣ごもり需要の反動減や、世界の景気後退懸念などを背景に、短期的にはメモリ、ロジック、アナログの半導体市況の悪化はより鮮明となるだろう。

ただ、中長期目線では、いずれ市況は底を打つ。 AI 利用、家庭での IoT 利用、自動車の CASE (ネット接続や自動運転、シェアリング、電動化)などは加速し、世界の半導体需要は確実に増える。 台湾問題の緊迫化もあり、台湾から米国や日本などに半導体製造拠点を移す地殻変動も加速している。 そうした展開に備え、ソニーは半導体の生産能力を強化し、需要をより効率的に取り込む必要がある。 それはデジタルカメラなどの機器、コンテンツの創出体制の強化にも寄与する可能性が高い。

さらに言えば、ソニーが新しい最終商品を世界に投じることができるかにも注目したい。 かつてのウォークマンのように、全く新しい発想をハードとソフトの両面に落とし込んだ高付加価値のモノを生み出すことができるか。 こうした最終商品を出せれば、販売増だけでなく関連サービスも増えて市場が形成される。

ソニーの真の強さとは、そうした世界中の人々の生活様式までも大きく変えることにつながる、内なるパワーを持っていることだ。 リーマンショック後の世界経済を支えたアップルの iPhoneの 需要が飽和し、SNS やサブスクリプションモデルも行き詰まってきている。 この状況下、ソニーが半導体などの製造技術をフルに生かして、世界をあっと驚かせる最終商品を生み出すことができれば、停滞気味のわが国産業界に多大な好影響を与えることは間違いない。 (Diamond = 5-16-23)



ソニー、エンタメ好調で営業益初の 1 兆円超 PS5 は販売目標届かず

ゲームなどのエンターテインメント事業に力を入れるソニーグループの業績が好調だ。 円安も利益を押し上げるが、家庭用ゲーム機「プレイステーション (PS) 5」の販売台数は目標を下回る。 10 日に発表した 2022 年 3 月期決算(国際会計基準)は、本業のもうけを示す営業利益が前年比 25.9% 増の 1 兆 2,023 億円で、2 年連続で過去最高だった。 エンターテインメント事業で営業利益の半分以上を稼いだ。 営業利益が 1 兆円を超えるのは初めてで、SMBC 日興証券によると、国内製造業ではトヨタ自動車に次ぐ 2 社目だ。

売上高は同 10.3% 増の 9 兆 9,215 億円、純利益は同 14.3% 減の 8,821 億円だった。 ソニーグループはエンタメ系のゲーム、音楽、映画のほかに、家電、半導体、金融の計 6 事業が柱だ。 映画子会社傘下のゲーム部門の売却や、映画「スパイダーマン」最新作のヒットも貢献した。 音楽事業もネットのストリーミング配信が堅調だった。 ゲーム事業は巣ごもり需要もあって、稼ぎ頭になっている。 PS5 は 20 年 11 月の発売以降から高い人気を保つ。

ただ、半導体不足もあって思うように生産、販売ができていない。 22 年 3 月期の世界販売台数は 1,150 万台で、当初の年間目標を 3 割近く下回った。 これから増産し、23 年 3 月期の世界販売台数は前年比 5 割増の 1,800 万台を見込む。 十時裕樹副社長はこの日の会見で、「1,800 万台は現時点で部品の供給にメドが付いているものを入れた。 需要は高いが、(供給が)十分に合うかというと足りない。 在庫の水準も非常に低い。」と述べた。 コロナ禍で中国の都市封鎖(ロックダウン)が広がった場合には「生産に影響を及ぼす可能性がある」とした。

企業買収や設備投資にも積極的だ。 1 月には、米国のゲームソフト開発会社バンジーを 36 億ドルで買収すると発表した。 4 月には、世界的な人気ゲーム「フォートナイト」を運営する米エピックゲームズに約 10 億ドルを追加出資すると表明した。 成長が見込まれるネット上の仮想空間「メタバース」での協業を見据える。 エピックがもつゲーム制作の技術にも注目しており、映像制作や電気自動車といった分野でも活用したい考えだ。 (伊沢健司、asahi = 5-10-22)



ソニー 最終利益 1 兆円超 去年 12 月までの決算 巣ごもり需要好調

ソニーの去年 12 月までの 9 か月間の決算は、最終的な利益が 87% 増えて 1 兆 647 億円と、この期間として初めて 1 兆円を超えて過去最高となりました。 いわゆる巣ごもり需要でゲームソフトや音楽の配信が好調だったことなどが利益を押し上げました。 ソニーが 3 日発表した去年 12 月までの 9 か月間のグループ全体の決算は、売り上げが前の年の同じ時期と比べて 4.1% 増えて 6 兆 7,789 億円。

新型コロナウイルスの感染拡大によるいわゆる巣ごもり需要の高まりでゲームソフトや音楽の配信、それにテレビの売り上げが伸びたほか、人気漫画「鬼滅の刃」を原作としてグループ会社が企画・制作したアニメーション映画のヒットなども利益を押し上げました。 会社は、ことし 3 月までの 1 年間の業績予想を上方修正し、売り上げが 8 兆 8,000 億円、最終的な利益が 1 兆 850 億円と、1年間の決算としても過去最高となる見通しを示しました。

ソニーの十時裕樹 CFO は、オンラインで開いた決算会見で「個々の事業が強くなったことは間違いなく、去年 11 月に発売したプレイステーション 5 も非常に強い需要がある。 今後もエンターテインメントの分野に力を入れていきたい」と述べました。 (NHK = 2-3-21)



ソニー、1,000 億円投じ新工場 = スマホ向け半導体、長崎で検討

ソニーが、1,000 億円程度を投資し、イメージセンサーと呼ばれる画像用半導体を生産する新工場を長崎県に建設する検討を進めていることが 29 日、分かった。 画像用半導体はスマートフォンのカメラなどに使われる。 スマホに複数のカメラが搭載され始め、需要が拡大していることに対応する。 新工場は 2021 年度以降に稼働する見通し。

画像用半導体の売上高でソニーは 5 割の世界シェアを持つ。 生産能力を増強し、25 年度までにシェアを 6 割に引き上げたい考え。 ソニーは現在、熊本、長崎、大分、山形の 4 県で画像用半導体を製造しており、月間生産能力(300 ミリウエハー換算)は 10 万枚程度。 既に長崎県諫早市にある工場の隣接地を取得しており、新工場の建設用地とみられる。 (jiji = 10-29-19)


「技術のソニー」再び? 17 年ぶり展示会開き巻き返し

ソニーが、ゲーム機「プレイステーション 4」の次世代機に導入する映像技術など、実用化をめざす技術の展示会を開いた。 注力するのは、ゲームや映画、音楽ライブなどで活用できる VR (仮想現実)や人工知能 (AI) だ。 業績低迷が続くテレビや携帯電話などの事業で培った技術を、成長分野に位置づけるエンターテインメント事業で生かそうとしている。 ソニーがこうした展示会を開くのは、2002 年以来、実に 17 年ぶりだ。 18 日に都内であった展示会では、報道関係者らに様々な先端技術が披露された。

会場でまず目に付いたのは、人の体に小型センサーを付け、人の動きを映画やゲームのキャラクターで再現させる技術。 「スタジオ設備や全身スーツ着用などが不要で手軽(担当者)」なのが売りだ。 体に付けるセンサーは六つだけだが、センサーで取得したデータから AI 技術で自然な動きを推定する。 センサーはもともと、携帯電話の所有者の歩数など動きを検知する技術としても使われていたという。 映画撮影で使うセットを三次元 (3D) 映像で再現する技術もあった。 セットを解体したあとでも合成で撮影できる。 ソニー子会社が手がけた映画では CM 制作時に使われた。 高画質な映像は、テレビ事業で欠かせない画像処理技術を生かした。

ほかには、AI を使い、金属やゴム、プラスチックなどの素材に合わせて実写に近い光の反射を CG 映像で表現したり、人の動きをリアルタイムで CG 映像に合成したりと、ゲームや映画での実用化を見込む技術が目立った。 高精細な「8K」に対応したテレビも披露された。 開発担当者は「映像の進化は終わりを告げ、これからは映像体験の進化が進む」という。 映像がきれいな映画やゲーム、スポーツ中継などが増えれば、より高画質なテレビが欲しくなり、「好循環で進化できる(担当者)」と期待する。

エンタメ事業とともに「成長の柱」と見込む画像センサーも、技術開発に力を入れる。 スマートフォンのカメラ向けで大きなシェアを握り、今後は自動ブレーキなど自動車の運転支援に生かす考えだ。 研究開発を束ねる勝本徹専務は、展示会で「各事業分野のデジタル化によって、共通の技術がグループ全体で使えるようになってきている」と話し、研究を進める技術は広い分野で応用できると説明。 吉田憲一郎社長も、「技術は多様な事業を貫き、力を与えるものだ」と力を込めた。

ただ、AI 研究やデータ解析といった人材獲得は、IT 大手との取り合いもあって厳しい。 画像処理、VR に強いベンチャー企業も力を付けている。 今回、ソニーが展示した技術の多くは「実用化が 3 - 10 年後の、中長期での仕込み。(勝本氏)」 画像センサーを含む半導体事業については、ソニー株を保有していると主張する米投資ファンド、サード・ポイントから、同事業を売却してエンタメ事業の資金に充てることを求められた。 ソニーは分社化しない方針だが、今後の成長につなげられるかどうか、株主の目も厳しくなっている。 競争が加速するなか、どれだけソニーの存在感を示せるかが試される。 (高橋諒子、asahi = 9-20-19)


ソニー、新規事業に社外のアイデア 手応えあり

梅雨真っただ中の 2019 年 7 月 3 日午後。 東京・品川にあるソニー本社のホールは、夏本番のような熱気に包まれていた。 会場後方では飲み物が提供され、どことなく米シリコンバレーで開催されたイベントをほうふつとさせる。 この日開催されていたのは「Sony Open Innovation Day 2019」。 新規事業の創出を目指すスタートアップなどを対象にしたイベントだ。

壇上にはソニーの担当者が上がり、同社が手掛けるスタートアップ創出支援プログラム「ソニー・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム (SSAP)」を説明。 ソニーが生み出した新規事業の開発者のトークセッションや、外部との開発が進む案件も紹介された。 イベントの来場者は 1,000 人を超え、その 7 割がスタートアップや大企業など外部からの参加者。 イベントの責任者であるソニー Startup Acceleration 部門の小田島伸至副部門長は、「初の試みだったがなんとか成功できた」と安堵の表情を浮かべた。

新規事業創出の仕組みを外部に開放

SSAP は、新規事業を生み出すソニーのノウハウを外部に提供するサービスだ。 アイデア創りから事業計画の立案、マーケティング調査、商品の量産、事業運営、資金調達、販売までを一気通貫で支援する。 サービスは有料で、事業計画の立案、量産支援のみといった具合に部分的に支援を受けることも可能だ。

ソニーは 14 年から、自社内で新規事業創出プログラム「シード・アクセラレーション・プログラム (SAP)」を展開してきた。 5 年間の取り組みで、腕時計のバンド部分に通信機能を埋め込んだスマートウオッチ「wena wrist (ウェナリスト)」や小型ロボットを自由自在に動かせる玩具「toio (トイオ)」など 14 の新規事業が誕生。 大ヒットにこそつながっていないものの、新規事業の芽は育ってきたと言える。

小田島氏が、5 年間にわたる SAP の活動で気づいたのが、「イノベーション創出はアイデアと人材に依存する」ということ。 「優れた人材がアイデアを生み出し、意欲を持って行動しないとイノベーションは生まれない」と続ける。 イノベーションのタネとなるアイデアを生み出す人材をいかに確保するか。 「ソニー社内だけでは 11 万人に限られてしまう。(小田島氏)」 ならば、自社にこだわらず外部に門戸を広げた方がいい。 そこで 18 年から新規事業創出プログラムの外部への開放を本格化し、同年 10 月には第 1 弾として京セラとの連携を開始した。 今年 2 月には名称を「SSAP」に変更し、オープンイノベーションを積極化している。

外部への本格開放から 9 カ月。 SSAP から新事業が生まれつつある。 イベントと同日の 7 月 3 日、京セラとライオンと共同で、歯にブラシが当たると音楽が流れる子供の仕上げ磨き用歯ブラシ「Possi(ポッシ)」を発表した。 ハブラシのヘッド部分に京セラの小型圧電セラミック素子を搭載。 ブラシを歯に当てるとヘッド部分から歯に振動が伝わり音が出る仕組みを盛り込んだ。 子供が嫌いな歯磨きの時間を楽しいものに変える商品だ。

「自分の子供の歯磨き嫌いを何とかしたい(京セラ研究開発本部の稲垣智裕氏)」という京セラの事業アイデアにライオンが賛同。 ソニーが事業全体の構想をコーディネートすることで、開発開始から 9 カ月間で商品開発にメドを付けた。 まずはインターネット上で資金を募る「クラウドファンディング」で資金を集めて商品化の是非を問う考えだ。 SSAP にはこれまで約 300 件の応募があり、大企業やスタートアップ、大学など 17 の案件の支援を実施している。 採択基準は「商品やサービスのアイデアの革新性。 イノベーションが起こり得るかどうかを見ている。」と小田島氏は話す。 これまでの 9 カ月で「手応えはある」と小田島氏は言う。

持続的な事業の創出へ

有料サービスとはいえ、ソニーは支援サービスでもうけようとしているわけではない。 一連のオープンイノベーションの取り組みで、「ソニーが目指すのは持続的な事業の創出だ。(小田島氏)」 理想形として挙げたのは、スマートフォンで鍵を開閉する「スマートロック」の Qrio (キュリオ)。 日米に拠点を置く投資育成会社 WiL がソニーに持ち込んだアイデアをベースに、前身となる SAP を通じて実用化にこぎ着けた。 14 年の設立当初は WiL が 6 割、ソニーが 4 割を出資する共同出資会社だった。

当時はあらゆるモノがネットにつながる IoT という言葉もまだ浸透しておらず、「ソニーにとって重要な事業になるとは想定していなかった。(小田島氏)」 将来的な出口戦略として、「子会社化だけでなく IPO (新規株式公開)などの可能性を議論していた」と明かす。 最終的に、ソニーが IoT を本格化しようというタイミングで、キュリオの完全子会社化を提案。 17 年にソニーグループの 100% 子会社として事業部門に移管された。 ソニーとしては数年間の時間を買うことができ、「事業戦略に大きな貢献ができた」と小田島氏は語る。 今回、京セラなどと共同開発した歯ブラシも、「将来的にどう展開していくかは 3 社で議論していくことになる」という。

業績回復を経て、外部の力を取り入れて将来の種まきを進めるソニー。 もっとも、大企業であるソニーが、子会社化を前提にスタートアップとのオープンイノベーションを展開すればスタートアップから不信感を抱かれかねない。 その点はソニーも意識しており、小田島氏も「オープンイノベーションをする際に Win-Win となれる関係を構築できるかは重要だ」と話す。 世の中を驚かせるイノベーションを生み出してきたソニーといえども、技術革新のスピードが速い今は自前主義にこだわっていられない。 外部のアイデアや技術を生かしてどう事業化に結び付けるか。 ソニーは手探りの中でも確かな手ごたえを感じ始めている。 (佐伯真也、日経ビジネス = 7-16-19)



ソニーの電子お薬帳、服薬情報プラットフォーム狙う

ソニーは 14 日、電子お薬手帳サービス「ハルモ」のサービスを拡充すると発表した。 継続的な服薬の支援や、特定地域で利用者の検診情報を提供し、2020 年メドに利用者を現在の約 3 倍の 100 万人に増やす。 薬局や医療機関など約 950 カ所に普及したサービス提供のきっかけは、開発者の個人的な体験にあった。

「私自身がほしかったサービスなんですよ。」 ハルモ事業室長で、創案者の福士岳歩氏は振り返る。 かつて微熱が下がらない時期が続いた福士氏は多くの病院に通い、数え切れないほどの薬を処方された。 紙のお薬手帳で管理しようと試みたが、増えるのはシールばかり。 肝心の医薬情報はよくわからない。「管理さえできないなんて、不安になった。」

技術者だったので、「世の中にないなら作ればよい」と 2008 年ごろに開発に着手。 氏名や生年月日という個人情報は非接触 IC 「フェリカ」を積んだカードに、服薬履歴はクラウド上に分けて保存するユニークな仕組みを持つ。 薬剤師と話す中で「個人情報が漏洩した場合、どうするんだ」との意見を受けたためだ。 川崎市の一部で実証試験を始めた 2011 年。 東日本大震災で医療機関や薬局も被災し、保存していた多くのカルテが失われ、電子お薬手帳の有用性が改めて注目されることになった。

16 年にサービスを本格的に始め、神戸市や川崎市では薬局での導入率が 30% を超えた。 登録した処方箋の累計は 300 万枚を超す。 個人情報は匿名で管理するが、個人と ID で紐づけられる特長を生かし、特定の人に必要な情報を届けるプラットフォーム(基盤)確立を目指す。 既に医薬品の安全性情報に関する提供で製薬会社 47 社と連携。 継続的な服薬を促す情報や特定地域の検診情報などを提供する機能なども追加し、利便性を高めて利用者拡大に弾みをつける。

個人の困りごとが起点にあるだけに、事業に対する思い入れは人一倍強い。 機能追加は収益減を製薬会社や健保組合などへも広げる狙いがある。 周囲を納得させるためにも、早期の黒字化を目指す。 (岩戸寿、nikkei = 6-14-18)


ソニー、0.5 型有機 EL マイクロディスプレイを商品化 高解像度で HMD などに利用

ソニーは 5 月 28 日、0.5 型で最高解像度となる UXGA(1,600 x 1,200 ピクセル)を実現した有機 EL マイクロディスプレイ「ECX339A」を商品化したと発表した。 今後 AR (拡張現実)や VR (仮想現実)向けのヘッドマウントディスプレイ機器などへの利用が考えられる。 量産出荷開始は 11 月。 サンプル税別価格は 5 万円になる。 (加納恵、Cnet = 5-28-18)


ソニー、営業利益と純利益が過去最高 PS4 ソフト好調

ソニーが 27 日に発表した 2018 年 3 月期決算(米国会計基準)は、本業のもうけを示す営業利益が前年の約 2.5 倍の 7,348 億円で、20 年ぶりに過去最高を更新した。 主力のゲームや金融、半導体、音楽といずれも好調で、最終的なもうけを示す純利益も約 6.7 倍の 4,907 億円と 10 年ぶりに最高益を塗り替えた。 売上高は前年比 12.4% 増の8兆5439億円。ピークの08年3月期に次ぐ水準で、増収は3年ぶりだ。ゲーム機「プレイステーション4」用のゲームソフトや、スマートフォン向けの画像センサーがよく売れ、音楽の定額制サービス向けの配信も好調だった。ソニー生命保険も契約高を伸ばした。

事業別では、ゲーム、金融、半導体、音楽でいずれも 1 千億円を大きく超える営業利益を計上。 映画や家電も黒字だった。 ただ、「エクスペリア」シリーズのスマホを手がける携帯電話は、276 億円の赤字。 好調なテレビやカメラと同様の高級路線を進めたものの、販売台数が年 1,400 万台を切り、世界シェアは 1% に満たない状態だ。 19 年 3 月期は、売上高が 2.9% 減の 8 兆 3 千億円、営業利益が 8.8% 減の 6,700 億円、純利益は 2.2% 減の 4,800 億円と減収減益を見込む。 携帯は販売が年 1 千万台に落ちて減収と赤字が続き、半導体も投資と研究費がかさんで利益を圧迫するという。

 

記者会見した十時裕樹最高財務責任者 (CFO) は「ソニーは 5 千億円以上の営業利益を続けたことは今までにない。 この事実は重い。」と述べ、「(好業績の維持に)最も大事なのは、緊張感を保つことだ」と気を引き締めた。 携帯のてこ入れ策については、「利益が出る収益構造に転換したい。 5 月に担当から話す。」と明言しなかった。 (内藤尚志、asahi = 4-27-18)


アイボ復活、鍵は「机の下開発」 有志が空き時間に試作

ソニーのイヌ型ロボット「aibo (アイボ)」が復活した。 鳴き声の「ワンワン」にちなみ、戌(いぬ)年の 1 月 11 日に発売。 予約購入者に引き渡された。 初代は 1999 年に発売されてブームになったが、リストラで 2006 年に生産終了。 今回、AI (人工知能)を搭載、動きも機敏になった。 復活の裏に技術者の奮闘があった。

2015 年の夏。 「アイボ復活はソニーらしさの復活の象徴になります。」 先代アイボの開発の中心にいた藤田雅博さん (58) が経営陣に訴えた。 リーマン・ショック後のリストラが一巡。 社内に成長の芽を探す機運が生まれていた。 藤田さんは「アイボは愛情の対象となる特殊な商品。 家電とは違う。 長い間お客さんとつき合う決意が必要。」とも強調。 復活したら、安易な撤退はできないと迫った。 (西尾邦明 大鹿靖明、asahi = 1-11-18)

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ソニー、AI 搭載の新アイボ発表 持ち主に近寄る動きも

ソニーは 1 日、イヌ型の家庭用ロボット「aibo (アイボ)」を発表した。 人工知能 (AI) が搭載され、持ち主に自ら近寄ったり、個性的な鳴き声を発したりできる。 世界初の家庭用ロボットとして 1999 年に売り出したイヌ型の「AIBO (アイボ)」の後継モデルと位置づけている。

インターネット通販「ソニーストア」で来年 1 月 11 日から 19 万 8 千円(税抜き)で売り出す。 予約受け付け開始は 11 月 1 日午後 11 時 1 分。 平井一夫社長は記者会見で「心のつながりを持ち、育てる喜び、愛情の対象となるロボット。新しいアイボが誕生した。 アイボとともにかけがえのない物語を紡いで頂きたい。」と話した。 「AIBO」の初代モデルは、25 万円ながら限定 3 千体が 20 分で完売。 生産をやめた 2006 年までに累計 15 万台が売れ、ヒット商品になった。 平井社長は昨年 6 月に新型ロボットの開発を表明していた。 (asahi = 11-1-17)


PS4 の年末商戦期の実売台数が世界合計で 590 万台を達成

累計 7,360 万台を突破

ソニー・インタラクティブエンタテインメントは 1 月 9日、2017 年の年末商戦期(2017 年 11 月 19 日から 12 月 31 日まで)における PlayStation 4 の実売台数が,世界合計で 590 万台以上(同社調べ)を達成したと発表した。

これにより、PlayStation 4 の累計実売台数は,2017 年 12 月 31 日時点で 7,360 万台を突破。 PlayStation 4 用ソフトの 2017 年年末商戦期における小売店及び PlayStation Store での実売本数は 5,590 万本、累計実売本数は 6 億 4,500 万本を突破したという。 また、同社の社長兼 CEO である小寺剛氏は,有料会員サービスである PlayStation Plus の加入者数が累計 3,150 万を突破し、2017 年 12 月には PS Store において過去最高のコンテンツ実売数を単月ベースで記録したとコメント。 PlayStation 4 関連の業績が好調であることをアピールしている。 (maru、4Gamer.net = 1-9-18)


ソニー、営業利益通期見通しは 6,300 億円 20 年ぶり過去最高益へ

ソニーは、2018 年 3 月期第 2 四半期(2017 年 7 - 9 月)の連結業績を発表した。 売上高は前年同期比 22% 増の 2 兆 625 億円、営業利益は同 4.4 倍の 2,042 億円、税引前利益は 1,986 億円、四半期純利益は 1,309 億円となった。 増収増益の要因は、ゲーム & ネットワークサービス分野の増収と、半導体、ゲーム & ネットワークサービス、その他分野の損益改善によるもの。 増収増益に大きく寄与したゲーム & ネットワークサービス分野は、売上高が同 35.4% 増の 4,332 億円、営業利益は同 2.8 倍の 548 億円。 「PlayStation 4」のソフトウェア、ハードウェアが増収になったほか、為替の好影響もあった。

同じく、大幅な増収を実現したのが半導体分野だ。 売上高は同 17.9% 増の 2,284 億円、営業利益は同 42 億円の赤字から 494 億円の黒字になり、536 億円の大幅な損益改善となった。 モバイル機器向けイメージセンサの販売数量が大幅に増加し、2018 年 3 月期の見通しも売上高、営業利益ともに 200 億円の上方修正をしている。 イメージング・プロダクツ & ソリューション分野は、売上高は同 15.8% 増の 1,567 億円、営業利益は同 40 億円増益の 189 億円。 ホーム・エンタテインメント & サウンド分野は、売上高が同 28.1% 増の 3,009 億円、営業利益は 68 億円の増益の 244 億円と大幅な増収増益となった。 テレビの高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善と為替の影響によるものとしている。

イメージング・プロダクツ & ソリューションに含まれるメディカル事業については、「順調に推移しているが、業界のルールがエレクトロニクスとは異なり、実績を積み上げるには相応の時間がかかる。 2012 年に 2020 年度の売上高 2,000 億円を目指すと発表したが、現時点でその達成は困難と判断した。 次期中長期計画で見直す。(ソニー代表執行役副社長兼 CFO 吉田憲一郎氏 )」と現状を説明。 長期的に取り組んでいる姿勢を示した。 一方、モバイル&コミュニケーション分野は、売上高がほぼ前年並みの 1,720 億円、営業利益は 62 億円損益悪化し 25 億円の赤字となった。 スマートフォンの販売台数が減少しており、2018 年 3 月期の見通しも 8 月時点の 1,650 万台から 1,550 万台へと引き下げている。

上期の連結業績を受け、売上高は 8 兆 5,000 億円(8 月時点は 8 兆 3,000 億円)、営業利益は 6,300 億円(同 5,000 億円)、税引前利益は 6,000 億円(同 4,700 億円)と通期業績見通しも上方修正した。 吉田氏は「上期は半導体、音楽、テレビなどを含む分野の実績が予想を上回った」と上方修正の理由を話す。 通期の営業利益 6,300 億円に対しては「1997 年度以来、20 年ぶりの過去最高益となる見込みだが、これは、20 年間自分自身を超えられなかったと総括すべきなのかもしれない。 いずれにしても過去よりも未来に向け、成長できるか、生き残れるかを考えるべき。 引き続き緊張感をもって経営にあたりたい。」と慎重なコメントをした。 (加納恵、Cnet = 10-31-17)


営業利益 5,000 億円、「狙える力ついた」 = ソニー社長

[東京] ソニーの平井一夫社長兼最高経営責任者 (CEO) は 23 日の経営方針説明会で、2018 年 3 月期の営業利益予想 5,000 億円について「この 5 年間の取り組みにより、それを十分に狙えるだけの力はついてきた」と述べ、達成に自信を示した。 その上で「5,000 億円は 20 年ぶりの水準だが、この利益レベルを複数年にわたって継続できたことはソニーの 71 年の歴史の中で 1 度もない」と指摘。 「高収益を創出し続けるためには、現状維持ではなく新しい事業への取り組みを強化していくことが不可欠だ」と強調した。

復活の陰にエレ再生

平井社長は現状について「未来に向けて新しいことに挑戦する自信と元気に満ちたソニーが戻ってきた実感がある」と述べ、その背景として「長年苦戦が続いたコンスーマーエレクトロニクスが再生し、安定的な収益貢献が期待できる事業になった」ことを挙げた。 2017 年 1 - 3 月期はエレクトロニクス 6 部門の営業利益(合計)が 1997 年度以来 19 年ぶりの黒字となった。

一方、前期に 1,121 億円の減損を計上した映画事業については「ソニーにとって重要な事業だ」と述べ、収益改善に向けて取り組んでいく姿勢を示した。 ソニーは消費者との接点を「ラストワンインチ」と表現し、強化する戦略を掲げている。 平井社長は「ラストワンインチで勝負するソニーが新たな市場を創造すべくグループ一丸で取り組んでいる実例のひとつが VR (仮想現実)だ」と述べ、VR に注力する姿勢をあらためて示した。 再参入を計画しているロボット分野については「複数のプロジェクトが着実に進捗している」と述べるにとどめた。

ネット事業で振れ縮小

平井社長は次世代ゲーム機について「次のプラットフォームの話をするのはまだ時期が早い」と言及を避けた。 その上で、機種投入サイクルによる収益の変動をネットワークサービスの収入でカバーすることが重要だと指摘。 「ゲームも大事だが、コンソール(ゲーム機)のサイクルとはあまり関係のないノンゲームのコンテンツをいかにプレイステーションネットワーク上で楽しんでいただくかということもアップアンドダウンの幅を小さくする非常に大きなポイントになる」と語った。

今期末のプレイステーション 4 の累計販売台数は 7,800 万台を計画。 プレイステーションネットワークの月間アクティブユーザー数は現在 7,000 万人にのぼるという。 (志田義寧、Reuters = 5-23-17)


有機 EL テレビ、ソニーが 10 年ぶり国内参入

ソニーは 8 日、有機 EL テレビを 6 月 10 日に国内で発売すると発表した。 「ブラビア A1 シリーズ」で、独自の画像処理エンジンと音響技術により画面から音が出るようにした。 市場推定価格は 65 インチが税別 80 万円前後、55 インチが税別 50 万円前後。 有機 EL テレビは韓国 LG 電子がいち早く国内で発売して市場を切り開いてきたが、東芝やパナソニックなど国内勢も相次ぎ参入。 液晶テレビに続く選択肢となり、競争が激しくなりそうだ。

8 日午前に都内で開かれた発表会で、ソニー執行役 EVP でソニービジュアルプロダクツの高木一郎社長は「従来の液晶テレビでは不可能だった新たなたたずまいと視聴体験を提供していく」と語った。 有機 EL テレビは細かな画素のもととなる発光材料が自ら光る技術を用いている。 液晶より薄いため振動しやすいという特長を生かし、振動で画面から音が出るようにした。

スピーカー部分が不要なためシンプルなデザインで、高精細な 4K と高輝度のハイダイナミックレンジを融合させた「4K HDR」にも対応。 「残像感がなく没入できるため、スポーツや映画などコンテンツをとことん楽しみたい人には液晶ではなく有機 EL を選んでほしい。(高木社長)」 ソニーの有機 EL テレビには、挫折も含めた歴史がある。 2001 年に試作機を開発し、07 年には世界で初めて 11 型の有機 EL テレビを発売。 だが販売が振るわず中止しており、今回は 10 年ぶりの再参入だ。

国内市場をみると、これまでは LG 製品のみだったが 3 月に東芝が参入し、パナソニックも展開を計画するなど「有機 EL テレビ元年(家電量販店幹部)」の様相を呈してきた。 認知度の高まりとともに競争環境は激しくなりつつある。 ソニーマーケティングの河野弘社長は「家電量販店では専用コーナーで登場感のある売り場作りを提案したい」と意気込む。 LG も近く薄さ 3.9 ミリメートルで壁に掛けられる新製品を発売する予定で、李仁奎(イ・インギュ)日本法人社長は 17 年の国内販売台数を 16 年比 2 倍に増やす強気な計画を掲げている。

ただ有機 EL テレビのテレビ市場に占める割合はまだ約 1% (金額ベース)。 動画配信サービスやスマートフォン(スマホ)、タブレットの普及で映像を見る手段はテレビだけではなくなった。 テレビの優位性が低下するなか、消費者がどれだけ画面の高画質を求めるかがカギを握る。 ソニーに勝算はある。 ソニーはブラビアを米グーグルの OS 「アンドロイド」に対応させ、約 7 割がネットコンテンツを楽しんでいるという。 ネット接続したブラビアの平均視聴時間は月 10 時間長いという調査結果もある。 「豊富なネットコンテンツや映画こそ、迫力がある大画面の有機 EL でより一層楽しめる。(高木社長)」

ソニーのテレビ事業は高付加価値路線に転換したことで 14 年度に 11 期ぶりに黒字化し、安定的に収益を稼ぐようになった。 「画面から音」というソニーの新たな挑戦が消費者に受け入れられるかどうかが、テレビ事業の安定から成長へのシフトを左右しそうだ。 (中藤玲、nikkei = 5-8-17)


ソニー営業益、最高に迫る 18 年 3 月期 8 割増の 5,000 億円

ソニーの業績が伸びている。 2018 年 3 月期は、本業のもうけを示す連結営業利益(米国会計基準)が 5,000 億円程度と前期推定比で約 8 割増えそうだ。 スマートフォン(スマホ)のカメラに使う CMOS センサーなどエレクトロニクス事業の利益拡大がけん引し、過去最高を記録した 1998 年 3 月期(5,257 億円)に迫る。 ソニーは 15 年 2 月、18 年 3 月期に営業利益で 5,000 億円以上とする計画を掲げたが、昨年 4 月の熊本地震で CMOS センサーを生産する熊本工場(熊本県菊陽町)が被災。 今年 1 月には映画事業で 1,000 億円超の減損損失の計上を発表するなど逆風が吹いていた。

足元はスマホに使う画像センサーの需要が増えており、家庭用ゲーム機「プレイステーション 4」の販売も伸びている。 今期はこうした世界的に競争力のある製品がけん引役となるうえ、高単価の 4K テレビと一眼レフのデジタルカメラも収益の支えになる。 15 年 3 月期に 2,000 億円を超える赤字を出したモバイル事業では、自社ブランドのスマホ「エクスペリア」の販売減に歯止めがかかりそうだ。 高付加価値品へのシフトやコスト削減も寄与し、前期に続いて黒字になるとみられる。 主力のエレキの事業基盤が安定するため、営業利益で今期 5,000 億円以上とする公約は維持する方針だ。

会社側は 21 日、17 年 3 月期の業績予想の上方修正を発表した。 熊本地震の影響などで営業利益は 2,850 億円と前の期比 3% 減るものの、金融事業などのコスト削減が奏功し、従来予想を 450 億円上回った。 純利益は前の期比 51% 減の 730 億円と従来予想を 470 億円上回った。 17 年 3 月期決算と 18 年 3 月期業績見通しの発表は 28 日を予定している。 (nikkei = 4-22-17)