人民元相場の変動幅拡大で異例の示唆、中国人民銀総裁、国際化に自信

【上海 = 河崎真澄】 中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は 9 日放送された国営中央テレビのインタビューで、「為替取引レート変動幅を一段と拡大しても構わない」と述べ、1 日あたり上下 0.5% までに制限されている人民元相場の変動幅拡大を示唆した。

周総裁は変動幅拡大の前提として、「資本の流出と流入のバランスが取れること」を挙げた。 人民銀行総裁が条件付きながら、人民元の為替相場柔軟化で踏み込んだ発言をするのは異例で、人民元の国際化に向けた自信の表れといえる。

中国は 2005 年 7 月、人民元について管理フロート(変動相場)制に移行。 07 年 7 月には、人民銀行が決める中間値(基準値)からの変動幅をそれまでの 0.3% から 0.5% に拡大した。 だが、米国などは「安すぎる人民元相場が貿易不均衡の原因」と批判し、中国に切り上げとさらなる通貨制度改革を求めている。 (sankei = 1-9-12)


米大統領、人民元切り上げなど求める 米中首脳会談

オバマ米大統領は 12 日、胡錦濤(フー・チンタオ)・中国国家主席との米中首脳会談で、中国・人民元の切り上げを加速することや、中国が内需主導の経済に転換するよう改めて求めた。 これに対し、胡主席は、両国が経済的な協力を深める重要性を訴えた。

米ホワイトハウスによると、米中首脳会談は、大半の時間を経済問題の討議に費やしたという。 オバマ大統領は、胡主席に対し、知的所有権保護にさらに力を入れることも要請したという。 ただ、両首脳の間では、環太平洋経済連携協定 (TPP) についての議論はなかったという。 (asahi = 11-13-11)


人民元、切り上げ以降の最高値更新

【上海 = 戸田敬久】 10 日の上海外国為替市場では、人民元の対ドルレートが一時、1 ドル = 6.3453 元まで上昇し、2005 年 7 月の元切り上げ以降の最高値を更新した。 終値は 1 ドル = 6.3486 元と高値圏だった。 前営業日(9 月 30 日)の終値は 1 ドル = 6.3859 元だった。

10 月 1 日から始まった国慶節(建国記念日)の長期連休を前に膨らんだ貿易決済のためのドル買い需要が一巡したことが追い風になった。 「元の緩やかな上昇基調は今後も続く(上海に拠点を置く外資系銀行)」との指摘があった。 (nikkei = 10-10-11)


人民元基準値、初の 1 ドル 6.3 元台に 人民銀が設定

中国人民銀行は 11 日、人民元の取引の目安として毎朝発表している基準値を 1 ドル = 6.3991 元と、2005 年 7 月の人民元改革以降の最高値に設定した。 6.3 元台は初めて。

中国の消費者物価の上昇率は 7 月、前年同月比 6.5% と約 3 年ぶりの高水準となった。 先進国の金融緩和であふれた資金が、中国が輸入する資源など国際商品価格を押し上げるとの懸念も広がっている。 このため、輸入物価を下げる効果を狙って人民元高に誘導しているとの見方もでている。 (北京 = 吉岡桂子、asahi = 8-11-11)


人民元切り上げ、IMF が要求 年次審査

国際通貨基金 (IMF) 理事会は 20 日、中国に対する年次審査を終えて声明を発表し、中国の人民元のさらなる切り上げが必要だとの見解を示した。 国内需要の拡大を通じた中国経済の不均衡是正に向け、「中期的により強い人民元は、重要な構成要素になりうる」とし、昨年より表現をやや強めた。

昨年は「数人の理事が(人民元の)為替レートは、過小評価されているとの見方に同意した」としていた。 今回はやや踏み込んで、人民元の切り上げの重要さや必要性を指摘した。 (ワシントン = 尾形聡彦、asahi = 7-21-11)


人民元の上昇加速へ、大幅切り上げなく変動幅拡大容認も

[上海] 中国当局による輸入インフレ抑制に向けた取り組みを背景に人民元の対ドルでの上昇ペースは今後数カ月間に加速しそうだが、一度限りの切り上げなど大きな政策変更の可能性は低いとみられる。

中国人民銀行(中央銀行)の夏斌金融政策委員が、一度限りの切り上げの可能性を排除できないとの見解を示したとの報道を受け、中国が一度限りの再切り上げを含む、より大きな政策転換を選ぶ可能性があるとの観測が広がったが、どうやらこの観測は見当違いのようだ。

それよりも上海のトレーダーは、人民銀行はインフレ抑制に向けて元相場を押し上げるため、1 日の許容変動レンジ内でのドル / 元のより大幅な変動を容認するとみている。 2010 年 6 月の人民元弾力化後の短期間に人民銀行が容認していたような、元のより大幅な変動を市場は望んでいるが、当局はこれまで消極的な姿勢を維持してきた。

ただ、変動幅の拡大は、中国の通貨市場の発展にとって重要な次のステップともみられており、元の対ドルでの上昇ペース加速の必要性が高まっていることを踏まえると、1 日の変動幅が拡大する可能性はある。 しかしそれは、中国が圧力に屈したとみられないよう、来週の米中戦略・経済対話の後になる可能性がある。

中国招商銀行の通貨アナリスト、Liu Dongliang 氏は「元 / ドルの現在の小幅なレンジでの取引は市場が実際に望んでいるものではなく、人民銀行と国有銀行の介入によるものだ」と指摘。 その上で「中国の為替改革が進むにつれ、基準値の上下 0.5% に設定された現在の 1 日の許容変動幅の活用が徐々に増えていくとみている」と語った。

ただ、たとえ元の対ドルでの上昇ペースが加速し始めたとしても、貿易加重平均ベースでの上昇加速は示さない可能性がある。 実際、人民元は過去数週間、主に対ユーロでの大幅下落を背景に貿易加重平均ベースで下落している。 こうした元の下落は、対ドルでの元の上昇と輸出業者を納得させることの間で中国がバランスを保とうとしていることを浮き彫りにしている。

上海の銀行トレーダーは「人民元の対ドル相場と貿易加重ベースの相場を見れば、中国が繰り返し表明している為替制度の改革を緩やかに進める方針に変更がないことが容易に判断できる」と語った。

<「緩やか」の程度>

人民銀行は今年、元を切り上げ後の最高値にたびたび誘導しており、元がさらに上昇するとの観測が高まっている。 人民元の対ドルでの上昇率は 4 月に 0.9% と、ドル指数が対通貨バスケットで 3 年ぶりの安値に下落するなか、3 月の 0.4% から加速した。 物価の上昇が方向転換する兆しはほとんどなく、ドル安、商品相場の高騰を踏まえると、人民銀行は、市場動向やインフレに対応するため、より速いペースでの元の小幅な上昇を引き続き容認する可能性がある。

国内の通貨トレーダーは、人民銀行が 05 年 7 月に行ったような一度限りの元の切り上げを実施する可能性は低いとみている。 温家宝首相をはじめとする中国当局者はこれまで、元の上昇は緩やかなペースにとどまり、一度限りの元相場の調整はないと繰り返し表明している。 北京の中国国有銀行のトレーダーは「時間とともに一度限りの切り上げの可能性はますます低くなるだろう」と語った。 (Lu Jianxin / Jacqueline Wong 記者、ロイター = 5-6-11)


温総理 : 人民元レートの柔軟性を高め、段階的にレート調整を

国務院の温家宝総理(中共中央政治局常務委員)は 27 日午前、中国政府網と新華網の共同取材を受け、ネットユーザーとオンライン交流を行った。 温総理は人民元レートの問題に関するネットユーザーからの質問に答え、以下のように述べた。

社会主義事業の発展においては、人民元レート改革を少しずつ推し進め、さらに人民元レートの柔軟性を高める必要がある。 しかし我々は、人民元レート問題の政治化には反対する。 1990 年代中期から計算すると、人民元の実質実効為替レートはすでに 53% 上昇している。 2005 年のレート改革から計算すると、人民元対米ドル実質実効為替レートは 22% 上昇、昨年 6 月のレート改革から計算すると 3.7% 上昇している。

人民元レートの上昇幅は我々の経済の要求に符合し、人々の利益にも符合する。 しかし、「50% が加工貿易、50% 以上が外資系企業または合資企業」という中国対外貿易の特徴により、人民元レート上昇に向けては漸進性を保たなければならない。 人民元が一度に大幅上昇すれば、多くの加工企業が破産または経営不能となり、対外貿易企業の注文が他の国にまわされ、国内の多くの労働者が失業するだろう。 しかもこれらの労働者の多くは出稼ぎ労働者だ。

このため、我々は人民元レート改革を絶えず進めなければならない。 つまり、管理変動相場制を実行し、米ドル単一通貨へのペッグ制を取らず通貨バスケットに連動させ、さらに市場ニーズの変化に合わせて人民元相場の柔軟性を絶えず強めなければならない。 ただし、我々は慎重に、段階的に、漸進的にこれを実施し、企業を少しずつ適応させつつ、社会全体の安定を保持しなければならない。 (中国・人民網 = 2-28-11)